均衡配分を用いた少子高齢化による鉄道利用変化予測 01D8102001C 川口 真由
中央大学理工学部情報工学科 田口研究室 2005 年 3 月
あらまし:本研究では,少子高齢化が鉄道需要に与え る影響を調べるため,人口変化を基にした将来 OD 交 通量推計モデルを構築する.また,利用者均衡配分を 用いて, OD 交通量の経年変化が鉄道路線に与える影 響を考察する.
キーワード: 少子高齢化,将来推計人口, OD 交通量,
利用者均衡配分 1. はじめに
近年,日本では出生率・死亡率が低下し,少子高齢 化が進んでいる.今後も少子高齢化が進み,生産年齢 人口は減少していくことが予測されている.少子高齢 化の影響を受け,利用者のほとんどが通勤・通学客で 占められている鉄道会社の収益は,需要の減少に伴い,
減少すると考えられる.
本研究では,将来推計人口[3]を用いて,将来 OD 交 通量を推計するモデルを構築することを目的とする.
平成 17 年から平成 42 年までを対象とし,5 年毎に推 計を行なう.
2. ネットワークモデル
本研究では,東京首都圏の JR 線私鉄線合計 128 路 線 1815 駅を対象(図 1)に,ネットワークを作成する.
乗り換え,待ち時間,優等列車 ( 各駅停車以外の列車 ) 等の効果を考慮するために,時間‐空間ネットワーク を構築する(図 2).図 2 において,ノードは各電車の各 駅における停車,実線のリンクは各駅間の電車の運行,
破線のリンクは同一路線での乗り換えあるいは乗り換 えにコストを要しない駅間における乗り換え,二重線 のリンクは乗り換えにコストを要する駅間における乗 り換えを表している.
地表面に垂直な方向に時間軸をとり,本研究で対象 とする首都圏鉄道網を時間‐空間ネットワークで表す と,図 3 のようになる.
3. 交通量配分問題
交通ネットワークにおいて,利用者が移動を考える とき,各利用者は所要時間・混雑度などのコストを考 慮し,経路を選択する.各々の選択の結果,ネットワ ーク全体であるバランスがとれると仮定して,各リン ク交通量を求める問題を交通量配分問題という.
Wardrop の第 1 原則である“利用される経路の旅行時
間は皆等しく,利用されない経路の旅行時間よりも小 さいか,せいぜい等しい”は,利用者が各々の経路選 択行動を最適化した結果到達する均衡状態を表すこと
から,利用者均衡配分と呼ばれる.この配分問題は,
以下の最適化問題として定式化される.
最小化 ∑ ∫ ( )
∈
=
A a
x a p
a
t w w
Z
0d
制約条件 ∑ − = 0
∈ rs
K k
rs
k
Q
f
rs
Ω
∈
∀rs ∑ ∑
∈ ∈Ω
=
Krs
k rs
rs k rs
k a
a
f
x δ
,∀ a ∈ A
fkrs≧ 0
≧ 0 x
aここで,
( )
aa
x
t :リンク のリンクコスト a x
a:リンク のリンク交通量 a
rs
f
k:OD ペア rs 間第 k 経路の経路交通量 Qrs : OD ペア rs 間分布交通量
K
rs:OD ペア rs 間の有効経路集合 Ω :OD ペア rs の集合
A :リンク の集合 a
⎩ ⎨
= ⎧
そうでないとき
:
を含むとき 経路がリンク
間第 ペア
: 0
OD 1
,
a k
rs
rs
k
δ
aである.
また,電車リンクのリンクコスト関数 は BPR 関 数を採用する.
t
a ta( ) x
a = t
a0( 1 + γ ( xa c
a)
α)
c
a)
α)
ここで, caはリンク の容量, a α と γ はパラメータで ある.パラメータ α と γ は,時間によって混雑度の重 みが切り替わるように,以下のように定める [4] .
7:30 まで α = 4 . 5 , γ = 0 . 02 7:30 以降 α = 4 . 5 , γ = 0 . 1
図1 東京首都圏の鉄道網
駅ノード
乗り換えリンク 電車リンク
待ちリンク
図2 時間‐空間ネットワーク
図3 対象範囲の時間‐空間ネットワーク
4. 利用データ
4.1 大都市交通センサス
大都市交通センサスは,5 年毎に国土交通省が実施 している交通統計調査である[1, 2].本研究では,鉄道 利用者の年齢,居住地,利用経路などが詳細に記載さ れている鉄道定期券利用者調査を利用する.
4.2 市区町村別将来推計人口
平成 12 年国勢調査人口を基に推計された将来推計 人口[3]を利用する.対象年は平成 12 年から平成 42 年 までの 30 年間であり, 5 年毎に推計が行なわれている.
本研究では,総数の 5 歳級推計人口を利用する.
4.3 平成 7 年国勢調査
国勢調査とは,国の最も基本的かつ大規模な統計調 査である.本研究では,平成 7 年国勢調査から,市区 町村別 5 歳級人口を利用する.
5. 人口変化率
本研究では,平成 12 年を基準に推計を行なうため,
人口変化率を,平成 12 年を 1 としたときの,各対象年 における人口の割合と定義する.
駅毎の利用者数の年齢別構成比の違い,市区町村毎 の年齢別人口変化率の違いを考慮し,より現実に近い 推計を行なうため,市区町村・年齢別に人口変化率を 算出する.
6. 将来 OD 交通量推計 6.1 将来 OD 交通量推計モデル
平成 12 年大都市交通センサスに記載されている年 齢,居住地ゾーンコードに対応する市区町村・年齢別 人口変化率と拡大率との積を集計することで, 将来OD 交通量を推計する.
6.2 将来 OD 交通量推計モデルの検証
平成 7 年大都市交通センサス・平成 7 年国勢調査・
平成 12 年人口データを用いて,平成 12 年 OD 交通量 を推計し,平成 12 年大都市交通センサスから得られた OD 交通量との相関を調べる.
平成 7 年大都市交通センサスのゾーンコードブック を入手できなかったため,鉄道利用開始駅の所在地で ある市区町村の人口変化率を利用する.本研究では,
首都圏鉄道網全体を対象に推計を行なうため, 6.1 節で 構築したモデルとの間に大きな差異は生じないと思わ れる.
図 4 は,駅毎の平成 12 年大都市交通センサスの乗車 人数を横軸に,平成 12 年推計乗車人数を縦軸にとり,
散布図を描いたものである.同様に,図 5 は降車人数 に関する散布図を描いたものである.相関係数が,乗 車人数に関して 0.959,降車人数に関して 0.958 であ ることから,共に強い相関があるといえ,本モデルの 有意性が示せた.
6.3 将来 OD 交通量推計結果
6.1 節のモデルを用いて将来 OD 交通量を推計する.
総鉄道利用者数は平成 12 年から平成 42 年までの 30 年で,10%強減少すると予測できる.
駅別乗降車人数の経年変化を調べる.鉄道利用者の 居住地における人口変化を用いて推計を行なうため,
乗車人数の増減には地域による差が見られるが,降車 人数の増減には地域による差は見られない.
次に,鉄道利用経路は平成 12 年大都市交通センサ
図4 乗車人数 図5 降車人数
0 1 2 3 4 5
0 1 2 3 4 5
平成12年センサス乗車人数[万人]
平成12年推計乗車人数[万人]
0 5 10 15 20
0 5 10 15 20
平成12年センサス降車人数[万人]
平成12年推計降車人数[万人]
0 5 10 15 20
0 100 200 300 400
乗車率[%]
利用者数[十万人]
平成12年優等列車 平成17年優等列車 平成22年優等列車 平成27年優等列車 平成32年優等列車 平成37年優等列車 平成42年優等列車 平成12年各駅停車 平成17年各駅停車 平成22年各駅停車 平成27年各駅停車 平成32年各駅停車 平成37年各駅停車 平成42年各駅停車
図6 駅間乗車率の経年変化