• 検索結果がありません。

ホルモンから見た生命現象と進化シリーズ

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ホルモンから見た生命現象と進化シリーズ"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

はじめに

iv ■

ホルモンから見た生命現象と進化シリーズ

はじめに

 本巻は,「時」に関係する現象に焦点を当て,ホルモンを切り口とした興 味深い断面を紹介しようとして企画された.

 動物には,個体の一生のうちのおおよそ決まった「時」に,形態の変化す る現象が知られている.そのなかでも,アオムシからチョウへ,あるいはオ タマジャクシからカエルへ,など形態変化が顕著な場合をとくに変態と呼ぶ.

注意して欲しいのは,アオムシやオタマジャクシなど,いわゆる幼生は「未 完成な成体」ではなく,幼生自身の生活では十分に機能している完成形であ る点である.それが,成体としてのまったく別な生活に適したもう 1 つの完 成形へと,体の外形だけでなく内部の生理機能の一部までも変化させるのが 変態という現象である.たとえるならば,まったく生態の異なる別種の生物 として生まれ変わる過程と考えてもよい.このためには体の各部分が統制の とれた様式で変化しなければならない.不要となる幼生の器官を破壊・吸収 しながら,生存に不都合がでないように並行して成体の器官の形成が行われ る.鉄道のターミナル駅の大改修工事は,通勤通学客を毎日運びながら,古 い構造の破壊と新たな構造の建設が行われるが,この点は変態もよく似てい る.破壊と建設を同時に行う複雑なプロジェクトには,全体を統括する強力 な指揮系統が不可欠である.変態においてその重責を担っているのが各種の ホルモンからなる内分泌系である.神経系とは異なり,ホルモンはゆっくり とではあるが着実に,体中の組織をそれぞれに適した形や機能に変化させて ゆくことができる.「時」にまつわる生命現象で,内分泌系により統括され るものの 1 つが変態である.

 形態ではなく,生理機能が特定の「時」に大きく変化する現象も存在する.

なかでも成熟や繁殖行動には多くの場合,強い季節性が見られる.すなわち,

一年の特定の時期に生殖腺が発達し,繁殖行動を行う.たとえば,サケは秋

に生まれた川に遡上して産卵し,渡り鳥は特定の季節に渡りを行って産卵す

る.また,ヒツジやヤギは,秋から冬にかけて生殖腺の活動が活発となり,

(2)

第Ⅱ巻 発生・変態・リズム -時-

■ v

はじめに

春から夏に出産する.このためには,さまざまなスケールで時間を測

はか

る時計 が体内にあり,それが固有の周期でリズムを生み出す必要がある.リズムに は,1 日のリズム,1 か月のリズム,さらには 1 年もの長いリズムなどが考 えられる.1 年のリズムの成立には,季節の情報を感知するメカニズムが必 要であるが,動物はおもに日長を手掛かりとしている.これらのリズムの発 現にもホルモンが関わっていることが近年になって明らかにされてきた.

 この第Ⅱ巻では, 2 章から 7 章までが「発生・変態」を, 8 章以降が「リズム」

を扱っている.対象とする動物も,昆虫類,甲殻類,境界動物(尾索類,頭 索類,無顎類),魚類,両生類,鳥類そして哺乳類と幅広い.それぞれの動 物群内での知見も興味深いことがわかって頂けると思うが,「時」にまつわ る現象こそ,動物群間での共通性や差異,進化的な側面など比較内分泌学ら しい面白みの現れるところだと思う.現象自身や内分泌系を,動物間で比較 することの楽しさをぜひ味わって頂きたい.

 本巻は,それぞれの分野を専門としている研究者の方々に執筆していただ いた.各章には,基本的な事柄,最新のトピックス,執筆者の経験や思い入 れなどがふんだんに盛り込まれており,それぞれの執筆者の個性があふれて いる.本巻は「発生・変態・リズム」とホルモンとの関わりを,刊行趣旨に も記載されているように進化の視点から鳥瞰することを心掛けた.本巻を通 して,比較内分泌学の面白さや奥深さを知っていただけたのであれば,望外 の喜びである.

 2016 年 7 月

著者を代表して

天野勝文・田川正朋

参照

関連したドキュメント

わかりやすい解説により、今言われているデジタル化の変革と

「欲求とはけっしてある特定のモノへの欲求で はなくて、差異への欲求(社会的な意味への 欲望)であることを認めるなら、完全な満足な どというものは存在しない

■はじめに

しかしながら、世の中には相当情報がはんらんしておりまして、中には怪しいような情 報もあります。先ほど芳住先生からお話があったのは

自然言語というのは、生得 な文法 があるということです。 生まれつき に、人 に わっている 力を って乳幼児が獲得できる言語だという え です。 語の それ自 も、 から

・私は小さい頃は人見知りの激しい子どもでした。しかし、当時の担任の先生が遊びを

自分ではおかしいと思って も、「自分の体は汚れてい るのではないか」「ひどい ことを周りの人にしたので

古澄ゼミは私たち三回生が 1 期生で、自主的に何をしてい くかを先生と話し合いながら進めています。何より個性的な