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2018 年度 「藻類談話会」参加記 渡邉裕基
2018年11月17日(土),神戸大学理学部において2018 年度藻類談話会が開催されました。本会は主に西日本を中心 とした藻類研究者による講演会や研究交流を行う集会です。
今回で,22回目の開催となりました。私は昨年度に続き,2 回目の参加です。今回は23名の参加があり,1つの研究報 告と,3つの講演が行われました。演者(敬称略)ならびに 演題は以下の通りです。
【研究報告】
星野 雅和(北大院・理学)
褐藻カヤモノリにおける寒流域での単為生殖系統の 進化メカニズムとその進化的意義
【講演】
遠藤 光(鹿児島大・水産)
コンブ目褐藻の摂食されやすさに対する無機環境の 影響
河地 正伸(国立環境研・生物・生態系環境セ)
海底鉱物資源開発と海洋環境保全の両立に向けた取 り組み
高村 典子(国立環境研・琵琶湖分室)
日本における湖沼の生物多様性評価や生態系保全の ための研究の動向とその課題
最初は,星野さんによる,褐藻のカヤモノリ(Scytosiphon
lomentaria)に関する研究報告でした。カヤモノリは異型世
代交代を行い,大形の配偶体と,微小な胞子体の世代を持つ ことが知られています。また,接合が行われなかった配偶子 に関しては,雌雄とも単為発生することが報告されています。
今回の発表では主に,配偶子融合の観察できない集団の実態
についてと,単為生殖系統の進化についての2点について報 告が行われました。まず1点目については,カヤモノリには 有性生殖を行う集団と,無性生殖のみを行う集団があること がわかっているそうです。そこで,それらの集団に対して性 判別マーカーを利用して性判別をした結果,有性集団は雌雄 の割合は同程度なのに対し,無性集団は雌個体のみというこ とが示されました。また,培養下においては,無性集団の雌 個体が放出した配偶子は,有性集団のものと比べると,性フェ ロモンが少ない他,細胞サイズが大きく,迅速に単為発生す ることなどを明らかにし,無性的形質を獲得していると報告 されました。2点目については,有性集団は主に暖流域に出 現し,無性集団は寒流域に出現する傾向があることが示され ました。この要因の一つに,低温条件だと接合子の形成が正 常に行われにくくなるという点が挙げられるようです。その ため,寒流域では有性生殖が上手くいかず,単為発生が進化 した可能性があるようです。また,交配実験により,無性集 団の単為発生能力は遺伝するということもわかってきたよう です。これらの無性集団について,現在も様々な手法による 研究に取り組んでいるそうなので,今後の続報にも期待した いです。
遠藤さんによる講演では,主にアラメ群落への震災の影響 とその後の磯焼けについてと,アラメの摂食されやすさに 対する無機環境の影響に関する話題でした。震災により海藻 群落がどのような影響を受け,その後どのように変化をして いったか,植食動物との関係とともに解説をしていただきま した。震災の影響に関しては,津波とそれに伴う地盤沈下に より群落の分布に変化が見られたようです。震災直後の志津 川湾では,特に湾奥で藻体の損傷など大きな影響が見られた ことが示されました。その後の経時変化を追った調査では,
これまでアラメが見られなかった浅所において新規加入が見 られる一方で,深所では十分な成長をせずに消失するのが観 察されました。これは,地盤沈下と光量の低下による影響だ と推察されるようです。さらに,その後に大量加入したウニ の摂食により群落が縮小するなど,磯焼けに至る過程が紹介 されました。アラメの摂食されやすさに関しては,水温,光 量により,フロロタンニン含有量がどのように変化するのか,
それに伴い,ウニによる摂食されやすさはどのように変化す るのかといった研究結果が紹介されました。水温や水深によ り,フロロタンニン含有量は変化するものの,摂食量との相 関は見られませんでした。ただし,光量の減少により,摂食 されやすくなる可能性があるということが示されました。そ の他に,ワカメと植食動物による摂食の研究として,ニホン コツブムシによる養殖ワカメへの食害に関する研究も紹介さ 講演の様子(写真提供:川井浩史先生)
藻類 Jpn. J. Phycol. (Sôrui) 67: 11-12, March 10, 2019
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れました。ニホンコツブムシの摂食圧は,水温上昇と栄養添 加による増加することから,早期の養殖開始や,色落ち対策 の栄養添加により摂食されやすくなる可能性があるようで す。現在は鹿児島大学において,植食性魚類や高水温への対 策に関する研究を進められているそうなので,今後の展開も 期待されます。
河地さんによる講演では,海底鉱物資源開発や,それらが 海洋環境へ与える影響,開発と環境保全の両立に向けての取 り組みに関する話題でした。海底鉱物資源の開発がどのよう に進められ,これらが自然環境へどのような影響を及ぼしう るのかわかりやすく解説をしていただきました。海底鉱物資 源の開発では主に,深海生態系や掘削時の排水による影響が 懸念されているようです。ここでは特に,排水中に溶出する 多様な金属による影響評価に関する話題が中心となり,船上 で迅速に評価することが可能なモニタリング手法の開発が重 要ということが示されました。そこで,国立環境研究所では,
植物プランクトンの遅延発光を利用したバイオアッセイ法を 開発しているそうです。遅延発光とは,光合成によりエネル ギーを蓄えた後,光を遮断すると,光合成の逆反応により微 弱な光を発する現象です。この遅延発光量は,生長速度と強 い相関があることが確認されています。これにより,生長阻 害試験よりも短時間で毒性の評価ができるそうです。現在は 海水環境の評価に,シアノビウム(Cyanobium sp.)を選抜し,
遅延発光と併せて洋上バイオアッセイとして試験手法を構築 し,公開しているようです。
懇親会参加者集合写真(写真提供:川井浩史先生)
最後の高村さんによる講演では,日本の湖沼の生物多様性 評価と,霞ヶ浦の長期生態系研究など,淡水の生物多様性の 保全研究の現状について解説をしていただきました。日本の 湖沼の生物多様性評価として,各地の調査報告をもとに,西 暦2000年以前と比較すると,湖沼に生育する魚類では28
%,水生植物では57 %種数が減少していることが示されま した。また,50年間の漁獲データから見ても,多くの湖沼 で生物が減少していました。これは,外来種が大きな要因と なっているほか,護岸や水質の変化,人工的な水位調整など も要因となっているようです。生物多様性の保全のために保 護区の設立も進められているようですが,陸域・海域どちら も未だ十分にカバーしているとは言い難いようです。霞ヶ浦 の長期生態系研究としては,国立環境研究所が継続してモニ タリングをしている生物や水質などのデータについて解説を していただきました。近年では,モニタリングデータをもと にした因果関係解析(causality analysis)などが広く行われ るようになってきており,霞ヶ浦のデータを使用した解析も 紹介されました。これらのモニタリングデータについては,
霞ヶ浦データベースとして広く公開されているそうです。こ こには書ききれませんが,その他,霞ヶ浦流域の生態系サー ビスの評価など,生物や環境,私達の生活などの相互作用な どについても解説があり,マクロな視点の重要性などについ ても考えることができ,大変興味深く聞かせていただきまし た。
研究報告と講演の終了後は,理学部棟の別室で懇親会が開 催されました。懇親会の参加者は17名でした。懇親会は立 食形式で,食べ物や飲み物を片手に和やかな雰囲気で行われ,
研究に関する意見交換,世間話など様々な話しがされていま した。学会等と比べると人数は多いとは言えませんが,その 分じっくりと話しをすることもできるため,楽しい時間を過 ごすことができました。学生や若手研究者にとっても,交友 関係を広げるとても良い場だと思います。来年の藻類談話会 は奈良女子大学にて開催されるようです。本稿を読んで興味 を持たれた方は,ぜひ参加をお勧めします。
(神戸大学内海域環境教育研究センター)