i染類Jpn.J. Phycol. (Sorui) 55: 39・40,March 10,2007
田中 学: 2006 年度「藻類談話会」参加報告
2006年度藻類談話会は 11 月11 日に秋風漂う六甲山の麓,
神戸大学瀧川記念学術交流会館にて開催されました。務類を 材料とする研究者が2 4名,関西を中心に関東や北陸などか ら集 まりました。幅広い分野の講演,質疑応答や意見交換な ど,活発な研究交流が行われました。
演者( 敬称11賂) と題目は次の通りでした。
菓子野康浩( 兵庫県大院 ・生命理学) : 好冷性微細II藻類の 光環境応答機構
富谷朗子 ( 海洋研究開発機構・地球内部変動研究センタ ー):
シアノバクテリアの初期進化 :分子系統学 ・古生物学的ア プ ローチ
神谷充伸( 福井県大 ・生物資源) :紅藻の無性生殖化 に関 する進化生物学的研究
鯵坂哲朗( 京都大院 ・地球環境学堂) ・上井進也 (神戸大 ・ 内海域) : 東シナ海の流れ藻( アカモク) と日本各地のアカ モク ・シダモク種群の形態変異について
かな間│敏に生息する好冷性微細藻類,アイスアルジーの光合 成系の特性について話されま した。アイスアルジーの生育環境 は零度前後,弱光であり,そのような過酷な環境下で効率のよ い光合成をするために,アイスアルジーは独自の光環境応答 機構を獲得 しているそうです。アンテナサイズを大きくして,
光合成の光飽和点は非常に小さいそうですが,低温iで光強度
が上がる とキサン 卜フィルサイクルにより光阻害を防ぐとい う事例を示されました。 また,アイス( 氷) アルジ ー ( 主) とユニー クに表現され, 基礎生産者として北洋の食物連鎖に大 きく寄与 してい ることも紹介 されました。採取地が日本ではサ ロマ湖,さらに南極海ということで,南極観測船からの写真を 拝見 し, 真っ白でダイナミックなフィ ール ドの様子を伺い知る ことができました。過酷な環境です ら巧みに自らの光合成機構 を変化させて生育するしなやかな藻類の姿が印象的でした。
富谷朗子先生は,詳細な分子系統学的解析と原生代の化石 試料を用いた古生物学的解析により,シアノバクテリアの 進化史について話されました。16 S r R N A遺伝子やrbcL遺 伝子とともにnif遺伝子群や異質細胞に 関わる hetR遺伝子 を用¥ " た分子系統解析 により,糸状または分校状のシアノバ クテリアのなかで異質細胞や休11民胞子への細胞分化がみられ るネンジュモ目やスティゴネマ目などは単系統性があること を示されました。 さらに,現生するシアノバクテ リアと 化石 に残る糸状シアノバクテ リアとの形態的な類似点を見いだ し,
進化の時期を 推定されました。地球上の酸素濃度の 上昇と,
窒素固定の場 ともいわれる異質細胞への分化 はほぼ同じ時期 に起こったと考えられるそうです。t也球とシアノバクテリア の共進化が実際に示され,シアノバクテリアの大きな存在感 を改めて感じました。
村I谷充{rll先生は熱帯 ・亜熱帯の河口マングロ ープ域に群落
2006年l支部類談話会の演者 : 菓子野先生 ("1"列右Mfil),笥谷先生 ( 中列左端) ,布11谷先生(後列左から3人W ,
,前列右端が筆者 (
40
を形成する,広; 塩性紅藻アヤギヌの無性生殖化についての御 講演でした。アヤギヌ類はその形態変異が著しく,形態が辿 伝的に固定されているのか,環境に起因するのかを決定する のが難しく,生物地理学的研究があまり進んで、いないそうで す。そこで世界各地から採集されたアヤギヌについて,集団 間あるいは集団内における形態の相違の解析,生殖的隔離の 有無の解析,分子系統学的解析などを行い,種分化を研究さ れています。今回は,ある集団で四分胞子体から放出された 胞子が再び胞子体になる無性生殖株が単離され,また交配群 聞でかけ合わせると Fl世代が無性生殖化されるという実験 結果が紹介されました。多 くの交配実験の結果より,距離を 隔てた異所的分化だけではなく,近距離の集団聞でも分化が 多様に進んでいることが示されました。藻類の海洋における 逃伝的交流は想像以上に多様な形式があり,地理的条件や生 理的条件などの様々な要因が関連することがわかりました。
鯵坂哲朗先生 ・上チ│二進也先生による御諦演は東シナ海の流 れ藻とアカモク,シダモク種鮮の形態変異についてでした。
まず春季に東シナ海を悠然と漂う巨大な流れ藻を紹介されま した。その大半がアカモクで,その出自については大│ 陸沿岸 由来とする説や日本沿岸由来とする説があり,不明な点が多 いそうです。そ こで由来を解明するために候補とな る各地の
四都物語 95年に復活し た関西 藻類談話会を前身として,
話会は
96
年より毎年行われてい ます。 90年代前半にはJ R四 日 本で京都,大阪,:f
ljl戸を再発見すると いう「三者11物語」のキャ ンペーンが行われまし たが,藻類談話会は奈良も含め,四都の会場をめぐっ ています。参加者は全国各地から手弁当で集まり,
95年からのプログラムを全部並べると(写真),通 算して
58
の講演がありました。最近では, 学生時 代に藻類談話会に参加し, 懇親会で目標や夢を語っ ておられた方々が,匡l
内外で研究を進展させ,話題 をお土産に演者と して戻って来ら れます。時の流れ と嬉しさを感じます。今年の秋はJ R東海風に「そ うだ 奈良,行 こう。J,奈良女子大学で開催予定の 談話会へお出かけにな りませんか? (1陥野恭子)アカモクと,さらには非常' に形態の良く似た極として日本に 生育するシダモクについて形態変異調査と分子系統学的解析 を行牟ったそうです。アカモクとシダモクでは気泡の形態と雌 雄性によってほぼ区別できるものの,各器官の詳細11な測定値 の比較では変異111国がそれぞれの個体群内で大きく変化し,同 一種群の中での変異ではないかと推定されました。分子系統 学的解析の結果においても両種間での種レベルでの変異が認 められずこの2騒が異種である可能性は低いと思われるそう です。丁寧で仔細な研究によ り新たな見方が浮かび、ーヒがって
くることに大いに感心しました。
私は卒業研究中の学音
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生で、今回始めて藻類談話会に参加 さ せて頂きましたが,藻類の持つ多様性を源として様々な研究 が行われていることを知ることができました。また第一線で 御活躍さ れる研究者の方々と暖かい雰囲気の中で交流できた とってこの藻類談話会が今後ま すます魅力的な学問交流の場 となることを心より厩! っております。最後に談話会の開催にあたり,お忙し い中準備をしてくだ さった川井浩史先生,羽生田岳昭先生( 神戸大 ・内海域) ,幡 野恭子先生( 京都大院 ・人間 ・環境学) に感謝いたします。
( 京都大学 ・総合人間学部)
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