日本小児循環器学会雑誌 7巻5号 618〜625頁(1992年)
心室中隔欠損と肺動脈閉鎖に伴う主要体肺側副動脈の新しい指標
(平成3年8.月30日受付)
(平成4年2月7日受理)
東京女子医科大学循環器小児科学教室
中 島 弘 道
key words:肺動脈閉鎖,主要体肺側副動脈, unifocalization,先天性心疾患
要 旨
心室中隔欠損(VSD),肺動脈閉鎖(PA),主要体肺側副動脈(MAPCA)に対して, unifocalization
(UF)手術前の血管造影を基に肺動脈の形態の指標化を試み,その有用性を検討した.対象は当院で経
験したVSD, PA, MAPCAでUF後に二期的に心内修復術を行った症例中, UF前の血管造影を検討で
きた23例である.検討した血管造影は平均6.6歳時で初めのUFの平均5ヵ月前である.これらの患児は 平均8.7歳で心内修復術を行っている.これらの症例を心内修復術後右室左室収縮期圧(RVP/LVP)1 以下で生存し得たA群(19例)と,RVP/LVPが1以上でpalliative Rastelliとなった症例(2例),ま
たは死亡(2例)のB群(4例)の2群に分類した.各症例のUF前の血管造影を基に,左右の上中下 の合計6肺葉(左は本来2葉であるが,この論文中では上葉舌区(S4+S5)を中葉と定義する)それぞ
れに注目し,そこに分布するlobar arteryを観察した.それぞれの肺葉中を肺動脈の次のように分類し た.1.無形成または低形成,II.肺内の狭窄, III. complex(複数の潅流,または著しい血管拡張,蛇 行),IV.正常分枝,各肺葉内動脈は,その起始が中心肺動脈またはMAPCAであるかは問わなかった.低形成は最大径が2mm未満とし有効な肺動脈が存在しないものとした.狭窄は非狭窄径の1/3未満のも のとした.これらの分類に対し,1には0点,IIに0.3点, IIIには0.5点, IVには1点を配し,6肺葉の 合計を求めてこの値をPulmonary Point(PP)と命名した. A, Bそれぞれの群につきPPを比較した
ところ,両群の間に有意な差がみられ,予後不良なB群は0.1%の危険率でPPは低値であった.また,
術後RVP/LVPとPPの間に相関係数一〇.859で有意な負の相関関係がみられた.以上からPPは術予
後を予測するのに有用であった.この値が4.5をこえる症例は良好な術結果が得られ,また3.5未満の症 例は,全例B群であり手術適応には慎重を要すると思われた.はじめに
最近,心室中隔欠損(VSD),肺動脈閉鎖(PA)と 主要体肺側副動脈(MAPCA)の複合心奇形に対して,
unifocalization(UF)手術後に二期的に心内修復術が 試みられており1)2),我々の施設でも,限られた症例に ではあるが,この手術は比較的よい成績を得てい る3) 5).しかしいまだに手術適応は不明瞭で確立され ていない.一般的なファロー四徴症あるいは,VSD,
PA, PDAでは肺動脈の評価,および手術成績の予測 別刷請求先:(〒162)東京都新宿区河田町8−1 東京女子医科学循環器小児科
中島 弘道
は比較的容易である6)7).しかしMAPCA症例に於い ては,肺動脈への血流の供給は,各肺野で異なり,ar−
borization anomalyを合併することが多く肺動脈を 評価することが難しい.また症例による肺動脈分布の バリエーシ・ンが豊富なことも,評価及び治療をより 一層困難にしている8}9).本症の心内修復術の経験数の 少なかったこともその一因である.特に中心肺動脈の 欠損するものに対しての治療は従来より困難であった が,最近ようやく手術症例も増えてきている2)5).
そこでこの研究では,UF手術一二期的心内修復手 術という治療方針が成功する条件をあきらかにするた めに,UF手術前の血管造影を基に肺動脈の形態の点
数による指標化を試みた.そして術後の右室圧による 心内修復術後の予後との関係を調べることにより,こ の指標の有用性を検討した.
肺動脈の指標化に当たってそれぞれがUF可能かあ るいは困難かを最大のポイントとし,また次のことを 考慮した.
1.我々の施設ではUF術の際,中心肺動脈欠損,あ るいは低形成のものでも,心膜ロールにより左右の中 心肺動脈を形成するので,手術可能であった,
2.中心部(肺門部)の狭窄は修復可能だが,肺内の 狭窄は修復困難である.
3.複数のMAPCAから潅流を受けている部位は肺 高血圧の可能性がある.また異常に拡張あるいは COIL状に蛇行している血管は,肺高血圧を示唆して おり,予後を悪くする因子となると考えられる.また 別の部位への潅流であっても同一肺野にはいる複数の 血管をUFするのは,1本である場合よりやや困雄で あり,予後を悪くし得る.
以上を考慮して今回の分類を行った.
対象と方法
く対象〉対象は当院で経験したVSD, PA, MA PCAでUF後に二期的に心内修復術を行った症例中,
UF前の血管造影を検討できた23例である(表1).本 症のうち,中心肺動脈が良好で,一期的なMAPCA結 紮+Rastelli術により修復できた症例は,今回の研究 には含めていない.
今回の対象例うち,男は13人,女は10人であった.
検討した血管造影は平均6.6歳時で初めてのUFの平 均5ヵ月前である.これらの患児は平均8.7歳で心内修 復術を行っている.心内修復術として導管を用いた Rastelli術は21例に行っているが,2例はパッチによ る右室流出路肺動脈弁輪形成術により導管を用いずに 修復できた,これらの症例を心内修復術後右室左室収 縮期圧比(RVP/LVP)1以下で生存し得たA群(19
表1 対象 VSD, PA, MAPCA例中, unifocalization Rastelli術等の手術を行った症例
23例(男:13例女:10例)
平均年齢:血管造影時一6.6歳 初回UF時一7.2歳 Rastelli −8.7歳 A群 通常のRastelli術後生存した例 B群 pal]iative Rastelli症例
死亡
(UF)後に
19例 2例 2例
例)と,RVP/LVPが1以上でpalliative Rastelliと なった症例(2例),または死亡した例(2例)のB群
(4例)の2群に分類した.心内修復術後のRVP/LVP は23例中20例ではカテーテルデータを基にしたが,カ テ未施施行例中2例は術中測定値,また1例は術後超
音波による値1°)を使用した.
〈方法〉心臓カテーテル検査は経皮的に大腿動静脈 からのカテーテルでまず右室造影,及び大動脈造影を 行い,次に側副動脈の選択的造影を正側2方向のシネ 撮影で行った.ここでは,主肺動脈および左右肺動脈 の肺門部よりを中心肺動脈(central pulmonary artery)とした.また動脈管は,大動脈弓下面か腕頭動 脈より起始し,中心肺動脈,または片肺すべてにほぼ 正常分枝する肺動脈に接続するものとした.
各症例のUF前の,血管造影を基に,左右の上中下 の合計6肺葉(左は本来2葉であるがこの論文中では 上葉舌区S4+S5)を中葉と呼ぶ)それぞれに注目し,
そこに分布するlobar arteryを観察した.
〈中心肺動脈〉中心肺動脈との接続の程度により心 内修復術後の予後が変わるかを確めるために,中心肺 動脈と接続する肺葉を数え,この値とRVP/LVPを比
較検討した.
〈肺動脈面積〉中田のPA index,に相当するもの として,この6肺葉に分枝し挿入する部位での肺動脈
(即ちlobar artery)の径(r。),即ち通常の中心肺動脈 からそれぞれの肺葉支が分枝し,第2分枝を出す直前 の径,またMAPCAではそれに相当する部位の径を測 定し,それらの面積の総和を求め体表面積(BSA)で
除した.これをAREAとすると
AREA=Σπ(rn)2/4×BSA
となる.この値が術後RVP/LVPの値と相関するか検
討した.
〈Pulmonary Point>次に今回の目的である肺動脈 の指標化の為に,それぞれの肺葉中の肺動脈を以下の 評価に従い分類した(図1).
1.無形成または低形成 II.肺内の狭窄
III. complex(複数の潅流,または著しい血管拡張,
蛇行)
IV,正常分枝
各肺葉内動脈は,その起始が中心肺動脈または MAPCAであるかは問わなかった.1の低形成は最大 径が2mm未満とし有効な肺動脈が存在しないものと した.IIの狭窄は非狭窄径の1/3以下のものとした.ま
620−(16)
1
㌦得
l l
図1 この研究で用いた肺動脈の分類と点数.1,無形 成または低形成(0点),II.肺野内の狭窄(O.3点),
III, complex(複数の潅流,著しい血管の拡張,蛇 行)(O.5点),IV.正常分枝(1.0点)左右上中下の 6肺葉に対し肺動脈を分類し,その点数の合計を Pulmonary Point(PP)とした.
た肺門部より大動脈側の狭窄で,修復が比較的容易と 考えられるものは,IIには含めずIVとした.分類IIIは
1,II, IVに含まれないものとした.従って分類IIIに は種々のサブタイプを含むことになるが,煩雑さを避 けるためあえて1つのカテゴリーとした.この内,複 数の潅流とは同一肺葉への肺動脈の供給が複数である ものとし,これらの複数の動脈が,肺葉内の同じ区域 に血液を供給しているか,あるいは別の区域に供給し ているかは無視した.
IVの正常分枝とはMAPCA,あるいは中心肺動脈に 接続する1本のlobar arteryが存在し,それがほぼ正 常に肺葉内に分枝しているものである.各分類の症例 を図に示した.図2は左上葉肺動脈低形成例であり,
左上葉分類1とした.図3は右上葉に矢印のところで 狭窄が見られ分類IIとした.図4は複数潅流例である.
上段のAでは中心肺動脈より右肺動脈へ比較的良好 に分布している.BではMAPCAより右下葉への分布 が見られる.よってこの症例の右下葉は複数の潅流が
日本小児循環器学会雑誌 第7巻 第5号
図2 左上葉の肺動脈が分類1の例(症例22)の大動 脈造影の正面像.左上葉の肺動脈は低形成である.
叉
溺
撫
漁
.
彰
蕊
経ぷ
.鞭
蒙優麟慶
繰麟
漣ざ R 嚢
W
藤鍵
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鱗剛
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轟 撫〆
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⁝撃︐㍉該罫畿灘.ぴ評 ξ
ξ轟︐蕪墾
図3 右上葉の肺動脈が分類IIの例(症例20)の選択 的MAPCA造影の正面像.右上葉に狭窄が見られ
る.(矢印)
あり,分類IIIである.図5では右下葉肺動脈は著しい 拡張を示し分類HIとした.図6の左上葉はMAPCA供 給であるが比較的正常の肺動脈分布を示している.こ
の程度のものは今回は分類IVとしている.
これらの分類に対し1には0点,IIに0.3点, IIIには 0.5%,IVには1点を配し,それぞれの症例に対し6肺 葉の合計を求めて(Pulmonary Point=PP),この値 とRVP/LVPとの関係を検討した.またA, B2群につ
図4 右下葉の肺動脈が分類III(複数潅流)の例(症 例9)の選択的MAPCA造影の正面像, A:中心肺 動脈より比較的良好に肺動脈が分布している.B:
右下葉へはMAPCAからも供給され,複数潅流であ
る.
いてこの値を比較した.
<PO2>UF前後のPO2も肺血管症を評価し得る可 能性があり検討を行った.
〈統計〉統計にはt検定を用いた.
結 果
表2にそれぞれの患児のデータを示した.
〈中心肺動脈>PA. Nが中心肺動脈に接続する肺 葉数である.これとRVP/LVP値を比較したが,両者 の間に有意な関係は全くなかった.
〈肺動脈面積>AREAが肺動脈面積であるが,これ も術後RVP/LVPと相関はみられなかった.
<PO2>UF前のPO2も術後RVP/LVPと関係は
見られなかった.
〈Pulmonary Point>A, Bそれぞれの群につきPP を比較したところ,図7のごとく両群の間に有意な差 がみられ,予後不良なB群はO.1%の危険率でPPは
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図5 右正葉の肺動脈が分類IIIの例(症例22)の選択 的MAPCA造影の正面像.右下葉肺動脈は著しく拡 張している.
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図6 左上葉の肺動脈が分類IVの例(症例15)の選択 的MAPCA造影の正面像.左上葉はMAPCAから 供給されるが比較的正常分枝である.
低値であった.また,図8では,術後RVP/LVPとPP の間に有意な負の相関関係がみられた.
考 察
VSD, PA, MAPCAに対し,我々は以前より徹底し た造影を行って肺動脈の確認を行ってきた11)n−13).それ に対する手術としては,まずUFを行った後に心内修 復術を行う2段階の手術を行い,すでに報告したよう
に比較的良好な成績を得ている3}一一5).
この疾患では太く,かつ多くの肺葉に分枝を出す中
622−(18)
表2 PP=Pulmonary Point, PA.N=中心肺動脈 と接続する肺葉数,AREA=総肺動脈断面積,
PO2=術前PO2(mmHg)
No. R/LVP PP PA.N PO2
AREA
予 後1 0.42 5.5 0 41 656 生存
2 0.49 4.5 4 33 466 〃
3 0.53 5.3 4 46 390 〃
4 0.55 5.0 2 40 224 〃
5 0.57 5.0 5 46 224 〃
6 0.58 5.0 6 32 172 〃
7 0.58 4.5 0 36 272 〃
8 0.58 5.0 2 44 301 〃
9 0.59 5.0 6 40 208 〃
10 0.60 4.8 2 37 355 〃
11 0.60 5.5 6 35 346 〃
12 0.70 5.3 0 41 243 〃
13 0.75 4.0 6 41 409 〃
14 0.81 3.5 4 41 139 〃
15 0.82 4.1 3 47 533 〃
16 0.83 4.5 4 39 655 〃
17 0.87 4.5 3 29 270 〃
18 0.96 4.5 6 31 318 〃
19 1.0 4.0 3 48 476 〃
20 1.0 3.3 4 47 143 死亡
21 1.21 2.6 0 44 221 姑息的Rastelli 22 1.25 3.5 3 42 373 姑息的Rastelli
23 1.25 2.8 5 44 133 死亡
Mean 0.76 442 3.4 40.1 327 SD 0.24 0.80 2.0 5.33 148
PP 5
4
3
P〈O.OOI
−
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゜ :°°
●■●■■
●・●●
●
●
一
●●
A
n=19
4
BF
図7 A群とB群のPP値の比較,予後不良なB群の PP値は,有意に低値である.
心肺動脈が存在するものはむしろ少なく,種々の試み にもかかわらず14),arborization anomalyのために肺 血管床の評価は困難であった.また症例によるバリ エーションが豊富なため,簡便な肺動脈の評価方法が
PP
5
4
日本小児循環器学会雑誌 第7巻 第5号
n=23 r=−0.859 Y=−2.86X+6.60
0.5 1.O
RVP!LVP 図8 術後右室左室収縮期圧比(RVP/LVP)とPP 値.■…死亡 ●…palliative Rastelli
存在しなかった.
この疾患には,比較的中心肺動脈が太くまた,肺野 との接続が良好で,一期的に修復できるものと,中心 肺動脈はあっても,arborization anomalyのために二 期的な手術が必要なるものがある.特に後者の中で,
中心肺動脈が無形成あるいは低形成の場合は,中心肺 動脈により肺血管床を評価する中田のindex15)は,適 切な評価の指標とは言いがたい.
そこでこの研究では中心肺動脈及びMAPCA由来
の肺動脈全てについて,左右の上中下の肺葉に挿入す る部位での肺動脈(lobar artery)径を測定し,その断 面積の総和を求めた.これに中田のINDEXと同様に 体表面積で補正を行った.中田のINDEXは第1分枝 前の中心肺動脈径を計測しているが,このAREAは それより末梢で肺動脈の第1分枝と,それに相当する 肺動脈の断面積を測定することになる.しかし,AREAで示された肺動脈面積では手術の予後を予測 することができなかった(表2).
このような結果となったのは,このAREAは肺動 脈の狭窄を考慮していないことが,原因の1つと思わ れる.ただ本疾患の剖検例では,狭窄の大部分は大動 脈から肺に至るまでの間であるとされており16),従っ て狭窄部位は今回の計測部位より中枢にあり,影響は 大きくないと考えられる.むしろ,UF前の本疾患で複 数の起始による肺血流の供給により,低潅流部位の肺 胞動脈の未発達,および高潅流部位の肺高血圧,肺血 管抵抗の増大など,肺の状態がそれぞれの部位により 全く異なり,正常肺動脈のような肺の均一性を仮定す ることができないことが大きな理由であろう.心内修 復術後の肺高血圧症の原因として,低潅流による肺胞 動脈の未発達と同時に,狭窄のない太いMAPCAによ
る肺高血圧性変化も指摘されている16).一般的には肺 動脈が低形成な程術予後が悪いと考えられるが,上に 述べたように,太く,肺高血圧変化を来した肺動脈も あることから,総断面積が大きくても術成績がよくな い症例があり,この様な結果となったのだろう.
中心肺動脈が無形成なことが,本疾患の従来の手術 方法による治療を困難にしていると考えられてい る5).しかし今回中心肺動脈の有無,あるいは中心肺動 脈に接続する肺葉数は予後と関係が見られなかった.
その理由として,我々の手術方針では,中心肺動脈が 無形成または低形成で,MAPCAからの肺血流が主と なるような症例では,UF時に人工的に中心肺動脈を 形成してしまうことによると考えられる.徳庵らは中 心肺動脈と接続する肺区域数をもって,この疾患の手 術予後を検討しているが17)18),彼らの方針では中心肺 動脈の低形成,無形成なものは手術適応からはずされ,
またUFは行われておらず,今回の我々の検討と対象 が異なる.
PO2は肺血管床を反映している可能性はあると予想 したが,今回のデータでは手術成績との関係は見いだ せなかった.これも総肺動脈面積と同様に,不均一性 を表現できないために,予後を予測する指標とはなり にくいのかもしれない.以上のように従来の方法のみ ではこの疾患の肺血管床を評価することは困難であ
る.
そこでこの研究では肺をいくつかの部分にわけ,そ れぞれの血管床を評価し,その評価を指数化し検討し
た.
肺は本来なら左9右10の合計19肺区域に分けられる が,今回は合計6肺葉とした.その理由は,この疾患 の性質上肺動脈の分布は複雑で,19肺区域での検討は 煩雑であり,簡便さを求める主旨に反するからである.
配点に関してはまだ改良の余地があるが,分類1の 無形成はUF不可能で0点, IIの狭窄は修復困難なこ とから低い配点とし,分類IIIの複数の潅流など, UF可 能だがその部位の肺の損傷の可能性の有るもの等は中 間点とした.dual supplyについてのHaworthらの報 告の剖検例の病理所見では16),肺高血圧性病変より低 肺血流変化の頻度が高い.このことも考慮し狭窄病変 のポイントを低くした.合計満点で6点となることに
なる.
今回の結果から,予想通りこのPPの値が高値なほ ど心内修復術後の良好な成績が得られた.またこの PPの値が低値なほど手術成績は不良であった.
具体的な数値で検討してみると,PP値が4.5をこえ る症例はRVP/LVP<0.7となり良好な結果が得ら れ,また3.5未満の症例は,全例B群であり手術適応に は慎重を要すると思われた.この3.5という値は6点満 点の約60%に相当する.このPPはUFを前提とし,そ れを考慮したものであるから,おおまかな表現が許さ れるなら,肺動脈の60%以上が良好にUFできれぽ,
なんとか心内修復術を行うことが出来,また60%に達 しそうもなければ,心内修復術は慎重にならざるを得 ないということになろう.また逆に80%以上が良好に UFできれば心内修復術後の予後は良好と考えられ る.徳庵らの報告はUF例ではなく治療方針は異なる が,結果的に中心肺動脈と接続する肺区域が19のうち 13(68%)以上のものはRastelli術後生存し得た.こ れらのことからも今回のPP値3.5という値は手術適 応の限界として妥当なものと考えられる.
以上からPPは手術予後に対するよい指標に成り得 ると思われるが,より多くの症例数を積んだ検討,ま た今回の分類が,UF及び内修復術によりどの様に変 化していくか等の検討が必要である.また各分類につ いての配点についても検討の必要はあろう.それに よってより明らかな手術適応を確立したい.
今回の研究では乳児症例は含まれなかったが,乳児 期に肺血流増加等で問題のある例もあり,その点に関
しても今後の検討を要すると思われる.
結 論
VSD, PA, MAPCA 23例に対しUF前の血管造影 を基に肺動脈の評価を行った.肺を6葉にわけ各々を 1.無,低形成,II.狭窄, III. complex, IV.正常分 枝,に分類し,1=O,II=0.3, III=0.5, IV=1点 を配しその総和をPPとした.このPPが高値な程心 内修復術の成績が良好で,低値な程不良であった.PP が3.5未満の症例は心内修復術は慎重であるべきと思 われた.以上からPPは心内修復術の適応決定上のよ い指標になり得ると考えられる.
稿を終えるに当たり御指導御校閲を賜りました門間和夫 主任教授に深謝致します.また御指導御助言を頂きました 循環器小児科中沢 誠教授,循環器小児外科今井康晴教授 に深謝致します.
文 献
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ANew Index of Pulmonary Vasculature in Pulmonary Atresia with Ventricular Septal Defect and Major Aorto・Pulmonaly Collateral Arteries
Hiromichi Nakajima
Department of Pediatric Cardiology, The Heart Institute of Japan,
Tokyo Women s Medical College
We attempted to establish a new index and to evaluate its usefulness in estimating pulmonary arteries in patients with pulmonary atresia(PA), ventricular septal defect(VSD), and major aorto・
pulmonary collateral arteries(MAPCA).
Subjects of this study were twenty・three patients with this complex who underwent intracardiac repair, and pulmonary angiograms before unifocalization were available for all. These angiograms were obtained when the patients mean age was 6.6 years, which was six months before the first unifocalization. These children had intracardiac repair at 8.7 years. We divided them into two groups:
Group A included patients whose postoperative right to left ventricular systolic pressure ratio
(RVP/LVP)was under 1.0, all of whom survived(19 cases). Group B included patients whose RVP/LVP was over 1.O and needed palliative Rastelli procedure(2 cases)or died after operation(2 cases).
We divided the whole lung into six pulmonary lobes in order to estimate the size pulmonary arteries. Although the left lung has two lobes, we defined a lingular segment as a middle lobe in this investigation. Each of the lobar arteries was classified as I=aplasia or hypoplasia, II=stenosis in a lobe,
III=complex(double supply, remarkable vascular dilatation or winding), or rV=normal branching. It was ignored if the origin of these lobar arteries was a central pulmonary artery or a MAPCA. We defined hypoplasia as the condition when the maximum diameter of the lobar artery was under 2 mm, and stenosis when the artery was less than one・third of it s maximum diameter. According to this classification, the following points were assigned;zero to class I,0.3 to class II, O.5 to class III, and 1 point to class IV. The sum of these score for all six lobes was named as Pulmonary Points(PP).
The values of PP between groups A and B were a statistically significant. Group B, with a poor prognosis had a lower PP than group A. There was a statistical negative correlation between RVP/LVP and PP(r=−0.859). We conclude that PP is of value in predicting the postoperative prognosis of VSD,
PA and MAPCA. In cases with PP over 4.5, a good result can be predicted. In contrast, intracardiac repair is probably not indicated in those cases with PP under 3.5.