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酸素による動脈管収縮の機序 (平成4年8月19日受付)

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日本小児循環器学会雑誌 8巻5号 666〜674頁(1993年)

酸素による動脈管収縮の機序

(平成4年8月19日受付)

(平成5年3月8日受理)

東京女子医大付属日本心臓血圧研究所循環器小児科

顧   虹  中西 敏雄  門間 和夫

key words:動脈管,酸素,細胞内カルシウム

      要  旨

 酸素による動脈管の収縮と細胞内カルシウム(Ca)濃度の関係を調べた.胎生30日の胎仔家兎から動

脈管を摘出し,その収縮張力を測定した.動脈管にCa感受性蛍光色素を負荷し,細胞内Ca濃度の変化 を推定した.酸素投与に伴い動脈管は収縮し,細胞内Ca濃度は上昇した.細胞外Caが無いときは酸素

による動脈管の収縮は起こらなかった.また細胞外カリウム(K)濃度を増やし細胞膜の脱分極を起こし

動脈管を収縮させた.Caチャンネルの拮抗薬は酸素とKによる収縮に対してほぼ同様の抑制をもたら

した.自家蛍光より推定した動脈管組織ATP濃度は低酸素状態で低く,酸素投与で上昇した. ATP感

受性Kチャネル開放(過分極)の遮断薬glybenclamideは低酸素下で動脈管収縮を起こした.これらの 結果は低酸素は動脈管のATPを減らし膜を過分極させ動脈管を弛緩させる,酸素はATPを増加させ 膜を脱分極させCaチャンネルを開き細胞外から内へのCa流入を増加させ収縮をおこすことを示唆す

る.

 胎児期には動脈管は開存しており出生後まもなく閉 じる.出生後の動脈管閉鎖の機序は呼吸開始による血 液酸素分圧の増加によるものとされている1).単離し た動脈管に対する酸素の収縮作用はすでに多くの研究 によって示されているが,その機序はい1まだはっきり しない1)一 3).RouletとCoburn }は酸素は動脈管組織の 膜電位を脱分極させることを示し,これが動脈管収縮

と関係があるのではと推測している.一方血管平滑筋 の収縮は心臓と同じく細胞内Caによって媒介されて いることが示されてきた5)一一8}.しかし細胞内Ca濃度と 動脈管の収縮の関係は不明である.本研究の目的は動 脈管における酸素の細胞内Caに対する影響を調べ,

酸素による動脈管収縮の機序について研究することで

ある.

      方  法

 胎仔家兎から摘出した動脈管をRing状に切断した 標本を使い実験を行った.胎生30日(満期は31日)の 妊娠家兎を帝王切開し,胎仔を分娩させた.娩出直後

別刷請求先:(〒162)東京都新宿区河田町8−1      東京女子医科大学心研小児科

       中西 敏雄

にウサギ胎仔の胸腔から心臓一大血管組織を切り取っ た.この大動脈一動脈管一肺動脈の組織をroom airで 飽和したHepes液の中に置き,実体顕微鏡を使い動脈 管周辺の軟部組織を取り除き動脈管を大動脈,肺動脈 から切断した.

 動脈管の標本を顕微鏡台の上に置いたtissue bath の中に置いた8).2本のほそいステンレス針金(径0.22 mm)で作製したフックを動脈管の内腔にいれ,一方は tissue bathの壁に付けたフックにかけ,もう一方の フックは張力トランスジューサにかけた.2本のフッ クにかかる動脈管短軸方向の力を測定した.

 溶液:コントロールの灌流液(Krebs−Henseleit液,

K−H液と略)の組成はNaCl,118mM;KCI,5mM;

CaC12,1.5mM;glucose,6mM;Mg Cl2,1mM;

NaHCO3,24mM;NaH2PO4,0.436mMである.こ

の液は95%N2−5%CO2でガス化し, pHは7.4であっ た.酸素投与の実験では95%02−5%CO2で飽和した液

を用いた.コントP一ル液のPO,は22〜25mmHgで

酸素化溶液のPO2は660〜690mmHgであった. PCO2 は両液とも35〜42mmHgであった.

 NiCl2はK−H液には不可溶であるためHepes液を

(2)

日小循誌 8(5),1993

用いた.Hepes液の組成はNaCl,142mM;KC1,5

mM;CaCl2,1.5mM;glucose,6mM;MgCl2,1mM;

Hepes,5mM(1M NaOHでpH 7.4)である.この Hepes液に0.5mM〜2mMのNiCl2を加えた, Hepes 液は100%N2(コントロール)または100%02で飽和し た.PO2はそれぞれ23と790〜810mmHgであった.

 動脈管を収縮させるため高KCI液(50mMKCl)を 時に用いたが,その際にはK・H液また}lepes液の

NaClをKCIと交換し,最終的にKCIの濃度を50mM

となるようにした.Caを含まない液で時に実験した が,その際にはCaC12を1mM EGTAで置換した.

Verapamil, diltiazem, noradrenalineを用いた実験で はそれら薬物を直接にK−H液に加えた.Cromakalim

(Smith Kline Beecham社製)とglibenclamide

(Hoechst社製)はdimethylsulfoxide(DMSO)に溶

かした.

 Fura−2/AM, fura−2は同仁化学より, dimethylsul・

foxide(DMSO)はEastman Kodakより購入した.

Fura−2/AM, fura−2はDMSOにlmMに溶解し少量に 分け一80℃に保存した.Cremophor EL(Sigma)は 25%にうすめ室温においた.

 標本:動脈管標本を倒立顕微鏡(Nikon, TMD)上 のバスの上にのせ固定し,バスをローラーポンプを用 いて3ml/分の流量で灌流した.液温は37℃に維持し

た.

 蛍光測定:蛍光色素のAM体はacetoxymethyles−

terで細胞内へ入るが細胞内esteraseで分解されfree formとなり細胞外へでにくくなる. Ca感受性蛍光色

素fura−2のエステルfura・2/AMの1mM液を100μ1に 25%cremophor 25μ1を加え撹拝後,20mlのHepes液 に溶解した9).その液に動脈管を3〜5時間留置する ことでfura・2を細胞内にloadした.その後60分蛍光色 素を含まない液で灌流し細胞外の蛍光色素を流しさっ

た.

 蛍光測定装置はSpex社製(New Jersey, USA,輸 入元,西進商事)のものをもちいた.450wのキセノン ランプを光源とし,モノクPメーターで紫外線をとり だした.回転するChopperで2つの波長の励起光を交 互に顕微鏡にいれた(図1),動脈管表面に340と380nm の励起光をあて,蛍光を505nmのバンドパスフィル ターを通し,光電子倍増管(浜松フォトニクスR928)

で測定することで細胞内Ca濃度を測定した.測定は 1秒間,5秒おきに行った.全ての実験でfura−2を loadしない動脈管を用意し,fura・2のloadと同じ条件 下において自家蛍光を測定し,それをひいて蛍光比を

もとめた.

 比=(340nmでの試料の蛍光一340nmの自家蛍光)/

380nmの蛍光一380nmの自家蛍光).

 実験計画

 Ring状動脈管を37℃,低酸素条件下のK−H液ある いはHepes液の中で30分安定させた.この時間内に静 止張力を300〜600mg(平均400mg)に調整した.細胞 内Ca濃度測定の実験では,コントロール低酸素液か ら酸素化液に変え蛍光の変化をみた.細胞内Ca測定 なしの実験では,動脈管の収縮は以下の三つの方法で 誘発した.1)02,2)50mM KCI,3)10−5M nora・

       Transducer

s  二蕊劃「←s°1 °n

Xenon lamp Mono−

chrometer

【一

日艦m)

Pho.to−

multiplier tube

       lnverted microscope

図1 実験装置,キセノンランプからの光はモノクロメーターを通過し紫外光となり,

 動脈管にあたる.動脈管からの蛍光は顕微鏡に入り,光電子倍増管で感知される.

(3)

668−(80)

drenalineである,そしてCa−free液, verapamil, dilti・

azem, NiCl2, ryanodine, cromakalimおよびgliben−

clamideが動脈管収縮に及ぼす影響について測定し た.各々の動脈管の標本で通常ただ2回の収縮を起こ

した.1回目は上記の薬物なしに起こさせ,2回目は 薬物の存在下で動脈管収縮を起こさせた.2回目の収 縮の張力は1回目の収縮力の%であらわした.予備実 験では薬物なしの連続した2回の収縮力を比べた場 合,2回目の収縮力は1回目の収縮力の97±3%であ

り,2回の収縮力の間に有意差はなかった.

 統計

 数値は平均±標準誤差で表した.平均値の差は Student s・t−testを使って検定し,パーセント変化の差 はnonparametric法(Wilcoxon s rank sum test)を 使い検定し,p<0.05の場合を有意とした1°)11).

      結  果  1.細胞内Ca濃度と動脈管収縮

 外液中のPO2の増加は動脈管の収縮をもたらした

日本小児循環器学会雑誌 第8巻 第5号

(表1).PO2の増加に伴って340nm励起蛍光強度は増 加し,380nm励起蛍光強度は変化しなかった(図2).

その結果蛍光比(340/380)は2.67±0.26から3.02±

0.32(n=21)まで有意に増加し細胞内Ca濃度の増加 を示した.細胞内Ca濃度の増加に伴って動脈管収縮 張力の増加も認められた(図3).ある動脈管に対し第

1回目の酸素投与から動脈管収縮開始までは5−一 15分 程度の時間を要することがあった.2回目の酸素投与 ではすぐ収縮が起こった.どの場合でも動脈管の収縮 は細胞内Ca濃度の上昇を伴っていた.

 組織中の還元型ピリヂンヌクレオチドは蛍光を発す る.PO2の変化は動脈管の組織の酸化還元状態の変化

4      3

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    02

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表1 動脈管の収縮力

RT

(9)

02−induced    DT

   (9)

KCI−induced    DT

   (9)

Noradrenaline・

 induced DT

     (9)

0.40±0.02

(n=93)

1.77±0.75

(n=61)

0.98±0.11

(n=29)

1.03±0.12  (n=3)

RT:静止張力, DT:発生張力.酸素による発生張力, K による発生張力,ノルアドレナリンによる発生張力の間に は有意差はなかった.

2

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380nm

  0        10        20        30

         Time(min)

図2 fura−2の蛍光に対する酸素投与の影響.低酸素  液から酸素化した液への変換にともなって,340nm  励起の蛍光は増加し,380nm励起の蛍光は不変で  あった.低酸素液へ戻すと340nm励起の蛍光は元の  レベルへもどった.

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    0        10       20       30       Time(min)

図3 fura−2の蛍光比(340/380)に対する酸素投与の  影響.低酸素液から酸素化した液への変換にとも  なって,蛍光比は増加した,低酸素液へ戻すと蛍光  比は元のレベルへもどった.蛍光比の増加に伴い動  脈管は収縮した.

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図4 動脈管組織の自家蛍光に対する酸素投与の影  響.酸素投与にともない340nmの蛍光は減少し,380  nmの蛍光は不変であった.酸素投与で自家蛍光成  分(NADHなど)が減少することを示す.

(4)

平成5年5月20日

を通じて自家蛍光の強度を変化させる可能性があ る13}.コントP一ル状態で340nmと380nm励起の動脈 管自家蛍光の強度はfura−2を負荷した動脈管の蛍光強 度の20±2%と27+3%であった.酸素投与で340nm 励起の自家蛍光強度は平均8%減少し,380nm励起の 自家蛍光強度は変化しなかった(図4),酸素投与に伴 う自家蛍光の減少は,fura・2を用いた蛍光比の計算値 を下げる方向に働くが,実際には比を2%下げるにと

どまり有意の影響はなかった.

 次に細胞外Caのない時の動脈管収縮について調べ た.細胞外Caのない時には0,による細胞内Caの増 加はなく,また動脈管の収縮もみられなかった(n=7)

(図5).

 2.動脈管収縮の機序

 最近の血管収縮に関する研究では,細胞外から細胞 膜を通り細胞内へのCa流入には以下の3つの経路が あるとされている.1)膜電位依存性Ca+チャソネル,

Ca free solution

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      = 図5 Caを含まない液での酸素による動脈管収縮.細  胞外液にCaがないと細胞内Caの上昇はなく,動脈  管収縮はおこらない,

2)受容体依存性Caチャンネル,3)Na−Ca交換機構 である14)15)17).酸素投与に伴うCa増加の機序に関し,

それら3つの経路の関与について検討した.

 1)膜電位依存性Ca+チャンネルの関与について  細胞外K濃度が高いと膜電位を脱分極させ,膜電位 依存性Caチャンネルを刺激する.細胞外K濃度を5

mMから50mMまで増やすと動脈管の収縮を起こし

た(表1,図6).Ca拮抗薬verapamil, diltiazem,

Niは膜電位依存性Caチャンネルを抑制するので, Ca 拮抗薬の,KCIによる動脈管収縮と02による動脈管収 縮にあたえる影響について調べた.verapamil, dilti−

azem, NiはKCIにて起こした収縮も,02にて起こし た収縮と同程度に抑制した(図6,7「8).これらの 結果は02が膜電位依存性Caチャンネルを介して動 脈管収縮をもたらすことを示唆する.

 2)受容体依存性Caチャンネルの関与について  Noradrenalineは受容体作動チャンネルを刺激し,

細胞内貯蔵部位からCa放出を刺激し細胞内Caを増 加させるユ6).Noradrenaline(10 s)は動脈管の収縮を 起こしたが,NiCl、(lmM)はnoradrenalineで起こし た収縮をコントロールの28±2%(n=4)まで抑えた.

この阻害の程度は02による収縮(11±4%,n=8)と KCIによる収縮(16±2%, n=8)への影響より小さ

かった.このことは02やKCIによる収縮とnora−

drenalineによる収縮の機序は少なくとも部分的には 違うことを示唆する.

 3)Na−Ca交換機構の関与について

 0、がNa−Ca交換機構を刺激し,細胞内Ca濃度を増 加する可能性についてBaCl2を使って実験した. Ba は電位依存性Caチャンネルを通り細胞内に入るが,

A.

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 5min 図6 コントロール(A)とCa拮抗剤ベラバミルの存  在下(B)でのKCIによる動脈管収縮.ベラバミル  はKCIによる動脈管収縮を有意に低下させた.

A.

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         5min 02

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      5min 図7 コントP一ル(A)とCa拮抗剤ベラバミルの存  在下(B)での酸素による動脈管収縮.ベラバミルは  酸素による動脈管収縮を有意に低下させた.

(5)

670−(82) 日本小児循環器学会雑誌 第8巻 第5号

2芒8ヒo寧︶●︒﹂a●§偏と50 100

go 80 70 60 50 30 20 to

■  02−mduced contraeuon

[Z】 KCI−induced contraCUon

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 Verapamil Verapa㎝l Verapamil   [hltiazem   O.5 mM Ni l mM Ni 2mM N1  (10−6M) (1()−5 M) (10−5M)    (1()−5 M)

      +O.5mM Ni

図8 酸素による収縮とKCIによる収縮に対する様々なCa拮抗剤の影響. Ca拮抗  剤は両者の動脈管収縮をほぼ同様に低下させた.

Na・Ca交換機構は介しない17).またBaはKチャンネ ル開放を阻害する17).Baを含む液(Caなし)を使用 した実験では,低酸素液下で既にコントロールの81±

5%の収縮が見られ,酸素投与に伴いさらにコソト ロールの114±7%にまで収縮がみられた(n=7).低 酸素下での収縮はKチャソネル阻害によるものであ ろう.Ba存在下で酸素による収縮がおこった事実は,

酸素による収縮はNa・Ca交換機構を通ってCaの流 入を増加させる結果ではないことを示す。

 4)細胞内小器官からのCa放出の関与について  Ryanodineは筋小胞体によるCaの摂取と放出を阻 害する18)19).酸素により細胞膜を通り細胞内へのCa 流入が増加することを示したが,Ca流入の増加は筋小 胞体からのCaの放出を起こす可能性がある.酸素に よる動脈管収縮における細胞内Ca貯臓部位の役割に ついてRyanodineを使って測定した. Ryanodineは 酸素による収縮をコソトロールの83±10%にしか阻害 しなかった(n=12)(図9).このことは筋小胞体の,

酸素による収縮における役割は小さいことを示す.

 5)ATP感受性Kチャンネルの関与について  細胞膜電位は1部はカリウムコソダクタンスにより 調節されており,PO、の変化はKチャンネルの開閉を 通じて膜電位を変える可能性がある.この可能性を検 討するために,ATP感受性Kチャンネルが開くのを 阻害する薬物Glybenclamideを用いた21)22). Glyben−

clamide(4μM)は低酸素液中の動脈管の収縮を起こし た(発生張力=1.2±0.3g, n=5g)(図10).この薬は

     ト     2 1 0

A

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B

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02

Ryanodine

5min

  02

  3  2   1

  0      5min

図9 コントロール(A)とリアノヂンの存在下(B)

 での酸素による動脈管収縮.リアノヂンは筋小胞体  によるCaとりこみと放出を阻害する薬物である.

 リアノヂンは動脈管収縮にほとんど影響を及ぼさな  かった.

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酸素で収縮した動脈管にはほとんど作用しなかった.

このデータは低酸素状態がATP感受性Kチャンネ

ルを開き動脈管平滑筋を弛緩させるという仮説と一致

する.

 CromakalimはATP感受性Kチャンネルを開き,

血管拡張を起こす21).Cromakalin(4μM)は低酸素溶 液中の動脈管の静止張力を変えなかったが,酸素によ

り生じた収縮を完全に弛緩した(図11).

      考  案  1.細胞内Ca濃度

 一般に血管平滑筋細胞の収縮,弛緩の調節の一部は

(6)

平成5年5月20日

A. N2 Gtybenclamide(4pM)

2

0

9

Φo﹂o﹂

B. Glybenclamide(4pM)

5min

02

ii言圭≡「至

      縮

図10ATP感受性Kチャンネルの開放を阻害する薬  物glybenclamideの動脈管収縮に対する影響.低酸  素の状態でglybenclamideは動脈管の収縮をもた  らした(A).酸素で収縮した動脈管に対してはこの  薬物はほとんど影響がなかった.

A.N, cromata1}m (4pM》

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 図11ATP感受性Kチャンネルを開放させる

  cromakalimの動脈管収縮に対する影…響. Croma−

  kalimは低酸素状態では動脈管収縮に影響がなかっ   たが(A),酸素で収縮した動脈管を完全に弛緩させ   た(B).

細胞内Ca濃度により調節されている.本研究は酸素 によりひき起こされる動脈管の収縮も細胞内Ca濃度 の増加によるものであることをはじめて証明した.ま た細胞外Caなしには細胞内Ca増加や動脈管の収縮 は起こらないことから,酸素による動脈管の収縮には 細胞外から内へのCa流入が必要であることを示し

た.

 第1回目の酸素投与から動脈管収縮開始までは5

15分程度の時間を要し,2回目の酸素投与ではすぐ 収縮が起こった.このことはFay3)も記載しているが,

その機序は不明である.またFay3)はモルモットの動 脈管が痙攣様にごきざみに収縮,弛緩しながら収縮し てゆくのを記録している.今回の研究で家兎動脈管で も同様の収縮様式を示すものもあったがむしろ例外的

で,大部分はスムースな収縮を示した.

 最近の血管収縮に関する研究では,細胞外から細胞 膜を通り細胞内へのCa流入には以下の3つの経路が あるとされている.1)膜電位依存性Ca+チャンネル,

2)受容体依存性Caチャンネル,3)Na−Ca交換機i構 である1 )15)25}.酸素投与に伴うCa増加の機序に関し,

それら3つの経路の関与について検討した.

 2.酸素による細胞内Ca増加の機序

 細胞外K濃度が高いと膜電位を脱分極させ,膜電位 依存性Caチャンネルを刺激する.本研究ではver−

apamil, diltiazem, Niは, KClにて起こした収縮も,

02にて起こした収縮も同程度に抑制した.これらの結 果は02が膜電位依存性Caチャンネルを介して動脈 管収縮をもたらすという仮説を支持する.

 Noradrenalineは受容体依存性チャソネルを刺激 し,細胞内貯臓部位からCa放出を刺激し細胞内Caを

増加させる16).

 Noradrenaline(10−5M)は動脈管の収縮を起こし,

NiCl2(1mM)はnoradrenalineで起こした収縮をコン トロールの28%まで抑えた.この阻害の程度は02によ る収縮とKCIによる収縮に対する影響より小さかっ た.このことは02による収縮とnoradrenalineによる 収縮の機序は少なくとも部分的には違うことを示唆し た.この結果はKovalcik2)とOberhansli−Weissら23)

の報告と一致している.彼らの報告ではアルファ遮断 薬は酸素による動脈管の収縮を阻害しなかった.これ らの結果は,酸素はアルファ受容体を刺激して細胞内 Caの増加をもたらすのではないことを示唆する.

 本研究ではまた,02がNa−Ca交換機構を刺激し,細 胞内Ca濃度を増加する可能性についてBaCl2を使っ て実験した.Baは電位依存性Caチャンネルを通り細 胞内に入るが,Na・Ca交換機構は介しない17}. Baを含 む液(Caなし)を使用した実験では,酸素が動脈管収 縮を起こした.この事実は,酸素による収縮はNa−Ca 交換機構を通ってCaの流入を増加させる結果ではな いことを示唆する.

 酸素により細胞膜を通り細胞内へのCa流入が増加 することを示したが,Ca流入の増加は筋小胞体からの Caの放出を起こす可能性がある.酸素による動脈管収

縮における細胞内Ca貯臓部位の役割について

Ryanodineを使って調べたが19), Ryanodineは酸素に よる収縮をほとんど阻害しなかった.このことは,酸 素による収縮における筋小胞体の役割は小さいことを 示す.我々の以前の研究では胸部大動脈の収縮を

(7)

672−(84)

Ryanodineが成獣ではコントロールの57%,新生仔で は75%,27日目の胎仔では97%に抑制した24).30日目の 胎仔を使った本研究でRyanodineは酸素による収縮 をコントロールの80%にまで抑制した.これらのデー タは動脈管における筋小胞体の発達が胎仔大動脈と同 様であることを示唆する.

 以上の結果より,酸素は膜を脱分極させCaチャソ ネルを開き細胞外から内へのCa流入を増加させ収縮 をおこす可能性が高い.

 3.酸素による膜電位変化の機序

 RouletとCoburn4)は酸素が動脈管膜電位を脱分極 させることを示した.Ca拮抗薬を用いた本研究の結果 は,酸素による動脈管収縮は細胞膜の脱分極によって ひき起こされるという仮説を支持するものであった.

膜電位e# 一一部はKコソダクタソスにより制御されて いるので,酸素投与により組織ATP濃度が変われぽ ATP感受性Kチャンネルの開閉によって膜電位も変 化する可能性がある.心筋において低酸素状態は組織

のATPレベルを低下さぜ, ATP依存性Kチャンネ

ルを開くことが示されている2°).従って低酸素状態で 動脈管が弛緩するのはKチャソネルが開き膜電位が 過分極の方向へ向くためかもしれない.この可能性に ついてATP一依存性Kチャソネルを開くのを阻害す る薬glybenclamideを用い実験した21)22).本研究では glybenclamideは低酸素とコントロール状態で動脈管 の収縮を起こした.この結果は低酸素状態で動脈管が 弛緩するのは膜電位が過分極しているためであるとい

う仮説を支持する.

 組織のATP濃度は本研究では直接には測定しな

かったが,還元型ピリヂソヌクレオチド(還元型ニコ チソアミドアデニソヂヌクレオチドNADHなど)濃 度の相対値を自家蛍光から推定した13).340nm付近の

自家蛍光はほとんどNADHにより発せられる.組織 の酸化的リン酸化によるATP産生が低下すると組織

のNADHの濃度は増加するのでNADHによる自家

蛍光は組織のエネルギー産生の状態をよく反映す る26).本研究では酸素化灌流液の投与に伴って340nm の自家蛍光は減少し,NADH濃度の減少を示した.こ のことはコントロールの状態では低酸素の状態で酸化 的リン酸化の活性は低下していて,ATP産生が低下

していることを示している.Fayら3}は動脈管の収縮 には酸化的リン酸化によるATP産生が必須であるこ とをしめしたが,本研究の結果とよく一致している.

 CromakalimはATP感受性Kチャンネルを開き,

日本小児循環器学会雑誌 第8巻 第5号

膜電位を過分極させ血管拡張を促す21).本研究では cromakalimは酸素による動脈管収縮を完全に抑制し た.酸素により脱分極がおこり動脈管収縮が起こって,

cromakalimによりその脱分極がとれ動脈管弛緩が起 こったと考えられる.

 以上をまとめると,低酸素は動脈管のATPを減ら し膜を過分極させ動脈管を弛緩させる,酸素はATP を増加させ膜を脱分極させCaチャンネルを開き細胞 外から内へのCa流入を増加させ収縮をおこすという ことになる.

 動脈管以外の他の血管でも酸素は同様の働きをする のであろうか? 一般に酸素は体血管を収縮させ,肺 血管を拡張させる.動脈管とは逆に肺血管細胞膜電位 は低酸素で脱分極することが示されているが,体血管 で酸素の膜電位にあたえる影響は未だ調べられていな い.体血管は動脈管ほど収縮,弛緩が極端ではなく,

体血管における酸素の収縮作用の機序に関してはいま だ解明されていないのが現状である.

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674−(86) 日本小児循環器学会雑誌 第8巻 第5号

Mechanisms of Oxygen・Induced Contraction of Ductus Arteriosus Isolated

       From the Fetal Rabbit

        Hong Gu, Toshio Nakanishi and Kazuo Momma

Pediatric Cardiology, Heart Institute,of Japan, Tokyo Women s Medical College

   The present study was designed to investigate the effect of oxygen(02)on intracellular Ca concentration([Ca]i) in the ductus arteriosus and the mechanisms for 02−induced ductal contraction.

The force of isometric contraction of the ring of the ductus arteriosus isolated from fetal rabbits at 30 days of gestation(term 31 days)was measured. The ductus arteriosus was loaded with a Ca・sensitive dye fura・2, and[Ca】i was determined from the ratio of fluorescence intensity at 340 and 380 nm excitations. The ductus arteriosus was initially superfused with hypoxic control solutions and contraction was induced by application of oxygenated solutions. The O2・induced contraction of the ductus arteriosus was associated with increases in[Ca]i. The O2−induced contraction of the ductus arteriosis was eliminated in the absence of extracellular Ca. An increase in[K】。 from 5 to 50 mM,

which causes membrane depolarization, induced ductal contraction. The Ca channel blockers,

verapamil, diltiazem, and nickel caused a similar inhibition of O2−induced contraction as well as KCI−induced contraction. In the presence of barium, which enters into the cell across the sarcolemma via the voltage・dependent Ca channels but not via Na−Ca exchangers, in the solution(sero Ca),02 did cause contraction of the ductus arteriosus. The role of intracellular Ca stores in O2・induced ductal contraction was examined using ryanodine, an inhibitor of Ca uptake and release from the sarcoplasmic reticulum. The inhibition of O2・induced contraction by ryanodine was minimal. Infusion of glybenclamide, an inhibitor for opening the ATP−sensitive K channel, caused contraction of the ductus arteriosus in the hypoxic solution. Cromakalim, an opener of ATP・sensitive K channels,

completely relaxed the contraction induced by O2. These data suggest that O2 increases[Ca]i and causes contraction in the ductus arteriosus. Application of O2 may change from anaerobic to aerobic metabolism and depolarize membrane potential by closing the ATP−sensitive K channel,which in turn increases Ca influx via the voltage・dependent Ca channel.

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