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膜様部心室中隔欠損症に合併した大動脈弁逸脱症に

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日本小児循環器学会雑誌 13巻3号 435〜436頁(1997年)

<Editorial Comment>

膜様部心室中隔欠損症に合併した大動脈弁逸脱症に        おける心エコー検査の役割

千葉県こども病院心臓血管外科藤原直

 佐藤論文1)は膜様部VSDに伴う大動脈弁逸脱(AVP)を心エコー検査から分析・検討を加えた論文である.

VSDに伴うAVPはTatsunoらの論文2)以来,肺動脈弁下のVSDが本邦で多い事もあり日本からの研究論文 が比較的多い.これらの論文の多くは心血管造影による診断を基にした議論が主体になっていた.しかしなが

ら,心エコー検査の登場・進歩により他の多くの疾患と同様に,本疾患においても治療体系を変革しつつある.

心エコー検査の特徴は,非侵襲的であるため何度も行える,複数の断面からアプローチできる点にある.また,

従来心血管造影では困難であった新生児期からの経過観察ができ,その成り立ちからの追求も可能になった.

 一方,膜様部VSDに伴うAVPは肺動脈弁下のvSDに比して多くの疑問が残っており,治療体系も十分確 立していないのが現状である.ほとんどの先天「生心疾患で手術適応が明らかになっている今日でも,適応や時 期について迷うことがある疾患の一・つである.

 形態学的には,膜様部VSDのなかでもどのような形態のVSDでAVPが発生するのかが大きな疑問点で ある.手術時に外科医が見る形態は多くは右室側から見たものであり,左室側の形態を観察できることは稀で ある.右室側からは流出路側に伸展した大きなVSDから,逸脱した大動脈弁を含んでも非常に小さいものま で様々で驚かされることがある.また,大動脈造影と左室造影の組み合わせから,全体のイメージを掴むのは なかなか難しい.心エコー検査では心室中隔との位置関係や大動脈弁尖との距離などがつぶさに観察でき,症 例を重ね細かく観察することにより,詳細が明らかになる可能性がある.AVP発生の基となる形態の一つに漏 斗部中隔のmalalignment(MAL)が挙げられる3).東條ら4)は膜様部VSDに合併したAVPの12例全例に MALが認められたと報告しているが, Wuら )のMAL typeのVSD 63例の検討では29%にAVPが認められ たのみとしている.また,膜様部VSDに右室二腔症を合併する事も多いが, Wangら6)はMALのない右室二 腔症でも46%にAVpが認められたと述べており,他の解剖学的要素も複雑に絡み合っており更に検討が必要

である.

 診断の上では,従来の心血管造影で得られた所見と心エコー検査の所見との対比を行う必要がある.最近ま で我々は主に大動脈造影所見からAVPの程度を知り,経過観察を行い,手術適応を決めていた.過去のデー タの蓄積を無駄にしないためだけでなく,お互いの欠点を補う重要な意味があると考えられる.佐藤論文1)でも 比較が行われてはいるが,大動脈造影で弁尖の辺縁の不整や硬さ・軽度の膨らみなどで診断していたAVPが 心エコー検査ではどのように捉えられるのかなど,詳細な所見の比較検討が必要である.

 もう一一つ必要なことは,心エコー検査独自の普遍的な診断基準の確立である.Moriら7)は肺動脈弁下のVSD にてtear−drop typeとbox typeに分け,そのARの発生頻度に差はなかったと報告している.この報告のよ うに右室側に大きく突出した場合はあまり問題にならないが,ごく些細な変化をAVPと診断し経過観察に役 立てるためには,どのような所見をAVPと判断するのか診断基準を明確にすべきである.

 治療の上では,外科治療に関する最近の文献8)}1°)でも,ほとんどがARが進行しない時点での手術治療を強 調しており,手術のタイミングが大きな問題となる.将来のAVPの可能性をなるべく早く予測することとと

もに(形態学的な研究が基礎となる),病変の進行速度を予測することも重要な課題である.これにより適正な タイミングで手術治療に踏み切ることができ,大動脈弁形成術の必要性が減少する.従来,AVPは進行が遅く 乳児期にARが発生することはないと考えられていたが,肺動脈弁下のVSDでは乳児例が報告されており7),

膜様部VSDでも佐藤論文1}では最年少のAVPは5カ月であった.我々の施設でも乳児期にAVPが進行した 3例を報告しており11),心エコー検査がなかった頃にはない知見が出始めている.

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436−(34) 日小循誌 13(3),1997  大動脈弁形成の術式も様々であるが,吊り上げ術と交連形成術を組み合わせたものが主流である12)13}.体外 循環直後の弁形成術の評価に経食道心エコー検査が活用されているが14),遠隔成績の評価にも心エコー検査が 有用である.VSDの閉鎖のみで消失しなかったARや弁形成を行ったが残存した軽度のARなどが,遠隔期に

どのように変化するのか,またその変化の速度はどの程度なのか,気になるところである.弁形成術のdurabil−

ityについては,10年で76%というTorontoからの報告15)や,12年で76%,18年で51%というBostonからの報 告16)がある.術式や手術年代により差が出てくるものと思われ,心エコー検査によるprospectiveな追跡が期 待される.

       文  献

1)佐藤恭子,西  猛,大庭 治:膜様部心室中隔欠損症に合併した大動脈弁逸脱例の検討.日小循誌 1997113:430   −434

2)Tatsuno K, Komo S, Sakakibara S、 et al: Ventricu】ar septal defect with aortic illsuf6ciellcy. Am Heart J   I973;85:13−21

3)藤原 直,黒沢博身,高梨吉則,他:大動脈弁の変形を伴うinfracristal VSDの形態学的研究.日消外会誌 1984;

  20:659

4)東條武彦,城尾邦隆,瀬瀬 顕,他:心臓カテーテル検査による膜様周辺部心室中隔欠損の大動脈弁逸脱,大動脈弁   閉鎖不全合併例の検討.日小循誌 1993;9:436444

5)Wu M, Wallg J, Chang C, et aユ:Implication of anterior septal malalignment isolated ventricular septal   defect. Br Heart J 1995;74二180  185

6)Wang J, Wu M, Chang C, et al:Malalignment−type septal defect in double−chambered right ventricle. Am J   Cardiol 1996;77:839−842

7)Mori K, Matsuoka S. Tatara K, et al:Echocardiographic evaluation of the development of aortic valve   prolapse in supracristal ventricular septal defect. Eur J Pediatr 1995;154:176 181

8)マティソン恵,関口昭彦,守月 理,他:大動脈弁閉鎖不全を伴う心室中隔血損傷の手術.一遠隔期の大動脈弁閉   鎖不全憎悪に影響を及ぼす因子の検討一.口心血外会誌 1990;19:1289−1291

9)梅林雄介,湯田敏行,福田 茂,他:心室中隔欠損症に合併する大動脈弁閉鎖不全の外科治療の検討.胸部外科   1993;46:1〔〕13−1016

]0)Ishikawa S, Morishita Y, Sato Y, et al:Frequency and operativ correction of aortic insu缶ciency associated   with ventricular septal defect. Ann Thorac Surg 1994;57:996 998

11)小出昌秋,松尾浩三,藤原 直,他:乳児期に進行した大動脈弁逸脱を伴う心室中隔欠損症の3例.日胸外会誌   1994;42:794

12)Ilitchcock JF, Suijker WJL, Ksiezycka E, et al:Management of ventricular septal defect with asociated   aortic incompetence、 Ann Thorac Surg 1991;52:70 73

/3)Bonhoeffer P, Fabbrocine M, Lecompte Y, et a]:Infundibular septal defect with severe aortic regurgitation:

  Anew surgical approach. Ann Thorac Surg 1992;53:851−853

14)Tee SDC, Shiota T, Weintraub R, et al:Evaluation of ventricular septal defect by transesophageal echocar・

  diography:Intraoperative assessment. Am IIeart J 1994;127:85 592

15)Trusler FA, Williams WG, Smallhorn JF, et al:Late results after repair of aortic insu/Eciency associated   with ventricular septal defect、 J Thorac Cardiovasc Surg 1992;1031276 281

16)Rhodes LA, Keane JF, Keane JP, et al: Long follovv;−up (to 43 years)of ventricular Septal Defect with audible   aortic regurgitation. Am J Cardiolo 1990;66:340−345

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