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防災影響評価のための極端気象現象の将来変化予測巻頭言

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Academic year: 2021

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(1)

近年,強い降水の発生頻度ならびに降水量極値の記録更新が相次ぎ,防災面からの対策 の見直しの必要性が議論されている。定常な気候状態の元でも,100年に一度の降水など の極値は毎年どこかの地点で更新されるのが本来である。ましてや,現実の気候は非定常 であり,人間活動による地球温暖化のような気候システムにとっての外的要因が加わるこ とで,極端気象現象の極値更新がより頻繁に現れているようだ。全世界平均の年平均気温 で10年あたり0.2℃の気温上昇が今後数十年は避けられないとの評価が

I PCC

(気候変動に 関する政府間パネル)第4次評価報告書でなされており,適応策と緩和策のベストミック スで気候変動のリスクを低減するために,将来の極端気象現象の変化予測とその不確実性 の定量的評価を地域レベルで行う必要がある。

気象庁の観測によると,日本の年平均気温は1898年以降100年あたり,約1.1℃の割合で 上昇してきた。近年の上昇トレンドはより大きく,特に,1990年代以降,高温となる年が 頻繁に現れており,それに伴い,熱帯夜や猛暑日の日数は増え,冬日の日数は減ってい る。日本の年降水量は年々変動が大きく明瞭なトレンドは認められていない。月降水量で も,過去約100年間で異常少雨が有意に増える傾向があるが,異常多雨には明瞭な傾向は 見られていない。ただし1980年代以降は月降水量の変動性が増加している。一方で,日降 水量100mm以上及び200

mm以上の大雨の日数は長期的な増加トレンドがある。さらに最

近の30年間を20世紀初頭の30年間と比べると,日降水量100

mm以上の日数は約1.

2倍に,

日降水量200

mm以上の日数は約1.

4倍に増加するなど,より極端な降水の増加傾向がよ り明瞭となってきている。

これらの気温の変化傾向や強い降水の増加傾向は気候モデルによる温暖化予測と定性的 には一致している。最近の気候モデルの発展と高解像度化により,人間活動に起因する大 気中の温室効果ガス濃度の増加によって,気温・降水量のみでなく,台風や豪雨等の気象 災害に直結する極端な現象に及ぼす影響もある程度予測できるようになってきた。気象庁 気象研究所等は,世界最高解像度の全球20

km格子の超高分解能大気大循環モデルを開発

自然災害科学J.JSNDS28-4281-282(2010

281

防災影響評価のための極端気象 現象の将来変化予測

巻頭言

気象庁気象研究所 気候研究部 部長

鬼 頭 昭 雄

(2)

し,地球シミュレータを用いて,近未来及び21世紀末の気候変化予測計算を行った。この モデルでは,台風も再現できるほか,極端現象をより現実的に再現することが期待でき る。このモデルを用いて行った実験で発生した熱帯低気圧の統計的性質を調べた結果によ ると,世界中の熱帯低気圧の年平均発生数は現在に対し今世紀末では約2割減少する一方 で,非常に強い熱帯低気圧の出現数については増加する傾向があること,さらに熱帯低気 圧の中心付近の最大風速や降水量は増加することが分かった。さらに日本付近を対象領域 として,水平解像度5

kmの雲解像大気モデルでのシミュレーションも行われている。そ

の結果によると,夏期の1時間降水量の99.9パーセンタイル値は近未来(2030年代)で 7%,21世紀末には21%増加することが,SRESA

B

シナリオの下で得られている。ただ し,上記の数字がどの程度確かなのかは分からない。現時点での気候モデルによる「定量 的」な気候予測の信頼性はまだ高いものではなく,この数字にどの程度の不確実性の幅が あるかが不明だからである。

空間詳細な温暖化予測情報のニーズは大きく,日本の場合,都道府県(北海道は支庁)

単位か流域単位の情報が求められている。気候モデルの空間解像度はスーパーコンピュー タの性能向上と共に上がってきたが,このことが即,より空間詳細な温暖化予測情報が得 られることを意味するわけではない。気候モデルは空間格子間隔の数倍の気象現象を表現 するので,空間解像度が上がることで顕わに表現できる現象の空間スケールがより小さく なり,海陸分布や山岳の表現は格子間隔が小さくなることに比例してより良く表現でき る。一方で,ある場所の確率降水量の期待値が将来どう変化するかを評価するためには,

台風や大雨のようにまれに起こる事象が,現在気候ではどこで起こり,将来気候実験では どこで起こるかに大きく依存する。しかしながら,台風の発生・発達・経路の将来変化に ついて気候モデルで精度良く予測することは困難なのである。

確率事象である極端気象現象の変化予測情報を出すにはどうしていけばいいのか。実行 できる気候モデル実験の例数は限られているので,それら有限の実験結果から温暖化情報 を抽出し,確率モデルを利用して極値の統計情報を出し,災害影響評価に用いていくこと になる。また地域的な気候変化の定量的な可能性の幅を議論するためには,複数のモデル を利用したアンサンブル実験も必要である。これらの研究の実施と有効なデータ利用を行 うには気候モデルグループと災害影響評価グループとのダイアローグが有用であり,すで に両者を融合した研究が行われて始めている。

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参照

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