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平成19年3月

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(1)

システム開発 18-F-9

気候モデルと結合した3次元化学輸送モデルによる 予測計算の開発に関するフィージビリティスタディ

報 告 書

―要 旨―

平成19年3月

財 団 法 人 機 械 シ ス テ ム 振 興 協 会 委託先 財団法人 航空機国際共同開発促進基金

この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。

http://keirin.jp

(2)

目 次

はじめに

1 スタディの目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

2 スタディの実施体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3

3 スタディ成果の要約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7

3.1 物質輸送モデルの試作・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 3.1.1 モデル作成の考え方類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 3.1.2 物質輸送モデルの仕様・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 3.1.3 作業内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 3.1,4 気象データの収集・整理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 3.1.5 物質輸送モデルの検証・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25

3.2 境界条件選択機能の試作・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37 3.2.1 試作の内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37 3.2.2 機能の検証・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38

4 スタディの今後の課題及び展開・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42 4.1 スタディの概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42 4.2 今後の課題と展開・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46

[資料編]

参考資料―1 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47 参考資料―2 用語集・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48

(3)

わ が 国 経 済 の 安 定 成 長 へ の 推 進 に あ た り 、 機 械 情 報 産 業 を め ぐ る 経 済 的 、 社 会 的 諸 条 件 は 急 速 な 変 化 を 見 せ て お り 、 社 会 生 活 に お け る 環 境 、 都 市 、 防 災 、 住 宅 、 福 祉 、 教 育 等 、 直 面 す る 問 題 の 解 決 を 図 る た め に は 技 術 開 発 力 の 強 化 に 加 え て 、 多 様 化 、 高 度 化 す る 社 会 的 ニ ー ズ に 適 応 す る 機 械 情 報 シ ス テ ム の 研 究 開 発 が 必 要 で あ り ま す 。

こ の よ う な 社 会 情 勢 の 変 化 に 対 応 す る た め 、 財 団 法 人 機 械 シ ス テ ム 振 興 協 会 で は 、 日 本 自 転 車 振 興 会 か ら 機 械 工 業 振 興 資 金 の 交 付 を 受 け て 、 シ ス テ ム 技 術 開 発 調 査 研 究 事 業 、 シ ス テ ム 開 発 事 業 、 新 機 械 シ ス テ ム 普 及 促 進 事 業 を 実 施 し て お り ま す 。

こ の う ち 、 シ ス テ ム 技 術 開 発 調 査 研 究 事 業 及 び シ ス テ ム 開 発 事 業 に つ い て は 、 当 協 会 に 総 合 シ ス テ ム 調 査 開 発 委 員 会 (委 員 長 : 政 策 研 究 院 リ サ ー チ フ ェ ロ ー 藤 正 巖 氏 ) を 設 置 し 、 同 委 員 会 の ご 指 導 の も と に 推 進 し て お り ま す 。

本 「 気 候 モ デ ル と 結 合 し た 3 次 元 化 学 輸 送 モ デ ル に よ る 予 測 計 算 の 開 発 に 関 す る フ ィ ー ジ ビ リ テ ィ ス タ デ ィ 」 は 、 上 記 事 業 の 一 環 と し て 、 当 協 会 が 財 団 法 人 航 空 機 国 際 共 同 開 発 促 進 基 金 に 委 託 し 、 実 施 し た 成 果 を ま と め た も の で 、 関 係 諸 分 野 の 皆 様 方 の お 役 に 立 て れ ば 幸 い で あ り ま す 。

平 成 1 9 年 3 月

財 団 法 人 機 械 シ ス テ ム 振 興 協 会

(4)

はじめに

財団法人航空機国際共同開発促進基金は、平成18年度研究開発の一つとして、日本自 転車振興会の機械工業振興資金の交付を受けた、財団法人機械システム振興協会からの受 託事業「気候モデルと結合した 3 次元化学輸送モデルによる予測計算の開発に関するフィ ージビリティスタディ」を実施した。本報告書は、その研究開発報告書である。

人間の社会経済活動に伴う大気組成の変動が気候に影響を与える、いわゆる地球温暖化 の問題に対して、京都議定書が発効し、世界規模で地球温暖化防止に取り組む枠組みが作 られ、その活動が本格化している。

地球温暖化の問題とは、大気中の微量化学成分のうち、二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)、

メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、オゾン(O3)等のいわゆる温室効果気体が地表およ び大気からの赤外線放射を吸収するため、その増加に伴って地表付近の気温が上昇するこ とである。

大型精密機器システムにはこのような問題が内在し、特に、その代表である航空機のエ ンジン排気には、二酸化炭素、水蒸気が含まれているので、これらは地球温暖化に影響す る。また、エンジン排気に含まれる窒素酸化物(NOx)は、亜音速機が飛行する高度10 km 程度の対流圏では、大気中の光化学反応によって温室効果気体であるオゾンを生成し、

温暖化を促進させる。

一方、次世代の超高速輸送機と期待される超音速航空機は、高空を飛行する際、エンジ ン排気を直接成層圏(高度20kmほどの高高度)に排出するため、その中の窒素酸化物が オゾン層に著しい影響を与えることが指摘されている。このときの最大の問題点は、成層 圏における窒素酸化物はオゾンを減少させ、太陽からの有害な紫外光に対する防禦が弱ま り、人体に悪影響を与えることである。

このため本スタディでは、これまでの次世代航空機等開発調査(超音速輸送機開発調査)

に係わる環境影響調査、「大型精密機器システムが地球温暖化に及ぼす影響予測の化学輸送 モデル開発に関する調査研究」及び「気候モデルと結合した 3 次元化学輸送モデルによる 予測計算の高精度・高次元化に関する調査研究」において実施してきた技術をベースに、

特に機械システムと深い関係を有する航空機産業が、地球温暖化問題に適確に対応するこ とにより、航空機の国際共同開発の促進に寄与するとともに、機械システムの振興に寄与 することを目的とし、「気候モデルと結合した3次元化学輸送モデルによる予測計算の開発 に関するフィージビリティスタディ」を実施した。

実施に際しては、当基金内に「化学輸送モデル開発調査委員会」を設け、その委員会に おいて開発方針・内容等を確認しつつ、研究開発を実施した。

この研究開発にあたっては、事業の実現と推進にご尽力を賜った経済産業省および日本 自転車振興会ならびに財団法人機械システム振興協会の関係者各位に厚く御礼申し上げま す。

平成19年3月

財団法人 航空機国際共同開発促進基金 会 長 佐々木 元

(5)

1.スタディの目的

人間の社会経済活動に伴う大気組成の変動が気候に影響を与える、いわゆる地球温暖化の 問題に対して、世界的な取り組みが本格化している。地球温暖化の問題とは、大気中の微量 化学成分のうち、二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、

オゾン(O3)等のいわゆる温室効果気体が地表及び大気からの赤外線放射を吸収するため、

その増加に伴って地表付近の気温が上昇することである。近年、この問題の重要性が指摘さ れ、社会的な関心が高まっている。

機械システムの一つである航空機のエンジン排気には二酸化炭素が含まれており、地球温 暖化に影響する。また、エンジン排気に含まれる窒素酸化物(NOx)は、亜音速機が飛行 する高度10km程度の対流圏では、大気中の光化学反応によって温室効果気体であるオゾン を生成し、温暖化を促進させる。

航空機のエンジン排気が環境に与える影響は小さくない。空港周辺の大気質への影響を抑 えるための排出ガスの規制は、1998年に開催された国際民間航空機構(ICAO)の第4回航空 機環境保全委員会(CAEP4)で排出基準が16%強化された後、2004年のCAEP6においても さらに規制が強化された。

また、巡航時の排出ガスについても、大気微量成分や雲の生成を通じて気候変動に影響を 与えることが懸念されることから、規制を設けることがCAEPで検討されている。

(注)ICAO(International Civil Aviation Organization):国際民間航空機構

CAEP(Committee on Aviation Environmental Protection):航空機環境保全委員会

一方、次世代の超高速輸送機と期待される超音速航空機は、高空を飛行する際、エンジン 排気を直接成層圏(高度20kmほどの高い高度)に排出するため、その中の窒素酸化物がオ ゾン層に著しい影響を与えることが指摘されている。このときの最大の問題点は、成層圏に おける窒素酸化物はオゾンを減少させ、太陽からの有害な紫外光に対する防禦が弱まり、人 体に悪影響を与えることである。

このような状況下にあって、エンジン排気が環境に与える影響を正確に予測することが必 須である。現在では、民間航空機の開発・生産は国際共同事業が趨勢であり、今後我が国が 国際共同事業において主体的立場を確保し、戦略的産業である航空機産業の振興、ひいては 機械システムの振興に資するには、航空機の技術開発とともに、航空機が地球温暖化に及ぼ す影響を予測するための世界と対等以上の技術を保有することが必要である。その一つは、

上記問題に対処し得る化学輸送モデルの完成である。

地球温暖化の程度を評価するためには、気候モデル(いわゆる気象予報の数値計算モデル)

が用いられる。気候モデルでは、これら温室効果気体の濃度は既知なものとして外部から与 えるのが普通である。しかし、現実の大気中では、オゾンやメタンなどは光化学反応によっ て生成・消滅し、その反応速度は気温によって変わるため、温暖化が進んだ状態ではその時 の気温によって反応速度を計算し、生成気体成分の濃度を計算する必要がある。

また、これらの温室効果気体の多くは反応時定数が長いため、気候が変わるとそれによっ て濃度分布が変わる可能性もある。これらの効果も含めて温暖化予測を行うためには、大気 中の光化学反応と風による物質輸送を模擬し、各成分ごとの連続の式を解く化学輸送モデル を用いて、気候モデルと結合させた計算を行うことが不可欠である。

(6)

2

ンの緯度・高度分布を予測するモデル)や、公開されているマックス・プランク気象研究所 のMOZART等があるが、成層圏・対流圏の両方を対象とする3次元化学輸送モデルは、世界 的にみて未だ研究段階で、実用化にいたっていない。

以上のような背景に基づき、本スタディの目的と効果は次のとおりである。

(1)対流圏及び成層圏における亜音速航空機と超音速航空機(超高速機)による温室効果気 体の影響を調査し得る化学輸送モデルの開発調査を行う。すなわち、航空機エンジン排気 による対流圏オゾンの増加は、二酸化炭素の増加とは違って、地球上の場所と時間で著し く異なる(航空機が頻繁に飛ぶ高度と経路でオゾンの増加が大きい)ので、それらを正確 に把握できる化学輸送モデルを開発し、オゾン増加量の全地球的分布を計算することが必 要である。

(2)化学輸送モデルの開発調査は、亜音速機の開発に対して次の効果を有する。

・当該モデルにより、航空機が排出する各種物質の環境への具体的影響度を明らかにす ることにより、今後、航空機エンジン排気、及び航空機運用方法に対する環境基準の 設定・改訂にあたって、主導的な役割を果たすことができること。

・現在行われている「環境適応型小型航空機用エンジン開発」を始め、今後開発される エンジン並びに航空機の設計に際して、環境影響度の事前検証に当該モデルによる解 析が有効に活用されること。

(3)将来、超音速航空機(超高速機)の国際共同開発にあたっても、亜音速機とは異なった 高度、運用形態で飛行するため、さらなる評価、環境基準制定が必要となり、本「化学 輸送モデル開発調査」の成果を有効に活用した影響評価が必須である。

(4)化学輸送モデル開発調査では、窒素酸化物等の温室効果気体を含む数10種類の物質の 濃度を精度良く計算できる数値モデルを検討するので、航空機のみならず、機械全般が 排出する物質の影響をも予測可能であり、機械システムの性能向上にも寄与し得る。

以上のことから、本スタディにおける成果は、航空機の国際共同開発において、国際的に 先導的な日本の能力を与え得るものである。

(7)

2.スタディの実施体制

財団法人機械システム振興協会に「総合システム調査開発委員会」を、財団法人航 空機国際共同開発促進基金に「化学輸送モデル開発調査委員会」を設置し、その委員 会において研究開発方針・内容等を確認しつつ、スタディを実施した。

2.1 委員会の構成

委員会のメンバーは、大学2名、国立研究所等3名、航空機関連業界7名の合計1 2名の専門家で構成した。委員長には学会の第1人者である公立大学法人首都大学東 京システムデザイン学部久保田客員教授にご就任頂き、委員会の運営全般にわたり多 大のご教示を賜った。

2.2 調査委員会の実施

計4回の委員会を実施した。

○第1回委員会 平成18年7月5日

1.本スタディの主旨および計画概要の紹介と意見交換 2.委員会の活動計画について

○第2回委員会

平成18年10月3日

1.本スタディに関する情報交換

○第3回委員会

平成18年12月18日

1.本スタディに関する中間報告

〇第4回委員会

平成19年2月13日

1.平成18年度の報告書について 総合システム調査開発委員会

(委員会の編成は4頁に掲載)

化学輸送モデル開発調査委員会

(委員会の編成は5頁に掲載)

財団法人機械システム振興協会 財団法人航空機国際共同開発促進基金 委託

(8)

4

総合システム調査開発委員会委員名簿

( 順 不 同 ・ 敬 称 略 )

委 員 長 政 策 研 究 院 藤 正 巖 リ サ ー チ フ ェ ロ ー

委 員 埼 玉 大 学 太 田 公 廣 地 域 共 同 研 究 セ ン タ ー

教 授

委 員 独 立 行 政 法 人 産 業 技 術 総 合 研 究 所 金 丸 正 剛 エ レ ク ト ロ ニ ク ス 研 究 部 門

副 研 究 部 門 長

委 員 独 立 行 政 法 人 産 業 技 術 総 合 研 究 所 志 村 洋 文 産 学 官 連 携 部 門

コ ー デ ィ ネ ー タ

委 員 東 北 大 学 中 島 一 郎 未 来 科 学 技 術 共 同 研 究 セ ン タ ー

セ ン タ ー 長

委 員 東 京 工 業 大 学 大 学 院 廣 田 薫 総 合 理 工 学 研 究 科

教 授

委 員 東 京 大 学 大 学 院 藤 岡 健 彦 工 学 系 研 究 科

助 教 授

委 員 東 京 大 学 大 学 院 大 和 裕 幸 新 領 域 創 成 科 学 研 究 科

教 授

(9)

「化学輸送モデル開発調査委員会」

平成18年度委員名簿

No. 区 分 氏名(敬称略) 所 属・役 職 備考

1 委員長 久保田 弘敏 公立大学法人首都大学東京システムデザイン学部客員教授

(東京大学名誉教授)

2 小川 利紘 独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 主幹研究員

(東京大学名誉教授)

3 田丸 卓 独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 主任研究員 4 林 茂 独立行政法人 宇宙航空研究開発機構

航空プログラムグループ 環境適応エンジンチーム長 5 津江 光洋 東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻 助教授 6 加茂 圭介 富士重工業(株) 航空宇宙カンパニー

企画管理部 主管

7 高見 光 三菱重工業(株) 名古屋航空宇宙システム製作所 民間機技術部 基礎設計課 主席

8 嶋 英志 川崎重工業(株) 航空宇宙カンパニー 技術本部 研究部 参事

9 廣光 永兆 石川島播磨重工業(株) 航空宇宙事業本部 技術開発センター 要素技術部 燃焼グループ 主査

10 杉浦 重泰 全日本空輸(株) 整備本部 部品計画部 部長

11 末永 民樹 JALアビエーションコンサルタント(株) 主席コンサルタント 12

委 員

吉田 修 (株)日本航空インターナショナル地球環境部 部長 13 和爾 俊樹 経済産業省 製造産業局

航空機武器宇宙産業課 課長補佐 14 柳田 晃 (社) 日本航空宇宙工業会

技術部部長 15

オ ブ ザ ーバー

津田 直士 (財) 日本航空機開発協会

第二企画室 超高速機グループリーダー 16 高岡 武司 (財) 航空機国際共同開発促進基金 常務理事

17 松﨑 博樹 (財) 航空機国際共同開発促進基金 企画調査部長 18 中西 俊仁 (財) 航空機国際共同開発促進基金 企画調査部 部長代理 19

事務局

松園 正 (財) 航空機国際共同開発促進基金 企画調査部 部付

(10)

6 2.3 海外調査

(1)調査目的

本スタディの一環として、米国国立大気研究所並びに、カリフォルニア大学アー ヴァイン校を訪問し、化学輸送モデルの研究者と意見交換を行うことにより、高層 大気研究に関する最新の国際動向や最先端技術の情報を収集し、その成果を本スタ ディに反映させる。

(2)訪問先

米国国立大気研究所:Ko博士

米国カリフォルニア大学アーヴァイン校:Prather教授

(3)期間

平成19年1月29日~2月3日

(11)

3 スタディ成果の要約

3.1 物質輸送モデルの試作

3.1.1 モデル作成の考え方

3次元化学輸送モデル作成の考え方について検討を行い、開発の方向性をまとめた。

航空機は上部対流圏から下部成層圏を飛行するため、そのエンジン排出物は対流圏・成 層圏の両方に拡散する。このエンジン排出物の影響を調査するためには、対流圏(地表か ら高度約10kmまで)及び成層圏(高度約10kmから約50kmまで)の両方を模擬できる モデルでなければならない。

このためには、超音速輸送機開発調査の一環として開発した 2 次元化学輸送モデル(成 層圏モデル)を対流圏に拡張する方法と、公開モデルである対流圏 3 次元化学輸送モデル MOZARTを成層圏に拡張する方法が考えられる。

2次元の成層圏モデルを対流圏に拡張するためには、モデルを3次元化するとともに、対 流圏内の以下の諸過程をモデル内で表現する必要がある。

z 境界層内の鉛直拡散 z 対流による鉛直輸送 z 乾性沈着(地表での消滅)

z 湿性沈着(雲や雨による洗浄効果)

z 地表からの自然/人為的放出量 z 大気中でのNOx発生

一方、MOZARTのような対流圏化学輸送モデルを成層圏に拡張する際に、追加すべきプ ロセスには以下のようなものがある。

z 光解離係数の計算

z 硫酸エァロソル及び極域成層圏雲(PSC)表面での異相反応 z 対流圏・成層圏交換過程

3次元化学輸送モデルの開発にあたっては、これら既存の化学輸送モデルに足りない部分 を、その必要性を見極めながら補いつつ、両者の特徴を取り込んでいくように開発を進め ていく必要がある。

2 次元成層圏モデルをベースにした場合と、3 次元対流圏モデル(MOZART)をベース にした場合について、これらの課題の対処法について検討した(表3.1.1-1参照)。

(12)

8

2次元成層圏モデルをベースとした場合、現状では実装されていない機能を追加していく ことは、MOZARTのコードを参考にするなどしてプログラムを拡張すれば可能である。

しかし、MOZARTをベースとした場合、光解離を含めた化学反応の計算コードを自動生 成してしまうため、光解離係数の計算方法を改変することは著しく困難である。MOZART における光解離係数は、データテーブル(気圧、オゾンのコラム密度、太陽天頂角等の関 数)を参照し、補間することによって求めているので、オゾン密度が大きく変動する成層 圏に適用すると外挿によって計算するケースが発生してしまい、精度の良い計算ができな くなってしまう。

以上のことから、今回開発する 3 次元化学輸送モデルの開発にあたっては、超音速輸送 機開発調査で用いた2 次元化学輸送モデルに対し、対流圏モデルであるMOZART の長所 を取り込む形で開発することとした。

次に、2次元成層圏モデルをベースに3次元化学輸送モデルを開発するにあたっての課題 を抽出し、その困難度と優先度を表3.1.1-2にまとめた。

これらのうち、以下の項目は優先度が最も高く、困難度も高いことから、初年度(平成 18年度)にフィージビリティスタディを実施した。

z モデルの3次元化

z セミラグランジュ法の導入 z 並列計算への対応

z 気象データの収集・整理 z 境界条件の設定機能

これに次いで優先度の高い以下の項目を平成19年度に実施する。

z 対流圏化学反応の追加 z 初期値データの収集・整理 z 境界値データの収集・整理

今年度及び来年度開発するプロトタイプと、本格開発時の 3 次元化学輸送モデルの位置 付けを表3.1.1-3にまとめた。

(13)

表3.1.1-1 モデル作成の方法と課題の困難度

ベースモデル 2次元成層圏モデル MOZART

境界層内の鉛直拡散 ○ -

対流による鉛直輸送 ○ -

乾性沈着 ○ -

湿性沈着 ○ -

地表からの放出量 ○ -

大気中でのNOx発生 ○ -

光解離係数の計算 - ×コードを自動生成するた

め改変が困難

成層圏異相反応の追加 - ○

対流圏・成層圏交換過程 - ○

(-:実装済み、○:可能、×:困難)

表3.1.1-2 3次元化学輸送開発にあたっての課題と困難度及び優先度

項目 困難度 優先度 関連性

モデルの3次元化 中 高

セミラグランジュ法の導入 高 高 輸送過程

並列計算への対応 高 中 輸送過程

対流圏化学反応の追加 中 中 化学反応

境界条件の設定機能 中 中 輸送過程

気象データの収集・整理 低 高 輸送過程

化学反応

初期値データの収集・整理 低 中 化学反応

境界値データの収集・整理 低 中 化学反応

雲の放射影響 中 低 化学反応

乾性沈着過程 中 低 化学反応

湿性沈着過程 中 低 化学反応

積雲対流過程 中 低 輸送過程

境界層過程 中 低 輸送過程

(14)

表3.1.1-3 3次元化学輸送モデル開発計画

IADF 2次元成層圏モデル H18年度プロトタイプ H19年度プロトタイプ 完成モデル

計算領域 緯度:90°N~90°S 高度:0~50km

経度:180°E~180°W 緯度:90°N~90°S 高度:0~50km

経度:180°E~180°W 緯度:90°N~90°S 高度:0~50km

経度:180°E~180°W 緯度:90°N~90°S 高度:0~50km

化学種数 55 1 約80 約80

化学反応 150(成層圏化学中心) なし 約250(成層圏+対流圏) 約250(成層圏+対流圏)

光解離係数 ◎太陽放射強度から直接計算 なし ◎太陽放射強度から直接計算 ◎太陽放射強度から直接計算

積雲対流 × × × ○

境界層 × × × ○

乾性沈着 × ○ ○ ○

雲放射 × × × ○

湿性沈着 × × × ○

気象データ 気候値(残差循環) ECMWF解析データ ECMWF解析データ 任意(前処理により NetCDF 化)

数値解法 反復風上差分 セミラグランジュ法 セミラグランジュ法 セミラグランジュ法

並列化対応 × ○(MPI) ○(MPI) ○(MPI)

初期化 × × × ○

データ同化 × × × ○

(注)下線箇所が当該年度に開発する部分

10

(15)

3.1.2 物質輸送モデルの仕様

(1) プログラムの仕様

3次元物質輸送モデルは、大気中の輸送過程を模擬した計算を行うことで、微量成分の濃 度(体積混合比または数密度)を緯度・経度・気圧(高度に相当)の 3 次元的な分布とし て算出する計算機プログラムである。

① 基本方程式

全球大気中の微量成分の濃度を計算するため、球面座標系における物質の「連続の 式」を用いる。鉛直座標については対数気圧座標系とし、鉛直風速も気圧単位で表示 されたものを用いる。

② 気象データ

ECMWFの全球気象解析データを用いる。

z 水平解像度:2.5゚格子

z 鉛直解像度:15層(1000, 925, 850, 700, 500, 400, 300, 250, 200, 150, 100, 70, 50, 30, 10hPa)

z 時間間隔:12時間ごと

z 気象要素:気温T・水平風速(u, v)・鉛直風速ω

③ 数値解法 数値解法:

z 移流項:セミラグランジュ法 計算格子:

z 経度方向:144個(Δλ=2.5°)

z 緯度方向:72個(Δϕ=2.5°)

z 鉛直方向:15個(地表から30kmまで、Δζ=2km)

z 鉛直座標:対数気圧座標系 z 定義点:レギュラー格子 時間積分:

z 時間増分:30分(実行時に変更可)

z 計算対象期間:気象データがある範囲内で実行時に指定

④ 入力データ

3次元物質輸送モデルの入力データは以下のとおり。

(16)

12

z 初期値ファイル(初期時刻における対象化学種の体積混合比)

z 地表境界値ファイル(地表における対象化学種の体積混合比またはフラック スまたは沈着速度)

z 上端境界値ファイル(大気上端における対象化学種の体積混合比またはフラ ックス)

z パラメータファイル

このうち、パラメータファイルに含まれるデータは以下のとおり。

z 初期時刻・終了時刻・時間増分 z 初期値ファイル名

z 地表境界条件、地表境界値ファイル名 z 上端境界条件、上端境界値ファイル名 z 出力時間間隔

z 出力スイッチ、出力ファイル名

⑤ 出力データ

パラメータファイル中で指定された化学種の体積混合比または数密度(出力スイッ チにより選択)

⑥ 言語

Fortran90を使用する。MPIによる並列化を行う。

今後の拡張性を考慮し、ソースコードを読みやすくする(コメントをつける等)。

(2) 処理アルゴリズム

① 格子点の取り方

緯度、経度ともに2.5°刻みのレギュラー格子とする。但し体積混合比fはセルの中 心で定義する(図3.1.2-1参照)。

対象化学種の体積混合比fの定義点:

経 度 方 向 :1.25°, 3.75°, 6.25°, … 178.75°, 181.25°, … 356.25°, 358.75°の144個(Δλ=2.5°)

緯度方向:-88.75°, -86.25°, … -1.25°, 1.25°, … 86.25°, 88.75°の 72個(Δϕ=2.5°)

鉛直方向:1km, 3km, 5km, … 27km, 29kmの15個

② 物質輸送の計算方法

セミラグランジュ法を用いる。

(17)

③ 境界条件 a) 経度方向

周期境界条件とする。

b) 緯度方向

セミラグランジュ法で極点付近の移流を取り扱う。

c) 高度方向

地表境界、及び上端境界として z 体積混合比の分布を与える。

z フラックスの分布を与える。

z 沈着速度の分布を与える。

のいずれかを選択できるようにする。

(3) 性能

① 計算速度

ヒューレット・パッカード社製ES45にて、対象化学種(1種)の1日分(Δt=20分)

の濃度計算が、CPU時間2分以内に完了すること。

② 精度

全球で初期濃度一定、境界条件も初期状態と同じ濃度で一定の条件における計算で、

誤差1%以下であること。

現実の気体では観測値と比べて妥当な結果が出力されること(計算誤差が観測誤差 の範囲程度であること)。

(4) その他

① 拡張性

今後、大気中の光化学反応を追加して化学輸送モデルに発展させること、積雲対流 による拡散や湿性沈着過程などの諸過程を追加していくこと等を考慮し、拡張性のあ る設計とすること。

② 文書化

ユーザが使用するための利用マニュアル、モデルの拡張・修正時に参照できる設計 書を添付すること。

(18)

14 1

2 Ny

1 2 3 Nx

j

i

90゚S 87.5゚S 85゚S 90゚N 87.5゚N 0゚ 2.5゚E 5゚E 7.5゚E 2.5゚W 0゚

体積混合比fの定義点

図3.1.2-1 レギュラー格子における体積混合比の定義点

(19)

3.1.3 作業内容

(1) 3次元物質輸送モデルの基礎作成

気象データを読み込んで物質の移動だけを模擬し、化学反応を含まない化学種の分布を 算出する3次元物質輸送モデルを作成する。

この3次元物質輸送モデルは、化学種の連続の式(但し生成・消滅項を 0とする)を数 値的に時間積分し、対象化学種の数密度の緯度・経度・高度の 3 次元分布を求めるもので ある。

( ) ( cos ) ( ) 0

cos 1 cos

1 + + =

+

ζ ζ

∂ζ ϕ ∂

∂ϕ

∂ ϕ

∂λ

∂ ϕ

fv e fwe

fu a a

t

f

(3.1.3-1)

(λ,ϕ,ζ):経度・緯度・対数気圧(ζ=Hlog10(p0/p),p0=1000hPa,H=16km)

(u,v,w):風速(

p H dt

w d ζ ω

10

− log

=

=

。ここでωは気圧座標における鉛直風速で

dt

= dp

ω

a:地球の半径

f:対象化学種の体積混合比〔未知変数〕

対象領域は、

緯度:北極~南極

経度:西経180°~東経180°

高度:地表~10hPa面(約30km)

とし、水平(緯度・経度)解像度は2.5°、鉛直解像度は約2kmとする。

入力する気象データとしては、欧州中期気象予報センター(ECMWF)の全球解析デー タを使用することとした。

(2) セミラグランジュ法の導入

(1)節で作成した物質輸送モデルに、セミラグランジュ法を導入した。

セミラグランジュ法は、ある時刻における全格子点上の流体粒子が、それぞれ時間Δt だ け前にどこにいたかをバックワード・トラジェクトリー(流跡線)解析によって算出し、

その位置における化学種の濃度を補間によって求め、それが現時刻の当該格子点に来るま での光化学反応による濃度の時間変化を求めるやり方である。今回開発する物質輸送モデ ルでは化学反応を考慮しないので、時間Δt だけ前の時刻における位置で補間された化学種 の濃度が、そのまま現在の格子点上における濃度の値となる。

トラジェクトリー解析とは、基本的には初期位置(λ0, ϕ0, p0)を通過した気塊の時刻 t における位置を、次の方程式

(20)

16

ϕ λ

cos a

u dt

d =

,

d dt

v a ϕ =

,

dp dt = ω

(3.1.3-2) に風速データ(u, v, ω)を与えて時間積分を行うことにより追跡するものである(図3.1.3-1)。

ここで、λ, ϕはそれぞれ経度及び緯度(rad)、pは気圧(hPa)、またu, vはそれぞれ風速 の東西成分及び南北成分(m/s)、ωは気圧座標における鉛直風速(hPa/s)、aは地球の半径

(m)である。

(3) 並列計算機への対応

3次元化学輸送モデルを現実的な速度で実行させるため、並列計算機に対応できるようモ デルの改訂作業を行った。並列計算手法として、複数のCPUがメモリを共有して処理を並 行実行させる共有メモリ型並列計算機であるHP社製ES45を使用し、OpenMPによる並 列化チューニングを行った。

共有メモリ型並列計算は、分散メモリ型並列計算に比べソースコードの変更が少なく、

メモリの配分などの考慮をしなくてもすむが、多数のCPUによる並列計算には向いていな い。今回は並列化による加速効果を見極めるための試作品として共有メモリ型を選択した。

並列化の検証のため、CO2の濃度について1日分の計算を実施した(時間刻みは20分とし た。その結果、計算時間は以下のようになった。

Real User System

非並列 98.7 97.6 0.8

並列 (NP=1) 118.3 115.9 0.9 並列 (NP=2) 58.7 116.2 0.9 並列 (NP=4) 30.9 117.7 1.3

(単位:秒)

上記の表のうち、Realは計算の開始から終了までにかかったターンアラウンド時間、User がコンピュータの CPU時間であり、並列計算の場合は、使用した CPU それぞれの CPU 時間の合計である(NPはノード数)。これを見ると、並列化した場合のCPU時間の総和は ほとんど変わらないが、ノードを増やすにつれてターンアラウンド時間がほぼ反比例して 減少する結果となった。

(21)

180°

90°S Eq.

90°N

180°

90°W

90°E

10

100

1000

緯度

経度

気圧 (hPa) v = (u,v,ω)

図3.1.3-1 気塊トラジェクトリーのイメージ

(22)

18

3.1.4 気象データの収集・整理

3次元物質輸送モデルの入力として用いる気象データとして、欧州中期気象予報センター

(ECMWF) が 解 析 し 発 表 し て い る 全 球 気 象 解 析 デ ー タ Basic Level III-A Global Atmospheric Data Archive(以下、ECMWF全球気象解析データ)を使用した。

ECMWF全球気象解析データの仕様は以下のとおりである。

水平解像度: 2.5°格子(格子数144×73)

鉛直解像度: 地上+15層 (1000, 925, 850, 700, 500, 400, 300, 250, 200, 150, 100, 70, 50, 30, 10hPa)

気象要素: ジオポテンシャル高度、気温、風速(東西成分、南北成分、鉛直成 分)、相対湿度

時間間隔: 12時間ごと(世界標準時00時、12時)

データ量: 1時刻あたり約2.1Mbyte

データの期間: 1994年1月1日~1994年12月31日

ECMWF 全球気象解析データ及びそのソフトウェアの利用にあたっては、以下の利用条 件がある。

1. 本ソフトウェアの所有権及び著作権は ECMWF が保有する。本ソフトウェアは ECMWF データの利用目的に限り提供されるものであり、他の目的のために利用 してはならない。

2. ECMWF の許可なく、提供されたデータならびにソフトウェアの全部あるいは一 部を、第三者に提供してはならない。

3. データ及びソフトウェアを商用目的で利用してはならない。

4. ECMWF の提供したデータの全部あるいは一部に基づいた記事、論文、ならびに 科学研究の成果を公表する場合は、ECMWF提供データである旨を次の例のよう に 明 示 し な け れ ば な ら な い :”ECMWF 1996. The Description of the ECMWF/WCRP Level III-A Global Atmospheric Data Archive”

5. データならびにソフトウェアの準備及びテストには万全を期しているが、どのよ うな状況の下でもデータが正しいこと、あるいはどのような状況でもソフトウェ アが正しく動作することをECMWFが保証するものではない。本データ及びソフ トウェアの誤りないし欠損、ならびにその利用に基づくいかなる損害や損失に関 しても、ECMWFはその責を負わない。

6. 本データ及びソフトウェアの利用は、データの提供を受けた組織の科学者が同一 のコンピュータにインストールする場合に限る。

7. 本データ及びソフトウェアの提供を受けたものは、すべてのデータ利用者に対し、

(23)

この利用条件を知らせる責任がある。

データは18トラックのIBM3480カートリッジテープにラベルなし(NL)、ブロック長 10560バイトで記録されている。但し、レコード長を示すワード等は含まれていないので、

直接(Direct)アクセスで読み込んだ。1つの論理レコード(21108バイト)は2つのテー プブロックから構成されている。

オリジナルのデータファイルでは 1ケ月分のデータを 1ファイルに収容していたが、そ のままでは扱いにくいので1時刻1ファイルに分割した(フォーマットは変更していない)。

1時刻分のファイルは99のレコード(2,089,692バイト)からなり、1つのレコードには、

1つの気圧面、1つの気象要素のデータが全球分格納されている。

1つの論理レコード(21108バイト)は、世界気象機関(WMO)が各国の気象機関間の データ交換のために定めた書式FM-92 GRIB(GRIdded Binary)に従って構成されている。

GRIB は各種のデータを表現することができるようさまざまなパラメータが指定できるよ うになっている。ECMWF気象解析データの場合、次の5つのセクションから構成されて いる(セクション3(ビットマップセクション)は存在しない)。

z セクション0(8バイト):表示セクション z セクション1(28バイト):製品定義セクション z セクション2(32バイト):格子記述セクション

z セクション4(21036バイト):バイナリデータセクション z セクション5(4バイト):終端セクション

ECMWF 全球気象解析データは圧縮されて保存されているので、読み出す際には復元す る必要がある。そのためには、セクション1の10進スケール値D、セクション4の2進ス ケール値E、基準値 R、及び各格子点の値X(i,j) (1≦i≦144, 1≦j≦73)を用いると、元 のデータQ(i,j)は、

Q(i,j)=(R+X(i,j)×2E)×10-D (3.1.4-1)

によって得ることができる。なお、基準値RはIBM浮動小数点表現となっているため、プ ログラム内で変換する必要がある。

以上のデータの読み出し・変換等については、ECMWF から送付されてきたテープに FORTRAN(一部はC)のプログラムGRIBEXが付属していたので、これを利用した。

ECMWF気象解析データのグリッドは、第1添字が経度(東向き)、第2添字が緯度(南 向き)を表す。データ点は(1,1)から順に東回りにならび、(144,1)は(1,1)の西隣となってお り、2列目はその南隣の列になる。また1列目のデータはすべて北極点の値、73列目のデ ータはすべて南極点の値である(スカラー値は同じ値が入っている。ベクトル値について

(24)

20 は各子午線を基準軸に取った値に変換されている)。

上記の方法で読み取ったECMWF気象解析データのサンプルを図3.1.4-1~図3.1.4-7に 示す。

(25)

図3.1.4-1 1994年3月21日0時の250hPa面におけるジオポテンシャル高度[単位:m]

図3.1.4-2 1994年3月21日0時の250hPa面における気温[単位:K]

(26)

22

図3.1.4-3 1994年3月21日0時の250hPa面における東西風速[単位:m・s-1

図3.1.4-4 1994年3月21日0時の250hPa面における南北風速[単位:m・s-1

(27)

図3.1.4-5 1994年3月21日0時の250hPa面における風速ベクトル[単位:m・s-1

図3.1.4-6 1994年3月21日0時の250hPa面における鉛直風速[単位:m・s-1

(28)

24

図3.1.4-7 1994年3月21日0時の250hPa面における相対湿度[単位:%]

(29)

3.1.5 物質輸送モデルの検証

作成したモデルを用いて、化学反応の無視できる化学種について計算を実施し、計算が 発散することはないか、数値拡散を起こすことはないか、不自然な分布にならないかにつ いて確認した。さらに、計算精度を確認するため、現実の化学種について計算を実施した。

(1) 基本的な輸送計算

全球で初期濃度一定、境界条件も初期条件と同じ濃度の条件で計算を行い、異常が起こ らないかをチェックした。計算条件は以下のとおり。

初期濃度:1ppmvで一様

境界条件:地表、大気上端とも1ppmvで一様

計算期間:1994年3月21日0時~3月24日0時(世界標準時)=3日間

この計算条件では、時間が経過しても濃度は変化しないはずであるが、気象データの風 速が連続の式を満たしていないと収束・発散が起こり、偽の濃度の変化が発生することが ある。これは、気象解析のモデルの中では連続の式を満たしていても、最終的に格子点値 に変換する際に誤差が混入している可能性があるためである。

この対策としては気象データの鉛直風を使わず、水平風u,vを元に連続の式を満たすよう なwを求め、これを使う方法がある。

つまり、連続の式

( ) ( )

div V = cos 1 + cos 1 cos + 1

= a 0

u

a v

e we

ϕ

∂λ ϕ

∂ϕ ϕ ∂

∂ζ

ζ ζ (3.1.5-1)

を満たすようにするため、水平発散

( )

∇ ⋅ =

H

+

a

u

a v

v 1 1

cos cos cos

ϕ

∂λ ϕ

∂ϕ ϕ

(3.1.5-2)

を計算し、大気上端でw=0とおいて

( )

1

e

ζ

we

ζ

= −∇ ⋅

H

∂ζ v

(3.1.5-3)

を逐次解いていく方法である。今回開発した物質輸送モデルでもこの方法を用いて鉛直風 を計算している。

計算の結果、濃度は初期状態のまま一定となり、風の場の収束・発散の問題はないこと を確認した(図 3.1.5-1 参照)。これは、輸送の計算をセミラグランジュ法で解いているた め、格子点における濃度の値は、Δt 前の時刻での気塊位置の周辺の格子点における濃度を 補間することによるものと考えられる。

(30)

26

図3.1.5-1 初期濃度一定、境界値一定の計算結果(高度13kmにおける値)[単位:ppmv]

(31)

(2) CO2の計算

化学反応の無視できる化学種として、CO2の分布の再現を念頭においてモデルを走らせ た。対象期間は1994年の3月21日を初期時刻とし、1ヶ月間の計算を行った。計算条件 は以下のとおり。

初期濃度:353~371ppmvで分布(東西方向に一様。図3.1.5-2参照)

境界条件:地表は365ppmvで一定、大気上端でフラックス=0

計算期間:1994年3月21日0時~4月21日0時(世界標準時)=31日間

高度9km における計算結果を図3.1.5-3 に示す。また、同じ高度における風速の分布を 図3.1.5-4に併せて掲げた。中高緯度で顕著なプラネタリー波による蛇行によってCO2の分 布が影響を受けていたり、渦の中に濃度の異なる領域が取り残されていたりする様子がわ かる。また赤道付近の CO2の高濃度は、熱帯域の対流活動によって地表付近から上空へ輸 送されてきたものと考えられる。

図3.1.5-2 CO2体積混合比の初期値(子午面分布)

(32)

28

図3.1.5-3 CO2体積混合比の計算結果(1994年4月21日、高度9km)[単位:ppmv]

図3.1.5-4 水平風速の分布(1994年4月21日、高度9km)[単位:m・s-1

(33)

(3) NOyの計算

NASAのまとめたNOxのエミッション・インベントリーのデータ1)を利用して、NOx(計 算上はNOy)の拡散を計算した。

初期濃度:東西方向に一様分布。図3.1.5-5及び図3.1.5-6参照。

境界条件:地表は0.2ppbvで一定、大気上端でフラックス=0

計算期間:1994年3月21日0時~3月26日0時(世界標準時)=5日間

NOx排出量:NASAエミッション・インベントリー(1992年時点)。図3.1.5-7参照。

今回の計算では、地表の濃度を固定しているので、地表付近における人為的なNOxの排 出は考慮していない。また上空のNOx排出も航空機によるものだけであり、雷によるNOx の生成は含まれていない。

計算の結果を図3.1.5-8~図3.1.5-10に示す。計算開始から5日後のNOx排出なしのケ ースとNOx排出ありのケース、及びそれらの差である。

NOx の排出のあるなしによらず、日が経つにつれて NOy の濃度が増加していることが わかる。特に5日目の北緯30度、東経150度付近には、NOy濃度の顕著なピークが認め られる。これは、図3.1.5-11に示したように、鉛直下向きの風によってNOyを多く含んだ 上層の気塊が流入するとともに、水平方向の強い風によって拡散している(図 3.1.5-12 参 照)ことによると考えられる。但し、この鉛直風速は、(1)に示した質量バランスの調整に よって求められたものであり、鉛直風速の観測値ではないことに注意する必要がある。

航空機からのNOx排出がある場合とない場合のNOyの濃度差(図3.1.5-10)は、NOx 排出源の航空路付近で大きくなり、その差が有意であることが確かめられた。また時間が 経つにつれて、NOyの濃度差の領域は大気中を拡散するとともに、その値が大きくなり、

大気中に蓄積されつつあることがうかがわれる。

(34)

30

図3.1.5-5 NOy体積混合比の初期値(子午面分布)

図3.1.5-6 NOy体積混合比の初期値(高度9km)

(35)

図3.1.5-7 1992年のNOxの排出量(高度9km)[単位:分子・cm-3・s-1](参考文献1)

(36)

32

図3.1.5-8 NOyの計算結果(NOx排出なしのケース。5日目、高度9km)[単位:ppbv]

図3.1.5-9 NOyの計算結果(NOx排出ありのケース。5日目、高度9km)[単位:ppbv]

(37)

図3.1.5-10 NOx排出ありとNOx排出なしの差(5日目、高度9km)[単位:ppbv]

(38)

34

図3.1.5-11 1994年3月26日の鉛直風速(質量バランス調整後)の分布(高度9km)

図3.1.5-12 1994年3月26日の水平風速の分布(高度9km)

(39)

(4) 他のモデルとの比較

1999年にNASAが実施したモデルと観測ワークショップⅡ(Models and Measurements Workshop II、以下M&MワークショップⅡ)の報告書2)に記載されている実験を行い、そ の結果を他のモデルと比較した。

初期濃度:0で初期化

境界条件:地表は0.01ppbvで一定、大気上端でフラックス=0 計算期間:3年

気象データ:1994年のデータを繰り返して与える。

NOx排出量:NASAエミッション・インベントリー(2015年の予測値)。Mach2.4、

EI=10のHSCT 500機を含む。

今年度開発の物質輸送モデルによる計算の結果を図 3.1.5-13 に、他のモデルの計算結果 を図3.1.5-14に掲げた(カラースケールが異なることに注意)。計算されたNOyの濃度は、

他のモデルと比較してかなり少ないが、当方の物質輸送モデルでは鉛直上方への拡散が早 く、成層圏に十分蓄積されていない可能性がある。

図3.1.5-13 M&M II実験A-3の計算結果

(40)

36

図3.1.5-14 M&M II実験A-3 他の3次元モデルの計算結果(参考文献2)

(41)

3.2 境界条件選択機能の試作

3.2.1 試作の内容

本スタディで試作する物質輸送モデルでは、経度方向は周期境界条件(東経180°と西経 180°は連続)、緯度方向には極付近の移流をセミラグランジュ法によって取り扱うので問 題はないが、地表及び大気上端における境界条件については、化学種ごとにどのような境 界条件が適しているかを検討し設定する必要がある。境界条件としては下記のものが考え られる。

z 濃度の緯度・経度分布を指定

地表での観測値が十分に得られる化学種の場合、その観測値を面的な分布とし て与える。また、地表や大気上端で濃度がほとんど 0 になることがわかっている 化学種について、0あるいは計算機で表現できる最小の正の値を設定する。

z 数密度フラックスの緯度・経度分布を指定

地表からの放出量がわかっている化学種の場合、その放出量を面的な分布とし て与える。また、大気上端での物質の出入りはないと仮定してフラックス=0を設 定することもある。

z 沈着速度の緯度・経度分布を指定(地表のみ)

化学種によっては地表との接触によって消滅したり吸着されたりする(乾性沈 着)ものがある。このような化学種では、沈着速度というパラメータを設定し、

地表面から除去されるフラックスを求める。

前節で試作した物質輸送モデルに、上記の境界条件の中から選択し設定できる機能を追 加した。機能追加したモデルで境界条件を変えて試計算を行い、機能が正常に実装されて いるか確認を行った。

(42)

38

3.2.2 機能の検証

物質輸送モデルによるCO2の計算を行う際、地表境界条件だけを3通りに変えた計算を 実施した。

初期濃度:353~371ppmvで分布(東西方向に一様。図3.2.2-1参照)

計算期間:1994年3月21日0時~3月24日0時(世界標準時)=3日間

濃度境界条件による計算結果を図 3.2.2-2 に、フラックス境界条件による計算結果を図 3.2.2-3に、沈着速度境界条件による計算結果を図3.2.2-4にそれぞれ示す。濃度境界条件の 場合、地表付近の CO2濃度は指定した体積混合比に一致した。地表からのフラックス流入 による濃度の増加や、沈着による地表付近の濃度の減少ができることが確かめられた。

このように、計算結果は指定した境界条件に見合うような濃度分布となり、境界条件選 択機能が正常に動作していることが確認できた。

一方、南極付近で、地表付近の物質濃度の変動が上空約 10km にまで及ぶ現象が見られ た。これは、3.1.5節で示した方法で質量バランスを満たすよう調節した鉛直風速が、極付 近で異常に大きな値となっていることが原因と考えられる(図 3.2.2-5 参照)。現在の方法 では鉛直風速にのみ問題があると考えて調節を行っているが、実際には水平風速にも誤差 が入る余地がある。3成分の誤差を考慮して物理法則を満たす速度場を再現することは今後 の課題である。

(43)

図3.2.2-1 CO2体積混合比の初期値(子午面分布)

図3.2.2-2 濃度境界条件による計算結果

(44)

40

図3.2.2-3 フラックス境界条件による計算結果

図3.2.2-4 沈着速度境界条件による計算結果

(45)

図3.2.2-5 質量バランス調節後の鉛直風速(1994年3月24日0時、高度5km)

(46)

42

4 スタディの今後の課題及び展開

4.1 スタディ結果の概要

航空機は高度8km以上の上部対流圏から下部成層圏を飛行するため、そのエンジン排気 は対流圏及び成層圏の両方に拡散する可能性がある。航空機のエンジン排気には、二酸化 炭素が含まれており、地球温暖化に影響している。また、エンジン排気に含まれる窒素酸 化物(NOx)は、大気中の光化学反応によってオゾン濃度を変化(対流圏では主にオゾン を生成、成層圏ではオゾンを破壊)させたり、間接的にメタン分解を促進したりすること によって、やはり温暖化に影響を与える可能性がある。

このような、航空機が地球温暖化に及ぼす影響については、ICAO(国際民間航空機関)

の要請に基づいて気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が特別報告書「航空機と地球大 気」を1999 年に取りまとめた。この報告書では、いくつかのシナリオの下で、2050 年ま での航空機による潜在的な気候への影響について評価を行った。その結果、二酸化炭素な どの排出による影響はかなりよく定量化され理解が進んできている一方で、大気中で起る 化学反応群と輸送過程に関する不確実性のために、大気成分に関する理解が精度的に不十 分であり、さらなる作業が必要と結論づけられた部分もある。その一つとして、航空機の 排出するNOxがオゾンやメタンの濃度変化に果たす役割が挙げられている。

大気中の物質の濃度は、基本的には適切な化学輸送モデル(CTM: Chemical Transport Model)を用いることによって予測することができる。そこで本スタディでは、航空機の排 出物に含まれるNOxが、大気中のオゾンやメタンの分布に及ぼす影響を定量的に予測する ための化学輸送モデルに関する調査研究を実施した。

平成14年度から平成17年度にかけての調査研究の結果、航空機エンジン排気によるオ ゾン等の温室効果気体への影響を予測するための 3 次元化学輸送モデルが満たすべき仕様 が、その一連の手順を含めて明確になり、実際のモデル開発が可能となった。

一方、航空機排出物の環境影響を予測するためには、既存の3次元化学輸送モデルでは、

高度領域や対象化学種、あるいはモデル内で扱うプロセスに関して不十分であることが明 らかになった。

化学輸送モデルでは、約50種類の化学種の濃度を計算するため、太陽放射による光解離 や、気体成分どうしの気相反応、エァロソルと呼ばれる固体もしくは液体の微粒子の表面 で起きる異相反応等、全部で100種類以上の反応を扱うことになる。

このような複雑な数値モデルの開発を全体をまとめて一気に開発することは大きなリス クを伴う。このリスクを軽減するため、風による物質の移動を模擬する物質輸送モデルの 部分と、太陽放射による光解離や化学反応を模擬する化学反応モデルの部分のそれぞれを 試作し、問題がないか確認しながら、段階的に開発を進めることが必要であると判断され

(47)

た。

そこで、本スタディでは、この 3 次元化学輸送モデルの要素部分をプロトタイプとして 試作し、その計算速度や精度について実証していくこととした。

上記のことに鑑み、本スタディは平成18年度と同19年度の2年間で行うことを想定し ている。図4.1-1に各年度の研究開発項目の位置付けを示す。

初年度である平成18年度は、次のスタディを行った。

(1)物質輸送モデルの試作

3次元化学輸送モデル作成の考え方について検討を行い、既存の成層圏モデルに対し、対 流圏モデルであるMOZARTの長所を取り込んでいく方向性とした。開発にあたっての課題 を抽出し優先順位を検討して今年度の作業実施計画を策定し、本格開発へ向けての作業計 画の中に位置付けた。これらを踏まえて今年度開発するプロトタイプである物質輸送モデ ルの仕様書を取りまとめた。

作業計画及び仕様書にしたがって 3次元物質輸送モデル(化学種1 種、反応なし)の開 発を行った。入力する気象データとしては、欧州中期気象予報センター(ECMWF)の全 球解析データを使用することとし、物質輸送の計算にはセミラグランジュ法を用いた。数 値モデル計算の際、当該対象とする気塊位置での風速は線型補間(内挿)によって求める ものとする。また、時間積分には 2 次のルンゲ・クッタ法を用いた。さらに、高緯度では 経線が密集してくることによる経度方向の時間積分の精度の悪化を防ぐため、気塊が極点 に近づいた場合にはいったん座標変換を行い、極中心の直交座標で水平位置の計算を行う ようにした。

作成したモデルを用いて、化学反応の無視できる化学種について計算を実施し、計算が 発散したり不自然な結果になったりしないことを確認した。またNOxについては、航空機 からの排出がある場合に航路付近での濃度が高くなり、その差が有意であることが確かめ られた。

(2)境界条件選択機能の試作

仕様書にしたがって 3 次元物質輸送モデルの境界条件設定機能の開発を行った。設定で きる境界条件としては、①濃度の緯度・経度分布を指定、②数密度フラックスの緯度・経 度分布を指定、③沈着速度の緯度・経度分布を指定(地表のみ)の3通りを実装した。

物質輸送モデルによるCO2の計算を行う際、境界条件だけを上記の3通りに変えた計算 を実施した。計算結果は指定した境界条件を反映した濃度分布となり、境界条件選択機能 が正常に動作していることを確認した。

以上のスタディの結果、航空機エンジン排気による温室効果気体への影響予測を行うた

(48)

44

めに必要な 3 次元化学輸送モデルのプロトタイプとなる物質輸送モデルを作成し、その計 算結果が妥当なものになることを確認した。この成果は、次年度に開発する化学輸送モデ ルの基礎として利用できるものと判断される。

(49)

化学輸送モデル

気候モデル

航空機の 地球温暖化への

影響予測

環境基準の設定・改訂

今後開発されるエンジン・

航空機の設計

NOx オゾン・メタンの変化

気候モデルで 予測された 気温・風の変化 現況の気温・風

(気象解析データ)

CO2, N2O,フロン等

化学反応 物質輸送

化学反応モデルの試作

(H19年度)

物質輸送モデルの試作

(H18年度)

境界条件選択機能の 試作(H18年度)

境界値DBの作成

(H19年度)

45

(50)

46 4.2 今後の課題と展開

(1) 短期的課題

本年度のスタディにおいて、航空機エンジン排気による地球温暖化への影響予測のため に、オゾン等の温室効果気体への変動を予測する 3 次元化学輸送モデルのプロトタイプと なる物質輸送モデルを作成した。

今後はこの物質輸送モデルに対し、太陽放射による光解離や化学反応(全部で 100 種類 以上の反応を扱うことになる)を模擬する部分を組み込み、3次元化学輸送モデルとして完 成させ、その計算結果が妥当なものになることを確認していく必要がある。

さらに、3次元化学輸送モデルによる各化学種の濃度の計算において必要となる、化学種 ごとの境界条件の設定方法について検討を行い、その境界値のデータを収集する必要があ る。

これらの作業の後、航空機エンジン排気によるオゾン等の温室効果気体の変動を予測す る計算を実施し、本スタディの成果とする。

(2) 中長期的課題と今後の展開

本研究開発の目的は、民間航空機の開発・生産において、今後我が国が国際共同事業に おける主体的立場を確保し、戦略的産業である航空機産業の振興、ひいては機械システム の振興に資することにある。そのためには海外及び国内の動向調査などの情報収集を行う ことがその活動の基本である。その一方で、航空機の技術開発とともに、航空機が地球温 暖化に及ぼす影響を予測する世界と対等以上の技術を保有することが必要である。

これらを念頭においた上で、今後の課題は以下のとおりである。

z 本研究開発で仕様が決定された 3 次元化学輸送モデルによる予測計算を実施するた めには、高速な計算機による大規模計算が不可欠である。そのためには、地球シミ ュレータ、地球フロンティア等との協力体制を築く必要がある。

z また、今後はさらに気候-化学フィードバック過程を直接的に考慮できるオンライ ン・モデルの開発へと進む見通しである。海外の動向を常に注視し、それと同等以 上のモデルを持つことで、世界における我が国の応分の貢献を果たすことができる。

(51)

参考資料 -1 参考文献

1) D. J. Wuebbles, D. Maiden, R. K. Seals, S. L. Baughcum, M. Metwalley, and A.

Mortlock: “Emissions scenarios development: report of the emissions scenarios committee”, In: The Atmospheric Effects of Stratospheric Aircraft: A Third Program Report [R. S. Stolarski and H. L. Wesoky (eds.)], NASA Reference Publication 1313, National Aeronautics and Space Administration, Washington DC, USA, pp. 63-85 (1993)

2) J. H. Park, M. K. W. Ko, C. H. Jackman, R. A. Plumb, J. A. Kaye and K. H. Sage:

“Models and Measurements Intercomparison II”, NASA/TM-1999-209554, National Aeronautics and Space Administration, Langley Research Center, Hampton, VA, USA, 502 pp. (1999)

表 3.1.1-1   モデル作成の方法と課題の困難度 ベースモデル  2 次元成層圏モデル  MOZART  境界層内の鉛直拡散  ○  -  対流による鉛直輸送  ○  -  乾性沈着  ○  -  湿性沈着  ○  -  地表からの放出量  ○  -  大気中での NOx 発生  ○  -  光解離係数の計算  -  ×コードを自動生成するた め改変が困難  成層圏異相反応の追加  -  ○  対流圏・成層圏交換過程  -  ○  (-:実装済み、○:可能、×:困難) 表 3.1.1-2  3 次元化
表 3.1.1-3  3 次元化学輸送モデル開発計画  IADF 2 次元成層圏モデル H18 年度プロトタイプ H19 年度プロトタイプ  完成モデル  計算領域  緯度:90°N~90°S  高度:0~50km  経度:180°E~180°W 緯度:90°N~90°S  高度:0~50km  経度:180°E~180°W 緯度:90°N~90°S 高度:0~50km  経度:180°E~180°W 緯度:90°N~90°S 高度:0~50km  化学種数  55 1  約 80  約 80  化学反応
図 3.1.2-1  レギュラー格子における体積混合比の定義点
図 3.1.4-2 1994 年 3 月 21 日 0 時の 250hPa 面における気温[単位: K ]
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参照

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