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就労中の母親の育児に関する研究動向

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問題と目的

 厚生労働省(2019)の平成30年国民生活基礎調査に よると,18歳未満の子どもがいる母親の就業率は 72.2%でそのうち正規職員は26.3%,非正規の職員は 36.9%となっている。年次推移を見てもこれらの割合 は年々上昇している。非常勤・パートとして働く母親 について,八重樫・小河(2002)は,子育て不安が高 くなることを指摘し,高・星・中村(2007)は,常勤 や専業主婦の母親と比べ,生活満足度が低いと言う。

一方,清水・関水ら(2007)は,母親は,フルタイム で働くことが,育児幸福感に対して良い影響をもたら すことを示唆する。また中島・羽田野・末永(2016)

は,常勤職に就く母親は,専業主婦の母親より有意に 自己効力感の得点が高く,育児の束縛による負担感は

低いという。

 このように就労形態によって母親の育児負担感は異 なることが考えられる。また,就労形態だけでなく母 親の育児意識,パーソナリティ,ソーシャルサポート などさまざまな要因が育児に影響している可能性が考 えられる。

 以上のことから本稿では日本において,就労中の母 親を対象とした育児に関する研究を整理し,今後の課 題を明らかにすることを目的とする。

方  法

 国立情報研究所は提供する CiNii Articles を用いて 電子検索を行い,以下の手順で対象とする論文を抽出 した。「就労 AND  母親 AND  育児」を検索のキー 特集論文 

就労中の母親の育児に関する研究動向

頓宮 真由子(白百合女子大学大学院文学研究科)

厚生労働省の2018年国民生活基礎調査によると,18歳未満の子どもがいる母親の就業率 は72.2%でそのうち正規職員は26.3%,非正規の職員は36.9%となっている。これらの割 合は年々上昇している。非常勤・パートとして働く母親について高・星・中村(2007)は,

常勤や専業主婦の母親と比べ,生活満足度が低いと言う。一方,清水・関水ら(2007)は,

母親は,フルタイムで働くことが,育児幸福感に対して良い影響をもたらすことを示 唆する。このように就労形態によって母親の育児負担感は異なることが考えられる。以 上のことから本稿では日本において,就労中の母親を対象とした育児に関する研究を整 理し,今後の課題を明らかにすることを目的とする。国立情報研究所は提供する CiNii  Articles を用いて「就労 AND 母親 AND 育児」を検索のキーワードとした。最終的に 27件の論文を対象とし、内容を分類した。その結果「母親の就労形態と育児実態・育児 態度」「母親の就労とストレス」「母親の就労形態と父親」「母親の就労継続」「母親の就 労と育児実態」「父親の就労形態と育児参加の関連と育児実態」の7つの項目に分類さ れた。複数の論文から共通して示されたことはパートタイマー群は育児ストレスが高い こと,そして夫や周囲からのサポートが低いことであった。今後はより詳細な勤務形態 の分類のもと比較検討をする必要性が課題として示された。

【キー・ワード】就労,母親,育児

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ワードとした。少子化対策として政府が策定したエン ゼルプランの施行年である1995年から現時点までの文 献検索を行ったところ91件の論文が抽出された。ま た,検索時期は2020年2月である。これらの文献のう ち,外国国籍の人を対象とした研究,大学生を対象と した研究,出産前の母親を対象とした研究,障害を持 つ子どもを対象とした研究は,分析対象から除外し た。理由は育児の困難感や文化が異なる場合や時系列 が異なる場合,比較されるべきではないと判断したた めである。またシンポジウム報告や,論文の要旨など も除外した。検索結果から上記の基準に外れるものを 除いたところ,27件が本研究の分析対象となった。

結  果

 「就労」「母親」「育児」に関する研究27件の内容を 分類した結果,「母親の就労形態と育児実態・育児態 度」8件,「母親の就労とストレス」7件,「母親の就 労形態と父親」4件,「母親の就労継続」3件,「母親 の就労と育児実態」3件,「父親の就労形態と育児参 加の関連と育児実態」2件の7つの項目に分類され た。以下,「母親の就労形態と育児実態・育児態度」

から順に結果を述べる。

母親の就労形態と育児実態・育児態度

 母親の就労形態と育児実態・育児態度については8 件の論文が抽出された。母親の就労形態はフルタイム やパートタイマーや専業主婦の比較や就労の有無の比 較がされていた。

 臼井・小林(2016)は,母親がフルタイムで働いて いる場合,母親が子供の勉強を見る頻度は下がるが,

それを補うように父親が子供の勉強を見る頻度が高く なること明らかにした。しかし,両親合計では,子ど もの勉強を見る頻度は全体としては低下しており,母 親が子供の勉強を見る頻度が下がる分を父親がある程 度補ってはいるが完全には補っていないことも示され た。また,父親が長時間労働の場合,子供の勉強をみ る頻度及び,共に食事をする回数が少ないことや,幼 い子供への本の読み聞かせは学歴の高い父親・母親の 方がより熱心に行っていることも示された。

 伊藤(2009)は,有無職の母親間に「いじめ」や

「児童虐待」「教師の体罰」などに対する考え方に大き な差異は見られなかったことが明らかになった。しか し,就労している母親に心身の疲れを感じている人が 多いことが明らかにされた。また,授乳については母 乳栄養が推進されているが「時間を決めた規則正しい 授乳」方法よりも子どもの要求に応えた「泣いたら授 乳」が十年前よりさらに増加していることも示され た。就労している母親が子どもと遊ぶ時間が無職の母 親に比べて非常に短いことが示された。育児のために

必要なものとして,有職の母親は「子育ての時間がと れるような職場環境」を求めている人が最も多く,無 職の母親との間に大きな差異が見られたことを報告し ている。

 吉見(2008)は,母親の就労との関係について子ど もの生活実態の面では「正社員」は起床時間が早く,

就寝時間が遅い一方,朝食の摂取や歯磨きが不十分な どの問題がみられたことを報告している。また,遊び においては戸外での遊びは「正社員」が「父親」や

「祖父母」など近親者のサポートを多く活用している のに対して「専業主婦」は「近所の子ども」や「母親 自身」と人間関係の広がりが狭いことが示された。地 域との関わりの面では「専業主婦」の方が気軽な付き 合いのレベルでは関わりを持ちやすい傾向があること も示された。また子育てに関する意識の面では「正社 員」の方が子育てを仕事などに生かすことで良い点を 見いだす一方「専業主婦」は子どもを通じた友達関係 に良い点を見いだす傾向がみられた。反対に子育ての 不安などについては「正社員」は勤務時間の長さから 子どもとのふれあいの時間不足を実感する一方,経済 的な余裕に対しては満足している。一方「専業主婦」

は子どもとの接し方に自信がないと感じつつ,子ども と触れ合う時間は十分にあると感じている。

 小坂・柏木(2005)は,育児への否定的な態度につ いては,学歴による差異や夫婦の親との距離による差 異が育児への態度に関連していることが示された。さ らに家族に関する要因の分析をしたところ,夫や夫の 親から就労について反対されている女性は,賛成され ている女性に比べて育児への肯定的な感情が有意に低 く,否定的な感情が高い傾向が示された。また,幼い 頃の実母の就労への評価と現在の就労形態に葛藤を抱 えやすい女性は,葛藤を抱えにくい女性よりも育児へ の肯定的な感情が有意に低く,否定的な感情が高い傾 向が示された。これらの結果から,フルタイム就労女 性の子育てには,夫や夫の親からのサポートの重要性 と実母の就労に対する葛藤が関連していることを報告 している。

 加用(2004)は,両群の父親間を比較すると家事・

育児の分担度平均では差がないものの,母親と同じく らいあるいはそれ以上に分担する人数が妻就労過程で は多いことが明らかになった。「育児の悩みや困りご と」でも妻就労家庭では多くの項目で母父間の値が接 近してきていることが示された。園の保育者と育児に ついて話をする程度について,両群とも母親の方が関 わりが高いものの,父親同士では,妻就労家庭の父親 の方が妻専業主婦群の父親より関わりが高くなってい ることが示された。

 山岡(2002)は,幼児を抱えて働く母親よりも,専 業主婦の方が夫との関係も良く,周りからの支援を得 てはいても,全般的に育児不安感が強いことが明らか

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になった。一方で専業主婦に比べて常勤者は,子ども の生活習慣や自立への不安が高く,母親として思うよ うにしつけができていないという焦燥感が表れていた ことが示された。特にパートタイマーは夫の理解が少 なく,自分一人で子育てをしていると感じている母親 が有意に多く,子育て以外の充実感を見出しており,

育児に関しても,子どもへの統制感がきかない苛立ち を強く感じていたことが示された。さらに専業主婦は 働く母親に比べて育児に対する不全感や教育不安感が 高いことも示された。また,母親たちが育児不安を解 消するために,高信頼情報源として活用している人達 は就労状況を問わず,1位には夫が挙げられたことが 示された。しかし常勤者が仕事をつづけながら育児を する上で「園の先生」とともに「姑」の援助を得て,

職場や学生時代からの「近所ではない友人」を頼りに していることや,パートタイマーが他母親と比べると

「夫」を高信頼情報源にしていないことも明らかと なった。

 伊藤(2000)は,有無職の母親間に「いじめ」や

「児童虐待」「教師の体罰」などに対する考え方に大き な差異は見られなかったことが分かった。しかし,就 労している母親に早産の発生率が高く,また心身の疲 れを感じている人が多いことが明らかにされた。育児 のために必要なものとして,有職の母親は「子育ての 時間がとれるような職場環境」を挙げている人が最も 多く,無職の母親のとの間に最も大きな差異が示され た。無職の母親は有職の母親に比べて時間を費やして 子どもと遊んだり,きめ細やかな世話をおこなってい ることが示された。しかし子どもへの気がかりなこと がある母親は有職の母親に比べて多いことや子育てを 楽しいと考えている人が少ないこと,また,子どもの 育て方に不安を抱いている人が多いことなどが明らか にされた。また,地域内の育児支援世策を60%余りの 母親が積極的に利用しており,有職の母親に比べてか なり多いことも報告している。

母親の就労とストレスの関係

 母親の就労とストレスについては7件の論文が抽出 された。

 初塚・石田(1996)は,質問紙で,6尺度各12項目 寄り成り,尺度1は,家族のまとまりのなさ(ST1),

尺度2は,配偶者援助の不足(ST2),尺度3は,養 育疲労(ST3),尺度4は,発達不安(ST4),尺度5 は,自己実現の阻害(ST5),尺度6は,子供の問題 行動(ST6)とした。結果より母親の就労形態別にみ ると,6尺度全てについてストレスの差異が認められ たことが示された。母親と父親の間のストレスの差異 は,発達不安(ST4)と自己実現の阻害(ST5)のみ に認められたことが示された。母親の就労形態別に比 較すると,全般的にフルタイム群の父母のストレスが

低く,パートタイム群の母親のストレスの高さが高い ことが明らかとなった。専業主婦群の母親はどちらか と言うとパートタイム群の母親に近い傾向が示され た。全体的に母親のストレスが父親より高い傾向が示 された。さらに,父親の育児意識は,母親の就労形態 と深い関わりを持っていることも示唆された。

 冬木(2002)は,分析モデルに母親の「就労」,父 親の「帰宅時間」「家事・育児行動」という変数を入 れ,これらの諸変数が母親の育児ストレスに及ぼす影 響を検討した。この結果,父親の帰宅時間が遅いこと が特に有職の母親において強い育児ストレスにつなが ることが示唆された。

 野口ら(2005)は,育児ストレッサーの31項目につ いて就労母親と非就労母親を比較した結果,12項目に 有意差がみられたと報告している。非就労母親が高 かったのは「短時間子どもを預けられる人がいない」

「自分と子どもだけで社会との接点がない」などの11 項目であったことが示された。育児ストレッサーの因 子構造の特徴として就労母親の場合は「子どもの聞き 分けのない行動」がストレッサーになっていることが 示された。非就労母親の場合は「自分の時間がない・

社会からの孤立」がストレッサーになっていることを 明らかにした。

 寺見(2008)は,就労の選択は母親自身の愛着の回 避性と関連し,就労・未就労の選択は出産における不 安やしんどさ,育児における夫の参加あるいは近所の 人からの情報,子どもへの能力・個性への期待にも影 響を与えていたことが示された。未就労群では結婚に よる退職の場合,女性自身の親密性が低く,近所の狭 い関係性の中で育児し出産による退職の場合,出産に 不安やしんどさがあり育児は積極的に外部に援助を求 めていたことが示された。しかし就労群は不安は少な く,近所の関係が薄い反面夫のサポートもあり子ども への期待感もあることが示された。また,育児ストレ ス構造は両群とも非受容→回避→夫の協力→育児拘束 観→育児当惑観,さらに回避→親・友人の情報→夫の 協力→育児拘束感→育児当惑感という構造が立証さ れ,特に未就労群のほうに夫の協力の有無が大きく影 響することが示された。さらに非常勤職が育児充実感 や育児における夫との関係,夫の協力・参加度が低い ことが示された。

 酒井・松本・菅原(2014)は,育児ストレスは子ど もに対しては強くなかったが,就労による社会的活動 の制限や経済的ひっ迫感に対してはストレスを感じて いたことが示された。また,育児ストレスの程度と関 連要因との関係では,その影響の度合いが要因によっ て異なることが明らかにされ,子どもの状態及び調整 的コーピングについては育児ストレスへの関与が少な かったことを報告している。

 井上ら(2014)は,就労形態別に比較したところ,

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パートタイマーは常勤職に比べて育児ストレスが有意 に高く,夫の母親からもサポートが有意に低かったこ とが示された。またパートタイマーと常勤職に共通し て夫や自分の母親,友人とともに母親の職場における サポートの高さが育児ストレスを軽減し精神的健康を 保つことが示された。

 太田・村上(2018)は,母子家庭・正規就労・経済 的困窮度の高さはそれぞれ子育てのストレスを高める 要因であることが示された。無職の母親はフルタイ ム・パート・自営の母親よりも子育て不安が高いこと が示された。また,子育て不安については保育園に子 どもを通わせる母親より幼稚園に通わせる母親の方が 強い不安を抱いていることが示された。

母親の就労形態と父親の役割

 母親の就労形態と父親については4件の論文が抽出 された。

 平林(1997)は,父親の家事参加の程度は全体的に みてあまり高くなかったが,母親が無職よりも有職の 場合に家事を行うことが多かったことが示された。ま た,父親の育児参加は比較的多く,母親の就労の有無 による差は認められなかったことが明らかとなった。

母親の就労に対する理解は必ずしも十分ではなく,家 事・育児を母親の担当と考えているケースもあること が示された。また,母親自身も,子どもにさびしい思 いをさせながら働いていると考えていたことが示され た。無職の母親の就労希望はそれほど高くなく就労す る場合も家事・育児の紡げにならない時期や職種を希 望していたことが示された。

 佐藤ら(2000)は,父親の家事育児分担の状況が決 して十分ではなく子育ての負担は母親に過度に集中し ており父親の家事育児分担は定着したものとなってい ないことが明らかとなった。父親の家事育児の分担関 係には母親の就労の有無が影響していることが示され た。また,父親の役割として母親への心理的な支援や 子供の社会性の発達への関与を求められていることが 示された。母親の就労していない家庭の父親は伝統的 な性役割慣行に基づいた考え方が続いていることも明 らかにされた。

 佐々木ら(2009)は,専業母親と就労母親は共に パートナーへ【言われなくても手伝う気持ち】を持っ た【育児する私への思いやり】と【パートナーのワー ク・ライフ・バランス】に支えられた【パートナーの 積極的な育児参加】を望んでいたことが明らかとなっ た。就労母親はパートナーへ共働きにおける現在の協 力を評価し,これからも【一緒に子育て】と仕事を遂 行するために【夫婦が対等に育児】する認識とさらな る主体的な【家事育児の協力と分担】を望んでいたこ とを報告している。

 石(2015)は,ジェンダーの視点から就労形態別に

検討した結果,フルタイムとパートタイムの両群の間 に母親のディストレスの得点差はなかったことが明ら かにされた。しかし父親のジェンダー観が働く母親の ディストレスに影響するプロセスに相違点がみられ,

フルタイム群では父親の平等的なジェンダー観は母親 が認識する仕事から家庭へのネガティブ・スピルオー バーを減らし,母親の育児不安とGHQを低減する間 接効果があったことが示された。パートタイム群でも 父親のジェンダー観が母親のディストレスに影響を与 えるというクロスオーバー効果がみられたが父親の平 等的なジェンダー観は反対に母親の GHQ(精神健康 度)得点を高めるという直接効果であったことが示さ れた。

母親の就労継続に関する要因

 母親の就労継続についての論文は3件抽出された。

 藤岡ら(1995)は,結婚前は,常勤勤務者が殆どで あったが,多くが出産前または結婚時に退職して,現 在では1割に減少していることが明らかにされた。し かし,結婚のため退職した者の8割以上が再就職を考 えていることが示された。常勤者,再就職希望者の就 労を継続するために必要な条件については,保育所の 充実,子どもが病気の際の介護休暇,労働時間の短 縮,育児で退職した女性の再雇用が多く,育児休業制 度については,休業中の所得保障,現職復婦の保障,

社会保険料の免除,休業期間の延長が多かったことを 報告している。

 小坂・柏木(2007)は,就労継続・退職の埋由とし て,「家庭優先」「やりがいのある仕事亅「自立志向 一」「夫や夫の親からの就労反対」「夫の家事育児サ ポート」「自分の親や周囲からの育児サポート」の6 要因が明らかにされた。就労継続 ・退職の理由得点 を夫婦の学歴により比較した結果,夫婦とも大学卒の ほうが夫婦とも高校卒よりも妻の「家庭優先」や「夫 や夫の親からの就労反対」が低く,「夫の家事育 児サ ポート」が  高いことが明らかにされた。また,居住 状況による分析の結果,親と同居している女性に「や りがいのある仕事」が高く,夫の親と同居あるいは近 居の場合に「夫や夫の親からの就労反対」が高いこと が示された。就労継続・退職の理由が退職経験  の有 無に及ぼす影響を検討したところ,「夫や夫の親から の就労反対」が顕著な影響を及ぼしていることが  明 らかにされ,家族の要因が女性のライフコースを左右 することが明らかにされた。

 中根(2014)は,保育所保育士のワーク・ライフ・

バランスの実態,特に両立生活の「難しさ」について 調査した結果,就労継続や両立の「難しさ」は,本人 の母親意識,職場や家庭,社会資源の状況にあること を明らかにした。

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母親の就労と育児実態における葛藤

 母親の就労と育児実態については3件の論文が抽出 された。

 武市ら(2005)は,核家族化の進む中でも祖父母か らの育児協力は得られる反面,夫婦間の育児協力不足 が懸念されたことが示された。また,母親の多くは就 労を希望し,約10%は育児に対して喜びより苦痛を多 く感じていたことを明らかにした。育児困難の度合い と母親との就労に相関は認められなかったが,育児困 難の度合いと父親の育児協力には相関がみられたこと が示された。

 中井ら(2010)は,育児中の母親の家庭内及び職場 内における役割変化があること,その変化に対処する ために社会的サポートや家族サポート,あるいは職場 からのサポートを受けていることを明らかにした。し かし外からのさまざまなサポートのみならず,母親自 身の自己概念や対人関係能力も重要な要素であるこ と,外からの援助や配慮だけでなく母親自身の成熟と 能力も重要であることが示唆された。

 加藤ら(2017)は,家族構成,子どもの睡眠リズ ム,仕事負担感,育児の自信喪失感にストレスと有意 な関連がみられたことを報告している。

父親の就労形態と育児参加の関連と育児実態

 父親の就労と育児参加との関連について2件の論文 が抽出された。

 冬木ら(2001)は,第一に「食事」や「お風呂」

「遊び」などの育児を積極的に行う父親が存在してい るが,子供とのかかわりが極めて薄い父親も少なから ず存在していることを示した。父親の育児行動につい て過半数の母親は満足しているが,夫婦単位の分析で は父親の育児行動の回数が少ないほど母親は不満足に 感じていることを明らかにした。この母親の抱く不満 足感は,夫婦関係や母子関係など家族の関係性に与え る悪影響が指摘された。第二に就労関連要因では労働 時間と帰宅時間が父親の育児行動に影響を与える要因 であり,労働時間が短く帰宅時間が早い父親ほど,子 どもと多くかかわっていたことが示された。一方で帰 宅時間が遅い父親の中には罪悪感や葛藤を抱く者もい たことが示された。また育児休業については育児休暇 を取得した父親は極めて少なく,育児休業を取得しな い理由として父親の性別役割分業意識,経済的損失,

復帰後の職場の対応などが明らかにされた。

 加藤(2007)は,父母とも仕事への資源の投入は子 どもへのコミットメントに直接は有意な関連をもたな かったことを報告している。

考  察

 本研究では,就労中の母親の育児における,母親の

就労形態と育児実態・育児態度,母親の就労とストレ ス,母親の就労形態と父親,母親の就労継続,母親の 就労と育児実態,父母の就労と育児,父親の就労と育 児実態についての研究のレビューを行った。

 まず有職と無職という2つの就労形態別の特徴を考 察する。なお,無職群と専業主婦群は同様と思われる が,有職無職の分け方は論文の年代が古いものが多い 特徴があると考えた。そのため10年前の無職群と現代 の専業主婦群は時代背景によって同類ではないとした ため分別して考察した。

 有職群の特徴は,「心身の疲れ」「子どもと遊ぶ時間 の短さ」「父親が母親と同じかそれ以上家事育児分担 する人数が多い」「育児の悩みや困りごとが母父間で 近い」「園の保護者と育児について話す程度が高い」

「育児のために必要なものは,子育ての時間がとれる ような職場環境」「父親の帰宅時間が遅いことが強い 育児ストレスにつながる」「子どもの聞き分けのない 行動が育児ストレッサーの特徴」「育児の不安は少な く,近所の関係が薄い反面夫のサポートがあり子ども への期待感もある」「育児ストレスは子どもに対して は強くなかったが,就労による社会的活動の制限や経 済的ひっ迫感へはストレスを感じていた」などが示さ れた。

 無職群の特徴は,「時間を費やして子どもと遊ぶ」

「きめ細やかな世話をおこなう」「子どもへの気がかり なことがある母親が多い」「子育てを楽しいと考えて いる人が少ない」「育て方に不安を抱いている人が多 い」「地域内の育児支援世策を60%余りの母親が積極 的に利用する」「短時間子どもを預けられる人がいな い」「自分と子どもだけで社会との接点がない」「自分 の時間がない・社会からの孤立が育児ストレッサーの 特徴」「結婚による退職の場合,母親自身の親密性が 低く,近所の狭い関係性の中で育児し出産した場合,

出産に不安やしんどさがあり育児は積極的に外部に援 助を求める」などが示された。

 次にフルタイム,パートタイマー,専業主婦という 3つの就労形態別に特徴を考察する。

 フルタイム群の特徴は,「父親の子どもへの家庭教 育時間の増加」「遅寝早起き」「朝食・歯磨きの不十分 さ」「戸外の遊びは父親や祖父母が多い」「子育てを仕 事に生かすことで良い点を見いだす」「子どもとの触 れ合い時間が不足と実感」「経済的な満足感」「夫や夫 の親から就労を反対されている場合に育児への肯定的 な感情が低く否定的な感情が高い」「子どもの生活習 慣や自立への不安が高く,母親として思うようにしつ けができていないという焦燥感」「父母のストレスが 低い」「夫や自分の母親,友人とともに母親の職場に おけるサポートの高さが育児ストレスを軽減し精神的 健康を保つ」などが示された。

 パートタイマー群の特徴は,「夫の理解が少なく自

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分一人で子育てをしていると感じている母親が多い」

「子育て以外の充実感を見出す」「子どもへの統制感が きかない苛立ちを強く実感」「母親のストレスが高い」

「育児充実感が低い」「育児における夫との関係,夫の 協力・参加度が低い」「育児ストレスが高い」「夫の母 親からもサポートが低い」「夫や自分の母親,友人と ともに母親の職場におけるサポートの高さが育児スト レスを軽減し精神的健康を保つ」などが示された。

 専業主婦群の特徴は,「戸外での遊びは近所の子ど もや母親自身が多い」「地域との関わりは気軽な付き 合いのレベルが持ちやすい」「子どもを通じた友人関 係に良い点を見いだす」「子どもの接し方への自信の なさ」「子どもとの触れ合い時間が十分と実感」「夫と の関係も良く,周りからの支援を得てはいるが育児不 安感が強い」「育児への不全感が高い」「教育不安感が 高い」「母親のストレスがパートタイマーほどではな いが高い」などが示された。

 以上から重視したい特徴はパートタイマー群は育児 ストレスが高いこと,そして夫からのサポートが低い ことである。フルタイムではないという就労形態に よって育児の負担感を過小評価されている可能性が示 唆される。パートタイマー群の母親自身もフルタイム ではないことで父親や周囲のフルタイムの母親と比較 して,援助を求めにくいと感じている可能性が考えら れる。

 就労形態は現代多様化している。例えばフリーラン スとして在宅勤務という形態も考えられる。また,フ ルタイムやパートタイマーでも勤務する曜日や時間 帯,時間数によってさらに異なる結果となる可能性が 考えられる。今後は詳細な勤務形態の分類のもと比較 検討をすることが課題として示された。

文  献

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(2020年4月30日受稿 2020年11月4日受理)

Hayami Mayuko(Shirayuri University Graduate School of Liberal Arts,Department  of Developmental Psychology (Master’s Program)) A Review of studies on childcare  parenting  of  working  mothers.    RESEARCH  IN  LIFESPAN  DEVELOPMENTAL  PSYCHOLOGY, 2020, No.12, 33-39.

This study reviewed research on the parenting issues of working mothers.  Articles 

(N=27) that reported on the parenting issue of working mothers were retrieved.  This  study’s findings indicate that the parenting issue of working mothers can be classified  into  eight  categories:  “form  of  work  of  mother  and  parenting  status/parenting  attitude,” “mother’s work and stress,” ”working style of mother and father,” ”mother  continuing to work,” ”actual conditions regarding the work and childcare of mothers,” 

”working and parenting style of parents,” and ”working conditions and childcare of  fathers.” In addition, compared with other groups, part-timers were found to exhibit  higher levels of parenting stress and lower levels of support from their husbands and  others.  A comparative study based on a more detailed classification of work styles  should be conducted.

【Keywords】Working, Mother, Parenting.

参照

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