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クオリア表象理論と⾊のハードプロブレム

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Academic year: 2021

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クオリア表象理論と⾊のハードプロブレム

若林佑治

東京⼤学総合⽂化研究科

本研究発表の⽬的は、クオリア表象理論が直⾯する問題の1つとされる⾊のハード プロブレムへと応答し、それがクオリア表象理論にとって問題とならないことを⽰す ことである。

私たちの意識経験には主観的な側⾯であるクオリアが伴う。たとえば、⾚いりんご の視覚経験の場合、そこには「⾚を⾒るとはどのようなことか」という表現で表すこ とができるような、⾚のクオリアが伴う。

クオリアを唯物論の枠組みの中で説明しようと試みるのが、クオリア表象理論であ る(この理論を⽀持する代表的な哲学者は、ハーマン(Harman, 1990)、ドレツキ (Dretske, 1995)、タイ(Tye, 1995, 2000)である)。クオリア表象理論によれば、クオ リアとは意識経験における表象内容である。⾚いりんごの視覚経験は、⾚いりんごを 表象内容として持つと考えられる。したがって、⾚いりんごの視覚経験に伴う⾚のク オリアは、その経験によって表象された⾚いりんごが持つ、⾚いという性質と同⼀に なる。⾚いりんごが持つ⾚いという性質は、りんごという物体の表⾯が持つ物理的な 性質であると考えられるため、クオリア表象理論によって、⾚のクオリアが唯物論の 観点から説明されることになる。他のクオリアに関しても同様のことが⾔える。

クオリア表象理論が直⾯すると考えられる問題の1つが、⾊のハードプロブレムで ある(Byrne, 2006)。クオリア表象理論によれば、⾊のクオリアとは表象された物体の 表⾯が持つ物理的性質である。したがって、⾊は物体の表⾯が持つ物理的性質だとい うことになる。そのような性質の候補となるのは、物体表⾯の反射特性であると考え られる。しかし、⼀⾒したところ、⾊と物体表⾯の反射特性が同じ性質であるように は思われない。⾊のハードプロブレムとは、物体表⾯の反射特性がいかにして⾊であ りうるのかという問題である。クオリア表象理論は、この問題に答えることができな ければならない。

⾊のハードプロブレムへの応答の⼿がかりとなるのは、ラッセル的内容とフレーゲ的 内容と呼ばれる2つの表象内容の区別である。表象内容には、ラッセル的内容とフレー ゲ的内容という 2 つの内容があると考えられており、クオリアとラッセル的内容を関係 付ける⽴場はラッセル的表象主義、クオリアとフレーゲ的内容を関係付ける⽴場はフレ

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ーゲ的表象主義と呼ばれる(Chalmers, 2004)。ラッセル的内容とは、表象される対象や その対象が持つ性質によって構成される内容である。たとえば、⾚いりんごの視覚経験 の場合、りんごという対象と、りんごが持つ⾚いという性質や丸いという性質が表象さ れていると考えられる。したがって、⾚いりんごの視覚経験のラッセル的内容は、りん ごと、りんごが持つ⾚いという性質や丸いという性質によって構成される内容となる。

⼀⽅、フレーゲ的内容とは、提⽰様式もしくは提⽰様式によって構成される内容であり、

提⽰様式とは、表象される対象や性質を決定するための条件である。たとえば、⾚いり んごの視覚経験の場合、りんごが表象されるためには、その経験がりんごによって引き 起こされていなくてはならないと考えられ、⾚いという性質や丸いという性質が表象さ れるためには、通常の条件のもとで、それらの性質がこれまでに⾚のクオリアや丸さの クオリアを伴う経験を引き起こしてきていなくてはならないと考えられる。したがって、

⾚いりんごの視覚経験のフレーゲ的内容は、「この経験を引き起こしている物体は、通 常の条件のもとで、⾚のクオリアや丸さのクオリア伴う経験を引き起こす性質を持つ」

となる。本研究発表では、ラッセル的表象主義の⽴場を⽀持し、ラッセル的内容とフレ ーゲ的内容の観点から、クオリア表象理論が直⾯する問題の1つである、⾊のハードプ ロブレムへと応答し、それがクオリア表象理論にとって問題とならないことを⽰す。

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