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『スペインの女性群像−その生の軌跡』

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Academic year: 2021

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GAIDAI BIBLIOTHECA

人間の半分は男性であり、残りの半分は女性で ある。つまり、人間史とは男性と女性の共同作業 の結果であるはずだが、人間史を繙けば、男性中 心の歴史が流れてきたと言っても過言でない。こ うした男性優位の社会の厚い壁に挑戦が始まるの は19世紀のこと、多くの女性の熱い闘いが行われ るのは、1970年代以降のことである。

とくにスペインでの女性の解放は、1975年のフ ランコ政権崩壊による民主主義の到来を待たねば ならなかった。そんな中で女性の社会進出が始ま り、社会のさまざまな分野で女性の活躍が目立つ ようになった。当然、女性研究が始まり、20世紀 末から21世紀にかけて女性史の研究書の刊行が目 についたが、その一つが『スペイン史における女 性』(2000)である。256人の女性が「古代」、「中 世」、「近世」および「現代」に分けて紹介されて いる。21世紀最初の年に出された本書の意義は大 きい。21世紀は女性の世紀とも言えそうな印象を 与える。

今や女性の社会進出は世界的な傾向であるが、

日本で世界の女性あるいは日本の女性に注目した 本は少なくない。そんな中でスペインの女性で必 ず取り上げられるのは、あのコロンブスのアメリ カ発見の旅を支援したイサベル女王その人であろ う。近刊の永井路子著『世界をさわがせた女たち 外国篇』(文春文庫、2003)でも、イサベル女王 は「新大陸に賭けた名ギャンブラー」として登場 している。しかしイサベル女王からわかるスペイ ン女性史はほんの一部にすぎない。

スペイン史をさまざまなスペイン女性を通して みることによって、これまでとは違った歴史、よ くいえば本物のスペイン史がクローズアップされ るのではないかという試みの中で出版された『ス ペインの女性群像−生の軌跡』は、文学者、学者、

フェミニスト運動家、王妃、宮廷女官、政治活動

家、軍人、テロリスト、女優、タレント、歌手、

ダンサー、闘牛士など、じつに幅広い職層から選 ばれた23名の女性が「中世・近世の女性たち」、

「近代の女性たち」、「内戦時代の女性たち」そし て「現代の女性たち」の四つの枠組みの中で語ら れている。

スペインは伝統的にマチスモすなわち男尊女卑 の社会である。女性のマチスモとの戦いは、19世 紀に遡る。大学に女性の入学が認められていなか った当時、「近代の女性たち」のコンセプシオ ン・アレナールやエミリア・パルド・バサンは男 装して授業に出席したという。こうした女性の学 問への覚醒は、「自由教育学院」あるいは第二共 和制との関わりの中で女性の擁護運動あるいは解 放運動へと展開されていくが、内戦そしてフラン コ独裁政権樹立によって、スペインは完全なマチ スモ社会にもどってしまう。スペインは古くから、

闘牛の国あるいはフラメンコの国といわれきた。

フラメンコの世界は女性もまた主役であり、パス トーラ・パボン・クルスやロラ・フローレスらの 女性がフラメンコ史上に大きな足跡を残してき た。一方、闘牛社会は、マチスモの権化といわれ るほど閉鎖的で因習的な社会であるといわれる。

しかし時代の寵児というべきか、1975年以降の民 主主義の到来とともに、闘牛世界にもついに女性 の闘牛士が誕生する新しい時代を迎えることにな ったのである。その名はクリステイナ・サンチェ ス、「男性社会(マチスモ)の偏見と因習のハー ドルを想像力と勇気と精神力と優雅さで打破し て、正闘牛士に昇格したヨーロッパで初めての女 性であった。」

この他、欧州一のパーフェクトレディ「王妃ソ フィア」、女性誌の女王「イサベル・プレイスレ ル」、祖国バスクに散った女性闘士「ヨイエス」、

スペイン内戦の亡命者「マリア・サンブラーノ」、 内戦時の反ファシズム文化活動を率いた「マリ ア・テレサ・レオン」、言葉の情熱の人「マリ ア・モリネル」など、スペイン社会が生み出した さまざまな女性たちの生の軌跡は、新たなスペイ ン史像を浮かび上がらせてくれる。

ばんどう しょうじ(教授・スペイン語学)

スペイン語圏を知る本(その

28

評者 坂東 省次

『スペインの女性群像−その生の軌跡』

(高橋・加藤編 行路社、2003)

参照

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