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「 社 会 学 の 問 題 と 方 法 」

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(1)

富大経済論集 1 1 0  

ギンスバ!グの

﹁ 社 会 学 の 問 題 と 方 法

山 ﹂

本 英 治

カ 1

これはイギリス社会学を代表する著名な M

・ ギ

ン ス

l グ

のなかにのせられた論文

﹁ 同 ︐

H 回 目

ω 合 同

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c 円 山 田 ︒ 町

ω ︒ 氏

︒ ﹈ ︒

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﹂ も

と ︒

つ い

て 書

い た

も の

で あ

る ︒

ギ ン ス パ 1 グは本論文において︑何を意図して書いたかを︑この内容の順序にしたがって忠実に見てゆきたいと思

社会学は網状に交錯した人と人との相互作用や相互関係を研究する学問として定義する︒

そして社会学が他の諸社会科学とことなるその特殊性は社会的事実の相互依存性と︑ それらの事定を相互関係にお

いて見ることの必要性を強調する点によって︑経済学や法律学のような特殊な社会科学とことなり︑また特定の事実

の記述や分類をこえて︑法則を確立し︑あるいは概括を試みようとする点で歴史学のような特殊社会科学とも異って

︵この定義は漠然として︑社会学心何たるかを把握するにはいたらない︒それに社会学の特殊性を述べるにも

い る

(2)

経済学や歴史学に対する認識が誤っていると思われる︶

では社会学の中心問題は何であろうか︒それは四つある︒すなわち

社会形態

l l i ω

人口の量と質とが社会関係や社会集団の性格に影響をおよぼすかぎりにおいて研究すること︒

( a )  

凶社会の構造の研究あるいは社会集団および制度の主要な典型を記述分類すること︒ この二つのことを含む︒

制 社会統制! l 法律・道徳・宗教・慣習・流行その他の生活維持的統制的作用をするもの等についての研究

社会過程||個人間あるいは集団聞の相互作用の種々な様式の研究︒そのうちには協同と葛藤︑社会の分化と

統合︑進歩や制止や哀亡等を含んでいる︒

( c )   ( d )  

社会病理|

l l

社会的不適応と混乱およびそれらについての処理に用いられる方法の研究

の以上である︒ところが今日まで︑これらの諸問題に対する社会学のアプローチの仕方がそれぞれあいことなってい

た の

で あ

る が

それは社会学には四つの源泉があるからである︒すなわち 村政治哲学 同歴史哲学 同生物学的進

レ U A 同 問

J1 コ ロ

同社会的政治的改革運動である o 例えばフランス社会学は歴史哲学の流れを汲むものであり︑イギリスにおい

ては生物学的進化論の影響が強く感じられる︒

‑111‑

この政治学と哲学と社会学との関係であるが︑大体ギリシャにおいて政治は哲学の一分野であり︑現代においても

人閣の生活の諸現象の研究は政治権力の批判からはじまることが多い︒そしてこの研究は人間生活の諸現象を自然法

や別の倫理学的理論に基いた理想的社会の諸概念に照らして評価することであった︒さらに社会学は政治制度のみな

その他に婚姻や家族や身分や階級そして財産所有形態や経済組織のごとき社会制度の研究をもその領域に含む

ら ず

点で政治学の発展したものと考えてよいだろう︒

疑問に思う︶しかし注意しなければならないのは倫理学的分析と事実研究を混入することである︒

︵ こ

う 一

一 一

日 う

観 点

か ら

社 会

学 を

政 治

学 の

発 展

し た

も の

と 考

え る

こ と

ギ ン

ス パ

1 グ

の 寸

社 会

学 の

問 題

と 万

法 ︵

山 本

(3)

宮大経済論集

‑112‑

次に社会学と哲学との関係であるが︑これはよくその境界線が判らなくてアイマイとなりがちなのである︒デュルケ

ムは︑はじめ社会学を哲学から切りはなすことが望ましいと考えて︑事実を﹁ありのままに﹂

E S

S E

2 仏

ロ ﹃

︒ 古

Z

取扱うことの重要性を説いたのであるが︑終には社会学を︑社会から道徳的宗教的価値をさらに思惟形式をさえも引

き出す一種の哲学に変えてしまった︒イギリスではホップハウスが倫理的色彩をもった術語の使用を避けようとし︑

また社会科学と社会哲学とをはっきり分けることに努力した︒

ドイツでは社会学の性格をはっきりさせるために︑社会学の特定の研究分野を定めようという動きがあった︒例え

ば ウ ィ l ゼ 1 の﹁関係の概念﹂︑またプイアカントの ﹁リーダーシップ﹂や﹁尊敬しゃ﹁斗争﹂や﹁権力﹂などの考

方がそうである︒しかしこのように人間生活中の社会的要素のみをとりだしてその抽象的議論はあまり成果がないよ

うに思える︒社会学は社会的要素のみならず他の要素もそれと関係づけ︑その影響をも調べることが必要だと思われ

︵ここで判るようにギンスバ l グの考方は形式社会学に対して綜合社会学的立場にたっていると思われる︒社会

関係一般の研究が社会学の任務でこの上に特殊社会学を附加してゆこうと言うのが彼の考方である︒これは後に明ら る ︒

かとなる︶次の節からは社会形態︑社会統制︑社会過程についてやや詳しい説明を行い最後に社会学の方法について

述べようと思う︒

宇 土

品 一 A

芳 5

人口と社会構造に分けて述べる︒

A  人

人口についての考察は量と質の二面からアプローチする︒

(4)

量的側面 この側面が社会形態研究の出発点であるにもかかわらず︑社会学者はこれを体系的に取扱っていな

ぃ︒しかしまた種々の社会現象と人口の大いきおよび密度を関連づけようとする試みも見られるのであって︑例えば

デュルケムによれば人口の密度の増加は社会分化の主因であり︑文明は接触の増大によるから本質的には人口密度の

増大に関係があると一言うのである︒さらに他の例を民勢統計的なファクターと戦争の関係についての研究からあげる

と︑司・の島民は人口の急激な増大につれて帝国主義的な態度が強くなり︑領土拡張や敵対意識を強め︑結局戦争を惹

起すると説く︒しかしこの関係はもっと複雑なものである︒︵人口と戦争の聞には必然的な関係がないのは明白︒さ

らにギンスパークはトインピ 1 の﹁帝国主義は現在までの記録によると文明破壊のもっとも共通の原因であった L と

言うに対して︑果して正しいであろうか?と疑問を投げかけているが︑これはギンスパークの歴史に対する認識の誤

りであり︑反動性とも言える︶

質的側面 この人口の質と社会生活および社会変化との関係については種々の方法でアプローチされてきたが

それを例示すれば︑

︵第一︶塵史家が仮定的に人種的あるいは民族的特性の点からする社会過程の説明

︵第三︶いわゆる﹁人類学的社会学者﹂による選択的移動やその他の社会淘汰形式について多くの統計学的研究

︵第二一︶社会的流動性の研究と選良循環

口 町 口 己 主 目

︒ 口

︒ 出 色 町

2 の理論︑すなわちパレト l の理論のように﹁社会

構造やことなった文化型と言ったものはその人口のうちに一定の型をもった個人によって決定される﹂と言ったごと

‑113‑

き で

あ る

以上の研究は社会心理学に根本的に重要な問題を提供する︒社会の変化と遺伝的特性の変化の関係は極めて微妙で

ある︒時には遺伝的な型を現実に変化させることなく︑大きな社会的変化を可能たらしめることもあるかもしれな

ギ ン

ス バ

l グ

の ﹁

社 会

学 の

問 題

と 万

法 ︵

山 本

(5)

富大経済論集 114‑

ぃ︒さらに社会的行動を説明する場合︑生得的性質に訴えるときには充分の注意が必要である︒

社会構造

社会構造を充分に説明するには比較社会制度の全分野の概観を伴うことになるからここでは社会集団および制度の

主要典型を分類するのに有用な主要概念について述︑へる︒

まずテンニ l スの共同社会と利益社会の概念からはじめる︒共同社会は自然発生的に生れる集合形態であり︑感情

の一致およひ深く全人格に根ざした一つの意志典型日本質意志君

2 2 4 L

に基いている︒そして有機的︑自然発生 r

的︑創造的である︒これに対して利益社会は人為的に形成されたもので撰択意志同己唱呂町にもとやついている︒そし

て﹁文明の歴史を見ると全体として共同社会から利益社会への移行が見られる︒さらに共同社会と利益社会の区分は

三つの規準と結びつけられる︒すなわち川集団が全体として作用することを可能にする共同の確定意志門店

2 5 E a

当 邑

ω 対等関係か支配関係かの問題︑この二つによって三の関係様式があたえられる︒

巳 曲

目 ︒

総 体

ω 担

B Z

ロ E

h g

ロ 団

体 何

内 申

同 ℃

22

官 同 窓 口

社会関係

ω O

N E

− 巾

︿ R F 日 目 寸

である︒そしてこれらの三つは各々共同社会的である場合もあれば

利益社会的であることもある︒

R − M ・マッキ l パ l はコミュニティと 7

ソ シ

l ションの概念を用いている c コミユ二ティは共同生活の基礎的

条件に参与がおこなわれているような集団で︑その集団メンバーの社会生活の総てがその内部に見出されうる

0 7

シ エ

l ションの方は特殊目的のために存在する c さらに自然発生的形態と言うカテゴリーがある︒これは例えば社会

階級や群集のごときものである︒ そして集開なる概念は﹁相互間の特殊的関係に入る社会的人間の任意の集合体﹂と ω

総括的地域的統一体叫利益意識を有しているが一定の組織

規定してある︒さらに三つの主要な集合形式として

をもたぬ統一体間 利益意識を有ししかも一定の組織をもっ統一体をあげである︒

(6)

フォン・ウィ

l ゼ l は﹁社会的距離﹂ 8 己主任出窓口口出なる概念を用いている c それは成員の結合関係の接近性応

るいは直接性の程度によって規定しようと=一↑口うものである︒彼は群集宮田曲目印ロ集団︒

2 2

g

f 抽象的集合体﹀

F2H

件 言 問 ︒

〜 r z

− g の三つの分類を考えている︒群集は共通の感情と統一体であるという漠然たる観念によって集って

いる組織をもたない不特定の人数から成立︒集団は認識されうる同一性と統一性をもっ形態である︒抽象的集合体は

芸術や科学およひそれに対して補助的役割を営むものである︒この概念は社会の内部に結社でもなく︑またいくつか

F 4 J R 一 ︒

手 J1LJI の結社から合成されたものでさえないところの多くの複合体︒︒ BE 由同が存在することを指摘した点で貴重な貢献を

今まで述べてきた以外に社会構造の分類を図示するならば次のごとくになる︒

+~春 it'!:

団 社も会

‑115 

人絡間接触がキソ 非人格的後触がキソ

となっているもの となっているもの

I  I  I  I 

包 括 的 継 統 制 限 さ れ 包 括 的 継 特 殊 的 倒 的 関 係 . 例 た あ る い 統 的 関 係 係 , 例 え えば家政. は一時的例えば. ば労働組 j [ i : 類関係小な関係, |町.国家合の如き ネ 士 会 あ る い 例 え ば 群 政 治 結 社 結 社 , 学

は 原 始 社 会 集 界

S d i 集

例えば社会階級. 「公衆」あるし\は スポーツや社会改革などに央通の関 心をもっ「{!ド間」

機能的組織あるいは複合

例えば資本 j 議制度釘怨制!立又はも っとも包話的複合すなわち「文化 凶」あるいは文明

国 J ぇ

ギンスバ l

グ の

﹁ 社

会 学

の 問

閉 山

と μ

法 ︵ 山 本

以上の考察から生ずる問題は次の如くとなる︒

( a )  

﹂れまで区分された種々の集合様式はそれ

ぞれいかなる条件のもとに生ずるものであろう

か︒例えば国家の出現を決定するものは何か︒+一衣

見的集団あるいは総体から結社の如く明確に組織

された集問への移行を決定するものは何か︒

L U  

異った集団や表見的集問は機能的組織あ

るいは全体としての社会とどのような関係にある

( c )  

や制度のこうむる変化は何らかの

(7)

富大経済論集

‑116 一

性があるか︒またこれらの変化は相互に機能的な関係を有するか︒例えば財産制度の変化は家族組織における変化と

関係を有するか︒また階級構造の変化は経済的・政治的構造の変化と機能的に関係しているか︒︵この点に関しては

マルキジズムの立場にたてば明確に理論づけを行うことができる︒ギンスバ 1 グは社会構造については何等積極的に

理論展開をしていない︶

統 市

d 』

2 玄

発達した社会には法律︑道徳︑宗教︑慣習︑流行のような行動を規定し統制する規範典型がある︒これについて重

要な問題は

( a )  

﹂れらの規範を相互に区別する特性は何か︒

( b )  

どのような社会的経済的条件の上に種々の規範が現れかつ分化するか︒

種々の形式の社会的規則は相互にどのような影響をおよぼし合うか︒

特に法に関してはそれが観念的な正義といかなる関係を有するか︒またこの関係を研究するのに確実な方法が

あ る

か ど

う か

( C )   ( d )  

この諸問題について今日まで多くの比較研究がなされてきたが︑包括的な綜合の仕事はいまだ達成されていない︒

一定の規範が社会がことなることによって︑法︑宗教︑道徳︑慣習︑流行のどの領域に自問するかがことなってく

る︒ところがこの問題に対して社会学的事実の問題と哲学的あるいは倫理学的考察とを混同する傾向がみられる︒す

なわち一般的に法は他律的で道徳は自律的だといわれているが︑高度に発達した形態をもっている道徳は外部的制裁

によるところが大であるから他律的と一言わざるをえない︒したがってこれについては次のごとく言うのみである︒道

(8)

徳上の規則はより内部的な制裁に︑すなわちある行為の﹁本質的 L 価値および或る規則の木質的妥当性が個人によっ

て承認されることに依存しているということである︒またこれに対する反論として﹁法は道徳のミニマム﹂と言うの

もある︒すなわちある行為が社会の安寧のたのに本質的重要性をもつので︑個人の選択や分別に任せられない場合に

法的規制を行う︑ しかしこれにしたって︑法は必ずしも道徳規範に従うものではなく︑もっと広範

と 一

一 一

一 口

う の

で あ

る ︒

囲のものである︒これらのことから判るように形式のことなった社会的規範相互間の複難な関係は簡単に述べえない

の で

あ る

が ︑

二応次のごとく定式化しておく︒

①﹁法律規範は少くともそれの起源である集団内部で非常に重要で根本的意義をもっていると考えられている事

柄 を

規 制

す る

︒ ﹂

︵ エ

l リッヒ︶しかし社会がことなれば事柄の意義もことなってくる︒

① 

一般に形式と厳密さとが法の本質的属性であるが︑道徳のなかにもこの嵩性をもったものがある︒

道徳体系の明確性欠如の一面は道徳上の権利義務の対応が法の場合よりも厳密でないということである︒道徳

の場合は厳密な適用が個々のなすがままに任されてあるような一般的な権利義務が存在する︒

① 

④ 

種々の規範はそれぞれことなった感情に訴える︒

次に道徳の心理学および社会学の研究の︑主要な方向を指示しようと思うが︑

を研究する場合は倫理学的考察から切りはなして考えるべきである︒ その前に注意したいことは道徳の問題

117‑

さて道徳の心理学的側面においては︑十八世紀のイギリスの道徳学者は道徳の承認および否認の分析に多くの関心

を払った︒例えばアダム・スミスは承認や否認は単純実存丘旨℃

FE

江 氏

2 であるという考方から出発した︒承認は

するに我々の感情と他人の感情との一致を知覚することである︒否認は行為者の立場へ共感的に自己をおいた場合に

領と感情を同じくすることができないと知った時︑行為者と傍観者の問に生ずる不一致あるいは相違を知覚すること

ギ ン

ス パ

1 グ

の つ

社 会

学 の

問 題

と 小

刀 法

︵ 山

本 ︶

(9)

百大経済論集 1 1 8  

である c

この一致と不一致の知覚はさらに適当︑不適当の判断︑すなわち感情のその目的に対する妥当性あるいは適合性の

認識を可能にする︒美徳あるいはこの妥当性の判断が賛美と言う承認によって複雑なものとなる︒さらに我々は功績

と不功績をも判断するが︑これは感謝と憤りの感情に結びつけられている︒

以上の分析は他人の適合性や功置に関してなす判断であるが︑実際このような道徳的批判が我自身にむけられるこ

とは困難であるが︑我自身の内に公平なる傍観者をつくるか︑義務感と言う一般的規則の助けをかりねばならない︒

ウエスタ l マークの道徳的情緒に関する理論は A ・スミスの功漬と不功績の説明と酷似している︒彼は﹁応報的﹂

B R

F E

昨日

4 巾感情と言う概念を功積不功績の観念に代えた︒

道徳的判断の公平と普遍性は︑ それがある特定の個人によってではなく︑社会一般によって感じられる感情を表現

しているという事実 f よるものである︒

アレキサンダ

l はウエスタ l マ 1 ク以上に A ・スミスに近い立場にたっている︒すなわち彼は﹁我々は相互の行動

に関心を持つようになり︑ それによって敵意と感謝との基本的衝動が非難と賞讃に変る︒我は何が他人の敵意を呼び

お こ

す か

また他人を同情させることのできるものは何かを発見する︒そしてこれらの発見は少くとも共同生活の最

も単純な条件に関するかぎり︑変ることのないルールとなる︒﹂ と述べている︒理性は感情を満すために必要な手段

の発見ばかりでなく異った目的の冷静な比較およびそれらの牽引力の均衡を保つこととも関係していると︑彼は主張

するが︑調和作用の主体が理性であることを認めようとしない︒最高の善意でさえも社会的適応と一一一一日う難問を解決す

るには不充分である︒実際理性は社会的適応を確保するのにそれほど大きな活動領域を与えられていないと言うこと

は真実であるけれども︑ これらの客観的条件を決定するのは確かに理性の役目なのである︒ 7

l 自身の理

(10)

論は主として道徳の性質を理解するためには︑社会的適応の仕方が現実にどのような変化を生じたかを研究すること

にあると思われる︒

さらに道徳の根源は社会本能のうちに見出されると一言うベルグソンの見解がある︒これは

﹁ 閉

じ ら

れ た

道 徳

﹂ と

﹁ 開

い た

道 徳

﹂ と

一 一

一 口

う 二

つ の

区 別

に よ

る も

の で

あ る

課せられるものである︒ ﹁閉じられた﹂集団における道徳は社会的習慣の抑圧によって

これに対して﹁聞いた﹂道徳は集団の道徳ではなくて︑徳性が集団を超えて人類の愛を喚起

し︑のみならず絶対すなわち神への愛を鼓舞するような例外的な個人例えば神秘家や予言者や聖徒のごとき人々のう

ちに見出されるものである︒閉じた道徳は抑圧を通じて作用するが︑聞いた道徳は説得や憧僚や熱狂によって作用す

る︒前者は静的固定的であり︑後者は常に形成されつつあり︑この二つの道徳は質的にことなっており︑ 一 方 か ら 他

方へ導く直接の道はない︒しかし彼のニつの区分はあまりにも極端にすぎ︑ ﹁閉じられた﹂道徳の固定を誇張しすぎ

それにあまりにも安易に神秘的な力に訴えす︑ぎている︒

以上の概観によって道徳心理学は︑道徳を義務と承認︑強制と憧担問︑ 正と善との聞を移動すると言うように示して

きた︒そしてこれは衝動と理性の︑社会的衝動と他の衝動の︑あるいは自由な知性と自動的習慣との斗争に︑帰せら

れてきた︒しかしながらより根本的な説明は道徳は個人と集団の生活に同時に秩序をもたらさんとする試みであり︑

仮に両者の聞に一致がえられるとしてもそれは非常に困難を伴うものであると言う事実のうちに見出されるべきであ

‑119 

ろう︒道徳上の規即は社会構造の要求からうまれるものであり︑それは人間関係の集団の要求への適応を体現するも

のである︒しかしながらその適応は大部分組雑で非組織的であり︑個︑人は集団のより大きな秩序への要求に従う時に

屡々自己の内奥の要求を満すことができないということがおこりうる︒その上に︑社会が一一層複雑になるに従って層

をなした集団がその内部に発生し︑ それが忠誠の分化と衝突とを惹起する︒その時に義務は形式化された習慣の強制

ギ ン

ス パ

l グ

の ﹁

社 会

学 の

問 題

と 方

法 ︵

山 本

(11)

宮 大

経 済

論 集

1 2 0  

や集団の提議の単なる反映ではなくなり︑義務感は単に規別であるという理由によって規則を容認することよりもも

っと複雑なものとなる︒ギリシャの思想家が善の観念を強調したのと対象的に現代の倫理学が正や義務の観念を主調

しているのは︑おそらく道徳上の規則をうけ入れる時︑同時に個人の意志が満たされるという考方が現代の諸条件の

もとでは失われているからであろう︒道徳的規則をうけ入れることによっで個人の意志が果されるということの困難

さは自らの属する社会内部のことなった諸集団の間でおこなわれている道徳的標準の多様性︑私的な道徳と公的な道

徳の矛盾︑あるいは精神的宗教の倫理的教訓と現実において知的に啓発された人々さえも導いている道徳上の諸原理

との間のくい違いなどによって︑反省的個人には痛切に感じられている︒

精神分析学派ではこの道徳判断の基準を﹁超自我﹂に求めている︒これはアダム・スミスの内部の傍観者すなわち

スミスの場合は傍観者の毛デルを与えてくれるものを社会集団としている ﹁胸の中の人﹂に相当するわけであるが︑

のに対して︑分析学派で父親としている︒これは家族をより広い社会集団からあまりにも孤立させて考えており︑特

に集団の家族におよぼす影響を無視する傾向がみられる︒

道徳の社会学的研究において︑もっとも興味ある問題は道徳的判断の可変性と関係がある c しかし比較研究におい

ては基本的社会関係に関しての道徳的判断の不変性が明らかにされている︒変化のある点は規則が適応されうる人々

それに伴った愛他的感情の拡大と共に大きくなって の範囲であり︑これは盛史の進むに従って社会的単位の拡大と︑

きたものである︒その他の変化は知識の一般的水準の相違︑宗教的信仰の変化︑社会的政治的環境の不均等の複雑さ

人生の目的がどれほど明確 ι 理解されているかの程度︑一部の利益の優越︑あるいは全体的な善とそれぞれの構成部

分の善との関係を確定することの圏難さから生じる混乱等に見られる︒ とくに次第に進歩する社会的分化と共に各々

の道徳をもっ階級的秩序が出現してくる︒

(12)

道徳の形成における経済的政治的知的宗教的要素の相対的な重要性の問題は容易な問題ではなく︑社会学がこれを

解決する方法をもっているかとうか疑わしい︒

︵ 以

上 ギ

ン ス

l グが述べた所はスミスその他の紹介であり︑道徳論

でありまた抽象論としてのみしか受けとれない︑社会統制についての社会学的考察やそれについての彼の理論は見ら

れ な

い ︒

四 社

A t A  

この節では社会進歩と社会進化の問題について述べる︒

進歩と進化の概念は生物学的変化の過程よりも精神や社会の発達と明白な関係をもっているが︑社会学上の理論は

生物学および生物学と直接に結びついた哲学的思索において通用している進歩の概念によって深く影響されてきたの

だから︑社会進化をこれらの概念に照らして考察するのが有益である︒この点で三つの理論方向を区分することがで

き る

が ︑

これらは共に社会変化の研究から影響をうけたが︑また逆にそれらに影響を与えたものである︒

第一に進化は︑これまでに同種族ないし複数の同一種族が分化する過程︑すなわちダ l ヴィンの一言う﹁変更をとも

なった進化﹂

L 2 2 2 0 h E C

円 三

日 ロ

伊 丹

芯 ロ

の 過

程 を

述 べ

る に

用 い

ら れ

て き

c

第二に生物学者が一進化﹂ 岳民叩

S E U Z

ロ C

c h

門 出

︿ 叩 吋 目 見 付 与 −

o ロ

c h

告 白

口 町

四 国

の 過

程 だ

け で

と言う術語を種の分化

1 2 1 一

く︑生物が進化するうちに﹁より低い﹂ゲ当日生活水準より﹁より高い

L E N r R

生活水準への移行がおこったとい

う事実を述べるために用いてきた︒このことは社会学の進化の概念と容易に結びつけられるのであるが︑この﹁より

低 い

L ︑

﹁ よ

り 高

い ﹂

と 一

= 一

口 う

概 念

は 社

会 学

と 生

物 学

で は

こ と

な る

第三に進化の概念は一般化されて自然界のあらゆる範囲に適用され考えられた﹁創発的進化﹂

2 5

詔 g

2 0 E −

芯 ロ

ギ ン

ス バ

l グ

の ﹁

社 会

学 の

問 題

と 刀

法 ︵

山 本

(13)

日大経済論集

‑122  ‑

の理論においては︑ 一一注の系列の中に示される如き綜合作用の連続的秩序を精密に書き出そうという試みがなされて

いる︒このような試みは︑種々の社会が進歩の次の段階を構成するようになると考えるようになるかも知れないし︑

またあらゆる既存の社会は一連の上昇的段階のなかに整列されると呂田うことを推論することによって︑社会学に影響

を あ

た え

る ︒

人類の文化の進歩についてタイラ 1 は多くの例を挙げて説明しているが︑進化の概念は生物学においてよりも文化

の研究において一一層容易に実証されると終始努力してきた︒

ところでこの文化の基礎である言語進化について社会学は︑もっと研究せねばならない︒なぜならば社会変化に関

係あるあらゆる中心的な問題を提起するものがこれであり︑さらに生物進化と社会進化の重要な相違点︑を明らかにす

る か

ら で

あ る

人聞社会におけるもっとも重大な変化は遺伝的変化のメカニズムが社会的遺産あるいは伝統によっておきかえられ

ることである︒この新しいメカニズムは限りなく拡大する規模において協同を可能にする︒なかんずくそれは﹁社互

すなわち時間や空間の遠近にかかわりなく他人の経験から学習するという力を無限に増大する︒人間進歩を

学 習

﹂ ︑

他とことなって特に社会進歩とするのはこの変化である︒伝統や相互刺戟や選択や協同などを通じての人間の潜在力

の発展と現実とは︑主として社会組織を構成する個人関係の変化によって進行するものである︒

そして社会進歩が社会的であると一言われるのは次の二つの意味においてである︒

第一に︑それは社会構造の変化および特に伝統の変化を通じて作用するものであり︑主として遺伝的形質の変更を

通じて作用するものである︒

第 二

に ︑

それは人間関係における協同的要素の拡大のうちに存すると言える︒

(14)

第一の点は﹁人種的﹂およびもっと一般的・な発生的要素が人間進歩におよぼす影響についての困難な問題を樋起す

第二の点に関しては︑明らかに人類の歴史の大部分を通じて巨大な単一化の運動がみられる このことは政治的集 c る

合体の規模の拡大や政治的経済的相互依存性の増大のうちにまた文化上の多様性にもかかわらず︑科学︑芸術︑宗教

作用が根本に横たわっていることのうちに一示されているつ

しかしこの単一化の傾向を主張する際に暴カや強制の要素を無視しがちだが︑これらの諸要素も社会組織化の領域を

拡大するのに確かに大きな役割を果したのだから社会進歩の概念に含まれるべきだと言えるかもしれない︒そしてこ その他文化一般において同化あるいは牧放ロ C

口 語 詔 32

の問題へのアプローチの方法は二つある︒ 一つは人類全体の歴史を見ると︑協同の原理が次第に斗争の原理に対して

優位を獲得してきた︒£力から説得への一般的動向は支配者の側における戦術の変化にすぎないとしても︑そのよう

な変化がおこなわれなければならなかったという事実は︑知識がより普及したこと︑人々のなかに自ら方向を指定す

る力が確立されたことを示すものである︒さらに戦争によってつくられ︑維持された帝国は結局戦争によって崩壊し

てしまったと言うこと︑また永続的な繁栄は征服者が首尾よく暴力を権力に変質し︑被支因者の同意︑あるいは少く

とも暗黙的な承認をかちえることによってある程度の内部的統一を確保しえた時にのみ達成されたということが言え

ると思われる︒他の方法は最少の強制で広い範囲にわたり秩序と能率を確保し︑かくて人間能力の達成あるいは実現

のためにより多くの機会を与えた社会がより高度の組織をなしとげたと主張することによって︑第一の場合と同じ見

‑123‑

地から人聞社会を一つのものさしの上に配列することができると言える︒このような進歩の方向が唯一のものである

と し

て も

それは人類に与えられた可能性を一示すものとしてその重要性を保つであろう︒すなわちただ一つの方向に

沿ってのみ進歩があり︑その未来における可能性が継続される︒これが人聞の進む方向である︒そしてこの方向を歩

ギンスパ l

グ の

寸 社

会 学

の 問

題 と

方 法

︵ 山

本 ︶

(15)

宮大経済論集

A ー

η J

んでいる社会は結局他よりもまさる生命力と末来における発展の有望性を示す︒

以上によって︑発展的な社会進化は ①心および社会をも含めた自然に関する知識を増すことによって︑生活の諸

条件に対する支配力が次第に大きくなること

されることによって協同が発達すること ①一部は社会の範囲の拡大によって︑

①協同の性格が自由の方向へと変化し︑人間の単一性の観念と秩序と自由 一部は諸社会聞の関係が組織化

の要求を世界的規模において一致させることの必要性が人々の意識のなかに入りこむ︑ と一言う三つのうちに存在す

る 。

人類全体として眺めた場合に︑明らかに一方における発展は他方における損失と後退を伴うものであった︒こうし

て組織規模の増大はしばしば服従の原理にもと事ついて達成され自由の喪失を意味するものであった︒同様に自然に対

する支配力の増大︑あるいは集団的能率でさえも個人の根底にある欲求を知みない︒

そうである︶しかし差引きずれば︑ ︵特に資本主義社会においては

しばしば純益が残ったであろうし︑またある社会は他の社会に比べて発展的進化

の道をたどった︒︵しかし純益は一部支配者のみに残るのであって︑他の人々はそのおこぼれ頂戴と言う形である︶

もし進歩が人聞に個有の能力の完全な実現あるいは達成が除々に成し遂げられる過程の中にあるものと理解されるな

らば︑社会のメンバーの聞に共同目的に対するもっとも自然発生的な献身的熱情をよびおこし︑知的エネルギーの貯

えを最大量に放出せしめるような社会がもっとも進歩した社会と見なしてもよいであろう︒実際このような方向に最

も高度に発達した社会は.服従にもとづきそのメンバーの大部分に独創力をはたらかせる余地を与えない社会に比べ

て︑より大きな生命力をもっと言っていいと思われる︒

しかし進歩の概念については倫理学的判断を必要とする︒すなわち人間性および社会組織自体をも含んだ意味での

また一つの社会内における知的で自由な 自然に対する支配力の増大は惑い目的のために使用されるかもしれないし︑

(16)

協同でさえも︑他の社会の正当な要求を無視し踏みにじる限り倫理的には悪であろう︒総ての進歩が否︑社会的進歩

でさえもがすべて善であるとはかぎらない︒進歩の仕方が一様に行われなかったら︑一方における進歩は他方の進歩

を妨げることになり︑また破壊をも導くかもしれない︒したがって進歩は世界的規模で行なわれなければならず︑相

互に依存し合い︑進歩が合理的にコントロールされなければならない︒

︵ 以

上 の

ギ ン

ス パ

l グの社会過程の分析は︑明確に意図する所が把握しえず哲学的一般論に終っている感じであ

る︒歴史的社会範鳴のとらえ方が足らないと思われる︶

五 方

種々の社会科学における概括の諸型式

社会科学上の研究方法すなはち概括の仕方を類型別にすると次の六つに分けられる︒

具体的社会現象聞の明確度の異る経験的関連または相関関係についての概括︑このような方法により︑或る地

域においては都市の離婚率が田舎のそれの約二倍近くであることや︑結婚率は商取引量の増減景気変動に従って変る

① 

ことや︑或は地方よりも都市の方が犯罪率の高いことなどが示される︒

‑125 一

①制度その他の社会組織が生れる条件を定式化する概括︒例えば資本主義の発展は容易に入手できる大市場の存

在︑生産技術が間接的方法によって生産を有利にせしめるに充分な程度にまで特殊化されていること︑独立で生計を

うることに困難な労働者階級の存在等と関係があり︑またおそらく蓄積された宮を利潤獲得のために用いようとする

欲求や能力等にあらわされる一定の心的状態︑その他の要素とも関係している︒

① 

一定の制度における変化は他の制度における変化と規則的な関係を有すると一言う概括例えば単純社会や初期的

ギ ン

ス パ

1 グ

の ﹁

社 会

学 の

問 題

と 方

法 ︵

山 本

(17)

富大経済論集

‑126‑

文明における公的秩序の拡大は︑社会的経済的服従の原理に従った成層の拡大と結びつけられるであろうし︑あるい

はまた社会的文化的変化は例えば史的唯物論の信奉者達によって階級組織の変化と関係しあっていると主張されるで

あ ろ

う ︒

種々の規則的循環または段階連鎖を主張する概括︑この例としてプヒャーやシモラーによってなされた経済発

展の段階区分の試みや経済発展は拡張と牧縮の間を︑あるいは上からの貴族制的支配の段階から下からの民主制的支

④ 

配の段階へと推移すると言う見方がある︒

① 

人類全体としての進化における主要方向を示そうとする概括︑例えばコントの三段階の法則︑末分化のあるい

は無階級の社会から種々の形態の階級分化を経て︑再び無階級の社会へ移るというマルクス主義の理論︑社会的進歩

と精神的進歩とを関係づけようとするホップハウスの試み︑その他一定の連鎖関係の循環乃至反復を強調せず︑全体

としての人類文化の中に解き放された種々の方向に関心をもっ多くの社会進化の体系︒

人聞の行為についての仮定の伴立について述べる法則︑しかしこれは仮説がどの程度まで事実と一致するかと

@ 

言う問題および逸脱が妨害的要素によってどの程度まで説明されうるかと一百う問題はもっと進んだ研究に委ねられて

いる︒この例としては経済理論において定式化された諸法則がある︒

社会学について言えばミルの﹁逆演搾法 L ︑

H D J H

由同日目ロ包口口氏︿ぬ富市同

内向と言っている方法でなされるべきである r c

と思われる︒換言すれば帰納的概括はそれに到達するのに用いられた方法が統計的方法であれ︑

もっと究極的な法則からの演緯によって証明されなければならないっ 比較研究法であれ︑

例えば人類の歴史における長期的な方向を定式化しようと言う概括は︑ 比較研究によって得 b れたデーターからの

帰納的推理によって支えられているのが普通であるが︑ しかし多くの場合︑もっと広大な進歩の現論と演結的に結ひ

(18)

つけられている c

スベンサ l の軍事型社会から産業型社会への進化の法則は明らかに逆演鰐法によって︑すなわち強制的および自発

的組織の性質の演標的分析によって支えられた多数社会の比較によって到達されたものである︒さらにその全議論体

系は機能分化が進むにつれて結局それは政治的機関の活動領域を限定し︑ますます広汎な社会生活の諸分野にわたっ

て︑自発的契約的協同を促進するにちがいないという仮定にもと

q

ついて彼の進化の一般理論と結びつけられている︒

デュルケムの﹁機械的﹂典型の社ムーから分業に基一く﹁有機的﹂典型一の社会への進化の法則は︑帰納方法により︑な

かんずく二つの典型の社会に行われている法律制度の比較によって確立されたものである︒

ホップハウスの社会学的理論は人類学や歴史学から得られた諸事実についての広い帰納推理に基礎をおいている︒

彼は認識作用︑自然力支配︑倫理的宗教信念と習慣︑および想像的創造への諸方向に人間精神の進歩をたどってい

る︒その結果︑彼は組織化︑統制や管理における能率や相互的欲求を満たすための協同等の規模や個人的進歩の許さ

れる範囲などによって測定されるごとき社会組織の進歩と精神進歩との聞に一つの相互関係を設定しようと試みた︒

しかしその相互関係は雑然として︑かつ間接的であり︑その上特に社会的進歩の倫理的進歩に対する適応には時間の

ずれがある︒だがホップハウスの見方では歴史的進化の基礎に横たわる力は︑精神の次第に大きくなる力のうちに見

出されうると言う仮定を正当化していることは極めて明白である︒

‑127‑

前述の概括の六つの型式のうちで④に属するものだけは演樟的に到達されたものである︒経済理論の場合には︑演

鐸的理論を経験的事実に移す方法に関して意見の相違がはなはだしいようである︒一方の権威者によれば経済学の法

則は人聞の行為に関するある仮定の伴立を明きらかにする分析的命題担 E − 3

℃ 5 匂 g

E C

ロである︒これらの仮定が

事実に一致する限り︑妨害的要素がなければ︑伴立は実際に王しいものとされる︒しかしながら他の権威者は︑経済

ギ ン

ス パ

l グ

の ﹁

社 会

学 の

問 題

と 万

法 ︵

山 本

(19)

富大経済論集

‑128 

法則を事実によって検証さるべき仮説であると考える c 後者にとっては帰納と演樟は一連論理的操作の不可欠のもの

であるが︑前者にとっては帰納は何らの検証的機能を果さないのであって︑経験的研究の役割は単に他の方法で︑す

なわち演揮的に確立された理論が正しく適用される領域を明らかにすること︑あるいは演揮のために新しい問題を提

起することにすぎない︒ ︵ここに述べてある概括の方法も抽象論であり︑哲学的考察で︑社会学の方法について述べ

であるとは言えない一般論である︶

B  比 較 研 究 法

A で見たごとく多くの社会学的研究においては比較研究法の助けをかりねばならない︒ここではこの比較研究につ

いて少々説明を加える︒

本質的にはこの方法は帰納論理の一般法則の適用である︒すなわちこの方法は可変的な非木質的な要素を除去し︑

本質的で不変的なものに到達せんがために︑ある一つの現象の情況を変えるのである︒この法で独特なのは︑ことな

った時間と空聞から得られたデーターを使用することである︒

さらに個別的棺違を一示す現象の研究から複合された社会組識や社会制度の研究に移るや否や比較研究法の重要性が

明きらかとなる︒例えば奴隷制や農奴制やその他の経済組織の形態が生れた条件を知ろうとするならば︑異った社会

におけるそれらの歴史を研究することが必要である︒要するに社会学が記述的段階から分析的段階へと移るや否や比

軽研究法が︑発生的関係をたどるためにもその他如何なる因果関係を確立するためにも同様に欠くことの出法ないも

の と

な る

比軽研究法の第一次的目的は因果分析を促進するために社会形態学あるいは社会関係諸形態の分類を与えようとす

るものである︒これは何故ある形態に続いて他の形態が発生するかを説明するいろいろな原因の分析をも含むけれど

(20)

も︑我々はこの研究の最初から社会変化の法則は必然的に進化的な性格をも有するものと仮定することはできない︒

比較研究法を適用する場合には︑仮定的な第一段階から出発して︑ しかる後にその後の進歩を推論してはならな

ぃ︒歴史的発生についての証拠資料が欠けているのであるから︑ いやしくも初期的段階の再編成をなさんとするから

には︑それは研究の最初においてではなく︑その最後においてのみなさるべきである︒換言すれば我々が諸制度の性

質についてまたその制度の現われる条件について既にある程度の知識を得た時に︑はじめて我々は失史時代の原始人

が住んでいた情況においてはどのような制度が存在しうる可能性があるかを推論することができるのである︒そのよ

うな再構成は他の方法によって確立された理論や事実からの推論の結果であるべきであって社会学的理論の基礎とさ

れ で

は な

ら な

い ︒

以上においてギンスパ 1 グの﹁社会学の問題と方法﹂の紹介は終ることになるのであるが︑これは問題と方法につ

いて体系的にかかれたものとは言いがたく抽象的一般論として理解せねばならない︒しかもギスンバ 1 グ身らの理論

をうち出しているのではなく︑第三者的批判的立場でこのテ

1

にふれていると思われる︒すなわち本論文は社会学 7

の簡単な概論でもなく︑また特殊の問題提起でもなく︑今日までの﹁問題と方法﹂を客観的に考察批判していると恩

われる︒我々はその批判から教えられる所多いのであるが︑ただ残念なのはそれが哲学論的抽象論にすぎたり︑他の

学説の単なる紹介であったりする点と︑この批判の社会学の進歩に対する積極的な意味の少きであり︑さらにはギン

ス パ

1 グの社会学理論で貫ぬかれていない点である︒

‑129‑

ギ ン

ス パ

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問 題

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法 ︵

山 本

参照

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