経 済 社 会 の 秩 序 形 態 ︵ 一 ︶
││ 二軸 によ るマ ッピ ング と現 状診 断
濱 野 亮
一 は じ め に
ઃ
本稿 の課 題と 方法
基本 概念 と定 義 二 関係 志向 とル ール 志向ઃ
先 行 研 究
関 係 志 向અ
ルー ル志 向આ
ま と め︵以 上本 号︶ 三 行政 主導 と私 的主 体主 導 四 秩序 形態 の変 動 五 お わ り に
一 は じ め に
ઃ
本稿 の課 題と 方法 本稿 は、 日本 の経 済( )
社会 の秩 序形 態に つい て、 その 現状 を診 断す るた めの 理論 的な 見取 り図 を提 示し
、特 に司 法
1
制度 改革 とそ の成 果を 評価 し、 必要 な政 策的 提言 を行 うた めの 準備 とす るこ とを 目的 とし てい る。 筆者 が既 に公 表 して いる 日本 の経 済社 会の 法化 に関 する 理論 的
( )
研究 と経 験的
( )
研究
、な らび に司 法制 度改 革に 関す る
( )
研究 に続 くも の
2
3
4
であ る。 日本 の経 済社 会に つい て、 本稿 は、 次の 諸命 題を 前提 とす る。 第一 に、 戦後 の高 度経 済成 長を 実現 した 独特 の体 制が
、政 治お よび 行政 官僚 機構 双方 との 深い 特有 の関 わり を持 って 形成
・維 持さ れて きた
。第 二に
、こ の体 制は 環 境お よび 体制 の内 部条 件の 変化 とと もに 変容 して いっ たが
、い わゆ るバ ブル 経済 の崩 壊後
、一 九九
〇年 代に この 体 制自 体の 変革 が政 治課 題に のぼ り、 規制 改革
︵緩 和︶
、政 治改 革、 行政 改革
、司 法制 度改 革と いう 一連 の大 改革 に よっ て根 本的 な転 換が 目標 とし て掲 げら れ、 多方 面に わた る立 法が 行わ れた
。こ れは
、人 々の 意識 と行 動に も一 定 の影 響を 及ぼ して いる
。第 三に
、こ れら の一 連の 大改 革が 目標 とし てい る経 済社 会の 体制 変革 が、
( )
制度 次元 を超 え
5
て、 現実 の次 元で
、ど の程 度実 現し てい るか は、 重要 な研 究課 題で ある が、 まだ 明ら かに なっ てい ない
。現 実次 元 での 変化 の知 見と 分析 を踏 まえ て、 めざ され た制 度改 革の 適切 性を 吟味 し、 必要 であ れば 新た な制 度改 革の 提言 を 行わ なけ れば なら ない
。こ れは
、司 法制 度改 革を 含む
、上 記一 連の 大改 革そ れ自 体の 妥当 性、 その 見直 しの 可否 を 検討 する 上で も不 可欠 の作 業で ある
。 ここ でい う日 本の 経済 社会 の﹁ 体制
﹂と は、 一九 九〇 年代 から 二〇
〇〇 年代 にか けて 政治 課題 とな った 一連 の大 改革 の標 的と して 想定 され てい たも
( )
ので
、本 稿で は、 その 想定 が適 切だ った のか
、そ のよ うな
﹁体 制﹂ が存 在し た
6
とし て、 それ は学 問的 にど のよ うな もの とし て理 解さ れる べき かと いう 論点 は直 接は 扱わ ない
。本 稿で は、 一連 の 大改 革が 経済 社会 と政 治、 行政
、司 法の 根本 的か つ体 系的 な改 革を めざ して いた こと
、お よび
、そ の目 標が
、少 な くと も経 済社 会と いう 領域 にお いて は、 その
﹁体 制﹂ の転 換と 呼ぶ べき 性格 のも ので あっ たこ とを 前提 とす る。 この
﹁体 制﹂ を構 成す る次 元に は、 政治 と行 政の 関係
、行 政と りわ け中 央の 行政 官僚 制と 経済 社会 およ びそ の構 成要 素た る業 界団 体や 個別 企業 との 関係
、行 政と 司法 の関 係、 行政 官僚 制の 内部 関係
︵特 に、 旧大 蔵省
・現 財務 省、 金融 庁、 証券 取引 等監 視委 員会
、旧 通商 産業 省・ 現経 済産 業省
、公 正取 引委 員会
、法 務省
・検 察庁 とり わけ 特捜 部、 など の 間の 関係
、︶ 企業 間関 係が 含ま れる
。 これ らの 機関 とそ の構 成者 は、 公式
・非 公式 の社 会関 係を 形成 する
。そ して
、そ れら は、 政策 実現 に働 きか け、 政策 を実 現し
、法 令の 執行 を要 求し
、回 避し
、実 施し
、権 利・ 利益 を主 張し
、権 利・ 利益 を調 整し
、紛 争を 予防 し、 紛争 を処 理す る。 こう した 多次 元に おい て展 開さ れる 関係 形成 と相 互行 為に おい て、 法令
・判 例な どの 国家 法 とそ れに 関す るコ ミュ ニケ ーシ ョン が援 用さ れた り、 され なか った りし て、 秩序 が実 現す る。 この 秩序 のあ り方 は、 経済 社会 の﹁ 体制
﹂の 重要 な局 面を 構成 して いる
。そ れを 本稿 では
﹁秩 序形 態﹂ と呼 ぶ。 本稿 の目 的は
、一 連の 大改 革が 目標 とし て掲 げて いた もの の重 要な 局面 を法 社会 学の 視点 で整 理し 直す なら ば、 秩序 形態 の転 換で ある こと を示 し、 それ を理 論的 に明 らか にし た上 で、 現状 診断 の手 がか りを 得る こと にあ る。 あ わせ て、 司法 制度 改革 審議 会意 見書 が、
﹁過 度の 事前 規制
・調 整型 社会 から 事後 監視
・救 済型 社会 への
( )
転換
」と 呼ん
7
でい る、 曖昧 だが イン パク トの ある 政策 目標 の意 味内 容を 吟味 する こと と、 従来
、学 問的 に﹁ 法化
﹂概 念で とら え られ てい た現 象を より 明確 にす るこ とも 意図 して いる
。そ れを 通じ て、 司法 制度 改革 が目 指し てい たも のそ れ自 体 の妥 当性 を検 討す る手 がか りを も得 たい
。
基本 概念 と定 義⑴ 秩 序 秩序 の形 成・ 回復
・維 持︵ 以下
、﹁ 実現
﹂と 称す る︶ には
、国 家法 の規 範・ メカ ニズ ム︵ 機構
︶と
、そ れ以 外の 規 範・ メカ ニズ ム︵ 機構 と︶ が、 人々 や組 織を 介し て、 直接 的ま たは 間接 的に 関わ って いる
。両 者は
、必 ずし も排 他 的で はな い。 両者 がい かな る関 係に ある のか
︵お よび
、あ るべ きか を︶
、政 治・ 経済
・社 会の 文脈 に照 らし て明 ら かに し、 その 歴史 的展 開を 追う のが 法社 会学 の、 その 誕生 以来 の重 要な 課題 の一 つで
( )
ある
。
8
秩序 の実 現に 関し ては
、二 つの 重要 な局 面が 区別 され る。 第一 は、 規範 の自 然発 生・ 伝承
・制 定・ 創造 とい う
﹁形 成 ma ki ng
﹂の 局面 であ り、 第二 は、 規範 の現 実化 ない し貫 徹と いう
﹁執 行
( )
en fo rc em en t﹂ の局 面で ある
。後
9
者に は、 se lf -e nf or ci ng な場 合と
、e nf or ce rが モニ ター し、 サン クシ ョン を加 える 場合 とが
( )
ある
。規 範の 形成 と執
10
行の 二局 面に 分け る視 点は
、法 律学 にお いて
、法 ない し法 秩序 を把 握す る際 の基 本で あ
( )
るが
、日 本の 法と 社会 に関
11
する 法社 会学 的研 究に おい ては
、特 にア メリ カと 対比 して
、わ が国 にお ける 法規 範の 執行 面の 特質
︵あ る種 の弱 さ と、 法外 的メ カニ ズム の優 勢︶ を指 摘す る研 究が
( )
ある
。本 稿で も、 この 両面 の特 質を 日本 の経 済社 会の 秩序 に即 して
12
見て いく
。
⑵ 秩序 の実 現と その メカ ニズ ム 秩序 の最 小単 位は 相互 行為 であ る。 相互 行為 は反 復さ れる こと によ って 多少 とも 継続 的な 関係 が形 成さ れる
。こ の継 続的 関係 はそ れ自 体に 秩序 メカ ニズ ムを 内在 させ てい る。 次に 検討 する ルー マン のい う﹁ 接触 シス テム
﹂は こ の一 つの 側面 を理 論化 した もの であ る。 また
、現 代社 会で は、 様々 な組 織が 発達 して いる
。公 式で ある と非 公式 であ ると を問 わず
、人 々は 様々 な組 織に 所属 する
。N PO 団体
、企 業、 業界 団体
、消 費者 団体 等々 であ る。 これ らは
、メ ンバ ーに 対し て秩 序の 場を 形成 す
る。 また
、特 に公 式性 の高 い組 織の 場合
、内 部に 妥当 する ルー ルを 制定 し、 なん らか のメ カニ ズム で執 行す るこ と が多 い。 接触 シス テム は、 組織 の内 部に も、 また 組織 を横 断し ても
、形 成さ れて いる
。こ の他
、地 域共 同体 もそ れ 自体 の秩 序を 持っ てい るが
、経 済社 会に とっ ては 当面 対象 外と して よい であ ろう
。そ して
、国 家お よび 地方 自治 体 の法 秩序 があ る。 これ らの 秩序 では
、そ れぞ れ、 その 秩序 単位 内部 で妥 当す る、 ある いは 受容 され る規 範を 形成 し︵ 制定
・自 然発 生・ 伝承 を含 む︶
、何 らか のメ カニ ズム でそ れを 執行 する こと が可 能で ある
。そ れぞ れの 秩序 単位 にお ける 秩序 の実 現は
、独 自の 特質 を持 つと とも に、 異な る秩 序単 位間 で共 通性 を持 つ場 合も ある
。例 えば
、公 式的 組織 内部 のル ー ルに よる 秩序 実現 は、 国家 の法 的ル ール によ る秩 序実 現と
、実 定的 ルー ルに よる 秩序 実現 とい う点 で共 通性 があ る
︵差 異も ある
。︶ 他方
、秩 序単 位は
、重 なり あう 限り にお いて
、異 なる 秩序 単位 の秩 序の 影響 を受 ける
。ど のよ うな 影響 を受 ける かは まさ に経 験的 探求 によ って 明ら かに され る事 柄で ある が、 S. F. Mo or eに よる よく 知ら れた 分析 が説 得的 であ る。 彼女 は、 ニュ ーヨ ーク の服 飾業 界と タン ザニ アの ある 部族 の秩 序を 観察 し、
﹁半 自律 的な 社会 的場 se mi -a ut on om ou ss oc ia lf ie ld
﹂と いう 概念 を提 唱
( )
した
。こ れは
、現 代社 会で は、 秩序 単位 は、 それ 自体 で多 少と も
13
自律 的性 質を もっ た秩 序を 形成 して いる が、 完全 に自 律す るこ とは 不可 能で
、外 部の 組織 の秩 序、 なに より も、 国 家法 秩序 の影 響を なん らか の程 度で 免れ るこ とは 出来 ない とい う観 察に 基づ き、 その よう な秩 序単 位を 半自 律的 な 社会 的場 と表 現し たの であ る。 国家 法の ルー ルと 権利 は、 半自 律的 な社 会的 場の 人々 の相 互作 用と 秩序 実現 にお いて 取引 材料
︵
b a r g a i n i n g c h i p s , c o u n t e r s
︶と して 用い られ う
( )
るし
、慣 行的 秩序 とし て内 部化 する こと も
( )
ある
。し かし
、外 部秩 序に 対す る半 自律 的
14
15
な社 会的 場の 抵抗 力は
( )
強い
。半 自律 的と いう 意味 は、 外部 秩序 の力 が内 部秩 序に 及び うる とい う側 面と
、内 部の
16
人々 が秩 序に おい て外 部の 秩序
︵の ルー ルと メカ ニズ ム︶ を相 互行 為に おい て援 用で きる とい う側 面の 双方 を含 ん で
( )
いる
。 我 17
々は
、さ らに
、例 えば
、あ る企 業に とっ ては
、国 家法 の影 響を 受け るだ けで はな く、 所属 する 業界 団体 のル ー ルの 影響 を何 らか の形 で受 けざ るを 得な いと いう 事実 を考 慮す れば
、現 代社 会に おけ る秩 序単 位は
、国 家法 以外 の 外部 の秩 序単 位︵ とり わけ 当該 集団 を構 成メ ンバ ーと する 上位 組織 の︶ 秩序 の影 響を も受 けざ るを 得な いこ とを 前提 とす るこ とが でき る。 この 半自 律的 な社 会的 場と して の秩 序単 位に おい て、 他の 秩序 単位 の秩 序が どの よう な影 響 を具 体的 に及 ぼし てい るか は、 理論 的、 経験 的探 求に よっ て明 らか にさ れな けれ ばな らな いが
、国 家法 を用 いた 特 定の 政策 の実 現が
、現 実に どの 程度 可能 か、 どの 程度 社会 の現 実に 変化 を及 ぼし うる かは
、法 的言 説が 通常 想定 す るよ うな 単純 なも ので はな く、 半自 律的 な社 会的 場と して の基 礎的 諸秩 序単 位に おけ る自 律性 との 葛藤
・妥 協・ 同 化に よっ て左 右さ れる ので
( )
ある
。
18
それ ぞれ の秩 序単 位は
、他 の秩 序単 位と の一 定の 関わ りを 持ち なが ら半 自律 性を 維持 しつ つ、 規範 の形 成と 執行 の両 面に おい て特 有の メカ ニズ ムを 備え てい る。 経済 社会 にも 様々 な秩 序単 位が 存在 し、 秩序 メカ ニズ ムが 交錯 し てい る。 交錯 状況 を解 き明 かす 分析 枠組 みと して
、以 下で は、 第一 に、 関係 志向 とル ール 志向 とい う対 立軸
、第 二 に、 私的 な主 体の イニ シア ティ ブと 公的 主体
、と りわ け行 政の イニ シア ティ ブと いう 対立 軸を 設定 する
。 第一 の軸 のう ち、 関係 志向 は、 相互 行為 の反 復に よる 継続 的関 係︵ 後述 する ルー マン のい う接 触シ ステ ム︶ に内 在 する 秩序 メカ ニズ ムの 特徴 を示 して いる
。こ のよ うな 秩序 メカ ニズ ムは
、現 代の 経済 社会 でも 公式
・非 公式 の組 織、 それ のみ なら ず国 家機 関︵ 行政 機関 のみ なら ず、 場合 によ り検 察庁
、裁 判所 を含 む︶ をも
、程 度の 差は あれ
、横 断 して 作用 して いる
。ル ール 志向 は、 国家 法機 構の 関わ る秩 序メ カニ ズム の特 徴を 示す とと もに
、現 代社 会で は、 組 織内 部の 秩序 メカ ニズ ムに おい ても 主要 な位 置を 占め つつ
( )
ある
。関 係志 向と ルー ル志 向は 対照 的で あり 相互 排他 的
19
側面 があ
( )
るが
、相 互浸 透す る側 面も あり
、そ れが 秩序 単位 の半 自律 性と いう こと の一 つの 意味 であ る。
20
第二 の軸 につ いて 見る と、 接触 シス テム は私 的な 主体 のイ ニシ アテ ィブ が優 越し た秩 序単 位で ある が、 そこ に公 式・ 非公 式組 織や 国家 法機 構の 秩序 がど の程 度、 どの よう な態 様で 影響 を及 ぼす かが 焦点 にな る。 法律 改正 によ っ て人 々の 行動 を全 面的 に変 えよ うと する 場合
、そ の実 効性 は、 接触 シス テム の構 造的 変動 に及 ぶ必 要が ある
。例 え ば、 談合 防止 のた めの 独占 禁止 法の 改正 や運 用強 化が
、現 実の 構造 的談 合状 況に どこ まで 踏み 込め るか は、 ルー ル 志向 と関 係志 向の 衝突 と相 互浸 透と いう 側面 から 見る 必要 があ り、 同時 に、 私的 主体 のイ ニシ アテ ィブ と行 政の イ ニシ アテ ィブ の衝 突と 相互 浸透 とい う側 面か ら見 る必 要が ある
。あ るい は、 かつ て広 く見 られ た︵ 現在 でも 存在 し てい るか もし れな い︶ 行政 指導 によ る業 界の 利益 調整 や個 別企 業の 行動 制御 は、 行政 のイ ニシ アテ ィブ が優 越し た 秩序 実現 であ るが
、そ こに は、 私的 主体 のイ ニシ アテ ィブ によ る秩 序形 成に どこ まで 働き かけ るこ とが でき るか
、 また
、関 係志 向と ルー ル志 向が どの よう に交 錯し てい るか とい う論 点が 潜ん でい る。
⑶ 秩序 実現 のイ ニシ アテ ィブ 秩序 実現 のイ ニシ アテ ィブ は、 相互 行為 や次 に述 べる 接触 シス テム では
、ま ず第 一に
、直 接関 わる 個人 にあ る。 彼ら が、 相互 行為 や接 触シ ステ ムに おい て国 家法 ルー ルを 援用 する 場合
、そ のル ール は国 会に より 制定 され
、現 実 には
、そ の制 定は
、当 該法 令を 立案 した 担当 官庁
、よ り具 体的 には 立法 担当 官お よび 彼を 巡る 官庁 組織 内の 構成 員、 法制 局、 与党 内部 の関 係組 織︵ 自由 民主 党の 場合
、政 務調 査会 など
︶、 審議 会、 関連 する 業界 団体 など が起 点と なり 主導 する こと が多 いが
、こ の場 合、 秩序 実現 のイ ニシ アテ ィブ は、 当該 国家 法ル ール を援 用す る個 人に ある と 本稿 では 位置 づけ る。 これ に対 して
、例 えば 所得 税法 や法 人税 法を 改正 する 場合 のよ うに
、特 定の 政策 を実 現す るた めに 法律 を制 定・ 改正 し、 その 執行 を国 家機 構を 通じ て行 う場 合に は、 秩序 実現 のイ ニシ アテ ィブ は、 まず 第一 に、 国会 およ び当 該
法令 を立 案し た担 当官 庁に ある
。厳 密に は、 国会
、担 当官 庁お よび それ に関 連す る諸 主体 が政 治過 程に おい てど の よう な活 動を 展開 した かを 通じ て、 イニ シア ティ ブの 実態 が明 らか にな るが
、こ こで は国 会お よび 担当 官庁 とし て おけ ば足 りる
。し かし なが ら、 第二 に、 この 法改 正が 現実 にど のよ うな 効果 をも たら すか は、 執行 のあ り方 が関 わ る。 法改 正情 報が どの よう に、 どの 程度 私人 に伝 達さ れる か、 私人 の動 機づ け構 造に どの よう な影 響を 与え るか
︵特 に、
s e l f - e n f o r c i n g
の態 勢と 状態 への 変化 の影 響︶、e nf or ce r︵ この 場合
、税 務署 と税 務署 員、 検察 官、 裁判 官︶ の監 視
︵
m o n i t o r i n g
︶ なら びに サン クシ ョン 行使 はど のよ うに、ど の程 度実 施さ れる かが 左右 する
。さ らに
、場 合に より 税 務署
・税 理士 が私 人と 関わ る接 触シ ステ ムの 状況 が一 定の 影響 を及 ぼし うる
。 様々 な公 式・ 非公 式の
﹁組 織﹂ とい う秩 序単 位に おい ても
、基 本的 に私 人が イニ シア ティ ブを もっ て秩 序の 実現 を担 って いる
。そ の内 部に は、 相互 行為 があ り、 接触 シス テム が展 開し てい る。 しば しば
、組 織内 のル ール 制定 手 続に よっ て制 定さ れた ルー ルが あり
、ル ール の執 行に つい ても 一定 の手 続な いし 過程
・メ カニ ズム が存 在し てい る 場合 が多 い。 ただ し、 組織 内の ルー ルの 形成 と執 行に は、 国家 法の 影響 や、 国家 機関 の働 きか けが ある 場合 があ る。 現代 社会 では
、行 政機 関が 政策 実現 のた めに
、組 織内 のル ール の内 容と 執行 体制 を誘 導な いし 指示 する こと が 少な くな い。 例え ば、 私立 大学 内の ルー ルは
、文 部科 学省
、中 央教 育審 議会
、大 学基 準協 会の イニ シア ティ ブに よ って
、そ の制 定・ 内容
・執 行が 影響 を受 ける こと が少 なく ない
。そ こで は、 私人 のイ ニシ アテ ィブ が行 政の イニ シ アテ ィブ に対 して 葛藤
・抵 抗・ 協調
・︵ 一部
︶受 容し つつ 組織 内外 の秩 序が 実現 して いる
。会 社の コン プラ イア ン ス体 制や 内部 統制 シス テム の構 築に つい ても
、裁 判所
︵判 決︶ や法 務省
︵法 制定
、ガ イド ライ ン策 定、 行政 指導 他︶ のイ ニシ アテ ィブ が、 組織 内部 の接 触シ ステ ムや ルー ルの 形成
・執 行メ カニ ズム に影 響を 与え てい る。 そこ では
、 関係 志向 とル ール 志向 の交 錯、 私人 のイ ニシ アテ ィブ と行 政あ るい は司 法の イニ シア ティ ブの 交錯 が動 態を 形成 し、 半自 律性 を現 出せ しめ てい る。
私人 が民 事訴 訟ま たは 行政 訴訟 を提 起す る場 合、 当該 私人 が、 多く の場 合、 弁護 士の 助力 のも とで
、国 家の 法的 ルー ルと 法機 構を 援用 して
、間 接的
︵裁 判外 の和 解、 判決 を踏 まえ た交 渉な ど︶ ある いは 直接 的︵ 民事 執行 等、 国家 の 強制 装置 の発 動の 場合
︶に 秩序 を実 現す る。 この 場合
、裁 判官 は秩 序の 実現 に重 要な 役割 を果 たす が、 秩序 実現 の イニ シア ティ ブは
、一 次的 には 当該 私人 の手 にあ る。 裁判 官が 果た す役 割は
、法 域に よっ て能 動性
・積 極性 に差 異 があ り、 また 裁判 類型 や事 案に よっ て差 異が あ
( )
るが
、基 本的 に二 次的 であ る。 司法 は、 この 意味 で、 分権 的な
、法
21
と秩 序の 実現 メカ ニズ ムで
( )
ある
。司 法の 役割 が行 政に 比し て優 位な 社会 の一 典型 は、 アメ リカ 合衆 国の よう に、 官
22
僚と 比較 して 弁護 士が より 積極 的な 役割 を果 たす 社会 で
( )
ある
。そ こで は、 弁護 士の 職業 利益 も関 わっ て、 訴訟 提起
23
を促 すよ うな 制度 が整 備さ れ、 訴訟 を通 じた 法と 政策 の実 現が 重視 され
、﹁ 法の 実現 にお ける 私人 の役 割﹂ が尊 重 され るパ ター ンが 確立 して いる こと が
( )
ある
。そ のよ うな 社会 では
、﹁ 権利
﹂が
、私 人に よる 法の 実現 の起 点と して
、
24
国家 権力 を動 員す る根 拠と して 機能 する 傾向 が強 い。 法の 形成
︵
m a k i n g
︶ も、 私人 のイ ニシ アテ ィブ によ る判 例法 の占 める 比重 が大 きく、重 要度 も高 い。 これ に対 して
、法 と秩 序の 実現 にお いて
、私 人以 外の イニ シア ティ ブが
、相 対的 に重 視さ れる 場合 もあ る。 私人 以外 のイ ニシ アテ ィブ の発 揮主 体と して は、 政治 家と 行政 官僚
︵特 に中 央官 庁の
︶が 中心 的存 在で ある
︵集 合体 とし ては 政治 と行 政︶
。両 者の 関係 は、 競争
・対 立と 協調 のス ペク トラ ム上 に位 置づ けら れ、 分野 や事 項に よっ て差 異が ある が、 ある 期間
、安 定的 な構 造を 維持 する とと もに
、変 動期 には 根本 的な 変動 に直 面す る。 一九 九〇 年代 以来 今 日ま での 日本 は、 その よう な変 動期 にあ る︵ 政官 関係 をめ ぐる 改革 と闘 争と 妥協
。︶ ただ し、 行政 官僚 は、 法的 ルー ルや 政策 の立 案・ 策定 面と 執行 面の 両者 にお いて 不可 欠の 存在 であ る。 この 不可 欠の 存在 に対 して
、政 治が どの 程 度、 どの よう な態 様で イニ シア ティ ブを とる こと がで きる のか が問 題に なる
。 秩序 実現 にお ける
、政 治ま たは 行政 のイ ニシ アテ ィブ と私 人の イニ シア ティ ブの 関係 は、 理論 的に も経 験的 にも
重要 な論 点で あり
、三 以下 で論 じる
。司 法制 度改 革の 目指 す新 しい 体制 にお いて は、 私人 のイ ニシ アテ ィブ によ る 法的 ルー ルの 援用
・形 成と 執行 が、 より 広い 範囲 にお いて 秩序 の実 現過 程で 機能 する こと が想 定さ れて いる
。こ れ が、 従来 の秩 序実 現の あり 方に どの よう な変 容を 迫る のか を検 討す るの が本 稿の 三以 下の 課題 であ る。
( )﹁ 経済 社会
﹂と は、 分析 の対 象を 確定 する ため に設 定さ れた 仮構 的概 念で ある
。経 済活 動に 関係 する 個人 と組 織︵ 私的 組織 と公 的組 織を 含 む 1
︶は
、相 互に 社会 関係
︵こ こで は、 六本 佳平
﹃法 社会 学﹄
﹇有 斐閣
、一 九八 六年
﹈八 六頁 に依 拠し
、﹁ 複数 の行 為者 の間 で、 特定 の意 味に 志向 した 社会 的行 為が 定型 的に 反復 して 行わ れる 蓋然 性が ある
﹂と き、 これ らの 行為 者間 に存 在す るも のと する
︶を 形成 しつ つ、 全体 とし て、 一つ の集 合体 とし ての まと まり を持 って いる と考 えら れる
。こ れを 本稿 では
﹁経 済社 会﹂ と呼 ぶ。
﹁経 済社 会﹂ とい う語 は、 わが 国で は、 比較 的最 近︵ 一九 九〇 年代 以降 とい えよ う︶
、日 常的 に用 いら れる よう にな った
。そ の背 景に は、 市場 機構 の現 実お よび 言説 次元 での 社会 的な 認知 度の 高ま りが ある と考 えら れる
。 ( ) 濱野 亮﹁ 経済 社会 にお ける 弁護 士の 基本 的機 能︱
︱序 論的 考察
﹂﹃ 立教 法学
﹄四 四号
︵一 九九 六年
︶一
〇九
~一 五五 頁、 同﹁ 日本 の経 済社 会 2 の法 化︱
︱法 的コ ミュ ニケ ーシ ョン の分 離と いう 側面 につ いて
﹂﹃ 立教 法学
﹄四 八号
︵一 九九 八年
︶﹇ 以下
、濱 野﹃ 日本 の経 済社 会の 法化
﹄と 引用
﹈五 三~ 一〇 八頁 など
。 ( ) 濱野 亮﹁ 弁護 士に よる 企業 法務 の処 理︱
︱東 京に おけ る実 態調 査を ふま えて
︵
︶~
︵
・完
︶﹂
﹃N BL
﹄︵
︶五 三〇 号︵ 一九 九三 年︶ 3
1 12
1 六~ 一七 頁ほ か、 Ry oH am an o,
“T he Tu rn to wa rd La w: Th eE me rg en ce of Co rp or at eL aw Fi rm si nC on te mp or ar yJ ap an ,” in Wi ll ia mP .A lf or d (e d. ), Ra is in gt he Ba r: Th eE me rg in gL eg al Pr of es si on in Ea st As ia (H ar va rd Un iv er si ty Pr es s, 20 07 ), pp .1 63 -2 00 ,R yo Ha ma no ,“ Th e De ve lo pm en to fC or po ra te Le ga lP ra ct ic ei nJ ap an :T he Ch an gi ng Re la ti on sh ip be tw ee nt he St at e, Bu si ne ss an dL aw ye rs ,” in Da i- Kw an Ch oi
&
Ka he iR ok um ot o( ed s. ), Ju di ci al Sy st em Tr an sf or ma ti on in th eG lo ba li zi ng Wo rl d( Se ou lN at io na lU ni ve rs it yP re ss ,2 00 7) ,p p. 25 1- 28 4な ど。 ( ) 濱野 亮﹁ 司法 改革 の位 置づ け﹂
﹃法 社会 学﹄ 五一 号( 一九 九九 年︶ 一二 九~ 一三 四頁
、同
﹁司 法改 革の 定位
︵
︶﹂
﹃立 教法 学﹄ 五三 号︵ 一九 九 4 九年
︶一
〇一
~一 四八 頁、 同﹁ 司法 改革 の定 位︵ a︶
﹂﹃ 立教 法学
﹄五 五号
︵二
〇〇
〇年
︶一 七二
~二
〇三 頁な ど。 ( ) 本稿 では
、﹁ 制度
﹂概 念は
、実 態と は別 の次 元の
、国 家法 次元 で公 式的 に言 語に よっ て明 文化 され た仕 組み およ びル ール を指 すも のと する
。 L 5 aw in bo ok sと la wi na ct io nの 対概 念を 用い るな らば
、l aw in bo ok sを 指す
。こ れと 対照 的な 制度 概念 を用 いる 重要 な研 究と して 青木 昌彦
︵瀧 澤弘 和・ 谷口 和弘 訳︶
﹃比 較制 度分 析に 向け て﹄
︵N TT 出版
、二
〇〇 一年
︶﹇ 以下
、青 木﹃ 比較 制度 分析 に向 けて
﹄と 引用
﹈が ある
︵特 に三
~ 二六 頁︶
。同 書で は、 制度 とは
、情 報縮 約的 な共 有予 想と して 理解 され てお り、 la wi nb oo ks では なく
、実 態次 元の もの であ る︵ 但し
、l aw in ac ti on とは 一致 しな い。 問題 意識 とそ れに 基づ く、 現象 を切 り取 る視 角が 異な って いる から であ る︶
。制 度概 念は 分析 目的 に応 じて 定義 され る