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九州大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

部位特異的RNA修飾能を有する人工核酸の開発とそれ を用いたmRNAピンポイント塩基修飾の翻訳系への影 響評価

大城, 郁也

http://hdl.handle.net/2324/1931850

出版情報:Kyushu University, 2017, 博士(創薬科学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

(2)

部位特異的

RNA

修飾能を有する人工核酸の開発と

それを用いた

mRNA

ピンポイント塩基修飾の翻訳系への影響評価

生物有機合成化学分野 3PS15001S 大城 郁也

【序論】

近年、RNA転写物が魅力的な創薬標的として注目され、これを標的とする核酸医薬品の開発 が行われている。また、天然核酸塩基が転写後修飾を受けた特殊核酸塩基は、その構造変化に よる酵素認識の変化や RNA 結合タンパク質との結合への寄与など、遺伝子発現制御において 単なる遺伝暗号に留まらない重要な役割を担っていることが注目されている。このような背景 のもと、RNA の核酸塩基を標的とした修飾技術の開発は、RNA の構造や機能解析のための手 法のみならず、遺伝子発現を自在に制御する革新的な医薬品開発への展開が期待される。

当研究室では、生体での化学的な遺伝子編集技術の開発を最終的な目標として RNA を部位 特異的に化学修飾しうる技術の開発を行っており、標的 RNA との二本鎖形成を引き金に官能 基を転移させ、RNAを塩基・部位特異的に修飾する官能基転移核酸(図1)を開発した。転移官 能基に、化学的安定性と金属錯体形成による活性化能を有するピリジンケト型構造を用い、中 性緩衝液中、二価遷移金属カチオン共存下にシトシン選択的修飾反応(図2左)を実現している。

本研究では、官能基転移核酸を人工的な遺伝子発現制御として展開するため、標的とする塩 基として、シトシンと同様に転写後修飾の対象であるアデニンに注目し、アデニン塩基への拡 張を検討した。さらに RNA塩基化学修飾の有用性を確認することを目的として、RNA転写物 をテンプレートとして機能する生体分子への影響評価を行った。

【方法と結果】

(1)アデニン選択的 RNA修飾反応の確立

天然 TA塩基対類似の錯体形成を経たアデニン選択的修飾反応を期待して 4-チオチミンに注 目し、これを基本骨格とした新規官能基転移核酸の合成に着手した(図2右)。化学的安定性と 金属カチオンによる活性化能を期待し、ピリジンケト型転移基を4-チオチミンに導入すること で、官能基転移プローブを合成した(図 3A)。また、ピリジンケト型転移基のE/Z異性間におけ る反応性の差を確認するため、E/Z異性体比を制御した官能基転移プローブの合成を検討した。

これらプローブを用い、標的部位にアデニンを持つ相補鎖 RNA に対する転移反応性を評価し たところ、中性条件、金属カチオン共存下において、E 異性体プローブにおいてのみ転移反応 が生じることが見いだされた。特に、二価銅カチオンが共存するとき反応は非常に速く5分以 内に終結した。金属カチオン非添加の場合も反応は進行したが、EDTA を添加すると全く反応 が進行しなかったことから、緩衝液中に存在する極微量な

金属カチオンですら反応加速効果

(3)

が得られる

ことが示唆された(図 3B)。一方、他の塩基に対してはほとんど反応性を示さず、

高いアデニン選択性を示した(図 3C)

(2) DNA/RNA二本鎖内での架橋型錯体による反応場形成

金属カチオンによる反応性誘起効果について検証を行った。標的アデニンの隣接塩基を変 えた16種類の RNAを用いて、転移反応に及ぼす反応場の影響を評価した。その結果、標的 塩基の 3’あるいは 5’側にアデニン、

グアニンが必須であることが見いだ された。このことから、プリン塩基 の7位窒素原子と Cu2+との相互作用 によりプローブ鎖と標的 RNA 鎖と の間に架橋型錯体が形成され、E-体 でのみ有効な近接効果が発揮される という非常にユニークな反応機構が 示唆された(図4)。

(3)CuAAC反応を用いたRNAラベル化反応

官能基転移核酸による RNA塩基修飾反応の応用展開として、CuAAC反応を利用したRNA のラベル化を検討した。ピリジンケト型転移官能基に末端アルキンを導入し、転移反応後に

CuAAC反応に付すことで種々機能性基を導入することを試みた。上述の金属錯体形成が反応

加速に寄与していることを踏まえ、ピリジン環への末端アルキンの導入位置を変えた三種の 誘導体を用いて検討したところ、中性条件、金属カチオン共存下において、3、4位置換体に おいて高効率な転移反応が確認された(図5)。続いて修飾を施したRNAへCuAAC反応を検 討した。簡便にRNAをラベル化するた

めに転移反応と CuAAC 反応を連続反 応として行い、ラベル化に用いるアジ ド体には、アビジンとの強い親和性を 持ちバイオツールとして汎用されるビ オチンアジド体を用いた。官能基転移 反応ののちにビオチンアジド体、アス コルビン酸ナトリウム、TBTA、硫酸銅 を加え、DMSO水溶液中で反応を行っ た と こ ろ 、30 分 後 に ほ ぼ 定 量 的 に

図5 アルキン型転移官能基を用いた官能基転移反応

図4 官能基転移核酸の配列選択性と金属錯体形成

(4)

CuAAC反応が進行し、標的RNAのビオチンラベル化を行うことに成功した(図6)。

(4)塩基修飾による逆転写反応への影響評価

開発した RNAピンポイント塩基修飾反応がRNAをテンプレートとして働く生体分子の働 きに影響を及ぼしうるかを検証するため、逆転写酵素を用いたモデル系を構築し、本反応に よるRNA修飾の逆転写反応への影響評価を行った。官能基転移核酸によるアデニン塩基・部 位特異的修飾を施したRNAに対して HIV、M MLVを起源とする逆転写酵素でcDNA伸長反 応を行ったところ、修飾位置で一部伸長反応が停止し短鎖cDNAが生じる事が見出された(図 7)。経時につれ短鎖 cDNAは減少し

全長の cDNAが産生していることか ら、ピリジンモノケト型転移基は逆 転写反応を阻害せず、一時的に遅延 させていると考えられる。この結果 は、RNA塩基修飾により逆転写反応 を制御しうることを示唆する結果で あり、転移基の構造を調節すること で cDNA の伸長反応を完全に阻害す るのみならず、cDNA に取り込まれ る塩基を変化させるなど多彩な展開 が期待できる。

(5)非細胞翻訳系におけるmRNA修飾の影響評価

官能基転移核酸による翻訳系への影響評価を行うためにmRNAに対する修飾反応を行い、翻 訳反応により産生されるペプチドの分析を行った。mRNAが長くなるほど産生されるペプチド も同様に長いものとなり、修飾箇所における翻訳阻害やアミノ酸取り込みの変異などピンポイ ント塩基修飾の翻訳系での効果を詳細に検討することは困難になる。そこで両末端にエピトー プタグを持つ小さなポリペプチドをコードする人工mRNAを設計した(図8)。N末端側にT7 tag、

C末端側に Flag tagを配置し、その間のスペーサー領域を標的に転移反応を行うことで、翻訳

反応により産生されるペプチドの解析を容易にすることを目的とした。転移核酸による部位特 異的修飾を行ったこの mRNA に対して大腸菌由来の細胞抽出液を用いて翻訳反応を行い、

Immunoblottingにより解析を行った。

Western blotの結果を図8Aに示す。Anti-T7-tag抗体により検出を行なったところ、官能基転 移核酸による修飾を施していない mRNA(control)、及び転移官能基を持たないチオ核酸プロー ブを入れた系(s6G probe)では翻訳反応が進行し 28 アミノ酸残基からなる全長のペプチドが産

図7 RNA塩基修飾の逆転写反応への影響評価

図6 アデニン標的官能基転移反応に続くCuAAC反応

(5)

生されたのに対し、修飾を行った系(FT probe)では目的のペプチドの産生が減弱していること が確認された。また同一サンプルをDot blotにより解析したところ(図8B)、全ての条件におい

て T7-tagを有するポリペプチドの産生が同等に確認されたのに対し、Flag-tagを有するペプチ

ドにおいては、修飾を行った系(FT probe)で産生量が減少していた。この結果から、RNA塩基 修飾により翻訳反応で産生されるペプチドに変化が生じたと考えられる。修飾部位における翻 訳の阻害やアミノ酸組成の変化によるポリペプチドの性質変化などが原因として考えられ、分 子量測定を含めたより詳細な解析が必要であるが、官能基転移核酸によるピンポイント塩基修 飾により翻訳反応へ影響を及ぼしうることが確認された。

【結論】

本研究では RNA 部位特異的化学修飾技術の開発を目的に、金属カチオンにより反応性が誘 起され、ピリミジン骨格を有する新規官能基転移核酸の開発を検討した。その結果、RNA中の アデニン塩基選択的な化学修飾反応の開発に成功した。この修飾反応を展開させ、CuAAC反応 を利用することで標的RNAを簡便に機能化しうるラベル化反応の開発を達成した。さらにRNA 修飾による逆転写反応及び翻訳系への影響評価を行い、塩基修飾により RNA 転写物をテンプ レートとする生体分子の働きが変化することを確認した。これらの結果は、RNA塩基修飾が遺 伝情報を一塩基レベルで制御する全く新しい手法へと展開しうることを示唆している。

以上のように本研究ではRNA転写物を標的とする人工核酸の新規機能の可能性を拓いた。

【発表論文】

1, Jitsuzaki, D., K. Onizuka, A. Nishimoto, I. Oshiro, Y. Taniguchi, and S. Sasaki. 2014.

"Remarkable Acceleration of a DNA/RNA Inter-Strand Functionality Transfer Reaction to Modify a Cytosine Residue: The Proximity Effect Via Complexation with a Metal Cation."

Nucleic Acids Research 42 (13): 8808-8815.

2, I. Oshiro., D. Jitsu zaki, K. Onizuka, A. Nishimoto, Y. Taniguchi, and S. Sasaki. 2015.

"Site-Specific Modification of the 6-Amino Group of Adenosine in RNA by an Interstrand Functionality-Transfer Reaction with an s-Functionalized 4-Thiothymidine."

ChemBioChem 16 (8): 1199-1204.

3, Nishioka, T., I. Oshiro, K. Onizuka, Y. Taniguchi, and S. Sasaki. 2016.

"Efficient Thymidine-Selective DNA Interstrand Photo-Activated Crosslinking by the 6-Thioguanine Connected Via an Ethylene-Linker to the 2′-Deoxyribose Unit."

Chemical and Pharmaceutical Bulletin 64 (9): 1315-1320.

図8 非細胞翻訳系におけるRNA修飾の影響評価

図 7 RNA 塩基修飾の逆転写反応への影響評価
図 8 非細胞翻訳系における RNA 修飾の影響評価

参照

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