九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
都市における水面・緑地の暑熱緩和に関する調査研 究
北山, 広樹
九州大学総合理工学研究科熱エネルギーシステム工学専攻
https://doi.org/10.11501/3090246
出版情報:Kyushu University, 1992, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
ノ
都市における水面 ・緑地の暑熱緩和 に関する調査研究
司Z月支4壬手三 5)=ヨ
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目 次
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構 献 論 め の の の
文
序 じ 究 往 文 考 は 研 既 論 参 章
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・
・
〈〉
1 1 2 3
4 第
第2章 気象データの統計解析による夏季の風の海陸風的な特徴
1 . はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 2. 解析資料および海陸風ベクトル成分・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 2. 1 解析資料の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 2.2 解析対象期間・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
2.3 海陸風の主軸・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17 2. 4 海陸風ベクトル成分・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
3. 全データおよび海陸風日のデータ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 3. 1 海陸風日の判定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 3. 2風向 ・風速の特徴と海陸風の主軸・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 3.3海陸風ベクトル成分の日変化の比較・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22 4. 海陸風ベクトル成分の日変化と時間帯分類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 4. 1 海風および陸風時間帯の設定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 4. 2 時間帯分類した風向 ・風速の特徴と比較・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25 4. 3時間帯分類による平均風ベクトルの比較 .• . • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • .29 5. 海陸風と日射量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
5. 1 海陸風の強さと安定度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29 5.2 海陸風の強さと日射量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32 5. 3 海陸風の安定度と日射量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33 6. むすび ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35 o参考文献・・・ . • • I • • • • • t • • • • • • • • • • • • 1 . • • • I • I I • • • • • • • • • • • • • • • • • • .・・・35
I
第3章 都市内河川の通風効果とその周囲への暑熱緩和効果
1 . はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37 2. 実測調査の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38 2. 1 実測対象地域および測定点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38 2.2 測定方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41 2. 3 実測日の気象状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42 3. 風向 ・ 風速と表面温度の特性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43 3. 1河川上と街路上の風向 ・ 風速分布の比較・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43 3. 2 水面と舗装面の温度の比較・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47 4. 河川上と街路上の気温および湿度の比較・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47 4. 1 陸風から海風への変化に伴う気温の変化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47 4. 2河川の流路方向への気温および湿度の変化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49 4. 3河川に交差する街路上の気温分布・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. • • • • • • • • • • 5 1 5. 風速および地表面温度が気温に及ぼす影響・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52
5. 1 風速と気温の関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52 5.2 地表面温度と気温の関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54 6. むすび・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・57 く〉参考文献・・・ .• • • • • • • • • . • , . . . I • I • • • • • • • • I • I I • I • • • • • • , . . . .・・・57
第4章 都市内 公園池および緑地の暑熱緩和効果とその周囲への熱的影響 1 . はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・59
2. 大きな池を有する公園周囲の熱環境・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60 2. 1 実測対象地域の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60 2. 2 測定点および測定方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・61 2. 3 実測日の気象状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・62 2. 4 周囲調査における気温と湿度の分布 .• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • .64 2.5広域調査における気温分布・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・68
3. 緑被による日射遮蔽効果と気温への影響・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・71 3. 1 実測調査の概要・・・・・.l ' .・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・71 3. 2 緑陰の日射 ・ 放射特性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・74 3. 3 地表面および葉表面の温度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・77 3. 4 緑陰内外の気温と緑陰における気温の鉛直分布 .• • • • • • • • • • • • • • • • • • .80
II
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第5章 街路に形成される熱環境の実態に関する 調査
1 . はじめに.• • • • • • • . • • • • • . • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • .89 2. 実測調査の概要.• • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • . • • .89
2. 1 実測対象地域と測定点および基準点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・89 2. 2 測定項目および測定方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・92 2. 3 実測期間中の気象状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・93 3. 熱環境要素の実測結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・95 3. 1風向 ・風速および気温の分布.• • • • • • • • • • • • • • • • • , , , • • • • • • • • • • • • . • .95 3.2 表面温度、 気温 の鉛直分布および 日射量の分布・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・98 3. 3地上の気温に及ぼす地表面温度と風速の影響・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・103 4. 街路空間における総合温熱指標の計算・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・104 4. 1 長波長放射の取扱い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・104 4. 2 円柱モデルの平均放射温度の算出・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・106 4. 3標準新有効温度と風速の 関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・108 5. むすび ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・, • • • • . • • • • . • • • • • • • • • • , • • • • • • . • • • • • • • • 111
く〉参考文献・・・.• I • • • • • • • • • • • • I I I • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • l ' • • • • • • • .・・111
第6章 都市における土地利用分布と気温分布
1 . はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・113 2. 実測対象地域の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・113 3. 陸風から海風への変化に伴う気温の変化に関する3地点同時観測・・・・・117 3. 1 観測概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・117 3. 2 夏季期間と海陸風日の選定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・118 3. 3 海陸風ベクトル成分と気温・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・119 3. 4 時間帯分類による風の特性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・121
III
3. 5異なる年度の海陸風ベクトル成分と気温の関係の比較・・・・・・・・・・・・・122
4. 土地利用と気温分布に関する実測調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・125 4. 1 実測調査の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・125 4. 2 実測期間中の気象状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・127 4. 3 実測結果の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・129 4. 4測定データの類別と気温分布・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 1 4. 5分散分析による気温分布の影響因子に関する検定・・・・・・・・・・・・・・・・・134 4. 6 土地被覆率と気温の関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・135 5. むすび・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・142
く〉参考文献・・・.• • I • • • I • • • • , . , . . I • • • • • • • • 1 . • • • • • • • • I • • • • , . I • • • • • .・・143
第7章 総括
-・145
付録・・・・・・・・.• • • • • • • • • • • • • • • • • • , l ' • • • • • • • • • • l ' • • I t II・・・・・・・・・147
謝辞・・・・・・・・.. • • l ' • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • I • • • • • • .・・・・・・・・・151
N
第1章 序論
1 . はじめに
人口が過度に集中する現在の都市は、 種々の環境問題を抱えている。 交通騒音 や大気汚染などの従来からある公害問題に関しては、 近年、 具体的な対策がとら れるようになってきたが、 都市化による高温化や低湿化の問題に対しては、 未だ
何の対策もなされないまま現在に至っている1)。
数年来、 炭酸ガスの排出量の増加等による温室効果から、 地球規模での温暖化 の問題がクローズアップされているが、 我々が生活する都市レベルにおける高温 化の問題は、 既に1 9世紀終わり頃から指摘されている2)。 現在では、 都市の気 温が郊外に比べ高くなっていることも周知の事実となり、 そのような気温分布を 表す「ヒートアイランド」という言葉も一般的な用語として普及するに至ってい る。 この都市における熱環境の変化は、 人間活動により生じた一種の歪であり、
本来都市が持つべき熱的環境の容量をすでに上回っていると見ることができる。
この現象は、 今後益々進行して、 都市の居住環境に悪影響を及ぼすことが懸念さ れる。
都市の高温イじに関するこれまでの報告3. 4)では、 冬季の気温分布からヒートア イランドの特徴を示すものが多い。 しかし、 季間蒸暑地域が大部分の我国の都市 においては、 気温の上昇が居住空間の快適性に与える影響は夏季において、 より 一層大きいと考えられる。 夏季における気温上昇に伴う居住空間の暑熱化のメカ ニズムを簡単に示せば図1 . 1のようになる。 建物の高層 ・ 高密化、 地表面の舗 装化、 水面や緑地などの蒸発散面の減少およびエネルギー消費の増大は、 気温の 上昇をもたらすのみではなく、 表面温度の上昇と風速の減少も同時に作用して、
夏季の温熱快適性に大きなマイナスの効果を与える。 日中の蓄熱量の増大は、 夜 間の気温の低下を妨げ、 寝苦しい夜(熱帯夜)を多くする。
以上のような都市の居住空間の暑熱化を抑制あるいは緩和するためには、 先ず、
自然のエネルギーとしての風および現在失われつつある水面や緑地などの郊外的 要素5)の存在効果を定量的に明らかにし、 建築および都市計画上の基礎資料を提 供することが必要である。
居住空間の暑熱化
図1 . 1 都市における居住空間の暑熱化のメカニズム
2 . 研究の目的
都市の暑熱化の傾向は、 いくつかの気象要素とそれに影響を及ぼすと考えられ る都市化の因子の変化を比較することにより把握することが出来る6)。 戦後、 九 州ーの商業都市として今もなお発展を続ける福岡市と、 石炭産業の斜陽化に伴い 人口の増加が緩慢な飯塚市および世界の中心都市として発展を続ける東京におけ る、 戦後から現在に至る気象要素の変化を比較して示すと、 表1 . 1 7)のように なる。 冬季の最低気温の上昇や年間を通しての相対湿度の低下、 熱帯夜日数の増 加などが福岡市において顕著であり、 都市域が異常に拡大し た東京においては8)、
これらの変化は福岡市に比べさらに大きい。 都市化を示す量として、 DID人口 や面積、 道路の舗装状況およびエネルギーの消費状況を採りあげ、 これらの変化 を福岡市において示すと表1 .2 7)のようになる。 この20数年間において、 福 岡市における都市化が急激に進行してきたことが伺える。
住宅における通風は、 古来より夏季の対暑方法として広く利用され9)、 夏季の 蒸暑な室内気候を緩和する効果をもっ10)。 都市スケールにおいても、 自然風の 熱の輸送、 拡散が市街地の蒸暑な熱環境を緩和しており11)、 大気汚染防止の観
気象要素の変化( 1945年--1988年) 都 市 名 気 象 要 素
福 岡 :飯塚 東京$
+ 1. 10 + 0, 25 + 1. 19 + 1. 49 - 0, 42 + 2, 85 -0, 16 -1. 02 一0,42 -8, 12 -7, 07 -10,60 -14, 35 -8, 20 -16,37 -12,06 -5, 61 -9, 29 -3, 43 -6, 22窓2 -8, 59 -2, 46 + 5, 04本2 -1. 74 -4, 70 + 6, 98 +0, 40 -13,32 -11.86 -17,51 +7, 73 -12, 13 一12,67 8, 5→ 9, 4→ 6, 4→
27, 2 9, 2 22, 5
霧日数 (日) -54,31 ; -107, 6 -96,85 表1 . 1
本iは1945--1987年のもので文献8より引用 料は1951--1988年のものを利用
福岡市の都市化を示す因子の変化 表1.2
増加率 DID人口*1
(万人) +104目
変化量 52, 9→107, 7 対象年
1960""1985年 (5年毎) 因 子
+166児 50, 2→133, 6
1960--1985年 (5年毎) DID面積* 1
(万人)
+717先 2, 6→ 2 1. 6
1964""1987年 (1年毎) 道路舗装面積
(km2)
+270覧 25, 4→ 94, 0
1964""1987年 ( 1年毎) 道路舗装率
(%)
+537出 49, 9→317, 8
1964--1987年 ( 1年毎) ガス消費量
(万m3)
+566出 1964""1987年I 520, 2→3467,9
( 1年毎) 電力供給量
(千MWH)
+632先 48, 9→ 357, 7
自動車登録台数I 1964--1987年 (千台) I (1年毎)
+307%
12, 6→ 51. 3 1964""1987年
( 1年毎) 家屋の床面積
(km2)
上記の表は、 対象年の福岡市統計書を基に作成している DID (Densely Inhabitant Districtの略) :人口集中地 区をいい、 人口密度40人/ha以上の地域が隣接し、 人口 5000人以上の集団を構成する地域をさす
本1※
n.‘υ
点からEmonds12)なども、 市街地の風通しの重要性を指摘している。 自然風を積 極的に取り入れ、 居住環境を改善しようとする場合、 風の不安定さが問題となる。
しかし、 海陸風に代表される熱対流に基づく局地循環は、 都市スケールでの一日 周期の変動としてみれば比較的安定しており13. 14)、 特に海風は、 日中の気温上
昇を抑制する効果があることも知られている15. 16)。 また、 我が国の多くの都市 が沿岸部を中心に拡大しているので、 日中に発達する海風は、 夏季の熱環境を考
える上で、 無視できない要因の一つである。
夏季の日中において、 都市内の水面や緑地、 樹陰などの表面温度は、 コンクリ ートやアスフアルトの舗装面、 建物等のそれに比べ低くなっていることは良く知 られている17)。 これは、 地表面における水分蒸発や植被における蒸発散の影響 であり、 これら表面と周囲空気との対流熱交換や表面からの冷轄射および通風の 相乗効果から、 都市におけるこのような被覆は、 夏季の暑熱緩和にとって非常に 重要である。
本研究は、 自然エネルギーとしての風および水面 ・緑地の夏季における暑熱緩 和効果を定量的に明らかにすることを目的とする。 そのため、 夏季の自然風の特 徴を統計的に明らかにし、 市街地の通風促進に重要なオープンスペースとしての 河川や街路周辺および“都市のオアシス" としての水面や緑地とその周辺の熱環 境を調査解析し、 都市内の気温分布と土地被覆分布との関係を総合的に検討して いる。 以上の実測調査の流れと論文の章立てを対応させて示せば、 図1.2のよ うになる。
都市のオアシス 水面 ・緑地
(第4章)
都市熱環境における暑熱緩和
l|
都市における風の特性|
(第2章)
都市内の気温分布と 風系 ・土地利用分布
(第6章)
都市を形成する建物群 アーバンキャニオン
(第5章)
図1.2 本論文における実測調査の流れ
3 . 既往の研究
気象学的アプローチによる海陸風の統計解析例は数多く18,19,20,21)、 一定の
条件下における海陸風の出現日を対象として、 解析および考察を行っており、 風 の有効利用という点からは、 この解析手法が必ずしも適当とは言え ない。 また、
全国的 な規模の風に関する統計資料としては、 風速から求められる風エネルギー の分布22)、 風向を考慮した風速の統計23)、 風速頻度分布へのワイプル分布の適 用24)、 風向の定常度13)、 月別平均値による風の年変化25)、 などがあるが、 こ れらは風車による風力エネルギ一、 構造物に対する風荷重、 強風害または気象学 的 な風を対象としてまとめられたものであり、 都市熱環境における自然風のパッ
シプな利用という面からは必ずしも十分とは言い難い。 自然風を積極的に導入し、
居住環境を改善しようとする立場から、 自然風の特徴を十分に把握することが必 要である。
河川がその沿岸の気温に及ぼす影響については、 季節によって河川が冷熱源や 温熱源として機能することを熱収支の違いから検討したもの26,27,28)、 河畔林 と水温との関係を熱収支により検討したもの29)、 温排水による水温の変化が周 囲へ及ぼす影響を評価しようとするもの30)、 内陸盆地におけるヒートアイラン
ドに対する河川水温等の影響31)など、 様々な調査結果が報告されている。 最近 では、 河川の冷熱源としての効果を立体的に詳細に調査したもの32,33)や、 河川 の気候快適化機能という面から、 河川周囲の環境を総合的に調査したもの34)が みられる。 冷熱源として河川が周囲に及ぼす影響は非常に複雑な現象のようであ り、 またこれらの報告では、 河川に沿う熱環境の分布、 河川を吹走する風の影響 などに関して必ずしも充分ではない。 水質の汚濁などを理由に都市内の河川が埋 め立てられ、 また暗渠化されつつある現在、 都市の「砂漠化」を防止する観点か らも、 河川の冷却効果に関する資料を蓄積することは非常に重要である。
池、 湖、 川やその他の水面の冷却効果は、 対象とする地域のスケール、 付近の 植生と微地形、 水温と気温差、 水深などによって異なり、 また線状で流動する河 川と違い池 などの静水体では、 周囲に及ぼす影響も異なるものと考えられる3510 これら静水体については、 風速 が非常に弱い場合の、 水面から周囲へのにじみ出 しによる熱的影響を調査したもの36)、 長期的 な観測から周囲の気温への影響に ついて検討したもの37)、 また局地風 などの影響を考慮したもの38)など、 水面の 存在効果を検討した例はみられるが、 これらは農業気象等を対象としたものが多
く、 夏季の熱環境という面から検討されたものは少ない。
また、 公園緑地が都市内部で低温域を形成し、 にじみ出し現象によってその周 辺に影響を及ぼす「オアシス効果」に関しては、 すでにいくつかの実測調査によ り確かめられている39)。 また蒸発散面としての緑地の冷却効果についても、 種 々の研究が行われており、 これらは表面温度に関するもの40)、 実測やモデル化 による熱収支や放射収支に関するもの41,42)などが数多くみられる。 しかし、 そ れらの研究では緑地を群落的に取り扱うことが多く、 都市内に点在する小規模な 緑地の熱的特徴は若干異なることも考えられる。 小規模な緑地において、 緑の量 が気温の上昇緩和に及ぼす効果43)や、 その影響範囲について実証的に研究した 例44,45)も未だ数少ないようである。
海岸より内陸へ延びる街路も、 河川同様に「風の通り道」としての役割を果た すものと考えられる。 しかし、 アーバンキャニオンあるいはストリートキャニオ ンと呼ばれるこのような街路空間では、 風向がこれに直角な場合キヤピティ空間 が形成されて、 そこでの風速は非常に小さくなる。 その上、 夏季の日中高温とな る舗装面や建物表面等により囲まれている。 市街地の通風という観点から、 この ような空間の熱環境も人間活動に密接に関係し、 非常に重要であると考える。 キ ャピティ空間の熱環境については、 様々 な検討がなされている。 空間内の地表面 温度や建物表面および気温分布について調査検討したもの46,47,48,49)、 空間内 の気流性状等を含めて検討したもの50,51)、 空間内の熱的特性を考慮して熱収支 や放射収支に着目して検討したもの52,53)、 さらに空間形態の変化による環境変 化を評価しようとする試み54,55)、 人体の温熱感覚による熱環境の総合的評価を 試みたもの56,57,58,59)、 などが報告されている。 これらの報告では、 空間内の 放射環境の複雑さと重要性が指摘されているが、 このような放射環境の予測とそ の温熱感覚への影響および風の温熱効果を定量化することは重要である。
以上のように様々な地被材料とそれらによって構成される多様な空間が存在す る都市の熱環境分布について、 調査解析した研究も古くより数多くみられ、 これ らの研究のトピックスを、 福井3)、 河村4)および吉野6)らがまとめている。 都市 の気温分布については、 家屋密度との関係60)、 風との関係61)、 土地被覆状況や エネルギー消費量等との関係62,63,64,65)、 など気温に影響を及ぼす種々の因子 について検討されている。 また、 気温以外の気象要素の分布として日射量66)、
湿度67)や熱帯夜日数4)などについて調査したものがある。 さらに、 本研究と同 様に福岡市およびその近郊を対象に、 熱環境の分布を調査解析したもの68,69)も ある。 これらの報告では、 気温等の分布に対して地域の風系や地表の被覆状況が
田園田・園田園園田園 置量一
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影響を及ぼすことは示唆されているが、 両者の関係を定式化するには未だ不十分 である。
4 . 論文の構成
本論文は、 序論および総括を含めて全7章から構成される。
第1章では、 研究の目的と既往の研究および論文の構成について述べる。
第2章では、 一般的な気象データ(AMeDASおよびSDPデータ)を用い、
都市の風特性について、 風向 ・ 風速の安定性など海陸風的な特徴を統計解析によ り明らかにする。 都市の主風向を海陸風の主軸と定義し、 この軸に対する海陸風 ベクトル成分、 海陸風の強さおよび安定度などを定義し、 これらと日射量との関 係を明らかにする。 このような統計処理を全国12の都市に適用し、 各都市にお ける風の海陸風的特性を明らかにする。 さらに、 海陸風に関する気象学における 既往の解析方法を適用し、 本章での独自の統計処理法の妥当性についても検討を
"'ーー・ 、þ
干了つ。
第3章では、 市街地の通風という観点から、 海岸より内陸ヘ延びる河川上の風 速や気温分布を測定し、 それに平行な街路および直交する街路上の値と比較する。
そして河川の “風の通り道" としての効果および暑熱緩和効果を、 主に風速およ び水面と地表面の温度差との関連から明らかにする。 福岡市の中央部を流れる那 珂川(幅約100 m)において、 その河口から上流ヘ、 約7kmにわたる区間を 対象に、 3種類の実測調査を行っている。
第4章では、 都市内に存在する池および公園緑地などのオープンスペースを対 象に、 その内外に形成される熱環境の特徴およびこれらが周囲に及ぼす影響につ いて検討する。 まず、 水面としての暑熱緩和効果について、 比較的大きな池を有 する福岡市の大濠公園を対象に実測調査を行う。 池に水がある場合と無い場合の 比較実測により、 水面の存在効果を明らかにする。 次に、 福岡市内にある大小の 神社や公園の緑地を対象に、 その内外の気温の測定を行い、 緑の量を示す緑被率 や緑葉率を定義し、 気温とそれら緑の量との関係について考察する。 また、 福岡 市郊外の多目的公園を対象に、 昼夜連続測定を数日間行い、 都市内緑地の日射遮
蔽を含む暑熱緩和効果を詳細に検討する。
第5章では、 海岸から市街地中心部を内陸へ延びる街路の受差点において、 数 日間にわたる熱環境の総合調査を行い、 詳細な解析を行う。 赤外線放射カメラや 魚眼レンズによる天空写真等の情報を基に、 簡易的に、 街路空間に形成される放
射環境の推定を行い、 実測値との比較を試みる。 その結果と風速の測定値から温 熱指標を算出し、 街路空間における通風の暑熱緩和効果を検討する。
第6章では、 まず都市内の風速と気温の分布について、 福岡市の主風向に沿う 3つの建物屋上において長期観測を行い、 夏季日中の海風による気温上昇抑制効 果や、 風系の違いによる気温分布の特徴について明らかにする。 次に、 気温分布 の測定対象を市域全体に拡大して自動車による移動測定を行う。 同時に、 対象地 域全域の土地利用状況等をあらかじめ国土数値情報を基に解析し、 その変化と特 徴について示す。 気温の測定データと風系や土地利用状況との関係について、 数 種の分散分析法を適用し、 気温分布に及ぼす風向・ 風速および土地利用状況の影 響を明らかにする。 さらに、 気温と水面や緑地等の自然地被および道路や建物等 の人工地被の被覆率との関係について考察する。
第7章では、 各章で得られた知見をまとめて総括とする。
<>参考文献
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日本風工学会誌, No.24, 1985.6., pp.3-4
15 )浅井富雄:海陸風, 別冊サイエンス18, 1977.11., pp.87-93
16 )堤純一郎ほか:福岡市における海陸風, 第8回風工学シンポジウム論文集,
1984.12., pp.123-128
17) Katayama, T., et al. : Investigation on the Formation of Thermal
Environment in an Urban Canyon, Trans.of AIJ, No. 372,1987.2., pp. 30-43 18 )江口恒夫:大阪市の海陸風について, 天気,Vol.24, No. 12, 1977.12., pp. 23-30 19 )藤部文昭:海陸風の季節的特性, 天気, Vol. 28, No.6, 1981. 6., pp.27-35 20)楠田信ほか:大分市の夏季の海陸風, 天気, Vol. 29, No. 1,1982.1. J pp. 81-86 21 )伊藤久徳ほか:和歌山における海陸風, 天気, Vol.30, No.3, 1983.3.,
pp.151-159
22)村上周三ほか:地域気象観測システムの風向風速データによる風エネルギーの 全国分布図の作成, 第6回風工学シンポジウム論文集J 1980.11., pp. 365-372 23)藤野陽三ほか:風向を考慮した風速統計に関する研究, 第7回風工学シンポジ
ウム論文集, 1982.12., pp.31-38
24)白石成人ほか:日本の風向別風速発生頻度分布特性, 風工学会誌, No.22,
1984.12. , pp.13-38
25)森征洋:日本における風の年変化の気候学的特性について, 天気, Vol. 33,
No.10, 1986.10., pp.55-65
26)久保時夫:沿岸気温に及ぼす河川の影響, 気象集誌, 21-11, 1943.11.,
-・・・・・・園田園田園園田F 一一一一一一一一一一ー一一一一-.;_
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pp, 494-501
27)菊池立:河川周辺の気温分布一名取川および阿武隈川下流部の調査一,
東北地理, 26-1, 1974,1., pp,22-29
28)福岡義隆ほか:都市気候に及ぼす河川水の影響一広島市太田川の場合一,
水温の研究, 第24巻, 第l号, 1980,1., pp,2-9
29)中村太士ほか:河畔林の河川水温への影響に関する熱収支的考察,
日本林学会誌, 71 (10), 1989,10" pp,387-394
30)福岡義隆ほか:鉱山からの温排水が気温分布に及ぼす影響, 水温の研究,
第22巻, 第l号, 1978,1., pp,39-46
31 )福岡義隆ほか:内陸盆地の都市大気環境に及ぼす霧と河川水温の影響,
環境情報科学, 18-1, 1989,1., pp,68-73
32 }西名大作ほか:都市内河川周辺部における微気候に関する研究一河川と周辺部 の気温分布測定一, 空気調和 ・ 衛生工学会学術講演会講演論文集, 1985,9"
pp,197-200
33)村川三郎ほか:都市内河川が周辺の温熱環境に及ぼす効果に関する研究,
日本建築学会計画系論文報告集, 第393号, 1988,11., pp,25-34
34)北川明ほか:河川周辺の気候の快適性, 土木技術資料, 31-10, 1989,10"
pp,38-43
35 }吉野正敏:都市気候における水面の効果, 建築雑誌, Vol. 98, No,1208,
1983,6, , pp,42-45
36)宮沢哲男ほか:都市域の気温分布に与える小水体の影響, 水温の研究,
第23巻, 第6号, 1980,6" pp,32-38
37)小林哲夫:中海北西沿岸、 本庄地域の気温について, 農業気象, 33 (2) , 1977,2, , pp,61-66
38) Takahashi, H" et al. : Local climate near the Small Lake (Part2) , J, Agr, Met., 36 (1), 1980,1., pp, 13-18/ (Part3), J, Agr, Met" 37 (1) , 1981. 1. , pp,29-37
39)丸田頼一:公園緑地の都市自然環境に及ぼす影響, 都市計画, 69,70, 1972"
pp,49-77
40 )近藤三雄ほか:樹木、 芝生の微気象調節効果に関する実証的研究, 造園雑誌,
46, 1985,3" pp,161-175
41 )中野芳輔ほか:緑地面の温度環境形成機構とそのモデル化, 農業土木学会論文 10 -
- ーー
寸一一�ローーι �-..-.昌国』油島出ωーユ冶.""値ムエムa山岨出血中邑柑血血_....,ι叫山叫ー且�・出品晶h品品世且畠幽圃曲品世... "".単�.�叫酌訓也紅且�凶日]ー吋必"""'"出品且画出品品�岨�凶時也]噛J凶ι 』・・・・ ・・圃
集, 第115号, 1985.2., pp.ト7
42} :本候毅ほか:緑地が都市内熱環境に及ぼす影響(1 ) , 農業気象, 40 (3) , 1984.3. , pp. 257-261/ :緑地が都市内熱環境の及ぼす影響(2), 農業気象,
43 (l), 1987.1., pp.31-36
43 }福井英一郎:都市における気温分布と緑地, 都市問題, 第47巻, 第7号,
1956.7. , pp.699-705
44 }渡辺達三:緑被の気温緩衝効果と緑度, 造園雑誌, 38, 1974., pp.25-28 45 )山田宏之ほか:都市における緑地の気象緩和作用についての実証的研究,
造園雑誌, 52, 1989.5., pp.127-132
46}田宮兵衛:住宅団地における夜間の気温分布について, 地理学評論, 41-11,
1968.11. , pp.695-703
47}円満隆平:建物に囲まれた地表面の日射受熱量と温度分布に関する研究,
空気調和 ・衛生工学会論文集, No.24, 1984.2., pp.35-45
48}中村泰人ほか:市街地空間における気温分布性状に関する実験的研究, 日本建 築学会計画系論文報告集, 第364号, 1986.6, pp.48-56
49}中村泰人ほか:二次元長方形市街地空間における表面の温度および熱流に関す る解析的研究, 日本建築学会計画系論文報告集, 第367号, 1986.9, pp.8-14 50}中村泰人ほか:市街地空間の地上における気流性状, 日本建築学会近畿支部研
究報告, 第26号計画系, 1986.5., pp.9-12
51 }田坂郁夫ほか:都市キャニオン内における気温分布および空気循環の観測,
地理学評論, 61-7, 1988.7., pp.541-559
52}内藤和夫ほか:都市気温形成因子としてのアーバンキャニオンの重要性一頼射 熱交換を重視した地表面熱収支モデルによる考察 , 空気調和 ・衛生工学会論 文集, No.22, 1983.6., pp.41-49
53} Nunes, M., et al. : The Energy Balance of an Urban Canyon,
J. Applied Meteorology, Vol. 16, 1977.1., pp.11-19 54}内藤和夫ほか:都市域における建物密度と日射吸収率の関係
一第1""'5報一, 空気調和 ・衛生工学会論文集, No.2, 1976.6., pp.l-l0,
No.5, 1977.10., pp.33-42, No.8, 1978.6, pp. 23-31, No.14, 1980.10,
pp. 79-85, No. 22, 1983.6., pp.51-59
55} Terjung, W. H., et a1. : Influence of Physical Structures on Urban Energy Budgets, Boundary Layer Meteorology, Vol. 19, 1980., pp.421-439
- 11 -
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56)中村泰人ほか:二次元長方形市街地空間の路上における人体の熱負荷に関する 解析的研究, 日本建築学会計画系論文報告集, 第369号, 1986.11., pp.12-21 57}片山忠久ほか:住棟閣の放射環境に関する実測とその推定, 日本建築学会計画
系論文報告集, 第401号, 1989.7., pp.1-10
58) Burt, J. E., et al. : The Relative Influence of Urban Climates on Outdoor Human Energy Budgets and Skin Temperature (I) (II) ,
Int' 1 J. Biometeorology, Vol. 26, 1982., pp.3-35
59}小林陽太郎ほか:建築外部環境と人体との閣の輯射熱授受について,
日本生気象学会誌, 17 (l), 1980.1., pp.49-57
60 }高橋百之:日本の中小都市における気温分布と家屋密度, 地理学評論, 32ーし 1959.6., pp.305-313
61 }水越允治:都市気温分布と風との関係についての一考察, 地理学評論, 38ーし 1965.2. , pp.36-46
62} Sai to, 1., et al. : Study on the Effect of Green Area on the Thermal Environment in an Urban Area, Energy and Buildings, 15-16, 1991. 7.,
pp.493-498
63 }石原修ほか:熊本地方の気象に関する研究(その9)地表面被覆率の算出およ ぴ気温分布推定への利用, 日本建築学会九州支部研究報告, 第27号, 1983.3.,
pp.89-92
64}河村武:熊谷市の都市温度の成因に関する二、 三の考察, 地理学評論,
37-10, 1964.10., pp.30-35
65)鎌田敏ほか:土地利用による気温変化に関する研究, 日本建築学会大会学術講 演梗概集, 1991. 9., pp.112ト1122
66}河村武:東京都内の日射量の分布, 天気, Vol. 10, No. 1, 1963.1. pp. 18-20 67)佐々倉航三:東京付近の湿度分布と都心における湿度の経年変化について,
地理学評論, 38ーし1965.9., pp.26-31
68)浦野良美ほか:都市における気象要素の広域分布-福岡地域における気象要素 の実測データによる解析一, 空気調和 ・衛生工学会論文集, No.12, 1980.2.,
pp.93-103
69)林徹夫ほか:都市の地表面熱収支に関する研究一土地被覆状況を考慮した福岡 市における解析一, 九州大学工学集報, 第59巻f第4号, 1986.8., pp. 503-509
- 12 -
第2章 気象データの統計解析による夏季の風の海陸風的な特徴
1 . はじめに
エネルギー消費の増大とこれに伴う排熱により悪化する都市の熱環境を考えた 場合、 市街地における建物間の風通しを良くすることは1)、 屋外における温熱感 覚の改善のみではなく2)、 換気、 通風の駆動力を増して居住室内の温熱環境の緩 和も促進する3. 4)。 このような自然風の導入による熱環境の改善を図るためには、
風の特徴を十分に把握することが必要である。 本章では、 都市において利用可能 な自然の風として海陸風に着目し、 気象データの統計解析により、 夏季日常的に 吹く風の海陸風的な特徴を明らかにする。
風は常に不規則に変動しており、 この不安定さがその有効利用における最大の 問題点である。 しかし、 熱対流に基づく局地循環である海陸風は、 一日周期の変 動として風向 ・風速等が比較的安定している5. 6)。 特に、 日中の海風は、 その前 線通過時の気温の低下7)や、 侵入後の気温の上昇を抑制する効果8)をもつことが 知られている。 このような特性と日本の多くの大都市が海岸付近にあることを考 慮すれば、 海陸風は都市熱環境を改善するための有効な自然風として考えられる。
気象学における海陸風の解析や考察は、 一定条件下においてその循環が発達す る日のみを対象に行われる場合が多く、 本章のように風の有効利用という点から は必ずしも適当とは言えない。 むしろ観測された風向 ・ 風速のデータをそのまま 用いて、 その中から安定した海陸風的要素を抽出する方が合理的であり、 適用範
囲も広がる。
本章では気象データの機械的な統計処理を通して自然風の海陸風的な要素を抽 出し、 それを定量的に表す方法について気象学的アプローチによる結果と比較検 討し、 全国の大きな都市における風の特性について考察する。
2 . 解析資料および海陸風ベクトル成分
2.1 解析資料の概要
解析に用いる気象データは、 1980年-1984年の5年間の全国12都市 におけるAMeDAS (A_utomated Meteorological Qata A_cquisition .s_ystem)お よびSDP (Surface Observation Daily Point)データである。 AMeDAS データは通常地域気象観測と呼ばれ、 地域における防災用(異常気象監視)とし
13
て風向 ・風速、 日照時間、 気温 および降水量の4要素と積雪深の毎時観測値であ る。 SDPデータは、 気象台等で観測される普通気象観測データを3時間値 およ び日別値で編集したものであり、 これらのデータは磁気テープにより年度毎に提 供されている。 主要都市のAMeDASおよびSDPデータはともに都市内のの 気象台における観測値に基づいている。
AMeDASデータからは毎時の風向(16方位)、 風速(皿/s)、 気温(OC)、 降水 量(mm)および 一日の気温の最高、 最低値を用いる。 SDPデータからは日積算水 平面全天日射量(MJ/m2'day, 以後、 本章では日積算水平面全天日射量を日射量と 略記)を用いる9)o 解析データのうち、 風向 ・風速が毎正時の前1 0分間の平均 値であり、 降水量が毎正時の前1時間の積算量である。 解析の対象として選択し た12都市を表2.1に示す。 これらの12都市は日射量の測定点であることと 全国的な分布を考慮して選択されている。
風向 ・ 風速は、 地形等の局所的な影響を強く受けるが10. 1 1)、 上記の各都市の AMeDASおよびS DPデータは、 それぞれ気象台の観測に基づくものなので、
これらをその都市の代表値として取り扱う。 また、 風速の鉛直分布を考慮すると、
各都市における風観測点の地上高さが、 表2.1に示すように一定ではないこと は問題である。 風速の鉛直分布の形を一定に仮定して、 すべての観測点における 風速を一定高さの値に補正したもの12)もある。 しかし、 風速の鉛直分布は風観 測点の風上側の地形や建物等の影響を受けて形成され、 場所により、 また風向に
表2.1 解析対象都市の位置と風観測点地上高
緯 度 経 度 標高 風観測点地 都 市 (北 緯) (東 経) (m) 上高(m)
札 幌 43" 03' 14 r 28' 17 19. 9
秋 田 390 43' 1400 06' 21. 0
イ山 iEA コ 38" 16' 1400 54' 39 52. 1
新 潟 37" 55' 1390 03' 18. 6
東 尽 350 41' 1390 46' 74.9
名古屋 350 10' 1360 58' 51 17.8
静 岡 34" 58' 1380 24' 14 16. 2
大 阪 340 41 ' 1350 31 ' 23 53. 0
広 島 34" 22' 132" 26' 29 19. 4
t� 岡 330 35' 1300 23' 24.5
高 知 33" 34' 133" 33' 15. 4
鹿児島 31" 34' 1300 33' 22. 0
- 14 -
都市 札 秋 仙 新 東
より変化している13)。 このため、 全観測点の全風向について的確な分布形状を 仮定できるだけの資料がない。 従って本章では表2.1に風観測点地上高を示す だけに止め、 特別の補正は行わない。
2.2 解析対象期閥
解析の対象とする夏季の期間は、 都市によりまた年度により異なる。 ここでは 日平均気温を基準として各都市ごとに年度別に解析対象期間を特定する。 日平均 気温は1日の気温データ24個を単純平均して求める。 日平均気温の1年間の変 動状態を、 1982年の東京を例として図2.1に示す。 不規則に見える日平均 気温の変動ではあるが、 1年を周期とする変動に1ヶ月に4--6回程度の比較的 短い周期の変動を重ね合せたものと見なせる。 これを平滑化するために、 日平均 気温の7日間移動平均をとる。 移動平均値をX', k=3として以下のように行う。
X' (t) = ( (X (t-k) tX (t-kt1)・・・tX (t) t・・・tX (ttk-1) tX (ttk)) / (2kt1) 図2.1に示したデータの7日間移動平均による変動状態を図2.2に示す。 この 7日間移動平均化した日平均気温が、 初めて2 QOCを越える日から最後に2 QOC よりも下がる前日までを夏季の期間として解析対象とする。 基準として2 QOCを 用いることに特別の理由はないが、 夏季として適当に高温であり、 区切りのいい 数字として採用したものである。 各都市について年度ごとに設定された解析対象 期間を表2.2に示す。
年度 1 9 8 0年
期間月/臼 (データ数) 幌 6/ 4� 8/12 ( 70) 田 5/30� 9/15 (109)
iEA コ 6/ 4� 9/17 (106) 潟 5/29� 9/20 (115) 京 5/22�10/11 (143)
表2.2 各都市における解析対象期間
1 9 8 1年 期間月/日 (データ数)
7/11� 8/29 ( 50) 6/29� 9/ 2 ( 66) 7/ 6� 9/14 ( 71) 6/25� 9/25 ( 93) 6/ 5� 9/30 (18)
1 9 8 2年 期間月/日 (データ数)
7 / 5� 9/ 2 ( 60) 6/19� 9/ 5 ( 79) 7/ 7� 9/25 ( 81) 5/27� 9/28 (125) 5/ 2�10/ 2 (54)
1 9 8 3年 期間月/日 (データ数)
7/26� 9/ 7 ( 44) 6/30� 9/14 ( 77) 7/16� 9/14 ( 61) 6/17� 9/25 (101) 5/10�10/ 8 (152)
1 9 8 4年 期間月/日 (テ・ータ散)
6/14� 9/ 1 ( 80) 6/ 5� 9/ 8 ( 96) 6/17� 9/18 ( 94) 6/ 3� 9/24 (114) 5/29-10/ 4 (29) 名古屋 5/22- 9/22 (124) 6/ 5� 9/29 (117) 5/ 8- 9/29 (145) 5/21 � 10/ 4 (37) 5/10-10/ 4 (148) 紗 岡 5/23-10/18 (49) 6/ 6-10/ 1 (118) 5/10~100/ /l(145) 5/10-10/13 (57) 5/29� 10/ 4 (129) 大 阪 5/20� 10/18 (52) 5/24� 10/ 5 (135) 5/ 8-10/12 (58) 4/26� 10/ 8 (166) 5/ 9-10/ 4 (149) 広 島 5/23-10/11 (142) 6/ 6� 9/27 (114) 5/10- 9/24 (38) 5/21�10/ 2 (135) 5/28-10/ 2 (128) f; 岡 5/22�10/14 (146) 5/ 8-10/ 7 (53) 5/ 7-10/12 (59) 5/20-10/15 (149) 5/28-10/ 4 (130) 高 知 5/12� 10/18 (160) 5/26-10/ 6 (34) 5/ 9-10/ 6 (51) 5/20�10/14 (48) 5/11�10/ 4 (147) 鹿児島 5/13-10/19 (60) 5/26�10/21 (149) 4/27� 10/19 (76) 4/25� 10/21 (80) 5/10�11/ 9 (84)
- 15 -
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1月 2月 3月
図2. 1 日平均気温の年間変動( 1 9 8 2年、東京)
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4月 5月 6月
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7月
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8月 9月 10月
図2. 2 日平均気温の7日間移動平均による年間変動(1 982年、東京)
丈 ミー
11月 12月
2. 3 海陸風の主軸
解析対象期間内のデータによる風配と、 地図から求められる各都市の気象台に 最も近い海岸線の方向を考慮して海陸風の主軸を決定する。 この風配には海陸風 以外の成因による風のデータも含まれる。 また、 これらの都市では埋め立て等に よる人工海岸が多い。 ここでは厳密な意味の海岸線の方向ではなく、 海側と陸側 の方向を判定することが目的なので、 およその海と陸の境界線の方向がわかれば よい。 凹凸の激しい人工海岸の場合には、 その凹凸を滑らかに結ぶ包絡線的な曲 線を仮定し、 その曲線の接線を用いて海岸線の方向を決める。
東京を例として、 最寄りの海岸線の方向を含めて解析対象期間の風配を図2.
3に示す。 理想的には海風と陸風の主風向を対称方向に持つ1本の軸8)を海陸風 の主軸と定義したいところであるが、 実際には図2.3のように対称とはならな い。 その原因は海陸風の一般的な性質から8)、 陸風は海風に比較して弱いので、
海陸風以外の成因や風上側の地形の影響を受けやすいためと考えられる。 また、
本解析の目的を考えれば、 気温が高く、 日射量の大きい昼間に発達する海風を主 対象とするのが妥当である。 このような点を考慮して、 ここでは海風の主風向か ら海陸風の主軸を決定する。 図2.3では海側の卓越風向Sを海風の主風向と考 え、 それと対称な方向Nを結ぶ軸を海陸風の主軸とする。 その他の都市において も同様に、 海側の卓越風向を海風の主風向と仮定し、 この方向とそれに対称な方 向を結ぶ輸を海陸風の主軸とする。 以上のように求められた各都市の海陸風の主 軸を、 最寄りの海およびその海岸線の方向とともに表2.3に示す。
十口小 東
N.,....
山γ吊王町
I.J
S
図2.3 解析対象期間の風配と海陸風の主軸(東京) データ数16704 静穏注1) 3.04%
ー17一
表2.3 各都市における海岸線と海陸風の主軸 者R 市 最寄りの海 海岸線の方向 海陸風の主軸
(海風一陸風)
本L 幌 石狩湾 NE --- SW NNW-SSE
秋 田 日本海 NNE---SSW WNW-ESE
イ山 iCA 3 仙台湾 NNE---SSW S E - NW
新 潟 日本海 ENE---WSW N S
東 京 東京湾 ENE---WSW S N
名古屋 遠州灘 ENE----WSW SSE-NNW 静 岡 駿河湾 ENE----WSW SSW-NNE
大 阪 大阪湾 NE ---- SW W - E
広 島 広島湾 WNW----ESE SW - NE
?� 岡 博多湾 ENE----WSW N S 高 知 土佐湾、 ENE----WSW SSE-NNW 鹿児島 錦江湾 NE----SW S E - NW
2. 4 海陸風ベクトル成分
毎時の風向、 風速データから合成される風ベクトルと海陸風との関係を表す方 法として、 風ベクトルの海陸風の主軸方向成分を考える。 この風ベクトルは、 海 陸風の成分と他の成因による風の成分が合成されたもので、 海陸風の成分そのも のを表すわけではない。 しかし、 本章ではこれを風ベクトルにおける海陸風的な 成分の強さを表す指標として用いる。 このベクトル成分を海陸風ベクトル成分と 呼ぶ。 海陸風ベクトル成分の考え方を東京を例として図2. 4に示す。 海陸風ベ クトル成分の値は海風側を正、 陸風側を負とする。
東 京
N
..,.,..
..,.,..
AV 怖 の AF / ふ 豆 恰 - d ノ
j毎F芸風成分 ( + )
W
,〆
j毎陸風の主軸
S
図2. 4 海陸風ベクトル成分(東京) - 18 -