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雑誌名 大原社会問題研究所雑誌

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Academic year: 2021

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特集 境界地域における「国民統合過程」と人々の 意識 : 日本とアジアを中心に : 特集にあたって

著者 金 慶南

出版者 法政大学大原社会問題研究所

雑誌名 大原社会問題研究所雑誌

巻 679

ページ 1‑1

発行年 2015‑05‑25

URL http://doi.org/10.15002/00011953

(2)

 近代国民国家の形成は,国家間の境界地域に存在した多様で多層的なアイデンティティを,ナ ショナル・アイデンティティへと統合させるものであった。その過程では,国家間だけではなく,

宗主国―植民地間の境界地域の人々のアイデンティティも問題となった。境界地域におけるアイデ ンティティのナショナル・アイデンティティへの統合は不完全であり,人々の意識はゆらぎを抱え,

時に,難しい選択を迫られた。

 本企画では,そうした境界地域における人々の意識が,「国民統合」の過程で,いかなる状況に おかれ,どのように変化したかを問うものである。また,今日のグローバリゼーション,あるいは 地域統合が進展する世界において,かつての逆の現象,すなわちナショナル・アイデンティティの 変質についても言及するものである。

 この企画によって,国境にまたがって暮らしている諸民族の民族としてのありようを考察するこ とができる。20 ~ 21世紀における民族と国家の関係をより広い文脈で捉え直していくにあたって,

少なからぬ示唆を与えるものとなろう。

 報告対象は,近現代におけるアジアの代表的な大国である日本と中国の関係を踏まえて,朝鮮―

対馬,台湾,沖縄―「奄美」,タイとラオスなど,境界地域にある人々の意識を事例として取り上げる。

 ⑴ 金慶南報告では,1872年から1945年まで,朝鮮海峡を隔てた対馬と釜山という境界に住ん でいた“対馬人”を中心に,明治政府の「国民統合」過程(帝国化)で,彼らがどのような生活状況 に置かれ,どのような役割を強いられたかについて分析した。この試みは,在朝日本人に対する既 存の認識「草の根の侵略者」について,境界線の変動により再認識する必要があるという問題意識 に由来する。すなわち“対馬人”が境界線の変更によって,被害者・加害者・被害者として変わる可 変性と,このような被害/加害の二面性を持つようになった本質的な理由を探るものである。

 ⑵ 何義麟報告では,在日台湾人の法的地位が,華僑と異なり,また「祖国(中国)」へのアイ デンティティもかなり違っていたという問題意識に基づいて,戦後の在日華僑団体の活字メディア を検証して,法的地位の問題やナショナル・アイデンティティをめぐる在日台湾人の苦悶を明らか にしている。『華僑報』(東京華僑総会発行)の内容分析を中心として台湾問題及び在日台湾人アイ デンティティの変容を検討した。

 ⑶ 高江洲報告では,国民国家において均一な国民像が形成されるという歴史的言説を地域の視 座から相対化し,中央と地方という縦関係だけでなく,横のつながりがもたらす“地域個性”に注目 する。国民国家形成期の「奄美」に注目し,均一な国民意識の下層にある地域アイデンティティの 多様性を明らかにしている。集団的アイデンティティを“連帯意識”と互換するような柔軟なつなが りであると自覚し,それを“排除の構造”に転化させないための思想訓練の素材を提示する意味あい を持った論稿である。

 ⑷ 渋谷報告では,タイとラオスの境界地域を事例としてとりあげる。メコン地域における越境 的な開発・環境問題と,人の移動に関する市民ネットワークの形成実態,市民運動の組織化と連携,

政府や関係諸外国・国際機関への働きかけ等,「下」からの取り組みの研究を通じて,その背景に

ある人々の意識を検討した。 (金 慶 南)

特集にあたって

【特集】境界地域における「国民統合過程」と人々の意識    

―日本とアジアを中心に―

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参照

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