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米国大統領制の韓国憲法への受容上の問題点

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(1)

(215)

論1

説 米 国 大 統 領 制 の 韓 国 憲 法 へ の 受 容 上 の 問 題 点

李 鍾 祥

1 目次

1.序論H.大統領制の意義

皿.米国大統領制の制度的内容W.大統領制の長所と短所

V.韓国の大統領制

一.現行・憲法上の大統領制0大統領制の要素

⇔議院内閣制の要素口二元政府制の要素︑一.米国の大統領制の受容

三.米国大統領制の受容上の問題点

0序⇔受容上の問題点

㈲受容されていない制度㈲米国大統領制との相異点

珊.結語‑改善の方向

(2)

2 神 奈 川 法 学 第32巻 第2号

(216)

1.序論

韓国が憲法制定にさいしてモデルとした国家権力構造は︑米国の大統領制であった.それは︑第三.四.五.六共

和国においても基本的には変わらなかった︒この大統領制に共通の特徴は︑議院内閣制をつけ加えた折衷的性格であ

り︑言い換えれば変則的な大統領制と︑青えよう︑

ところが・韓国の大統領制は制度上の長所を生かせず︑その短所だけを露呈することになった︒政治的独裁がそれ

である︒

韓国は形式的には︑大統領制を導入したものの米国での制度的内容を無視した塁口っても過言ではない.つまり︑

行政府の一元性と︑政府と国会それぞれの成立と責任における独立性しか採用せず︑立法府と行政府の機能上の独

立・両院制・連邦制と副大統領制などは導入しなかった︒ここに韓国における民主主義の発展にとって大きな障碍の

萌芽があったといわざるを得ない︒

韓国の大統領制の致命的な欠点は︑歴代の大統領がみな独裁の結果として悲劇的な最後を迎えたことからもわか

る・ここには大統領制の制度上の問題もあっただろうが︑もちろん大統領自身にも責任があったに違いない︒

米国の作り出した大統領制は︑米国においてのみ成功を収め︑それを継受した他の国々の多くは独裁政治を招くと

いう失敗に終わり︑韓国もその例外ではなかった︒

世界の先進国といえる国々は︑形態に多少差異はあれ︑議院内閣制を採用している︒議院内閣制は民主主義国家に

もっとも適した制度であり︑責任政治を実現できる民主主義の政治制度である︒だが議院内閣制は大統領制に結び付

けられるべきではなく︑ここに韓国大統領制の失敗の原因の一つがあったことに注目しなければならない︒

(3)

{217)

本稿では︑まず大統領制の意義に触れ︑米国大統領制の制度的な内容およびその長所と短所︑

に述べていく︒特に︑米国型大統領制を韓国憲法に継受における問題点を重点的に論じる︒

韓 国 の 大 統 領 制 の 順

11.

大 統 領 制 の 意 義

米 国 大統 領 制 の韓 国憲 法 へ の受 容 上 の 問 題 点

大統領制9鎚︒︒一α芭ω鴇竃β箕①ω錠①葺芭鵬︒<Φ霞筥Φ口¢とは︑議会から独立し︑議会に対して政治的な責任を一切負

わない大統領を中心として国政が運営され︑一元的な構造の執行府が立法府及び司法府と厳格に分離・独立され︑そ

れによって国家機関が相互に権力的均衡を保ち︑国民によって直接選ばれた大統領の執行府が安定性を維持する統治

(24形態をいう︒

大統領制はモンテスキューの三権分立の理論をもっとも徹底して適用した統治形態と評価されており︑またこれは

統治機関の組織および機能の分離と権力に対する抑制・均衡の原理を実現させるための統治形態である︒つまり︑大

統領制は︑統治機関の独立性が最大限に保障される制度といえる︒大統領制の本質的な要素は︑政府と議会の組織と

(3)活動が独立性の原理に基づくところにある︒大統領は議会で選出されず︑政府は議会に対して政治的責任を負わな

い︒政府と議会がそれぞれ独立して国民によって選出されるため︑相互の責任問題も発生しない︒つまり議院内閣制

のように議会の不信任権と政府の議会解散権はない︒

ただし大統領は︑国民に対しては政治的責任を負う︒というのは周期的な大統領の選挙によって国民に直接政治的

責任を問うからである︒これが大統領制の制度的な特徴であり︑本質的な要素である︒.

(4)

4 神 奈 川 法学 第32巻 第2号

{218)

川 . 米 国 大 統 領 制 の 制 度 的 な 内 容

一般的に大統領制の制度的な内容としては︑米国大統領制のそれが例示される︒米国は大統領制の母国であり︑さ

らに大統領制をもって成功した唯一の国でもあるからである︒(4)米国憲法の特徴は権力分立型また抑制と均衡にもとつく大統領制にあるといわれる︒

米国のフェデラリスト達は︑自由の保障のためには三権は分離されるべきもので︑立法と行政が一人あるいは一つ

5)の機構に属するとそれは自由の終焉をもたらすという強い確信をもっていた︒三権は立法府︑行政府︑司法府として

分離されているが︑この分離は単なる分離ではなく相互抑制と均衡を維持するものであった︒

米国憲法の制度的な内容は以下の通りである︒

一三権分立

米国の憲法は国家の権力を厳格に三権に分離・独立させている︒立法権としての連邦議会6︒口αq噌..︑)は上下両院

から構成される︒上下両院とも国民が直接選出する︒任期は下院(ぼoロω①oh閑㊦鷲①ωΦ簿餌鵠くΦω)の議員は二年であり︑

上院(ω窪讐①)の議員は六年である︒大統領も国民が選出する︒その任期は四年である︒

連邦最高裁判所(ω毎﹁①ヨΦO︒霞齢)の裁判官と長官は大統領が指名し上院の助言と承認を得て大統領が任命するが︑

原則的に終身であ.て︑立法権や行政権から独立していると見なされる.大統領が欠けた時に鹸領を承継する副大

統領を大統領の選挙の時と同時に選挙するのも︑行政権の独立を保障する制度的な装置だとされる︒三権の独立性は

兼職禁止規定(米国憲法第]条三節六項)にもよく現れており︑大統領は任期のあいだ︑法的な責任を議会による弾劾

(5)

(219)

恥国 大統 領 制 の 韓 国 憲 法 へ の 受 容 上 の 問題 点

 

門b 裁判に負うのみであり︑政治的な責任は負わない︒

議院内閣制の特徴である議会の政府に対する不信任権とか政府の議会解散権は米国の大統領制の下ではまったく存

在しない︒

行政府は法律案の提出権をもたないばかりか︑議会の要請がなければ議会に出席・発言もできず︑大統領は教書と

して意思の陳述が認められているだけである︒

米国の憲法は三権分立の理論にもっとも忠実でありながらも︑三権分立の理論が不可避的にともなう抑制と均衡の

理論(o臥9一覧Φo{島Φ︒器窪鳥げ巴き8︒︒)も固守している︒上院は︑条約承認の権限を有し︑また上級公務貝と裁判官

の大統領による任命に対して同意を与える︒大統領は︑法律案の拒否権を持って議会を抑制し︑連邦最高裁判事の任

命権を持って司法権を抑制する︒連邦最高裁の司法審査権は︑立法権および行政権を抑制する︒

二行政府の一元性

米国型大統領制における大統領は︑国家の.兀首であると同時に行政府の首班であるところに︑その特徴がある︒行

政府のすべての権限を大統領が掌握する︒行政府の実質的な権限と形式的なすべての権限は大統領一人に集中されて

いる︒一般的に君主や大統領のもつ形式的.儀礼的な権限はいうまでもなく︑首相もしくは国務大臣がもつ実質的な

権限はすべて大統領に属している︒大統領制における内閣は︑議決機関ではなく︑大統領の権限行使に対して諮問す

る単なる助言機関にすぎない︒この助言機関の決定事項に︑大統領はまったく拘束をうけない︒しかし議院内閣制下

では︑内閣の閣議決定に国務大臣と首相は拘束される・この内閣は議決機関であるためで畿・

大統領制における大統領は︑議院内閣制において君主と首相のもつ権限をすべて有しているため︑行政府は一元的

(6)

6であるといわれる︒方︑

議 院 内 閣 制 健

元 的 で あ る と い

れ.

る 篁

f)

神 奈 川 法 学 第32巻 第2号

三大統領の直選制︑2

ビュルドーじd母匹Φ窪は大統領制の理論的な条件のひとつに︑国民による国家元首の選出を挙げている︒大統領制

における大統領は国民によって直接に選出され︑その任期間在職するだけではなく︑政治的な責任も議会に負わない

ことを本質としている︒

権力分立という点だけからみると︑国民による大統領の直選は︑議会の影響から行政府の独立を保障する︒さらに

これは︑そのほかにも代表制原理に基づく大統領に国民代表たる性格か付与されることを意味する︒大統領制におい

ては・国民によって選出されているが故に︑大統領の権限は形式的にとどまらず︑実質的なものであるとする理論的

な根拠は︑まさにここにあるのである︒議院内閣制においては︑行政府が議会によって選出されるために議会だけが

唯一の国民の代表になる︒この場合の大統領は議会の代理者にすぎない︒しかし︑大統領が国民によって直接選出さ

れる場合︑大統領は議会とともに国民の代表であり権力の正当性も議会とともに直接的に国民の主権に基づく︒こう

して大統領制は二重の代表制として成立する︒

四副大統領制

大統領制の特徴の一つに副大統領制がある︒議院内閣制には副大統領がない︒副大統領を設ける必要性がないから

である・議院内閣制の君主や大統領は︑形式的な権限をもち国政に超越する地位にあって行政には実質的に権限をも

脚たず責任を負わないので・その君王とか大統領が有故時や欠位のさいにも国政執行に混乱や支障をは生じない.その

(7)

伽ため副大統領は必要ではない.しかし大統領制においては︑大統領の有故時に副大統領が大統領職を直ちに承継しえ

ないと︑政局の混乱と破壊が生ずる危険性があるため︑大統領制において副大統領は必須で鶴﹂〇三六事態の

下での我が国の苫い経験はそれを示している︒

米 国 大統 領 制 の韓 国憲 法 へ の受 容Lの 問 題 点  

7 五両院制

議院内閣制においても両院制を採川している場合が多いが︑大統領制にも両院制が多い︒﹁般的に先進国は︑議院

内閣制であれ大統領制であれ︑例外なく両院制を採用している︒大統領制で両院制を採川する理由は︑一院制におけ

る立法府の独裁を防止するため︑立法府の権限を二分しようとするところにある︒米国の両院制は︑連邦制を前提に

するため︑下院は国民を代表し︑上院は各州を代表するものとし︑二つの側面を調整する必要に由来する︒

瞳 . 大 統 領 制 の 長 所 と 短 所

大統領制は一般的に次のような長所と短所をもっている︒

[長所

O大統領によって︑政局は安定し︑国政の継続性は保障される︒このような政局の安定性に基づいて︑政府は強

力な政策を一貫性をもって推進することができる︒米国の大統領が︑その任期中国家の発展のために一貫して積極的

に政策を遂行できるのも︑この長所のゆえである︒この点に大統領制のもっとも基本的な価値を認めることができよ

(8)

8⇔議会の軽率を防止できる︒議会の質が低い場合︑多数決で軽率な行動をとる危険性があるが︑大統領制はこれ

を防止し少数者の利益を保障できる長所をもっている︒米国においては︑大統領の法律案の拒否権の行使等がこれで

知 ・

ω大統領が確信をもって行政を遂行できる長所がある︒つまり大統領は行政権の最終的な決定と国防.外交政策

を確信をもって適切に遂行できる︒

神 奈 川 法 学 第32巻 第2号

二短所

O大統領制のもっとも大きな短所としては︑大統領の独裁化の傾向を挙げることができる︒大統領は︑国家元首

としての権限と行政府の首班としての強力な権限をもちながらも︑議会に対して一切責任を負わないために独裁化の

傾向がある︒さらに行政府の各長官は大統領に対してのみ責任を負うため︑大統領の独走を抑止するのが困難で

恥 ・

⇔大統領制における厳格な権力分立制は︑国家権力の消極化をもたらし︑政府と議会が二位一体の強力な政治力

を発揮するのを不可能とする︒権力の二元化は責任の所在を不分明にする︒

⇔ 藝 と 政 府 が 衝 突 し た 場 合 蟹 の 方 法 勃 贈 こ れ は 国 政 の 麻 痺 に つ な が る お そ れ が あ る . 大 統 領 の 震 の

政党と議会の多数党が一致する場合にはこの欠点はある程度是正できるが︑一致しない場合︑これを解決できる調整

17︑・の方法がない︒

{222)

(9)

(223}

米 国 大 統 領 制 の 韓 国 憲 法 へ の受 容Lの 問 題 点  

9

V . 韓 国 の 大 統 領 制

一現行憲法上の大統領制

一九八七年第九次の改憲による現行韓国憲法上の国家権力構造も︑原則的には米国型大統領制による︒しかし純粋

な米国型大統領制とはいえない︒

これは︑米国型大統領制と議院内閣制とを折衷した大統領制である︒また現行憲法上の統治形態は︑基本的に大統

領制とはいえ︑副大統領制がなく︑議院内閣制の要素が加味されている点︑そして二元政府制下の緊急権等をもって

いることなどを勘案すると︑外国の憲法には類例のない変形された大統領制の一種であって︑韓国の政治文化を反映

)する独特の韓国型大統領制ともいえる︒

現行憲法に内包されている議院内閣制の要素は︑大統領制の本質的要素に属する立法府と行政府の組織・機能上の

相互独立性を︑少なからず制約している︒だからこそ現政府の形態は折衷型に分類される︒つまり韓国の大統領制

は︑大統領制を中心とする折衷型ないし変形された大統領制と位置づけら粗甜︒

言い換えれば︑現行憲法上の政府の形態は︑純粋な米国型大統領制ではなく︑議院内閣制的な要素を加味して米国

型大統領制の制度的内容を部分的に受容した︑折衷型ないし変形された大統領制でむ裂・

続いて︑現行憲法上の大統領制における大統領制的な要素︑議院内閣制的な要素と二元政府制的な要素に言及した

O大統領制的な要素

現行韓国憲法Lの統治形態について︑権力分立原則の視点から米国の大統領制の要素と比較すると︑次のような要

(10)

神 奈 川 法 学 第32巻 第2号 10

(224)

素が挙げられる︒

①大統領は行政府の首班であり︑国家の兀首として制度上の行政権の一元性を担保する(憲法第六六条一項.四

項)︒大統領は法の執行の最高権限と最終的責任を有する︒②大統領は国民によって直接に選出されへ第六七条一項)︑

国民から直接に代表性を付与されている︒五年の任期間は(第七〇条)︑弾劾を除いて︑国会に対して一切の法的な

いし政治的な責任を負わない︒国会は大統領に対して不信任決議をなしえないが︑大統領も国会を解散できない︒③

大統領は法律案への異議権を行使することによって(第五三条二項)︑国会の専制を防止することができる︒④憲法裁

判所は︑司法審査権(第一〇七条)を有する︒

以上の要素からみると︑韓国も米国型大統領制の骨格をそなえた統治形態に近いといえよう︒

⇔議院内閣制的な要素

現行韓国憲法上︑議院内閣制的な要素は以下の通りである︒

①議院内閣制の閣議と同様に︑国務会議を設置して国政の重要な政策を審議する(第八八条一項)︒国務会議の議長

は︑大統領である(第八八条三項)︒②国務総理(首相)は︑国会の同意を得て大統領が任命し︑大統領の命をうけて

行政各部を統轄する(第八六条一︑二項)︒③国務総理は︑国務委員(国務大臣)と行政各部長官の任命を大統領に提

請し︑国務委員の解任も大統領に建議することができ(第八七条︑第九四条)︑国会も国務総理または国務委貝の解任

を大統領に建議することができる(第六三条)︒④大統領の国法上の行為には国務総理および当該の国務委員の副署

が必要である(第八二条)︒⑤政府は法律案提出権をもち(第五二条)︑⑥国務総理.国務委員等は国会に出席.発言

でき︑国会も彼らに出席と答弁を要求することができる(第六二条)︒⑦国会議員は国務委員や各部長官との兼職が

許容される︒

(11)

(225)

米国 大 統領 制 の 韓 国 憲 法 へ の 受 容Lの 問題 点

以上のように︑議院内閣制においてもっとも重要な要素である国会の内閣不信任権と国務総理の国会解散権がな

く︑国務総理が行政権の実質的な担当者ではなく大統領の補佐機関にすぎないことから︑現行憲法下の統治形態では

議院内閣制的な要素が大統領制の骨格を損なうほどには加味されているとは思われ梅・

口二元政府制的な要素

韓国は︑大統領制と議院内閣制の要素以外に︑二元政府制的な要素を導入し︑大統領の権限を強化している︒

①一九五八年ド.ゴール憲法のフランス第瓦共和制憲法上の大統領の地位に関する規定が韓国にも導入され︑大統

領の国家元首に関する地位が強化された︒もっとも目立つのが第四共和制の維新憲法ヒの大統領の絶対的な地位に関

する規定だが︑現在は絶対的な地位に関する規定は削除され︑国家元首に関する規定だけがそのまま残っている︒韓

国は米国とちがって国家元首の地位を憲法上明文化している︒憲法第六六条一項に﹁大統領は国家の元首であり︑外

国に対して国家を代表する﹂と規定している︒韓国の大統領の地位は行政権の首班にとどまらず︑国家元首であると

されており︑この憲法上の規定は国家元首としての地位を確認するだけでなく︑大統領に三権の上位の地位を与える

ことにもなる︒②大統領は︑国家の独立・領土の保全︑国家の継続性と憲法を守護する責任をもつため(第六六条二

項)︑総体的な国家緊急権を有する︒具体的には︑緊急命令権(第七六条一項)︑緊急財政・経済命令と処分権(第七六

条一項)︑戒厳権(第ヒ七条)などである︒③大統領は重要な政策に関する国民投票付議権を有する(第七二条)︒

11

二米国の大統領制の受容

米国の大統領制の内容として︑①厳格な権力分立︑②大統領の直選︑③行政権の一元性︑④副大統領制︑⑤両院制

(23等が挙げられる︒ところが︑韓国における米国型大統領制の制度的受容について見ると︑②と③だけを受容している

(12)

神 奈 川法 学 第32巻 第2号 12

だけで︑①︑④と⑤は受容しておらず︑従って結果的に米国制度の五分の二だけしか受容していないことになる︒こ

のような結果から見ると︑韓国の大統領制は受容そのものにおいて既に大きな問題を抱えていたといわざるをえな

具体的に言うと︑米国型大統領制と類似する点は︑①大統領が行政権の首班であると同時に国家元首であり︑②大

統領に一定の任期(五年単任)が保障され︑③大統領は国会に対して責任を負わず︑④大統領が法案拒否権をもち︑

⑥大統領の上級公務員の任命に対して国会が同意権をもち︑⑥国会が予算案の審議および決定権.国政調査権.弾劾

訴追権をもち︑⑦大統領は国会の同意をえて最高裁長官︹大法院長︺と最高裁裁判官︹大法官︺を任命し︑⑧裁判所

︹法院︺が違憲法令審査権をもっていることなどである︒

そして米国型大統領制と異なる点は︑①国会が両院制ではなく一院制であること︑②副大統領制の不存在︑③政府

の法律案提出権と大統領の憲法改正発議権︑④人統領の緊急命令権・緊急財政.経済処分と命令権︑および戒厳出日希

権︑⑤国会の国務総理・国務委貝解任建議権︑⑥連邦制の不採用︑⑦司法審査権を大法院ではなく憲法裁判所が行使

(24)していることなどである︒

三米国大統領制の受容上の問題点

O序

米国の大統領制を導入するにあたって︑純粋な受容がなされなかったために︑韓国の統治体制は多くの問題点をか

かえるようになった︒具体的に言うと︑韓国は米国の大統領制を半分も受容していない︒受容されたのは︑行政府の

㎜充性と行政府の成立と責任の墾立にとどまり︑ほかの制度は導入していない.このように韓国の大統領制は純粋な

(13)

(227)

米 国 大統 領 制 の韓 国 憲 法へ の 受 容Lの 問 題 点

13

米国型大統領制ではく︑韓国式に変形された大統領制になってしまったのである・

以下では米国の大統領制と比較して︑韓国が受容していない制度と︑米国の大統領制と異なる韓国型大統領制に関

して言及する︒

㈲受容されていない制度

米国の大統領制の中で韓国が受容していない制度には︑両院制︑副大統領制︑連邦制等がある・

ω両院制

韓国は制憲憲法において一院制を採用した︒一方︑第一次憲法改正時には︑大統領直選制とともに両院制を導入し

たが︑これを実施できなかった︒第二共和国の議院内閣制下では民議院と参議院の両院制が実施されたが・第三共和

国の憲法下では大統領制と一院制に復帰して今日にいたっている︒

両院制は人口規模と連邦主義からよく説明される︒その理論的な二つの根拠︑つまり大規模な国に存在する多様な

利益を代表し︑そして連邦制下ではその各々の構成単位の利益を代表するために︑第二院が必要とされるのである・

人口規模の大きさと連邦主義はともに両院制と確実に関係している︒全ての大規模な国と全ての連邦体制をとる国

は︑両院制議会を有している.ここで大規模な国とは少穿とも人旦千万以上の国を抵やまた一般的に・両院制

議る国の内;を除いた全ての国で︑第一院たる下院より第二院たる上院の方がいちじるし添規模となって

いる︒

大統領制の米国は両院制をもっている︒米国は連邦制という特殊性のため両院制が実施されているといえるが・世

界的な趨勢をみると両院制が一院制よりおおく︑世界すべての先進の民主国は統治形態の如何にかかわらず両院制を

採用している︒特に米国は州でも両院制を実施しており︑全五〇州のなかでただ一州のみを例外とする・両院制は社

(14)

神 奈 川 法 学 第32巻 第2号 14

(228)

会構造上・また合理的な目的から︑その制度的な価値を認めることができるが︑両院制はその短所より長所が多いと

(27)いうのが通説である︒

このような世界的な趨勢や長所等を考えあわせると︑両院制は必然的で︑韓国も決して例外ではありえない︒将来

の改憲にあたっては必ず考慮すべき事項である︒

特に与小野大のような﹁分離された政府﹂を考えると︑国会の極限的な対立状態を宥和させる上院が必要となる︒

国会の独裁を防止するために国会を二分化し︑一院制下では起こりがちな国会の独走を上院が調整するようにしなけ

[28)ればならないと思われる︒

㈲副大統領制

大 統 領 制 を と る 国 で は ・ 副 大 統 領 は 必 須 で 難 . と こ ろ が 韓 国 現 行 憲 塗 ︑ 大 統 領 の 有 故 時 に 自 溜 に 大 統 領 職 を

副大統領が承継するとする規定は存在しない︒これは韓国が純粋な米国型大統領制ではないからである︒米国型大統

領制の中で副大統領制が重要な意義をもっている.韓国の憲法では大統領の有故時に︑国務総理がその権限を代行す

ることとなっているが・この点には問題が騒・この場合︑統治権の塁的な正当性に真空状態が生ず逢)とになる

からで難・つまり・国民の直選によらず大統領によって任命された国務総理が大統領の有故時に大統領の権限を代

行するならば︑国務総理に国民的袋性が欠如していることはいうまでも亨︑その権限移行についての塁的な正

(33)統性にも疑問がある︒

韓国も大統領制を固守するのなら︑国民的な代表性と民主的な正統性に基づいて副大統領制を導入する必要があ

る・民主的な正統性がなく︑国民によって選出されない国務総理が大統領の権限を代行すべきではない︒

解釈問題としては︑現行憲法における(民主的)正統性の観点からは︑国会には国民の代表制が認められるので︑

(15)

(229)

椰 伏 統 領 制 の 韓 国 憲 法 へ の 受 容[=の 問 題rli Z5

第 茨 的 に は 国 ム ム 嚢 が 大 統 領 の 震 を 螺 継 ぐ の が 妥 当 で あ ろ う . 米 国 で は ︑ 契 統 領 も 欠 位 す る 場 合 に は ︑ 下 院

議長がその地位を承継することとなっている︒

韓国も第共和国では副大統領制を設けていたが︑第三共和国から今日まで副大統領制を設けていない・国家の緊

急事態等を予想すれば︑大統領の欠位時に大統領を承継する副大統領を大統領選挙と同時に選出するのが妥当である.維新憲法下のδ.二六の事態に際して︑副大統領制があれば政治的な空白は発生しなかっただろうし・第五琵ハ和国が誕生することもなかったかもしれない︒勿論これは政権の交替の側面にかぎっての話である・

事実h︑副大統領制は平時には特に必要のない制度であるかもしれないが︑非常時には不可欠の制度である・大統領制下で副大統領制を設けるべしとするのが一般的な見解である︒

㈱連邦制

米国の連邦制は︑米国が現代国家の理論と現実に寄与したものの中でもっとも意義のある制度であ㌃や

連邦と支邦のそれぞれの管轄権は︑連邦または支邦に帰属される機能を個別的に列挙し︑列挙されない権限は支邦

ま た は 連 邦 に 帰 管 せ る 留 保 条 項 L 方 式 で 憲 法 に 規 {疋 す る の が 漏 ・ 奥 国 家 に 委 任 さ れ た 麓 が 広 け れ ば 広 い ほ

ど︑支邦に留保された権限は制限をうけることにな凝︒

連邦︑霧とは︑政府の活動がマつかの支邦政府と;の中央政府の間に分割され︑具体的にどのような活動を行・つかに関しては各政府が馨的な決定を下す政治組織をい麹・連邦義は権力の中央と支邦の分割という第茨的な

原則の他︑第二誇な特性をもっている.つまり成文憲法︑両院制︑連邦憲法の修正手続に参与し・自らの憲法昼方的に改正できる州の権限︑連邦院へ尋邑︒曇ζにおける小規模な州の平等な権利︑州が強い力をもち不均衡な袋制と分権化された政府がそれである.成文憲法に対する強力な要求は連邦制の茨的原則から生じる・つまり

(16)

神 奈 川 法 学 第32巻 第2号 16

(230)

権力の分割が憲法虜示されなければな・らず︑中央と地方政府の双方は自分に分け︑bれた権限が叢されないためのハぜ確固たる保障を必要とする︒

そして連邦システムの立法府は両院で構成されている.一つは全国民を代表とし︑も︑つ一つは連邦の構成単位であ

(40)る支邦を代表する︒

このような内容をもった連邦制が︑米国の大統領制が成功する要因であったことに注目すべきである︒

米国の大統領制は外国に輸出されたが︑それはこれらの国では立憲民圭義の死をもた︑bした.米国だけが民義

和国の楽園を享受している理由の;は︑米国が連邦制を採用しているところにある.連邦制の採用により︑米国で

は連邦政府の権限が限定され︑特に連邦政府が個人の基本権に直接に関わる分野は比較的狭い範囲にかぎられている

ので騒・

會の米国の民︑圭義の発展は︑連邦制をその基礎としている.詣の大統領制を輸入した国が独裁へと転落した

例では・その基本的な理由の;を米国の連邦制を導入しなかったことに見出し︑つる.雀鵠も大統領制を維持し

ようとすれば・統扇な中央集権制から脱皮して連邦制を導入すべきである.将来における統憲法制定を念頭に置

けば︑これは一層必要であろう︒

三権分立が国民の基本権の保障の手段だとすれば︑連邦国家でこのような水平的な分立に加えて︑連邦と支邦との

垂直的分立があって︑権力分立の効果はより増大され︑国民の業権保障をも︑つ一段高める結果をがもた︑bされ

騒・ヘッセ=︒ωωΦも・含連邦国姦吐旭が正当化されるもっとも強力な理由として︑連邦国家構造が現代的な権

力分立の一つの手段を意味すると述べている︒

㈲米国大統制との相異点

(17)

{231)

米 国 大 統 領 制 の韓 国憲 法 へ の受 容 上の 問 題 点

17

ω序

米国の大統領制と韓国の大統領制との相異点︑変形された点としては︑議院内閣制的な要素︑大統領の任期・大統

領の直選制︑政党制︑人事の問題等がある︒

㈹米国大統領制との相異点

①議院内閣制的な要素

③要素

現行憲法上︑議院内閣制の要素としては一︑政府の重要政策の審議機関である国務会議制︑二︑国務総理の大統

領による任命に対する国会の同意制︑国務総理の行政各部統括権と国務総理の国務委貝任命提請と解任建議権・三・

国務総理と関係国務委員の副署制度︑四︑政府の法律案提出権︑五︑国会議員の国務委員兼職の許容・六・国務総

理.国務委貝等の国会での出席および発言と︑国会による出席・答弁要求権等がある・

⑤批判

大統領制下において国務会議は実質的には議決機関でも︑審議機関でもない︒これは米国と同様に諮問機関にすぎ

ない︒なぜなら大統領は国務会議の決定に拘束されないからである︒ただし︑国務会議の審議事項については・手続

上 こ の 審 議 を 経 ず に 大 統 領 が 執 行 し た 場 合 ︑ 憲 法 違 反 の 問 題 が 生 為 ・

国務総理の国務委員の任命提請権もあまり実益がない規定だといえる︒それは単なる形式的な権限にすぎない・国

務総理の提請は大統領の人事に拘束力を与えないばかりか︑大統領はこの提請に関係なく任命できる・米国と同様に

韓国にも上院があれば上院の同意を得ることとするのが最も適当だが︑次善策として国会内に人事聴聞会の制度をもうけることも一つの方法になるだろう︒

(18)

神 奈 川 法 学 第32巻 第2号 18

 ぬ

国務総理と国務委員の解任犠については︑この規定も実効性がない飾りの憲法規定にすぎない.国会で国務総理

とか国務委員に対する解任建議がなされたとしても︑大統領はこれを拒否できるから︑解任建議権は何の法的拘束力

もない形式的な権限にすぎない.国会の解任建議権は本来当然に拘束力を持っべきであり︑大統領は︑当該の国務委

員ないし国務総理を必ず解任すべきである︒解任建議と弾劾訴追の国会の議決定足数が同様であることからしても︑

高 撃 が 大 き い 弾 劾 を さ け る こ と が 黎 的 で 難 . 同 じ 効 果 を 得 る に は 鴫 当 な 方 法 が 望 し い か ら で あ 奄

一方︑解任建議は政治的な責任にまで及ぶため︑問責の範囲は弾劾より広い︒

国務総理と関係国務委貝の副署制度も米国の憲法にはない制諜︑これは君王制下での国王の無篁貝に対応する代

位責任を示す︑君主制の捧が導入された陳腐な制度に他ならない.繍は国ムムに対して圭貝任を負わない大統領の行

為に対して補弼責任の所在を明らかにするための根拠としかみなされない.大統領制における副署制度も適当な制度

とはいえない・副署制度は関係国務委員と長官の責任の所在を明確にし︑同時に大統領の独断を防止するのに効果が

あるといわれるが・果たしてどの程度大統領の権限行使の独走と専断を防止するのに効果があるか疑わしい︒大統領

の権限統制の役割はそれほど期待できない︒

米国の大統領制のドでは政府に法案提出権がない︒韓国は大統領制でありながら政府に法律案の提出権がある︒現

代の行政国家では︑立法の技術性・専門性と多様性のために︑法律の立案は主に政府が行い︑国会はただ法律案を通

過させるだけの通法府に低落したと評価されている.米国の法律案の大部分も政府案であり︑与党議貝を通して議会

に提出されているといやそのため︑多数派与党と政府が協力して政府提出の法律案を強制的に通過させよ︑つとする

危険性がある.政府の法律案提出権と並んで大統領の葎案拒不︒権の存在は︑国△云の立法権簸食し︑行政府の独走

關を促しかねない・とりわけ院制をとる韓国の場倉は︑このような危険はより大きいのである.

(19)

(233)

米 国 大統 領 制 の 韓 国 憲 法 へ の受 容}二の 問題 点

19

米 国 の 憲 法 上 の 膏 の 長 官 義 は 絶 対 的 錫 防 め ら れ て い な い . 欝 で は 憲 塗 ︑ 国 会 醤 の 長 纂 撃 馨 さ れ て い る が ︑ こ こ に も 問 題 が あ る . 国 会 替 の 国 務 育 の 義 は ︑ 国 会 の 政 府 へ の 薦 を 意 味 為 ・ 政 府 と 国 会 が 政 党 を 通 し て 政 策 全 般 に 関 す る 業 務 を 協 議 す る の は 充 分 に 罷 に も か か わ ら ず ︑ あ え て 大 統 領 が 国 会 膏 を 誉 に 廷 叩 す る

ならば︑政府による国会支配の可能性を排除できないと思われる・

大統領制は政党制を前提ないし遥した統治形態ではない.議院内閣制は必然的に政党制を前提にしている・政党制をともな︑つ謹内淵的な案を大統領制に接木させるのは︑大統領制の立法右政府の懲した分立を前提した欝を完全に崩壊させる.韓国での憲政の経験から見ると︑西欧の議院内閣制の葉は純粋な本来の制度の目的とはちがって︑大統領制における権力の専横を防止するのに積極的な機能を発揮できずに・大統領の権肇講で実質的な震強化に寄与する装置に転落したと認めざるをえないだ脳︒レ占エンシュタインも・米国型の大統領製西欧の議院内閣制と接木されると︑立憲主義の死がもたらされると強調してい(翻︒

米 国 型 大 統 領 制 下 で 議 院 内 閣 制 の 葉 は 民 主 主 義 の 発 展 に 役 立 た ず ︑ む し ろ 大 統 領 の 権 力 強 化 に 寄 与 す る よ う に な

り︑さらには大統領の独裁に便乗して民主主義に逆機能を果たすようになる・

②大統領の任期

現行米男大統領の任期は︑修正憲法第二二条によ.て四年任期で雇に限り程できると規定されている・韓国の現行憲法は︑五年の単任制窺定している(第七・条)︒大統領の任期を葦の単任と規定したのは・合理性よりも憲政史のコンテクスふ・ら考えるべきである.歴代大統領は︑改憲の焦点を永久執権載権延長においていた.こ︑つした企てを制度的に防止するために第五共和国では葦の単任制︑第六共和国では五年の単任制に改憲し

(20)

神 奈 川 法 学 第32巻 第2号 20

(234}

ハむ

大統領の任期は︑米国のように四年とし︑蔑に限って再任を認めるのが妥当であろ︑つ.

直蓬挙制の大犠の単任制は︑憲法理論上も問題があると思われる.鹸領の独裁を防ぐ努な権力統製置を

設けた上で・大統領の程を暮するのがよ各理的で民主的だと考え・bれる︒国民によって直選された大統領にも

再度国民の審判を受けさせるのが︑直選制的大統領制における塁嚢の本質的要素に適.ている.しかし韓国の憲

政史的な脈絡からすれば・独裁の記憶が消えない限り︑再選を認める憲法の改正は容易ではないだろ︑つ.さらに任期

の延長や程の容認だけの憲法整は︑提案時に在任する大統領には効力が及ば三とい︑つ憲法の規定だけみても

(第一二八条二項)︑改正は困難であろう︒

米国でも再選が困撃あり・政策の継種を確保するために六年の⁝早任制への改憲について論議されてはいるが︑

反論も強く・改憲は極めて難しいであろう.六年の単任に対する反対論によると︑再任の際に国民が行使し︑つる権

利・例えば成功を収めた大統領を八年に渡って選出できる権利︑失政をもたらした大統領を四年で引退させる権利︑

そ し て 轟 の 圧 力 で 公 共 の 世 論 を 大 統 領 の 政 策 に 反 警 せ る 権 利 な 蕗 失 わ れ て し ま い ︑ ま た 能 力 や 書 に 大 き な 問

題のある大統領に六年の任期を与えるのは極めて危険だというのである︒

③大統領の直選制

米 国 は 大 統 領 を 間 接 馨 で 選 出 す る . こ の 肇 は ︑ 実 質 的 に は ︑ 直 肇 挙 と 同 様 で あ る が 形 式 的 に は 間 接 馨 で あ

米国の大統領馨は客州の下院議員肇の資格のある一般の有権者が四年ごとに大統領の馨人を選出し︑連邦

法律に二月の最初の月曜日の次の火曜日に全国でいっせいに馨すると規定されている(も︒℃二一・.<︒什.).大統領の

馨人として選出された選挙人による大統領選挙は︑各州で三月第二水曜日の次の月曜日に嘉し(.一.︒辞︒.︒一

(21)

(235)

米国 大 統 領 制 の 韓 国憲 法へ の受 容 上 の 問 題 点

21

<g.)︑そ曜票の結果は欝して首都に送付し︑翠有六日連邦議会の両院合同会議で開票して︑当選者を決定して公布する

大統領の躍人団(①雪︒邑8霜)の数は五三八人で︑過半数は二七〇人である.過半数の票を得ると大統領

として当選する︒このように米国は建国以来︑大統領の選挙を︑大統領の選挙人団を選挙する間接選挙というかたちで実施しているが︑韓国は現在覆馨を実行しているところに問題がある.韓国も制憲憲法の下では大統領を国会で選挙した.ところがこの国会による大統領の選挙は︑妥当ではなかったことが露王した・第二次の改憲で韓国は大統領を直選制に変更したが︑その際には合理的な検討も奮︑李承晩大統領が自らの再選のために違憲論をおしきって改憲を強行したのである.この時から第三・六共和国以来大統領の直選制を実施している・大統領の直選制は多の問題占{をかかえている.大統領直選制は地域の対立感情を誘発・拡大させ︑ぎ・サム・ゲ去の覧︒;§︒σq的闘争が加熱し︑膨大な国力の消耗をもたらす.莫大な選挙費用等を考えれば︑大統領の直選制は改正されるべきである︒議院内閣制は︑国会議貝の選挙だけで国会と政府を構成する長所をもっている︒直選制が大統領の地位を強化

するのは勿論だが︑壷には独断的政治蓬められるばかりか︑政党までも私党化される傾向があり︑その弊害は大きいといわざるをえない︒

このように韓国の大統領選挙には大きな問題点がある︒もし民主的な正当性のために大統領直選制に改憲したのなら︑理念的にこれと調和する絶対多数の袋選挙制度を導入するべきであったはずだか︑相対的多数袋選挙制度が採用された.これは根本的に間違っていた.それは馨権者の過半数もおよばない少数だけを袋する大統領を選出

しているからである︒また最高得票者が二人以上のさいには︑国民自身によってではなく︑国会で多数決によりその当馨を決定するのも︑直選制に内包される制度の奢的な機能を変質させてい誕・むしろフランあように決選投

(22)

神 奈 川 法 学 第32巻 第2号 22

(236)

票制を導入すべきだろう︒

④政党制

大統領制とは︑三権盆制を徹底するものであり︑その組織遇夕乗的に破壊する西欧的な政党制を本来道丁入で

きないという権力組織の原理Lの限界をもった統治形態だといえる︒

実際にも・大統領制の下では︑正常な政党政治の発展は難しいといわれている.大統領制の下では︑国家の兀首で

あり・行政府の首班である大統領を国民が直接に選出するため︑議院内閣制のように政党は政権をつくり上げず︑そ

66)の本来の機能を発揮することができないからである,

政党は・憲法上相互に孤立している権力保有者達を結びつける︑憲法に規定されていない紐帯である.政党は国家

犠全体の潤滑油の役割をする.それがなければ国家機構は救出できない程の混沌状態におちいるよ︑つになるのであ

る・大統領は両院の支持があれば︑自己の政党と連邦議参調整することができる.大統領は︑連邦両院の自党多数

派が自己に忠実に従うときにだけ︑政治的指導の使命を完遂できる︒しかし大統領が自党の多数派に信頼を置きうる

という条件も・現実に荘するとはかぎらない.大統領制のドで政党の機能は︑ほかの統治類型と異なる.米国の大

統領が連邦議会にその意思を強要できないことには︑ふたつの墨な理由がある.ひとつは︑大統領が中11選挙で一

院または両院から多数派の支持を喪失する可能性があること︑も︑つひとつは︑米国の政党には政窺律がないとい︑つ

ことである・政党規律がない主要な理由は︑占典的なフランスの議会主義と同様に大統領が連鄭議会の解散権をもっ

ていないところにある︒連邦議会の議貝達は︑大統領と同様に任期前に解職をされることはない︒

このように政党規律をうち破ったおかげで︑大統領の独走は防止され︑米国の民主主義は問題なく機能している︒

しかし大統領制と政党制の結合から生ずる最大の欠陥は︑大統領と政権多数党の結A・が独裁化を加速する危険がある

(23)

(237}

米国 大統 領 制 の 韓 国 憲 法 へ の 受 容 ヒの 問 題 点 23

だけではな‑︑与小野大の政局には政局の膠着状態を打開することが極めて難しいところに額・米国では・交叉投

票(︹﹁︒ωω‑<o蝕ぎひq)が可能なため︑この難点は克服されている︒政党内反主流派の投票行動において︑野党に同調し

た 略 党 内 の 北月 反 者 が 与 党 に 蔑 投 票 す る 交 叉 投 票 は ︑ 連 邦 藁 ム に と っ て 過 半 数 の 票 決 に 箒 的 に 動 揺 を ま ね 康 因

になる︒これは導小野大のいわゆる分離された政府を克服する触媒の役割を果たしうると思われる︒米国の政党は覧

分五裂しながらも︑米国の大統領制をささえる支柱の役割を担っているともいえよう・

しかし︑これに対する反論も強い︒ロイド・カトラーこo冠O暮一Φ﹁はヨーロッパの議院内閣制国家では選挙に勝

利した政党の指導者が政府を組織して︑立法と行政のすべての分野に指導力を行使するのに比べ︑権力分立の原則に

基づいている米国では権力が分散され︑責任が弱化されて︑政策の具現に混乱が生じていることから︑二百年前の徳

目だった権力分立の原則は再考されるべきだと主張している︒

米国の権力分立型憲法構造は二百年前には妥当な選択であったが︑現代にあっては問題が多く︑議院内閣制民主主

義の何らかの形態がとるべき策の一つとして考えら靱罷・

しかし大統領制のドでは︑大統領は政党のボスになってはならない︒大統領が自分の政党の総裁になれば結果的に

は議会も支配するようになって三権統合の事態があらわれる可能性さえあり︑分離されたい政府︑いいかえれば︑与

小野大になった政局を打開する方法がなくなるのである︒

韓国は第六共和国で与小野大の政局の膠着状態を痛切に経験した︒現代の米国では︑上・下両院の野党である共和

党が支配する政局でも︑無理なく政治が運営されている︒政治家の水準にもよるものであろうが︑政党制が発達せず

政党内部の位階が欠けていることにその原因を発見できるだ取澱・

⑤人事の問題

(24)

神 奈 川法 学 第32巻 第2号 24

{238}

米国の大統領制は﹃人事が万事﹄を実践的に示している︒両院制をとる米国では︑上院が大統領の人事権に介入し

ている・大統領の上級公務貝の任命に上院が関与するためである︒つまり各長官・連邦最高裁長官.最高裁裁判官.

大使.公使等上級公務員は︑まず大統領が指名し︑関係する上院分科委員会の聴聞会をへて︑上院で同意を得て大統

領が任命する︒徹底的な事前検討を経て公務貝が任命されているのを見ると︑ここに﹃人事が万事﹄であることが制

度的に実践しているといわざるをえない,

韓国は国務総理の大統領任命に対して︑国会の同意を得るものとされており︑そのほかの国務委員は国務総理の任命提請をえるようになっているが︑これは形式的・補佐的な権限にすぎない︒これは国務総理と国務委貝や長官の解

任建議と同じ文脈で理解できる︒

かくして韓国は︑大統領の人事に抑制装置がなく︑まったく無防備の状態におかれているといっても過言ではな

い・大統領の不当な情実人事を︑いくら努力しても統制する方法がないため︑国家経営に重大な問題がもたらされて

恥 ・

配 . 結 論 ‑ 改 善 の 方 向

大統領制は執権者には便利な制度であり︑議院内閣制はこれとは反対の制度である︒大統領制は大統領が統治しや

すい制度である︒

韓国の歴代における憲法の改正は︑大統領の長期執権のための改憲に焦点を当ているのが特色であった︒それは大

統領の任期延長のための改憲が主目的であったといっても過言ではなかった︒このような弊害をなくすために︑大統

領任期単任制の規定がつくられたと考えられる︒

(25)

(239)

米国 大 統 領 制 の 韓 国 憲 法 へ の 受 容Lの 問 題 点

25

大統領の長期独裁執権を後押しするために︑副大統領制を廃し︑議院内閣制的な要素が加味されたといえよう︒

韓国の大統領制を現行どおりに維持・発展させるには︑まず米国の大統領制の原形をそのまま導入しなければなら

ない︒つまり立法府と行政府の機能上の独立である︒これを回復する方策としては︑議院内閣制の要素をまず排除す

べきである︒そして副大統領制・両院制・連邦制の導入である︒まず米国型大統領制の正常な骨格を整えるべきだと

思われる︒

次に︑韓国憲法上補完すべきいくつかの課題がある︒ここにはまず大統領の任期を四年とし︑一度の再任を許容す

べきであり︑大統領の直選制からくる膨大な弊害を防止しなければならない︒大統領の直選制による弊害は先述した

ように︑膨大な選挙経費の問題︑地域の感情的対立の深化︑不正選挙の横行等数え切れないほどである︒大統領の選

挙方法の改善の中には間接制の導入も検討の対象である︒また政党制にも問題があり︑韓国は大統領制に政党制をそ

のまま導入することによって︑著しい副作用をおこしている︒大統領は多数党である与党の総裁として党のボスにな

ってはならないのである︒大統領制は厳格な三権分立を前提にして成立するが︑大統領が与党の総裁になると行政府

と立法府が協力・統合して︑結果的には大統領が立法府まで支配して独裁化する可能性が強い︒米国では大統領は与

党の総裁でも政党の総裁でもない︒政党内部の位階が欠けているのである︒だからこそ議会が与小野大になっても政

局の混乱はおこらない︒交叉投票制度がこの克服に寄与している︒克服できない問題状況は︑韓国の第六共和国の与

小野大によってよく示されている︒

最後に人事の問題である︒韓国の場合︑国務総理は国会の同意を得て大統領が任命するが︑そのほかに上級の公務

貝は大統領が任意に任免できる︒大統領の任命権を実質的に抑制する制度的な装置がない︒米国の場合︑L級公務貝

は︑まず大統領が指名し︑上院の該当の分科委貝会の聴聞会を経て上院の同意を得て大統領が任命する手続を踏んで

(26)

神 奈 川 法 学 第32巻 第2号 26

(240)

おり︑制度的に﹃人事は万事﹄が実践されている︒韓国の場合は︑両院制にして上院で人事を管掌(人事権を管轄ま

たは掌握)するような制度をつくるのがよいだろう︒大統領の情実人事は︑国政の悪化を招くからである︒ほかに司

法権の独立と改憲の厳格性も︑米国の制度にしたがうべきである︒改憲の正当性と正統性を確保するために国民の投

票を実施するのにも︑疑問がある︒国民投票で反対の結論がでることはほぼないからである︒米国の州では批准が認

められない場合があることに注意すべきである︒司法権の独立については︑韓国の大法院長︹最高裁長官︺の六年単

任制と大法官︹最高裁判事︺の六年任期には︑問題があると思われる︒米国のように終身にすべきだろう︒司法の人

的な独立なくして︑確固たる司法権の独立が維持できないからである︒

注(1)許管︑憲法理論と憲法︑博英祉︑一九九五︑八四五頁︒

(2)権寧星︑憲法学原論︑法文社︑一九几六︑六六九貞︒

(3)許鶯︑前掲書︑八四五頁︒

(4)李相敦︑大統領制︑美国の憲法と韓国の憲法︑韓国公法学会編︑大学出版社︑一瓦八九︑二七〇頁︒

(5)李鐘祥︑憲法学︑法文社︑一九九五︑二九九頁︑

(6)同旨:許螢︑前掲書︑八五三頁︒

(7)李鐘祥︑前掲書︑三〇〇頁.

(8)〇二く①お9は議院内閣制と区別される大統領制の本質的な特徴として︑①行政権を二個の要素に分けずに︑国家の.兀首と内閣の

首班という機能が︑行政権を担当した一人に一元化されていること︑②行政権の首班が全体の国民によって選出されること︑③大

統領と議会が権力分立によって相互独立されていることをあげている(竃窒﹁凶80こくΦおΦ5ぎ︒︒叶一εぼo霧℃o一一二εΦω曾伍﹁o搾68,

巴ε鉱oココ鼻一雪o︒踊O℃●一〇︒㎝‑㊦)︒

(9)O①彊Φ︒︒しu霞匹Φ餌タ↓鑓凶笛飢Φ︒︒o置コoΦ℃o=怠ερ署噂一⑩$も・ω霧・韓泰淵︑憲法と政治体制︑法文社︑一九八七︑四一頁︒

(27)

(241)

米 国 大 統 領 制 の 韓 国 憲 法 へ の受 容 」二の 問題 点

27

(m)据惟噛早星︑晶削掲毫臼︑上ハLハ九頁︒

(11)韓泰淵︑前掲書︑四三‑四頁︒

(撃李鐘祥︑前掲書︑.δ9三・頁.副大統領制を大統領制の要素にふあない説または考え方もある・副大統領を重要な要素

と考えないのだといえる︒それは︑議院内閣制と区別される三つの要素として︑①行政府の一元性︑②大統領の国民による選出・③大統領と国会の厳格な相互独立をあげる︒朴血h河︑大統領制における議院内閣制的な要素と政治的な傾向︑考試研究︑一九二

二︑一月号︑三〇一頁︒

(13)文鴻柱︑韓国憲法︑海巖社︑一九九三︑三八八頁︒(14)丘乗・朔︑憲法学11︑博英社︑一九八三︑一一〇頁.(15)ぎこ.

(16)文鴻柱︑前掲書︑三八几頁︒

(17)金哲株︑憲法学原論,博英社︑一九九六︑七二七頁︒

(18)金哲株︑前掲書︑七三八頁︒(P)権慰騨星︑埴削掲童月︑篇ハ八九頁︒

(20)許螢︑前掲書︑九四七貞︒(21)同旨u許賛︑前掲書︑九四七頁︒朴圭河︑大統領制における議院内閣制的な要素と政治的な傾向︑考試研究︑一九九二︑一月ロワ︑二四頁︒

徐柱実︑大統領制︑権力構造における︑いくつかの間題︑日巖ド在玉博士華甲紀念︑現代公法論叢︑一九九四︑三三頁︒

(22)同旨U徐柱実︑前掲論更︑三四頁︒

(お)ほかに米国式の大統領制の要素として︑①行政権の一元性②大統領の任期安定③国会に勤する大統領の無責任④法律案拒

否権⑤国政調査権⑥副大統領制⑦国会の両院制⑧大統領の間接選挙制⑨司法審査権⑩連邦制等をあげるものもある(朴圭河︑前掲論文︑三九頁)︒さらに米国の独創的な大統領制の統治構造上の具体的な制度的内容を①立法・行政・司法の相互独立②両院の抑制と均衡③行政府の一元化をあげる(徐柱実︑前掲論文︑一八L一二頁).(胴)金哲株︑晶剛掲嚢日︑﹂し.一∵ハ百へ︑

(25)︾ト暑冨芦o象︒臼器Φω﹄霧貯<Φ﹃証一ΦC.タ一㊤︒︒戯も℃﹄ωめ県垂﹀・ξげ餌﹃戸︒P︒貫P︒朝爽国の上院か唯芙きい.その膏数は宇名をこえるが︑ほぼ登院しない世讐族を除外するとそ

(28)

神奈 川 法学 第32巻 第2号 28

(242}

の数は二五〇名に減少されるという︑

5449484746454443 U

4241亜i塾3837垂353433諺31葱29丞27

文鴻柱︑前掲書︑四三九頁︒

李鐘鮮︑前掲書︑三二三‑四頁︒

Hσ置●戸らGトこP

同旨口権寧星︑前掲書︑六八九頁︒

李鐘鮮︑前掲書︑三二〇頁︒

許螢︑前掲書︑七五七頁︒

同旨籍粟前掲書︑八五二頁.襲︑前掲書︑七五七頁.丘乗朔︑新憲法学原論︑博暮︑冗九六︑△三頁.

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同旨:朴圭河︑前掲論文︑四〇頁︒

李鐘祥︑前掲書︑三一七‑八頁︒

同旨"朴圭河︑前掲論文︑四一頁︒

同旨け金哲株︑前掲書︑八二六頁︒

徐柱実︑前掲論文︑四五頁︒

ぎ己.

同旨口丘乗朔︑憲法学原論︑一〇一〇⊥一頁︒

(29)

(243)

米 国 大 統領 制 の韓 国 憲 法 へ の 受 容 上 の 問 題 点

29

7574737271706968

))))一/、 ̲ノ)、 6ラss656乙63〜)))))))))㌦ 諺6f6δi癒58i鼻 一!)))'))))蕊,一 一.55蕊 ,53鹿51

文鴻柱口美国憲法論︑一湖閣︑一九九五︑一二一頁︒

朴圭河U前掲論文︑四〇頁︒

李鐘群︑統治構造上の議院内閣制の位相︑憲法学研究第二編︒韓国憲法学会︑⁝九九六︑六一頁・

徐柱実︑前掲論文︑四二頁︒

同旨U徐柱実︑前掲論文︑四二頁︒

国・ぴ︒Φ芝Φロ曾Φ貫℃︒ま∩餌亮︒壽藁aO9︑Φヨヨ①碁亮﹁︒§ρ助&Φ血・へ9冨ぴq﹃穿ぎ︒略98餌,qε.ま㎝)もま.同旨日許螢︑韓国憲法論︑博英社︑一九九六︑九一〇頁・

同旨 一σ幽9

李相敦︑大統領制︑韓国での美国の憲法の影響と教訓︑韓国公法学会編︑人学出版社︑一九八七︑二〇四頁・

文鴻柱︑美国憲法論︑↓四四頁︒

詳細については李鐘祥︑前掲書︑三六一‑八三頁参照︒

李鐘祥︑前掲論文︑六一‑二頁︒

同旨u許螢︑韓国憲法論︑七﹁二頁︒

李鐘祥︑前掲書︑三二〇頁︒

徐柱実︑前掲論文︑三一頁︒

張錫権︑韓国の大統領制とその問題点に関する考察︑徐柱実博士華甲紀念論文集︑現代公法の諸課題︑三六二頁︒

國・ピ8キ①器審ヨ団餌.pQ甲ωuり﹂爲‑心.

李鐘祥︑前掲論文︑六一頁︒

界ぴoΦ毛魯曾皿P固・即○■田ω﹂5.}ご甘げ鴛戸oP6団rO.一5.

O・菊oσ塁o戸幻似︒§ぎ晦﹀ヨ曾一︒きΩ︒<Φヨヨ①三(薯Φ珍く一霧藁り︒︒㎝)薯﹂甲鐸

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李鐘祥︑前掲論文︑六]頁︒

同旨"徐柱実︑前掲論文︑四11頁︒

駐こ・噛戸爵.

参照

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