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南北問題における国際協力の新しい理念

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南北問題における国際協力の新しい理念

南北問題の新しい動向

南北問題における国際協力の新しい理念

 最近︑世界経済は大きな転換期を迎えている︒先進工業国の主要無力国の﹁首脳者国際会議﹂さらに南北問題の討

議である﹁国際経済協力会議﹂と︑世界的な経済危機に直面しての世界会議が相次いで開催されようとしている︒

 それぞれの会議の内容は異なるにせよ︑共通して言えることは︑各国の国民経済と世界経済との相互依存関係のリ

ンクを今後どのようにしていかなければならないかの問題をかかえていることである︒各国がかかえている経済危機

は︑現段階では一国で解決のつく問題でないことが明らかである︒と同時にそれだけ各国の国民経済が世界経済への

相互依存を深めたことになるわけである︒

 他方︑南北問題に関しては石油危機以来︑中近東諸国の発展途上国をはじめとして︑石油が政治戦略の武器として

世界に是認されるや︑それを挺子として一次産品全般に及ぶ国際会議への方向が強く打出された︒そのことは︑本年

四月初旬に九日間にわたる石油産出国︑非産油発展途上国︑石油消費国の三つのグループの討議を計画した﹁国際エ

ネルギ毒気禽﹂の決裂においては・きりしている・発展途上国が強く要望す序次産・裾格の上昇を先進国工業

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製品のインフレとリンクさせようとするインデクセーションの採用や︑輸出所得保証︑国際商品協定の締結などが表

面化してきた︒      ︵2︶ すでにわれわれは︑EC諸国がACP諸国四六力国と結んだ﹁ロメ協定﹂をはじめ︑英国の英連邦首相会議での一       ︵3︶次産品問題に対する商品協定の提案や︑さらに国連経済特別総会での米国の﹁キッシンジャー構想﹂と︑先進工業諸      ︵4︶国での南北問題に対する緩和政策が著しく進展している︒わが国でも首長者会議での﹁三木構想﹂は︑発展途上国の

一次産品輸出所得を保証する考えを明らかにしている︒

 このように世界の動向が第三世界の問題にむけられてきたが︑すでに昨年の国連資源特別総会での第三世界の主張

する新国際経済秩序の確立を無視できない段階に世界経済がいたっていることを考えなければならない︒勿論︑直ち

にインデクセーションの採用や国際商品協定が日のめを見ることにはならないにしても︑先進工業国が第三世界の経

済開発・発展を無視して世界経済の繁栄がなりたたないことを前提としての新しい方向であることは間違いないこと

である︒      ︵5︶ インデクセーションの採用は先進工業国のインフレを培書するであろうし︑商品協定にしても﹁コレア構想﹂とも

なると先進諸国の受け入れがたいところであろう︒とくに︑わが国での受け入れ体勢としても一次産品︵石油を含め

る︶の輸入総額に占める割合が八○%弱であるため︑商品協定の主目的とする緩衝在庫は巨額にのぼるであろうの

で︑簡単に認めるわけにはいかないであろう︒ただし︑商品協定が︑一九三〇年代の国際不況カルテル的︑植民地支

配的要因とは異なり︑また︑戦後ハバナ協定の下で先進国主導的な商品協定とは違って︑現在は発展途上国の供給国

を中心とした一次産品値崩れ防止から高価格安定化への戦略としての協定であれば︑一国の国家的利益のみで反対す

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南北問題における国際協力の新しい理念

ることは不可能である.︑勿論︑三木構想なる輸出所得保証方式はプライス・メカニズムを守りうる唯一の方法として

採用しうるものであろうが︑国際商品協定か輸出所得保証方式かといった二者撰一的なもので︑発展途上国問題が解

決しうるかどうか︑きわめて疑問である︒少くとも一次産品の価格上昇をねらう発展途上国にしてみれば︑﹁コレア

構想﹂を押し進めてくるであろうし︑米国たりとも食糧備畜を背景に商品協定を戦略として表面化してくることも考

えられうる︒いずれは来年五月の第四回UNCTADで一つの方向が明確化されるであろうが︑ここ当分は南北問題

で世界経済は揺れ動くであろう︒

 こうしたなかで︑一次産品問題への対応が当面の課題であるが︑これまで植民地統治の経験をもつ欧州諸国がわが

国と比べ︑はるかに先んじた対発展途上国政策をとっているのは︑いかにも皮肉なことである︒しかし︑その本質的

なことは︑対発展途上国問題に対する政策の原則論が欠けていることを再考するべきであり︑さらに現在︑世界が直

面している各国の国民経済と世界経済とのリンクをどのようになすべきかといった重大な課題でもある︒それはまた

新世界経済秩序の樹立にも通ずることである︒

 そこで本稿では︑南北問題を中心として国際協力の理念をどう考えるべきかに焦点をおいて︑国民経済と世界経済

との相互依存関係のリンクを考察することにする︒

 かつてヤソ・テンバーゲン教授は一九六〇年代の国際経済秩序の建設を西側の役割を中心に国際的政策提言を試み ︵6︶ている︒その政策実施の手段として連帯性︵ωo巨聾蔓︶と効率性︵Φ融︒δ昌︒鴇︶の原則を呈示し︑この二つのかかわ

りあいによって国際経済秩序の樹立を説いている︒勿論こうした理念は単に西側の国際協力のみならず国際連合の重

要性を再認識させている︒さらにこれは﹁世界の共同社会﹂の理念となり︑それが﹁第二次国連開発の一〇年﹂の開

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       ︵7︶発構想となって︑いわゆる﹁テンバーゲン報告﹂が現われたのである︒さらにこうした開発理念は当時の国際経済援    ︵8︶      ︵9︶助の四大報告の一つであった﹁ピアソン報告﹂においても十分に生かされている︒

 しかし︑七〇年代に入って発展途上国の様相は大きく変化している︒その一つは石油危機にみられたごとく︑資源

保有国である発展途上国の︑とくに石油産出国の﹁石油﹂を﹁政治財﹂として世界に不動の第三世界を定着せしめた

ことである︒これは石油のみならず︑他の一次産品までをも世界市場に引き出し︑先進工業国との間での国際商品協

定なりインデクセーションへの方向が強く表面化してきたのである︒

 これらの第三世界の躍動は内部的に第四世界といわれる非資源保有発展途上国を含んでいるが︑しかし石油を挺子

としての一次産品問題は世界の揺がせえない重要問題となったことは事実である︒したがって一方では資源というい

かにも泥くさい国益のかたまりと︑他方での国際協力という美名の協調のかたまりとが︑国民経済と世界経済との相

互依存のリンクといった枠組のなかでどのように把握されるべきなのであろうか︒

 こうした問題を究明するのが︑本論の狙いであるが︑その根底には︑南北問題を中心とした新しい世界経済秩序の

確立に対する原則論をひき出してみようという試みがある︒そのことはわが国の対発展途上国政策が︑激動する世界       ︵10︶状勢のなかで原則論を失った目先だけの具体策に終っていることからも︑南北問題での国際協力の新しい理念を必要

とすることにある︒

 本稿では以上のような背景と枠組をもつが︑その主要な視点は各国の国民経済と世界経済との相互依存のリンクを

連帯性と効率性︑さらに国益とインターナショナリズムといったからみあいから︑国際協力の理念を体系づけてみよ

うとすることにある︒

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南北問題における国際協力の新しい理念

注︵1︶ 四月七日パリー−のクレベール国際会議センターで開催された産油国︵四外国︶︑消費国︵三図国︶︑非産油発展途上国︵三軒

   国︶が出席し︑石油危機以来初めての国際エネルギー会議を開こうという準備会議である︒結果的には発展途上国七口国の

   提案は一次産品問題を含めての会議でなければ承認しないとの強い主張であり︑それに対して先進消費国は︑それでは事実

  上の南北問題会議となるとしてこれに同意せず︑九日間におよびながら流産した︒

    しかし︑その後九月の国連経済特別総会で米国の歩み寄りがみられ︑本年十二月に﹁国際経済協力会議﹂として開催する

   ことになった︒この準備会議の内容については日本の首席代表として出席した宮崎弘道﹁国際エネルギー準備会議に出席し

   て﹂世界週報︑ 一九七五年五月十三日号を参照のこと︒

 ︵2︶ この内容については次節で説明するが︑本年二月二八日に西アフリカのトーゴ共和国の首都ロメで調印されたもの︒その

   主要な協定内容は︑ECは発展途上国︵四六亡国対象︶に五力年間総額四〇億ドルの財政援助を実施︑他に国際商品協定︑

   輸出安定化基金の設置など︑南北問題に対して前向きの姿勢を示した︒﹁キッシンジャー構想﹂︵九月︶もこの協定に対抗し

   てなされたと言われている︒さらに首脳者会議に出席するわが国の﹁三木構想﹂もこの協定の焼き直しとの評をうけている︒

    これら全般を通じて最近の発展途上国問題を論じたものとして次のものが示唆に富む︒対談︑大来佐武郎︑松本博一﹁途

   上国援助は景気回復に通ず﹂エコノミスト︑ 一九七五年九月二十三日号︒

 ︵3︶ 九月一日の国連経済特別総会において行なわれたもので︑第三世界政策の路線が大幅に修正されたものとして世界の注目

   を集めた︒これによって南北問題に新局面を迎えたとも言われているが︑前説の﹁ロメ協定﹂に対抗してということも取り

   ざたされているように︑その実現はかなり困難のようである︒しかし新しい局面の展開は確実であり︑十二月の国際経済協

   力会議での米国の出方が一層注目されよう︒

    その内容が商品協定か輸出所得保証かにあり︑その問題は︑小邦宏治﹁迫られる一次産品問題への対応﹂エコノミスト︑

   一九七五年十一月四日号がよくまとめられている︒他に東洋経済︑ 一九七五月九月二十七日号﹁急転換するアメリカの第三

   世界戦略﹂がある︒

 ︵4︶ 十一月十五日より三日間パリーのランブイエ城で開催される﹁六力国首脳者会議﹂にて貿易面を担当する三木首相が発展

   途上国への輸出所得保証方式を表明したもの︒注︵2︶を参照のこと︒       93 ︵5︶ 二月に発表された商品協定の総合プログラムとして注目をあつめている︒UNCTAD事務局長としての構想であるた ユ

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  め︑これが事実上の発展途上国側提案の商品協定といえる︒主要一次産品の国際的備蓄制度の設立により︑需給の調節をは

  かるというプランで︑そのための共通基金一〇〇億ドルや多角的貿易取決めの締結など︑その主要点は一次産品の価格問題

  から安定問題へと移っている︒その点︑これまでの商品協定が一時的︑個別的な不況カルテルと異なって︑長期的︑総合的

  な需給管理政策だと言われている︒上掲論文︑小邦宏治﹁迫られる一次産品問題への対応﹂では商品協定について要点がよ

  く整理され︑かつ輸出所得安定化方式を狙う先進消費国との戦略が参考になる︒その綜合プログラムはUNCTADの資料

  目じ口\じ口\ρ一\一④ωに詳しい︒

︵6︶ 冒二目ぎげ①戦ぴqΦP⑦ぎ誉鑓︑壽鳴ミ︒説亀肉ら︒謹§︑芸︒↓≦①老け一①け70Φ口ε曼﹁¢ロ9Hロロ︒●噸一㊤①卜︒・︵大来佐武郎訳︑﹃世界経済

  の形式﹄竹内書店︑昭和三八年︶

︵7︶o§巨§︒h︒﹃∪①<巴︒づ馨導9・巳鎭㌔蕊旨嵩︒ミ鼠9ミ§ミ恥§亀︑こ鳩§ぴ誉・§⑦§ミ§軌ミきぎ蕊

  bミ胃管ミ§︑b偽§賊8一Φ刈O●︵外務省監修﹃七〇年代の開発戦略﹄国際日本協会出版局︑昭和四五年︶この報告は開発計画

  委員会︵十八名の専門家委員より構成︶ により作成されたが︑ その委員長がテソバーゲン教授であったので︑ 通常﹁テン

  バーゲン報告﹂と言われている︒

︵8︶ ﹁ジャクソン報告﹂︵一九六九年八月︶UNDPの委嘱でジャクソン特別顧問が︑UNDPと世界銀行との関係のあり方を

  検討した報告書︒﹁ピアソン報告﹂︵一九六九年一〇月︶マクナマラ世銀総督の委嘱で︑ピアソン前カナダ首相ら八名の委員

  による援助の今後のあり方について検討したもの︒﹁テンバーゲン報告﹂︵前述︶︒﹁ピーターソン報告﹂ニクソン大統領の指

  名でピーターソン前アメリカ銀行頭取ら十六人が七〇年代のアメリカの援助政策のあり方を検討したもの︒

︵9︶ Ooヨ8δωδ旨︒一同葺㊦旨餌鉱︒昌巴U①く巴oO日Φロジきミミ越帖§bミミ愚ミ§静目Φ①り.︵大来佐武郎監訳﹃開発と援助の構想﹄

  日本経済新聞社︑昭和四四年目︑ ここで援助の理念が再検討され︑援助をする国とされる国との間のパートナーの関係が強

  調された︒このあたりから南北問題が新しい局面に入ったとみられる︒

︵10︶ こうした点についてはよく述べられ︑かつ問題のあるところであるが︑最近ニースで開催された﹁国際開発センター﹂主

  催のシンポジュームに参加された一新聞記者︵日経新聞︑アメリカ総局長︑永田農︶の目より﹁日本に厳しい途上国の目﹂

  ︵日本経済新聞︑国際経済レポート︑昭和五〇年十一月九日︶と題してレポートされているが︑その中で︑第三世界からの

  不評の原因を述べ︑原則論よりもただちに具体的な目先のことばかりに追われていることが指摘されている︒

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南北問題における国際協力の新しい理念

二 新世界経済秩序の確立への方向

      ︵1︶ 一九六〇年代になって世界経済は大きな転換期を迎えている︒その契機はドル危機に陥ちいった米国の転換が著し

いが︑先進国ではEECの促進であり︑発展途上国でのUNCTADの進展である︒

 その当時のことを︑H・ジョンソン︵山気蔓O﹂oげ昌ωo昌︶は﹃十字路に立つ世界経済﹄︵↓ミミミミ合算ミ謹      ︵2︶犠こミGこ旨こ亀駐︶と題して次のように説明している︒六〇年代に入っての国際体制の基本的分裂−広義には政治的

なものであるとしているが一ぱ三つの主要グループ︑つまり米国の主導するアソグロ・サクソン・グループ︑フラン

ス指導下のEEC諸国︑それにラゥル・プレビッシュ︵当時のUNCTADの事務局長︶の考えによって指導されて

いる低開発諸国グループに分けられる︒そこで︑これらのグループのうち︑十字路の本筋を歩んでいるのが米国グル

ープであり︑他のグループは右に左へとそれぞれの道を見出して本筋から離れて進むようになったわけである︒

 ここでの問題は南北問題であるため︑それに焦点をおけば︑戦後の通貨・貿易面での世界的なルールであったGAT

TとIMFの国際体制を依持していこうとする主流に対して︑発展途上国はこれらの戦後の国際体制は自分達にとっ

て何等益するどころか︑反対にむしろ損失のみ与えるものであるとして︑UNCTADにそのすべてをゆだねたのであ

った︒これが貿易の分野で表面化したのが︑先進国グループで主張するGATTアプローチと発展途上国が推進しよ       ︵3︶うとするUNCTADアプローチとして論議の火ぶたが切られたのである︒その問題点が発展途上国の主要な提案と

なった特恵関税と国際商品協定問題にしぼられる︒このことはプレビヅシュ報告として有名になった﹃新しい貿易政策       ︵4︶をもとめて﹄︵↓o≦g・a曽Z①署↓冨αΦ勺90︽︶での主要テーマであり︑これがその後の事実上の南北問題の核心とな

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ってきた︒そのうち︑第1の特恵関税が︑第二回UNCTADで先進国の受け入れるところとなり︑実施にいたった︒

 したがって現実の推移からすれば︑通商上においては︑この特恵関税の実施が︑南北問題での第一段階と考えてよ

いであろう︒もっともその実施にあたって︑あくまでもGATT体制の範囲内で特恵を認めようとする先進国側とG

ATT体制をくつがえす第一歩として︑新しい国際貿易体制を目指す発展途上国側での解釈の相異が残ったことは言

うまでも亀・しかし発展途上国が先進国市場への進出をはたし・貿易と援助の目的が一応達成された・とは間違い

ない事実となった︒

 とはいっても︑発展途上国がこの特恵制度の適用によって先進国市場に進出をはたしたものの︑これは商品別には

製品ならびに半製品についてのものであり︑これらの国がかかえている一次産品については︑なんらの解決にはなら

なかった︒とくに農産品においてはGATTのルールから免除されているために︑発展途上国の輸出所得の犠牲にお

いて先進国は︑自国の農業問題を解決できると考えていた︒したがって低開発国は︑この特恵関税が一部の発展途上

国にのみ適用可能であってほとんど大多数の低開発国には︑利益のないものとの主張が強く︑これらの点の考慮はさ

らに国際商品協定の方向にむけられていった︒

 こうした背景において︑第二段階を迎えたわけである︒それは石油危機問題にひきつがれた︒先進工業国が一次産

品で代替品をもたぬ主要商品として︑必要欠くべからざるものとして原油が登場したのである︒

 これらの事実はOPECの形成とその発展によくみられたところであり︑とくに中東戦争を契機に︑世界を混乱に

落し入れた中東産油国の石油戦略にその実態が表面化している︒この事実は石油を政治財化せしめる唯一のものとし

て︑先進工業国の市場メカニズムを不可能にさせた︒

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南北問題における国際協力の新しい理念

 そこで︑この石油を逗子として一次産品全般に及んでの発展途上国の新たな戦略が始まったとみてよいであろう︒

それが表面化したのが︑四月に行なわれたエネルギー準備会議である︒これは産油国︑消費国︑非産油発展途上国の

三グループによる国際エネルギー会議の開催にあたっての準備会議であったが︑その会議を流産にいたらしめた要因

が︑石油・エネルギーの会議ではなしに︑一次産品全体にわたる会議を︑といった発展途上国側の強い主張にあっ

た︒ただし︑その背景には前年の国連資源総会でこれらの国の提案した新世界経済秩序の確立といった提案があった

ことを見のがすことはできないのであろう︒

 この新経済秩序の柱の一つにかかげているのが︑国際商品協定の拡充であり︑一次産品の新しい方向を打ち出すも

のであった︒すでに先進工業国においても︑南北問題の重視は以前よりも増して重大性をおび︑来年五月にひかえた

第四回UNCTADに焦点を合わせた世界経済の方向がつぎつぎに出されている︒この一つが︑二月に発表された

﹁ロメ協定﹂であり︑さらに九月の国連経済特別総会での﹁キッシンジャー提案﹂であった︒またこの十一月の勢力

国主脳者会議で︑貿易問題を担当する日本の三木首相による﹁構想﹂もその一部を形成している︒

 これらの提案は積極的には先進国がとる発展途上国の一次産品の輸出所得保証方式であるが︑発展途上国の狙いは

インデクセーションと国際商品協定の締結にある︒したがってインデクセーションの是認においては︑現在の不況下

における物価高騰に悩まされている先進工業国は︑かえってこれを認めることによって物価上昇をあおることから一

応に反対の意向であるが︑国際商品協定については諸国は好意的態度をとっている︒また米国も︑スズ︑コーヒー︑

ココア︑砂糖の協定に参加︑主要一次産品に関して消費国︑生産国でフォーラムを設立︑食糧については国際備蓄を

推進する︑といった意向を明らかにしている︒

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 だが他方では輸出所得安定化方式をかかげ︑この国際商品協定と輸出所得安定化方式のどちらかを推進するとすれ

ば︑市場メカニズムを損わない後者を促進する方向が強いとみられている︒とくに日本の三木構想でもわかるよう

に︑資源のない国としては国際商品協定をほとんどの一次産品についてとるとすれば︑その主たる在庫問題で巨額に

のぼる負担は到底保持できないとの見方が強い︒

 しかし︑こうした先進国一一次産品について産出国となる米国︑カナダ︑オーストラリアなども含まれているこ

とに注目するべきであるが一の態度に対して︑発展途上国の考えはどうであるか︑UNCTAD事務局長コレア氏

の提案をとりあげてみよう︒

 前述のごとく国際商品協定の歩みは︑現在︑発展途上国主導へと移行しつつあるが︑一方には一次産品の値くずれ

の防止︑他方では需給安定化の方向と戦略化されてきている︒﹁コレア提案﹂にはこのことが具体化されており︑主

要一次産品の国際的な備蓄制度を設立し︑需給の調整をはかることを目標としているが︑その本筋とすることはこれ

ら主要産品をパッケージにして総合的に需給を引き締めていこうということにある︒つまり長期的︑総合的な一次産

品の需給管理政策だとして注目されている︒

 こうした方向を推進しようとする発展途上国側と前述の先進国側との提案では︑すでにこれまでの経済秩序を維持

しようとするか︑それとも新しい秩序に生きようとするのか︑これからの課題として国際会議の場で論議されること

になる︒これは十二月開催の﹁国際経済協力会議﹂で問題となることであろうが︑一つの趨勢としてこれから発展途

上国の国民経済が世界経済の場にて︑相互依存関係がますます強く打出されることは確かである︒そのための国際協

力が︑新しい世界経済秩序の確立の方向で求められることも当然である︒

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 ここでの問題は南北問題が通商面で第一段階の特恵関税から︑第二段階の一次産品の国際商品協定問題に移行して

きたと考えられるが︑それは基本的には新世界経済秩序の再編成という大きな枠組みのなかで考えなければならない

問題である︒と同時にそのことは国際協力の新しい理念の問題でもある︒したがって南北問題での主要問題がどのよ

うに変化してきたかを背景として︑国際協力を考察してみよう︒

南北問題における国際協力の新しい理念

注︵1︶ 転換期については数多くの論者により議論されているが︑そのうちの一つに︑宮崎義一教授のように︑現代資本主義が戦

   後三つの期間に区分できるとされ︑その第三期に一九五八年以降を指摘される︒それはとりもなおさず世界経済を転換に導

   いた期であるとも言えよう︒その要因としてドル危機︑EECの結成と自由化の進展︑多国籍企業の誕生︑南北問題の出現

   などがあげられている︒宮崎義一﹃現代の資本主義﹄岩波新書︑昭和四二年︒

 ︵2︶ =四コ口O臼︒げコωoPぎ鳴ミ ミ概肉8巡︒謹ミミ鳴Oミ鴇こ貸織ひO×晒oad巳<①誘津団勺器ωω℃日8切︵佐瀬隆夫訳﹃戦後世界

   経済の分析﹄︵ぺりかん社︑昭和四二年︶本書については次の書評に詳しい︒村上敦︑﹁アジア経済﹂一九六六年一月号︒一

   九六〇年代初期の世界経済の現状分析にはこうした考えがとられうるし︑まさに﹁十字路﹂に立った世界経済が十分に浮彫

   され︑これから以後の世界経済の分析にもっとも役立つ著書の一つである︒

 ︵3︶ こうした二つの相対立したアプローチは︑特恵関税を正当化する上でもとられ︑さらに自由貿易体制を主張する先進国︑   また︑新古典派の学者達によって︑ UNCTADアプローチが激しく攻撃された︒特恵関税の是認においてGATTアブ

   ローチより︑ 正当化した論議には︑国p霞鴇○﹂oげ昌ωoP肉8謹§重三鳶禽禽寄ミ織ミト鳴鴇bミ偽ご㌧ミOoミミ篭題︑↓げ︒

   じd﹁oO匹づぴqωぎω五月ニ︒ロ℃HO①刈︵小島清監修︑大畑弥七訳﹃南北問題の経済学﹄ダイヤモンド社︑昭和四七年︶がある︒ま

   た︑GATT体制を維持しての特恵論議には︑O①H巴αζ﹂≦臨⑦び§鴨ミ謄︑ミミご蕊ミ肉8謹ミ8いミb鳴壁災O㌧§§酪口助壱窪

   卸菊︒≦矯一〇①Q︒︵麻田四郎︑小宮不二人訳﹃発展の国際経済学﹄ダイヤモンド社︑昭和四八年︶の第九章国際経済改革がと

   くに参考となろう︒

 ︵4︶ OZO↓﹀∪㌧§ミ亀ミ物黛謹ミS§§さ職曼尋︑b塁ミ愚ミ§︑︑一りO♪ ︵外務省訳﹃プレビッシュ報告一新しい貿易政策を      99   もとめて﹄国際日本協会︑昭和三九年︶      1

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︵5︶ この点についてはとくに第三回UNCTADあたりより強くなり︑この会議体制を機構に修正すべきであるとの議論が出       oo  された︒これは明らかにGATT体制に代わるものとして発展途上国がそのルールの恒久機関を求めたものである︒UNC 2  TADとGATTについての議論については︑前掲書﹁マイヤー﹂の第九章国際経済改革が参考となろう︒

三 国際協力の新しい方向

 発展途上国の提唱によって︑一九七四年の国連資源特別総会で採択された新世界経済秩序の大網は﹁諸国家の経済

権利義務憲章﹂にみられるが︑七一年の米国が金とドルとの交換を停止し︑戦後の国際通貨体制が崩壊されたときの

﹁新国際経済秩序﹂の設立と比べると先進国主導から低開発国主導へと完全に移行している︒勿論︑七四年の新秩序

とは天然資源に関する恒久的主権の自由な行使を中心に︑外国投資︑多国籍企業︑外国資産などの規制や一次産品生

産者カルテル︑特恵拡大︑輸出入品の価格調整といった発展途上国の主張がもられたものである︒さらに︑その後の

世界不況の深刻化によって一次産品価格の下落は︑非産油発展途上国の国際収支を圧迫し︑経済的危機を一層深めて

いる︒ こうした背景のもとに発展途上国の一次産品輸出価格と先進国からの工業製品の輸入価格のインフレとのリンクや

国際商品協定の締結が強調されたわけであるが︑ここではそうした主張を考慮しながら︑もっと根本的な国際協力の

基本理念について検討してみたい︒それは新世界経済秩序の建設の原則論ともいえる問題について考えて︑発展途上

国の﹁経済開発﹂と﹁国際協力﹂とのリンクにおいて︑国際協力の理念を検討することにある︒そのことは広義には

先進工業国と発展途上国との間での︑各国民経済の世界経済との相互依存関係のリンクを解く鍵でもあり︑現在での

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南北問題における国際協力の新しい理念

国際協力の方向を示唆することにもなる︒

 そこで︑かつて一九六〇年代初めにヤン・テンバーゲン教授によって提唱された国際経済秩序の建設について展望

し︑とくにここで問題となった効率性と連帯性の概念を検討し︑そこから現時点でのこれらの問題がどのように変っ

て解釈されなければならないかを考えてみたい︒さらにこれを骨子として︑これからの国際協力の理念を考えるべ

く︑国益とインターナショナリズムとの関係をどのように考えたらよいか検討してみたい︒      ︵1︶ 一九六〇年代初めに国際経済秩序の建設を提唱したテンバーゲン教授は当時︑世界経済の緊迫感の主要因を次の五

つに分類している..1︑世界の大多数の低開発状態︑2︑異質の経済体制の間の競争︑3︑植民地主義の消滅︑4経

済的不安定性︵とくに一次産品市場︶︑5︑国家的近視眼︵とくに貿易政策における︶︒このうち主要な問題は低開発

であるとしている︑勿論︑この時代においては東西問題に主点がおかれ︑真剣に南北問題が検討される段階には至っ

ていない︒したがって国際経済秩序の建設も西側のはたしうる役割について︑その最善の寄与は何かということが問

われている︒そこでは西側諸国の国際経済協力の経験であり︑富の所有が指摘されている︒

 他方︑国家的利益と国際的利益との対立は国家的利益における狭い視野と広い視野との対立のように鋭くはなく︑

むしろ相互依存の体系において大国の経済が悪化すると︑世界全体の政治的安定性に悪影響を及ぼす恐れがあること

が指摘される︒そこで西側の社会は効率性を基礎として発展−例えば資本主義自由企業制度の初期においては旧制

度よりもはるかに効率的であったこの制度をとってきた一し︑二〇世紀初頭になると社会主義的影響から指導原理

に変化をきたし︑つまり連帯性と呼ばれるものが導入されたとしている︒そこで一九世紀の資本主義からかなりかけ       01はなれた混合制度ができあがったわけであるが︑こうした変貌は国際面ではみられないとして︑世界経済・社会の政 2

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      ︵2︶策形成にとって効率性と連帯性の原理を適すべきだとしている︒      蹴 国際経済政策を実施可能な手段の選択としての連帯性は︑各国が国際的な目標の決定と︑世界政策の実施について

共通の責任を負うべきことであるとする︒例えば所得格差の縮少と国際収支の均衡という目標の達成のために︑各国

がその支払能力に応じた寄与をはたすことであるとしている︒

 他方︑効率性は﹁結果と手段との問の最も望ましい比率﹂であるとしているが︑一国の場合︑その最終的な規準は

つねに社会的効用だと考えている︒例えば工業開発を促進するためには下部構造に対する公共投資と民間投資刺激の

ための補助金と技術援助を組み合わせるのが効率のある方法だとする︒したがってもっとも効率的な制度の組合わせ

への手がかりは厚生経済学から求めることができるとしているが︑問題はこうした手段を国際的共同体にいかにして

適用できるように組織ずくるかにあると考えている︒その場合︑狭い国家自治への執着を捨て︑遂行すべき国際的任

務の技術的な側面を重視すべきであると述べている︒

 こうした連帯性と効率性の原則にもとづいて国際経済政策が実施されることをテンバーゲン教授は西側の役割と

し︑しかも国際機関の重要性を説いて︑国際経済秩序の建設を強く主張した︒勿論︑こうした理念はその後︑﹁第二

次国連開発の一〇年﹂の基調となった﹁テンバーゲン報告﹂のなかで十分に生かされている︒

 ただし︑本稿ではこうした連帯性と効率性を現時点において︑もっと現実に適合した解釈をおこない︑さらにこれ       ︵3︶らの概念が実際上の問題を解くうえでどのように究明されたらよいかを検討してみたい︒

 まず効率性であるが︑これはテンバーゲン教授の考えをさらに七〇年代の発展途上国に照らした場合︑とくに資源

ナショナリズムの拾頭によってナショナリズムが強く表面に打出され︑例えば石油産油国にみられるような供給削減

(15)

南北問題における国際協力の新しい理念

によって価格を騰貴させるといった手段に及んでいる︒したがって一国の︑またはグループによる強力な利益は︑そ

れぞれの国家利益に通じ︑それを高めることによって効率性が高められるように変ってきたと考えられる︒したがっ

てそうした国益を中心とした効率性の画題は︑グループとしての発展途上国における利益にも通じ︑例えば一次産品

問題でインデクセーションや国際商品協定を求あることになる︒また先進国では各国それぞれの立場があり︑米国の

ように自国内にて一次産品を有する国であれば︑食糧の備蓄問題や限定した一次産品の商品協定を認めようとする︒

ところが日本のようにすべての一次産品を発展途上国なり︑他の先進国に依存する立場ではそうした商品協定には応

じられないために︑別の方式︑つまり発展途上国の輸出所得の安定化を進める補償制度をとるようになる︒しかし先

進国全体としてぱできうるならば自由市場メカニズムの通用する輸出所得補償制度をとる方向で妥協しようとする︒

 こうしたことはすべて︑世界経済秩序を立てる場合に︑各国の国民経済は現在︑どのようにして世界経済との相互

依存関係が保持できるかを前提として︑自国のもっとも適した︑つまり国益になるような手段を選択することにな

る︒したがって︑効率性を国益との関係において食えることが可能となろう︒

 他方︑連帯性は現時点では世界経済の相互依存関係が非常に密接となっていることから︑すでに一国の経済政策を

施行する場合に︑世界経済との関連から孤立して遂行することが不可能になってきている︒この事実は︑現在の不況

にしても︑物価上昇にしても世界的なものであり︑一国の自由になる経済政策はきわめて限定されている︒したがっ

てその連帯性は国際経済政策を実施する上での前向きのインターナショナリズムといった範疇にて繕えられなければ

ならないと考えるのである︒      03 このように効率性と連帯性を国益とインターナショナリズムといった枠組で云え︑これらの要因がどのようにから 2

(16)

みあっているか︑またそれらの要因の結び合いによって国際協力の理念を考えてみたいというのが︑ここでの目的で 04       2ある.そして先進国と途上国との現在問題になっている具体的な問題をとりあげ︑それがこれら四つの要因からみ

て︑どのような状態におかれているかを検討し︑広く﹁経済開発﹂と﹁国際協力﹂のパターンを展望してみたい︒

注︵1︶ テンバーゲン﹁上掲書﹂︑邦訳︑第二部明日の世界経済−政策提言1︑第五章 視野の拡大︑九五頁〜一〇八頁︒ ︵2︶ 前掲書﹁テンバーゲン﹂第六章 仕事と道具立て︑六−二︑国際政策における連帯性︑六一三︑国際経済政策における効

   率︑ 一〇九頁〜=一四頁︒ ︵3︶ こうした試みは︑拙稿﹁海外鉱物資源開発と国際協力﹂日本貿易会﹃海外鉱物資源開発﹄︵通産省委託研究報告書︶昭和五

   〇年五月︑︵第二部第二章に収録︶︑にてなされているが︑ここではナショナル・インタレストとナショナリズムとの関係か   ら展望している︒問題はナショナリズムとインターナショナリズムとの関係の分析にあり︑本稿では︑その点について︑考

   えを整理したものである︒

四 経済開発と国際協力のパターン

 ここで検討する国際協力の枠組みが︑これまでの説明で明らかになったが︑さらに効率性と国益との関係︑また連

帯性とインターナショナリズムとの関係について説明を加える必要がある︒しかしこの四つの要因を組み合わせて︑       ︵1︶iつまり坐標軸の縦に効率性をとり︑横軸に連帯性をとり︑それぞれに高次と低次の領域を設ければ︑四つの領域

が構成されよう︒その四つの領域を決定する要因に国益とインターナショナリズムが使用されることになる︒このこ

とは後に説明される図にて明らかとなるが︑実際には世界経済では明確な枠組みとか領域を作ること自体が不可能で

あるが︑ここでは国際協力の原則論を考えてみることを主眼とするので︑こうした分析を行ったわけである︒

 とりわけ最近の資源ナショナリズムの流れは明らかに強烈なものであり︑われわれの脳裏にやきついているごと

(17)

南北問題における国際協力の新しい理念

く︑発展途上国の経済的自立に立ち向かう経済的ナシ︒ナリズムに焦点をおいて分析しなけれぽ︑発展途上国の経済

的︑政治的な効率は究明しえないのではないかと思われる︒

 とはいっても十八世紀未の西欧の産業化が︑低開発地域に植民地を生み出した西欧ナショナリズムも︑それ自体対

外的な経済拡大の効率性をここに求めたといっても過言ではなかろう︒

 こうした意味で︑資源ナショナリズムが発展途上国の国益を示す一つの尺度であるとも考えられよう︒もっとも国

益の意義は複雑であり︑G.フランケルも﹁それが用いられる多数の文脈によって︑多数の意味を帯び︑概念自体が      ︵2︶基本的に重要であるにも拘らず︑これらの意味の対立はしばしば調停不可能である﹂と述べている︒したがってここ

では発展途上国を対照とした経済開発を考慮すれぽその国益は︑多分に先進国側では民間企業利益まで取り扱うこと

になろう︒したがってこの場合は経済的な面での国益を考えるべきであろう︒

 さらに国家的利益と国民的利益も考慮すべきであるとすれば︑それが国益として両者は必ずしも一致しないことが

ある︒例えば発展途上国での現地加工産業の移転が︑製精・精錬産業であれば︑公害の海外移転として国民的利益に

反するものである︒となると効率性を国益からはかる点においても困難であるとの結論にいたるが︑先進国内での公

害にみられるように社会的費用の投入が不足すればという前提条件によって解消される場合もあろう︒それらは多少

なりとも経済発展にともなうその国で採用する経済政策上の効率が示されれば︑国益と考えるといった制約条件の下

でのみ考慮するといったことで検討することにする︒したがって先進国ナショナリズムと発展途上国ナショナリズム

との対立として考えれば︑それは連帯性という枠組みでは︑結局︑低次の組合せといった第①領域でしか取り扱われ      05ないことになる︵図1参照︶︒       2

(18)

 もっとも資源ナショナリズムの本質的特徴を一層明確にするためには︑経済的ナショナリズムがどのような概念的 06      2フレームワークで組み立てられているか︑その一般的構造を明らかにすべきであるとする板垣与一教授によれぽ︑資       ︵3︶源ナシ・ナリズムも結局は︑﹁利益対自主管理の紛争的均衡の緊張のなかで︑利害一致の妥結点を見出すことになる﹂

と述べている︒このことは明らかに国益になる限界点を見出すことに︑現代的な資源ナショナリズムの運命的なもの

があるのではないかと考えられる︒

 さらに連帯性とインターナシ︒ナリズムの関係を考察してみる︒これについては例えば板垣教授の提唱される﹁ト

ランス・ナシ・ナリズム﹂といったものを考えるべきであらうが︑現実的には宮崎義一教授の主張される﹁前向きの

インターナショナリズム﹂の方が理解されやすいようである︒

 板垣教授は﹁これまでの自国中心の狭いナショナリズムから脱皮して︑機能的により広い︑より高い視点に立つこ

とを意味し︑ナショナリズムそのものを棄てるのではなく︑ナショナリズムに内在しながら国際的意向を生かす意味

で︑自己を越える﹂といったトランス・ナショナリズムを主張されている︒

 他方︑宮崎教授は︑﹁南北問題という形で解決をせまられているのは︑低開発国における産業構造の急速な高度化

の要求を十分満足させながら︑なおかつ先進工業国における繁栄を持続させられるような積極的な打開策あるいはそ

の要求をみたす新しい前向きのインターナショナルな世界経済秩序﹂︑つまりこれを後進国のナショナリズムを全面

的に肯定する下から上への前向きのインターナショナリズムと定義される︒したがって後向きのインターナショナリ

ズムは﹁先進工業国が相対的に後進的な諸国に要求する上から下へのナショナリズムの経済体系﹂と考えられ︑これ

までのインターナショナルな世界経済秩序は例外なく︑この後向きのインターナシ・ナリズムの体系であったと主張

(19)

南北間題における国際協力の新しい理念

       図1国際協力のパターン       ④の領域      ↑

*高次の連帯性と高次の効率性  ・「トランスナショナリズム」とか   「新しいインターナショナリズム」

 が打出さられ,真の相互依存関係と  新世界経済秩序がみられる。

(前向きのインターナショナリズム)

     ③の領域

*高次の連帯性と低次の効率性

・国際的相互依存関係から自国が孤立  しないように,各国の利害関係を統 一したグルーピングの方向がとられ  る。この点ではOPEC, CIPEC と

か,IEAなどがこの領域での国際経 済秩序と考えられる。

     ②の領域

*低次の連帯性と高次の効率性

・ナショナリズムの対立はあるもの の国益の点で相互依存関係を求め  るが,究極的には自己本位の国益  を求めるパターン。

・例えば資源開発にみられる自主開 発のごときもの。

(後向きのインターナショナリズム)

(注) 矢印に向って高次化する。

力という視点から図式をもって示すことに

(連帯性)

     ①の領域

*低次の連帯性と低次の効率性

・先進国のナショナリズムと発展途 上国のナショナリズムとの対立。

・それぞれの国益の追求のみによる,

 とくに先進国での植民地的資源開 発体制などにみられる。

(効率性)

 そこで連帯性の概念をこうしたインター

ナショナリズムとの関連において把えてみ

ると前者の効率性の概念ときわめて接近し

た領域のものと︑反対に離れた領域のもの

とが存在していることがわかる︒したがっ

てここでこうした効率性と国益︑連帯性と

インターナショナリズムの関係を︑国際協    ︵4︶されている︒ 以上のような諸説によると一九六〇年代初期に連帯性をとりあげたテンバーゲン教授の解釈はこの前向きのインターナショナリズムを考慮していたと考えられるが︑矢張りOPECを中心とした産油国の資源ナショナリズムは確かにこれまでの後向きのインターナショナリズムに警鐘を鳴したものとみることができるであろう︒

207

(20)

してみよう︑.       ㎜ それぞれの四つの領域での連帯性と効率性の組合せは︑領域内での説明にあ.る通りであるが︑現実的には③の領域

が問題とされているような状況であろう︒ただし︑ケース.バイ.ケースでは②の領域も十分に考えられうる状況で

あろう.もっとも現.実の複雑な世界状勢をもってして︑こうした四つの領域での問題にしぼること自体に無理はある

が︑矢張りわれわれは左半分の連帯性の高次化を考えなければならないであろうし︑そのための具体的行動を︑また

対外的政策︑とくに発展途上国問題に対するわが国の提案を考えるべきであ.ろう︒こうしたきわめて単純化されたパ

タ:ンであっても︑国際協力の原則論というものを見出すことが必要であると考える︒

注へ一︶ こうした効率性と連帯性の考えを援助の二面性として向え︑ 国際協力の理念を論じた︵拙稿﹁国際協力と経済援助﹂︑ 板

   垣与一編﹃南北問題﹄東洋経済新報祉︑昭和四六年の第六章に収録︶が︑さらにこうした接近方法を資源開発にとり入れた

   のが︑拙稿﹁資源開発と国際経済協力﹂板垣与︸編﹃日本の資源問題﹄日本経済新聞社︑昭和四七年である︒またさらにそ

   れらの考えを発展した諭文が︑前節注︵3︶に掲げた﹁通産省委託研究﹂である︒

 ︵2︶ ざωΦ℃げ司鳶口評①rさ驚§ミNミミ禽斜壁蝉=ζ蝉目勺話ωρ一㊤刈O.︵河合秀和訳﹃国益﹄福村出版︑昭和四八年︶

 ︵3︶ 板垣与︼..南北問題とエコノミック・ナショナリズムL板垣与一編﹃南北問題﹄東洋経済新報社︑ 昭和四六年︒他に板

   垣教授の論議は次のものを参照されたい︒﹁資源問題とナショナリズム﹂﹃日本の資源問題﹄日本経済新聞社︑昭和四七年︒

    ﹁現代の資源問題﹂世界経済研究協会編﹃世界資源と日本経済﹄至誠堂︑昭和四九年︒

 ︵4︶ 宮崎義一﹃現代の資本主義﹄岩波新書︑昭和四三年︑第三章富める北︑貧しい南︑を参照︒

五 ま

要約すると︑ここでば次の二つのことに焦点がおかれている︒その第一は︑石油危機を境に発展途上国問題が大き

(21)

南北問題における国際協力の新しい理念

くクローズアップされ︑かれらの提案する新世界経済秩序の問題が真剣に論議されるようになった︒その具体的問題

は一次産品問題にあり︑インデクセーション︑国際商品協定︑輸出所得保証とそれぞれトレードオフの関係におかれ

ている︒発展途上国側はインデクセーションが無理ならば商品協定をと︑先進国側は輸出所得保証をと︑その戦略は

着々と連められている︒しかし商品協定を取りあげても︑﹁コレア構想﹂にみられるように戦後の商品協定とは質を

異にしている︒それは明らかに南北問題を中心とする新しい国際協力の理念によって貫かれている点である︒確かに

トレード・オフの矛盾にみちた世界経済秩序のなかにあって︑世界的不況は深刻化して︑発展途上国はますます貧し

くなっていく段階にあって︑少くともこうした具体的な提案の前にわれわれは国際協力のなんたるかを考えなければ

ならなくなっている︒つまり原則論の必要性である︒

 こうした論点からわが国に対する批判は︑その原則論を忘れて具体的な論議に︑それも目先の一時的な協力にある

ことを鋭くつかれている︒したがって発展途上国の求める世界経済秩序の背景となる国際協力の理念を再検討すべき

であろうということが第一の問題である︒

 第二は︑こうしたことを具体化してみる場合︑例え理念的であるにせよ︑国際協力を各国の国民経済と世界経済と

の相互依存関係のリンクという現代的視点に立脚した場合︑どのように考えたらよいかという問題である︒ここでは

世界経済政策の手段に指針を与えたテンバーゲン教授の効率性と連帯性に再び脚光をあびせて︑それを現在の世界状

勢の枠組みの中で把えた場合︑どのように理解したらよいかと考える︒そこでナショナリズムとナショナル・インタ

レスト︑インターナショナリズムという概念をとりあげる︒つまり国際協力という骨子をこの二つに見出すからであ      09ゆ︑石油危機以後の資源ナショナリズムの重要性からである︒       2

(22)

 この二つの要因を世界経済政策にとって重要な効率性と連帯性に組み入れたらどうなるであろうか︑といった試論 10       2を導くことに始まる︒そこでの問題とする国際協力の理念を解こうとしたのである︒これが第四節の四つの領域にお

いて表わされた協力のパターンである︒

 もっとも︑こうした四つの領域に現状をあてはめることは至難の業であり︑また四つの組合わせも問題であろうが︑

少くともわれわれは国際協力の原則論を組み立てる必要があり︑そうした意味ではこうした議論も一つの示唆となり

うると考える︒しかし︑現実的にはこの四つの領域をすべて合わせもった局面が︑国際協力のケース.バイ.ケース

で生じているのではないかとの疑念をもっている︒これらの点についてはさらにこれからの課題となろう︒

       ︵一九五〇年一〇月︶

参照

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