神奈 川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第15号 2011年3月 87
■ 修士論文要旨
多国間会議 とコーポレー ト ガバナンス原則
一企業法制度政策 に対す る影響力の解明‑
A StudyonMultilateralConferencesandCorporateGovernancePrinciples
‑ElucidatingthelnnuenceoverCompanyLaw System Policy‑
神奈川大学大学院 経営学研究科 国際経営専攻 博士前期課程
江 間 大 悟
EMA,Daigo
■キー ワー ド
企業法制度/コーポレー ト ・ガバナンス /コーポ レー ト・ガバナンス原則/多国間会議 (国際会議、
二国間会議、経済 協力会議)
私 の執筆 した修士論文 は、 『多国間会議 とコー ポ レー ト ・ガバ ナンス原則 一企業法制度政策 に対 す る影響力の解明‑』 と超 し、企業活動 を円滑化 させ る とい う結論 に導 くことを研究意義 としてい る。そのため、多国間会議 におけるコーポレー ト・
ガバナ ンスの議論 とコーポ レー ト ・ガバ ナンス原 則 (以下 「原則」 とい う) を活用 した企業法制度 政策 を明 らかに し、 この課題 と新 たな企業法制度 政策 を提示す ることを目的 としたものである。
今 日、原則 は企業のコーポ レー ト・ガバナンス
構築 とい う基本的な 目的の研究だけで は捉 えるこ とのできない程 にまで役割や機能 を有 しつつある。
た とえば、小 島大徳[2009]で は、原則 に任務 と使 命が あ るとして、 「(i)原則が企業間 における緩 やか な統合 的役割 を有 して い るこ と」 と 「(2) 原則が各 国間の企業法制度 に関す る条約 としての 機能 を有す るに至 りつつ あること」 と示 している。
これ を裏付 けるように、多国間会議 (国際会議、
二国間会議、経済協力会議)では、原則 を活用 し た企業法制度政策が実施 されてい る。
修士論文の構成
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早 目次
第 1章 コーポ レー ト .ガバ ナンスの基礎 的考察 第2章 多様化 す るコーポ レー ト .ガバ ナンス原則 第3章 国際会議 とコーポ レー ト .ガバ ナ ンス原則 第4章 二国間会議 とコーポレー ト.ガバ ナ ンス原則 第5章 経済協力会議 とコーポ レー ト .ガバ ナ ンス原則
(出所)筆者 作成。
88 神奈川大学大学院経営学研 究科 F研 究年報』第15号 2011年3月
これ らの多国間会議 におけるコーポ レー ト ・ガ バナンスの議論 と原則の活用 による企業法制度政 策への影響力についての研究 は、 いまだに実施 さ れていない。 そ こで、 コーポ レー ト・ガバナ ンス の議論 と原則 の活用 による企業法制度政策への影 響力を明 らかにす ることによ り、グローバル化 す る企業活動 を円滑にす るために必要 とな る企業法 制度 の統一的な政策の一面が明 らかにな るので は ないか と考 えた ことが、本研究 を実施 す るに至 っ た動機であるC具体的な各章の内容 は以下である。
第 1章 では、 「コーポ レー ト ・ガバ ナ ンスの基 礎 的考察」 と題 して、 (1) コーポ レー ト ・ガバ ナンスにおける議論の系譜、(2) コーポレー ト・
ガバ ナ ンスの 目的 と定義、 (3) コー ポ レー ト・
ガバナンスの多様性 と統一化 に関す る議論、の3 つ について考察 した。以上の3つにおける考察結 果か ら、 コーポ レー ト ・ガバナンスの議論 は、高 度 に所有 と経営が分離 した ことによ り、利害関係 者 の利益が十分 に保護 されな くなった ことか ら活 発化 した ことや、 コーポ レー ト・ガバナ ンスには、
企業不祥事への対処 と企業競争力の強化 とい う目 的があることを明 らかに した。
第2章 で は、 「多様化 す るコーポ レー ト ・ガバ ナンス原則」 と題 して、 (1)原 則策定 の系譜 や 分類、原則 の 目的や定義、 (2)原則が有す る任 務 と使命 とは何 か (3)多国間会議 における原則 の議論 を検討す る意義、の3つについて考察 した。
以上の3つ における考察結果か ら、先進諸国にお けるコーポレー ト・ガバナンスの議論か ら原則 の 策定が始 ま り、今 日では、多国間会議 においてコー ポ レー ト・ガバナ ンスが活発 に議論 され、原則 を 活用す ることによ り企業法制度政策が実施 されて いる。 こうした多国間会議におけるコーポレー ト・
ガバ ナンスの議論 と原則の活用 は、いまだに明 ら かにされていない。 よって、企業活動 を円滑 にす るためには、本研究をす る意義が あることを明 ら かに した。
第3章で は、 「国際会議 とコーポ レー ト ・ガバ ナ ンス原則」 と題 して、 (1)国際会議 と原則 の 関係性、 (2)主要国首脳会議 (G8サ ミッ ト)
と地域 的国際会議 (APEC)、実務者 首脳 による 国際会議 (財務相 ・中央銀行総裁会議) における コーポ レー ト ・ガバ ナ ンスの議論 内容、 (3) 3 つのBil際会議 の内容か ら導出 され る原則の活用、
の3つにつ いて考察 した。以上の3つ における考 察結果 か ら、 まず、OECD原則 を世界標準原則 と
して支持 と普及 す ることで、OECD原則が各国の 企業法制度や上場規則 に採用 されてい ることを明 らかに した。 また、地域標準原則 の策定 において 支持や歓迎 をす ることで、地域標準原則 の策定が 進展 してい くことを明 らかに した。
第4章で は、 「二 国間会議 とコーポ レー ト ・ガ バ ナンス原則」 と超 して、 (1)二国間会議 と原 則 の関係性 、 (2) 日本 とアメ リカ、 日本 とEU における原則の議論内容、 (3) 日本 とアメ リカ、
日本 とEUにおける議論 の内容 か ら導出 され る原 則の活用、の3つについて考察 した。以上の3つ における考察結果か ら、 日本 とアメ リカにおける 原則の活用では、2002年 の委員会等設置会社制度 の導入 を明 らかに し、 日本 とEUにおける原則の 活用では、2009年の独立役員制度の導入を明 らか
に した。
第5章 で は、 「経済協 力会議 とコーポ レー ト ・ ガバ ナ ンス原則」 と題 して、 (1)経済協力会議
と原則 の関係性、 (2)ア フリカ開発会議 (TICA D) における原則 の議論 内容、 (3)経済協 力会 議 における議論 の内容か ら導出され る経済協 力を す る国 と経済協力を受 ける国における原則の活用、
の3つについて考察 した。以上の3つ における考 察結果か ら、 日本の制度基盤 をも とに して、発展 途上国における制度基盤 を構築 していることを明 らかに した。具体的に、ア フ リカでは、制度基盤 を構築す る前のイ ンフラ整備を重視 した活動が実 施 されていること、 アジアでは、イ ンフラが整備 されている国に対 して具体的な企業法制度の構築 を実施 してい ることを明 らかに した0
第6章で は、 「多国間会議 の議論 と企業法制度 政策」 と題 して、第3章か ら第5章 までに明 らか に した多国間会議 における原則 の議論 をも とに、
(1)多国間会議 において原則 を活用 す るこ とに
多国間会議 とコーポ レー ト ガバ ナ ンス原 則 89
よる企業法制度政策 への影響 力、 (2) 日本政府 と日本企業の連携 による各 国の企業法制度政策、
(3)多国間会議 における企業法制度政策 の課題 と新たな企業法制度政策の提案、の3つについて 考察 した。以上の3つにおける考案結果か ら、企 業法制度政策 において、国際会議 は飽和 的強制力 を有 し、二国間会議 と経済協 力会議 は具体的強制
力 を有す る とい うことを明 らかに した。 そ して、
企業法制度政策 には、政府 の活動 と企業 の活動 に おける時間的 ギャ ップが あることを明 らかに し、
その うえで、政府 と企業 の代表が連携 した多国間 会議 に加 え、政府 と企業、法律 の専門家 による企 業法制度政策会議 の設置 を提案 した。