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企業金融とコーポレート・ガバナンス

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(1)

企業金融とコーポレート・ガバナンス

-情報と制度からのアプローチ-

2010 年 1 月

花 崎 正 晴

(2)

目 次

序章 情報と制度からみる企業金融 1

1.企業金融とは何か 1

2.完全な金融資本市場のもとでの企業金融 2

2.1 Modigliani-Millerの第1命題 2

2.2 資本コスト 4

2.3 レバレッジ効果 5

2.4 資本構成と設備投資の決定 6

2.5 MM理論と現実との対比 7

2.6 完全な金融資本市場 8

3.企業金融における情報と制度の重要性 9

3.1 情報の非対称性とモラル・ハザード 9

3.2 負債政策とペッキング・オーダー理論 11

3.3 金融システムの重要性 14

3.4 情報、制度、インセンティブ 15

4.本書の構成と各章の要約 15

序章図 22

第1章 コーポレート・ガバナンス論の系譜 23

1.コーポレート・ガバナンスとは何か 23

2.近代企業における所有と経営の分離 23

3.エージェンシー問題 25

3.1 エージェンシー関係とは何か 25

3.2 不完備な契約 27

4.企業組織におけるエージェンシー問題 28

4.1 株主と経営者とのエージェンシー問題 28

4.2 株主による経営者のモニタリング 30

4.3 経営者へのインセンティブ付与 31

4.4 負債による規律づけ 32

5.企業コントロール市場の機能 33

5.1 委任状争奪戦 34

(3)

5.2 M&A 35

5.3 事業部門の切り離し 39

6.コーポレート・ガバナンス論の発展 40

6.1 株主主権論からの脱却 40

6.2 日本企業の所有構造 41

6.3 系列とメインバンク・システム 44

6.4 労働者管理企業 48

7.東アジア企業の家族支配構造 49

7.1 家族支配型企業 49

7.2 家族支配とエージェンシー問題 50

8.コーポレート・ガバナンス論の新潮流 50

8.1 市場競争の条件 50

8.2 ステイクホルダー・ソサエティ 51

8.3 CSRとSRI 53

第1章図表 57

第2章 日本の経済発展とメインバンク・システム 68

1. 銀行中心のシステムにおけるコーポレート・ガバナンス 68

2. メインバンク・システムの機能 68

2.1 メインバンクとは何か 68

2.2 リスク・シェアリング機能 71

2.3 情報機能 72

2.4 メインバンク・システムと金融規制 75

2.5 メインバンク・システムの変容 76

3. 設備投資行動の国際比較 77

3.1 設備投資の内部資金制約 77

3.2 日本的特徴と設備投資 78

3.3 データと計測モデル 80

3.4 内部資金制約に関する実証結果 82

4. 設備投資行動の規模別比較 83

4.1 規模別分析の意義 84

4.2 基本モデル 85

4.3 推計モデル 86

(4)

4.4 規模別の推定結果 87

5. 政策金融と民間金融 88

5.1 日本の公的金融 88

5.2 公的金融改革 90

5.3 日本開発銀行の機能 92

5.4 開銀とメインバンクの情報機能の関係 95

第2章補論 97

1.設備投資行動の国際比較 97

1.1 長期的視野について 97

1.2 横並び行動について 98

1.3 マクロ要因と個別要因への反応 100

2.開銀融資の効果分析 101

2.1 開銀融資とメインバンク関係 101

2.2 モデルの特定化と推定方法 104

2.3 開銀融資の情報効果 106

2.4 開銀とメインバンクとの関係 109

第2章図表 111

第3章 日本の金融危機と銀行のガバナンス問題 122

1.深刻化した金融危機 122

1.1 不良債権の概念と開示 122

1.2 金融行政の動向 123

1.3 不良債権の累積 124

1.4 金融機関の経営破綻 126

1.5 公的資金による救済 128

1.6 バブルと金融危機 130

2.日本の銀行行動の特異性 131

2.1 世界各国の金融危機 132

2.2 日本の銀行行動の異質性に関する実証分析 133

2.3 国内の他産業との比較 134

3.銀行業のコーポレート・ガバナンスを巡る議論 135

3.1 銀行業の特殊性 136

3.2 日本の銀行業のコーポレート・ガバナンス 139

(5)

4.銀行経営のエントレンチメント 146

4.1 日本の銀行業の所有構造 147

4.2 所有構造からみた日本の銀行業の問題点 150

5.ガバナンスの空白 154

第3章補論 156

1.銀行業のエントレンチメント仮説の検証 156

1.1 銀行データに基づく実証分析 156

第3章図表 161

第4章 日本の企業金融とガバナンス構造 174

1.日本企業のバランス・シートと資金調達動向 175

1.1 日本企業のバランス・シート 175

1.2 規模別および製造業・非製造業別動向 176

1.3 日本企業の資金調達動向 178

1.4 金融仲介機能はもはや不要か 179

1.5 社債発行と銀行機能 183

1.6 資金調達の国際比較 186

1.7 企業間信用について 187

2.日本の企業金融とコーポレート・ガバナンスに関する先行研究 193

2.1 債権者兼株主としての金融機関の機能 193

2.2 経営者交代にみるガバナンスのメカニズム 196

2.3 日本的特徴のマイナス面を指摘するもの 198

3.日本企業のガバナンス構造に関する定量分析 200

3.1 通説と代替仮説 200

3.2 銀行業の融資分野の変遷 202

3.3 コーポレート・ガバナンスに関する諸仮説 204

3.4 計測結果 212

3.5 結果の解釈 213

4.今次の金融・経済危機局面における動向 215

第4章補論 217

1.生産性モデルの計測 217

1.1 基本モデル 217

1.2 資本ストックの推定 218

(6)

1.3 計測モデル 219

1.4 データセット 220

第4章図表 221

第5章 企業金融とコーポレート・ガバナンスの展望 238

1.金融機関のビジネスモデル 238

1.1 近年における銀行パフォーマンス 238

1.2 リレーションシップ型とトランザクション型 241

1.3 DCF法と金融機関のビジネスモデル 244

1.4 DCF法の採用とその効果 246

2.日本の金融システムの行方 248

2.1 市場型と仲介型の比較 248

2.2 直接金融へのシフトは進んでいるか 249

2.3「貯蓄から投資へ」を巡る論点 250

2.4 金融取引の新しいパラダイム 252

2.5 市場型間接金融の可能性 253

2.6 サブプライムローン問題が意味するもの 255

2.7 アメリカ発の金融危機:投資銀行モデルの終焉 257

3.コーポレート・ガバナンスの将来展望 259

3.1 近年における日本の制度改革の動向 259

3.2 デットかエクイティか 260

3.3 委員会設置会社のパフォーマンス 261

3.4 多層化するコーポレート・ガバナンス構造 264

第5章図表 267

補章 東アジア企業のガバナンス構造とアジア危機 287

1.家族支配とは何か 287

2.東アジア企業のガバナンス構造 288

2.1 所有構造の国際比較 288

2.2 東アジア企業の所有構造 289

2.3 家族支配とエージェンシー問題 290

2.4 voting rights とcash-flow rights 292

2.5 東アジアと西欧の比較 293

(7)

3.アジア危機とコーポレート・ガバナンス 295

3.1 アジア危機とその原因 295

3.2 投資家保護の意義 295

3.3 投資家保護の実証分析 297

3.4 情報開示と所有構造の効果 299

4.企業の所有構造とアジア危機 300

4.1 所有構造に着目した実証研究 300

4.2 アジア危機の中期的分析 302

4.3 ビジネス・グループの功罪 304

5.家族支配型企業の設備投資行動 306

5.1 家族支配型企業グループの成長促進効果 306

5.2 企業系列の投資促進効果 308

5.3 設備投資関数に基づく実証分析 309

6.中国の経済発展のメカニズム 313

7.今後の望ましい制度設計 316

補章図表 318

参考文献 330

(8)

序 章 情 報 と 制 度 か ら み る 企 業 金 融

1 . 企 業 金 融 と は 何 か

企 業 は そ の 活 動 に 必 要 な 各 種 の 資 産 を 保 有 し 、 そ れ ら の 資 産 を 活 用 す る こ と に よ っ て 収 益 を あ げ る 。 そ れ ら の 資 産 と し て は 、 実 物 資 産 だ け で は な く 金 融 資 産 や 無 形 資 産 な ど が 含 ま れ る 。 ま た 、 企 業 が 成 長 あ る い は 発 展 し て い く た め に は 、 設 備 投 資 な ど を 通 じ て 新 た な 資 産 を 取 得 し て い く 行 動 が 必 要 で あ り 、 ま た 逆 に リ ス ト ラ ク チ ャ リ ン グ の 一 環 と し て 資 産 を 売 却 し な け れ ば な ら な い 局 面 も あ る 。

ま た 、 こ れ ら の 資 産 を 取 得 し あ る い は 保 有 し て い く た め に は 、 所 要 資 金 を ど の よ う に 調 達 す る こ と が で き る の か と い う 重 要 な 問 題 が あ る 。 資 産 規 模 が 小 さ い 零 細 企 業 で あ れ ば 、 企 業 の 内 部 者 が 中 心 と な っ て そ れ ら の 資 金 を 拠 出 す る こ と も 可 能 で あ る か も し れ な い が 、 近 代 的 な 大 企 業 で は 外 部 の 投 資 家 か ら 資 金 を 調 達 す る の が 一 般 的 で あ る 。 ま た 、 資 金 調 達 の 形 態 は 、 自 己 資 本 と 負 債 ( 他 人 資 本 ) に 大 別 さ れ 、 負 債 の な か に も 借 入 金 、 社 債 、 企 業 間 信 用 な ど が あ る 。

一 方 、 資 金 を 提 供 す る 外 部 投 資 家 は 、 提 供 し た 資 金 に 見 合 う 適 正 な リ タ ー ン を 企 業 に 対 し て 要 求 す る 。 よ り 詳 し く い え ば 、 金 銭 的 な リ タ ー ン に 関 心 の あ る 投 資 家 は 、 企 業 経 営 者 に 対 し て 収 益 に 寄 与 す る 投 資 プ ロ ジ ェ ク ト の 遂 行 や 経 営 効 率 の 改 善 な ど を 要 求 し 、 そ れ ら が 実 現 す る 過 程 で 生 み 出 さ れ る で あ ろ う 果 実 を 受 け 取 る こ と を 期 待 す る 。 そ の よ う な 目 的 の も と で 、 投 資 家 は 企 業 に 対 す る モ ニ タ リ ン グ を 実 施 し 、 必 要 な ら ば 経 営 に 介 入 す る こ と も あ る 。 こ こ に 、 コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス の 問 題 が 密 接 に か か わ っ て く る 。

企 業 金 融 論 が 取 り 扱 う の は 、 直 接 的 に は 上 述 の よ う な 領 域 で あ り 、 企 業 の 資 産 サ イ ド と 資 本 サ イ ド の 連 関 性 に 着 目 し て 分 析 が 展 開 さ れ る 。 企 業 金 融 論 が 、 理 論 的 に 体 系 化 さ れ た の は 、 モ ジ リ ア ニ と ミ ラ ー と い う 二 人 の ノ ー ベ ル 経 済 学 賞 受 賞 者1の 共 同 論 文(Modigliani and Miller, 1958)に 負 う と こ ろ が 大 で あ る 。 以 下 で は 、 そ の エ ッ セ ン ス を 概 観 す る こ と か ら 、 本 書 を ス タ ー ト

1 Franco Modigliani は 、1985 年 に 貯 蓄 と 金 融 市 場 に 関 す る 分 析 を 対 象 に 、 ま た Merton H. Miller は 、1990 年 に 金 融 経 済 学 理 論 の 業 績 に 対 し て 、 と も に ノ ー ベ ル 経 済 学 賞 を 受 賞 し て い る 。

(9)

し よ う 。

2 . 完 全 な 金 融 資 本 市 場 の も と で の 企 業 金 融

2.1 Modigliani-Millerの 第 1 命 題

Modigliani-Miller( 以 下 、MM) モ デ ル の 重 要 な 貢 献 の 一 つ は 、 企 業 価 値 は 資 本 構 成 あ る い は 資 金 調 達 方 法 に よ っ て 影 響 を 受 け な い こ と を 理 論 的 に 明 ら か に し た こ と で あ る 。 そ の 意 味 す る と こ ろ は 、 例 え ば 負 債 を 返 済 し て 自 己 資 本 を 手 厚 く す る と い っ た 財 務 戦 略 上 の 措 置 を 講 じ て も 、 企 業 価 値 が 高 ま る よ う な 効 果 は 発 揮 さ れ な い 。 そ し て 、 企 業 価 値 を 向 上 さ せ よ う と す れ ば 、 そ の 唯 一 の 手 段 は 、 期 待 利 潤 を 引 き 上 げ る こ と が で き る よ う な 投 資 プ ロ ジ ェ ク ト を 選 択 、 実 行 す る こ と で あ る 。

企 業 価 値 (market value of the firm) は 資 本 構 成 (capital structure) か ら 独 立 で あ る と い う 主 張 は 、MM の 第 1 命 題 と 呼 ば れ て お り 、 次 式 に よ っ て 表 現 さ れ る 。

V ≡S + D = X/ρ (1) 変 数 名 は 、 次 の 通 り で あ る 。

V: 企 業 価 値

S: 株 式 の 市 場 価 値 D: 負 債 の 市 場 価 値

X: 企 業 が 所 有 す る 実 物 資 産 か ら 得 ら れ る 利 潤 の 流 列 の 期 待 値 ρ: 資 本 化 率

(1)式 は 、 株 式 価 値 と 負 債 価 値 の 総 和 で あ る 企 業 価 値 は 、 期 待 利 潤 を 利 率 ρ で 資 本 化 し た 金 額 に 一 致 す る こ と を 意 味 し て い る 。 換 言 す れ ば 、 企 業 価 値 は 資 金 調 達 の 構 成 に よ っ て 一 切 影 響 を 受 け ず 、 企 業 価 値 を 最 大 化 す る よ う な 最 適 資 本 構 成 は 存 在 し な い こ と に な る 。 な お 、 利 潤 の 流 列 に は 不 確 実 性 が 存 在 し 、 そ れ ぞ れ の 投 資 家 は そ の 確 率 分 布 の 形 状 に 関 し て 違 っ た 見 方 を し て い る か も し れ な い が 、こ こ で は そ の 期 待 値 X の 水 準 に 関 し て は 、投 資 家 間 の 見 解 は 一 致 し て い る と 仮 定 し て い る 。 ま た 、 利 潤 の 流 列 の 期 待 値 を 資 本 化 す る パ ラ メ ー タ で あ る 資 本 化 率(capitalization rate)ρ の 値 は 、リ ス ク ク ラ ス ご と に 決 ま り 、 同 じ リ ス ク ク ラ ス に 属 す る 企 業 は す べ て 同 一 の 定 数 で あ る 。

(10)

上 述 の MM の 第 1 命 題 は 、次 の 通 り 証 明 さ れ る 。X が 等 し い 2 つ の 企 業 が 存 在 す る 場 合 を 考 え る 。 企 業 1 は 、 必 要 資 金 の す べ て を 株 式 で 調 達 す る 。 す な わ ち 、V1= S1で あ る 。 一 方 企 業 2 は 、 株 式 と 負 債 を 両 方 用 い て 調 達 す る 。 す な わ ち 、V2 = S2 + D2で あ る2

ま ず 、 当 初 V2 > V1で あ る と 想 定 し よ う 。 企 業 2 の 株 式 を α の 比 率 だ け 保 有 (αS2) す る 投 資 家 に 焦 点 を 当 て る と 、 そ の ポ ー ト フ ォ リ オ か ら 得 ら れ る リ タ ー ン Y2は 、 次 式 と な る 。

Y2 = α(X – r D2) (2)

た だ し 、r は 負 債 に か か る 利 子 率 で あ る 。 こ こ で 、 そ の 投 資 家 が 自 分 の 保 有 す る 比 率 α の 企 業 2 の 株 式(αS2)を 売 却 し 、か わ り に α(S2 + D2)の 金 額 に 相 当 す る 企 業 1 の 株 式 を 購 入 す る 行 動 を と る と す る 。 た だ し 、 そ の 所 要 資 金 の う ち αS2は 企 業 2 の 株 式 の 売 却 代 金 を そ の ま ま 充 当 し 、αD2は 新 規 に 取 得 す る 企 業 1 の 株 式 を 担 保 と す る 借 入 で 賄 う 。 こ の 新 規 の ポ ー ト フ ォ リ オ か ら 得 ら れ る リ タ ー ン Y1は 、 次 式 と な る 。

Y1

1 2 2

S ) D α(S

X -rαD2 = α

1 2

V

V

X -rαD2 (3)

(2)式 と(3)式 を 比 較 す る と 、V2 > V1が 想 定 さ れ て い る こ と か ら 、Y1> Y2で あ る 。 し た が っ て 、 企 業 2 の 株 式 を 保 有 し て い る 投 資 家 は 、 そ の 株 式 を 売 却 し て 、 か わ り に 企 業 1 の 株 式 を 購 入 す る こ と が 有 利 と な る 。 そ の よ う な 投 資 行 動 の 結 果 、 企 業 2 の 株 式 価 値 が 下 落 し 、 逆 に 企 業 1 の 株 式 価 値 は 上 昇 し 、 均 衡 に お い て V1 = V2 が 実 現 す る 。

次 に 、 当 初 V1 > V2の 場 合 を 考 え よ う 。 企 業 1 の 株 式 を s1の 金 額 ( 持 株 比 率 α) だ け 保 有 す る 投 資 家 に と っ て の リ タ ー ン Y1は 、 次 式 と な る 。

Y1

1 1

S

s

X =αX (4)

こ こ で 、そ の 投 資 家 が s1の 金 額 を 利 用 し て 、別 の ポ ー ト フ ォ リ オ に 組 み 替 え る 行 動 を と る と し よ う 。す な わ ち 、企 業 2 が 発 行 し て い る s2の 金 額 の 株 式 と d の 金 額 の 社 債( す な わ ち 負 債 )の 購 入 で あ る 。こ こ で 、次 式 を 想 定 す る 。

2 資 本 構 成 の な か の 負 債 は レ バ レ ッ ジ(l e v e r a g e)と い わ れ る こ と か ら 、資 本 構 成 に お い て 負 債 を 一 部 利 用 す る 企 業 ( 企 業 2) は l e v e r e d f i r m、 他 方 負 債 を 一 切 利 用 し な い 企 業 ( 企 業 1) は u n l e v e r e d f i r m と 、 そ れ ぞ れ 呼 ば れ る 。

(11)

s2

2 2

V

S

s1, d

2 2

V

D

s1 (5)

(5)式 は 、 投 資 家 は s1 の 金 額 を 企 業 2 が 発 行 し て い る 株 式 と 負 債 の 比 率 に 対 応 さ せ て 投 資 す る こ と を 意 味 し て い る 。 こ の 新 規 の ポ ー ト フ ォ リ オ の な か の 企 業 2の 株 式 か ら 得 ら れ る リ タ ー ン は 、(X – r D2)の う ち s2/S2の 割 合 に 相 当 し 、 社 債 か ら の リ タ ー ン は rd と な る こ と か ら 、 新 規 の ポ ー ト フ ォ リ オ の リ タ ー ン の 総 額 は 、(5)式 を 利 用 し て 次 式 と な る 。

Y2

2 2

S

s

(X – r D2)+rd =

2 1

V

s

(X – r D2)+r

2 2

V D

s1

2 1

V

s

X=α

2 1

V

S

X (6)

(4)式 と(6)式 を 比 較 す る と 、S1≡V1 > V2が 想 定 さ れ て い る こ と か ら 、Y2> Y1

で あ る 。 し た が っ て 、 企 業 1 の 株 式 を 保 有 し て い る 投 資 家 は 、 そ の 株 式 を 売 却 し て 、 企 業 2 の 株 式 と 負 債 と が 混 合 し た ポ ー ト フ ォ リ オ を 取 得 す る こ と に よ っ て 利 得 を 引 き 上 げ る こ と が で き る 。 そ の よ う な 行 動 の 結 果 、 企 業 1 の 株 式 価 値 が 下 落 し 、 逆 に 企 業 2 の 価 値 が 上 昇 し 、 均 衡 に お い て V = V が 実 現 す る 。

以 上 の 証 明 に よ り 、V = V が 成 立 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。 つ ま り 、 資 本 構 成 が 株 式 の み の 企 業( 企 業 1)と 株 式 と 負 債 の ミ ッ ク ス で あ る 企 業( 企 業 2) と で 、 企 業 価 値 の 面 で は 格 差 は 発 生 し な い の で あ る 。

2.2 資 本 コ ス ト

MM は 、 第 1 命 題 に 関 連 し て 、 資 本 コ ス ト の 概 念 を 導 入 し て い る 。 平 均 資 本 コ ス ト (average cost of capital) と は 、 次 式 の 通 り 、 利 潤 の 期 待 値 X を 株 式 S と 負 債 D を 合 算 し た 総 資 本 で 除 し た 比 率 と し て 定 義 さ れ 、(1)式 よ り 資 本 化 率 ρ と 等 し く な る 。

D S

X

V

X

=ρ (7)

(7)式 か ら 明 ら か な よ う に 、資 本 コ ス ト は 、資 本 構 成 か ら 完 全 に 独 立 し て 決 ま る と い う 性 質 が あ る 。 ま た 、 資 本 化 率 ρ は 、 上 述 の 通 り 企 業 が 属 す る リ ス ク ク ラ ス に 応 じ て 決 ま っ て い る こ と か ら 、 リ ス ク ク ラ ス が 高 ま れ ば 、ρ の 上 昇 に 対 応 し て 資 本 コ ス ト も 同 じ く 上 昇 す る こ と が わ か る 。 さ ら に 、MM の 第 3 命 題 で 後 述 す る よ う に 、 資 本 コ ス ト は 、 企 業 が 設 備 投 資 の 各 種 プ ロ ジ ェ ク

(12)

ト を 選 択 す る 際 に 、 投 資 か ら 生 み 出 さ れ る 収 益 率 が 資 本 コ ス ト と 最 低 で も 同 率 か そ れ 以 上 で な け れ ば な ら な い こ と か ら 、 投 資 を 採 択 す る か 捨 て 去 る か の 最 低 の 臨 界 点 (cut-off point) を 示 す と い う 性 質 が あ る3

換 言 す れ ば 、 企 業 に 対 す る 資 金 の 出 し 手 で あ る 外 部 投 資 家 の 立 場 か ら す れ ば 、 企 業 が 最 低 で も 資 本 コ ス ト に 等 し い 総 資 本 利 益 率 を 稼 得 で き な け れ ば 、 そ の 企 業 に 投 資 す る 意 味 は な く な る 。 ゆ え に 、 資 本 コ ス ト と は 、 企 業 に 対 す る 資 金 の 出 し 手 が 期 待 す る 最 低 ラ イ ン の 総 資 本 利 益 率 で あ る と 解 釈 す る こ と が で き る4

2.3 レ バ レ ッ ジ 効 果

続 い て MM 理 論 に お い て 、あ る 企 業 の 期 待 株 式 利 益 率 と 資 本 構 成 と の 関 係 を 考 察 し よ う 。 ま ず 、 期 待 株 式 利 益 率 i は 、 次 式 の 通 り 定 義 さ れ る 。

i ≡

S D r

X-

(8)

ま た(1)式 よ り 、

X = ρ(S + D) (9) で あ る か ら 、(9)式 を(8)式 に 代 入 す る こ と に よ っ て 、 次 式 が 導 か れ る 。 i = ρ+ (ρ-r) D/S (10) こ の(10)式 は 、MM の 第 2 命 題 を 表 す 式 で あ り 、 株 式 の 期 待 利 益 率 が 、 資 本 化 率 ま た は 総 資 本 利 益 率 ρ と 資 本 構 成 に 関 連 し た プ レ ミ ア ム に 対 応 す る 要 素 { (ρ-r) D/S } と の 合 計 と し て 表 さ れ る こ と を 意 味 し て い る 。

こ こ で 単 純 化 の た め に 、r を 市 場 で 決 ま っ て い る リ ス ク フ リ ー の 利 子 率5

3 資 本 コ ス ト は ρに よ っ て 規 定 さ れ る た め 、ρ が 不 変 で あ る 限 り に お い て 、 新 規 の 設 備 投 資 に 伴 う 限 界 資 本 コ ス ト と 企 業 全 体 の 資 本 に か か る 平 均 資 本 コ ス ト は 一 致 す る 。

4 資 本 コ ス ト に 関 し て は 、MM 理 論 と 当 時 通 説 で あ っ た 財 務 論 の 学 者 と の 間 に 、 考 え 方 に 大 き な 隔 た り が あ っ た 。 す な わ ち 当 時 の 通 説 で は 、 資 本 コ ス ト は 、 負 債 に 関 し て は 企 業 が 負 担 す る 利 子 率 、 ま た 株 式 に 関 し て は 株 式 利 益 率 に よ っ て 表 さ れ 、 そ の 両 者 の 加 重 平 均 と し て 資 本 コ ス ト が 算 出 さ れ る と 考 え ら れ て い た 。 し か も 、 負 債 の コ ス ト も 株 式 の コ ス ト も 、 企 業 の 資 本 構 成 に 依 存 し て 変 化 す る こ と が 想 定 さ れ て い た 。

5 な お 、M o d i g l i a n i a n d M i l l e r ( 1 9 5 8)は 、r を 単 純 に リ ス ク フ リ ー の 利 子 率 と み な し て い る わ け で は な く 、 企 業 の 負 債 比 率 DS の 水 準 に 対 応 し て 変 化 す る 場 合 も 考 察 し て い る 。

(13)

す る と 、i の 期 待 値 E(i)と 標 準 偏 差 SD(i) は 、 そ れ ぞ れ 次 式 で 表 さ れ る 。 E(i) = E(ρ)+{E(ρ)-r }D/S (11) SD(i) = {1+ D/S SD(ρ) (12)

負 債 比 率 D/S(debt-to-equity ratio)が 上 昇 す れ ば 、(11)式 よ り 株 式 利 益 率 の 期 待 値 は 高 ま り 、(12)式 よ り 株 式 利 益 率 の 標 準 偏 差 ( リ ス ク ) も 同 時 に 上 昇 す る 。 こ の よ う に 負 債 比 率 が 株 式 利 益 率 の 期 待 値 と リ ス ク に 及 ぼ す プ ラ ス の 効 果 を 、 負 債 利 用 に よ る レ バ レ ッ ジ 効 果 と い う 。

な お 、 株 式 利 益 率 の リ ス ク は 、 企 業 の 資 産 サ イ ド で 決 ま る 営 業 リ ス ク

(business risk) と 資 本 構 成 に よ っ て 影 響 を 受 け る 財 務 リ ス ク (financial risk) と が 合 わ さ っ た も の で あ る 。 こ れ ら の リ ス ク を 観 察 可 能 な 指 標 と し て 捉 え る と す る と 、 営 業 リ ス ク は(12)式 に お け る 総 資 本 利 益 率 の 標 準 偏 差 SD(ρ)に 対 応 し 、財 務 リ ス ク は(10)式 の 右 辺 第 2 項 の(ρ-r) D/S の 標 準 偏 差 、 あ る い は 同 じ こ と で あ る が 、(12)式 に お け る SD(i)と SD(ρ)と の 差 分 と し て 測 る こ と が で き る 。

2.4 資 本 構 成 と 設 備 投 資 の 決 定

MM 理 論 は 、 設 備 投 資 の 決 定 モ デ ル を も 提 示 し て い る 。 す な わ ち 、 株 主 利 益 の 極 大 化 を 目 的 と し て 行 動 す る 企 業 は 、 設 備 投 資 プ ロ ジ ェ ク ト の 採 択 基 準 と し て 、 資 本 化 率 な い し は 総 資 本 利 益 率 ρ を 利 用 で き る 。 そ し て 、 投 資 が 生 み 出 す 利 益 率 が ρ を 上 回 る 投 資 プ ロ ジ ェ ク ト を 企 業 が 実 行 す れ ば 、 株 価 の 上 昇 を 通 じ て 株 主 に 利 益 を も た ら す こ と が で き る が 、ρ を 下 回 る 低 率 の 利 益 し か 実 現 で き な い 投 資 プ ロ ジ ェ ク ト が 実 行 さ れ れ ば 、 株 価 は 下 落 し 株 主 は 不 利 益 を 蒙 る 結 果 と な る 。 そ の 意 味 で 、 上 述 し た 通 り 、ρ は 投 資 プ ロ ジ ェ ク ト の 採 択 に 際 し て 、 臨 界 的 な 利 益 率 を 示 す と 解 釈 で き る6

換 言 す れ ば 、MM 理 論 に よ れ ば 、 設 備 投 資 の 資 金 調 達 が 社 債 、 内 部 留 保 、 新 株 発 行 な ど い か な る 形 態 を と ろ う と も 、 投 資 の 臨 界 点 は 影 響 を 受 け ず に ひ と え に ρ に よ っ て 規 定 さ れ る 。 す な わ ち 、 企 業 の 最 適 な 設 備 投 資 水 準 は 、 さ ま ざ ま な 資 金 調 達 手 段 か ら 影 響 さ れ ず 、 投 資 決 定 の 問 題 と 資 金 調 達 の 問 題 と

6 資 本 化 率 ρ は 、 企 業 の リ ス ク ク ラ ス に 応 じ て 規 定 さ れ て い る こ と は す で に 述 べ た 。 し た が っ て 、 も し 新 規 の 設 備 投 資 を 実 行 し た の ち に 、 企 業 が 所 属 す る リ ス ク ク ラ ス に 変 化 が 生 じ れ ば 、 設 備 投 資 の 再 調 整 メ カ ニ ズ ム が 働 く 可 能

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は 無 関 係 と な る 。 こ れ が 、MM の 第 3 命 題 で あ る ( 証 明 省 略 )7

2.5 MM理 論 と 現 実 と の 対 比

上 述 の 通 り 、MM 理 論 の 企 業 金 融 に 対 す る 主 要 な 貢 献 は 、 企 業 価 値 、 資 本 コ ス ト そ し て 設 備 投 資 が 、 そ れ ぞ れ 資 本 構 成 や 資 金 調 達 の 方 法 か ら 影 響 を 受 け ず に 、 独 立 に 決 定 さ れ る こ と を 明 ら か に し た 点 に あ る 。 本 章 の 冒 頭 で 述 べ た 通 り 、 企 業 金 融 論 と は 本 来 、 実 物 面 と 資 金 調 達 面 と の 連 関 性 あ る い は 相 互 依 存 性 を 分 析 す る も の で あ る が 、企 業 金 融 論 の 基 礎 を 築 い た MM 理 論 は 、皮 肉 に も 実 物 面 と 資 金 面 と の 分 断 を 図 る も の で あ っ た 。

MM 理 論 の 登 場 が 、当 時 の 学 界 に 与 え た 衝 撃 の 大 き さ は 想 像 に 難 く な い が 、 今 日 に お い て もMMの 世 界 と 現 実 に 生 起 し て い る 事 象 と を ど の よ う に 整 合 的 に 理 解 す る こ と が で き る の か は 、 悩 ま し い 問 題 で あ る 。 例 え ば 、 ト ヨ タ 自 動 車 の よ う に 極 め て 健 全 な 財 務 体 質 を 有 し て い る 企 業 は 、 同 業 他 社 と の 比 較 に お い て 、 売 上 高 や 営 業 利 益 な ど の 資 産 サ イ ド の パ フ ォ ー マ ン ス 指 標 で み る 場 合 よ り も 、 企 業 価 値 ( 時 価 総 額 ) に お い て よ り 高 い 優 越 性 を 示 し て い る よ う に み え る 。 ま た 、 過 剰 債 務 に 苦 し む 企 業 が 、 企 業 価 値 を 低 下 さ せ 、 さ ら に 新 規 に 有 望 な 設 備 投 資 機 会 が あ る に も か か わ ら ず 、 資 金 制 約 に よ り 投 資 が 実 行 で き な い 事 例 も み ら れ る 。 さ ら に 、 事 業 再 生 の 一 つ の 手 段 と し て 債 務 の 株 式 化 (debt-equity swap) の 手 法 が 用 い ら れ 、 経 営 危 機 か ら の 脱 却 に 有 効 性 を 発 揮 す る 事 例 も 少 な く な い 。

こ れ ら の 事 例 は 、MM 理 論 が 主 張 す る の と は 異 な り 、 企 業 の 資 本 構 成 が 企 業 価 値 や 設 備 投 資 の 決 定 プ ロ セ ス に 、 何 ら か の 影 響 を 及 ぼ し う る 可 能 性 が あ る こ と を 示 唆 す る も の で あ る 。 も し こ の 認 識 が 正 し け れ ば 、MM 理 論 は 現 実 を 説 明 す る こ と が で き な い 空 理 空 論 な の で あ ろ う か 。 あ る い は 、 現 実 の 事 象 が 、MM 理 論 に よ っ て 示 さ れ て い る 本 来 あ る べ き 姿 か ら か け 離 れ た 非 合 理 性 に 満 ち た も の な の で あ ろ う か 。

こ れ ら の 疑 問 に 答 え る た め に は 、MM 理 論 が 前 提 と し て い る 諸 条 件 を 吟 味 し な け れ ば な ら な い 。

性 が あ る 。

7 さ ら に 、Miller and Modigliani (1961)は 、企 業 が 利 益 の う ち ど れ だ け を 株 主 へ の 配 当 と し 、ま た ど れ だ け を 内 部 留 保 に 回 す か と い う 配 当 政 策(dividend

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2.6 完 全 な 金 融 資 本 市 場

MM の モ デ ル が 前 提 と す る の は 、 摩 擦 や ゆ が み の な い 完 全 な 金 融 資 本 市 場 の 存 在 で あ る 。 完 全 な 金 融 資 本 市 場 と は 、 次 の よ う な 性 質 を 持 つ も の で あ る と 理 解 さ れ る 。 ま ず 、 資 金 の 供 給 側 と 需 要 側 に 多 数 の 経 済 主 体 が 存 在 し 、 株 式 や 負 債 と い っ た 金 融 資 産 の 価 格 が 、 完 全 競 争 市 場 に お け る 需 給 均 衡 の 結 果 と し て 決 定 さ れ る 。

こ の こ と は 、 次 の よ う な 裁 定 取 引 を 成 立 さ せ る 。 す な わ ち 、 同 じ リ ス ク ク ラ ス に 属 す る 複 数 の 企 業 の 株 価 に 開 き が あ る 場 合 に は 、 投 資 家 が 裁 定 機 会 を 有 効 に 活 用 し て 安 価 な 株 式 が 買 わ れ 高 価 な 株 式 が 売 ら れ る こ と か ら 、 均 衡 に お い て 両 者 の 株 価 が 等 し く な る 。 投 資 家 は 、 合 理 的 な 資 産 選 択 行 動 を と り 、 企 業 経 営 者 は 企 業 価 値 を 最 大 に す る よ う に 行 動 す る 。 ま た 、 あ る 経 済 主 体 の 行 動 が 、 市 場 を 経 由 せ ず に 別 の 経 済 主 体 の 利 得 に 直 接 的 に 影 響 を 及 ぼ す よ う な 外 部 効 果 も 存 在 し な い 。

さ ら に 、 金 融 シ ス テ ム 上 の 特 性 や 規 制 な ど に よ っ て 、 金 融 取 引 に 制 約 が 課 さ れ る よ う な こ と は な く 、 株 式 市 場 と 負 債 ( ま た は 社 債 ) 市 場 は 、 発 行 市 場 お よ び 流 通 市 場 と も に 十 分 の 量 の 取 引 が な さ れ 、 価 格 メ カ ニ ズ ム も 有 効 に 機 能 し て い る 。 ま た 、 企 業 の 負 債 に よ る 調 達 条 件 と 投 資 家 の 企 業 の 株 式 を 担 保 と す る 借 入 条 件 は 均 一 で あ る 。 加 え て 、 株 式 や 負 債 の 売 買 の 際 の 取 引 コ ス ト や 企 業 破 綻 に 伴 う コ ス ト が 発 生 し な い 、法 人 税8や 資 本 課 税 な ど の 税 が か か ら な い な ど も 、MM 理 論 の 本 質 を 描 き 出 す た め に 必 要 な 前 提 で あ る9

policy) は 、 企 業 価 値 に 一 切 影 響 を 及 ぼ さ な い こ と を 証 明 し て い る 。

8 Modigliani and Miller (1963)は 、 法 人 税 が 導 入 さ れ た 場 合 に 、M o d i g l i a n i

a n d M i l l e r(1 9 5 8)の 結 論 が ど の よ う に 修 正 さ れ る か を 論 じ て い る 。周 知 の 通

り 、 企 業 が 支 払 う 金 利 は 、 法 人 税 法 上 課 税 所 得 か ら 控 除 で き る 経 費 で あ る の に 対 し て 、 配 当 や 内 部 留 保 に は そ の よ う な 課 税 控 除 の 取 り 扱 い は な い 。 こ の よ う な 法 人 税 法 上 の 措 置 に よ り 、l e v e r e d f i r m の 企 業 価 値 は u n l e v e r e d fi r m の 価 値 よ り 負 債 に 法 人 税 率 を 乗 じ た 額 ( こ れ を 、 負 債 に よ る タ ッ ク ス ・ シ ー ル

ド (t a x s h i e l d) の 割 引 現 在 価 値 と い う 。) だ け 上 回 る こ と 、 負 債 の 資 本 コ ス

ト は 自 己 資 本 ( 新 株 発 行 ま た は 内 部 留 保 ) の 資 本 コ ス ト に 比 べ て 法 人 税 分 だ け 低 い こ と 、 な ど が 示 さ れ て い る 。

9 MM 理 論 の 最 も す ぐ れ た 解 説 書 で あ る 小 宮 ・ 岩 田 (1973) は 、MM の 諸 命 題 が 導 出 さ れ る 前 提 と し て 、 次 の 9 つ の 仮 定 を 列 挙 し て い る 。 ① 投 資 家 の 合 理 的 行 動 、 ② 競 争 的 資 本 市 場 、 ③ 取 引 費 用 の 無 視 、 ④ 配 当 と 内 部 留 保 の 無 差 別 、 ⑤ 企 業 と 投 資 家 の 借 入 条 件 の 均 等 、 ⑥ 投 資 家 の 静 学 的 期 待 、 ⑦ 投 資 家 の

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3 . 企 業 金 融 に お け る 情 報 と 制 度 の 重 要 性

3.1 情 報 の 非 対 称 性 と モ ラ ル ・ ハ ザ ー ド

一 般 に 、 実 物 取 引 と 比 較 し た 場 合 の 金 融 取 引 の 顕 著 な 特 徴 と し て 、 時 間 的 な 要 素 の 重 要 性 を あ げ る こ と が で き る 。 す な わ ち 、 消 費 財 な ど に お け る 実 物 取 引 で は 、 売 買 が 成 立 し た 時 点 で 現 物 の 引 き 渡 し と 代 金 の 支 払 い が 同 時 に な さ れ る こ と か ら 、そ の 時 点 で 取 引 が 基 本 的 に は 完 了 す る と 考 え ら れ る 。一 方 、 企 業 が 社 債 を 発 行 し 投 資 家 が そ れ を 購 入 す る と い う 取 引 に 典 型 的 に み ら れ る 金 融 取 引 に お い て は 、社 債 発 行 が な さ れ て か ら そ れ が す べ て 償 還 さ れ る ま で 、 数 か 月 、 数 年 、 あ る い は 数 十 年 と い う 年 月 が か か る 。 こ の よ う に 金 融 取 引 で は 、 資 源 が 異 時 点 間 に 渡 っ て 配 分 さ れ る と い う 性 質 が あ る 。

金 融 取 引 に お い て 時 間 の 要 素 が 取 引 に 密 接 に か か わ っ て く る と い う こ と は 、 必 然 的 に 情 報 が 果 た す 役 割 に 決 定 的 な 重 要 性 を 付 与 す る こ と に な る 。 一 般 的 に 、 金 融 取 引 の 各 参 加 者 は 、 取 引 が 終 了 す る ま で の 期 間 に 渡 り 各 種 リ ス ク を 正 確 に 把 握 す る こ と は 事 実 上 不 可 能 で あ る と い う 意 味 で 情 報 は 不 完 全 で あ り 、 ま た 取 引 の 一 方 の 当 事 者 で あ る 債 権 者 は 、 も う 一 方 の 当 事 者 で あ る 債 務 者 が 有 す る 自 己 の 経 営 状 態 、 債 務 弁 済 能 力 お よ び 弁 済 意 思 に 関 す る 情 報 を 、 多 く の 場 合 に 質 量 と も に 十 分 に 入 手 す る こ と は 困 難 で あ る と い う 意 味 で 情 報 は 非 対 称 で あ る1 0

こ の よ う な 情 報 の 不 完 全 性 (imperfection) や 非 対 称 性 (asymmetry) が

予 想 の 一 致 、 ⑧ 法 人 税 ・ 所 得 税 の 無 視 、 ⑨ 企 業 の 株 式 価 値 最 大 化 行 動 。 し か し な が ら 、 本 章 の 以 下 で 強 調 さ れ る 投 資 家 と 企 業 経 営 者 と の 間 の 情 報 の 非 対 称 性 の 問 題 や 両 者 の 利 害 対 立 の 問 題 な ど に 関 し て は 、 そ れ ら が 存 在 し な い こ と は 暗 黙 に は 仮 定 さ れ て い る も の の 、 陽 表 的 に は 言 及 さ れ て い な い 。

1 0 も っ と も 情 報 の 不 完 全 性 や 非 対 称 性 の 問 題 は 、金 融 取 引 に 固 有 な も の で は な い 。Akerlof (1970)は 、 中 古 車 市 場 に お け る 情 報 の 非 対 称 性 の 問 題 を 秀 逸 な モ デ ル で 分 析 し て い る 。 す な わ ち 、 中 古 車 市 場 に 供 給 さ れ る 車 の 品 質 を 買 い 手 が 見 極 め る こ と は 困 難 で あ り 、 価 格 は 市 場 の 平 均 的 な 品 質 を 基 準 に つ け ら れ る 。 す る と 、 そ の 価 格 か ら み る と 高 品 質 の 中 古 車 の 供 給 は 減 り 、 低 品 質 の 車 が 市 場 を 席 巻 し て し ま う と い う 問 題 が 発 生 す る 。 ま た 、 需 要 者 に と っ て 事 前 や 期 中 に サ ー ビ ス の 品 質 を 評 価 し に く い 医 療 や 教 育 な ど の 分 野 で も 、 情 報 の 非 対 称 性 の 問 題 を ど の よ う に 処 理 あ る い は 緩 和 す る こ と が で き る か は 、 重 要 な 課 題 で あ る 。

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存 在 す る と 、 次 の よ う な モ ラ ル ・ ハ ザ ー ド (moral hazard)1 1の 問 題 が 発 生 す る 可 能 性 が あ る 。 つ ま り 、 資 金 を 調 達 し て 投 資 プ ロ ジ ェ ク ト を 営 も う と す る 企 業 経 営 者 が 、 ベ ス ト を 尽 く し て 努 力 す れ ば 投 資 プ ロ ジ ェ ク ト の 成 功 確 率 は 向 上 す る は ず で あ る 。 し か し 、 企 業 経 営 者 と 企 業 に 所 要 資 金 を 提 供 す る 投 資 家 と の 間 に 情 報 の 非 対 称 性 が 存 在 し 、 投 資 家 は 企 業 経 営 者 が ど の 程 度 の 努 力 を し て い る の か を 見 極 め る こ と が で き な い と す る と 、 企 業 経 営 者 は 自 己 に 不 効 用 を も た ら す よ う な 最 善 の 努 力 を 避 け て 、 怠 け る と い う 行 動 に 出 る か も し れ な い 。 ま た 、 投 資 家 も 、 企 業 経 営 者 の こ の よ う な モ ラ ル ・ ハ ザ ー ド を 予 想 す る と 、 結 局 金 融 取 引 そ の も の が 成 立 し な い と い う 可 能 性 も あ る1 2。 こ の よ う に 情 報 の 不 完 全 性 や 非 対 称 性 が 存 在 す る も と で は 、 企 業 経 営 者 と 投 資 家 と の 間 に 、 利 害 対 立 や 確 執 の 問 題 が 発 生 す る 可 能 性 が あ る 。 そ し て 、 こ れ ら の 問 題 を 解 決 あ る い は 緩 和 し て 、 企 業 経 営 者 に 投 資 家 の 利 害 に 合 致 し た 経 営 を う な が す 仕 組 み を 整 え る こ と が 、 コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス の 問 題 の 原 点 で あ る と 考 え ら れ る 。

上 述 の MM理 論 が 依 拠 す る と こ ろ の 完 全 な 金 融 資 本 市 場 の 重 要 な 含 意 の 一 つ は 、 投 資 家 と 企 業 経 営 者 と の 間 に 情 報 の 非 対 称 性 が 存 在 せ ず 、 企 業 経 営 者 は 投 資 家 の 忠 実 な 代 理 人 と し て 行 動 す る と い う 点 に あ る 。 そ し て 、 こ の よ う な 純 粋 な MM の 世 界 で は 、す で に 述 べ た 通 り 、企 業 の 実 物 サ イ ド と 資 本 サ イ ド の 連 関 性 は 喪 失 さ れ 、 ま た そ も そ も コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス の 問 題 は 分 析 の 埒 外 と な る 。

と こ ろ が 、 本 書 の 分 析 で 明 ら か と な る よ う に 、 情 報 の 非 対 称 性 の 問 題 を 考

1 1 モ ラ ル ・ ハ ザ ー ド と は 元 来 は 、保 険 に 加 入 し て い る 経 済 主 体 が そ う で な い 場 合 に 比 べ て リ ス ク ・ テ イ キ ン グ な 行 動 を と る 傾 向 が あ る こ と を 指 し て 、 保 険 業 界 で 用 い ら れ て い る 用 語 で あ る 。 例 え ば 、 医 療 保 険 の 加 入 者 が 体 調 不 良 で も 無 理 し て 働 く 、 自 動 車 保 険 の 加 入 者 が 乱 暴 な 運 転 を す る 、 預 金 保 険 に 入 っ て い る 銀 行 が リ ス ク・テ イ キ ン グ な 行 動 を と る( 花 崎, 1985)、な ど が あ る 。 リ ス ク に 応 じ て 保 険 料 率 を 変 え る な ど が 、 保 険 の モ ラ ル ・ ハ ザ ー ド の 問 題 の 緩 和 策 で あ る 。Rothschild and Stiglitz(1976) も 参 照 。 ま た 、 モ ラ ル ・ ハ ザ ー ド の 問 題 を 、 非 対 称 情 報 の も と で の 一 般 的 な プ リ ン シ パ ル - エ ー ジ ェ ン ト 関 係 に 拡 張 し て 定 式 化 し た 先 駆 的 業 績 が 、Holmstrom(1979) で あ る 。

1 2 金 融 市 場 に お け る 情 報 の 非 対 称 性 と モ ラ ル・ハ ザ ー ド の 問 題 を 取 り 扱 っ た 理 論 モ デ ル と し て 、Jaffee and Russell (1976)が あ る 。 ま た 、Stiglitz and Weiss(1981) は 、 情 報 の 非 対 称 性 が 存 在 す る 状 況 の な か で 、 利 子 率 が 資 金 の 借 り 手 の 質 を 判 別 す る シ グ ナ ル と し て の 機 能 を 果 た す こ と を 示 し て い る 。 花 崎 ・ 大 瀧 (1984) に よ る サ ー ベ イ も 参 照 。

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慮 に 入 れ る と 、 コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス の 問 題 や 所 要 資 金 の う ち ど の 程 度 を 負 債 で 調 達 す る の が 望 ま し い か と い う 負 債 政 策 (debt policy) は 重 要 な 意 味 を 持 ち 、 ま た 資 金 調 達 の 問 題 と 設 備 投 資 の 問 題 と は 連 関 性 を 回 復 す る 。

3.2 負 債 政 策 と ペ ッ キ ン グ ・ オ ー ダ ー 理 論

前 節 で 述 べ た よ う に 、MM の 第 1 命 題 で は 資 本 構 成 は 企 業 価 値 に 何 ら 影 響 を 及 ぼ さ な い 。 し か し な が ら 、 す で に 脚 注 8 で 触 れ た と お り 、 法 人 税 が 導 入 さ れ る と 事 態 は 変 化 す る 。 前 節 と 同 様 に 、unlevered firm を 下 添 字 1、 ま た levered firm を 下 添 字 2 で 示 す と 、 そ れ ぞ れ の 企 業 価 値 に は 次 の 関 係 が 成 立 す る 。

V2 = V1 + TS2 (13) た だ し 、TS2は 企 業 2 が 用 い る 負 債 が も た ら す タ ッ ク ス ・ シ ー ル ド の 現 在 価 値 で あ る 。

(13)式 の 意 味 す る と こ ろ に よ る と 、 法 人 税 を 支 払 う 必 要 の な い 負 債 に よ る 調 達 は 、 自 己 資 本 に よ る 調 達 に 比 べ て 企 業 価 値 向 上 の 面 で 有 利 で あ り 、 全 額 を 負 債 で 調 達 す る の が 最 適 と な る1 3

し か し な が ら 、 負 債 が 増 加 す る と 、 財 務 危 機 (financial distress) の コ ス ト も 上 昇 し て い く と い う 別 の 効 果 が あ る 。 財 務 危 機 の コ ス ト と は 、 企 業 が 破 産(bankruptcy)し た 場 合 に 直 接 的 に か か る 裁 判 費 用 に 加 え 、清 算 手 続 き や 再 建 手 続 き に か か る 経 営 管 理 上 の コ ス ト 、 さ ら に 財 務 危 機 の 際 に は と り わ け 激 し く な る 債 権 者 と 株 主 と の 間 の 利 害 対 立 あ る い は 債 権 者 間 の 損 失 負 担 調 整 な ど を 反 映 し た コ ス ト な ど が 含 ま れ る 。

負 債 が 増 加 す る こ と に 伴 う 財 務 危 機 コ ス ト の 現 在 価 値 をFDと す る と 、(13) 式 は 次 式 の よ う に 書 き 改 め ら れ る 。

V2 = V1 + TS2 -FD2 (14) (14)式 は 、levered firm の 負 債 増 加 に 起 因 す る タ ッ ク ス ・ シ ー ル ド に よ る 企

1 3 た だ し 、現 実 に は 資 本 課 税 や 企 業 の 収 益 性 ま で 考 慮 す る と 、結 論 は こ の よ う に 単 純 で は な い 。 例 え ば 、 利 子 収 入 に 対 す る 課 税 が 、 配 当 や キ ャ ピ タ ル ゲ イ ン に 対 す る 課 税 に 比 べ て 税 率 等 の 面 で 厳 し い 条 件 で あ れ ば 、 投 資 家 は 企 業 の 負 債 を 保 有 す る こ と を 望 ま な い で あ ろ う 。 ま た 、 利 払 い 額 を 課 税 所 得 か ら 控 除 す る た め に は 企 業 が 利 益 を 計 上 し て い る こ と が 条 件 で あ る か ら 、 赤 字 企 業 に は 負 債 調 達 の 税 制 面 で の メ リ ッ ト は な い 。

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業 価 値 引 き 上 げ 効 果 と 財 務 危 機 コ ス ト に よ る 企 業 価 値 引 き 下 げ 効 果 が 、 ト レ ー ド オ フ の 関 係 に あ る こ と を 示 し て い る 。

そ し て 、 理 論 的 に い え ば 、 タ ッ ク ス ・ シ ー ル ド に よ る 企 業 価 値 引 き 上 げ 効 果 は 負 債 比 率( こ こ で はD/Vで 定 義 )の 1 次 関 数 と し て 表 さ れ る の に 対 し て 、 財 務 危 機 が 企 業 価 値 に 及 ぼ す 負 の 効 果 は 負 債 比 率 が 低 い レ ン ジ で は 微 々 た る も の に と ど ま る も の の 、 同 比 率 が あ る レ ン ジ を 超 え て 高 ま る と 毀 損 効 果 も 逓 増 す る 。そ れ ら の 関 係 を 示 し た の が 、図 序.1 で あ る 。同 図 に お い て 、levered firmの 企 業 価 値 の 曲 線 V2は 、unlevered firmの 企 業 価 値 V1を ベ ー ス と し て 、 タ ッ ク ス ・ シ ー ル ド に よ る プ ラ ス 効 果 と 財 務 危 機 に よ る マ イ ナ ス 効 果 の 複 合 効 果 の 帰 結 と し て 描 か れ 、 両 者 の 相 対 関 係 か ら 企 業 価 値 を 最 大 化 す る 最 適 資 本 構 成 (optimal capital structure) が 求 め ら れ る 。

最 適 資 本 構 成 の 理 論 に よ る と 、 安 全 性 の 高 い 優 良 固 定 資 産 を 多 く 保 有 し 収 益 性 が 高 く し た が っ て 課 税 所 得 が 多 い 企 業 は 、 税 制 面 で の メ リ ッ ト を 活 用 す る た め に 高 い 負 債 比 率 を 選 択 し 、 一 方 リ ス キ ー な 無 形 固 定 資 産 に 頼 り 収 益 性 も 低 い よ う な 企 業 は 、 負 債 比 率 を 低 く 保 つ の が 合 理 的 で あ る 。

し か し な が ら 、 現 実 は ど う で あ ろ う か 。 む し ろ 逆 に 、 優 良 企 業 は 負 債 を あ ま り 保 有 せ ず 、 リ ス キ ー で 収 益 性 の 低 い 企 業 は 負 債 に 多 く を 依 存 し て い る よ う に 思 わ れ る 。 こ の 一 見 パ ラ ド キ シ カ ル な 現 象 を 説 明 す る 仮 説 が 、 次 に 説 明 す る ペ ッ キ ン グ ・ オ ー ダ ー (pecking order) 理 論 で あ る1 4。 同 理 論 は 、 一 般 的 に 企 業 は 、 内 部 資 金 調 達 を 最 も 選 好 す る 。 次 に 、 も し 外 部 資 金 が 必 要 で あ る と す れ ば 、株 式 よ り も 負 債 を 優 先 す る と い う の で あ る1 5。同 理 論 に よ る と 、 収 益 性 が 低 い 企 業 が 負 債 を 多 く 抱 え て い る の は 、 内 部 資 金 が 不 足 気 味 で あ る う え に 、 負 債 が 内 部 資 金 の 次 に 優 先 度 の 高 い 資 金 源 で あ る か ら で あ る 。

ペ ッ キ ン グ ・ オ ー ダ ー 理 論 が 成 り 立 つ 背 景 に は 、 企 業 経 営 者 が 外 部 投 資 家 よ り も 自 社 に 関 す る 情 報 面 で の 優 位 性 を 持 っ て い る と い う 情 報 の 非 対 称 性 の 存 在 が あ る 。 そ の 理 由 は 、 次 の 通 り で あ る 。

ま ず 、 企 業 経 営 者 は 自 社 の 株 価 が 低 す ぎ る と 信 じ る 場 合 に は 株 式 の 発 行 を 躊 躇 し 、 自 社 株 式 が 適 正 に 値 付 け さ れ て い る か 適 正 よ り も 高 値 で あ る と 思 っ

1 4 ペ ッ キ ン グ・オ ー ダ ー 理 論 の 詳 し い 解 説 は 、Myers(1984)お よ び Brealey and Myers(2003) の Chapter 18 を 参 照 。

1 5 も う 少 し 細 か く 言 え ば 、負 債 と 株 式 の 間 に 転 換 社 債 の よ う な ハ イ ブ リ ッ ド

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た 場 合 の み に 、 新 株 を 発 行 す る 。 一 方 、 投 資 家 は 企 業 経 営 者 の こ の 属 性 を 理 解 し て い る た め に 、 株 式 発 行 は 悪 い ニ ュ ー ス で あ る と 解 釈 す る 。 こ の 両 者 の 関 係 に よ り 、 株 式 発 行 が ア ナ ウ ン ス さ れ る と 株 価 低 下 が 往 々 に し て 起 こ り や す い の で あ る 。

こ の よ う な 条 件 の も と で は 、 外 部 資 金 調 達 を 必 要 と す る 企 業 経 営 者 に と っ て 、 負 債 は 株 式 よ り も 選 好 さ れ る 。 な ぜ な ら ば 、 自 社 の 株 価 が 割 安 で あ る と 信 じ る 楽 天 的 な 経 営 者 は 、 そ の 割 安 な 株 価 の も と で 新 株 を 発 行 す る こ と は ば か げ て い る と 判 断 し 、 負 債 発 行 を 選 択 す る で あ ろ う1 6。 逆 に 、 自 社 の 株 価 が 割 高 で あ る と 信 じ る 悲 観 的 な 経 営 者 は 、 新 株 発 行 が 得 策 で あ る と 思 う か も し れ な い 。 し か し な が ら 、 合 理 的 な 思 考 を す る 投 資 家 は 、 そ の 企 業 が 新 株 を 発 行 し よ う と す る の は 、 企 業 経 営 者 が 株 価 を 割 高 で あ る と 信 じ て い る か ら だ と 考 え る で あ ろ う 。そ う で あ れ ば 、割 高 な 株 価 の も と で の 新 株 発 行 は 実 現 せ ず 、 株 価 は 下 落 す る こ と に な る 。 こ の よ う な メ カ ニ ズ ム を 理 解 す る 賢 い 悲 観 的 な 経 営 者 は 、 た と え 現 下 の 株 価 で の 新 株 発 行 が 有 利 だ と し て も 、 楽 天 的 な 経 営 者 と 同 様 に 負 債 発 行 を 選 ぶ で あ ろ う 。

ペ ッ キ ン グ・オ ー ダ ー 理 論 は 、情 報 の 非 対 称 性 の 問 題 が 存 在 す る も と で は 、 負 債 に よ る 調 達 が 株 式 に よ る 調 達 よ り も 優 先 さ れ る こ と 、 株 式 に よ る 調 達 が 実 現 す る の は 、 多 額 の 負 債 に よ る 調 達 が す で に な さ れ 、 財 務 危 機 の リ ス ク が 高 ま っ た な ど の 理 由 で そ れ 以 上 の 負 債 に よ る 調 達 が 不 可 能 と な っ た 場 合 に 限 ら れ る こ と を 、 そ れ ぞ れ 示 し て い る1 7

ペ ッ キ ン グ ・ オ ー ダ ー 理 論 は 、 企 業 金 融 に 関 す る 現 実 の 事 象 を す べ て 説 明 し て い る わ け で は な い 。 む し ろ 、 負 債 に よ る 資 金 調 達 が 容 易 な 優 良 企 業 が 、 新 株 を 発 行 し て 資 金 を 調 達 す る ケ ー ス は 多 々 あ る 。 し か し な が ら 、 情 報 の 非 型 証 券 が 位 置 す る こ と も 指 摘 さ れ て い る 。

1 6 な お 、企 業 経 営 者 が 投 資 家 に 現 下 の 株 価 が 割 安 で あ り 適 正 価 格 は も っ と 高 い こ と を 理 解 さ せ る た め に は 、 新 技 術 や 新 製 品 あ る い は マ ー ケ テ ィ ン グ 戦 略 な ど に 関 す る 内 部 情 報 を 開 示 す る 必 要 が あ り 、 コ ス ト が か か り か つ 同 業 他 社 と の 競 争 が 不 利 に な る な ど の 問 題 が あ り 、 現 実 的 で は な い 。

1 7 ペ ッ キ ン グ ・ オ ー ダ ー 理 論 に 類 似 の 考 え 方 と し て 、フ ァ イ ナ ン シ ン グ ・ ヒ エ ラ ル キ ー (f i n a n c i n g h i e r a r c h y) 理 論 が あ る (F a z z a r i , H u b b a r d a n d P e t e r s e n , 1 9 8 8)。こ れ は 、設 備 投 資 の 各 種 フ ァ イ ナ ン ス 手 段 に 関 し て 、各 手 段 の コ ス ト の 順 番 で 調 達 が な さ れ る と い う も の で あ る 。 具 体 的 に は 、 ま ず コ ス ト の 最 も 低 い 内 部 資 金 で 調 達 が な さ れ そ れ を 使 い 切 る と 負 債 に よ る 調 達 、 さ ら に そ れ で も 不 足 す る と 新 株 発 行 に よ る 調 達 が な さ れ る と い う も の で あ る 。

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対 称 性 に 基 づ く ペ ッ キ ン グ ・ オ ー ダ ー 理 論 は 、MM 理 論 や 最 適 資 本 構 成 の 理 論 に 情 報 に 関 す る 問 題 を 組 み 入 れ る と 結 論 が か な り の 修 正 を 余 儀 な く さ れ る こ と を 明 ら か に し て い る 。

3.3 金 融 シ ス テ ム の 重 要 性

MM 理 論 が 前 提 と す る 完 全 な 金 融 資 本 市 場 で は 、 金 融 シ ス テ ム 上 の い か な る 制 約 も 存 在 せ ず 、 株 式 市 場 と 負 債 市 場 が 常 に 有 効 に 機 能 し て い る こ と が 想 定 さ れ て い る 。 つ ま り 、 企 業 は い つ で も 新 株 や 社 債 を 発 行 す る こ と が 可 能 で あ り 、 投 資 家 は そ れ ら を 適 正 な 市 場 価 格 で 自 由 に 売 買 す る こ と が で き る 。 し か し な が ら 、 現 実 の 世 界 に は 、 そ の よ う な 理 想 的 な 金 融 資 本 市 場 は 存 在 し な い 。 多 く の 発 展 途 上 国 で は 、 社 債 や 株 式 な ど の 資 本 市 場 は 有 効 に 機 能 し て い る わ け で は な く 、 企 業 の 資 金 調 達 手 段 と し て は 銀 行 借 入 が 主 流 で あ る 。 そ の こ と は 、企 業 と 投 資 家 と の 間 に 金 融 仲 介 機 関 が 存 在 す る こ と を 意 味 す る 。 ま た 、 戦 後 の 高 度 成 長 期 の 日 本 に お い て も 、 金 融 仲 介 機 関 に 依 存 す る 間 接 金 融 が 主 体 で あ り 、 資 本 市 場 が か な り の 程 度 機 能 し て い る と い わ れ て い る ア メ リ カ な ど に お い て も 、 中 小 企 業 や 零 細 企 業 向 け に は 地 域 の 銀 行 が 主 た る 役 割 を 果 た し て い る 。

金 融 シ ス テ ム の 理 念 型 と し て は 、 資 本 市 場 中 心 の 金 融 シ ス テ ム (capital market-based system)と 銀 行 中 心 の 金 融 シ ス テ ム(bank-centered financial system) と が あ る 。 そ し て 、 各 国 あ る い は 各 時 代 の 実 際 の 金 融 シ ス テ ム は 、 両 者 の 間 の ど こ か に 位 置 し て い る と 考 え ら れ る 。 金 融 シ ス テ ム を 規 定 す る 要 素 あ る い は 金 融 シ ス テ ム に 影 響 を 及 ぼ す 要 素 と し て は 、 資 本 主 義 か 社 会 主 義 か と い う 国 家 体 制 の 問 題 が か か わ っ て い る の は 言 う ま で も な い が 、 資 本 主 義 諸 国 に お い て も 銀 行 業 務 と 証 券 業 務 と の 兼 営 が 認 め ら れ て い る か 否 か と い っ た 規 制 や 制 度 的 要 素 に 加 え 、 日 本 の 系 列 お よ び メ イ ン バ ン ク ・ シ ス テ ム や 東 ア ジ ア の 家 族 支 配 型 企 業 な ど の よ う に 経 済 主 体 の 自 律 的 な 行 動 の 結 果 と し て 、 金 融 シ ス テ ム の 特 徴 が 形 作 ら れ て い る 側 面 も 指 摘 で き る 。

本 書 の 主 題 で あ る 企 業 金 融 に 対 し て 、 金 融 シ ス テ ム の 違 い が 及 ぼ す 影 響 は 株 式 、 社 債 、 借 入 金 と い う 資 金 ソ ー ス の 違 い に と ど ま ら な い 。 日 本 に お け る 銀 行 危 機 や ア ジ ア 危 機 な ど の 際 に 実 際 に 懸 念 さ れ て い た よ う に 、 金 融 の 機 能 自 体 が 不 全 状 態 に 陥 り 、 設 備 投 資 行 動 な ど の 企 業 活 動 に 影 響 を 及 ぼ す 可 能 性

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も あ る 。

ま た 、 コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス の 問 題 を 、 企 業 に 対 す る 資 金 の 出 し 手 が そ の 資 金 に 見 合 う 適 正 な 収 益 を 確 保 す る 仕 組 み で あ る と 理 解 す れ ば 、 主 た る 資 金 の 出 し 手 が 一 般 投 資 家 で あ る か 、 銀 行 で あ る か 、 企 業 グ ル ー プ な い し は そ れ を 実 質 的 に 支 配 す る 家 族 で あ る の か に よ っ て 、 コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス の 具 体 的 な メ カ ニ ズ ム に 違 い が 生 じ る 。 さ ら に 、 株 主 や 債 権 者 と い っ た 投 資 家 の 権 利 が 、 法 律 や 規 則 に よ っ て ど の 程 度 保 護 さ れ て い る の か 、 あ る い は そ の よ う な 法 規 が ど の 程 度 の 強 制 力 を 有 し て い る の か な ど も 、 コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス の 機 能 や 企 業 金 融 動 向 に 無 視 し 得 な い 影 響 を 及 ぼ す と 考 え ら れ る 。 こ の よ う に 金 融 シ ス テ ム や そ れ に 関 連 す る 法 規 や 制 度 の 分 析 は 、 企 業 金 融 の 問 題 を 考 察 す る 際 に 避 け て は 通 れ な い 重 要 な 課 題 で あ る 。

3.4 情 報 、 制 度 、 イ ン セ ン テ ィ ブ

本 書 で は 、MM 理 論 や そ の 発 展 形 態 と し て の 最 適 資 本 構 成 の 理 論 で は 陽 表 的 に は 取 り 扱 わ れ て い な い 情 報 の 不 完 全 性 と 非 対 称 性 の 問 題 お よ び 金 融 シ ス テ ム な ど の 制 度 的 な 観 点 を 考 慮 に 入 れ な が ら 、 企 業 金 融 お よ び コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス に 関 す る 諸 問 題 を 理 論 と 実 証 の 両 面 か ら 考 察 す る 。

不 完 全 情 報 や 非 対 称 情 報 の も と で 、 資 源 の 異 時 点 間 配 分 機 能 を 伴 う 金 融 取 引 が な さ れ る と 、 取 引 主 体 間 で 利 害 対 立 の 問 題 や モ ラ ル ・ ハ ザ ー ド の 問 題 が 発 生 し や す い こ と は す で に 指 摘 し た 。そ の よ う な 問 題 を 緩 和 あ る い は 解 決 し 、 金 融 取 引 の 結 果 と し て の 果 実 を 豊 か な も の と す る た め に は 、 経 済 主 体 の 行 動 を 望 ま し い 方 向 に 導 く こ と が で き る よ う な イ ン セ ン テ ィ ブ を 付 与 す る こ と が 重 要 で あ る 。 コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス の 問 題 の 核 心 は 、 最 も 単 純 化 し て い え ば 、 企 業 経 営 者 に 資 金 の 出 し 手 の 利 害 に 合 致 し た 経 営 を さ せ る よ う な イ ン セ ン テ ィ ブ ・ ス キ ー ム を 整 え る こ と で あ る と い う こ と が で き る 。

4 . 本 書 の 構 成 と 各 章 の 要 約

本 書 は 、 企 業 金 融 の 基 礎 理 論 を 概 観 す る と と も に 、 情 報 と 制 度 の 重 要 性 を 指 摘 し た 序 章 に 引 き 続 き 、 全 体 で 6 つ の 章 に よ っ て 構 成 さ れ て い る 。

第 1 章 「 コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス 論 の 系 譜 」 は 、 バ ー リ ー = ミ ー ン ズ の

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本 質 を 捉 え た 指 摘 か ら 始 ま る 。彼 ら は 、20 世 紀 に 入 っ て 企 業 組 織 の 近 代 化 や 大 規 模 化 が 進 展 す る な か で 、 所 有 と 支 配 の 分 離 が 進 ん だ 結 果 、 株 主 と 経 営 者 と の 利 害 不 一 致 の 問 題 が 発 生 し た こ と を 示 唆 し て い た と い う 点 で 、 極 め て 先 見 性 に 富 ん で い た 。 そ し て 、 の ち に エ ー ジ ェ ン シ ー 理 論 や 不 完 備 契 約 の 理 論 に よ っ て モ デ ル 化 さ れ て い っ た こ の よ う な 株 主 と 経 営 者 と の 利 害 対 立 の 問 題 は 、 コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス を 巡 る 議 論 の 出 発 点 と な っ た 。

株 主 利 益 の 最 大 化 を 目 指 す ア メ リ カ 型 の コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス の 具 体 的 な メ カ ニ ズ ム と し て は 、 株 主 に よ る 経 営 者 の モ ニ タ リ ン グ 、 経 営 者 報 酬 な ど の 面 で の イ ン セ ン テ ィ ブ ・ ス キ ー ム の 導 入 、 フ リ ー キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー 問 題 を 緩 和 す る た め の 負 債 に よ る 規 律 づ け 、 委 任 状 争 奪 戦 や 敵 対 的 買 収 な ど の 企 業 コ ン ト ロ ー ル 市 場 の 機 能 を 用 い た 方 法 な ど が あ る 。 し か し な が ら 、 い ず れ の 手 段 を 導 入 し て も 、 情 報 の 不 完 全 性 や 非 対 称 性 の 問 題 を 回 避 す る こ と は 容 易 で は な く 、 株 主 と 経 営 者 と の 間 の エ ー ジ ェ ン シ ー 問 題 は 完 全 に は 解 決 し え な い 。

次 に は 、 株 主 利 益 の 最 大 化 と い う 企 業 行 動 命 題 に 固 執 せ ず に 、 企 業 の 存 在 や 目 的 を よ り 広 く 多 様 に 捉 え る こ と の 重 要 性 が 指 摘 さ れ る 。 と り わ け 、 日 本 に は メ イ ン バ ン ク や 企 業 系 列 シ ス テ ム に 基 づ く ガ バ ナ ン ス な ど 、 ア メ リ カ な ど に は な い ユ ニ ー ク な コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス 構 造 が 存 在 す る 。 ま た 、 東 ア ジ ア 地 域 な ど で は 、 大 企 業 に お い て も 家 族 支 配 型 の も の が 多 く 、 そ の よ う な 企 業 に お い て は 外 部 投 資 家 の 利 益 が そ の 企 業 を 支 配 す る 家 族 に よ っ て 搾 取 さ れ る 恐 れ が あ る 。

最 後 に 、 ス テ イ ク ホ ル ダ ー ・ ソ サ エ テ ィ や 企 業 の 社 会 的 責 任 と い っ た コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス 論 の 新 潮 流 が 紹 介 さ れ る 。 ス テ イ ク ホ ル ダ ー 型 ガ バ ナ ン ス の 考 え 方 は 、 自 己 の 利 益 を 優 先 す る 経 済 主 体 を 前 提 と す る な ら ば 、 理 念 的 に も 現 実 的 に も 矛 盾 を は ら ん で い る と 言 わ ざ る を 得 な い 。 し か し な が ら 、 地 球 環 境 問 題 の 深 刻 化 な ど を 考 慮 す れ ば 、 さ ま ざ ま な ス テ イ ク ホ ル ダ ー の 利 害 を 社 会 的 な 基 準 で 調 整 す る 仕 組 み と し て の ス テ イ ク ホ ル ダ ー ・ ソ サ エ テ ィ の 基 本 理 念 は 、 今 後 の コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス を 巡 る 議 論 の な か で 重 要 性 を 増 す こ と が 予 想 さ れ る 。

第 2 章 「 日 本 の 経 済 発 展 と メ イ ン バ ン ク ・ シ ス テ ム 」 で は 、 日 本 の 銀 行 中 心 の 企 業 金 融 シ ス テ ム が 考 察 対 象 と さ れ る 。 と り わ け 、 メ イ ン バ ン ク ・ シ ス

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テ ム は 、 日 本 の 企 業 金 融 と コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス を 特 徴 づ け る ユ ニ ー ク な 仕 組 み で あ り 、 顧 客 企 業 に 対 す る モ ニ タ リ ン グ 機 能 に よ り 、 メ イ ン バ ン ク は 企 業 の 設 備 投 資 を 円 滑 に フ ァ イ ナ ン ス し 、 日 本 経 済 の 発 展 を 後 押 し し た と の 通 説 が あ る 。 し か し な が ら 、 日 米 仏 3 か 国 の 企 業 デ ー タ を 用 い た 比 較 分 析 に よ る と 、 日 本 企 業 の 設 備 投 資 が 資 金 面 か ら 促 進 さ れ た と の 証 拠 は 検 出 さ れ ず 、 日 本 の メ イ ン バ ン ク ・ シ ス テ ム の 有 効 性 は 従 来 考 え ら れ て い た ほ ど 高 い も の で は な か っ た こ と が う か が わ れ る 。

次 に 、 企 業 規 模 別 に 設 備 投 資 関 数 を 推 計 し て キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー が 及 ぼ す 影 響 を み る と 、 大 企 業 で は キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー 制 約 が ゆ る い の に 対 し て 中 小 企 業 で は き つ い と い う 結 果 が 得 ら れ た 。 ま た 、 長 期 借 入 金 の ア ヴ ェ イ ラ ビ リ テ ィ ー が 設 備 投 資 に 及 ぼ す 影 響 を 計 測 す る と 、 大 企 業 と 中 堅 企 業 で は 有 意 な 結 果 は 得 ら れ て い な い が 、中 小 企 業 に お い て は 、有 意 に プ ラ ス の 効 果 が み ら れ た 。 こ れ ら の 結 果 は 、 信 用 力 に 劣 り 、 内 部 資 金 が 潤 沢 と は い え な い 中 小 企 業 の 一 般 的 な 特 徴 を 反 映 し た も の と 理 解 で き る 。

第 2 章 の 最 後 で は 、 郵 政 民 営 化 や 日 本 政 策 投 資 銀 行 の 民 営 化 な ど の 大 き な 変 革 に さ ら さ れ て い る 公 的 金 融 に 焦 点 を 当 て て い る 。 日 本 政 策 投 資 銀 行 の 前 身 で あ る 日 本 開 発 銀 行 の 融 資 活 動 の 効 果 を 分 析 す る と 、 長 期 の プ ロ ジ ェ ク ト 評 価 を 基 礎 と す る モ ニ タ リ ン グ 機 能 が メ イ ン バ ン ク の そ れ と 相 互 補 完 関 係 に あ る こ と が 実 証 さ れ て い る 。 日 本 政 策 投 資 銀 行 は 、2008年 10 月 か ら 株 式 会 社 化 さ れ て 完 全 民 営 化 へ の 移 行 を は じ め て お り 、 従 来 保 持 し て き た モ ニ タ リ ン グ 機 能 が 民 営 化 後 の 組 織 に お い て も 継 承 さ れ る こ と が 望 ま れ る 。

第 3 章 「 日 本 の 金 融 危 機 と 銀 行 の ガ バ ナ ン ス 問 題 」 で は 、 日 本 の 金 融 機 関 に 目 を 向 け て 、1990 年 代 以 降 の 深 刻 な 金 融 危 機 と そ の 背 景 を 考 察 す る 。

日 本 に お け る 金 融 危 機 の 深 刻 さ は 、現 象 面 で は 90 年 代 後 半 か ら 2000 年 代 初 頭 に か け て の 不 良 債 権 の 累 増 や 金 融 機 関 の 経 営 破 綻 数 の 増 加 に 端 的 に 表 れ て い る 。 そ の 背 景 と し て は 、 バ ブ ル の 生 成 と 崩 壊 と い う マ ク ロ 現 象 が 主 因 で あ る と す る 見 方 や 80 年 代 以 降 の グ ロ ー バ ル な 金 融 危 機 が 日 本 に 波 及 し て き た と い う 見 方 な ど が あ げ ら れ る が 、 本 章 で は 日 本 の 銀 行 業 の コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス の 問 題 に 焦 点 を 当 て て 、 分 析 を 展 開 し て い る 。

日 本 の よ う な 銀 行 中 心 の 金 融 シ ス テ ム に お い て は 、 銀 行 に よ る 顧 客 企 業 モ ニ タ リ ン グ の 重 要 性 に 加 え 、 銀 行 自 体 を 誰 が ど の よ う に モ ニ タ ー し 、 ガ バ ナ

参照

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