• 検索結果がありません。

─同志社大学グローバル・コミュニケーション学部

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "─同志社大学グローバル・コミュニケーション学部"

Copied!
11
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

第一部  研究論文・実践報告

中国語教育における

アクティブラーニングに関する一考察

─同志社大学グローバル・コミュニケーション学部

─同志社大学グローバル・コミュニケーション学部 中国語コースでの試みを中心に─

中国語コースでの試みを中心に─

同志社大学社会学部 嘱託講師  

楊  奕

要約

 アクティブラーニング(Active Learning)とは、学生が主体的かつ能動的に学習に 取り組む学生中心型の学習法である。教科書を中心に学ぶ中国語は、どのようにして 実用的中国語につながるのか。高度な中国語能力は、知識を習得する内化と、発表し たり、議論したりする外化の相互作用によって育成される。本論文は、同志社大学グ ローバル・コミュニケーション学部中国語コースの上級中国語会話授業において、ア クティブラーニングを実質化するための考えとその工夫を考察する。

1.はじめに

 近年、科学技術、国際政治情勢、経済の格差、少子高齢化などによる社会の急速な 変化を背景に、大学教育の質的転換が迫られている。従来の受動的な教育を改め、学 生の主体的かつ能動的な学習に重点を据える教育、いわゆる、知識伝達型教育から知 識構成型学習へのパラダイムの転換が求められている。それを実践するための一つの 教育法として、アクティブラーニングが注目を集めている。

 もともと高等教育の大衆化とそれによる学生の学習動機、ニーズの多様化を要因と して、アメリカに端を発するアクティブラーニングは、1970年代から80年代にかけて 日本の教育にも導入され、そして90年代以後、初等・中等教育を主にしながらも高等 教育をも視野に入れた研究、実践が行われ始めた。さらに2000年代に入ると主に高等 教育の分野で盛んに行われるようになったのである。

 しかし、ここ10年間、アクティブラーニングに関する研究と実践が進められてきて いるものの、その概念自体は必ずしも明白に定着しておらず、それに関する理論的枠

(2)

組み、研究手法も確立されているとは言えない。にもかかわらず、アクティブラーニ ングを大学教育の一つの方向性として推進すべきという認識は、教育関係者の間で広 く共有されており、その方針が文部科学省の答申にも反映されている。

 2012年中央教育審議会で出された答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転 換に向けて−生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学」では、アクティブラー ニングを「教員による一方的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修へ の参加を取り入れた教授・学習法の総称」であると定義づけ、このような学修によっ て、学修者の「認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力 の育成を図る」ことを目的とし、「発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習など」

以外、「教室内のグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワークなど」

による学習も取り入れるとされている。つまり、こういった汎用的能力を育成するた めには、従来のような知識の注入・伝達という受動的な学習から脱却し、教員と学習 者または学習者同士による双方向型の教育と学習が不可欠であることが明確に示され ている。

 また言語学習に関しては、答申では、「生み出した新たな価値を異なる文化的・言 語的背景をもつ人々に発信し、海外において積極的、持続的な展開と浸透を図る」と 言語能力の重要性と必要性を強調している。そうした状況のもと、言語学習にどのよ うなアクティブラーニングを活用すればよいかが、言語教育の大きな課題となってい る。本稿は、同志社大学グローバル・コミュニケーション中国語コース(以下、同志 社大学GC中国語コースと略す)で、中国語を専門とする学生を対象に行った上級中国 語会話の授業を中心に、アクティブラーニングを実質化するための考えとその工夫を 考察する。

2.中国語学習におけるアクティブラーニングの研究状況

 大学教育の全科目にアクティブラーニングが取り入れられている中で、言語学習分 野での研究も進められてきている。しかし、英語学習に比べて、中国語学習における アクティブラーニングに関する技法の実践例や効果のある教授法についての研究蓄積 は少なく、未だに初歩的な段階にあると言わざるを得ない。その理由として、大学入 学後に初めて中国語に触れる学習者が多くいること、発音、音読練習による指導に多 くの時間が費やされ、その結果、学習が終わる段階では、話す目標までに到達できな いこと、入門・初級段階では、中国語の知識が不足しているため、アクティブラーニ

(3)

第一部  研究論文・実践報告 ング中心に授業を組み立てられないこと、などが指摘されている(趙菁2015;寺西光

輝2015)。それらに加えて、特に教養科目としての外国語学習は、入門段階の履修を 終えた後、中級や上級に進めて勉強する学生がそれほど多くないことから、アクティ ブラーニングの中核である議論、ディスカッション、プロジェクト学習まで取り組め ないことも考えられる。

 数多くの課題を抱えている中、中国語学習におけるアクティブラーニングの有効性 も論証されている。社会文化的アプローチという立場から、保育に必要な中国語のマ ニュアル作成というプロジェクトを通して、仲間と協働したり、留学生と交流したり する社会的実践としての中国語学習の可能性が示された(寺西光輝2015)。藺梅(2016)

は、グループ学習を取り入れたクラスを従来の講義型のクラスの成績と比較し、グルー プ学習を中心に行ったクラスは平均値がやや高いことを述べた。

 しかしそれらの研究は、主に教養科目としての中国語のあり方を試みたものである が、中国語を専門とする学生のアクティブラーニングの学習形態に関する研究はまだ 見あたらない。実際、教養科目の中国語学習と異なり、深い専門性、幅広い知識と 高度な中国語能力の習得を目標とする中国語コースでは、より実践可能なアクティブ ラーニングの授業形態が求められている。さらに、中国語能力の向上につながる、専 門中国語にも活用可能なアクティブラーニング型学習法の確立、その学習法に関する 研究も求められている。

3.アクティブラーニングの授業形態構造

3.1 アクティブラーニングの特徴

 溝上はアクティブラーニングを以下のように定義している。「一方向的な知識伝達 型講義を聴くという「受動的」学習を乗り越える意味での、あらゆる能動的な学習の こと。能動的な学習には、書く・話す・発表するなどの活動への関与と、そこで生じ る認知プロセスの外化を伴う」(溝上 2016:7)。

 この定義にしたがって、アクティブラーニングは主に三つの特徴があると考えられ る。その一は、能動的である。講義を聴くにしても、活動への関与にしても、受動的 ではなく、能動的に関わらなければならない。この能動的という特徴は従来の学習型 と大きく異なる点であることを指摘できる。その二は、双方向性である。それは教師 と学習者、学習者同士の間に生じる学び、学ばれるという相互関係を重視する教授学 習の姿勢である。つまり、一方通行のような教えでは、学習者の能動性を喚起しにくく、

(4)

共に高めあいかつ刺激しあう効果は期待できないため、そのような行き来する方法と して、学習における他者との相互作用が求められるのである。その三は、認知プロセ スの外化を伴う活動があげられる。ここでいう認知プロセスとは、「知覚・記憶・言語・

思考(論理的/批判的/創造的思考、推論、判断、意思決定、問題解決など)といっ た心的表象としての情報処理プロセスのこと」と溝上(2016:106)はいう。一度習 得した知識は、書く・話す・発表するといった活動を通して外に現すものとして可視 化され、深められるものになる。

 このように、アクティブラーニングはこの三つの特徴を有する学習形態として、従 来の知識伝達講義型と峻別する。溝上は、思考を伴わない受動的に講義を聴くという 行為に反対するが、講義を聴くという行為自体には反対していないように思われる。

それは、あらゆる認知プロセスの外化が、知識を習得するという内化のプロセスなし には起ってこないと思われるからである。

 松下は、エンゲストロームが述べた六つの学習ステップを援用し、その中にある内 化と外化に注目し、アクティブラーニングにおける両者の相互関係を次のように説い ている。「外化の内化がうまく機能しないのと同じように、内化のない外化もうまく 機能しない。内化なき外化は盲目であり、外化なき内化は空虚である」(松下 2015:9)。

これは、内化と外化がお互いに関係しあうことを意味している。つまり、われわれは ある問題に直面する際に、その問題に関する知識や基礎を習得しておかなければ、そ の問題を解決できるとは到底考えられない。一方、たくさんの知識をもっていても、

問題解決に役に立てなければ、その知識は無に等しいに違いない。内化と外化は、学 習に必要なプロセスで、両者の相互作用が能動的な学習を促進するだけではなく、知 識の見直し、構成そして再構成にも役立つのである。

 したがって、知識獲得を主とする講義型授業(内化)と、ディスカッション、グルー プ学習、ディベートなどを取り入れる活動中心の学習型授業(外化)とを統合させる ことが、アクティブラーニング型授業の一形態と見なすことができよう。しかし、こ のアクティブラーニングにおいて、この内化と外化をどう組み合わせるかが課題とな る。

3.2 アクティブラーニングの技法

 溝上はアクティブラーニング型授業の技法と戦略を三つに分類して、表1のように まとめている。

(5)

第一部  研究論文・実践報告 表1 アクティブラーニング型授業の技法と戦略

タイプ タイプ1 タイプ2 タイプ3

学習形態 能動的学習 能動的学習 能動的学習

主導形態 教員主導・講義中心型 教員主導・講義中心型 学生主導型 伝統的講義に対する

戦略性 低 中〜高 高

技法・戦略

コメントシート 宿題(予習/演習)

小テスト

ディスカッション プレゼンテーション 体験学習

ディベート

PBL、プロジェク学習、

協同学習など

  (溝上2016:71抜粋)

 表1で示されたように、教員主導・講義中心型の授業でも、学生の能動的学習を促し、

双方向性の働きによる活動の外化が行われれば、アクティブラーニングの学習形態と 見なすことができる。ただし、伝統的または受動的講義に対する戦略性という点から みれば、タイプ1、タイプ2、タイプ3が求めるアクティブラーニングのレベルが異 なることも分かる。知識の確認とその確かな定着を目的とするタイプ1、定着された 知識が応用できることを目的とするタイプ2、そして、学生が主導となって、問題解 決に取り組むことを目的とするタイプ3には、それぞれの目的に対応できるアクティ ブラーニングの技法が要請される。河合塾編(2011)は、知識の定着・確認を目的と するアクティブラーニングを「一般的アクティブラーニング」とし、専門知識を確認 し課題解決を目的とするものを「高次のアクティブラーニング」とした。したがって、

タイプ1、タイプ2を「一般的アクティブラーニング」、そして、タイプ3を「高次 のアクティブラーニング」と称することができる。ただし、学生主導型、つまり、教 師がまったく介しない学生同士が自ら行う高次のアクティブラーニングは、他の科目 で実現可能性が高いかもしれないが、言語学習の場合、高い語学水準まで達していな ければ、完全に学生主導型で行うのは困難であるように思われる。というのは、同じ 言葉、表現でも、違う文脈になれば、その意味が変わることもあるし、時には言葉や 表現を変えなければならないこともあるからである。その文脈に沿った形で言葉や表 現の違いを明白に解釈しないと、学生の間違った理解を招きかねない。そういう意味 で、言語学習における教師の指導は、異なる段階において程度の差はあるものの、不 可欠であると思われる。この立場から、タイプ3は学生主導型と講義型の組み合わせ であると考えたい。

 したがって、言語学習におけるアクティブラーニングの種類とその技法を筆者が担 当する上級会話科目と照らし合わせて、以下の表2のように再分類した。

(6)

表2 中国語上級会話におけるアクティブラーニングの技法概要と分類

レベル レベル1 レベル2 レベル3

学習形態 一般的アクティブラーニング 一般的アクティブラーニング 高次のアクティブラーニング 主導形態 教員主導・講義中心型 教員主導・講義型 学生主導・講義型

技法の 概要

テキストに基づいて、語彙、

フレーズ、表現、文型など基 礎知識の説明と解説 テキストの内容に関連した 質問を学生同士で話し合う 宿題(予習、復習)

小テストによる知識の定着 の確認

テキストに基づいて、習得 した語彙、フレーズ、文型に よる会話の作成

学生の会話に基づいて、デ ィスカッションする プレゼンテーション

あるテーマに対して、賛成 派と反対派に分けて、それ ぞれの論点をもとに、ディ ベートする。そこで、ディベ ートに関する様々な技法の 基礎を学習する。例えば、論 点の提示、論理的に展開す る方法、反論の仕方など

 このようなアクティブラーニングは、会話を履修する異なるレベルの受講生に対応 できると思われる。それぞれのレベルには、内化と外化が組み込まれ、内化と外化の 双方向的な働きも見受けられる。つまり、基本的、基礎的知識の確かな習得を基にし ながら、グループ作業による外化の活動を行い、知識の正確さを常に確認する(言葉、

表現、文法を正確に使っているか、会話らしい会話になっているか、会話に違和感が あるかどうかなど)。この方法は、深い知識の内化と外化につながると考えられる。

いわゆる、一旦内化された知識は、外化の活動によって再修正、再構成することで、

内化の深化を促進する。一方、外化の結果が再び内化に確認されることで、その外化 も深まっていく。

4.GC中国語コースでの取り組み

4.1 中国語上級会話の到達目標

 筆者は2017年度秋学期、同志社大学GC中国語コースで上級中国語会話を担当してい る。「中国語の総合的運用能力をより高度な会話が支障なくできる能力を育成するこ とによって、さらに向上させる」という目標をいかにして達成できるのかを、上述し たアクティブラーニングの授業形態をもとに、その効果を試みる。

 上級中国語会話は、週に1回半年間の授業で、22名が履修している(そのうち、三 回生が20名、四回生が2名)。全員が一年の留学経験をもち、漢語水平考試(HSK)

6級に合格した。漢語水平考試は中国教育部が認定する国際的な中国語語学の検定試 験である。レベル6級はこの試験の最高水準で、「中国語の音声情報や文字情報を不 自由なく理解することができ、自分の意見や見解を流暢な中国語で口頭または書面に

(7)

第一部  研究論文・実践報告 て表現することができる」とされている。この評価基準によれば、学生の水準はかな

り高いと思われるが、しかし、筆記試験で高い点数を取ったからといって、流暢な中 国語で自分の意見を発表し、他人の意見に反論することができるとは限らない。実際、

学生の会話レベルを確認するため、最初の講義で、「留学中に印象に残ったこと」をテー マに発表させた。その結果、自分が使い慣れた言葉や表現なら正確に使うことができ たこと、一つの出来事を最初から最後まで不自然なく話せたことなどが確認できた。

一方、言い回しや変化のある表現が少ないこと、自分の知らない話題になると、その 意味を把握できないこと、発表者の話しに基づく表現を変えた筆者の質問に答えられ ないことなども見られた。

 そこで、上級中国語会話が目指す支障なく高度な会話ができる総合的運用能力の育 成という目標を、学生のレベル、そして、表2で考案したアクティブラーニング型授 業と照らし合わせ、より具体的に3つの到達目標を設定した。

 到達目標1は、教員中心の講義型でテキストの内容を確実に把握することを目指す。

それはレベル1の取り組み、つまり、教員による語彙、表現などの説明を中心に行わ れることや小テストによる知識の定着によって達成される。到達目標2は、教員主導・

学生参加による形式で、習得した文型を用いて、学生が自由に会話できることを目指 す。それはレベル2の取り組み、つまり、作成した会話に基づいて、学生同士のディ スカッションなどの活動によって達成される。到達目標3は、学生主導・教員補助の 形式で高度な会話能力の育成を目指す。それはレベル3の取り組み、つまり、テキス トに関連する一つのテーマを取り上げ、賛成派と反対派に分けて、それぞれの論点を もとにディベートすることによって達成される。このように、それぞれのレベルでの 異なる取り組みを着実に行うことで、上級中国語会話の目標である支障なく高度な会 話ができる総合的運用能力の育成につなげると考えられる。

4.2 アクティブラーニングの実践方法

 上級中国語会話は、『準高級漢語口語(上)』(北京大学出版社)の教科書を使用し、

十のテーマから「工作」(仕事)、「回家」(故郷に帰る)、「宠物」(ペット)、「饮食」

(食文化)、「爱情」(恋)の五つを選んで、1課ごと3講時を使って全15回で行われる。

以下では、3回の授業構成を「仕事」を例にして説明する。

 一回目の時間では、テキストを中心に単語、文法、文型を説明する。その解説が知 識の内化に必要なステップであり、仕事に関する独特の表現、熟語、ことわざが学習 できる。テキストの内容に関連した質問を学生同士にさせることで、その内容はしっ

(8)

かり理解しているかどうかを把握する。また、練習問題で習得した知識を確認し、そ の知識を再考する時間を持たせる。

 二回目の時間では、前回の学習成果を再確認させる。そのため、同じ状況下の会話

(「仕事」をテーマに)を作成させる。その時、注意しなければならないのは、必ずテ キストで学んだ言葉、文法、文型を用いた構文を会話に入れることである。同じテー マであっても、文脈が変わると同じ表現や言葉を使えなくなることがしばしばある。

その違いを学生にディスカッションさせることによって、文脈と言葉、表現の関連性 を自覚させる。

 三回目の時間では、「仕事」に関するディベートを行う、そこで総合的な運用能力 が要求される。「好きこそ物の上手なれ」を題に、人間は好きなものに対して一生懸 命努力するので、仕事を選ぶ時、好きであるかどうかは絶対条件にすべきという賛成 派の意見と、絶対条件ではなく、仕事をやっている中で、好きになることも多くある ため、最初から枠を作って仕事を選ぶべきではないという反対派に分けて、どの派に 属するかは自分の主張で決めて、ディベートグループを作る。よいディベートをする ためには、論理性、技法やスキールが欠かせない。論点の提示の仕方、まとめて簡潔 に相手に伝える方法、相手を論破する、反論する方法などを学ばなければいい議論に はならない。また、ディベートには聞く力も重要である。聞き取れなければ、議論も 進めない。故に、聞き手も話し手も分かりやすく相手に伝えることを常に意識しなけ ればならない。また、ディベートの中に、学生の思考を活性化する説明、解説、補充 が必要で、例えば、論点を外れたとき、「相手がそれを例にする意味は何か」、「論拠 を支えるための材料は」など自分そして相手の考えを再び整理させたり、話が行き詰 まったとき、その話の中から新しい要素、見方を発見させたりして、学生の思考を活 性化するための工夫を凝らす。

 会話の授業は主に会話を中心に取り組まなければならない。それと同時に、会話能 力の向上に役立つような語彙、フレーズ、表現、文型などの基礎も確実に習得させる 必要がある。会話ができればいいのではなく、筋立てて、論理性のある、どのような 場面にも対応できる豊かな表現を用いる会話能力が、中国語専攻の学生に求められる であろう。それこそが高度な会話ができる総合的運用能力を意味するのではないかと 思われる。

4.3 アクティブラーニングの学習成果

 半年の授業で初めて取り入れたアクティブラーニングは、すぐに結果が出せたもの

(9)

第一部  研究論文・実践報告 ではないが、今後の授業改善の参考材料として、授業の最後に無記名の自由記述形式

でこの授業方式に関するアンケート調査を行った。「今後もこのような授業をもっと 取り入れてほしいか」という質問に、20名(2名欠席)の中15名が取り入れてほしい と答えた。これは言い換えれば、アクティブラーニングの有効性を示していると思わ れる。以下は、「講義型に関する意見」、「ディベートの部分に関する意見」、「このよ うな授業は自分の中国語レベルの向上につながったか」という三つの質問に対する学 生の回答である。

(1)講義型に関する意見

・  教科書についての説明が詳しくて役に立った。使い方なども言語を学ぶには不可欠 な部分だと思う。

・  教科書の文法、文型を例文に合わせて教えてくれて、実際の日常生活での使用法を 容易にイメージできた。

・  テキストには日常生活などで使えそうな語がたくさんあって、これを使って文を作 るという練習は役に立ったと思った。

・  教科書の内容をきちんと講義してくれたおかげで、教科書内で使われている文法や 語彙の使い方を理解することができた。

・  新出単語や文法を例で説明してくれたため、後のディスカッションや会話練習の時 により理解が深まった。

(2)ディスカッションやディベートに関する意見

・ 一人一人がテーマに沿った意見を言い合って学ぶ点においてよい方式だと思った。

・ ティベートの授業では、グループ内で話し合う時間を作ってもらえたのでよかった。

・  ディスカッションの部分で学んだことをアウトプットできたので、よかった。ディ ベートでは難しい内容もあり、発言できないこともあったが、良い学習だったと思 う。

・  対話、議論する中で自分の意見を述べ、かつテンポよく中国語をアウトプットする 練習は大切だと思う。

・  自分だけではなく、他人の意見も参考になり、より客観的にものについての思考力 を身につけたと思う。

(3)このような授業は自分の中国語レベルの向上につながったか。

・  講義形式の部分で語彙や文型の知識を入れ、発言や発表でそれを使うことによって 使えるようになり、力がついたと思う。

(10)

・  つながったと思う。特に、論理性/話す勇気など。今までの講義型の授業だけでは 身に付けられなかったものを身につけることができたと思う。

・  ディベート演習は聞く力、話す力と共に、論理性まで養われた、とてもよい演習だっ たと思います。

・  インプット、アウトプットの機会がまんべんなくあり、つながったと思う。

・  語彙、文法などの知識が増えた。より自然な会話能力も向上できたと特に思う。

・  つながったと思います。より実用的に中国語を使えたと思います。

5.おわりに

 新時代の急速な変化に対応できる人材の育成は、これからの大学教育に課せられた 大きな課題の一つであると思われる。そのため、従来の知識伝達講義型から知識構成 学習型への転換を余儀なくされている。学生の能動的な学習を促進するようなアク ティブラーニングはこれからの時代の趨勢になり、ますます重要視されていくであろ う。

 そうした背景のもと、実践可能かつ効果的なアクティブラーニングが求められてい る。中国語学習におけるアクティブラーニングは確かな知識の習得という内化を重ん じながら、その内化された知識を外化する活動も視野に入れている。講義型と学生主 導型の組み合わせによるこの方法について、学生が肯定的に評価していることは調査 の結果にも示されている。しかし、この実践は十分な成果が出せたとは言えない。な かには、話したがらない学生の能動性をどう喚起させるか、また、学生の個性に対応 する多様なアクティブラーニングをどう構成するかなど多くの課題が残されている。

今回のこの初歩的な研究に引き続き、今後は教授学習を促す更なる創意工夫と実践方 法を探っていきたい。

文献

松下佳代・京都大学高等教育研究開発推進センター編著,  2015,『ディープ・アクティブラー ニング』勁草書房.

溝上慎一, 2016,『アクティブラーニングと教授学習パラダイムの転換』東信堂.

河合塾(編),  2011,『アクティブラーニングでなぜ学生が成長するのか──経済系・工学系の 全国大学調査から見えてきたこと』東信堂.

(11)

第一部  研究論文・実践報告 寺西光輝,  2015,「中国語入門教育におけるアクティブ・ラーニングの可能性――中国人留学

生をTAとして活用したマニュアル作りの実践――」8:193-206.

藺梅, 2016,「中国語の授業に取り組むアクティブ・ラーニングの試み」29(1):109-116.

趙菁,  2015,「アクティブ・ラーニングの実践における反転的授業の試み――初級中国語会 話授業デザイン・授業報告――」外国語教育フォーラム:金沢大学外国語教育論集(9): 33-39.

中央教育審議会,  2012『新たな未来を築くための大学教育の質の転換に向けて〜生涯学び続 け、主体的に考える力を育成する大学へ〜(答申)』(2018年1月20日取得,  http://www.

mext.go.jp/b̲menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1325047.htm)

参照

関連したドキュメント

また、推薦入試による入学者の高い目的意識は、卒業後の進路決定にも影響してい

分析対象となるのは 1998 年から 2005 年の期間で必要なデータがすべて収集できる日本の製 造業企業である。パネルデータで分析する期間は 2001 年から

い,といっています。インターネットでの信用契約の締結は,実現されるべきではないという

本研究で得られた知見は、私立高校出身であることが教育達成に対して正の効果を、初職達成

「僕は建設省の仕事はやはり公共事業を行うこ

これまでコーネルについての簡潔な紹介をおこなってきたが、本節以降では[コーネル、2011]で示

3 就活 就活 就活 就活日記 日記 日記 日記と と と分析方法 と 分析方法 分析方法 分析方法 3.1

精査可能性モデルも認知的経験的自己理論も、2過程の使用(中心的、周辺的)において は動機づけが影響するものである(Petty & Caccioppo 1984; Pacini