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ミッド・テューダー期の教区教会―』立教大学出版 会2009年3月刊213頁3,800円

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山本信太郎著『イ ングラン ド宗教改革の社会史―

ミッド・テューダー期の教区教会―』立教大学出版 会2009年3月刊213頁3,800円

著者 鍵谷 寛佑

雑誌名 関学西洋史論集

号 33

ページ 47‑49

発行年 2010‑03‑30

URL http://hdl.handle.net/10236/12890

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山本信太郎  著

『イ ング ラ ン ド宗教改革の社会史

- ミ ッ ト ・  テ ュ ーダ一期の教区 教会 一

立教大学出版会 2009 年 3 月刊 213頁 3,800 円

鍵  谷  寛  佑

本書は、 著者である山本信太郎氏が2007年3 月に立教大学に提出 し た博士学位申請 論文 「イ ングラ ン ド宗教改革下の教区教会一 ミ ッ ト ・ テ ュ ーダ一期 を中心に」 を主体 と し て、 加筆が施 さ れ、 刊行 さ れた も ので あ る。 本書が扱 う 時代は、 ヘ ン リ 八世の治 世末年で あ る1540年代か ら エ リ ザベ ス一世が即位 し た直後の1560年代前半ま での ミ ッ ト ・ テ ュ ーダ一期で あ り、 特に、 エ ド ワー ド六世の治世 (1547

-

53) と メ ア リ 一世の

治世 (1553 58) が中心 と な って いる。  こ の短い期間に二転三転 し た政府の宗教政策

が、 教区教会 と い う ロ ー カ ルな レ ベルに与 え た影響、 ま た、 教区 教会の対応 を教区 の 史料 を駆使 し て解明 し よ う と し た実証的研究で あ る。 本書は、 大 き く 2 部構成にな っ てお り、 序章、 第1 部 (第1 章か ら第3 章)、 第2 部 (第4 章か ら第6 章)、 そ し て終 章か ら な る。 以下、 順に各章の紹介 を試 みた い。

序章 に お い て は、 近世 イ ギ リ ス史研究 に お い て、 研究 の蓄 積が最 も 厚 い と さ れ る イ ン グラ ン ド宗教改革史研究 の課題 と 本書 の位置づけ が述べ ら れる。  ま ず、 ア ー サー ・  ジ ョ フ リ ・ デ イ ケ ンズ (Arthur Geoffrey Dickens) の研究 と 彼への批判 を中心 と し た 修正主義の立場が述べ ら れ、 両者の間での論争が現在で も多 く の成果 を生み出 し て い る と 同時 に、 両者 の論争 の成果 を踏ま え つ つ も、 そ れ ら に必ず し も か ら み取 ら れな い 新 た な論点 を積極的 に模索す る必要性が指摘 さ れて い る。

第1 部 「 ミ ッ ト ・  テ ュ ー ダ一期の宗教政策 と 教区 教会」 で は、 教区 レ ベルの検証 を す る際の史料 につ いて の説明が行われ、 教区 の役人 で あ る教区委員 (churchwarden) が残 し た史料で あ り、 本書が主 た る史料 と し て いる教区委員会計簿 (churchwardens'

account) の重要性、 残存状況 な どが提示 さ れて い る。  こ の時期の教区 は、 大主 教管

区 (province)、 主教区 (diocese)、 大執事管区 (archdeaconry)、 地方執事管区 (rura1

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deanery) と ピ ラ ミ ッ ド 構造 に な っ て いた教会行政 の最末端 の単位で あ り 、  その数は 近世 イ ング ラ ン ド にお いて約8,000か ら9,000で あ っ た と 述べ ら れて い る。

第1 部第1 章 「十六世紀におけ る都市 と教区一 ラ ド ロ ウの事例から」 では、 シュロ ツ プ シ ヤのラ ド ロ ウ (Ludlow) 教区 が考察 さ れて お り 、 主 に こ の時代の教区聖職者や 教区 委員 につ いて、 ま た、 都市 と の関係 におけ る教区 につ い て論 じ ら れて い る。 ラ ド ロ ウ教区 は、 都市 ラ ド ロ ウ唯一の教区 で あ り 、 都市 ラ ド ロ ウには ウ ェ ールズ辺境評議 会 (Council in the M arches of Wales) が置かれて い た が、 こ れに よ り、 ラ ド ロ ウが 中央政府か ら直接介入 を受け る可能性が強か っ た こ と も確認 さ れて い る。

続 く 、 第1 部第2 章 「宗教政策 と 教区 教会 シ ュ ロ ツプ シ ヤの教区 の事例か ら」 に おいては、 引 き 続き ラ ド ロ ウ教区 が中心的 に取 り 上げ ら れて お り、 ラ ド ロ ウ教区 と 同 じ シ ュ ロ ツ プ シ ヤに 属 す る へ イ ル ズ オ ウ エ ン (Halesowen) 教区 と ワ ー フ イ ー ル ド (Worfield) 教区 が補足的 に扱われて い る。  こ こ で は、 君主 の交代 に よ っ て短期間 で 激変 し た政府の宗教政策に対 し て、 教区 が即応 し て いた点が強調 さ れて い る。

第1 部第3 章 「全国的動向の検討」 では、 宗教政策 と 教区教会の関係が、 第2 章で

取 り 上 げ ら れた シ ュ ロ ツプ シ ヤ以外 の教区 にお いて、 どの程度の妥当性 を持つか と い う 問題が検討 さ れて い る。  その際、 エ ド ワー ド六世の治世 におけ る教区 教会への書籍 設置政策 と 、 エ ド ワー ド六世治世か ら エ リ ザベ ス一世治世ま での、 急進的 プロ テ ス タ ン ト 路線の開始、 カ ト リ ッ ク への復帰、 再度の プロ テ ス タ ン ト 路線への変更 と い う 三 度の大 き な転機 を経験 し た教区 教会の聖堂内 の可視的変革の問題が議論 さ れて い る。 

こ こ で も、 宗教的に正反対の方向性 を も った政府の宗教政策に対 し て即応す る教区 の 姿 が浮 き 彫 り と な る。

第2 部 「教区教会 と 教会巡察」 では、 中世以来、 高位聖職者で あ る主教や大執事に

よ っ て実施 さ れて き た教会巡察 (ecclesiastical visitation) を通 し て 教会行政の中 の教 区教会の位置づけが考察 さ れて いる。  こ の第2 部 では、 巡察 を受け る側で あ る教区 の 重要史料で あ る教区委員会計簿は も ち ろ んのこ と、 巡察質問条項 (visitation articles) や巡察記録 (visitation book) な ど、 巡察 を実施す る側の史料 も可能 な限 り 使用 さ れ て い るo

その第2 部の第4 章 「教区 教会か ら見た教会巡察」 は、 教会巡察の位置づけ、 その

概要、 教区委員会計簿の中 に見 ら れる教会巡察が テーマ と な っ て い る。  特に、 教区委 員会計簿の中に見 ら れる、 食事 (dinner) の支出が意味す る、 教会巡察のイ ベ ン ト 性 に関 し ては、 教区 の巡察に対す る姿勢 を明 ら かにす る と と も に、 宗教政策 と 教区 教会 を結 びつけ る巡察 その も のの重要性の一端 を示唆 し て い る好例で あ る。

第2 部第5 章 「巡察質問条項 と 教会巡察」 では、 巡察質問条項の概要がま ず検証 さ

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れてお り、 宗教改革期におけ る巡察質問条項の全体的検討 に続いて、  ミ ッ ト ・ テ ュ ー  ダ一期の巡察質問条項 が考察 さ れて い る。  こ こ で日 を引 く のが、 カ ンタ ベ リ 大主教 ト マ ス ・ ク ラ ンマ (Thomas Cranmer, 1489-1556) の手 に よ る1548年 の86項 にお よ ぶ詳 細 な巡察質問条項で あ る。  そ れぞれの条項 が、 当時の社会 を反映 し て い る と と も に、

巡察質問条項は、 主教の立場や意図 を表明す る宣言文的性格 も持 ち合わせて いた と 論 じ ら れて い る。

続 く 、 第2 部第6 章 「 ミ ッ ト ・ テ ュ ー ダ一期イ ングラ ン ド の教会巡察」 においては、

巡察記録 その も のに目 が向け ら れて お り 、 プロ テ ス タ ン ト の時代 で あ る エ ド ワ ー ド六 世治下 と カ ト リ ッ ク の時代で あ る メ ア リ 一世治下 で行われた二 つの巡察が考察対象 と な っ て い る。 そ れぞれの巡察 には、 と も に詳細 な記録が含 ま れて お り 、 当時 の社会 を 鮮明に描き出 し て いる。

終章では、 「王権 と主教人事」、 「 ヘ ンリ 八世 と 新主教区 の創設」、 「枢密院 と 教区教 会」 の三点か ら、 イ ン グラ ン ド王権が、1530年代におけ る ロ ーマか ら の分離以前の時 代よ り 引き継がれた教会行政制度の安定 と 維持のために、 如何に し て教会行政機構 を 掌握 し たかにつ いて検証 さ れて い る。

以上、 各章の簡単 な紹介 を し て き たが、 本書 によ っ て、  ミ ッ ト ・ テ ュ ーダ一期 と い う 社会的変動 を幾度 も経験 し た複雑 な時代 におけ る、 教区 の姿が浮き 彫 り と な っ た。 

特に、 政府の二転三転す る宗教政策に対 し て、 教区 が見事に即応す る過程が描き出 さ れたのは、 筆者の意欲的かつ精緻な研究 によ っ て で あ る。 是非 と も、 様々な人 々に手 に と っ て い た だ き た い力作 で あ る こ と を、 最後 に強調 し て お き た い。 

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