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カンジダによる実験的角膜真菌症 一Azalomycin Fの検’討一

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Academic year: 2022

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(東女医大誌 第39巻 第4号頁279−283昭和44年4月)

カンジダによる実験的角膜真菌症 一Azalomycin Fの検 討一

東京女子医科大学期科学教室(主任

助教授内田幸男・大

    ウチ  ダ  ユキ  オ  オオ

加藤金吉教授)

 島  道

 シマ       ミチ

(受付 昭和44年1月31日)

Experimental Corneal lnfection Mrith Candida Albicans

      −Eva璽覗at量o皿of Azalomyc且n F一

     Y憾面U《】田DA, Mich五〇HSHIMA

Department of Ophthalmology (Director; Professor Kinkichi Kato)

      . Tokyo Women s Medical College

  Azalomycin F, a fungistatic agent, showed suppression of Candida albicans in vitro at the concentra−

etion of 1.56 mcg/ml.

  Corneal infection was produced in rabbits by injecting suspension of C. albicans intracorneally or by

−instilling it onto the wounded cornea. lnfection thus produced progressed rapidly and resulted in hypo−

pyon fofmation. Eyes treated with local administration of ointment containing O.10/, Azalomycin F

,showed no appreciable difference from the untreated control eyes.

  Histological examination was carried out and mycelia in the tissue were demonstrated by the use of

fiuorescent antibody method.

         L 緒 言

 角膜の感染症のうち,細菌性のものは抗生物質 の出現以来治療し易くな:つた.これに反しウイル ス性,真菌性のものが目立つようになった.角 膜の真菌感染は角膜真菌症(Kerat・mycosis)と

も呼ばれ,起因菌としてはCandida albicans,

Aspergillus, Penicillium, Fuserium, Cepharospo−

rium等が知られている。角膜真菌症に対しては 用いられる抗真菌剤の種類は少なく,たとえぽ Nystatin, Amphotericin B, Trichomycin等であ

り,その抗真菌スペクトルも限られている.その 上,診断の確定に時日を要し,診断が決定した時 はすでに治療の期を逸していることが多い.角 膜真菌症の症例数は多くはない.しかし一たび起

こると予後は深刻である.今回ウサギ角膜に,真 菌の中でも量的に扱い易いCandida albicansを 用いて角膜感染の実験を行なってみtc. Azalom−

ycin F ll ,三共製薬研究部で開発された抗真菌 剤であるが1)2),これの実験的角膜真菌症に対す

る局所投与の効果を検討してみた.

        II・実験方法

 1.Candida albicansの薬剤感受性

 Candida albicans(以下C. aと略)は東大医科学研

究所保存の株No.13を用いた. Azalomycin F(102%

力価)とNystatin(4450U/mg)は三共製薬から提供 をうけた.

 Azalomycin F(以下Azと略)とNystatinは水に

難溶であるkめ,予め,純メタノールに溶かしたのち,

一 279 一

(2)

水を加え2.5%メタノール液中250γ/mlを含む原液を

作った.この原液の2倍希釈を反復し,その1m1を加 温溶解したサブロー寒天培地9mlに加え,培地中の薬 剤濃度が,25,12.5,6.25,3.12,1.56γ/mlとなるよ

うな系列を作った.対照として2.5%メタノールを加え

た培地を用いた.この培地にC.aを塗抹して37℃で培

養し,24時間,48時間で判定した.

 2. ウサギ角膜接種実験

 サブロー寒天培地に48時間培養した菌を生理食塩水に

浮游させた.動物には体重約1.5㎏の白色ウサギ6匹 を用いた.接種法として,(1)菌懸独液0.1mlを角

膜層内に注射する方法,(2)径5㎜トレパンで円形創傷 を作り,これに浮游液を滴下してマッサージを行なう方

法,の2法をとった.浮游液中の菌数は約7×107!ml

である.実験治療薬は,前記AzをO.1%の濃度に含

む軟膏で,基剤はプラスチベース50Wである.点眼は1

日3回とし,接種直後,24時間後,48時間後に開始し,

左眼を治療眼,右眼を対照眼とした.一部の眼球には効 果判定後,ホルマリン固定,パラフィン切片作製,ヘマ

トキシリン・エオジン染色,PAS染色を行なった.ま た他は凍結切片として,抗Candida蛍光抗体法,さら にその後同一標本をPAS染色で検討した.蛍光抗体は

医科研病理で作製されたものである.

        皿・実験結果

 1.Candida albicansのAzalomycin F,

Nystatinに対する感受性

 24時間判定では,Az, Nystatinいずれも1.56 γ!mlまで菌の生育を見なかった.48時間後では Azは1.56γ/ml, Nystatinでは3.12γ/mlであっ た.AzはNystatinとほぼ同程度,あるいはこれ より若干すぐれた抗菌力を有することが分つた.

 2. 実験的真菌症およびそのAzalomycin F による治療

 A)角膜層内注射眼

 対照眼の所見について述べる.接種翌日角膜層 内の注射部位に白鳳を生じ,角膜全体もびまん性 にうすく油る.結膜には充血浮腫がおこり,眼脂 の分泌が増す.虹彩も充血する.接種2日後,角 膜のびまん性混油,結膜と虹彩の充血はさらに増

し,前房の混油も著明となる.注射部位の実質内 野独は増強し,黄白色を帯び,その表面がフルオ

レスチンに染まる潰瘍を形成する.3日後前房の

混油はさらに増し,瞳孔が観察し難くなるものも あり,前房蓄膿が生ずるものもある.4日後前房 蓄膿は全例におこり,潰瘍の部分の理非が拡大す

る.この混油の中に,特に濃い数個の白点が観察 される.Azを1日3回点眼した左眼の経過は,

点眼を行なわない右眼と同程度の変化と,同様の 経過を示し,治療効果を見なかった(表1).

表1 Candida albicansによるウサギの実験的角

   膜真菌症に対するAzalomycin F軟膏の影

   響.右眼は対照,左眼は治療眼

角謄躍内接種

角膜表層接種

接種から点眼開始

ま で の 時 間

1

2

3

4

5

6

右 /

左  0

右 /

左  24

右 /

左  48

右 /

左  0

右 /

左  24

右 /

左  48

4日後の ユ床症状

写真1.Candida albicans角膜層内接種4日後の

 角膜組織,潰瘍の部に増殖した菌.蛍光抗体法.

 4日後に摘出した眼球の組織においては,角膜 中央の注射部位付近は潰瘍となり,表層組織が脱 落している.蛍光抗体法で見るとC・aは棒状 に,あるいはその断面が円形を呈し,蛍光は菌の 細胞壁と思われる部分に強い(写真1).菌はPA

S染色陽性で,潰瘍の底に,またLamellaの

間をおし開いて塊りとして見られる.角膜実質内 一280一

(3)

写真2.写真1.と同じ角膜.角膜固有層(左)

 からデスメ膜(右上から左下に走る)を貫いて  前房内(右)に進入した菌.蛍光抗体法.

写真3.写真1.と同じ角膜.角膜固有層と前房

 内の菌糸.中央に左上から右下にデスメ膜があ

 る.

には多数の菌系が走り,Lamellaに沿って角膜表 面に並行に走るよりも,これを垂直方向に貫いて いるのが目立つ.更に菌糸はデスメ膜を貫通し,

前房の多核白血球中を縦横に走るのが観察される

(写真2,3).

 内皮細胞の破壊も著明である.前房を進んだ菌 糸は,水晶体嚢を貫通して水晶体質まで進入して

いるのが認められた.実質中に菌糸をかこむ白血 球の浸潤があり,Lamellaの破壊が著明な部分が ある.これは肉眼的に白色の点状混油に相当する 部と思われた.結膜組織中に菌の侵入は認められ

ない.

 B)点眼による表層接種眼

 対照眼における変化は,1日後結膜充血と虹彩 の充血がおこる.角膜にトレパンの創傷が残る

r;  ・

く サ  りぽ   ズ

 艶鰹

 耀菰聯   ・瓢

写真4.Candida albicans角膜表層接種8日後

   の所見,対照眼,

写真5,表層接種と同時にAzalomycin F軟膏    を投与した8日後の所見.

が,それ以外の角膜は透明である.2日後創傷に 沿って実質内に数個の点状の混独を生じ,充血が 増強する.3日後には点状混油も更に増し,角膜 全体のびまん性の醤油が生じ,4日後には前房蓄 膿を生ずるものもある.総じて角膜課内注射群よ

りも症状の発現は徐々である.しかし,これらの 変化は動物によって程度の差が大きい.Azを接 種直後から用いたウサギでは,治療眼は対照眼と 比べて変化が軽度で,点状混油や前房蓄膿を起こ さず治癒した(写真4,5).しかし1日後,2日 後に点眼を開始したものでは,対照眼に比べて逆 に治療眼に変化が強かった.したがって直後から 用いて効果があったかに見えるのも,各眼の角膜 炎の症状が不揃いであったためのものかとも思わ

れる(表1).

        1V・考 按

 Candida albicans(C・a)は時に症状を呈しな い健常眼の結膜floraの中にも寄生菌として存・

一281一

(4)

在することもあるという.他の真菌についても同 様のことがいわれる.一般に真菌は健常角膜上皮 を通して侵入するほどの病原性はない.臨床的に も角膜外傷,異物等による角膜の損傷の上に,ま た他のウイルス性,細菌性の潰瘍等の上に混合感 染として発生することが多い.したがって動物実 験で,臨床例に似た真菌症をおこすことには種々 の難点がある.副腎皮質ステロイドの使用が角膜 真菌症の発生を促し,重篤化させることは,三井 らの報告3),Ley4),広瀬ら5)の実験で現在では よく知られた事実となっている.MontanaとSery はNystatinの治療効果を動物実験を用いて行な った6).その際,C・aで角膜真菌症をおこすの にステロイド投与を必要としている.また最近

SmolinとOkumotoは抗リンパ球血清を動物に

使用して,C. a角膜炎の重篤化をみている7).

このことは,角膜真菌症の発現に,生体側の免疫 反応を主とした防衛反応が大切な役割をもつこと を示している.

 MontanaらはNystatinをC. a接種から4

時間以内に使用したとき,角膜炎の発生を抑える

ことを報告している.Amphotericin Bは接種24 時間以内に用いると同様の効果があったという.

しかし完成した実験的真菌症の治療には,これら 抗真菌剤は殆んど無効と結論している.

 さきに著者の一人内田は,Az軟膏が初期の角 膜真菌症臨床例に効果を示し,眼険や結膜の真菌 を減らすことを認あ,Azの眼科的応用の可能性

を/JSCした.

 今回の実験では,AzはC・aに対して. Ny−

statinに比べ,優るとも劣らない抗菌力を有する ことが分つた.

 接種実験では,ステロイド処理等行なわず,

C・a菌液を角膜内に注射した場合,全眼に角膜 炎の発生をみた.そして病変は重篤で,進行も急 速であった.0.1%Az 1日3回の点眼では,病 変に認むべき効果を与え得なかった.

 組織学的検索で見ると,C・aの二二は,急速 に角膜のLamella, Descemet膜を:貫通して前房 側へ進む.角膜炎と同時に結膜の浮腫充血が生じ

て,結膜炎の症状がi著明であるが,結膜組織内の C・aは検出されない.したがって結膜炎は重篤 な角膜炎に伴なう反応性の変化と思われる.角膜 および前房内でのC・aの旺盛な増殖の所見か

ら,1日3回程度の抗真菌剤の局所投与では,病 変の進行を抑え難いとの印象をうけた.

 角膜層内接種実験では,臨床例の角膜真菌症に 比べて症状が重篤すぎる.そこで角膜表層に創傷 を作り,接種する方法をとった.この実験では,

C・a感染による変化はやや進行が徐々となり,

接種と同時にAzを用い始めた眼では変化が軽微 であった。しかし,これも他の動物で,重篤さに ばらつきのあることを考えると,直ちに治療の効 果とは断定しがたい.表層の創傷に点眼で接種し た場合も,時間がたつと角膜内接種と同様な重篤 な変化をおこすものがある.

 今回の実験は,動物の数も少なく,決定的のこ とは言えないが,Montanaらの言うごとく,一 度び完成した真菌症には,抗真菌剤の投与の効果 は悲観的のようである.ただここで考えられるこ

とは,用いたAz軟膏の点眼回数が,1日3回で は少なすぎるであろうということである.また基 剤のプラスチベース50Wが軟かすぎ,そのため結 膜嚢内の滞留時間が短かいのではないかというこ

とも考えられる.

 このような抗真菌剤の実蜘こは,臨床的角膜真 菌症の初期に似たできるだけ軽い,しかも進行の 徐々な感染を,どの動物にも一様に揃った症状と

して起こすことが必要である.接種法その他の工 夫も今後考えなければならない問題である.

        V・結 論

 抗真菌剤Azalomycin Fは, Candida albicans に対し,試験管内テストではNystatinに劣らな い抗菌力を有する.Candida albicans浮游液をウ サギ角膜層群注射,あるいは角膜表層創傷後に点 眼によって接種した.この実験的角膜真菌症に対 し,0.1%Az軟膏を1日3回の点眼で治療を試 みた.完成した真菌症に対しては,この程度の治 療では治効は得難いと思われた.なお組織学的所 見について述べた.

一 282 一

(5)

 加藤教授の御指導,御校閲に深謝するとともに,蛍光 抗体法に関して御協力下さった,東京大学医科学研究所 林 皓三郎氏にお礼申しあげる.

 本論文の要旨は,第22回臨床眼科グループ討議「眼感 染症」で発表した.

      文  献

 1) Arai, M.: J Antib Ser A 13 46 (1960)

 2) Arai, M・: J Antib Ser A 13 51 (1960)

 3) lxutsui, Y. and J. Hanabusa: Brit J Ophth

 39 24tl (1955)

4) Ley, A・P.: Amer J Ophth 42 59 (1956)

5)広瀬金之助・他:日眼611106(1957)

6) Montana, J.A. and T.W. Sery: Arch

 Ophthal 60 1 (1960)

7) Smolin, G. & M. Okumoto: Amer J

 Ophth 66 804 (1968)

8)内田幸男・他: 日眼 萩原教授記念論文集   (!964)1017頁

一 283 一一

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