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A study on Effect of Smart Card (PASMO) in Tokyo Metropolitan Area *

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(1)

バスICカードの導入による効果計測に関する研究 *

A study on Effect of Smart Card (PASMO) in Tokyo Metropolitan Area *

矢部努

**

・中村文彦

***

By Tsutomu YABE**・Fumihiko NAKAMURA***

1.はじめに

都市の公共交通体系におけるバス輸送の重要性につ いては言うまでもなく、昨今では、EST(環境的に持続 可能な交通)やBRT(Bus Rapid Transit)等の政策が進 められているように、自動車から公共交通への転換によ る環境負荷低減の観点からも、バス輸送が果たす役割が 再認識されている。

一方で、バスが一般道を走行する場合には、バス停 での乗降に伴う長時間の停車が後続の一般車の走行を阻 害し、場合によってはバス待ち渋滞を発生させるだけで なく、頻繁な加減速により余計な二酸化炭素を発生させ ている可能性がある。また、バス停車時間が路線全体の 走行時間に影響を与えることはしばしば指摘されており、

バス利用者の移動時間の増加や事業者にとっての運行時 間が増加するだけでなく、走行時間のばらつきが大きく なることによって定時性が損なわれている現状がある。

このような中で、我が国においては、バスの低床化 やICカードによる運賃収受方式の導入が進められ、バス の停車時間短縮に与える効果も期待されている。特にIC カードの導入により、現金や整理券を使わず自動的に運 賃の精算できることによって利用者のスムーズなバスの 乗降が可能となるとともに、バス事業者は詳細な乗降デ ータを収集することで効率的な運行計画の策定が可能と なるなど、幅広い導入効果が期待されている。

これに関して既往の研究では、バスICカードの効果 を示唆する論文がいくつか発表されているが、国内のバ スICカードの導入事例やデータをもとに実証的な分析が 行われた例はなく、定量的な効果検証は行われていない。

そこで本研究では、このバスICカードの導入により 期待される効果、影響について検証の枠組みと論点を整 理した上で、平成19年3月より首都圏にて導入されたバ スICカード(通称:PASMO)を事例として、バス停での バス乗降に関する現地観測データ、及びバスICカードデ ータをもとに分析、検証することを目的とする。

*キーワーズ:ITS、公共交通運用、バスICカード

**正員、博(工)、(財)計量計画研究所 道路計画研究室

(東京都新宿区市谷本村町2-9、

TEL 03-3268-9911、FAX 03-5229-8081)

***正員、工博、横浜国立大学大学院 工学研究院

2.既往の研究成果と本研究の意義

(1)バス乗降時間の評価に関する研究

バス乗降時間に関する研究成果は、HCM1)の中で整理 されており、乗降客1人あたりに必要な時間は、主に扉 の数、ステップの段数、運賃収受方式、その他利用者の 属性による要因で説明されるとしている。また、大城2)、 Dueker3)、宇佐美4)は、実データに基づく乗降時間特性 のモデル化により影響要因を定量的に示している。しか し、いずれもバスICカード(海外では一般にスマートカ ードと呼ばれる)に関するデータは取得されておらず、

その導入効果は実証的には明らかにされていない。

実際のICカード導入効果の分析例として、矢部5)が、

主に海外のバス乗降施設の運用方式に着目し、その一例 として、バスICカードの普及が進んでいる韓国・ソウル

(ICカード利用率90%以上)における現地観測データを 基に、ICカード導入により2割~4割程度バスの処理能力 を向上させることが可能であると示唆している。

(2)バス乗降時間と路線の運行時間に関する研究 路線バスの運行時間は、主に道路上を走行する時間 と停車時間、すなわちバス停での乗降に伴う停車時間と 信号交差点における停車時間により規定される。矢部6) は、簡略化した条件の下でのシミュレーションにより、

バス停での停車時間が、路線の運行時間に与える影響を 明らかにしている。また徳永7)は、ワンステップバスの 導入によるバス停での停車時間の短縮が、路線の運行時 間(平均)の短縮と分散の減少に寄与し、定時性が向上 することを示唆している。ただし、いずれもバスICカー ド導入による効果分析は行っていない。

(3)本研究の意義

既往の研究では、バスの乗降時間の短縮によりバス のサービスレベルを向上できることが明らかにされてい るが、その方策の1つとしてのバスICカードの導入が、

具体的にどの程度これに寄与するのか、実データに基づ き分析された例は少ない。

本研究は、首都圏で導入・普及が進むバスICカード について実証的に効果計測を行い、これまでの示唆を定 量的に検証するという点で、意義が大きいと考えられる。

(2)

3.PASMOの概要と現在の利用状況

PASMOは、首都圏の私鉄・バス事業者が加盟する共通 乗車カードの通称であり、2007年3月18日(日)より、

鉄道23事業者とバス31事業者(74営業所、約4,500両)

での導入が開始されている。

2008年6月現在では、50以上のバス事業者で利用可能 となっており、首都圏全体での利用者数は、1日あたり 約89万回(乗車回数)である(図1)。今後さらに導入 事業者、路線が拡大され、最終的には首都圏100以上の バス事業者での利用が可能となる予定である。

22 25 28 33 34

39 44 47 49 51 61

68 78 80

89

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月11月12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月

平成19年 平成20年

(万枚/月)、利用回数(万/月

0 20 40 60 80 100

日平均利用回数(万/日

ICカード利用者数 ICカード延べ利用回数 日平均利用回数

図 1 IC カード利用者数、利用回数の推移(平日)

※バス

IC

データより作成 4.バスICカード導入による効果と検証の視点整理

(1)一般に指摘されるバスICカードの導入効果 バスICカードの導入により、影響を受ける主体は、

バス利用者やバス事業者のみならず、同じ道路上を走行 する道路利用者や社会全体に及ぶと考えられる(表1)。

バス利用者にとっては、小銭を用意すること なくスムーズな乗降が可能となるほか、乗り継 ぎ割引等の設定が容易となるなど、利便性が大 きく向上することが期待される。

また、バス事業者にとっては、乗務員が現金 を扱うことが少なくなるため集金等の経費節減 や事故防止に繋がるとともに、乗客の乗降デー タを蓄積することにより運行管理や運行計画の 策定に活用可能となると考えられる。

(2)本研究での検証の枠組みと視点整理 次に、本研究での検証の枠組みと視点を整理 するため、図2に示す仮説フローを考える。

すなわち、バスICカード導入により、運賃支 払時間が短縮することでバス停での停車時間の 短縮し、それがバス運行時間の短縮及び分散の 減少に寄与することで、路線の定時性・信頼性 が向上すると考える。

表1 バスICカード導入による影響・効果の視点 評価主体 影響・効果(一例)

バス利用者 ・小銭が不要等スムーズな乗降が可能

・移動時間の短縮

バス事業者 ・清算、書類処理等の業務コスト削減

・運行効率性の向上、営業収益の増加 道路利用者 ・後続車のバス停車待ち時間の短縮 地域社会全体 ・バスのサービスレベルの向上

・後続車による

CO

2排出量の減少

ここで、本研究では以下の3つの分析課題と分析方法 を設定し、検証を行うこととする。

検証1 バスICカード導入が乗降時間に与える影響 バス停での乗降を支払い券種別に観測したデータを もとに、モデル分析により検証を行う。

検証2 カード普及率とバス停車時間との関係

上記モデル分析の結果を基に、カード普及率とバス 停車時間との関係を試算する。

検証3 停車時間の短縮と運行時間との関係

バスICカードがバス停車時間の短縮に寄与するとい う前提の下で、蓄積されたバスICカードデータにより、

カードの利用者数の増加を踏まえ、時系列的に検証する。

なお、これ以外の波及効果として、道路利用者(バ スの後続車両)の時間短縮効果やCO2排出量の減少など 地域社会全体に及ぶ効果や、ICカードによる多様な取組 みが利用者の利便性向上とバスの利用促進につながるな ど考えられるが、本研究では分析の対象から除外する。

地域社会全体への影響 道路利用者への影響

利用者への影響

バス事業者への影響

バスIC カード導入 多様な取組み実施

・乗継割引

・高齢者割引

・交通ポイント制度 等

運賃支払時間

(乗降時間)の短縮

バス停車時間の短縮

バス運行時間の短縮

・分散の減少

運行効率性 の向上 利用者数の

増加 利便性の向上

バスの魅力の向上

バス利用回数の増加

収益率の向上

後続車の バス待ち時間短縮

消費燃料の削減

二酸化炭素排出量 の削減 経済的損失の減少

【検証①】バスICカード導入が 乗降時間に与える影響

【検証③】停車時間と 運行時間との関係

定時性・信頼性向上

【検証②】カード普及率と バス停車時間との関係

図 2 バス IC カード導入により期待される効果と検証の視点

(3)

5.バスICカード導入による効果の検証

(1)分析に用いるデータ

a)バス停におけるバス乗降観測調査データ

・調査実施日:2007年3月および5月の各平日4日間

・対象バス停:東京都、横浜市、川崎市内のバス停 合計251箇所(全て前乗均一運賃区間)

・調査時間帯:7、8、17、18、19時台(5時間帯)

※1レコードは、あるバス停のある1時間帯に停車した 全バスの支払券種別乗車人数計と停車時間計である

※また、乗車人数よりも降車人数の方が多いデータは、

分析精度を担保するため除外している。

b)バスICカードデータ

バスICカードの利用履歴からバスの所要時間やバス停 停車時間に加工・変換されたデータであり、本データは、

PASMO導入開始時よりデータが蓄積されている8)。本研 究では、バスICカード普及による時系列での分析を行う ため、以下のデータを使用する。

・データ期間:2007年4月、2007年10月、2008年4月の 雨天時以外の平日5日間の7~9時台

・対象路線:東京都内を走行するバス10路線を抽出

(2)分析課題の検証

検証1 バスICカード導入が乗降時間に与える影響 データa)を用いて、バス停での停車時間を推計する モデルを作成する。具体的には、支払券種別の乗車人数 を説明変数とし、バスの停車時間を被説明変数として、

重回帰モデルのパラメータを推計する。

推計結果は表2に示すとおりである。各支払券種のパ ラメータは、その支払方法での1人あたり乗車時間と解 釈することができ、現金支払の場合の4.2秒に対し、バ スICカードは2.0秒と、およそ半分以下の時間で乗車で きることを示している。また、定期券(3.3秒)と比較 しても時間が短縮していることが分かる。これは、定期 券の場合、バス運転手が定期券面を確認する時間が発生

表2 バス停車時間に関する統計値(重回帰分析)

説明変数 パラメータ t値 現金 4.196 (10.321)

磁気カード 3.736 (19.602)

定期券 3.307 (9.702)

バスICカード 2.049 (3.922)

その他 4.187 (8.416)

(定数項) 11.512 (52.038)

決定係数 0.674 サンプル数 2,165

する分だけ、バスICカードよりも余計に時間がかかるも のと考えられる。なお、定数項は利用者の乗降にかかる 以外の時間、すなわちクリアランス時間である。

以上のことから、バスICカードの導入により、一般的 には、バスの乗降時間(バス停での停車時間)は短縮さ れることが実証的に検証できたといえる。

検証2 カード普及率とバス停車時間との関係

次に、上記の重回帰モデルの結果を基に、カード普及 率(利用率)とバス停車時間との関係を試算する。

まず、準備段階としてデータa)を用いて、バスICカ ード導入以前(2007年3月)の支払券種の構成比と、導 入後(2007年5月)支払券種の構成比を図3に示す。

21%

17%

51%

39% 14%

20%

21%

7%

7%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

導入直前

(2007年3月)

導入後

(2007年5月)

現金 磁気カード ICカード 定期 その他

図 3 支払券種別バス乗降者数構成比

これによれば、バスICカードの導入前後で、バスICカ ードの利用に変わったのは、ほとんどが現金と磁気カー ドの利用者であることが推測できる。また、定期券利用 者の構成比にほとんど変化がないのは、短期的には PASMOバス定期券への変更が進んでいないためと考えら れる。以上のことを踏まえ、バスICカードの普及のシナ リオを設定し、バスの乗車人数一定の条件の下で、先の モデルを用いて普及率とバス停車時間の関係を試算した

(図4)。その結果、バスICカードの普及率が50%では 導入前に比べ停車時間が約17%短縮し、普及率90%では 停車時間が30%短縮することが分かる。あくまで机上の 計算ではあるが、カードの普及すなわち利用率の向上が バスの停車時間短縮に寄与することが確認された。

14%

30%

50%

70%

90%

0%

1.00 0.94 0.89

0.83 0.76

0.69

0%

20%

40%

60%

80%

100%

導入前

(2007.3)

導入後

(2007.5)

普及率 30%

普及率 50%

普及率 70%

普及率 90%

バスICカード普及率 (※30%以上は仮定)

払券種別構成比

0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1.20

車時間の変化率(導入前1)

その他 定期券 磁気カード 現金 バスICカード 停車時間変化率

図 4 バス IC カードの普及率とバス停車時間との関係

(4)

検証3 停車時間の短縮と運行時間との関係

さらに、バスICカードがバス停車時間の短縮に寄与す るという前提の下で、運行時間との関係を検証する。

まず、蓄積されたバスICカードデータにより、分析対 象10路線別のICカード利用者数の増加状況を確認すると、

人数の大小はあるもののいずれも増加していることが分 かる(図5)。なお、同じ図に表定速度(路線延長÷停 車時間を含めた運行時間により算出した平均速度)の推 移を示しているが、平均値としての表定速度については 特徴的に向上した路線は見られない。

ここで、改めて路線バスの特徴を踏まえて考えてみる と、バスICカード導入による停車時間の短縮効果とし

0 10 20 30 40

路 線

路 線

路 線

路 線

路 線

路 線

路 線

路 線

路 線

路 線

バスIC人/便)

2007年4月 2007年10月 2008年4月 5 10 15 20

表定速度(km/h)の推移

図5 路線別バスICカード利用者数と表定速度の推移

0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30

2007年4月 2007年10月 2008年4月

行時間の変動係数(標準偏差/平均)

路線① 路線② 路線③ 路線④ 路線⑤ 路線⑥ 路線⑦ 路線⑧ 路線⑨ 路線⑩

図6 路線別運行時間の変動係数の推移

0 5 10 15 20 25 30

10分 20分 30分 40分 50分

路線の運行時間

生頻度(回/月)

2007年4月 2007年10月 2008年4月

平均値の推移 95%タイル値の推移

図7 運行時間の信頼性指標の変化(例:路線⑤)

ては、平均的な運行時間の短縮というよりはむしろ、そ の分散が小さくなることによって定時性が向上する効果 の方がより顕著に表れるのではないか、と考えられる。

そこで、定時性の向上を表す1つの指標として変動係 数(運行時間の標準偏差÷平均値)の推移を路線別に算 出した(図6)。この結果、2007年4月当初の変動係数が 0.1以上であった路線については、全路線で変動係数が 減少、すなわち定時性が向上していることが分かった。

さらに図7は、信頼性指標の分析結果についての例示 であるが、95%タイル値が大幅に小さくなっていること からも、定時性が向上していることは明らかである注)

6.まとめ

以上のように、本研究ではバスICカードの導入により 期待される効果について、実データを用いて分析を行っ た。その結果、これまで示唆されていた効果について定 量的に検証したことが本研究の成果と言える。

今後は、環境負荷低減への影響等、残された分析課題 について検討を進める予定である。

なお本稿では、国土交通省よりデータを提供頂いた。

ここに記して謝意を表す。

補注)95%タイル値とは、言い換えれば1/20の確率で発生す る大きな遅れの際の運行時間であり、この値が平均値に近 いほど変動が少ない、すなわち定時性が高いと言える。

参考文献

1)Highway Capacity Manual,Transportation Research Board,2000 2)大城温,大蔵泉,中村文彦: バス停留所におけるバス乗降

特性とバス交通容量への影響,第17回交通工学研究発表会 論文集,pp.233-236,1997

3)K.J.Dueker,T.J.Kimpel,J.G.Strathman: Determinants of Bus Dwell Time , Journal of Public Transportation , Vol.7,No.1,pp.21-40,2004

4)宇佐美誠史,元田良孝,金澤崇:バス乗降時間の要因に関 する基礎研究,第25回交通工学研究発表会論文集,pp.269- 272,2005

5)矢部努,中村文彦,岡村俊之:バス乗降施設の運用方式を 踏まえたバス停車時間に関する研究,第25回交通工学研究 発表会論文集,pp.265-268,2005

6)矢部努,中村文彦,大蔵泉: 専用走行空間を活用したバス 輸送の適用可能性に関する基礎的研究,土木計画学研究・

論文集 No.21 No.3,pp.667-676,2004

7)徳永幸之,王紹鵬:車載トラフィックレコーダーデータに よるバス乗降および運行特性分析,第25回交通工学研究発 表会論文集,pp.273-276,2005

8)絹田裕一,矢部努,中嶋康博,牧村和彦,齋藤健,田中倫 英:バスICカードデータから所要時間及び移動履歴へデー タ変換方法に関する検討,土木計画学研究・講演集 Vol.38,

2008(投稿中)

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事業 地域 交付 直接 事業実施期間(年度) 備考. 種別 種別 対象 間接 H26 H27 H28

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※2019 年(平成 31 年)4 月 1 日から 2024 年(令和 6 年)3 月 31 日までの 5