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食事介助体験が看護学生の食事観と食行動に与える影響

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東京女子医科大学看護学部紀要 Vo.l4.  2001 

〔原著〕

食事介助体験が看護学生の食事観と食行動に与える影響

遠 藤 和 子 牟 足 立 己 幸 日

INFLUENCE OF  EXPERIENCE IN PROVIDING DIETARY CARE  ON  NURSING STUDENTS 

‑FOCUSING ON  DIETARY THOUGHTS  AND  DIETARY BEHAVIORS

Kazuko ENDOU*  Miyuki ADACHI** 

本研究の目的は、看護学生が食事介助を体験することにより変化した食事観(人聞が主体的に生きる姿勢と食との関係 についての考え)が学生自身の食行動に与える影響を明らかにすることである。看護専門学校の 3年生 132名を対象に質 問紙調査を実施した。食事介助を体験し、より食事観に影響を受けたものを高、中、低の3群に分け、その特徴から以下 の結果を得た。①食事介助の内容で、食事観の高群に、「食のつくる行動」についての体験が高く、介助が楽しいという特 徴がみられた。②日常の食行動で、高群に食事の準備や片つけの所要時聞が長く、食事をつくる割合も高い。朝はひとり で食べるものの割合が多いが、欠食割合は他群よりは少ない。 10種の主要食物侵食頻度で、大豆と果物の摂食割合と頻 度得点の総合点が良好なものの割合が高い。食事介助体験により変化した項目は、食のつくる行動、及び、知識や態度に より変化を受けていたという特徴があった。③パス解析の結果から、食事介助体験から自己の食行動への影響は、高群で は直接のパスがみられ、中群では、直接のものと食事観を経由したものの 2ルートがあった。これらの結果から、食の援 助を学ぶ上で、食事観の育成の重要性が示された。

キーワード 食事介助、看護学生、食事観、食行動

Abstract 

The purpose  of  this  study  is  to  identify  the  influence  of  experiences  in  providing  dietary  care  on  nursing students'  aspects of  changing  dietary  though ts"  and  dietary  behaviors¥A survey questionnaire  was distributed  to  junior  students  at  two diploma  nursing  schools (n 132).  The subjects  are  divided  into  three  groups  based  on  the  score  of  dietary  thoughts: high  score  group (n 38), moderate  score  group (n 81),  and  low  score  group (n 13).  The results  indicate  that  the  subjects  in  the  high  score  group  indicate  significantly  higher  in dietary  management."  "Dietary  management"  is  the  knowledge  about  food  and  nutrition  and  enjoyable  experiences  in  dietary  care  and  preparation  of  meals.  The  subjects  in  the  high  score group spent  longer  hours on preparing  meals and cleaning dishes  than  those  of  the  other  groups. The subjects  in  the  high  score  group less  frequently  skipped  breakfast , however  the  incidents  of  eating  alone  their  breakfast  significantly.  The  subjects  in  the  high  score  indicate  significantly  high  consumption of 10 major ingredients  and of  soybean and fruits.  After experiences  in  dietary  care, the  scores of  dietary  management."  Based on the  Pass Analysis, the  subjects  in  the  high  score  group significantly  strong  direct  linkage  between  dietary  care  and  dietary  behaviors."  whereas  the  other  groups  do  link  directly.  The  results  imply  that  cultivation  of dietary  thoughts"  will  be  essential  in  nursing  education 

Key words: dietary  care, nursing  students, dietary  thoughts, dietary  behaviors 

東京女子医科大学看護学部 CTokyoWomen's Medical  University,School  of  Nursing) 

* *  

女子栄養大学 (Kagawa Nutrition  University) 

‑ 1 ‑

(2)

fwhat  foodJ 1¥ftaking  foodJ 1)は、ナイチンゲー ル以来看護の重要な問題であり、「食」は人身の健康にか かわる生活行動援助として基礎看護技術に位置づけられ てきた。

食の援助は栄養補給による生命維持のみならず対象の

QOLを高めることに繋がる2川とされ、その重要性が強 調される反面、実際の援助をみると、病気や障害に対し ては比較的関心があるが、患者の日常的な食行動には目 が向きにくし川と指摘されている。これは、看護実践の 中で行われる食の援助を、日常生活者である人聞が口か ら食べることの意味を看護の視点で分析し、もっと生活 者の視点に立って病人の闘病生活における食事の位置づ

けを確かなものとする必要があることを示している。

一方で、看護婦の食を営む力と患者の食への援助能力 は関係するおとされ、食の援助をすることが、看護婦自身 の生活者としての在り万に関係するとも言われている。

しかし食の援助を技術として使っているはずの看護婦、

そのことの意味を学んでいるはずの学生に食に対する認 識の低さ5)、欠食の多さや栄養素等摂取面、健康状態に問 題の多いことも指摘されている3)6ト 1)。1 今日、看護婦自 身の食生活を整える力を育成することが、生活者の視点 に立った食の援助を実践するためになおさら重要となっ ているのである。

看護学生が食の援助を学ぶことについて、先行研究で は、患者体験、演習等を通し、援助のあり方を学ぶも の1214)、臨地実習が学生の食事摂取状況に及ぼす影 響15)を示すもの、看護学生の食生活の実態と食の講義の 影響16)、実習・演習を用いた学生自身の食知識、食行動 への働きかけ17に保健婦学生の食生活におけるセルフケ ア行動を高めるため、自己の食生活を振り返ったことが、

実習での援助そのものに、また、 実習後の自己の食生活 への影響18)を報告したものがある。

日常生活の中の食には、食物摂取に加えて、人間関係 をつくることや、文化としての伝承、社会的・経済的活 動なと幅広い意味が含まれている19)とされる。この視点 から考えると、食の持つ側面の、とりわけ人聞が主体的 に生きる意欲への食べることの影響や、人間関係の調整 や形成を位置づけて検討されたもの、これをふまえて食 の援助を学ぶことが、看護学生の食行動にどのように影 響するのかを示した研究は見当たらない。

本研究に先立ち、看護学生の食事介助をする体験が自

n︐  

ものほど自己の食行動に何らかの変化を認めていると考 えられた。そこで本研究では、人聞が主体的に生きる姿 勢と食の関係についての考えという側面から、食事観を 考えることと、学生自身の食生活を営むカの形成との関 係を検討する。

H  研究目的

本研究の目的は、看護学生が食事介助をすることの体 験により変化した食事観が学生自身の食行動に与える影 響を明らかにすることである。具体的には、1.食事介助 体験の内容と食事観の関係を把握する。 2.食事観と学 生白身の食行動の関係を明らかにする。3.食事介助体 験が食事観や食行動に与える影響を明らかにすることで

ある。

田 研 究 方 法

1 用語の定義

食事介助足立の食行動モデル!のをもとに、人に対し て食事にかかわるたすけをするという意図を持った行動 とし、食事を直接食べさせること以外にも、食事の準備 や後かたづけ等を含めた食事をつくる行動や、食習慣の 形成、伝承にかかわる行為とした。

食事観:人聞が主体的に生きる姿勢と食との関係につ いての考え

食のつくる行動.実際の調理の他に、環境を整える、食 材を選択する、食具を整えるなど食事の準備、後かたつ

けも含めた行為

食べる行動:自分自身の食べる行為に関連する行動 食の伝承する行動:食を介して他者とのコミュニケー ションをはかる行為

2.調査対象

調査対象は神奈川県横浜市にある Y看護専門学校の 3 年生63名と、東京都内のT看護専門学校の3年生69名、 計132名とした。平均年齢はY校が21.0:t 1.2才で、 T 校は21.3:t1.7才であった。

3調査期間

調査期間は、 Y校が1998年9月28日、 T校は1998年 10月7目、 14日であった。

4.調査方法

集合法による質問紙調査を実施した。

(3)

調査協力は、調査の主旨を説明後、承諾書に署名する ことで同意を得た。回収率は100.0%であった。

5調査内容

調査内容は、①食事介助、②自己の食に対する知識・態 度・行動、 ③介助によって変化したと思われる自己の食 の知識・態度・行動 (以下介助と食と称す)、④日常の食 行動、 ⑤食事観、⑥健康、 ⑦QOLに関する項目である。 (付表1)

食事介助については、体験した介助の内容、対象、場面 について複数回答を得た。また、介助の楽しさ及び介助 の知識・態度・行動についての項目を文献をもとに18項 目作成2024)し4段階のスケールにより選択肢回答とした。

自己の食に対する知識・態度・行動と、介助と食につ いては同様の項目とし、食生態学調査に用いられる質問 項目からそれぞれ18項目を用いた25)26)。日常の食行動 については、所要時間、食事をつくる人、共食、欠食の 4項目について、選択肢回答を得た。食事観については7 項目を作成し、 4段階の選択肢回答とした。健康に関し ては、知識・態度・行動と主観的健康状態に関して11項 目、QOLに関しては、2項目をそれぞれ選択肢回答とした。

6.解析方法

解析に際して、食事観の項目の回答を得点化し総合得 点を求めた。各項目の「最もそうであるもの (肯定的な もの)Jに対して3点、 以下2点、 l点、「最もそうではな いもの (肯定的でないもの)JにO点として3点満点とした。

この得点化は、日常の食行動や状況以外の食事介助、

食行動、介助と食、健康、QOLの知識・態度・行動の各 項目に対しても食事観と同様に行った。!lDち、各項目の

「最もそうであるもの」に対し3点とし、以下2点、 l点、

「最もそうではないもの」をO点として3点満点とした。

この食事観の平均得点をもとに群分けし、各変数との 相聞を見た。群間の有意差の検討にはx2検定を用いた。

食行動に影響した要因の検討には重回帰分析を用いた。 なお分析にはExcel統計97を用いた。

W 結 果

1.食事観と食事介助体験の内容 1)食事観の平均得点による群分け

食事観の各項目の平均得点を表lに示す。総合得点は 21点満点、で、平均得点が16.5:t 3.0、最高点21点、最低 点5点であった。このうち平均得点が19点以上のものを 高群 (n

38) 、 18~13点のものを中群(n

81)、 12点 以下のものを低群 (n

13)とした。

東京女子医科大学看護学部紀要Vol.4.  2001 

表1食事観の項目別平均得点

数値:点主so 平均得点 食 事 観 おいしいと感じることは

2.8

: : t

O.5  生きる意欲を引き出すと思う

食の豊かさと人生の豊かさは

2.1 

: : t

O.9  関係する

金習慣は自分らしさを表現する 2.3

: : t

O.8  食からは生活が見えやすい 2.5

: : t

O.7  交流目的の食事をよくする 2.2

: : t

O.9  食事の時以外にも食話題が多い 2.00.9 食と健康は密接に関係すると思う 2.7

: : t

O.5 

1) 

総合得点(21点満点) 16.5

: : t

3.0 

O各1)点最項と高目し点にて231点点い清て量点量宵低と定し点的、5個な点人回別答にlこ算3点出、し以た2、点1点、最も肯定的でない回答を

2)食事介助体験の内容と食事観の関係 表2 食事観群別食事介助の体験

総 慰 高軍事 中 群 低 群 群 間

差値%

=132 n"'J8  "=81  n=l]高 聖 低

食事介助 配 膳 下 膳 99.2

98.8  100.0  内 容 食べさせる 88.6  84. 91. 84.6 

書棄を交わす 8.6 86. 88. 92.3  口腔ケア 0.3 81. 80. 76.9 

手を洗う 75. 78. 76. 61.

前野けをかける 72.7  71. 76. 53.

身体に触れる 55.3  50. 59. 46.

食事をつくる 48. 55. 46. 38.~τ.

気持ちに触れる 37.9  39. 40. 15. 買い物 35.6  42. 34. 23.

食物栄養素の説明 34. 52. 29. 15.4

七 二 づ

圭の飽 1.

。 。

1. 7. 対象 老人家族以外 84.8  81. 86. 84.

乳幼児家族以外 44.7  44.7  45. 38.

育成人家族以外 40.9  34. 44. 38.

子ども家族以外 24. 36. 19. 15.

.篠老人 34.1  26. 38. 30.

1(簸膏・成人 37.1  31. 39. 38.

II乳幼児 18.9  18.4  19. 15.

室隼圭ども 10. 2.6  12.3  23.

喝 面 実習 94.7  92.1  95.1  1

.虚 56.8  55.3  58.0  53. ボランティア 49.2  47.4  49.4  53.

宣棄車しさ介助の 楽しい 25.8  42.1  22.2  0.

t

J" 」 食 事 介 勧 肉 容 対 象 繍 慨 は 樋 軍 国 管IJ "験定・ pι"'"P<.OI・岬p<.∞,

食事介助体験の内容を食事観群別にみたものが表 2であ る。食事介助内容の具体的な体験項目は、 「配膳

F

j

「食べさせるJ

r

言葉を交わすJ

r

口腔ケアjが多く、全体 の80.0%以上が体験していた。3群間で有意差がみられ たのは、「食物・栄養素の説明」で、全体では34.8%であ った。これが高群では52.6%、中群では29.6%、低群で

a

(4)

38.5%であった。これらの 2項目は、食事介助の中でも、

「食のつくる行動」に属し、特に食物や調理の知識を必要 とする行為である。他にも、「前掛けをかける

H

買い物」

などの「食のつくる行動」が、高群に高率であることを ノ示してL、た。

介助対象では、「老人」が全体で 84.8%と高率であった が、3群とも同様の傾向を示し特に違いは示されなかった。

介助場面は、「実習」が全体で 94.7%であり、殆との学 生が実習で体験し、 3群とも同様の傾向を示していた。

「ボランティア」は全体で 49.2%にみられ、 3群とも約半 数の学生が体験していた。

介助の楽しさでは、楽しいと回答したものが全体で 25 8%であった。これは高群は 42.1%であり、中群では 22 2 %、低群は 0.0%と群問に有意差がみられた。

以kから、食事介助体験では、高群に「食のつくる行 動」についての体験が高く、特に知識を必要とする援助 が高率であった。また、食事介助を楽しいと思うものも 高群に高いという特徴がみられた。

2.食事観と学生自身の食行動の関係 表3 群別の食行動

全体 中静 低 群 金 蔓 の 所 重 堕 堕 n=132  n=38  n=81  n=13高 中 低 食ベる 10分 以 内 75. 73. 19.0  53.8 

10分 以 上 25. 26. 21.0  46.2  30分 以 内 91.4  91.3  100. 100  30盆 以 上 2.6  2.

。 。 。 。

30分 以 内 15. 68.4  19. 16. 30分 以 よ 24. 31. 21. 23. 準備 5分 以 内 74. 51.9  19. 92.3己ー」

5i誌上 25.8  42.1  21. 1.1  10分 以 内 59.1  42.1  64.2  69.3 "τ

10分 以 上 40.9  55.2  35.8  30. 片づけ 5分 以 内 89.4  81. 91.3  100. 5分 以 上 10.6  18.4  8.6 

。 。

10分 以 内 66.5  60.5  81. 923EL.  10分 以 上 23.5  39.5  18.5  7. 食蔓をつ〈る人

自分で 31.9  41.4  31.0  15.4 L

よ ) ) 己

食事をつ〈る

22.0  28.9  21. 1.7

ヨ ピ

26.5  34.2  25.9  7 7 J   共~

一人で 57. 13. 54. 30.L一一一」

食べている )

6. 1. 1. 0.t,一〉」

31.1  28. 30. 38.L

~と圭 0.0  0.0 

。 。

0.

~食

欠食ある ある 70. 55. 14.1  92.3ヰ」

12回以よ 52.1  38.1  53.4  15.0  週 ト2回以よ 16.1  4.8  15.0  41.1  12回以よ 19.4  19.0  18.3  25.0 

x'績宜・:>: P<.Q5 >)P(.01>>>:P<1

「欠食」について群別に見たものが表3である。

「所要時間」では「準備JI片づけ」に群聞による有意差 がみられた。「朝食の準備」では、 5分以内が全体の 74.2

%であったが、高群は 57.9%と 3群中最も少なかった。

逆に、高群では 5分以上かけている者が 42.1%おり、他 群より有意に多かった。 「片づけ」でも、夕食で 10分以 上かけるものに同様の傾向がみられた。

「食事をつくる人」では、自分でつくる割合が朝で全体 の 37.9%、峰、夕は 20%代と全体;こ低い傾向を示した。

その中で高群は、朝、昼、夕ともに他群よりは高い傾向 があり、有意に多かった。

「共食」では、ひとりで食べる割合をみると、全体で朝 は57.6%、夕は 31.1%であった。朝の割合をみると、高 群が 73.7%と最・も多く、中群 54.3%、低群 30.8%であ った。タは、朝とは逆で、低群が最も多く 38.5%であっ た。3食ともひとりのものはなかった。

‑ 4 ‑

「欠食」をみると、日常的にあると凶答したものが、全 体で 70.5%あった。高群では 55.3%であったが、中群で 74.1 %、低群では 92.3%であり、群聞に有意差がみられ た。ニのうち、朝食に週 1‑2回以上の欠食があるもの は、全体で 52.7%、高群では 38.1%、中群では 53.4%、 低群で 75.0%であった。

以上から、日常の食行動では、高群に食事の準備や片 づけの所要時聞が長く、食事をつくる割合も高L、。朝は ひとりで食べるものの割合が多いが、欠食割合は他群よ りは少ないという特徴がみられた。

②主要食物摂食頻度

主要食物の摂食頻度を得点化して、群聞の有意差をみ たものが表4である。

表4 食事観群別食事介助の体験

全体 蔵書草 中解 E11; 0=132  1'1=38  n=8 n=t3  度侵 食 卵 毎日 27.3  28. 28. 15.

牛乳 聾目 34.1  42.1  33. 15.4  魚介頭 恒国 11. 18.4  9.9  0.0  27. 34.2  23.5  30.8  大豆 3園以上 31. 50.0  25.9  7.1 ~ーγ」

温 色 野 菜 聾 目1園以上 32. 29.0  37.0  15.4  淡 色 野 菜 聾 目1園以上 41. 42.1  53.1  30.8  海)1 3団副主 37.8  36.8  39.5  30.8  いも顛 3園以上 28. 36.8  27.1  15.4  果 物 揖自 22.1  34.2  21.

。 。 ー 戸

頻 度 得 点 8点以上 9.8  13. 7.4 

。 。

x'

・ . l !

), pく 情

')卵、牛乳魚介圃.肉圃..笹野毘浪色野...倫についてI1まiB'園以上ふ大E・&.淘・圃.いも圃

量3園以LJの揮食1:L'..(10....)て0・..化した・..以上!剖Ojl"'"・1・ "以上骨もの.

(5)

食物の摂食頻度では、大立と果物の摂食に違いがみら れた。大豆の摂食が週3回以上のものは、全体で31.1%  であった。これが高群では50.0%であり、中群は25.9

%、低群は7.7%であった。果物も毎日のものが全体で 22.7%であるが、高群は34.2%、中群は21.0%、低群は 0.0%であり、群聞の有意差がみられていた。

次にこれを頻度得点でみた。頻度得点とは、これらの 10品目を卵、牛乳、魚介類、肉類、緑黄色野菜、 淡色野 菜、果物について「ほぽ毎日 l回以上」、大豆製品、海草 類、いも類は「週3回以上」の摂食に対し各l点とし、合 計10点満点で得点化したものである。このうち8点以上 の良好とされるものの割合をみると、全体では9.8%で あった。高群では13.2%、中群は7.4%、低群は0.0%で あった。高群に良好なものの割合が高いといえるが、い ずれにしても低い結果であった。

以上から、主要食物の摂食頻度では、高群に大豆と果 物の摂食割合が高く、 頻度得点も他群に比べると良好な ものの割合が高いという特徴が見られた。しかし、頻度 得点は全体的に低い傾向を示していた。

③食事観群別にみた介助と食(食事介助体験により変化 した食の知識・態度・行動)の割合

介助と食の項目で、食の「つくる

J r

食べる

J r

伝承す

る」から群聞の傾向を見たものが表5である。

「つくる」、「食べる」、「伝承するJのどの面からも、高 群と低群、高群と中群に有意差が見られた。特に、項目 数の割合で見ると、「つくる」は5項目中4項目で高群に 80%の高い割合を示した。

知識・態度・行動で見ても、知識では3項目中すべての 項目に、態度では8項目中5項目に高群に高い割合を示し た。

東京女子医科大学看護学部紀要Vo.l4. 2001 

るといえる。

3.食事介助体験が食事観や食行動に与える影響 食行動は、知識・態度・行動の項目の総合得点即ち「食 行動得点Jを求めたものである。これを目的変数にし、

「食事介助Jr健康Jr食事観Jr介助と食」を説明変数と して重回帰分析により食事介助からの影響をみた。更 に、「食行動」と rQOLJの関係は相関係数からみた。こ のとき、対象者の学校差、居住形態の違いによる影響を 考慮し、この2つも説明変数に加えて重回帰分析を行っ た。その結果、学校 (β=.113)、居住形態(β=一.052) 共に影響が少ないことを確認し、この2つの要因を除い て分析を行う事にした。

3群聞の比較をすると、影響する要因が群聞で異なる 傾向を示した。高群の結果は図lである。

数値は標準価回帰係数(8) R重回帰係強

R'決定係敷

Pι05 P<.OI

図1 高群の食行動に影響する要因 表6 高 群 相 関 関 係 の 分 割

従属変数独立変数直後効果間後効果総効果相関係敵見かけの相関 介助と食食事介助 141  .141  .090  .051  健康 .234  .239  .Z09  .030  食事観 食事介助 .159 

.157  .127  .030 

健康 147

.150  .111  .039 

介助と食 014  .014  .031  .017  食行動 食事介助 355  .038  .393  .452  .059  健康 444  .054  .498  .494 

介助と食 .166  .001  .167  .102  .065  食事観 093  .093  .092 

以上からは、食事介助体験により変化した項目の割合 は高群で高い傾向が見られた。これは、「食のつくる行 動」が影響を受け、特に、知識や態度に影響を受けてい

表5 食のつくる、食べる、伝承する行動から見た高群の特徴

知粛識と低 高と中 態度 高と低高と中 行動 有窓釜の見られた 高と低高と申項目数/項目数(冒)

介助と食つくる 食物や栄養素開理方法

>

>  

イン却ント減らす積極性

│栄:費量補助食の利用組み合わせを考える

」千十

4/5(80.0)  食べる 組み合わせ 食への関心

;

院二

町一二

̲ ̲ L

一二一

味への関心 おいしく食べる積纏性 食事の姦しさ

朝食侵食の積侮性 4/9(44.4) 

伝承する 共食への積纏性

l

E

E

連.に関する側ことの紘多さ一ム〉 …ニ‑

情報収集の積纏性 214(50.0)  x'績定 P<.05>>:P<.OI >>>:Pι

空調.項目怠L

‑ 5 ‑

(6)

= .444)、5%水準のものはこの2つであった。「食事観」

の「食行動」への影響は少なかった (β=.093)。重相関 係数は.577、決定係数は.333であった。決定係数の値 からこのモデルでは約33%の説明力であるが、高群では 食事介助体験が直接食行動に影響しており、健康も強い 要因であることがわかった。また、「食行動jとrQOLJ の相関係数は.389となり、 5%水準で有意な関連がみら れ、関係することが示された。これより高群の傾向は、

「食事介助Jと「健康」が「食行動」に影鮮を与えている。 これは、食事介助をすることが直接的に自己の食行動に 影響していることを示している。また、「食行動」と rQOLJも関係すると菖える。

次に中群の結果は図2である。中群では、 「食行動Jに

散 値l11準価回帰係数{β) R:.回帰係敬

R'決定係費量 枠 制 。1.,帥p(

I

図2 中群の食行動に影響する要因

7 中群相関関係の分割

従 属 変 数 独 立 変 数 査 後 効 県 間 後 効 果 総 効 果 相 関 係 数 見 か け の 相 関 介 助 と 食 食 事 介 助 .425  .425  .431 

健康 115  .115  .140  .025  食 事 観 食事介助 133 .154  .021  .023  002  健 康 023  .042  .019  0 010  f下助と食 364  .364  304  .060  食 行 動 食 事 331  .072  .403  .411

健康 109  .037  .146  155  .009  介助と食 .155  103  258  .399  .141  食 事 観 .283  .283  .340  .057 

影響を与えるものが「食事介助J(s = .331)と「食事観」

(β=.283)であった。この2つは1%水準であった。重 相関係数は.524、決定係数が.274であった。約27%の 説明力ではあるが、中群には「食事介助」から直接「食 行動」に影響するものと、「食事介助」から発して「介助 と食」、「食事観」を通って食行動へ向かう2つのルートが あることがわかった。一方「食行動」と fQOLJは相関 係数が 065と低く、関係が示されなかった。これより中 群の傾向は食事介助をすることが直接食行動に影響し、

並びに食事介助は食事観にも影響している。しかし、食

e P<.OOI

図3低群の食行動に影響する要因

表8 低群相関関係の分割

従 属 変 数 独 立 変 数 直 接 効 果 間 後 効 県 総 効 果 相 関 係 数 見 か け の 相 関 介 助 と 食 食 事 介 助 303

, ‑

303  .400  .097 

健康 335  335  .422  087  食 事 観 食事介助 .240  .0 219 .450  .231  健康 827  .023  .804  .867  063  介助と食 068  .068  .377  .30 食 行 動 食 事 介 助 180 292  112  .326  .214 

健康 617  .266  .351  .415  .064  介助と食 .558  .001  .559  .678  .128  食 事 観 563 .563  .263  .300 

草寺を与える要因として、重相関係数.563、決定係数.389 で、各要因との有意性を示すものは無かった。即ち「食 事介助」による「食行動」への影響は考えにくい結果と なった。同時にこれは、食行動へ影響を与えるものが今 回用いた要因では示されなかったことでもある。「食行 動」と fQOLJも相関係数 110と低く、 関係が示されな かった。その中で唯 一「健康Jが (β=.827)、0.1%水 準で食事観に影響を与えていた。これより低群の傾向 は、食事介助や食事観が食行動に影響を与える要因にな っていな L、。しかし、食事観は健康に影響されていると

6 ‑

いうことがわかった。

V 考 察

1 食事介助体験の内容と食事観の関係について

今回の結果では、人聞が主体的に生きる姿勢と食との 関係についての考えを示す食事観の違いにより、体験し た食事介助の内容にも違いが見られた。 高群の特徴が

「食物・栄養素の説明」や「食事をつくる」で示した、食 の「つくる行動」に関する項目に表れた。つくる行動は 食事への主体性が表れる行動19)と雪われており、この行 動に高群の関与が高いことは注目される。「つくる行動J

の人間にとっての意味を考えると、食べるものに自らの

(7)

意思を反映させることは当たり前であるがゆえに重要な 行為であると思われる。高齢者において食に対する積極 性とQOLの関連が確かめられた先行文献27)もあり、食事 への主体性は生きる意欲にも関与していると考えられ る。これらつくる行動への援助の効果は、今後、看護の 領域で検証される必要があるお)と指摘されている。その 実践を、食事観の高群がより行動化しやすい傾向にある と今回の結果から考えることができ、今回の視点でとら えた食事観の重要性が援助内容との関係から示唆され f

2食事観と自己の食行動との関係について

食事観と自己の食行動の関係については、高群に食事 の準備や片づけの所要時聞が長く、食事をつくる割合も 多いことから、日常的に食事をつくることに関与してい ることが示された。日常的な欠食については、全体で70

%と高率に見られ、特に、低群では92.3%にも達してい た。そのうち朝食は全体で52.7%で、高群でも38.1%、 低群の75.0%に見られている。この結果は同年代の女性 の朝食の欠食率13.8%初から見ると遥かに多い。また、

看護短大生では、朝食の欠食が26.9%という報告があ る6)。この報告では看護学生が他の学科の学生に比べて 望ましい食習慣を持つものが少ない傾向にあり、過密な 講義、臨床実習に追われ食事時聞が不規則になりやすい こと、食事をする時間、料理をする時聞をとれないこと が理由とされている。

これを摂食物の状況から見ると主要食物の摂食頻度得 点から、摂食状況が良好と判断できるものが全体で9.8

%、高群でも 13.2%であった。同じ項目で、地域住民を 対象をしたものでは17.0%であった似ことから、今回は 低い傾向を示しているといえる。高群の特徴として、大 豆製品の摂食率が高いことがあげられ、ハランス的に中・

低群に比べるとよい傾向にあるとはいえるが、頻度得点 から見ると高群にも改善の余地があり、先行研究が示す ように看護学生全体に食生活を営む力を高める工夫が重 要と考えられる。

さらに、今回、食事介助を体験して変化した食の項目 (介助と食)で、食事観の高群に食のつくる行動により変 化が見られたと回答したものが多く、中でも知識や態度 がより影響を受けたとしているものが多いことが示され f

これらのことから、人聞が主体的に生きる姿勢と食と の関係を考えることは、生活者として望ましい食行動を 営む上でも重要であると考えられた。また、欠食や摂食 頻度につくる行動が関与していると考えられることもふ

‑ 7 ‑

東京女子医科大学看護学部紀要Vol.4.  2001 

まえて、学生の食のつくる行動に対する能力の知識と態 度をより高めることが望ましい食行動へ向かうことに効 果的であると考えられる。同時に、この年代の学生の発 達から考えると、学生の内面の要因が食行動に大きく影 響することが考えられ、日常生活を営むカは心の成長と 密接に関係していると思われる。これには、自己の食に 気が回り、調理や食事を楽しむ時間やゆとりを作り出す 力も必要となると考えられる。

3.食事介助体験が食事観や食行動に与える影響について 食行動に与える影響について、高群・中群・低群のパ ス図の違 L、からそれぞれの特徴が見られた。高群では、

食事介助と健康が食行動へ影響することが示された。更 に、食行動からQOLへのパスも示され、食事介助体験が 望ましい食行動の要因になっていると考えられた。中群 では、食事介助から直接食行動へのパスと、介助と食、食 事観を経由した食行動へのパスが示された。これは、食 事介助を体験することで、食事観が影響を受け、この影 響によって、自己の食行動を見直すなとの機会となり結 果的に食行動も変化していることを示すと考えられる。

低群では、食事介助から食行動へのパスがでなかったこ とで、食事介助の体験と自己の食生活との関連は薄いと 考えられる。これらのことからは、食事介助を通して、

人聞が主体的に生きることと食の関係についても考えを 深めることが、自らの望ましい食行動を営むことに影響 すると考えられた。よって、学生の食生活を営むカを形 成する上で、食事介助体験を通して、食事観を人聞が生 きることの意味との関連から深めることが重要であると 考えられた。

本研究の限界としては、食事観の形成に関して、食事 介助の影響を数量的に測定できないことがあげられる。 今回取り上げた食事観は、その個人の生育歴の中で自然

と培われてきたものを土台にしているため個人差もあ り、形成前との比較が難しい。食事介助により変化した か否かが主観的な評価でしかない。反面、自分自身が、

援助を体験することにより変化したことを確認すること の重要性もあるので、食事観の共有やともに考える場の 設定を重視した実践に活かしてゆきたいと考える。

謝 辞

本研究をまとめるに当たり、調査にご協力いただきま した学生の方々、並びに学校関係者の皆様に、深く感謝 致します。

(8)

項目

食 食事介助 食事介助方法の知識 介助は楽しい 盛りつけの工夫 体験の有無 盛りつけ方法 盛りつけの関心 環境づくりの工夫 介助対象 環境の整え方 環境づくりの配慮 姿努、食具の工夫 介助場所 姿事号、食具の整え方 姿努、食具の重要性 栄養価の高い食物摂取 介助内容 栄養価の高い食物選択 栄養価の高い食物選択 人との交流の工夫

人との交流の工夫 励ましの言葉を加えている 励ましの言葉を加えたい

食行動 調理方法の知裁がある イン対外減らす積極性 組合せ考えて食べる 食物や栄養所要量の知識 おいし〈食べる積極性 栄補助食利用

ハランスの取り方の知識 食への関心 間食をしないようにしている 食事の楽しさ 甘いものをとりすぎない 味への関心 規則正しく食事を祭る 朝食の僕取の積極性 金を話題にすることの多さ 共食への積極性 交流目的の食事の多さ 情報収集の積極性

日常の食行動 主要食摂取頻度

食事時間 食事をつくる人 共食対象 欠食 介助と食

│誠食ハラ理物ン方やスのj栄去取の養り知所方識要のが量知あの識る知識 車栄間E平告食補ませ助をし考食なえ事いJIて用よ食うべにるしている

官規食交い則を涜2も正目番の組し的をぐにの食とす食事りるす事をこ?ぎのと喪な多のるいさ多さ

食事観 おいしさと意欲はつながる

食の豊かさと人生の豊かさ 食習慣は自分らしさ表現 食からは生活が見えやすい 交流目的の食事多さ

健康 健康管理の知識

食食食事欲と健を以康健外の康の関の時係指食標話と題考多えさる

運動頻度 肩」り

QOL  物事に対する積樋性

人生の楽しさ 属性

引用文献

l)F、ナイチンゲール(薄井坦子他訳):看護覚え書き,

(改訂新版).医学書院. 1983 

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4)尾岸恵三子,足立己幸:看護において"人間らしい食

‑ 8 ‑

ストレス対処している 疲 労 感 主観的健康状態 便通

足が重い やる気 睡眠

年 齢 性別 家族情成 居住形態 専門学習医

生活"への援助をするための看護学生に対する教育 の検討ーその1.学生の食生活の意識と行動の現状,

日本看護科学会誌.6 (2). 104‑105. 1986  5 )関戸啓子.小野和美,内海混・看護婦の食習慣と食に

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(9)

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‑ 9 ‑

東京女子医科大学看護学部紀要Vo.l4.  2001 

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1997 

24)小山内美智子:あなたは私の手になれますか, (第l 版)中央法規, 1997 

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28)大沼扶久子,遠藤和子:I食」を通して人閣の生きる 意欲に働きかけた事例から「食」の看護とエビデン スを考える, EBNursing, 1 (4), 52‑56. 2001  29)健康・栄養情報研究会編:国民栄養の現状 平成10

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参照

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