• 検索結果がありません。

看 護 師 の 正 確 な 情 報 伝 達 に 関 す る 医 療 安 全 教 育 の 検 討

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "看 護 師 の 正 確 な 情 報 伝 達 に 関 す る 医 療 安 全 教 育 の 検 討"

Copied!
97
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

学 位 請 求 論 文

看 護 師 の 正 確 な 情 報 伝 達 に 関 す る 医 療 安 全 教 育 の 検 討

平 成 30 年 度

岡 山 大 学 大 学 院 社 会 文 化 科 学 研 究 科 学 籍 番 号 75424107

山 本 恵 美 子

(2)

目 次

序 章

本 研 究 の 目 的 お よ び 意 義

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 1 . 研 究 の 背 景 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 2 . 看 護 師 間 の 情 報 伝 達 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・2 3 . 本 研 究 の 目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・4 4 . 本 論 文 の 構 成 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・5

1

章 我 が 国 に お け る 看 護 教 育 制 度 の 動 向

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 6 1 . 研 究 の 背 景 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・6 2 . チ ー ム 医 療 推 進 に 向 け た 取 り 組 み ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・7 3 . 看 護 教 育 制 度 に お け る 医 療 安 全 教 育 の 現 状 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・8 4 . 看 護 基 礎 教 育 に お け る 安 全 教 育 に コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 教 育 の 課 題 11 5 . ま と め ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・15

2

章 ス イ ス チ ー ズ モ デ ル に 基 づ く ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー の 発 生 と 防 止 に 関 す る 医 療 安 全 教 育 の 実 践 と 評 価

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・16 1 . 正 確 な 情 報 伝 達 に 向 け た 教 育 方 略 の 開 発 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・18 2 . 研 究 の 背 景 と 目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・20 3 . ス イ ス チ ー ズ フ ロ ー 型 ゲ ー ム の 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・21 4 . 心 理 教 育 の 技 法 を 応 用 し た プ ロ グ ラ ム の 特 徴 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・22 5 . ス イ ス チ ー ズ フ ロ ー 型 ゲ ー ム の 予 備 的 試 行 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・23 6 . 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・23 7 . 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・25 8 . 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・30 9 . 総 合 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・31

3

章 ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー の 発 生 と 事 故 防 止 の 過 程 を 学 ぶ

シ ナ リ オ シ ミ ュ レ ー シ ョ ン と ス キ ル 学 習 ( 研 究 Ⅲ )

・ ・34

― 正 確 な 情 報 伝 達 に 向 け た 医 療 安 全 ス キ ル ~ タ ー ゲ ッ ト

行 動 の 抽 出 ―

1 . は じ め に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・35 2 . 教 育 プ ロ グ ラ ム の 開 発 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・35 3 . 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・36

(3)

4 . 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・37 5 . 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・43 6 . 総 合 交 雑 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・45

4

章 正 確 な 情 報 伝 達 に 関 す る 若 手 看 護 師 の 指 示 の 出 し 受 け

ス キ ル の 抽 出

(

研 究 Ⅴ )

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・46 1 . 研 究 の 背 景 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・47 2 . は じ め に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・47 3 . 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・52 4 . 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・54 5 . 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・58 6 . 総 合 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・60

5

章 看 護 学 生 の 正 確 な 指 示 受 け の た め の ソ ー シ ャ ル ス キ ル

ト レ ー ニ ン グ

(

研 究 Ⅴ )

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・62

― 臨 地 実 習 で 直 面 す る 困 難 状 況 を 課 題 場 面 と し た 医 療 安 全 教 育 の 試 み ―

1 . 研 究 の 背 景 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・63 2 . は じ め に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・63 3 . 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・65 4 . 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・69 5 . 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・72

終 章

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・77

総 合 考 察

1 . 本 研 究 の 知 見 と 意 義 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・78 2 . 看 護 師 の 正 確 な 情 報 伝 達 に む け た 教 育 の あ り 方 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・81 3 . 今 後 の 課 題 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・82

引 用 文 献 謝 辞

・・ ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・84

・ ・ ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・94

(4)

序 章

第 1 節 研 究 の 背 景

医 療 の 高 度 化・複 雑 化 に 伴 う 業 務 の 増 大 に よ り 医 療 現 場 の 疲 弊 が 指 摘 さ れ る な ど 医 療 の あ り 方 が 問 わ れ る 時 代 と な っ て い る( 厚 生 労 働 省,2011)。ま た , 質 の 高 い 医 療 を 求 め る 国 民 の 権 利 意 識 の 向 上 の 変 化 を 背 景 に 伴 い ,安 全 な 医 療 に 対 し て 高 い 関 心 が 寄 せ ら れ て い る 。

安 全 な 医 療 が 求 め ら れ る 契 機 と な っ た 事 例 と し て ,1999 年 に 起 き た 2 つ の 重 大 な 医 療 事 故 が あ げ ら れ る 。一 つ は ,横 浜 市 立 大 学 事 件 の 肺 手 術 と 心 臓 手 術 の 患 者 を 取 り 違 え て 手 術 が 行 わ れ た も の で あ り ,も う 一 つ は ,都 立 広 尾 病 院 事 件 の 看 護 師 が 消 毒 液 と ヘ パ リ ン 加 生 理 食 塩 水 を 取 り 違 え て 静 脈 内 に 投 与 し ,患 者 が 死 亡 し た 事 故 で あ る 。国 は ,医 療 安 全 対 策 に 着 手 し ,2001 年 3 月 「 患 者 安 全 推 進 年 」 と し ,「 患 者 の 安 全 を 守 る た め の 医 療 関 係 者 の 共 同 行 動 」(Patient Safety Action)を 推 進 し た 。 そ し て , 医 療 安 全 推 進 室 設 置 し,医 療 安 全 対 策 検 討 会 議 を 発 足 さ せ ,同 年 10月 に は ,医 療 安 全 対 策 ネ ッ ト ワ ー ク 整 備 事 業( ヒ ヤ リ・ ハ ッ ト 事 例 収 集 等 事 業 )を 開 始 し た 。ま た ,2002 年 に は ,「 医 療 安 全 推 進 総 合 対 策 」を 策 定 し ,2003年 に は ,特 定 機 能 病 院 及 び 臨 床 研 修 病 院 に お け る 安 全 管 理 体 制 の 強 化 を は か る 目 的 で ,医 療 法 施 行 規 則 の 改 正 が 行 わ れ た 。し か し な が ら ,同 年 に は ,東 京 慈 恵 医 大 付 属 青 戸 病 院 事 件 ( 泌 尿 器 科 手 術 に よ り 患 者 が 死 亡 ) が 発 生 し ,「 厚 生 労 働 大 臣 医 療 事 故 対 策 緊 急 ア ピ ー ル 」が 各 医 療 機 関 に 周 知 が な さ れ た 。2007 年 に は ,医 療 機 関 に お け る 安 全 管 理 体 制 の 確 保 に 向 け ,医 療 法 施 行 規 則 が 改 正 さ れ た 。2016 年 に は ,「 大 学 附 属 病 院 等 の 医 療 安 全 確 保 に 関 す る タ ス ク フ ォ ー ス 等 を 踏 ま え た 特 定 機 能 病 院 の 承 認 要 件 の 見 直 し に つ い て 」 報 告 書 が ま と め ら れ ,「 特 定 機 能 病 院 の 承 認 要 件 の 見 直 し 」 が な さ れ , 今 日 に 至 っ て い る 。

国 民 の 医 療 に 対 す る 関 心 の 高 ま り に 応 え る べ く ,国 の 医 療 安 全 対 策 は 推 進 さ れ て き た が ,繰 り 返 し て 起 こ る 医 療 事 故 や ,医 療 の 進 歩 に 伴 う 業 務 の 増 大 は ,医 療 現 場 の 疲 弊 を 招 き ,医 療 の 在 り 方 が 根 本 的 に 問 わ れ る 状 況 と な っ た 。 こ の よ う な 中 ,「 チ ー ム 医 療 」 は , 医 療 の 在 り 方 を 変 え 得 る キ ー ワ ー ド と し て 注 目 さ れ , 厚 生 労 働 省 は 2010 年 「 チ ー ム 医 療 の 推 進 に 関 す る 検 討 会 」 を 開 催 し , 翌 年 3 月 に は ,「 チ ー ム 医 療 の 推 進 に つ い て 」 の 報 告 書 を 取 り ま と め た 。厚 生 労 働 省 は ,チ ー ム 医 療 を「 医 療 に 従 事 す る 多 種 多 様 な 医 療 ス タ ッ フ が ,各 々 の 高 い 専 門 性 を 前 提 に ,目 的 と 情 報 を 共 有 し ,業 務 を 分 担 し つ つ も 互 い に 連 携・補 完 し 合 い ,患 者 の 状 況 に 的 確 に 対 応 し た 医 療 を 提 供 す る こ

(5)

と 」と 説 明 し ,チ ー ム 医 療 の 推 進 に は ,医 療 ス タ ッ フ 間 の 連 携・補 完 の 推 進 な ど ,関 係 者 が そ れ ぞ れ の 立 場 で 様 々 な 取 組 を 進 め る こ と が 必 要 で あ る と 言 及 し て い る(厚 生 労 働 省,2010)。 こ れ ら の チ ー ム 医 療 の 推 進 に 向 け た 取 り 組 み は ,従 来 の 医 師 主 導 に よ る パ タ ー ナ リ ズ ム と い っ た 一 方 向 的 な 医 療 が 見 直 さ れ ,イ ン フ ォ ー ム ド・コ ン セ ン ト を 重 要 視 す る 患 者 中 心 の 医 療 へ と 転 換 し , 現 在 で は ,患 者 参 加 型 医 療 と し て ,患 者 も チ ー ム の 一 員 と し て ,医 療 に 参 加 す る こ と が 広 く 認 知 さ れ て い る 状 況 に あ る 。

特 に ,看 護 師 は ,医 療 現 場 に お い て ,診 療 の 補 助・療 養 生 活 の 世 話 と い っ た 幅 広 い 業 務 を 担 っ て い る こ と か ら ,「 チ ー ム 医 療 の キ ー パ ー ソ ン 」 と し て 患 者 や 医 師 そ の 他 の 医 療 ス タ ッ フ か ら 寄 せ ら れ る 期 待 は 大 き い と さ れ て い る 。

こ の よ う な 中 ,看 護 師 は ,臨 床 現 場 で 必 要 と さ れ る 看 護 実 践 能 力 と 看 護 基 礎 教 育 で 習 得 す る 看 護 技 術 と の 間 に 乖 離 が 指 摘 さ れ て お り , 新 人 看 護 師 が , リ ア リ テ ィ シ ョ ッ ク に よ っ て 早 期 に 離 職 す る と い う 問 題 が あ る ( 厚 生 労 働 省,2011)。ま た ,新 人 看 護 師 や 経 験 年 数 の 浅 い 看 護 師 の イ ン シ デ ン ト 発 生 件 数 は ,多 い こ と が 示 さ れ て お り ,医 療 安 全 に 対 す る 教 育 は 重 要 課 題 と さ れ て い る 。 し た が っ て , チ ー ム 医 療 の キ ー パ ー ソ ン と し て 期 待 さ れ る 看 護 師 が , 患 者 に 安 全 な 医 療 を 提 供 す る た め に は ,看 護 基 礎 教 育 か ら 臨 床 現 場 へ の 適 応 を な だ ら か に 学 習 で き る 教 育 が 必 要 で あ ろ う 。

厚 生 労 働 省 は ,看 護 師 が チ ー ム 医 療 に お け る 役 割 を 果 た す た め に は ,患 者 の 状 態 の 予 測 力 や 判 断 力 ,コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 が 極 め て 重 要 で あ る と 指 摘 し て い る ( 厚 生 労 働 省,2011)。

チ ー ム 医 療 の キ ー パ ー ソ ン と な る 看 護 師 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン は ,対 患 者 や 家 族 ,及 び 対 医 療 者 な ど 様 々 な 場 面 が 想 定 さ れ る が ,特 に ,医 療 安 全 に 関 連 す る 場 面 を 鑑 み れ ば ,そ の 多 く は ,医 療 者 間 の 情 報 伝 達 が 重 要 と な る で あ ろ う 。特 に 看 護 師 間 の 情 報 伝 達 が ど の よ う な も の か 解 明 さ れ れ ば ,臨 地 実 習 で の 学 び を と お し て 段 階 的 に 看 護 基 礎 教 育 か ら の 育 成 が 可 能 と な る と 考 え る 。

本 研 究 で は ,安 全 な 医 療 を 提 供 す る た め に 必 要 な 看 護 師 の 情 報 伝 達 に 関 す る 研 究 を 行 う 。そ し て ,看 護 基 礎 教 育 か ら 臨 床 現 場 へ の 適 応 に む け た 正 確 な 情 報 伝 達 に つ い て 検 討 し て い く 。

第 2 節 看 護 師 間 の 情 報 伝 達

看 護 基 礎 教 育 で は ,安 全 な 医 療 に 向 け「 報 告 ・ 連 絡 ・ 相 談 」を ,常 に 行 う

(6)

こ と が 教 育 さ れ る 。こ の「 報 告 ・ 連 絡 ・ 相 談 」に は ,対 象 者 と の 情 報 伝 達 を 行 う こ と を 場 面 毎 に 捉 え な お し た も の と 解 釈 で き る で あ ろ う 。「 報 告 」 は 情 報 の 伝 達 が 指 示 者 に 対 し フ ィ ー ド バ ッ ク さ れ る こ と を 意 味 す る 。「 連 絡 」は , 情 報 の 共 有 と い う 意 味 で あ り ,「 相 談 」 は , 送 ら れ た 情 報 を 解 釈 し 吟 味 し , 双 方 の 意 見 を 交 換 し 検 討 し て 問 題 の 明 確 化 を 図 り ,解 決 策 を 導 く こ と が 含 ま れ る 。そ こ に は ,情 報 の 共 有 が な さ れ て い る 。つ ま り こ れ ら は ,情 報 伝 達 を 含 む 双 方 向 の や り 取 り と い え る だ ろ う 。し た が っ て ,本 稿 で は ,看 護 師 間 の 情 報 伝 達 に 着 目 し 検 討 し て い く こ と と す る 。臨 床 場 面 に お け る 看 護 師 間 の 情 報 伝 達 を 概 観 し た 場 合 ,情 報 伝 達 の 対 象 者 が 異 な る 視 点 か ら 3 つ の ス テ ー ジ が 想 定 さ れ る と 考 え る 。

ま ず ,は じ め に 看 護 学 生 は ,看 護 学 生 間 の 情 報 伝 達 を 成 立 さ せ る こ と か ら 始 ま る 。看 護 学 生 が 臨 床 現 場 に 出 向 い て ,実 習 を 行 う 場 合 は 通 常 少 人 数 の グ ル ー プ 単 位 で 学 習 が 進 め ら れ る 。こ の 際 ,学 生 間 の メ ン バ ー 内 で の 情 報 を 共 有 す る こ と が 必 要 で あ る 。次 に ,看 護 学 生 は ,臨 床 指 導 者 や 看 護 師 と の 情 報 共 有 が 必 須 と な る 。や が て 看 護 基 礎 教 育 を 終 え て ,新 人 看 護 師 と し て 配 属 さ れ , 先 輩 看 護 師 , リ ー ダ ー 看 護 師 と 業 務 を 進 め る こ と と な り , 医 療 安 全 上 , 正 確 な 情 報 伝 達 が 不 可 欠 と な る 。こ の 情 報 伝 達 の 対 象 を 修 得 ス テ ー ジ に 分 け て 考 え る な ら ば ,ス モ ー ル ス テ ッ プ の 学 習 と し て 位 置 づ け る こ と が 可 能 と な る と 考 え ら れ る 。

例 え ば , 看 護 学 生 は , 少 人 数 の グ ル ー プ 単 位 で 病 棟 に 入 り , 病 棟 の 様 々 な ル ー ル に つ い て 説 明 を 受 け る 。 物 品 の 配 置 か ら , 病 棟 の 週 間 ス ケ ジ ュ ー ル な ど , 患 者 さ ん の 入 浴 日 や そ の 予 約 方 法 の 手 順 な ど 多 く の ル ー ル に 準 じ て 行 動 す る こ と が 求 め ら れ る 。 し か し , 医 療 と い う 場 は 流 動 的 で あ り , 看 護 学 生 は 常 に 確 認 作 業 が 求 め ら れ る 。

具 体 的 に は , 自 分 の 患 者 を 検 査 室 に 移 送 す る 際 に , 車 い す を 定 位 置 に 取 り に 行 っ て も な い 場 合 が あ る 。 そ の 際 , 検 査 に 遅 れ な い よ う に 探 し て 回 る こ と と な る 。 最 も 容 易 に 聞 き や す い の は 同 じ グ ル ー プ の 学 生 に , 空 い て い る 車 椅 子 が な い か の 情 報 共 有 を 行 う 。 こ の よ う な 学 生 間 の 情 報 伝 達 や 共 有 は , 比 較 的 容 易 に 行 わ れ て お り , ス テ ー ジ 1 の 段 階 で あ る(図 1 - 1)。

し か し , 車 い す が 見 つ か ら な い 場 合 は , 看 護 師 に 相 談 し 空 い て い る 車 椅 子 が な い た め , ど う し た ら よ い か 相 談 す る こ と と な る 。 多 重 業 務 に 追 わ れ る 看 護 師 に 適 切 な タ イ ミ ン グ で , 相 談 す る こ と は , 学 生 間 の 聞 き や す さ と 異 な り , 不 慣 れ な 実 習 環 境 に お い て 緊 張 を 伴 い , 対 象 が 上 位 の 看 護 師 と な る た め , ス テ ー ジ 2 の 段 階 と い う 見 方 が で き る 。 こ の よ う に 看 護 学 生 は ,

(7)

臨 地 実 習 中 に い く つ も の 経 験 を 通 し , 確 認 行 動 の 重 要 性 を 認 識 し て い く 。 次 に 求 め ら れ る の は , 就 職 し , 新 人 看 護 師 と し て の 臨 床 現 場 に 臨 む 場 面 で あ る 。 多 く の 場 合 , 全 く 新 し い 環 境 で , 看 護 業 務 に あ た る 。 こ の よ う な 場 面 は , ス テ ー ジ 3 の 段 階 で あ り , 先 輩 看 護 師 や リ ー ダ ー 看 護 師 に , 確 認 行 動 を 行 う こ と が 期 待 さ れ る 。 さ ら に , こ こ で の や り と り は , 薬 剤 の 名 称 や 使 用 量 な ど 正 確 な 情 報 伝 達 が 求 め ら れ る 。 ま た , 臨 床 で は , チ ー ム で 医 療 を 進 め て い く た め , 他 職 種 と の 連 携 が 不 可 欠 と な る 。 特 に , 医 師 と の や り 取 り も 含 め , 安 全 な 医 療 を 提 供 す る た め に は , 専 門 職 と し て お 互 い に 率 直 な 意 見 を 述 べ る こ と が 求 め ら れ る 。

こ の よ う に , 看 護 学 生 が 新 人 看 護 師 と な り , 実 践 能 力 を 備 え 専 門 職 と し て 自 律 し て い く 軸 を 中 心 に み て い く と , 情 報 伝 達 の 対 象 者 が 拡 大 し て い く こ と が わ か る 。 す な わ ち , 看 護 師 間 の 情 報 伝 達 に 着 目 し た 場 合 , 対 象 者 の 拡 大 か ら 3 つ の ス テ ー ジ が 想 定 さ れ る 。 こ の 情 報 伝 達 の 各 ス テ ー ジ に お け る 確 認 行 動 を 明 確 に す る こ と が で き れ ば , 教 育 と し て の 準 備 が 可 能 と な る と 言 え よ う 。

図 1-1 看 護 師 の 情 報 伝 達 学 習 の ス テ ー ジ モ デ ル 第 3 節 本 研 究 の 目 的

以 上 を ふ ま え る と , 正 確 な 情 報 伝 達 を 促 す た め の 確 認 行 動 を 形 成 す る た め に は , 確 認 行 動 を 同 定 す る こ と , 学 習 段 階 に 応 じ た 教 育 を 準 備 す る こ と

看 護 学 生 新 人 看 護 師 → ベ テ ラ ン 看 護 師

専 門 職 と し て の 自 律 情

報 伝 達 の 対 象 者 へ の 拡 大

看 護 基 礎 教 育 現 任 教 育

ス テ ー ジ 1

看 護 学 生 間

ス テ ー ジ 2

臨 床 指 導 者

↑ 看 護 学 生

ス テ ー ジ

3

先 輩 看 護 師

新 人 看 護 師

(8)

が 必 要 で あ る 。 医 療 安 全 に 関 連 す る 医 療 者 間 の 情 報 伝 達 は 重 要 と さ れ て い る に も 関 わ ら ず , そ の 歴 史 は 浅 く , 未 だ 研 究 が 途 上 の 段 階 に あ る 。

新 人 看 護 師 の 情 報 伝 達 に 必 要 な 確 認 行 動 を 同 定 し , 看 護 学 生 の 学 習 段 階 に 応 じ た 教 育 の あ り 方 を 検 討 す る こ と は , 看 護 学 生 の 情 報 伝 達 に 関 す る 技 術 を 引 き 上 げ , 新 人 看 護 師 と し て 医 療 現 場 の 実 践 に 臨 む 準 備 を 高 め る こ と に つ な が る と 考 え ら れ る 。 こ れ ら は , チ ー ム で 安 全 な 医 療 を 提 供 す る た め に 必 要 な 医 療 安 全 教 育 と し て , 卒 前 ・ 卒 後 を つ な ぐ 教 育 の 一 助 と な り , 意 義 あ る 試 み と 考 え る 。

本 研 究 で は ,ま ず ,我 が 国 の 医 療 安 全 対 策 の 動 向 と 看 護 教 育 制 度 の 動 向 に つ い て 整 理 し ,看 護 基 礎 教 育 に お け る 医 療 安 全 に 関 わ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 教 育 に つ い て 検 討 す る 。 こ れ ら の 基 礎 研 究 に 基 づ き , 新 人 看 護 師 に 着 目 し , よ り 臨 床 場 面 に 即 し た エ ラ ー 体 験 の プ ロ グ ラ ム を 試 行 す る 。模 擬 場 面 に お け る エ ラ ー 体 験 の 効 果 を 検 討 し ,対 象 者 を 拡 大 し て 医 療 現 場 で の 情 報 伝 達 の 効 果 を 検 討 す る 。さ ら に ,模 擬 場 面 の エ ラ ー 体 験 に 基 づ く 新 人 看 護 師 の 学 び か ら ,正 確 な 情 報 伝 達 の 要 素 を 明 ら か に す る 。こ れ ら の 段 階 を 得 て 抽 出 し た 要 素 の う ち ,特 に 若 手 看 護 師 に 必 要 な 態 度 や 行 動 を 抽 出 す る 。さ ら に は ,看 護 基 礎 教 育 に お け る 学 習 に 展 開 し 臨 地 実 習 場 面 に お け る 実 践 状 況 を 検 討 す る 。

こ れ ら の 一 連 の 研 究 を 通 し て ,看 護 師 間 の 情 報 伝 達 の 段 階 に 応 じ た 具 体 的 な 確 認 行 動 を 抽 出 し ,そ の 行 動 を 育 成 す る 教 育 プ ロ グ ラ ム の 開 発 を 行 い ,効 果 検 証 を 図 り 、今 後 の 正 確 な 情 報 伝 達 の 教 育 の あ り 方 に つ い て 検 討 す る こ と を 目 的 と す る 。

第 4 節 本 論 文 の 構 成

本 論 文 の 構 成 は ,次 の と お り と す る 。序 章 で は ,本 研 究 の 目 的 お よ び 意 義 を 示 し ,本 論 分 の 枠 組 み を 明 確 に す る 。続 く ,第 1 章 で は ,我 が 国 に お け る 看 護 基 礎 教 育 に お け る 動 向 を 鑑 み,今 後 必 要 と さ れ る 安 全 教 育 に つ い て 整 理 す る 。第 2 章 で は ,防 護 の ス イ ス チ ー ズ モ デ ル に 基 づ く ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー の 発 生 と 防 止 に 関 す る 医 療 安 全 教 育 の 介 入 の 実 践 と 評 価 を 行 い , 第 3 章 で は , 防 護 の ス イ ス チ ー ズ モ デ ル に 基 づ く「 シ ナ リ オ シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 」と 確 認 行 動 を 促 す「 ス キ ル 学 習 」を 後 続 さ せ 介 入 に よ る 効 果 を 検 討 す る 。第 4 章 で は , 第 3 章 の「 シ ナ リ オ シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 」か ら 抽 出 さ れ た 確 認 行 動 の 要 素 を 明 確 に し て ,「 若 手 看 護 師 の 指 示 の 出 し 受 け ス キ ル 」を 抽 出 す る 。第 5 章 で は , 第 3 章 で 得 ら れ た ,看 護 学 生 の 確 認 行 動 に 焦 点 化 し ,特 に 指 示 受 け 場 面 を 想 定 し 臨 地 実 習 に 臨 む 前 の 看 護 学 生 を 対 象 と し た 介 入 に よ る 効 果 を 検 証 す る 。 終 章 で は , 一 連 の 研 究 に つ い て の 結 論 を 論 ず る 。

(9)

第 1 章

看 護 教 育 制 度 の 動 向 (研 究 Ⅰ )

(10)

第 1 節 序

本 稿 の 目 的 は ,チ ー ム 医 療 推 進 に 向 け た 取 り 組 み に お い て ,特 に 看 護 師 教 育 に お け る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 関 わ る 研 究 を 概 観 し ,今 後 の 研 究 上 の 課 題 を 明 確 に す る こ と で あ る 。

本 稿 で は ,チ ー ム 医 療 に お け る 医 療 安 全 を 推 進 す る た め に 医 療 者 側 の 要 因 と し て ,情 報 伝 達 に 着 目 す る 。そ の 理 由 は ,チ ー ム に お け る 情 報 伝 達 が 滑 ら か に 行 わ れ な け れ ば ,診 療 に 関 わ る 行 為 に 支 障 を き た し ,患 者 は 危 険 に さ ら さ れ る こ と に な る か ら で あ る 。本 稿 で は ,チ ー ム 医 療 が 推 進 さ れ る よ う に な っ た 背 景 に つ い て 整 理 し ,特 に ,看 護 基 礎 教 育・新 人 看 護 師 研 修 に 関 す る 施 策 の 動 向 に つ い て 概 観 す る 。

そ こ か ら 情 報 伝 達 に お け る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン エ ラ ー に 関 す る 先 行 研 究 に つ い て 検 討 す る 。次 に ,研 究 の 視 点 と 得 ら れ た 知 見 を 整 理 し て ,エ ラ ー の 発 生 に 関 わ る 看 護 師 の 情 報 伝 達 の 課 題 に つ い て 研 究 上 の 課 題 を 探 る こ と を 目 的 と す る 。特 に ,医 療 事 故 発 生 件 数 の 上 位 を 占 め る 与 薬 の 場 面 や ,情 報 伝 達 の 鍵 と な り 得 る 指 示 の 出 し 受 け の 場 面 に お い て 生 じ る 問 題 と 対 策 に つ い て 現 状 を 明 確 に す る 。こ れ ま で の 研 究 動 向 を 把 握 し ,ど の よ う な 視 点 か ら の 研 究 が 不 足 し ,ど の よ う な 点 の 解 明 と 知 見 の 蓄 積 が 臨 ま れ る か ,研 究 上 の 課 題 を 論 じ て い き た い 。

第 2 節 我 が 国 に お け る チ ー ム 医 療 推 進 に 向 け た 取 り 組 み

厚 生 労 働 省 は , チ ー ム 医 療 を 推 進 す る 目 的 は , 専 門 職 種 の 積 極 的 な 活 用 , 多 職 種 間 協 働 を 図 る こ と 等 に よ り 医 療 の 質 を 高 め ,効 率 的 な 医 療 サ ー ビ ス を 提 供 す る こ と に あ る と 述 べ て い る 。そ し て ,看 護 師 が チ ー ム 医 療 に お け る 役 割 を 果 た す た め に は ,患 者 の 状 態 の 予 測 力 や 判 断 力 ,コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 力 が 極 め て 重 要 で あ る と 指 摘 し て い る 。医 師 や 看 護 師 等 の 許 容 量 を 超 え た 医 療 が 求 め ら れ る 中 ,チ ー ム 医 療 の 推 進 は ,多 職 種 連 携 を 通 し て ,医 療 の 質 を 高 め る た め に も 必 須 で あ る 。 厚 生 労 働 省 で は 平 成 21 年 8 月 か ら 「 チ ー ム 医 療 の 推 進 に 関 す る 検 討 会 」 を 開 催 し , 平 成 22 年 3 月 に 「 チ ー ム 医 療 の 推 進 に つ い て 」の 報 告 書 を 取 り ま と め た 。チ ー ム 医 療 を 推 進 す る 目 的 は ,多 職 種 間 協 働 を 図 る こ と に よ り 医 療 の 質 を 高 め ,効 率 的 な 医 療 サ ー ビ ス を 提 供 す る こ と で あ る と さ れ て い る 。医 療 の 質 的 な 改 善 を 図 る た め に は ,① コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ,② 情 報 の 共 有 化 ,③ チ ー ム マ ネ ジ メ ン ト の 3 つ の 視 点 が 重 要 で あ る と 指 摘 し て い る(厚 生 労 働 省 ,2011)。

近 年 ,頻 発 す る 医 療 事 故 を 契 機 に ,チ ー ム の 機 能 不 全 の 問 題 が 議 論 さ れ て

(11)

き た 。例 え ば ,コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 失 敗(松 尾 ,2004),個 人 の エ ラ ー が 他 の ス タ ッ フ に よ っ て 修 正 さ れ ず に 事 故 に つ な が る と い う チ ー ム エ ラ ー(佐 相 , 2002),エ ラ ー 指 摘 へ の 抵 抗 感(森 永・藤 村・三 沢・山 内・松 尾,2007;大 坪・

島 田 ・ 森 永 ・ 三 沢 ,2003)が 報 告 さ れ , 優 れ た チ ー ム の 育 成 と マ ネ ジ メ ン ト が 医 療 機 関 に 求 め ら れ る よ う に な っ た(三 沢 , 佐 相 , 山 口 ,2009)。

日 本 医 療 評 価 機 構(2014)に よ る と ,医 療 事 故 当 事 者 と し て 最 も 多 い の は 看 護 師 と の 報 告 が あ る 。こ れ は ,看 護 師 が ,他 者 の エ ラ ー に 気 づ き 修 復 す る 機 会 は あ っ て も , 医 療 行 為 の 最 終 行 為 者 と な る こ と が 多 い か ら で あ る 。 ま た , 多 様 で 複 雑 な 業 務 を 同 時 に 対 応 し て い く こ と が 原 因 と さ れ て い る(日 本 看 護 協 会,2013)。以 上 の こ と か ら ,看 護 師 教 育 に 焦 点 を あ て ,看 護 師 教 育 に 関 わ る 厚 生 労 働 省 施 策 の 動 向 ,及 び ,看 護 基 礎 教 育 に 関 わ る 施 策 の 動 向 に つ い て 以 下 に 整 理 し て い く 。

第 3 節 看 護 教 育 制 度 に お け る 医 療 安 全 対 策 の 現 状

看 護 師 教 育 は ,臨 床 現 場 に お け る 新 人 看 護 師 教 育 の 研 修 制 度 の 施 策 が 整 備 さ れ ,看 護 基 礎 教 育 に お い て は ,実 習 時 間 が 増 加 し ,カ リ キ ュ ラ ム の「 看 護 の 統 合 と 実 践 」 が 新 た に 設 け ら れ た こ と が 大 き な 特 徴 で あ る 。

看 護 師 研 修 制 度

看 護 師 教 育 に お い て は ,2009 年 7 月 ,「 保 健 師 助 産 師 看 護 師 法 及 び 看 護 師 等 の 人 材 確 保 に 関 す る 法 律 の 一 部 を 改 正 す る 法 律 」が 成 立 し ,新 人 看 護 職 員 の 臨 床 研 修 等 が 努 力 義 務 と な っ た 。同 年 ,「 新 人 看 護 職 員 研 修 ガ イ ド ラ イ ン 」 が 策 定 さ れ た 。 厚 生 労 働 者 は 2010 年 度 か ら 「 新 人 看 護 職 員 研 修 事 業 」 を 開 始 し た 。「 平 成 23 年 度 医 療 施 設 調 査 」に よ れ ば ,ガ イ ド ラ イ ン に 沿 っ た 研 修 を 実 施 し て い る の は ,3857 施 設(新 人 看 護 職 員 が い る 病 院 の 81.3%)で あ り , 研 修 の 普 及 を 示 し て い る 。新 人 看 護 師 研 修 ガ イ ド ラ イ ン は ,基 本 的 な 臨 床 実 践 能 力 を 獲 得 す る 目 的 で 策 定 さ れ た 。新 人 看 護 職 員 を 迎 え る す べ て の 医 療 機 関 で 新 人 看 護 職 員 研 修 が 実 施 さ れ る 体 制 の 整 備 を 目 指 す も の で あ る 。2011 年 の「 新 人 看 護 職 員 研 修 に 関 す る 検 討 会 」報 告 書 の 中 で は ,研 修 成 果 等 を 勘 案 し て , ガ イ ド ラ イ ン を 適 宜 見 直 す 必 要 が あ る と 指 摘 さ れ た 。 そ の 内 容 は , 新 人 看 護 職 員 研 修 実 施 医 療 機 関 及 び 指 導 者 の 育 成 に 関 わ る 研 修 の 認 証 等 の 検 討 が 課 題 と さ れ て い る 。2014 年 に は ,ガ イ ド ラ イ ン の 見 直 し が 行 わ れ ,新 人 看 護 職 員 が 看 護 基 礎 教 育 で は 学 習 す る こ と が 困 難 な ,医 療 チ ー ム の 中 で 複 数 の 患 者 を 受 け 持 ち ,多 重 課 題 を 抱 え な が ら ,看 護 を 安 全 に 提 供 す る た め の 臨 床 実 践 能 力 を 強 化 す る こ と が 指 摘 さ れ た(2014, 厚 生 労 働 省 新 人 看 護 職 員

(12)

研 修 ガ イ ド ラ イ ン 【 改 訂 版 】)。 新 た な 内 容 と し て , 看 護 職 員 と し て 必 要 な 基 本 姿 勢 と 態 度 に つ い て の 到 達 目 標 が 示 さ れ「 組 織 に お け る 役 割・心 構 え の 理 解 と 適 切 な 行 動 」と し て ,チ ー ム 医 療 の 構 成 員 と し て の 役 割 を 理 解 し 協 働 す る ,同 僚 や 他 の 医 療 従 事 者 と 適 切 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を と る な ど が 示 さ れ た(厚 生 労 働 省 ,2014)。

看 護 基 礎 教 育 の 動 向

次 に , 看 護 基 礎 教 育 の 動 向 に よ れ ば ,1951 年 に 指 定 規 則 制 定 さ れ た 際 の 実 習 時 間 は ,5077 時 間 で あ っ た が , 第 3 次 改 正 で は ,2895 時 間 と 減 少 し , 2009年 の 第 4 次 改 正 で は ,「 看 護 の 統 合 と 実 践 」分 野 が 設 け ら れ ,3000 時 間 と 増 加 し て い る 。こ の 理 由 は ,統 合 分 野 で は ,卒 業 後 の 職 場 適 応 を 促 す こ と を 目 的 と し て ,「 看 護 の 統 合 と 実 践 」 の 臨 地 実 習 が 設 け ら れ た た め で あ る 。 こ れ は ,看 護 基 礎 教 育 と 臨 床 現 場 の 乖 離 が 指 摘 さ れ る 中 で ,そ の 差 を 埋 め る 目 的 で 改 正 さ れ た も の で あ る 。「 看 護 の 統 合 と 実 践 」 の 具 体 的 内 容 と し て , チ ー ム 医 療 及 び 他 職 種 と の 協 働 の 中 で 看 護 師 と し て の メ ン バ ー シ ッ プ 及 び リ ー ダ ー シ ッ プ の 理 解 や ,看 護 の マ ネ ジ メ ン ト の 基 礎 知 識 ,医 療 安 全 の 基 礎 的 知 識 を 修 得 す る こ と な ど が 示 さ れ て い る 。こ の 改 正 の 大 き な 特 徴 は ,こ れ ま で 規 定 さ れ て い な か っ た 卒 業 時 の 到 達 目 標 が 設 定 さ れ た こ と に あ る 。

看 護 師 教 育 現 場 の 現 状 と 課 題

新 人 看 護 師 の 実 践 能 力 向 上 に 向 け て ,臨 床 現 場 と 基 礎 教 育 の 双 方 向 か ら 新 た な 取 り 組 み が 進 め ら れ た が ,依 然 と し て ,新 人 看 護 師 の 医 療 事 故 発 生 件 数 は 高 い( 日 本 医 療 機 能 評 価 機 構,2015)。そ の 内 容 は ,情 報 伝 達 の 途 絶 や 誤 っ た 解 釈 な ど の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン エ ラ ー に よ る 医 療 事 故 が 生 じ る と い っ た も の で あ る 。看 護 基 礎 教 育 か ら の 段 階 を 踏 ま え た 確 認 行 動 の 教 育 課 題 が あ る と い え よ う 。

新 設 さ れ た「 看 護 の 統 合 と 実 践 」に お け る ,統 合 実 習 の 内 容 に 関 し て 文 献 検 討 を 行 っ た 調 査 で は ,各 教 育 機 関 の カ リ キ ュ ラ ム を 検 討 し た 結 果 ,複 数 患 者 受 け 持 ち や 夜 勤 勤 務 帯 で の 看 護 体 験 ,そ の 組 み 合 わ せ た 新 た な 実 習 の 計 画 , 及 び 実 施 報 告 で あ っ た と 述 べ て い る(川 上・椿・濱 田・大 野・斉 藤・山 本,2013)。

こ の よ う に ,新 人 看 護 師 の 看 護 実 践 能 力 向 上 を ね ら い 臨 床 現 場 に 適 応 で き る よ う 教 育 体 制 が 整 備 さ れ て き た こ と は ,看 護 教 育 現 場 に と っ て は ,改 革 的 な 取 り 組 み と 評 価 で き る 。し か し ,日 本 医 療 機 能 評 価 機 構 が ,毎 年 実 施 し て い る 医 療 事 故 情 報 収 集 等 事 業 第 40 回 報 告 書(2014)に よ る と , 経 験 1 年 未

(13)

満 の 看 護 師 ,ま た は ,看 護 師 側 の 医 療 事 故 発 生 件 数 が 高 い 理 由 と し て ,① 知 識 不 足(経 験 不 足),② 基 本 的 な 手 順 の 不 遵 守 ,③ 思 い 込 み に よ る 安 易 な 実 施 ,

④「 目 的 や 根 拠 」と「 行 動(実 施)」の 乖 離 ,⑤ 危 険 性 の 認 識 不 足 ,⑥ 報 告 や 相 談 が で き な い(し な い)な ど が 挙 げ ら れ る と い う 。こ の 報 告 書 の「 医 療 事 故 情 報 等 分 析 作 業 の 現 況 」で は ,口 頭 に よ る 情 報 の 解 釈 の 誤 り に 関 連 し た 事 例 に つ い て 分 析 し ,情 報 伝 達 の 途 絶 を 問 題 と し て い る 。情 報 を 受 け 取 る 側 の 誤 解 が 生 じ れ ば ,そ の 時 点 ま で 提 供 さ れ て き た 医 療 の 途 絶 が 生 じ る こ と で ,不 適 切 な 治 療 が 生 じ ,患 者 安 全 が 不 確 実 な も の に な り か ね な い と 指 摘 し て い る 。 し た が っ て 情 報 伝 達 は ,新 た な 医 療 安 全 を 推 進 す る 上 で の 重 要 な テ ー マ で あ る と 述 べ て い る 。

口 頭 指 示 に よ り 情 報 の 誤 っ た 解 釈 に 関 連 し た 事 例 は ,新 人 看 護 師 が 報 告 や 相 談 が で き な い こ と に よ る も の が 多 い 。 権 威 を 感 じ る 先 輩 看 護 師 や 医 師 に , 新 人 看 護 師 な ど が , 報 告 や 相 談 を 行 う こ と や 相 手 の 誤 り を 指 摘 す る こ と は , 心 理 的 ハ ー ド ル が 高 く コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン エ ラ ー に つ な が る こ と が 報 告 さ れ て い る(森 永 他,2007; 大 坪 他,2003)。コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン エ ラ ー は ,行 動 の 選 択 を 誤 り ,薬 剤 取 り 違 い や 患 者 の 誤 認 を 引 き 起 こ す 。結 果 的 に 患 者 が 危 険 に さ ら さ れ る と い う 事 態 を 招 く こ と が 懸 念 さ れ る 。

口 頭 指 示 を 受 け た 際 に ,行 動 の 選 択 場 面 で ,コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン エ ラ ー を 回 避 す べ く ,聞 き 返 し や 相 談 な ど の 確 認 行 動 を し な が ら 業 務 を 進 め る こ と が で き れ ば ,患 者 は 安 全 な 医 療 を 受 け る こ と が で き る 。新 人 看 護 師 が ,安 全 に 業 務 を 進 め る た め に は ,確 認 行 動 は 重 要 で あ る 。ま た ,チ ー ム 医 療 に お い て 医 療 者 間 の 情 報 伝 達 を ス ム ー ズ に 行 う た め に は ,確 認 行 動 は 必 須 の ス キ ル で あ る と い え よ う 。新 人 看 護 師 は ,業 務 を 遂 行 す る に あ た り ,経 験 が 浅 い こ と か ら ,判 断 に 迷 う 時 や 予 想 に 反 し た 状 況 の 対 応 を 求 め ら れ る こ と が あ る 。そ う い っ た 場 合 に ,手 を 止 め て ,立 ち 止 ま る こ と へ の 価 値 の 重 要 性 が 修 得 で き て い れ ば ,容 易 な 行 動 に で る こ と は 少 な く な る で あ ろ う 。つ ま り ,患 者 の 安 全 を 守 る た め に ,自 身 の 未 熟 さ を 補 い ,経 験 の あ る ベ テ ラ ン 看 護 師 か ら ,自 分 に と っ て 有 用 な こ と を 引 き 出 す 方 法 を 身 に つ け る こ と が で き れ ば ,医 療 事 故 発 生 の 抑 制 に 繋 が る 可 能 性 が あ る 。

こ れ ま で の 教 育 は ,報 告 ,連 絡 ,相 談 の 重 要 性 が 唱 え ら れ て き た が ,そ の 具 体 的 な 方 法 に つ い て は 検 討 さ れ て い な か っ た 。確 認 行 動 を 怠 っ て 安 易 な 判 断 の も と 行 動 し た 場 合 に ,患 者 を 危 険 に さ ら し て し ま う と い っ た ,認 知・判 断・行 動 の 一 連 の 流 れ を ,看 護 学 生 の 教 育 場 面 で 体 験 す る 必 要 が あ る 。そ し て ,そ れ ら を 回 避 す る た め に は ,確 認 行 動 を 具 体 的 な ス キ ル と し て 修 得 す る

(14)

こ と が 望 ま れ る 。確 認 行 動 の ス キ ル を 習 得 し て ,新 人 看 護 師 と し て 臨 床 現 場 に 就 職 し た 時 に は , 先 輩 看 護 師 か ら 必 要 な 支 援 を 引 き 出 す こ と が で き よ う 。 こ れ は ,新 人 看 護 師 の 浅 い 臨 床 経 験 に 基 づ く 判 断 力 の 弱 さ を 先 輩 看 護 師 の 支 援 に よ っ て 補 い , 安 全 な 医 療 の 提 供 に つ な が る と 考 え ら れ る 。

以 上 の こ と か ら ,看 護 学 生 か ら 段 階 を 追 っ た 確 認 行 動 の 教 育 の 必 要 性 が 浮 か び 上 が り ,現 場 で 最 も 解 決 が 望 ま れ て い る 課 題 で あ る と い え よ う 。確 認 行 動 な ど の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 関 わ る 研 究 上 の 課 題 を 探 る た め に , 以 下 に , 医 療 安 全 に 関 わ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 研 究 に つ い て み て い く 。

第 4 節 看 護 基 礎 教 育 に お け る 安 全 教 育 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 教 育 の 課 題 医 療 安 全 に 関 わ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 研 究 は ,リ ス ク 共 有 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン や , チ ー ム エ ラ ー の 回 復 , 確 認 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン , 他 部 門 と の 調 整 , 看 護 学 生 と 指 導 者 間 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 取 り 扱 っ た も の が あ る 。南 部・

原 田・須 藤・重 森・内 田(2006)は ,看 護 師 間 を 対 象 と し た リ ス ク 共 有 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 焦 点 を あ て 調 査 し た 。医 療 現 場 に お け る リ ス ク 共 有 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 実 態 や ,認 知 的 協 働 の 実 態 を 捉 え る こ と を 目 的 と し て ,看 護 師 の 対 話 デ ー タ を 分 析 し た 。リ ス ク 共 有 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン と は ,リ ス ク の あ る 事 柄 に つ い て 事 前 に な さ れ る 一 方 向 的 な 情 報 提 供 を 意 味 す る 。こ れ を も と に 日 常 場 面 で の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 対 象 と し ,「 リ ス ク を 伴 う 活 動 の 最 中 に ,そ の 活 動 の 関 係 者 同 士 に よ っ て 対 等 に 行 わ れ る 情 報 共 有 過 程 」に 焦 点 を あ て ,そ こ で の 認 知 的 課 題 に つ い て 検 討 し て い る 。リ ス ク 共 有 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 技 術 と は ,個 々 の 関 係 者 の リ ス ク 認 知 ,並 び に そ れ を 関 係 者 で 共 有 す る た め の 対 話 技 法 や 文 脈 で あ っ た と い う 。

し か し ,対 話 が 成 立 し て 共 有 理 解 が 達 成 さ れ て い た よ う に 見 え て も ,実 際 に は ,意 味 の 取 り 違 え や 誤 っ た 思 い 込 み と い っ た 認 知 的 協 働 エ ラ ー が 生 じ て い た こ と も 報 告 さ れ て い る 。看 護 師 間 の 情 報 伝 達 に 焦 点 を あ て ,対 話 を 通 じ て も 問 題 が 明 確 化 さ れ る こ と な く ,意 味 の 取 り 違 え や ,誤 っ た 思 い 込 み が エ ラ ー を 引 き 起 こ す と い う 実 態 に 目 を 向 け る こ と は 重 要 な 研 究 課 題 の 一 つ に 数 え ら れ よ う 。

ま た ,医 療 事 故 防 止 に お け る チ ー ム エ ラ ー の 回 復 に 関 す る 研 究 に お い て 森 永 他(2007)は ,エ ラ ー の 指 摘 を 抑 制 す る 要 因 に つ い て 検 討 し た 。看 護 師 を 対 象 と し た 質 問 紙 調 査 を 行 い エ ラ ー の 指 摘 を 抑 制 す る 要 因 に つ い て 調 べ た 。そ の 結 果,「 間 違 い へ の 確 信 が 持 て な い 」28.5% ,「 人 間 関 係 の 悪 化 が 心 配 」 25.9% ,「 立 場 の 違 い 」24.6% の 3 つ が 上 位 を 示 し た と い う 。 間 違 い へ の 確

(15)

信 が 持 て な い 内 容 と し て ,「 自 信 が な い 」,「 情 報 不 足 」 な ど が 述 べ ら れ て い る 。事 故 防 止 を 図 る た め に は ,エ ラ ー の 指 摘 を 促 進 し ,チ ー ム で 意 識 を 共 有 で き る よ う な 研 修 実 施 の 必 要 性 を 指 摘 し て い る 。さ ら に ,対 人 関 係 を 悪 化 さ せ ず に エ ラ ー を 指 摘 す る た め の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ス キ ル や ,地 位 関 係 や エ ラ ー へ の 主 観 的 確 信 に 関 わ ら ず エ ラ ー を 指 摘 で き る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ス キ ル を 身 に つ け る こ と の 重 要 性 を 述 べ て い る 。

情 報 共 有 を 進 め る 中 で ,意 味 の 取 り 違 え や 誤 っ た 思 い 込 み と い っ た 認 知 的 協 働 エ ラ ー が 引 き 起 こ し て い た と い う 点 は ,人 間 の ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー の 発 生 プ ロ セ ス を 示 し て お り ,注 意 深 く 見 て い く べ き 領 域 で あ る と み る こ と が で き る 。対 人 関 係 を 悪 化 さ せ ず に エ ラ ー の 指 摘 を 行 う こ と や ,地 位 関 係 や エ ラ ー へ の 主 観 的 確 信 に 関 わ ら ず エ ラ ー を 指 摘 で き る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ス キ ル は , 看 護 基 礎 教 育 に お い て , こ う し た 対 処 が 可 能 で あ る な ら , 臨 地 実 習 で , そ の 方 略 は ど の よ う な も の な の か 注 目 さ れ る 。

鬼 塚・髙 木(2010)は ,確 認 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 関 連 す る 看 護 師 の チ ー ム ワ ー ク 要 因 の 報 告 で ,医 療 事 故 対 策 の 主 要 な 原 因 の 一 つ に ,コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン エ ラ ー を 挙 げ ,確 認 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 行 う こ と が 有 効 で あ る と 述 べ て い る 。そ し て ,4 つ の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン チ ャ ン ネ ル を 整 理 し て い る 。そ れ は ,① 先 輩 看 護 師 か ら 後 輩 看 護 師 へ の 声 か け ,② 自 分 の 理 解 に 確 信 が 持 て な い と き に ,聞 き や す い 先 輩 を 選 択 し て 確 認 す る 。③ 自 分 の 理 解 に 確 信 が 持 て な い と き に ,チ ー ム 内 の 誰 で あ っ て も 確 認 す る 。④ リ ー ダ ー へ の 報 告 で あ る 。上 記 に 示 し た ,① の 回 答 者 の 多 く は ,中 堅 以 上 の 看 護 師 で あ り ,② と ③ に お い て は ,経 験 年 数 が 比 較 的 少 な い 看 護 師 か ら の 回 答 が 多 い と い う 。経 験 年 数 に よ り ,確 認 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 行 わ れ る チ ャ ン ネ ル が ,業 務 上 の 役 割 に よ っ て 規 定 さ れ て お り , 共 通 し て い る こ と と し て,自 発 的 に 行 わ れ て い る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン で あ る と 報 告 し て い る 。わ か ら な い こ と が あ っ た 際 に , 彼 ら が ,誰 に ど の よ う に 支 援 を 要 求 す れ ば い い の か に つ い て ,チ ー ム 内 で 共 有 さ れ て い な い 場 合 は ,確 認 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が な さ れ に く い こ と が 推 察 さ れ る と 述 べ て い る 。こ れ は ,確 認 が 取 れ な い 場 合 ,不 安 全 行 動 と な り エ ラ ー の 発 生 リ ス ク が 高 ま る こ と を 意 味 す る 。先 輩 看 護 師 の 声 か け が 行 わ れ る 環 境 で ,看 護 学 生 や 新 人 看 護 師 が 聞 き や す い 看 護 師 に 聞 く と い う 行 動 を 肯 定 す る 教 育 を 行 い ,成 長 を 見 守 る こ と が チ ー ム 医 療 に お い て 重 要 な プ ロ セ ス で あ る と い え よ う 。

こ の 他 に も ,小 路 ・ 小 森 ・ 藤 岡 ・ 宮 田 ・ 川 浪 ・ 中 山 ・ 北 山(2008)は ,病 院 の 主 任 ク ラ ス 看 護 職 を 対 象 と し た 看 護 職・他 部 門 間 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン リ

(16)

ス ク に つ い て 調 査 し て い る 。「 医 療 現 場 に お い て , 看 護 職 と し て 働 く 中 で , 遭 遇 し た コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 起 因 す る イ ン シ デ ン ト や ア ク シ デ ン ト の リ ス ク が 生 じ て い る 事 例 」に つ い て 検 討 し た 結 果 ,看 護 職 が 他 部 門 と の 協 議 や チ ー ム ア プ ロ ー チ が な い 場 合 に ,エ ラ ー 会 話 ,連 絡 ミ ス ,指 示 抜 け ,命 令 ミ ス な ど の 危 機 が あ っ た と 報 告 し て い る 。看 護 職 が 把 握 し た 患 者 に 関 す る 情 報 が 他 部 門 に 十 分 反 映 さ れ ず ,他 部 門 が 対 処 す べ き 内 容 も 看 護 職 が 受 け ざ る 得 な い 状 況 が あ っ た と い う 。課 題 と し て ,他 者 と の 間 に 望 ま し い コ ミ ュ ニ ケ ― シ ョ ン を 図 り ,他 部 門 と の マ ネ ジ メ ン ト 力 育 成 の 必 要 性 を 指 摘 し て い る 。こ こ で は ,望 ま し い コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 探 る こ と で ,マ ネ ジ メ ン ト 力 の 育 成 に つ な が り ,チ ー ム 医 療 に お け る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 滑 ら か に す る 研 究 課 題 が あ る と い え よ う 。

ま た ,吉 田・松 尾(2015)は ,臨 地 実 習 に お け る 看 護 学 生 と 指 導 者 看 護 師 間 の 医 療 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 特 徴 に つ い て ,看 護 学 生 を 対 象 に 調 査 を 行 っ た 。 そ の 中 で , 看 護 学 生 の 臨 地 実 習 に お け る 報 告 の 影 響 要 因 は ,「 基 本 的 報 告 ス キ ル 」,「 緊 張 」,「 能 動 的 報 告 ス キ ル 」,「 意 味 理 解 」の 4 つ で あ っ た 。具 体 的 に は ,「 看 護 学 生 は 受 け 持 ち 患 者 の 病 態 を 学 習 し た う え で 看 護 を 実 践 す る 。 そ の 結 果 と し て の 報 告 を 決 め ら れ た 時 間 に 専 門 用 語 や 敬 語 を 使 用 し ,相 手 に 分 か り や す く 伝 え る 。」 と い っ た 学 生 の 一 連 の 行 動 を 示 す 「 基 本 的 報 告 ス キ ル 」 を 抽 出 し て い る 。2 つ め に , 報 告 す る 場 面 で は ,緊 張 を 伴 う こ と も あ る た め 「 緊 張 」 と あ り ,3 つ め に は ,学 生 が 必 要 性 を 判 断 し 行 う 報 告 行 動 と し て「 能 動 的 報 告 ス キ ル 」と し て い る 。最 後 に ,看 護 師 が 伝 え て い る 内 容 の 意 味 が 分 か ら な い と い う 共 通 性 か ら「 意 味 理 解 」を 挙 げ て い る 。こ れ ら の 分 析 を 通 し て ,看 護 学 生 が 看 護 師 に 行 う 報 告 は ,受 け 持 ち 患 者 の 病 状 に 関 す る 情 報 を 指 導 看 護 師 に 一 方 向 的 に 伝 達 す る も の で あ る 可 能 性 を 指 摘 し て い る 。そ し て ,自 分 の 考 え を 伝 え る ,分 か ら な い 時 に 聞 く こ と で ,報 告 が 双 方 向 的 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン と な る 可 能 性 が あ る と 述 べ て い る 。し か し な が ら ,こ の よ う な 能 動 的 な 報 告 行 動 は ,看 護 学 生 の 自 己 評 価 が 低 い 傾 向 に あ っ た と 述 べ て い る 。

こ れ は , 自 分 の 考 え を 伝 え る こ と や , 分 か ら な い 時 に 聞 く と い う 行 動 が , 看 護 学 生 に と っ て 心 理 的 ハ ー ド ル が 高 い こ と を 意 味 す る 。心 理 的 ハ ー ド ル を 乗 り 越 え る 対 処 方 法 を 詳 細 に 解 き 明 か し て い く こ と が ,彼 ら の 適 応 像 へ の 解 明 へ と つ な が り ,有 効 な 適 応 支 援 の 手 が か り と な っ て い く も の と 考 え ら れ る 。

同 様 に ,吉 田 他(2015)の 調 査 で は ,確 認 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン は ,チ ー ム の 誰 に 聞 け ば 明 確 と な る か が 分 か る こ と で ,能 動 的 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 移

(17)

行 で き る こ と が 期 待 で き る 。そ の 間 は ,中 堅 看 護 師 以 上 か ら の 積 極 的 な 声 か け に よ る 確 認 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が ,チ ー ム 医 療 で 患 者 の 安 全 を 守 る こ と に 繋 が る と い え よ う 。ま た ,教 育 的 課 題 場 面 と し て は ,ロ ー ル プ レ イ な ど を 通 し て 学 習 す る 機 会 に 位 置 づ け る こ と の 可 能 性 が あ る こ と が 明 確 と な っ た 。1 対 1 の 対 話 か ら ,複 数 の 関 係 者 と の 対 話 に 持 ち 込 み ,新 た な 文 脈 と し て 持 ち 込 む こ と も ,教 育 上 可 能 で あ り ,こ れ ら の 行 動 を 学 習 機 会 と し て 設 け ,看 護 基 礎 教 育 か ら 学 習 し て い く こ と で ,新 人 看 護 師 と し て チ ー ム 医 療 へ の 適 応 が 促 さ れ ,患 者 の 安 全 に 貢 献 す る こ と が 期 待 で き る 。こ れ ら の 安 全 に 関 す る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 研 究 に つ い て 整 理 し て い く と ,一 つ の 行 為 と し て み る こ と が で き よ う 。つ ま り ,報 告 や 確 認 ,声 か け は ,指 示 の 出 し 受 け に 関 わ る 一 連 の 流 れ の 要 素 で あ る 。出 さ れ た 指 示 に 対 し て 確 認 し ,指 示 内 容 に つ い て 不 安 な こ と が あ れ ば 質 問 し ,実 行 完 了 し た こ と を 報 告 に 行 く と い う ,指 示 を 受 け る ス キ ル と し て 読 み 取 れ る 。そ の た め ,指 示 の 出 し 受 け に 関 わ る イ ン シ デ ン ト に つ い て の 研 究 を 概 観 し ,コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン エ ラ ー と 指 示 の 出 し 受 け に 関 わ る 研 究 を 以 下 に み て い く 。

指 示 の 出 し 受 け に 関 わ る 研 究 の 動 向

指 示 の 出 し 受 け に 関 わ る 研 究 は ,ご く わ ず か で あ り ,シ ス テ ム 変 更 の 評 価 や 現 状 の 分 析 に 関 す る も の が み ら れ る 。シ ス テ ム 整 備 な ど の ハ ー ド 面 で の 対 策 が 多 い こ と が 特 徴 的 で あ る 。指 示 の 出 し 受 け を 円 滑 に 進 め る た め の 教 育 方 法 の 開 発 な ど の ソ フ ト 面 に 対 す る 研 究 は 見 ら れ な か っ た 。

指 示 の 出 し 受 け に 関 わ る 調 査 内 容 は ,イ ン シ デ ン ト・ア ク シ デ ン ト レ ポ ー ト 分 析 に 関 す る も の(志 賀 ・ 野 田 ,2006; 野 田 ・ 志 賀 ,2005)が あ る 。基 礎 教 育 終 了 直 後 と 就 職 1 ヵ 月 目 の 新 人 看 護 師 の 医 療 事 故 へ の 認 識 調 査(菅 原・原 , 2004)と い っ た 研 修 の 効 果 を 検 討 す る も の が あ る 。 ま た , 注 射 業 務 に 関 わ る プ ロ セ ス の 分 析 は 比 較 的 多 い(富 田 ・ 山 崎 ・ 椎 名 ・ 小 池 ,2003; 野 本 ・ 工 藤,2007; 勤 医 協 中 央 病 院 ,2003; 多 田 ・ 堀 尾 ,2013; 橋 本 ・ 上 杉 ・ 西 川 ・ 米 田, 2014)。 与 薬 業 務 の 方 法 を 変 更 し た 効 果(時 本 ・ 井 出 上 ・ 柏 原 ・ 西 本 ・ 岡 野・ 片 島 ,2005),電 子 カ ル テ シ ス テ ム と 連 動 し た 認 証 シ ス テ ム を 導 入 し た 効 果(川 本・富 永・大 下・上 池 ,2009),病 棟 薬 剤 業 務 の 導 入 の 効 果(佐 藤・

鈴 木 ・ 庄 野 ・ 大 山 ・ 竹 内 ・ 今 井 ,2013), な ど シ ス テ ム 導 入 や 変 更 の 検 討 な ど は 多 岐 に わ た っ て い る 。 以 上 の よ う に , 指 示 の 出 し 受 け に 関 わ る 研 究 は , シ ス テ ム 変 更 の 評 価 や 現 状 の 分 析 に 関 す る も の で あ り ハ ー ド 面 で の 対 策 が 多 い こ と が 明 確 と な っ た 。指 示 の 出 し 受 け を 円 滑 に 進 め る た め の 教 育 的 介 入

(18)

な ど の ソ フ ト 面 に 対 す る 研 究 は 見 ら れ な か っ た 。一 部 の 研 究 と し て ,多 田 ・ 堀 尾(2013)の 報 告 で は ,イ ン シ デ ン ト・ア ク シ デ ン ト 発 生 の 原 因 を 探 る 視 点 か ら , 注 射 業 務 に 焦 点 を あ て て プ ロ セ ス を 分 析 す る 中 で ,「 指 示 出 し 」 か ら

「 指 示 受 け 」ま で に は ,看 護 師 間 で の 情 報 伝 達 が あ り ,注 射 薬 の「 準 備 」か ら「 実 施 」で は ,多 様 な 注 射 薬 の 種 類 や ,抽 出 と セ ッ テ ィ ン グ に 多 く の 情 報 を 必 要 と す る こ と が 明 確 に さ れ て い た 。し か し ,指 示 の 出 し 受 け 方 法 に 関 し て 新 た な 提 案 に は 至 っ て い な か っ た 。

以 上 の こ と か ら ,指 示 の 出 し 受 け に 関 す る 研 究 は ,ハ ー ド 面 に 関 す る 内 容 が 占 め て お り ,看 護 師 の 安 全 な 業 務 遂 行 へ の 葛 藤 や 困 難 へ の 対 処 方 法 を 講 じ る 内 容 の も の は 見 ら れ な か っ た 。指 示 の 出 し 受 け を 円 滑 に 進 め る た め に ,看 護 学 生 の 指 示 受 け に 関 す る 技 術 教 育 や ,新 人 看 護 師 が 指 示 を 受 け て 業 務 を 遂 行 す る 一 連 の 流 れ を ト レ ー ニ ン グ す る 機 会 を も つ 必 要 性 が あ る と 指 摘 で き る 。そ し て ,こ れ ら の 教 育 か ら 獲 得 し た ス キ ル を 用 い る こ と で ,チ ー ム 医 療 へ の 適 応 が 誤 解 の な い 円 滑 な 情 報 伝 達 を 図 り 交 流 す る 機 会 を も つ こ と が 期 待 さ れ る 。看 護 師 の 経 験 年 数 が 異 な れ ば ,曖 昧 な 指 示 内 容 を 確 認 す る 行 動 場 面 に お い て ,直 面 す る 葛 藤 の 内 容 や 葛 藤 発 生 か ら 解 決 に 至 る ま で の プ ロ セ ス , 必 要 と さ れ る ソ ー シ ャ ル ス キ ル が 異 な る 可 能 性 も あ る だ ろ う 。看 護 師 の 経 験 別 ,特 に 経 験 の 浅 い 未 熟 な 新 人 看 護 師 に 焦 点 を 当 て て 詳 細 に 検 討 し て い く こ と は ,看 護 学 生 か ら の 教 育 へ の 糸 口 を 探 り ,チ ー ム 医 療 へ 円 滑 に 交 流 が 図 れ る よ う に な る と い う 意 味 で 少 な か ら ぬ 価 値 あ る 試 み と 言 え る 。

第 5 節 ま と め

本 稿 は ,チ ー ム 医 療 推 進 に 向 け て 特 に 情 報 伝 達 に 関 す る 研 究 上 の 課 題 を 探 る た め ,看 護 基 礎 教 育 に お け る カ リ キ ュ ラ ム 改 正 ,新 人 看 護 師 教 育 の 動 向 を 概 観 し た 。こ れ ま で の 取 り 組 み は ,多 重 課 題 研 修 や ,複 数 患 者 を 受 け 持 つ 実 習 体 験 ,夜 勤 実 習 な ど 患 者 の 状 態 の 予 測 力 や 判 断 力 を 養 成 す る 取 り 組 み に 偏 り が 生 じ て い た 。こ の よ う な ,臨 床 に お け る 看 護 実 践 の 体 験 か ら 生 じ た 意 思 決 定 を 迫 ら れ る 場 面 が あ る に も 関 わ ら ず ,ど の よ う に チ ー ム に ア ク セ ス し て 判 断 を 仰 ぐ か に つ い て は ,十 分 な 学 習 機 会 が な か っ た 。チ ー ム 内 で の エ ラ ー を 指 摘 す る 方 法 や ,リ ス ク を 共 有 す る よ う な 双 方 向 と な る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 方 法 に つ い て の 教 育 の 場 が 充 足 し て い な か っ た と い え る だ ろ う 。医 療 安 全 に 関 す る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 研 究 の 動 向 で は ,他 者 と の 情 報 伝 達 に お け る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 場 面 を 調 べ て ま と め た も の が 散 見 さ れ た 。看 護 学 生 に 関 す る 情 報 伝 達 を 分 析 し た 研 究 は 僅 少 で あ っ た 。だ が 僅 か な 研 究 の 中 に ,看 護 基

(19)

礎 教 育 で ,教 育 的 要 素 を 含 む プ ロ グ ラ ム 開 発 へ の 手 が か り が 見 出 さ れ た 。南 部 他(2006)の 対 話 分 析 か ら エ ラ ー の 生 起 過 程 を 明 ら か に し た 研 究 で は ,対 話 が 成 立 し て も 意 味 の 取 り 違 え や ,誤 っ た 思 い 込 み が エ ラ ー を 引 き 起 こ す と し た も の だ が ,一 方 で ,ど の よ う な 場 面 で エ ラ ー が 生 起 し や す い か ,実 施 可 能 な 対 処 方 略 に 関 す る 分 析 は 詳 し く な い 。彼 ら が ,意 味 が 異 な る 解 釈 を 相 手 が し た と 感 じ た 際 に は ,ど の よ う な 対 処 方 略 を 講 じ る こ と で ,そ れ を 乗 り 切 っ て い る の か ,詳 し く わ か っ て い る わ け で は な い 。細 か い 視 点 か ら ,意 味 の 取 り 違 え や 誤 っ た 思 い 込 み エ ラ ー を 引 き 起 こ す プ ロ セ ス や ,解 決 へ の 道 筋 を 緻 密 に 分 析 し て い く こ と は 研 究 上 の 課 題 と い え る 。

報 告 や 相 談 ,指 示 受 け・指 示 出 し な ど は ,い ず れ も チ ー ム 医 療 に お け る 要 な 要 素 で あ り , 看 護 学 生 か ら の 段 階 を 追 っ た 教 育 の 必 要 性 が 浮 か び 上 が り , 現 場 で 最 も 解 決 が 望 ま れ て い る 課 題 で あ る 。そ し て ,1 対 1 の 対 話 か ら ,複 数 の 関 係 者 と の 対 話 に 持 ち 込 み ,新 た な 文 脈 と し て 持 ち 込 む こ と も ,看 護 学 生 か ら 順 次 プ ロ グ ラ ム を 構 築 す る こ と で ,教 育 上 可 能 と な る こ と か も し れ な い 。こ れ ら の 行 動 を 学 習 機 会 と し て 設 け ,看 護 基 礎 教 育 か ら 学 習 し て い く こ と で ,新 人 看 護 師 と し て チ ー ム 医 療 へ の 適 応 が 促 さ れ る 可 能 性 が あ る 。先 輩 看 護 師 の 声 か け が 行 わ れ る 環 境 で ,看 護 学 生 や 新 人 看 護 師 が 聞 き や す い 看 護 師 に 聞 く と い う 行 動 を 肯 定 す る 教 育 を 行 い ,成 長 を 見 守 る こ と が 患 者 安 全 に 向 け た 組 織 文 化 を 構 築 す る た め に は ,チ ー ム 医 療 に お い て ,重 要 な プ ロ セ ス で あ る と い え よ う 。以 上 の 結 果 か ら ,正 確 な 情 報 伝 達 を 行 う た め の 指 示 の 出 し 受 け に 注 目 し た 研 究 の 必 要 性 が う か が え ,次 の 研 究 で は ,教 育 の 可 能 性 に つ い て 検 討 し て い く 。

(20)

第 2 章

ス イ ス チ ー ズ モ デ ル に 基 づ く ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー の 発 生 と 防 止 に 関 す る 医 療 安 全 教 育 の 介 入 の 実 践 と 評 価

( 研 究 Ⅱ )

(21)

第 1 節 正 確 な 情 報 伝 達 に 向 け た 教 育 方 略 の 開 発

本 章 で は ,研 究 Ⅰ に お い て 明 ら か と な っ た 正 確 な 情 報 伝 達 を 行 う た め の 指 示 の 出 し 受 け に 注 目 し 以 下 に プ ロ グ ラ ム の 構 成 に つ い て 検 討 す る 。

鬼 塚 他(2010)は ,医 療 事 故 の 重 要 な 原 因 の 一 つ と し て ,先 行 研 究 よ り コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 失 敗 が あ る こ と を 指 摘 し て い る 。そ し て ,コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 失 敗 を 低 減 す る た め に は ,「 確 認 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 」 と い う コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 方 法 が 有 効 で あ る と 述 べ て い る 。こ の「 確 認 コ ミ ュ に ケ ー シ ョ ン 」は ,送 り 手 の パ フ ォ ー マ ン ス と し て は ,自 分 が 伝 え た こ と に つ い て 相 手 が 正 し く 理 解 で き て い る か ,相 手 が 行 動 に 移 せ る だ け の 充 分 量 の 情 報 が 伝 え ら れ て い る か を 確 認 す る こ と が 求 め ら れ る 。一 方 ,受 け 手 の パ フ ォ ー マ ン ス と し て は ,自 分 の 情 報 へ の 理 解 が 正 し い か と い う メ タ 認 知 の 確 認 が 求 め ら れ る と い う ( 鬼 塚 他 ,2010)。 こ の 確 認 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 成 立 す る こ と が ,正 確 な 情 報 伝 達 に お い て は ,非 常 に 重 要 で あ る 。そ の 理 由 は ,相 互 理 解 を 高 め な が ら ,情 報 共 有 を 共 に 駆 使 す る プ ロ セ ス に よ り ,伝 達 情 報 が 細 部 に わ た り 具 体 化 さ れ る か ら で あ る 。

先 行 研 究 で 明 ら か と な っ て い る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン エ ラ ー に お い て ,こ の 確 認 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 成 立 が ど の よ う に 破 綻 し ,エ ラ ー が 生 じ て い る か を 検 討 す る 必 要 が あ る 。松 尾(2012)に よ れ ば ,コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン エ ラ ー に は , 伝 達 情 報 が 正 し く 伝 達 さ れ な い と い う 「 誤 伝 達 ・ 誤 解 釈 」 の 場 合 と , 情 報 伝 達 そ の も の が な さ れ ず ,「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が で き な い 」 場 合 が あ る と い う 。「 誤 伝 達 ・ 誤 解 釈 」 に は , 伝 達 情 報 の 間 違 い , 伝 達 情 報 が 曖 昧 , 伝 達 情 報 の 誤 解 釈 が あ り ,「 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が で き な い 」 場 合 と し て , 伝 達 し づ ら い が あ り ,二 つ の 場 面 に 共 通 す る も の と し て ,伝 達 の 省 略 ,確 認 の 省 略 が あ る と 整 理 し て い る 。

さ ら に ,佐 相(2002)は ,チ ー ム エ ラ ー の 事 例 分 析 に お い て ,個 人 ,複 数 の 人 間 の ミ ス が チ ー ム エ ラ ー へ と 結 び つ く 過 程 が , ミ ス の 発 見 失 敗 ,「 指 摘 失 敗 」,「 修 正 失 敗 」の 3 段 階 か ら な る と 指 摘 し た 。さ ら に ,こ の 3 段 階 に コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン エ ラ ー が 寄 与 し て い る こ と を 見 出 し て い る 。

鬼 塚 他(2010)は ,コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン エ ラ ー を 成 員 の 協 働 過 程 と し て と ら え る 視 点 の 重 要 性 を 指 摘 し て い る 。つ ま り ,コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 単 な る 情 報 の 伝 達 と い う こ と だ け で は な く ,互 い の 知 識 ,態 度 ,信 念 な ど を 推 測 し 合 い ,そ れ ら を 共 通 基 盤 と し て 利 用 し な が ら ,目 標 の 達 成 に 向 け て ,新 た な 情 報 の 共 有 を 図 っ て い く 過 程 と し て 捉 え る と 述 べ て い る 。

以 上 の こ と か ら ,確 認 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 生 じ る 場 と し て ,指 示 の 出 し

(22)

受 け 場 面 を 設 定 す る 。さ ら に 松 尾(2012)の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン エ ラ ー の 原 因 を 参 考 に ,曖 昧 指 示 課 題 ,ダ ブ ル チ ェ ッ ク 課 題 ,急 変 時 対 応 課 題 の 3 つ の 課 題 に 設 定 す る 。こ の 3 つ の 課 題 は ,佐 相(2002)の 示 す ,エ ラ ー の 回 復 過 程 と チ ー ム エ ラ ー の 発 生 を も と に ,エ ラ ー が 修 正 さ れ な い こ と で ,や が て 重 大 事 故 に い た る チ ー ム エ ラ ー を 想 定 し ,「 防 護 の ス イ ス チ ー ズ モ デ ル 」(Reason, 1997)を 参 考 に 構 成 し た 。

さ ら に 学 習 の ね ら い と し て は ,先 行 研 究 か ら ,メ ン タ ル モ デ ル の 共 有 ,ダ ブ ル チ ェ ッ ク ,チ ー ム に よ る エ ラ ー 回 復 の 3 つ を そ れ ぞ れ 設 定 し た 。こ の 学 習 方 略 を 構 成 し た 理 由 は ,過 去 に 生 じ た 様 々 な エ ラ ー 分 析 の 蓄 積 を 今 後 の 看 護 師 教 育 に 活 か し ,新 人 看 護 師 が ,こ の よ う な 状 況 に 陥 っ た 際 に ,ど の よ う な 指 示 の 出 し 受 け に 関 す る 行 動 を と る べ き か 考 え て も ら う こ と で ,そ の 具 体 的 内 容 を 行 動 化 の ス キ ル と し て 抽 出 し た い と 考 え た か ら で あ る 。

以 上 の 3 つ の 構 成 要 素 を 軸 に ,組 織 事 故 を 表 す「 防 護 の ス イ ス チ ー ズ モ デ ル 」に 基 づ い た 医 療 安 全 教 育 を 考 え る 。こ の プ ロ グ ラ ム は ,エ ラ ー が 貫 通 し や が て 患 者 に 有 害 事 象 を も た ら す 模 擬 場 面 か ら 構 成 さ れ る た め ,ス イ ス チ ー ズ フ ロ ー 型 ゲ ー ム と し て 定 義 す る 。

こ の プ ロ グ ラ ム の ね ら い は ,重 大 事 故 に い た る エ ラ ー 発 生 過 程 の 体 験 ,及 び ,正 確 な 情 報 伝 達 を 行 う 際 の 行 動 選 択 と 環 境 要 因 の 影 響 を 体 験 す る こ と で あ る(図 2-1)。

(23)

第 2 節 研 究 の 背 景 と 目 的

日 本 医 療 機 能 評 価 機 構 に よ る ,医 療 事 故 対 策 収 集 事 業 報 告 書(2014)に お い て ,新 人 看 護 師 の 事 故 発 生 件 数 の 高 さ ,チ ー ム コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 の 育 成 が 指 摘 さ れ て い る 。さ ら に ,1999 年 代 に 起 き た 重 大 事 故 は ,コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン エ ラ ー や ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー が 幾 重 に も 重 な り や が て 重 大 事 故 に 至 る こ と が 報 告 さ れ て い る 。そ の た め ,本 研 究 で は ,新 人 看 護 師 へ の 介 入 方 略 と し て , ス イ ス チ ー ズ モ デ ル の 枠 組 み を 採 用 し た 。 ス イ ス チ ー ズ モ デ ル と は ,

「 ス イ ス チ ー ズ の 穴 を エ ラ ー の 防 護 壁 に 例 え ,防 護 壁 が な け れ ば エ ラ ー が 貫 通 し 組 織 レ ベ ル の 重 大 事 故 を 招 く こ と を 示 す も の と 」 定 義 さ れ て い る (Reason,1997)。

本 稿 で は ,兵 藤・田 中(2002)の 先 行 研 究 を も と に ,シ ミ ュ レ ー シ ョ ン ゲ ー ム を 用 い た 心 理 教 育 的 な 医 療 安 全 教 育 と し て ,ヒ ュ ー マ ン エ ラ ー の 発 生 と 事 故 防 止 の 過 程 を 学 ぶ ,ス イ ス チ ー ズ フ ロ ー 型 ゲ ー ム を 開 発 し 検 討 す る 。こ れ は ,エ ラ ー を 誘 発 さ せ る 要 素 を 織 り 込 ん だ 模 擬 場 面 を 与 え て ,参 加 者 に 自 然 な 流 れ の 中 で の エ ラ ー 発 生 を 体 験 さ せ ,そ の 上 で エ ラ ー を 未 然 に 防 ぐ 行 動 に つ い て 考 え,エ ラ ー 後 に 素 早 く 回 復 策 を と る こ と を 体 験 す る も の で あ る 。 事 故 に 至 る 流 れ を 遮 断 す る 事 故 防 止 策 を 試 行 錯 誤 し て も ら い ,安 全 を 回 復 す る 方 法 を 学 ん で も ら う ゲ ー ム で あ る 。

発見成功 曖昧指示課題

発見失敗

指摘成功 指摘失敗

修正失敗 修正成功

エラー発生 ダブルチェック検証課題

急変時対応課題

メンタルモデル共有 の重要性

ダブルチェックのリスク

(アニュアル行動)

チームでエラーの早期 回復に向かう必要性 指示受けによる

確認行動

指示受けによる 確認行動

指示出しによる 確認行動

指示受け場面

指示出し場面

指示の出し受け エラーの回復過程とチームエラー発生 学習のねらい

2-1

ス イ ス チ ー ズ フ ロ ー 型 ゲ ー ム の 構 成 図

表 2-2  ス イ ス チ ー ズ フ ロ ー 型 ゲ ー ム の 3 つ の 課 題 場 面 の 内 容    第 5 節 ス イ ス チ ー ズ フ ロ ー 型 ゲ ー ム の 予 備 的 試 行 本 研 究 で は , ス イ ス チ ー ズ モ デ ル に 即 し て , エ ラ ー の 発 生 と そ の 検 出 の 失 敗 に よ る 事 故 発 生 を 模 擬 的 に 体 験 す る ゲ ー ム と し て ,「 ス イ ス チ ー ズ フ ロ ー 型 ゲ ー ム 」 を 考 案 し た 。
表 2-7  ス イ ス チ ー ズ フ ロ ー 型 ゲ ー ム 実 施 1 ヶ 月 後 の 反 応 な り 事 故 防 止 に つ な が っ た こ と が 有 用 で あ っ た と 捉 え て い る 。ま た ,新 人 看 護 師 A さ ん , B さ ん の 2 名 は ,権 威 勾 配 を 感 じ て は い て も ,エ ラ ー の 危 険 性 が あ る と 判 断 し た 場 合 に は ,気 が か り な こ と を 申 し 出 る と い う 行 動 を 行 っ て い た 。
表 2-8  ベ テ ラ ン 看 護 師 か ら の 教 育 的 な 効 果 に 関 す る 意 見 ま た , ゲ ー ミ ン グ ・ シ ミ ュ レ ー シ ョ ン の 改 善 を 要 す る 点 に つ い て 尋 ね た と こ ろ , 課 題 場 面 3 の 「 急 変 場 面 」 に お い て , 個 室 か 大 部 屋 の 環 境 設 定 を 明 確 に し て ほ し い と い う 意 見 が 挙 げ ら れ た 。 ま た , 事 前 に モ デ ル 人 形 に 触 れ て み る 機
表 3 ‐ 2  シ ナ リ オ シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 研 修 後 の 参 加 者 の 反 応   (N=13)  カテゴリ- 曖昧指示の問題や困難への気づき 曖昧指示から学んだこと 混乱・戸惑い ・指示から想像していたものと異なり焦った(6) ・早く取ってくることを優先して正確さの重要性が意識でき  なかった(3) ・曖昧な指示はエラーを出す(4) ・はじめて経験することは想像と違うことが多いので一緒に 行って手助けすることが大切(1) ・指示を出す人、指示を受けた両方に責任がある(5) 確認作
+3

参照

関連したドキュメント

Note. Safety management in this model is the ability to practice with an awareness of the safe delivery of an infant and to provide necessary care. The vertical axis represents

Rumiko Kimura* College of Nursing and

More pre- cisely, the dual variants of Differentiation VII and Completion for corepresen- tations are described and (following the scheme of [12] for ordinary posets) the

administrative behaviors and the usefulness of knowledge and skills after completing the Japanese Nursing Association’s certified nursing administration course and 2) to clarify

We see that simple ordered graphs without isolated vertices, with the ordered subgraph relation and with size being measured by the number of edges, form a binary class of

Development of an Ethical Dilemma Scale in Nursing Practice for End-of-Life Cancer Patients and an Examination of its Reliability and Validity.. 江 口   瞳 Hitomi

A total of 190 studies were identified in the search, although only 15 studies (seven in Japanese and eight in English), published between 2000 and 2019, that met the

Chapoton pointed out that the operads governing the varieties of Leibniz algebras and of di-algebras in the sense of [22] may be presented as Manin white products of the operad