高齢者の自立度を向上させるトレーニング法に関する研究
一自覚的運動強度を用いた複合的トレーニングが下肢筋機能に及ぼす影響一
2011年
兵庫教育大学大学院
連合学校教育学研究科
灘 本 雅 一
目 次
序
1.
2.
3.
土 早
研究の背景
1) 日本における超高齢社会の実態 2) 下肢筋機能評価の必要性
3) 高齢者の筋力及び筋パワートレーニング 4) エイジレス・ライフの実践
目 的
(注)
文 献
・ 7
・ 7
・ 9
・10
・10
・14
・15
第1章 高齢者の体力の実態と課題について
1.はじめに
2.方法 1)対象者
2)測定項目及び測定の流れ
3)統計的検定
a)横断的変化 b)縦断的変化
3.結果
1)横断的変化
a)体力測定項目における年代差・運動実施頻度差
b)体力測定項目における運動実施頻度差及び運動実施時間差
2)縦断変化
4.考察
1)横断的変化
a)高齢者の自立度を促進するための課題解決に向けた検討要素 b)運動実施時間の影響
2)縦断的変化
a)男性の加齢変化 b)女性の加齢変化5.小括
(注)
6.文献
・18
・19
・19
・21
・21
・21
・22
・22
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・23
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・31
第2章 高齢者用の下肢筋機能評価法について 第1節 下肢筋力を簡便に評価するテスト法の提案
1.はじめに
2.方法 1)対象者
2)CS・30テスト 3)下肢筋力の測定
4)統計的検定
3.結果
1)CS・30テストの信頼性 2)CS・30テストの妥当性 3)CS−30テスト成績の加齢変化
4)CS・30テスト成績の年代別変化(若年者との比較)
5)CS・30テスト成績の性別年齢階級別5段階評価表の作成
4.考察
1)テストの信頼性の検討 2)テストの妥当性の検討 3)加齢的変化と評価基準の作成
5.小括
(注)
・33
・34
・34
・34
・35
・37
・37
・37
・37
・37
・39
・39
・41
・41
・42
・43
・44
・44
第2節 高齢者用の下肢筋パワー測定法の提案
1.はじめに
2.方法 1)対象者
2)自転車全力ペタリング
a)測定手順
b)ピークパワーの測定
3)脚伸展パワー,椅子立ち上がり 4)統計的検定
3.結果
1)テストの信頼性と妥当性 2)ピークパワーの加齢変化
4.考察
1)テストの信頼性と妥当性
垂直跳の測定
・45
・47
・47
・47
・47
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・48
・48
・49
・49
・51
・52
・52
2)ピークパワーの加齢変化
5.小括
(注)
6.第2章のまとめ 7.文献
… 53
… 55
… 55
… 56
… 56
第3章 高齢者用のWe11−rounded training効果について 第1節 健常高齢者の行動的体力に及ぼす効果
1.はじめに ・・
2.方法 ・・
1)対象者 ..
2)測定内容 ・・
a)体格測定 ..
b)体力測定およびパフォーマンステスト ・・
3)トレーニング内容 ・・
4)統計的検定 ・・
3.結果 ・・
1)トレーニング前後の体格の変化 ・・
2)トレーニング前後の体力の変化 ・・
4.考察 ・・
1)筋力トレーニングの効果 2)持久的トレーニングの効果
5. ノ」・才舌 ・ ・
(注) ・・
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・63
・63
・63
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・64
・65
・65
・65
・65
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・67
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・69
・70
第2節 虚弱高齢者の運動機能改善に及ぼす効果
1.はじめに
2.方法 1)対象者 2)測定内容 a)体格
b)血圧及び心拍数測定 C)日常生活活動と歩数 d)下肢の筋機能と歩行能力 3)トレーニング内容
… 71
… 71
… 71
… 72
… 72
… 72
… 72
… 72
… 73
4)統計的検定
3.結果
1)日常生活活動と歩数
2)トレーニング前後の安静時血圧と心拍数の変化 3)トレーニング前後の体力及び歩行能力の変化
4.考察
1)下肢筋機能に対するトレーニング効果 2)歩行能力に対するトレーニング効果
5.小汚
(注)
6 第3章のまとめ 7 文献
… 74
… 74
… 74
… 75
… 75
… 79
… 79
… 79
… 81
… 82
… 82
… 83
第4章 自覚的疲労スケールを用いた筋力トレーニングの 提案について
1.はじめに … 88
2.方法 … 89
1)対象者 ...89
2)測定方法と内容 … 8g a)アームカール運動 89
b)等尺性付届出運動および足底屈運動 … 90
c)筋電図と心拍数 … 91
d)自覚的疲労スケール(Sスケール) 91
3)筋力トレーニングと効果の把握 … 91
4)統計的検定 ...g2
3.結果 … 92
1)Sスケールの生理的強度,Borg・RPEとの関係における男女差及び年齢差… 92 2)異なる筋力運動と筋力運動の部位の違いによるSスケールの強度差 … 93 3)Sスケールを用いたトレーニング効果 95
4.考察 … 96
1)Sスケールの生理的強度,Borg・RPEとの関係における男女差及び年齢差… 96 2)異なる筋力運動と筋力運動の部位の違いによるSスケールの強度差 … 97
3)Sスケールを用いたトレーニング効果 … 98
5. ノ」・非番 … 98
(注) … 99
6.文献
… 99第5章 高齢者の自立度を高めるトレーニング法の実践
1.はじめに ・・
2.方法 ・・
1)対象者 ..
2)測定方法と内容 ..
a)体格測定 ..
b)下肢筋力及び下肢筋パワー測定 ・・
3)トレーニング内容 ・・
4)体力差によるトレーニング効果の検討 ・・
5)統計的検定 ・.
3.結果 ・・
1)トレーニング前後の体格の変化 ・・
2)トレーニング前後の下肢筋力の変化 ・・
3)トレーニング前後の下肢筋パワーの変化 ・・
4)体力差によるトレーニング効果 ・・
a)下肢筋力 ..
b)下肢筋パワー ..
4.考察 ・・
1)下肢筋力に対する自立度を高めるトレーニングの効果 ・・
2)下肢筋パワーに対する自立度を高めるトレーニングの効果 ・・
3)体力差によるトレーニング効果の検討 ・・
5. 小才舌 ・ ・
6.文献 ・・
・102
・103
・103
・103
・103
・103
・104
・105
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・107
・108
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・11O
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・111
・112
・113
・113
終 章 (総 括)
1.トレーニングの原則からみた本研究のトレーニング法の特性 2.体力レベルに応じた自立度を向上させるトレーニング法の提案 a)低体力者のケース
b)中程度以上の体力者のケース 3.おわりに
4.今後の課題と展望
… 115
… 116
… 116
… 117
… 118
… 120
謝 辞
… 122参考資料
ADL(日常生活活動テスト)テスト用紙
本論文の内容と既発表論文との関係について
序 章
1.研究の背景
1)日本における超高齢社会の実態
世界保健機構36)は,総人口に占める65歳以上の人口の割合が7%以上になった場合を 高齢化社会,14%以上になった場合を高齢社会,21%を超えると超高齢社会と定義してい る.日本は,1970年に高齢化社会,1994年に高齢社会,2007年に超高齢社会となり18〕,
この高齢化率は,少子化と高齢人口の増大によって他の先進国に例を見ない速さで増加し
ている.
また,介護保険事業状況報告18)によると要介護(要支援)認定者数は,2010年1月現在,
479.9万人であり,2000年4月の介護保険発足時の218万人から約倍増している.介護保 険の給付費(利用者負担を除いた額)も,要介護(要支援)認定者数の増加に伴って2007
年度が6兆1600億円となり,2000年度の3兆2427億から約3兆円も増加している.
高齢化率の増大は,寝たきりや身体介護を必要とする高齢者の急増による年金・医療・
福祉等の財政面の問題で社会的負担を急増させている.その為に介護保険の発足と同時に 厚生労働省(当時厚生省)は,生活習慣病を予防して出来るだけ要介護状態の期間を短く し,健康寿命言主1〕の延長を実現するためにr21世紀における国民健康づくり運動」注2)に 取り組んでいる.この取り組みは,生活習慣病の原因である食生活,運動,休養の改善を 柱として,生活の質(QOL)を高めるものである.要介護高齢者の数が増加傾向にあること から,さらなる自立維持への努力が求められる.
一方,国立社会保障・人口間題研究所19)沈3)によると65歳以上の雇用割合は,高齢化
社会に突入した1975年,男性39.7%,女性24.8%,高齢社会に入った1995年,男性45.4%,
女性34.6%,さらに超高齢社会の突入寸前の2005年では男性47.1%,女性40.1%を示し 高齢者の雇用割合は年々増加している.日本の前期高齢者の就労意欲は,諸外国と比較し ても高く,その理由は,経済面に留まらず,健康や生き甲斐のためと言われている.超高 齢社会になると,高齢者をより活用する社会システムの構築が進むであろう.
前期高齢者の積極的な社会参加を促すためには,高齢者自身がより長く高い体力を維持 することが求められる.一方,後期高齢者も地域社会で元気に暮らすことは,医療,福祉 の負担を減らせることになるため,活力ある人生を歩むための体力をどのように保持して いくかという具体的な健康づくりがこれまで以上に求められている.
2)下肢筋機能評価の必要性
人間の身体の諸機能は,加齢により低下を来すが,食生活,運動,休養等の生活習慣を 見直すことで,ある程度維持することが可能と言われている14〕.加齢による体力低下の主 要因は,筋機能の低下である川、筋力は,若年時を最高とした場合,毎年1%の害■」合で低 下し,60歳以降その低下割合は,さらに大きくなることが報告されている15).この傾向は
「老いは脚から」といわれるように,特に下肢筋に顕著にみられる.下肢筋力の低下は階 段昇降等の日常動作に支障を来たす.また,蹟き等が要因となる転倒による骨折や怪我等 は身体活動を制限し自立度を著しく低下させ,健康寿命の期間を短くする.
筋力低下は,筋の萎縮からくる筋横断面積の縮小が一つの原因である.特に,加齢に伴 って速筋線維の萎縮が大きいことと,神経伝導速度の低下や運動終板の変性等による機能 低下による反応時間の遅延が,素早い動作をできにくくしている34).筋力の低下と反応時 間の遅延は,筋力とスピードを掛け合わせた筋パワーの低下となる.そのため,筋パワー は筋力よりも加齢に伴う低下度が大きくなる33).加齢に伴って男女ともに歩行や走能力が 急激に低下するのは,筋パワーの低下がその一つの原因である8).
これらのことは,加齢に伴う機能低下だけではなく,日常生活における高強度運動の減
少による活動内容の変化がその理由とされている34).
このように下肢筋力は,加齢に伴い減少することが明らかにされているが,食生活,運 動,休養等の生活習慣により個人差が大きく,生活習慣を見直すためにも下肢筋力を把握 することは必要であろう.下肢筋力は,これまで筋力測定装置を用いて評価されてきたが,
測定機器が高価であり専門家による計測が必要となるため高齢者が自身の下肢筋力を把握 する機会は少なかった.したがって,高齢者が簡便に下肢筋力を把握する測定法の開発も
必要と考えられる.
これまで,高齢者の下肢筋パワーの測定法は,測定時の転倒やあるいは体幹,下肢の筋 骨格系に大きな負担をかけるフィールドテストを中心に行われてきた.例えば,短距離走 や垂直跳,階段駆け上がり運動等を用いる方法である.一方,安全に筋パワーを評価する ために自転車エルゴメータを用いた測定法も採用されてきた.このテストは,年齢や性別,
体力水準によって最大パワーが得られる至適負荷が異なるため,個人の最大パワーを厳密 に測定するには3〜5の複数負荷を用いて行うことが望ましいとされている12〕.しかし,
体力水準の低い高齢者が複数の負荷で測定することは,身体的にも負担が大きいものと考
えられる.自転車エルゴメータによる無酸素性パワーを測定する代表的なWingate
anaerobictest注4)では,体重1kgあたり0,075kp(0.74N)の負荷が用いられているが,測定時間が30秒と長く,低体力者では,腕の引きつけ動作による怒責が生じて血圧上昇を 来す危険性が考えられる、そのため,できるだけ短時間で若者から高齢者を通して共通す る低負荷を用いた無酸素性パワーを測定する方法を検討する必要がある.そのことで若年 時と比べてどの程度,筋パワーが低下しているのかを把握出来き,生活習慣や運動習慣を 見直すきっかけとすることができる1これからの超高齢社会で活力ある生活を過ごすため の体力を維持させるためにも高齢者の筋パワー測定法の確立は不可欠な課題であると考え
られる.
3)高齢者の筋力及び筋パワートレーニング
これまで高齢者の行動体力を高めるために,歩行やジョギング等の有酸素運動が奨励さ れてきたが,高齢者の機能的自立を高めるためには,筋力や筋パワーの維持・向上のため のレジスタンス運動も重要視されなければならない.
筋力や筋持久力を適切に保つことは,健康や体力を維持増進するために重要な役割を果 たす.筋力と筋持久力を維持させる筋力トレーニングは,骨密度の低下抑制,メタボリッ
クシンドロームの発生率を減少させる効果が認められている1・2・3・4・11〕.ACSM(Americ.n
C・11・g・・fSp・rt・M・di・in・)1)注5),AHA(Am・ri… H・・rtA・…i・ti㎝.Ex・r・i・・standards ) 3〕注 6), AACVPR (American Assoc iat ion of Cardiovasular and Pulmonary
Rehabilitati㎝)4)注7)では,高齢者へのレジスタンストレーニングのガイドラインを示 して積極的にその実施を奨励している.内容は,週2〜3回の頻度で8〜12種類の運動を1 セットとして1〜3セット,1種類の運動の反復回数は8〜12回としている.レジスタンス
トレーニングの運動量を規定する要素は,運動強度,運動頻度,セット数である.その中 で最も大きな要因は運動強度である.ACSMのガイドラインによる8〜12回の反復回数で限 界となる負荷は,最大筋力の70〜85%に相当する強度である1).この強度を用いたトレー
ニングによる効果は報告されている11・16・2」28)が,機能的に制限のある高齢者や低体力の高
齢者には,関節痛や血圧の上昇といったリスクも考えられる.また,低強度や中強度のトレーニングの方が継続性は高いという報告35)がある.
安全性や継続性からみると,高齢者には低・中強度のトレーニングの方が望ましいのか もしれない.しかし,効果の点から,強度設定という課題が残る.強度を確認する方法の 一つとして,持久的トレーニングではBorg5)による主観的運動強度(RPE)沈8)があり,運 動効果を得るための運動強度として「ややきつい(RPE=13)」が一つの目安とされている.
ところで,筋力トレーニングに主観的運動強度を用いた低負荷でも,」定の運動量を保 つことができると考えられる.また,低負荷でのトレーニングであれば,安全で手軽にト
レーニングを行うことができる.白毛で非監視型運動として高齢者が日常的にレジスタン ストレーニングを行うためには,特別な機器を用いないで適切な負荷(強度)を課すこと のできる方法の開発も一つの課題となる.
一方,高齢者が日常生活において大きな力を発揮する機会は少ないものの,火事や自然 災害等の緊急時に自らの身を守るために短時間で安全な場所に移動するための筋パワーを 有することも必要であると考えられる.また,障害物等による蹟き時に素早い筋収縮によ る一歩を踏み出せる能力,すなわち,単発的な筋パワーを有することも望まれる.これま でACSMの指針において筋力を高めるトレーニングは推奨しているが,高齢者の筋パワー増 強を目的としたトレーニング方策は打ち出されていない.今後,高齢者の筋パワーを高め るトレーニング法の検討は,」つの課題になると考えられる.
4)エイジレス・ライフの実践
日本が長寿で高齢化率の高い社会であるということは,年金,医療,福祉等の財政面の 問題があるものの,悲観的なものであってはならない.むしろ長寿を享受できる社会でな ければならない.そのためには,高齢者が年齢にとらわれず自らの責任と能力において自 由でいきいきとした生活(エイジレス・ライフ)を送れることが重要である1医学の進歩 により,単に寿命を延ばしているということだけではなく,高齢者が精神的にも身体的に も年齢を感じることのない自立社会であり続けることが非常に大切である.図1のように 自立度を低下させる主要因は,老化による筋量・筋力の低下からくる身体活動量の低下で ある州.身体活動量の低下は,さらに筋量・筋力の低下を促進させ,転倒による怪我や骨 折が原因で歩行能力や生活機能の低下を引き起こし,寝たきりとなる可能性を高くする.
また,歯の咬合支持域を保持することが,体力低下の防止に寄与することも報告されて いる22〕.すなわち,歯の咬合支持は,栄養摂取に悪影響を及ぼすことに加えて,脚伸展パ ワー,ステッピング,開眼片足立ちという自立度を維持する体力要素との関係性が高く,
転倒による骨折を予防する可能性が示唆されている.
自立度を維持するためには,高齢者が自らの健康意識を高め,健康運動やトレーニング を積極的に行い,適切な栄養摂取を行い,筋量・筋力を維持させることが課題となる.
高齢者が高い体力を維持し体力年齢を引き下げることが,エイジレス・ライフの実践を
支える大きな要因となるのである.
塾
老イ
h ⇒
エイジレス・ライフ (自 立) 4身体活動量の低下 下肢筋力
の低下
転倒による 怪我や骨折
歩行能力 や生活機
能の低下
寝たきり
図1 老化現象の生活機能への影響 (久野譜也:200620),改変)
2.研究目的
日本は現在,65歳以上の人口が総人口の21%を超える超高齢社会に突入している(厚生 労働省社会保障・人口間題研究所2010).超高齢社会では,高齢者の自立度を高めていく
ことが,医療費や介護費用の抑制となるだけでなく,高齢者が活動的にいきいきと暮らせ,
子供から高齢者までが共存して暮らせる豊かな社会となる.高齢者が自立度を高めるため には,体力を維持・向上させることである.高齢者の体力は,加齢に伴い特に下肢筋力が 急激に低下することがこれまでの研究成果によって確かめられている13〕.
また,体力についての研究は,横断的なデータに基づき加齢に伴う体力低下と運動習慣 による体力低下の抑制についての報告が多く,長期間にわたる縦断的なデータに基づく研
究はみあたらない.
そこで,第1章では,1996年から2006年までの12年間にわたり測定してきた60歳か
ら94歳までの高齢男性2014名,女性5510名の筋力,瞬発力,肺機能,敏捷性,柔軟性と いう行動体力の変化と運動習慣が体力に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.高齢者が脚筋力の現状を手軽に把握できることは,運動習慣を改めて,高齢者が自立し て生活していくための筋力を維持しようとするきっかけになると考えられる.筋機能を評 価するには,筋力と筋力を発揮した際の収縮スピード,すなわち筋力とスピードを掛け合
わせた筋パワーも適切に把握する必要がある.
そこで,第2章では,高齢者用の下肢筋力を簡便に評価するテスト法を提案した.これ までに,高齢者の身体能力を評価するテスト法として,ADL動作注9)を基本としたものが 考案され,下肢筋力では椅子から立ち上がる動作を用いた評価が行われている25,2いO).
椅子からの立ち上がりは日常生活の基本的動作のひとつでもあり,体力水準や疾病の有
無に関係のないテストとしての応用も期待できる7・lO・20).
また,文部科学省体力テストの改言下にともなって高齢者用テストが導入23)されたが,
下肢筋力を直接的に評価する内容は含まれていない.本研究ではJ㎝。。ら13)の下肢筋力を 簡便に評価できる椅子立ち上がりテストに注目し,日本人高齢者用のフィールドテストと
して改良し,その信頼性と妥当性について検討した.あわせて,健康な日本人高齢者用の 性別年齢階級別5段階評価表を作成した.
ところで,高齢化が進むにつれて,運動習慣の有無により体力の低下度合いにも差が生 じてくる.比較的元気な高齢者は,より活動的な生活を維持しようとする.しかし,高齢 者が運動中に蹟き等が原因で転倒による骨折や怪我から寝たきりや1蚤我の回復に時間がか
かり,その間に体力の低下をひきおこすという悪循環もみられる.したがって,高齢者は 転倒しないことが重要となる.転倒を予防するためには,下肢筋力とバランス能力,体重 移動を伴うトレーニングを行うことがよいとされている1).著者は,若者を対象としたも のであるが,バランスホールを使ったトレーニングにより,姿勢の安定性が高まることを 明らかにしている24).しかし,高齢者が蹟きのような急激な変化に対応できる素早い反応 を伴う動作ができるための筋パワーをトレーニングし,適切に評価する必要性もあると考 えられた.すなわち,高齢者が自分自身の筋パワーがどれくらいあるのかについても知る 必要があると考えられた.
これまで,筋パワーを評価する方法としては,極短時間のテストとして垂直跳,階段駆 け上がり,脚伸展動作による測定が行われてきた.また,それ以上の時間を全力で発揮し 続ける方法としては,自転車を用いたWi㎎atetestのような反復的なパワーを測定する方 法が用いられてきた.脚伸展パワー測定装置を用いた方法は,一回の脚伸展パワーを測定 するテストとして信頼性は高いが,高齢者が数秒間連続してどれくらいの力を出し続ける ことができるかという能力を測定するには不向きである.自転車を用いたテスト法は,数 秒間連続発揮されたパワーを測定でき,座位にて行う点でテスト中の転倒を防げるという 安全性に優れている.さらに全力で連続して漕ぐ能力は,脚筋力のみならず,左右の脚を 交互に伸展,屈曲することから,階段昇りのようなバランス能力とも関係があり17),転倒 予防のトレーニングにもなるのではないかと考えられる.
上述したWingat・t・stは,体重あたり7.5%の負荷で30秒間合力ペタリング運動する もので,無酸素的パワーを測定する代表的なテスト法で,年齢を間わず実施可能な方法と して確立されている、しかし,低体力の者では,測定時間が30秒と長く,負荷が高まる と腕の引きつけ動作による怒責が生じ,血圧上昇を来す危険性も考えられる.その為に短 時間でかつ,低体力の高齢者でも同様な評価が得られるテスト法の開発が望まれる.そこ で,第2章での二つ目の目的として,高齢者用の筋パワー発揮能力評価法の提案を試みる
ことを日的とした.
ところで,エイジレス・ライフの確立のためには,下肢筋力や下肢の筋パワーが測定さ れ,体力レベルを確認した上で,適切なトレーニングが実施される必要がある.これまで 高齢者や低体力者へのトレーニングは,全身持久性の向上を中心とすることで一定の成果 があげられてきた.しかし,全身持久性の向上を中心としたトレーニングでは,有酸素性 の能力は向上するが,筋力の強化や無酸素性の能力に対する効果は低い.したがって,
ACSMl)は,健康づくりの指針の中で,筋力と持久的トレーニング複合プログラムである We11−rounded training注10)を推奨している.このプログラムは筋力と呼吸循環器機能へ
のトレーニングを中心に構成され,体力の改善,生活習慣病リスクファクターの減少,加 齢に伴う筋萎縮の予防,骨組髭症の予防,転倒の防止,柔軟性の改善に役立つと報告され
ている6).
そこで,本研究では第3章でまず,We11−romded traini㎎の実践効果について,健康 な日本人高齢者を対象に検討した.次に,虚弱な高齢者に対しても残存している自立機能 の維持改善にどのように影響するのかについて検討した.すなわち,本章では,運動指導 専門家の監視下でトレーニングを行わせた.監視下で実施した理由は,トレーニング内容 をしっかり把握させ,習慣化させることで,トレーニング期間の終了後も白毛において実 践できるようになることを目的としたためである.
エイジレス・ライフ確立のためには,トレーニング講習会受講後,自宅においてセルフ トレーニングを行えることが望ましい.白毛で安全に筋力トレーニングを行うためには,
低負荷で行うことである.
しかし,筋力トレーニングに関する報告では,これまでトレーニングを行っていない者 でも筋力を改善するためにはMVC60%の強度で,週3回の頻度が必要とされ29〕,筋持久力 の改善にも40%の強度が必要とされている2).すなわち,筋力トレーニングの効果を上げ るためには,適切な強度が必要とされる.適切な負荷強度を決定する実践的な一つの方法
として,自覚的(主観的)運動強度(RPE)を用いた方法が提案されている9,31).筋力トレーニ
ングにおいても,低負荷であっても疲労四億と感じる時点までトレーニングを行うことで,筋力や筋持久力を向上させる強度となる運動量を確保させることができると考えられる.
そこで,第4章では,筋力運動における活動筋の自覚的疲労感を基にした主観的運動強 度のスケール(以下,Sスケールと略す)を考案して生理的強度との関係を検討した.また,
感じ方に性差や年代差,部位別に差が認められるかどうかも検討した.そして,中高齢者 を対象に,このSスケールを指標として,トレーニングを実施し,その効果について検討
した.
低負荷でも活動筋に効果的な強度を与えることの出来るトレーニング法は,高齢者にと って自宅で手軽に安全に実施できることから,トレーニング指標づくりの一つの有効な方
法になると考えられる.
以上の成果を踏まえて第5章では,高齢者の自立度を高めるトレーニング法を提案した.
すなわち,Sスケールを用いた筋力運動,持久性,敏捷性,筋パワーを加味した複合的ト レーニングにより,中高齢者の下肢筋機能に及ぼす影響について検討した.
高齢者が下肢筋力や筋パワーを維持・向上することが出来れば,自立度が高まる.高齢 者が年齢を感じずにいきいきと活動できる体力を長く持つことで介護を必要としない健康 寿命を伸ばすことができる.そのことは,高齢者の自立度を長く保つ,エイジレス・ライ フの実現となり超高齢社会を豊かにする一助につながる.
そのためには,高齢者の体力状況を把握し,日頃から高い体力を維持することである.
特に下肢筋機能は将来の身体機能低下度を予測する重要な因子m・32)であることから,自立 度を高めるためにも簡便に評価できる方法を確立することが重要である.また,これまで 高齢者でも適切なトレーニングによって体力要素は向上することが報告されているが,そ のほとんどが運動指導専門家の監視下でコントロールされた状況でのものである.しかし,
エイジレス・ライフの確立のためには,高齢者が自宅で安価な器具を用いてトレーニング
できることが望まれている.
したがって,本研究では,高齢者の自立度を高める下肢筋機能評価法について提案する とともに,高齢者が自宅において安全に実施できる効果的なトレーニング法の指針を提案
することを目的とした.
(注)
(注1)健康寿命とは,人の生物学的寿命のうち,要介護や寝たっきりにならない,自立 した活動的な生活を維持できる期間、
(注2)21世紀における国民健康づくり運動:2000年に厚生省(当時)により始められた 第三次国民健康づくり運動の事.通称「健康日本21」
(注3)国立社会保障・人口問題研究所とは,平成8年12月に厚生省人口問題研究所と 特殊法人杜会保障研究所を統合した機関である.人口研究・社会保障研究はもと より,人口・経済・社会保障の相互関連についての調査研究を通じて,福祉国家 に関する研究と行政を橋渡しすることを目的としている.
(注4)Wingateanaerobic test:1970年代にイスラエルのウィンゲート研究所において 開発された自転車エルゴメータによる無酸素性のパワー発揮能力を測定する方法 の一つ.
(注5)ACSM(American Co11ege of Sports Medicine):アメリカにおけるスポーツ医科
学分野の権威ある学会.1954年に設立され,世界で70ヶ国以上,17,000人以上 の会員が所属している。身体バフォ.一マンス,フィットネス,健康,生活の質 (QO L)を維持し高めていく為の学術研究や教育,スポーツ医学と運動科学 の実際的な応用について推進・統合を使命としている.(注6)AHA(AmericanHeartAssociation.Exercisestandards):アメリカの医学系学 会、心血管障害,脳卒中の研究および,心肺蘇生教育に関する世界的情報発信団 体である.
(注7)AACVPR (AmericanAssociationofCardiovasularandPu1monaryRehabi!itati㎝
:米国心血管・呼吸リバ学会):アメリカの医学系学会.心臓リハビリテーション の研究および情報発信団体である.
(注8)主観的運動強度とは,人の運動強度の感じ方は必ずしもエネルギー消費量によっ て決まるものではなく,多分に運動時の心理状態に依存する.感情によって表象 として浮かび上がる程度からみた運動強度が主観的運動強度である.ボルグによ って作成された6−20までの15段階からなる尺度(RPE)がよく知られている.
(注9)ADL(activities of daily1ivi㎎)とは,人間が独立して生活するために必要な 基本的かつ共通に毎日繰り返される一連の身体動作群(交通機関の利用,家事,
金銭管理等).
(柱10)ウェルラウンディド・トレーニング(We11−rounded Training)とは,抵抗負荷 運動(筋力づくり),全身持久力のための有酸素運動,柔軟性運動を複合させた トレーニング法であり,アメリカスポーツ医学会(ACSM)が中高年者や高齢者の 健康づくりに必要なトレーニング法として推奨している.
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第1章 高齢者の体力の実態と課題について
1.はじめに
高齢者が健康的な生活を営むためには,単に「病気ではない」というだけではなく,活 発に日常生活することで,運動不足による病気の早期発生リスクを軽減させることが重要 である.体力を高く保つことにより,病気発症のリスクを低下させてQOLを高めるという 健康関連体力という概念も生まれた12).そして,2000年には厚生省(現在の厚生労働省)
から健康寿命の延伸,生活の質の向上を実現するために健康づくりや疾病予防を積極的に 推進する国民健康づくり運動「健康日本21」が打ち出された.行動体力が高まると病気
になるリスクも低くなるため医療費の削減効果への動機づけとしての体力トレーニングも 行われるようになってきた7).これまでの研究成果から加齢に伴う体力の低下が言われて きたが,後期高齢者を対象として筋力トレーニングを行い20%以上も筋力が増加したとい
う報告もある5〕.
また,「老いは脚から」といわれるように膝伸展運動の主働筋である大腿四頭筋の筋力は 加齢に伴い著しく低下する.下肢筋力の低下は,歩行能力やバランス能力の減退に影響を 及ぼす19〕.そのために,下肢筋力を維持向上させるトレーニングが必要であり,家庭で手 軽にトレーニングしながら下肢筋力を簡便に評価できる研究も報告されている13).このよ うにトレーニングによって高齢者の筋力低下に歯止めをかける試みが数多くなされている
5,7,13)
一方,表1−!に示すように高齢者の自立度を高めるための体力測定に関する研究も数多 く報告されている.これらを概観すると加齢変化していく高齢者のどの体力をどのように
測定し評価すれぱよいのかということについて検討したもの2・3・8・11・15〕やどれくらいの体
力水準があれば高齢者が自立できるかという視点(ADL)で,生活に関連した項目として連 続上腕屈伸,8の宇歩行,豆運び,ファンクショナルリーチ注1)を測定するのが良いとするもの17・18),さらには,歩行に着目し,歩行速度と体力との関連や転倒と体力について検討
した報告I4,19,20)に大別される.
ところで,これまで高齢者の体力の実態を調査した研究は横断的な研究がほとんどであ
る3,6,ll・16・17).横断的な調査に加えて,高齢者の体力変化を縦断的に検討することは,高齢
者の自立度や活動度を高めることを目的としたこれまでの啓蒙活動の成果をより正確に把 握できるものと考えられる.また,高齢者の体力状況を把握するための基礎資料を提供し,そこから高齢者の自立度を促進するための課題とその解決に向けた検討事項がより明確に
できると考えられる.
そこで,本章では,まず健康な高齢者の筋力,瞬発力,敏捷性,柔軟性,肺機能という 行動体力要素について,1995年から2006年までの12年間にわたり測定してきた横断的な 研究の成果をまとめた.また,運動習慣が高齢者の体力に及ぼす影響について検討し,さ
らに,約10年間にわたる体力の縦断的な変化を明らかにすることを目的とした.
表1−1 我が国における高齢者の体力に関する先行研究一覧
著者 対象 性別 測定の目的 成果
南雅樹他8〕
60−89歳 男・女 体力要素間の関連性 体力要素間の関係は性差あり.体力要素間の関係は
(体力科学) 75歳以降で低下.
出村慎一也3〕
60−89歳 女 体力因子構造分析 握力,体捻転.ステッピング,肺活量の測定で
(体育学研究) 77%の体力を推定出来る.
出村慎一也2〕
60歳以上 男1女 日常生活動作の特徴調査 移動系,操作系、平衡系.姿勢変換系の動作は加齢
(体育学研究) =伴い成就率が低下.
筋力・平衡性及ぴ柔軟性は加齢変化.
中比呂志11〕
65−89歳 男・女 高齢者の体力因子構造から体格・体 柔軟性は女性の方が,筋力・平衡性は.男性の方が
(体育学研究) カの性差と加齢変化の検討 優れている.
低下度は,筋力及ぴ平衡性で大きい.
重松良祐他18〕 連続上腕屈伸、8の字歩行,豆運び.ファンクショナル
(体育学研究) 60歳以上 女 高齢者の身体機能水準の設定 リーチの標準得点から高齢者の身体機能水準を評
価.
重松良祐他η) 高齢男性の身体機能を評価するハッ 連続上腕屈伸.8の字歩行.豆運び.ファンクショナル
(体育学研究) 60−88歳 男
テリーテスト リーチが高齢者の身体機能を評価するバッテリーテス
トとして妥当性がある.
西嶋尚彦他15〕 筋力・筋パワー領域の基準関連妥当性係数はO.フ7.
(体力科学) 52−80歳 男・女 質問紙1こよる体力チェックの妥当性 持久力領域は0.66、調整カ領域は0.59,柔軟性領域
はO.82と質問紙体力テストとの関係がみられた.
歩行に関与する運動能力は.スピード,調整カ,持久 カの3領域.歩行速度の要因は.歩幅.
西嶋尚彦他14〕
60歳以上 男・女 高齢者の歩行能力テストの研究 歩幅の決定要因は下肢筋力.
(体力科学) 歩行の調整能力は、障害歩行や8の字テストでみれ
る.歩行の持久力は,6分,12分問歩行テストでみれ
る.
田井中孝司池田
(体力科学) 75歳以上 女 歩行連震の低下と体力要素との関係 歩行速度の低下は下肢の筋力低下が影響.
田井中孝司他刺
80±4歳 女 転倒に関連する体力要素の抽出 高齢者の転倒の要因は,歩行能力,下肢筋力、反応
(体力科学) 時間,柔軟性の低下が影響.
2.方法
1)対象対象者は,1995年から2006年までの12年間,毎年8月末から11月中句までの期間,
大阪府下の各地で開催されている大阪府医師会主催の「健康展」における体力測定コー
ナーに参加した60歳〜94歳までの高齢者男性2014名,女性5510名である.対象者の
中には,12年間で複数回参加している者がいる.複数回参加している者は,直近のアン ケート調査結果及び体力測定結果のみを採択して横断的データとした.したがって,横 断的データの対象者は,男性1402名,女性5276名となり,性別・年代別に対象者の平 均年齢,平均身長,平均体重を表1−2に示した.一方,縦断的データとして前後10年の加齢変化を検討するために,調査対象期間の
12年間のうち,1995年から3年間と2004年から3年間の両方に参加した者とした.な
お,前後の測定期間を長く得るために,対象のうち1995年からの3年間で複数回参加した者は,1995年から順にデータを採用した.また,2004年からの3年間で複数回参加し た者は,直近のデータを用いた.その結果,男性14名と女性63名が対象として抽出さ れた.表1−3に性別・年代別に対象者のデータ数,平均年齢,平均測定間隔,平均身長,
平均体重を示した.
表1−2
1995年〜2006年までの王2年間の大阪府健康展体力測定参加者の身体的特性性別 年代 60〜64歳 65〜69歳 70〜74歳 75歳〜 総計
データ数 302.一一一一一一一■一一一一一一 374一 一 ■一 一 一 一一. 一 一一一 376一■■■■I一■ 350
一■一一一■一一一■一一
1402 一一 一 一 一
男性 年齢 62.2±1.4 67.O±1.4 71.8±114 79.O±3.7
一一一一一一一・一一・・ ■一・・.・一・.一 一一一一一 一■■一一.一一一一一一一 一・・.一・■一
70.3±6.5 一一 一 一一 一 一 一
身長 163.6±6.1■ 一 一 ■ 一 一一一 一 一 一 一一一 一
162.O±6.0 161.7±5,9一 一一 一 一 ■一 一
160.8±7.5 162.O±6.5
一■■■一一一一一一一■ 一一一■一一一・一一一■一一 一一・・一■.I
体重 61.8±7.9 60,7±8.2 59.0±7.7 57.4±10.7 59.7±8.8
データ数 1605 1598 1129 944 5276
女性 年齢 62.C±1.4 66.9±1.4 71.8±1.4 78.7±3.4 68.7±6.2
身長 152.2±5.2 151.O±5.0 149.9±5.0 147.9±5.6 150.6±5.4 体重 52.9±7.2 51,7±7.8 50.5±7.6 48.6±8.0 51.3±7.8
表1−31995年からの3年間と2004年からの3年間の両方に 大阪府健康展体力測定を受けた者の身体的特性
性別 年代 60〜64歳165〜69歳170〜74歳1 75歳〜
データ数 3 4 7
一一 一 一一 ・ l I − I■■ 一一 一 一 一
年齢
・一一一一一一一一一一一一 P ■F一■一一一一一一一一一一一一一一一
h
61.3=■=1.9 =67.8=ヒ1.1 171.9=ヒ1.6 1
1
一… 一 ■ . ・ ■ I・■ 一■ 一 一 一 一一 一 一一 一一一 一一一 i 一 一 一■ 一 ■ 一 一 ■ 一 ■■ 一一 ■ 一 一 ■
男性 測定間隔
● 1 −P0土0.0 =8.5±0.9=9.1±1.4=
・ ・ . 一 ■ 一 一 .一■ I 一 一 ■ 一 一一 一 一一 一一一 ■一■ . . ■ 1 i ■ 一一 一 ・ i一 一i 一 一 一 一 一 一
身長
169.O=ヒ4.2=163.8一=3.3=165.1=ヒ5.1=一 1
・■ . i ・ . 一 一 ■一一 . 一 一 ■ 一 一一一一一一一一一一一一一±一一..一一一一一. 一一 ■一一一一一一一一一一Iii−I■一■■一一一一一一■一一一一
体重
62.7=ヒ0.5 163.8=ヒ5.4159.2:!=8.01● 1データ数 23 21 13 6
一一■ 一 一■ ■ ■ ■ ■■一 一■ ■・ 一 一一一■■一一■一一i i一一i一.・..i i.I一 一一一■一一一■一一一一一一一一一I一一一■一一一i 一・一.一■.一1
年齢
62.0=!=2.4 =67.0:!=1.4 =71.5=L1.1 = I ■ ■78,0±2.1
一・一.一一 一 一 一一一一 一一 一 一 一 I・ 一一一 一・一 I一一 I I
女性
1一』一… 一一■一.I・■■1■■・
測定間隔
9.3±0,9 1 9.2=!=1,2 1 9.0=■=0.7 1 9.O±1.0一 一一一一一 i i 一・・i −i 一 一 i
身長
・一一一一一一一…一一 P ●一一F一一一一一一一.一・一・i一・.■149.9土4.81148.6±3.81148.0±6.21 14519±3.1
一 一 一一一 一■ 一 一 一一一一 一一 一 一 一 ■■ 一一■ 一一一 一一一 一 一
÷ 1一一r一一一一一I一■一■■■■■■一一
体重
52.6=!=7.0149.1=1=8.0150.6=ヒ6.3 1 47.6±9.275畠以上
一〇川4歳
65〜69歳
。o−04歳
{男性〕 {女性〕
;口通3−4回 一■週1−2回
!【ヨ月1一里回
○吊 20冊 40, OO丑 80, 100, O丑 20, 40, OO, 80, 100、
運 動 習 慣
75叢川
T0崖一利虚
航虚山09歳
。o虚山榊歳
{男性)
○丑
1女性〕
20, 40帖 60, 30, 100品 O{ 20曲 一〇時 60、 目O芋 100監
1二微量問未,
i口30分以上1時間未満i 一日・嚇未満 .」
1回あたりの運動実施時間
図1−1 年代別,高齢者の運動習慣及び運動時間
2)測定項目及ぴ測定の流れ
体力測定参加者には既往歴,生活活動状況,生活習慣及び運動習慣のアンケート調査を 行い,血圧測定を行って安全に体力測定が出来るかどうかを判断した.すなわち,血圧異 常等の理由で体調不良と判断した場合は以後の測定を中止とした.
体力測定は,筋力,瞬発力,肺機能,敏捷性,平衡性,柔軟性の6因子のうち,平衡性 を除いて,それぞれの代表的なテスト項目である握力,垂直跳,肺活量,反復横跳,立位 体前屈と全身反応時間を測定した.なお,平衡性の代表的なテストである閉眼片脚立は高 齢者の安全性を考慮して除いた.
体力測定は,「新・日本人の体力標準値2000」に記載されている方法21)に基づき測定し た.なお,各測定で得られた値について新・日本人の体力標準値2000の標準値を50とし たTスコアに変換し6項目の平均値を個人のTスコアとし,体力得点とした.すべての測 定が終了した者には,アンケート調査の記入に基づき生活習慣及び運動習慣の確認を行い,
体力評価をするとともに今後の体力づくりについて,著者らがアドバイスを行った、
3)統計的検定
a)横断的変化対象を男女別に60〜64歳(以下,60歳代),65〜69歳(以下,65歳代),70〜74歳(以
下70歳代),75歳以上(以下,75歳代)の5歳間隔の年齢群に区分し,測定で得られた値 はすべて平均±標準偏差で示した.年齢と体力測定項目との間の関係については,ピアソ
ンの相関分析を用いた.
加齢に伴う変化及び運動実施頻度差の検討は,変量及び因子について年代別・運動実施 頻度別平均値,標準偏差を算出し,年代及び運動実施頻度の二元配置分散分析を行った.
その後Bonfθrroniによる多重比較検定を行った.また,運動実施頻度差と運動実施時間差 の検討は,年齢を共変量とした運動実施頻度と運動実施時間を要因とした共分散分析を打
つだ.
b)縦断的変化
前(1995年一1997年)と後(2004年一2006年)の母集団の差の検討は,t検定を用いた.
男性及び女性の体力測定項目の縦断的変化の検討は,連続した前(1995年一1997年)と 後(2004年一2006年)の体力測定項目と年代の繰り返しのある二元配置分散分析を行った.
その後Bonferr.niによる多重比較検定を行った.なお,本研究ではすべての検定において 有意水準は危険率5%未満とした.
3.結果
1)横断的変化
対象者の運動習慣及び運動時間について,男女別,年代別の割合を図1−1に示した.男 性では,週3〜4回運動する習慣は年代が高くなるほど割合が増加した.一方,女性はどの 年代も運動習慣が無い割合が約四割で高かったが,週3〜4回運動する者も四割近く存在し,
二極化の傾向にあった.
運動習慣のある者の運動実施時間は,男女共に,いずれの年代も1時間以上2時間未満
の割合が最も高かった.
表1・4に男女別年代別の体力測定結果を示した、
表1−4 男女別年代別の体力測定結果
性別 60〜64歳代群 65〜69歳代群 70〜74歳代群 75歳〜代群
項目 n数 男=302女=1605 男=374女=1598 男=376女:1129 男=350女=944
握力(kg)
男女 35.2±6,5 Q1.8+4.3
33.5±6,6 Q0.6+4.2
32,2±6,4 P9.3+4.3
29.1±6.4 P712±4.6
全身反応時間(mSeC)
男女
403±75
S28+91424±107 S46+■2
434±121 S79±141
485±158 T41±168
垂直跳(Cm)男女 30.6±8,5 Q3.1+5.9
28.4±7,1 Q0.7+5.5
26.4±7,6 P8.2+5.5
20.7±7,6 P4.9±5.0 反復横跳(timeS)
男女 28.5±7,2 Q7.0+5.8
26.8±7,0 Q5.1+5.7
25.7±6,7 Q3.2+6.2
21.8±7,0 P9.2±5.8
立位体前屈(Cm)
男女 1.4±8.9 X.8+6.8
O.6±9.1 X.9+7.3
1.45±8.8 X.8±7.4
O.18±9.3 W.5±7.0 肺活量(㏄)
男女
2994±653 Q154+475
2784±615 P994+485
2654±644 P846+459
2489±645
P665±458
また,表1−5に男性と女性の実年齢と体力測定項目との相関関係を示した.立位体前屈 を除きすべての項目で年齢の増加と体力の低下との間に有意な相関関係があることが認め
られた.
表ユー5 年齢と体力測定項日との相関係数
項目
相関係数
男性 女性
握力(kg) 一0,358 * 一0,377 *
全身反応時間(mSeC) 0,279 * 0,307 北
垂直跳(Cm) 一0,445 * 一〇.480 *
反復横跳(timeS) 一〇.349 * 一0,420 *
立位体前屈(Cm) 一0,017 −0.056 肺活量(CC) 一0,291 * 一0,363 *
*=ρ〈0.05
a)体力測定項目における年代差・運動実施頻度差
運動習慣を運動習慣なし群(以下,N群),月1〜2回群(以下,M2群),週1〜2回群(以 下,W2群),週3〜4回群(以下,W4群)の4群に分類し,表1−6に体力測定項目におけ る年代及び運動実施頻度の二元配置分散分析及び多重比較の結果を示した.
年代と運動実施頻度の交互作用は,女性の立位体前屈にのみ認められた.年代のみに主 効果が認められた項目は,男性の全身反応時間と肺活量であった.運動実施頻度のみ主効 果が認められた項目は,男性の立位体前屈であった.年代及び運動実施頻度の両方に主効 果が認められた項目は,男性及び女性の握力,垂直跳,反復横跳,と女性の全身反応時間,
肺活量であった.
b)体力測定項目における運動実施頻度差及び運動実施時間差
運動実施時間を2時間以上群(以下,2H群),1時間以上2時間未満群(以下,1H群),
1時間未満30分以上群(以下,59M群),30分未満群(以下,29M群)の4群に分類し
た.表1−7に体力測定項目における運動実施頻度及び運動実施時間を二要因とし,年齢を 共変量とした共分散分析及び多重比較の結果を示した.交互作用は,女性の全身反応時間,垂直跳,反復横跳に認められた.運動実施頻度に主 効果の認められた項目は,女性の立位体前屈のみであった.また,運動実施時間に主効果 の認められた項目は,男性の全身反応時間であった.