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へき地校における英語コミュニケーション能力の形成 : 文法的な文の発話能力の発達をうながす教授支援を中心に

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Academic year: 2021

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(1)Title. へき地校における英語コミュニケーション能力の形成 : 文法的な文の発 話能力の発達をうながす教授支援を中心に. Author(s). 小山内, 洸; 遠藤, 憲晃. Citation. へき地教育研究, 57: 7-14. Issue Date. 2002-12. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/1760. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) へき地校における英語コミュニケーション能力の形成. へき地校における英語コミュニケーション能力の形成 ─ 文法的な文の発話能力の発達をうながす教授支援を中心に ─ 小山内. 洸. (北海道教育大学釧路校). 藤. 憲. 晃. ているかを解釈する。. 本研究の課題 本研究では中学. 遠. (新得町立富村牛小中学校). 年生がわずかに. 名という小規模校. の授業を対象に,英語コミュニケーション能力の形成を. なお,本研究は上記研究仮説の有効性の検証までは課 題とせず,それは今後の継続研究にゆだねる。. 目標とする教授方法を考えることとする。その際,以下 の 点を前提とする。 英語コミュニケーション能力を定義するに当たっ ては,それを広くとらえる観点に立ち,その能力を. 英語科教育の意義 英語科教育は学校の教育課程の目標を達成するために. 構成する要素の中でとくに 文法的な文の発話能力. 教科として行う英語教育を意味している。わが国の英語. の形成という部分を焦点化する。. 研究は, 英学. 第. としての長い歴史を知的文化財として. 言語習得論にはいくつかのアプローチがある. もつと同時に,第 次世界大戦後は国民多数が身につけ. が,本研究では社会文化理論の立場に立つアプロー. るべき基礎的教養の一部として重視され,学校では英語. チを採用する。. 科教育という形で関係者が充実発展に力をそそいでき. 本研究が依拠する社会文化理論的アプローチはい. た。本研究では,英語科教育を義務的な教科の一つとし. くつかの研究上の構成概念から成り立っているが,. て中学生に学習させることは知識と文化の吸収の窓を世. その中でとくに. 足場づくり. 理論が. 文法的な文. の発話能力 の形成に有効であると考える。. 界に開くという点で意義あることだと考えている。 同時に考えなければならないことは,ことばとしての 英語そのものの学習に対する興味を高め,コミュニケー. 本研究における研究仮説は以下のとおりである。. ションの道具として英語を積極的に使って自分の思考や 感情を表現する意欲をいかにして高めるかという問題で. 社会文化理論における. 足場づくり. 理論に依拠した. 教授方法を採用することにより, 入門期英語科教育で 文 法的な文の発話能力 を高める教師と生徒の対話を効果 的に構造化することができるであろう。. ある。この点をないがしろにすると英語科教育の存在意 義は半減してしまう。 以上のような性格をもつ英語の基礎的な学力をすべて の生徒に確実につけることは必ずしも容易でないが,で きるだけ多くの生徒が学びがいのある教科と感じられる. 上記の研究仮説に基づき,以下の作業を行う。 .先行研究を参考に. 足場づくり. 理論をいくつか. ような指導のプロセスを考えることはできるだろう。本 研究の対象は,わずか. 名の中学校. 年生のクラスであ. の項目に分ける。. る。このような状況では,グループ・ダイナミックスが. .授業の記録をとり,上記の項目に照らして分析す. 作用しにくいため, 実践的コミュニケーション能力. る。. をつけることが難しいのは当然である。しかし,その困. .上記の分析から,教師と生徒の対話が. 文法的な. 文の発話能力 の形成にどのように結びついていっ. 難を乗り越える方法を工夫し,言語活動と学習活動を充 実させることが必要である。.

(3) 小山内. 洸・遠 藤 憲 晃. 第 言語習得論における社会文化論的アプ ローチ 概. 観 )の発. は,ヴィゴーツキー(. 達心理学理論に依拠して第 言語習得過程を研究する立 場である。このアプローチは. 年代に入ってから顕著. な理論的潮流となってきた。周知のようにヴィゴーツ 年. キーは. 子どもが学校で学ぶ基本的な教科の内容(科学的概念・ 知識)は,必ず教師による教授過程に媒介されて子ども の内面に取り込まれる,という考え方である。つまり,. 言語習得論における社会文化理論的アプローチと. 第. を上のように定義することで強調したいことは,. 月. 日に生まれたロシアの発達心理学者. 科学的概念・知識の獲得において,未熟者(. )は. )との間で対人的(. まず熟達者(. ). 心理関係に置かれ,その関係の中で新しい科学的概念・ )がすすみ,やがて自立. 知識の内面化(. )心理機能を獲得する,と想定. 的(. するのである。 熟達者との間の対人的心理関係. の強. 年に柴田義松. 化・促進に関与するのは,熟達者がイニシャティブを. 思考と言語 (明治図書出版)に. とって行う教授・誘導・協同などの具体的な行為であ. より広く知られるようになった。同じ年にアメリカでも. る。これらの行為は当然ながら未熟者が到達できる発達. である。ヴィゴーツキーの発達理論は 氏が翻訳・出版した. 英語版が出版されたが,これは抄訳であり,柴田義松氏. の水準内で行われる必要がある。その範囲が. の精力的な仕事にはとうてい及ばない。近年になって,. ると考えられる。. 中村和夫氏の労作 ヴィゴーツキーの発達論. であ. 文化・歴. に関する上述のような考え方は,教授過程を熟. 史的理論の形成と展開 (東京大学出版会)が世に送ら. 達者から未熟者への一方的情報伝達過程ととらえるもの. れてわれわれの研究を助けてくれる。社会文化理論的ア. ではない。子どもの自己学習意欲や発達の自己運動を当. プローチの立場を第 言語習得に直接結びつけた研究書. 然の前提として重要視している。それは教授・誘導・協. としては,ラントルフとアペル(. 同などの具体的な行為の内実に生かされなければならな. )による. いものである。. があり,参考にする価値が高い。その他,第. )の概念を第. しかし,最近接発達領域(. 言語. 言語習得研究におけるさまざまなアプローチの中で,社. 外国語習得理論に関係づけるに当たっては,一定の限定. 会文化理論的アプローチがどのような位置に立つかとい. が必要である。無原則的な関係づけはできない。第. う問題を知るには,ミッチェルとマイルズ(. 語. )が編纂した. を以下のように限定して考えることとする。. ミッチェルとマイルズは,ヴィゴーツキーの心理学理 つの分野に分けて. (最近接発達領域) ,. いる。 (内言),. 言. の概念で説明でき. るとは限らないのである。したがって,両者の関係づけ. が分かりやすく有益である。 論に基礎を置く第 言語習得研究を. 外国語習得理論のすべてを. (活動理論)の. 分野である。本来であれば,それぞれがどのような構. .第. 言語. 外国語(以下,. )習得理論に関. は,目標言語の自由な運用能力. 係づけられる. を習得する過程における,. の獲得をめざして. 中間言語の潜在的な発達可能性である。 .中間言語には,いま現に到達している発達のレベ つのレベルの. 成概念によって成り立っているかをある程度くわしく説. ルと可能な発達のレベルとがある。. 明すべきであろうが,それは別の機会にゆずって,以下. 間に. がある。. では本研究に直接関係ある部分に限り必要な範囲内でふ. .. 学習者は,中間言語における. れることとする。直接関係ある部分とは, 最近接発達. 内で, 目標言語の習得を促進するための教授支援 (熟. 領域 (. 達者がイニシャティブをとって行う教授・誘導・協. )理論と. 足場づくり (. )理論. である。. の範囲. 同など)を受け入れることができる。この教授支援 は,中間言語の潜在的な発達可能性に働きかけ,. 最近接発達領域(. )理論. 本研究では最近接発達領域(. の自由な運用能力の獲得という目標の実現 )の概念を次のよう. に定義するものとする。すなわち,. はその範囲内. に学習者を向かわせる。 .. 学習者の中間言語の潜在的な発達可能性 の範囲が広ければ),. で教師や仲間の援助(教授)を受け入れることができる,. が大きければ(つまり,. 子どもの潜在的な発達可能性(成熟しつつある機能)で. それだけ教授支援の効果は大きい。それが小さけれ. ある。したがって,それにはたらきかけ実現させる(成. ば(つまり,. 熟させる)教授は無限定ではない。教授は子どもの潜在. 授支援の効果は小さい。. 的な発達可能性の範囲に適合している必要がある。. の範囲が狭ければ),それだけ教.

(4) へき地校における英語コミュニケーション能力の形成. .. の範囲を越えた教授支援は学習者にとって. タラクション(相互作用)を通じて行われると想定する. 困難をもたらす。. のである。ただし,ここで言うインタラクションは一般. .上述. の教授支援(熟達者がイニシャティブを. 的な意味でのそれではなく,経験者(ある課題の達成に. とって行う教授・誘導・協同など)は,一方通行的. 対して他者より相対的に高い能力と経験をもつ熟達者). な情報伝達でなく社会的・相互交渉的な性格をもつ. と初心者(ある課題の達成に対してまだ能力も経験も十. ものでなければならない。. 分にもたない初心者)とが協力しあうインタラクション. .. のことである。そのようなンタラクションにより第. の範囲の広さを推し量る,以下のようない. くつかの手法が考えられている。. 語習得が現実にすすむと考えるのである。. ・誤りの自己訂正のしかたに注目して,それを段階 化する方法. 英語の文法的な文を発話する能力を,初心者が熟練者 との相互交渉なしに,単独で習得することは不可能であ. ・模倣能力に着目した. (. ろう。普通は,初心者と熟練者との間に何度かのことば. )タスクを与える方法 ・ (. のやりとりがあり,そのようなやりとりを通じて初心者. )を通して特定の学習課. 題を対話的に遂行させる方法 .上記. 言. の方法はあくまで. にとって新しい構造の文法的な文が習得される。たとえ ば,子どもが蟻を指差して“. の範囲を推し量る. ための手段であって,学習者の中間言語の潜在的発. ”という. 文を言えるようになるには,以下のようなことばのやり とり(相互交渉)を経るだろうと想像される。. 達の可能性に直接働きかける教授的支援ではない。 を広げる実際の教授的支援(熟達者がイニシャ. 子ども. ティブをとって行う教授・誘導・協同など)は,以. 母親 子ども. 下のような要素を含んでいる必要がある。. (蟻を指差して). ・インテイクにつながるインプットを与える. 母親. ・利用可能なアウトプットの機会を活用する. 子ども. ・双方向的なコミュニケーションを多くする. (やや間を置いて,蟻を見つめながら). ・誤りの適切な訂正フィードバックを与える. 子ども. .上記. において,学習者の自己学習意欲や発達の. 自己運動は当然の前提として認められ,制限されな. 英語を. として学び始めた中学生にとって教師(熟. い。. 練者)とのことばのやりとり(相互交渉)がきわめて重. .中間言語の発達過程は,高次心理機能─知覚,記. 要なことは,改めて指摘するまでもないであろう。しか. 憶,注意,意思,思考など─の発達水準の影響を受. も,ただ一般的な意味でのことばのやりとりというので. ける。. なく,生徒(初心者)どうしのやりとりを含みながら, 教師(熟練者)が生徒(初心者)に意図的・意識的なこ 習得理論を限定的. とばの投げかけを行っていく必要がある。しかも,その. に関係づけることとする。このように限定された範囲内. 投げかけは,新しい言語の文法的な文の発話能力の形成. で, 文法的な文の発話能力. という目標に照らして妥当なものでなければならない。. 以上のように,. くり (. 理論に. の形成に有効な. 足場づ. )の方法を考えてみたい。. 言い換えれば,生徒一人ひとりの 中間言語においてい ま現われつつある発達の可能性の水準に配慮した,意味. 足場づくり ( 足場づくり 足場づくり. )理論の要点. とは何か とは,子どもが現在できる能力のレベ. ルに応じて,課題解決に必要な情報や援助を与えること. のある対話でなければならない。小人数のクラスであれ ばあるほど,個々の生徒の中間言語の潜在的な発達可能 性の現在の水準に注意をはらうことと,個々の生徒との 間で交される意味のある対話の重要性が増すであろうと 考えられる。. により,子どもの学習を支援する指導の方略である。第 言語習得論にはいくつかのアプローチがあるが,社会. 文法的な文の発話能力の獲得をうながす. 足場づく. 文化理論的アプローチの大きな特徴は,言語習得の過程. り. を基本的に社会的であるとみなす点にある。つまり,学. 以下では,英語の文法的な文の発話能力の獲得をうな. 習者のアイデンティティ(安定感と自尊感を伴う主体的 な自己意識)の形成と第. 言語運用能力の獲得は,イン. がす 足場づくり. の方法についてのべる。. この方法の前提となっている基本的な考えは, 教師(熟.

(5) 小山内. 練者)が. 足場づくり. 洸・遠 藤 憲 晃. のために生徒(初心者)に投げ. . 英語の特徴として. があります。ここは(訂. 正箇所を指定して) の方がいいと思うけど,ど. かけることばは意図的・意識的に段階づけられている必 要がある,ということである。問題はその段階づけをど. う?(反応を見る). のようにするかである。段階づけは粗くも密にも考える. . ここは. なので,. になります。. ことができるが,実際の有効性を考慮すれば,粗密の程 度はおのずからきまってくるように思われる。以下はそ. 上記. の誤りについて以下のことが言えるだろう。. 英語を. の点を考慮した一つの試案である。. として学習し始めた中学生は,. と. もに誤りが多いだろうと想像される。 [目. 英語の習得が順調に進み,中間言語の文法が目標. 標] 英語の初歩的な文法的な文の発話能力の獲得. [対. の誤りは少なくなる. 言語のそれに近づくにつれて. が, の誤りが自動的に比例して減ることはないだ. 象] 英語を学び始めた日本人中学生. 名. ろう。 英語を. [発話モード]. として学習し始めた中学生に対する教. 授的支援しては, に重きが置かれるのは当然だが,. 書記モード. 必要な範囲で にも目を向ける必要がある。. [足場づくり] 文の構造・形式上の誤り ・構造語(冠詞,指示語,前置詞,接続詞などの不. から,小人数の学習者を対象とする英語. これら. 授業において,文法的な文の発話能力の発達をうながす. 適切な使用または欠落) ・屈折形式(動詞・準動詞のテンスに関係する屈折 語尾,複数・単数の区別など). 足場づくり は,以下のように行うのがよいと考える。 両方について, 誤りの指摘と訂正の問いかけは,. ・. (暗黙的)から. (明示的)へと,. ・語順(文,節,句,連語,決まり文句など). 上に例示した. ・内容語(辞書的意味の不適切な選択,類似語の混. 段階を追って進むことが望ましい。その逆だったり 段階が恣意的に入り混じっていると,中間言語の発. 同など) . 先生が読むとちょっと変だなと思うところが あるんだけど,自分で気づきますか。 . じゃ,. から. まで,ここのところで何か気. づきませんか。 . 英語の文法に. 達の潜在的可能性が阻害される。 ・小人数であればあるほど,学習者どうしの話し合い も活発に行われるであろうし,その話し合いの中に 個々の生徒の. というきまりがあります。そ. の違いが現われるのは当然であ. る。したがって,教師は上記. でのべた指摘と問い. のきまりにそって考えるとどうですか。. かけを,全体の話し合いの流れを壊さないように配. . ここは. 慮しながら,一人ひとりの生徒に振り向けていく必. だから. でないといけないと先生は. 思いますがどうですか。 . ここは. 要がある。. になります。. 文の談話・意味・語用上の誤り ・短絡的な意味表出(英語として意味が十分に表わ. 以下では,これら 点の項目にそって授業の分析と評 価を試みる。. れていない) ・スタイルの混同(レベルの異なるスタイルが混在. 授業の分析と評価. している) ・語彙的意味における文化的背景の違いを無視した. 授業の実施 ・中学校. 語彙選択 ・思考の整理の不備(時系列,空間配置,因果関係,. 年生を対象に入学後間もない. 比較対照など). ・ クラス生徒数. . 英語に. ・書記モード発話にもとづく. る?. なことなかったっけ。聞いたことあ. 月初旬に実. 施 名 足場づくり. 対話. ない?. . 英語の. に関係することがあるんだけど自分. で気づく間違いない?. そこをなおせる?. . 英語の特徴として. があります。そこを自分. でなおせる?. 授業の全般的プロフィール 授業は教科書に基づく通常の授業の時間を調節しなが ら,. 人の生徒の英文について, 愛. 舞. 悟史. の. 順に話し合いをした。以下の一覧表から分かるように,.

(6) へき地校における英語コミュニケーション能力の形成. 回数を重ねるにしたがって,行われた対話総数は減って おり,明らかに学習効果が生じている。また,誤りの訂. ドバック。. ) 。. 愛 あっ! うん?. 正箇所が共通している点も注目される。. だれでもいいです。. 課題を引き続き意識. させる。 (最も暗黙的なコレクティブ・フィードバッ 愛 対. 話. 総. 舞. 悟 史. 愛. 教 師 の 発 言 回 数 (%). 舞 (. ). (. ). (. 訂 正 数. 最初の訂正(スペリングの訂正 あっ,ほんとだ。. ). 構造形成. の継続・強調). クの継続。. 数. ). 。. 違う? じゃない,最後。. 愛. 意味語用. って何?. 綴り句読点. あの…. 舞. 愛 おかし。 各生徒の書記モード発話. ふーん。 愛. それちぎるみたいな。 。これ(生徒の書いたプリント)自分のやつ だね。自分のやつね,赤のペンかなんか,色ついた の最後,. やつないかな。直してください。 が. なの?. ポッキーって何?. 愛・悟史 ポッキー,おかし。 あのステックみたいなやつ?. ポッキーか, そうか。. したらね,直してね。あとは気づいたところある? (別な箇所について最も暗黙的なコレクティブ・ ). フィードバック。 。. 悟史 舞. 箇所目の訂正(スペリングの訂正 ). 。 ,どこが変なの?. 悟史 愛. と 。. ほんとだ。 いいとこ気づきましたね。よくあるミステイクです ね,これはね。. 舞 愛. と ? と ,反対? 反対なんだね。. に. をつけるんだね。. とかね。はい,他にありますか? 他はどうでしょうか。気づいたことあったら言って ください。. (さらに他の箇所について最も暗黙的. なコレクティブ・フィードバック。 愛. ? は何が違う?. 舞 (伊東 愛)にもとづく. 足場づ. くり 対話例 今渡したのはこの前みんなに英語で書いてもらった. 綴りか?. はあってるよ。 はあってますよ。. 愛. チキン?. 舞. あっ,わかった。. なんとかですね。それで,ほとんど正確. の次?. あ,あ,あ,名前か。. にできていると思うんですが,ちょっと間違いがあ ります。発見してください。. 相手を特定せずに訂. 正をうながす(最も暗黙的なコレクティブ・フィー. ). 愛. あ,あ,あ,とか言って。 チキンが何?. あっ,違うこれ。.

(7) 小山内. 愛. チキン?. 洸・遠 藤 憲 晃. 。. 綴りか?. うん。もう出てきてるね。. どこに が入るんだ?. 愛. の前?. 舞. の前だよね。. えーっ。. 愛. はい。わかりませんか。 わかりません。. 舞. そうだね。 愛. チ・キ・ン。. 箇所目の訂正(スペリングの訂正. 第. ヒント。. 愛・舞. 彼女は。. ). ってどういう意味?. を入れてください。. 愛 彼女の名前。. 。. 愛. うん?. これ何ですか?. って何?. ミュージシャン。. , だ。. 愛・舞. (さらに他の. 舞. は 。. 箇所について最も暗黙的なコレクティブ・フィード. 愛. 彼女の. ). バック。. の. 愛 ダンス? 箇. 所くらいありますよ。 どこかわかんない?. か。. 箇所ある。. 箇所。だいじ. 箇所目の訂正(文法の訂正. ですね。. (最も暗黙的なネガティ. っていう日本語はない. でしょ。. は何ですか?. か。. ). …ってなりますね。. はもう出てきてるね。あともう. ブ・フィードバックからやや暗黙的なコレクティ. 箇所。どこで. しょう。. ブ・フィードバックへ移りつつあるが,まだ. (間). まではいってない。). 気がつかないかな?. (間). ヒントかな?. ?. 悟史. はい,ちょっともったいないので言ってください。. うん。いい線いってる。. がどうした,悟. ?. 史君。 (暗黙的コレクティブ・フィードバックか. はいいよ。. ら明示的ネガティブ・フィードバックへ移る。 ). うーん。. …. 愛 彼女はダンス。. じゃヒントが必要かな。. 。. 悟史. うん。 では. 彼. だね。 彼女は名前. 彼女の 愛. なところが 箇所ある。. 舞. じゃなくて,何になる?. でしょ。 彼女の名前. ダンスは,まあ,ちょっと考えてごらん。あと. 愛. ). 女…?. 他にありますか。まだありますよ。. 愛. (必要な文法規則の暗. 箇所目の訂正(文法の訂正. そうだね。 彼女は. バンドの名前。. って言ったよ。 彼女. ). 示。. ミュージシャン。名前,あー,はい。 舞. だって今, 彼女は. は名前 にならないか?. 舞 うーんと,ミュージシャン。 愛. はどういう意味ですか。. ダンスは 番目の文です。. 番目の文。. (範囲を限定 ). したコレクティブ・フィードバック。 ,あっ,. 舞. ,えっ,. 番目の文,どこでしょう。. (明示的コレ. …. ). (間) でいいの?. (範囲を限定したコ. レクティブ・フィードバックの継続・強調。. 舞 愛. 。 いや。. (間) これはもう出てきたやつです。習っているはずだ (既習であることを暗示することで,. …. 悟史. ). よ。. という意味なん. でいいの?. クティブ・フィードバック。. ,あ,違うか。. 愛. , ダンスをする. ですけど,. はいいんだよ。 ダンスをする. って. いう意味でいいんだよ。. に. (間). 移行しながら課題を単純化している。 ). でいいんだけど。うーん。わからないかな。もっと. うーん。. ヒントがいる?. 番目の文。どこが違うでしょう。(範囲. を限定したコレクティブ・フィードバックの継続・ 強調。 悟史 あっ。. ). 舞. うん。 したら, 行目に て書いてあるよ。. , 行目にも. っ.

(8) へき地校における英語コミュニケーション能力の形成. 愛. …, なんで. …. を与えられても,. に がついたの?. ないためと考えられる。このような場合,教師が無. ?. 理に誤りに気づかせようとすると生徒の思考に混乱. に がついたの?. が生じる(たとえば,せっかく直観的・自動的に正. だから。. しいと思っているのに,反省の度合が過ぎて誤りで. 愛 愛・舞. とか. とか,. 人の時につけるって言ったよ. ね。したらどうするの,この. は。. 示的コレクティブ・フィードバック。. 愛. ないかと意識してしまう)可能性がある。上の対話. (最も明. 例でもその可能性が一部に現われている。このよう. ). な可能性をできるだけ排除して,生徒の意識を正し. …. 舞 愛. く焦点化させ続けるには,誤りに関与している文法. 。. 規則について,暗黙的なコレティブ・フィードバッ. なんかついてるか?. クから明示的なそれへと転換させる,. ついてない。. の段階. をもっと細分化した対話法を考える必要がある。. と同じように考えてください。どうなります か。 (最も明示的コレクティブ・フィードバック ). の継続・強調。 愛. の範囲内の自己対話が起き. 授業の全般的プロフィールから明らかなように, 教師が. 足場づくり. を意識的・構造的に行うこと. により,生徒の文法的な文の発話能力はより少ない. をつける?. 教授的支援で獲得されている。すなわち,訂正箇所. をつけるんだね。. の総数は 愛. 舞 ダンスズ。 愛. 舞. 悟史. とほぼ同数で. あるのに,それに要した 足場づくり. だね。. は, 愛 (. 。. いうように,確実に少なくなっていっている。これ. 。ただね,書く時は. よりもう少しね,. 文としては付け足した方がいいですね。はい,そう いうとこです。 (これは. ). 舞 (. は マイクロ・ジェネシス. ). の対話総数. 悟史 (. の観点から. )と. 足場づく. り が有効に働いたと解釈できる。. についてのコレクティ. 理想的な. 足場づくり. は以下のような条件を満. ブ・フィードバックだが,ここで打ち切られ追及は. たす必要があると考えられる。. されていない。). ・学習者に何をすればよいかを明確に意識させる。 (課題の焦点化). 足場づくり. 対話例の解釈と評価. ・ 難しくてわからない. という気持ちにさせない. よう,課題に対してやればできるという意識を継. 最 も 暗 黙 的 な コ レ ク テ ィ ブ・ フ ィー ド バ ッ ク. 続させる。 (課題の単純化). )が与えられた時に生徒がすぐ反応して訂正. ・暗黙的コレティブ・フィードバックから明示的コ. するのはスペリング (つづり字) である。 これは あっ. レティブ・フィードバックへのスムーズかつ自然. ( てる. あってない. が現象として明確であり,疑. 問の余地がないためと考えられる。スペリング(つ. に移行する。 (課題解決の傾斜化) ・類似の言語使用例を提示しながら文法規則を示唆. づり字)の誤りは,意味の伝達という観点からすれ ば大きな問題ではないが,生徒の意識がまずそこに. する。 (課題の類型化) ・成就感を高めることばかけ。(課題解決点の明確. 向かうのは興味深いことである。文法的な誤りの訂. 化). 正は認知活動の深い部分で処理されるが,スペリン. 上では, 文の構造・形式上の誤り. を. として. に, 文の談話・意味・語用上の誤り. グは感覚的に訂正できるということであろう。しか し,根本的な問題は,中間言語の潜在的な発達可能. を. 性のそれぞれの段階において,どうすれば文法的な. バックを暗黙的から明示的な方向に段階づけたが,. 誤りの訂正が直観的・自動的に行えるようになるか. この段階づけをもう少し細かくする(特に. ということである。 このような問題意識をもって 足. 分)ことと,それを. 場づくり の方法を具体的に考えていく必要がある。. めの対話法をいっそう綿密に研究する必要がある。. 上の対話例で,文法的な誤りは明示的なコレク ティブ・フィードバックを与えられて初めて訂正さ れている。これは生徒の文法知識がまだきわめて少 ないので,暗黙的なコレクティブ・フィードバック. として. に,コレティブ・フィード の部. 言語化 して生徒に伝えるた.

(9) 小山内. 洸・遠 藤 憲 晃. 参考文献. 中村和夫著.. . ヴィゴーツキーの発達論. 歴史理論の形成と展開. 東京大学出版会.. ヴィゴツキー著・柴田義松訳. (下) 明治図書出版.. 文化. . 思考と言語(上).

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