博 士 ( 薬 学 ) 上 村 聡 志
学 位 論 文 題 名
スフインゴ糖脂質合成酵素の活性調節機構と その生理機能に関する研究
学位論文内容の要旨
スフ インゴ塘脂質は 真核生物の形 質膜の外層に 特徴的な構成 成分である。哺乳動物と酵母(Saccha′omyces cervisiae) のスフ インゴ糖脂質の 構造は、膜の アンカーとし て作用する疎 水性のセラミド 部分は共通で あるが、親水 性の糖鎖部分 が大き く異なる。しか しながら、I噛乳動物は糖鎖 における糖残 基の種類、数 、結合の変化 により多様性を生み、酵母で はSur2p、Scs7p、Ccc2pによる セラミドヘの 水酸化の位置 と数によって多 様性を生んで おり、構造多 様性という観 点か ら比較 した場合、両者 は類似してい るといえるだ ろう。また、 両者のスフイン ゴ糖脂質が細 胞の生育に必 須ではないこ とや細 胞膜マイクロド メインと呼ぱ れる微小領域 の構成成分で あることなど、 機能の上でも 類似点が幾っ か存在する。
これら の事実を総合す ると、酵母と 喃乳動物細胞 のスフインゴ 塘脂質の本質的 な意義は保存 されていると 考えられる。
本 研究 で は、 酵 母に おけ る 新規MIPC合 成 酵素(Cshlp)を 同定 し 、そ の 活性 調節 機 構の 一 端を明ら かにした。さ らに 哺 乳動 物 細胞に おいて、ラク トシルセラミド (1ー acCer)にシアル酸を 転移し、GM3を合成する酵素(SATI)の塘 鎧に よる活 性調節機構と肺 癌細胞におけ るGM3の生理機 能を明らかに した。
1.出芽醇母におけるスフィンゴ糖脂質合成酵素の活性翻飾機構 1‑1.出差睦盤!三韮!士歪塹坦墨ZゴZ三麓脂質金盛睦塞Q回室
酵母のSacchar,ロめ℃es cer| isiaeにはスフインゴ糖脂質としてmyo‑inositolを含むmannosylinositol phosphorylceramide (MIPC)とmannosyldiinositol phosphorylccramide (M(fP)2c)の2種類が存在す る。多種多様 なスフインゴ 糖脂質の機 能の本質 を理解するため に、より単純 で、なおかつ 遺伝学的な解 析が容易な酵母 を用いること は有用である と考えた。
今 回は その 足 掛か り とし て 、スフ アンゴ糖脂質合 成の最初のス テップであるMIPC合成を触 媒する酵素に着 日し、新規 rvnPC合成 酵素を同定し た。これまで にMIPC合成に関 与するタンパ ク質としてはCsgl/SUJ・lpとCsg2pが知ら れていた。
Csglpに はOchlpやHoclpなど の0‑1,6マ ン ノー ス転 移 酵素 と 相同 性 の高 い配 列 があ る が、Csg2pには その よ うな 配 列は無い 。また、Csg2pはEF̲Ca2゛‐ 結合ドメインを 持っており、 細胞内Ca2゛ホメオスをシスに関与することが知られて い る。 そこ で 、我 々 はCsglpが 酵素 本体 で あり 、Csg2pが 調 節サ プュ ニ ット で ある 可 能性 を考え、AcsglのMIPC合成 活性を["HトDHSでラベル することによ り調べた。そ の結果、AcsglにおいてもMIPC合成活性は 十分に残ってお り、Csglp と は 呉 な るMIPC合 成 酵 素 が 存 在 す る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 そ こ で 、Csglpと 非 常 に高 い 相同 性 を持 つYBR161w (CSG142URl komol08Z.CSHl)の 遺伝 子 産物 がMIPC合 成に 関 与す るか を[3HトDHSラベルで 調ぺた。その 結果、Acshl のMIPC合成 は 野生 株 と大 き な差 はな い が、Acs81Acshlで 完 全にIvnPC合成が 消失した。以 上の結果よりCshlpが新規 のMIPC合成 酵 素で あ る可 能 性が 示唆 さ れた 。 また 、CshlpはCsglpと 比較し てIPC‑CとIPC‑Bに対する反応 性が低く、
両者で基質特異性が異なることを明らかにしている。
1‑2. Csg2p!三よ盃活性遡箇
Csg2pはa−1.6マ ンノ ー ス転 移酵 素 と相 同 性の 高い配列を 持っていないが 、Acsg2にお いてMIPC合成が 著しく減少 十 るこ とが 報 告さ れ てい る 。こ のこ と はCsg2pがMIPC合成に調 節因子として 機能している 可能性を示唆し ている。そ
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こ でCsg2pがCsglpやCshlpと 複 合体 を 形成 して い る可 能 性をNi‑NTAカラ ム を用 い たpullーdownアッセ イにより検討 し た。 そ の結果、Csg2p‑3xHAはCsglp‑His6‑MycやCshlp‑His6‑Mycを共発現き せることでNi‑NTAカラムに結 合し、Csg2p がCsglpやCshlpと 複 合 体 を 形 成 す る こと が 明ら かと な った 。 次にCsg2pの変 異がCsglpやCshlpのR4IPC合 成に 与 え る影 響 を'H]‑DHSラ ベ ルに よ り調 ぺ た。 その 結 果、Csg2pの変 異 によ りCshlpのMfPC合 成活性は完全 に消失するの に 対し 、CsglpのMIPC合 成活 性 は若 干 残っ てい た 。っ ま り、Cshlpにとって く.sg2pがMIPC合成に必須 であることを 示 して い る。 以上 の 結果 よ り、Csg2pがCsglpとCshlpのそれ ぞれと結合し、 調節サブュニ ットとして機 能しているこ とが示唆された。
2.糖饋によるGM3合成酵素(SAT‑I)の活性翻節機構
2‑1.ヱ空ろGM3盒盛醒塞(mSAT‑I)に韮!士歪Z墨ご!乏萱Z型擅鎖Q意藍
SAT‑Iはヒト、マウス 、ラット、ゼ プラフイッシ ュでクローニ ングが完了して おり、多くの糖転移酵素と同じように、
SAT‑Iには 糖鎖 付 加部 位 と予 想 され る 配列(NXSIT)が 存在 し た。 し かしなが ら、SAT‑Iの 糖鎖付加部位は1カ所を除い て 、種 聞 で保存され ておらず、こ のことが何を意 味するかは不 明であった。 そこで、まず 初めにmS AT‑Iにおける塘鎖 の 意義 を 検討 した 。CHO細胞 にmSATIを 一過 性 に発 現させ、SAT・IのC末端を 抗原として作 成した抗SA1、 。1抗体で検 出するこ とで、SAT−1に複合型塘鎖 が付加している ことを明らか にした。次にCHO細胞にmSA1、ーIを一過性 に発現させ る際、TumCamyCin、C瓠ぬnoS卩crminc、ぬfunCsimで処理し、S朋qの酵素活性をm、′′′′Dで測定した。その結果、Tunicamydn で処理し た場合のみSA↑,I活性が箸しく減少した。この結果はハイマンノース型糖鎖の付´JnがSA1、―Iの活性に必須であ る こと を 示し てい る 。mSAT.Iに は3カ所(18咐 、224N、mN) に糖鎖付加部位 と予想される 配列がある。 そこで、これ ら のNをQに置 換し た 変異 体 (N180Q、N224Q、N334Q、N18(] ,224.336Q) を作成し、SAlV活性を測定 した。その結 果、すべ ての変異体で 著しくSA1、―I活性が低下し 、3カ所すべての糖鎖がS朋、―I活性に重要であることが示唆された。
211壁鎹岱餐Z畫Z酸璽抵塗
mSA1、 ‐Iの活性には3カ所全ての 糖鎖が重要であ るにも関わら ず、種聞で糖鎖付加部位が保存されていないことから、
糖 鎖の 付 加されない アミノ酸配列 が塘鎖の機能を 代替している 可能性が示唆 された。そこ で、mSAT.Iの2MNをKに、啣 をQに 置換 した変異体 を作成し、Sパr.I活性を測 定した。その 結果、N2猟く 、T336Q変異体 の活性は野生 型と同等また はそれ以 上の活性を保 持していた。 この結果はある 特定のアミノ 酸配列が糖鎖の代替を可能にすることを示唆している。
次 に全 て の種 間で 保 存さ れ てい るlNの 糖鎖 代 替ア ミノ酸織換 について検討 した。18Nはシ アル酸転移酵 素に保存され た配列で あるシアリル モチーフLの中 にあり、SAlqと近縁のシア ル酸転移酵素と 配列を比較す ると、mSA1、 .Iの塘鎖付 加部位で あるt8NはSで あった。また 、ヒトとマウス におけるSA1、―Iの| Hは、ゼブラフイッシュのSA1、―Iを含む他の シ アル 酸 転移 酵素 で はDであ っ た。 そ こでmSAT‐1のN180S、H177DーN180S変 異体を作成し 、SAT―I活性 を測定した。
そ の結 果 、N180S変異 体 で野 生 型の 約50% 、H177D‐N180S変 異体で野生型と 同等の活性を 有していた。 以上の結果よ り、mSAT―IにおけるI闘Nに付加する 糖鎖もmvf′′DでのSA1、.I活性を維持することができるアミノ酸置換が明らかとな った。
}.肺癌細胞におけるGM3の機能解析
SAT.Iが作 り出 すGmの 生 理機 能 を明 らか に する た めに 、G旧 が欠 損し て いる3LLル イス 肺 癌細 胞の サ プク ローン
(J5)にSAT.I遺伝子 を導入し、GM3再構成細胞(J珂SAT‐I)を 構築した。J封Sパ『―IはMockと比較し、通常培養条件 下での増 殖能に大きな 差は見られな いが、造腫瘍能 、軟寒天培地 上でのコロニ ー形成能、血 清飢餓条件下で の増殖が亢 壁 し て い た 。 こ れら の結 果 は、 肺 癌細 胞 にお い てGM3が 癌の 悪 性度 の 亢進 に 関与 して い るこ と を示 唆 して いる 。
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