博 士(工学)
Sugeng Triwahyono学位論文題名
/Iolecular Hydrogen‑Originated Protonic Acid Sites on Zirconia‑Based Catalysts
(ジルコニア系触媒上で分子状水素起源のプロトン酸点) 、
学位論文内容の要旨
近年、環境保全の意識が高まる中で、世界的に環境基準が厳しくなり続けて いる。ガソリンに関しては、芳香族化合物やオレフィンの含有量の低減が義務 づけられており、それらを含まない高品質ガソリン製造の重要性が高まってい る。芳香族化合物やオレフィンに替わるオクタン価向上剤としてイソパラフィ ン類がある。イソパラフィン類は、パラフィンのオレフィンによるアルキル化、
パラフィンの骨格異性化によって製造する。現在、アルキル化には硫酸やフッ 酸などの液体の酸が、骨格異性化には塩素添加アルミナ担持白金が用いられて おり、いずれの触媒もプロセス上のみならず環境面でも多くの問題を抱えてい る。′しかし、ハロゲンを含まない固体酸触媒を用いることにより、いくっかの 問題点を解決されると期待される。最近、現行の触媒の問題点を持たないジル コテア系触媒がアルキル化と骨格異性化に高活性を示すことが報告され、その 触媒作用にっいての研究が盛んに行われてきた。ジルコニア系触媒の特徴のー っは、水素共存下で触媒活性が向上することである。硫酸イオン添加ジルコニ アに白金を担持した触媒
(Pt/S042‑2r02触媒)では、分子状水素から表面プロ トン酸が生成されることが提案されているが、酸化タングステン―ジルコニア に白金を担持した触媒
(Pt/W03‑Zr02)や白金を含まない酸化タングステン―
ジルコニア触媒(
W03‐
Zr02触媒)では水素起源のプロトン酸点生成は実証さ れていない。
本論文は、
P惚
042.Zr2 触媒において水素との相互作用を支配する因子を明 らかにするとともに、Pt ′
W03一Zr02 触媒およびW03 .Zr2 触媒と水素との相互作 用を検討し、ジルコニア系触媒表面上にプロトン酸が生成する機構を解明する ことを目的とした。本論文は6 章から成り、各章は以下のように要約される。
第
1章では、本研究の背景を述べるとともに研究の目的を明らかにし、論文 の構成を記した。
第2 章では、
P僞
0421Zr2触媒と水素の相互作用を支配する因子を解明する
ために、担体部分のS042 一Z 雨
2の酸性度をNa 添加、ピリジン前吸着、水の前吸
着によって制御した触媒への水素吸着を測定した。ルイス酸点量の減少や酸点
の 弱 化 に よ り 水 素 吸 着 量 が 減 少 す る こ と が 観 測 さ れ た 。 ル イ ス 酸 点 は 、 白 金 上 か ら ス ピ ル オ ー バ ー し 担 体 上 を 拡 散 し て い る 水 素 原 子 か ら 電 子 を 受 容 す る 役 割 を 果 た し 、 電 子 を 失 っ た 水 素 原 子 は プ ロ ト ン と な り 、 ル イ ス 酸 点 近 傍 の 酸 素 上 で安定化することを明らかにした。
第3章 で は 、Pt′W03一Zr02触 媒 お よ びW03−Zr02触 媒 と 水 素 の 相 互 作 用 を 赤 外 分 光 法 に よ り 検 討 し 、 分 子 状 水 素 か ら プ ロ ト ン 酸 点 が 発 現 す る こ と を 実 証し た。
す な わ ち 、 プ ロ ー ブ 分 子 と し て 用 い た ピ リ ジ ン の 吸 着 状 態 を 赤 外 分 光 法 に よ っ て 観 測 す る こ と に よ っ て 、 触 媒 を 水 素 存 在 下 で 加 熱 す る と 、 ル イ ス 酸 点 が 減 少 す る と と も に プ ロ ト ン 酸 点 が 増 加 す る こ と を 明 ら か に し た 。 分 子 状 水 素 か ら プ ロ ト ン の 生 成 は 、Pt′W03・Zr02触 媒お よ びW03・Zめ2触媒 のい ずれ で も起 こる が、
Pt′W03一Zr02触 媒の 方が 低温 で起 こる 。 分子 状水 素の 解離 は、Pt′W03・Zr02触媒 で は 室 温 で もPt上 で 容 易 に 起 こ る が 、W03・Zr02触 媒 で は100℃ 以 上 に な る と 酸 点 上 で 起 こ る こ と を 、 H2―D2交 換 反 応 を 用 い て 明 ら か に し た 。 第4章 で は 、Pt′W03・Zr02触 媒 お よ びW03‐Zr02触 媒 が 水 素 と 相 互 作 用 す る と き の 表 面 構 造 の 変 化 を 赤 外 分 光 法 に よ り 検 討 し た 。 水 素 存 在 下 でPt/W03―Zr02 触 媒 お よ びW03‐Zr2触 媒 を 加 熱 す る と 、W=O伸 縮 振 動 に 起 因 す る 赤 外 吸 収 ピ ー ク お よ びOH伸 縮 振 動 に 起 因 す る ピ ー ク に 変 化 を 生 じ る 。 こ れ ら の 赤 外 吸 収 ス ペ ク ト ル を 解 析 し 、 分 子 状 水 素 か ら プ ロ ト ン 酸 点 が 生 成 す る モ デ ル を 提 案 し た 。 す な わ ち 、 ス ピ ル オ ー バ ー 水 素 はWOと 結 合 し た ル イ ス 酸 点 で あ るZr4+ に 電 子 を 与 え プ ロ ト ン と な り 、W=Oお よ ぴO刈nO‐W=Oの 酸 素 原 子 と 結 合 し 、 OHを形成し、このOHがプロトン酸点とし て作用する。
第5章 で は 、Pt′W03一Zr02触 媒 お よ びW03−Zr2触 媒 へ の 水 素 吸 着 を 速 度 論 的 に 解 析 す る こ と に よ っ て 、 触 媒 と 水 素 の 相 互 作 用 を 検 討 し た 。Pt′W03‐Zr02触 媒 で は 、 解 離 吸 着 し た 水 素 原 子 がW03‐Zr02上 ー ス ピ ル オ ー バ ー す る 段 階 が 律 速 段 階 で あ り 、 そ の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー は35.5kJ/molで あ っ た 。 ま た 、 水 素 の オ ーバーオールの吸着熱は、吸着量O,22‐O.30xl020atom/g‐catの範囲で、8.5‐11.3 kJ/molで あ っ た 。 一 方 、W03・Zr02触 媒 で は 、 ス ピ ル オ ー バ ー し た 水 素 原 子 が 表 面 上 を 拡 散 す る 段 階 が 律 速 段 階 で あ り 、 そ の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー は25.9kJ/mol であった。
第6章では 、総括として本研究の果をまとめた。
学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査 教授 服部 英 副査 教授 上田 渉 副査 教授 増田隆夫
副査 教授 奥原敏夫(地球環境科学研究科)
学位論文題名
rvIolecular Hydrogen
―Originated Protonic Acid Sites
on Zirconla―Based Catalysts
(ジルコニア系触媒上で分子状水素起源のプロトン酸点)
近年、環境保全の意識が高まる中で、世界的に環境基準が厳しくなり続けている。
ガソリンに関しては、芳香族化合物やオレフインの含有量の低減が義務づけられてお り、それらを含まない高品質ガソリン製造の重要性が高まっている。芳香族化合物や オレフインに替わるオクタン価向上剤としてイソパラフイン類がある。イソパラフイ ン類は、パラフインのオレフインによるアルキル化、パラフインの骨格異性化によっ て製造する。現在、アルキル化には硫酸やフッ酸などの液体の酸が、骨格異性化には 塩素添加アルミナ担持白金が用いられており、いずれの触媒もプロセス上のみならず 環境面でも多くの問題を抱えている。しかし、ハロゲンを含まない固体酸触媒を用い ることにより、いくっかの問題点を解決されると期待される。最近、現行の触媒の問 題点を持たなぃジルコニア系触媒がアルキル化と骨格異性化に高活性を示すことが報 告され、その触媒作用についての研究が盛んに行われてきた。ジルコニア系触媒の特 徴のーっは、水素共存下で触媒活性が向上することである。硫酸イオン添加ジルコニ アに白金を坦持した触媒(Pt/S042‑2f02触媒)では、分子状水素から表面プロトン酸が 生成されることが提案されているが、酸化タングステンージルコニアに白金を坦持し た触媒(Pt/W03―2r02)や白金を含まなぃ酸化タングステンージルコニア触媒(W03‑2r2 触 媒 ) で は 水 素 起 源 の プ ロ ト ン 酸 点 生 成 は 実 証 さ れ て い な ぃ 。 本論文は、PリSO。セめ:触媒において水素との相互作用を支配する因子を明らかにす るとともに、剛W03−Zr2触媒およびW03−Zr02触媒と水素との相互作用を検討し、ジ ルコニア系触媒表面上にプロトン酸が生成する機構を解明することを目的とした。本 論 文 は6章 か ら 成 り 、 各 章 の 要 約 と 得 ら れ た 成 果 は 以 下 の と お り で あ る 。 第1章で は 、 本研 究 の 背景 を 述べ る とと もに、研 究の目的を 明らかに した。
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第2章では、Pt/S042・ 2f02触媒と水素の相互作用を支配する因子を解明するために、
担 体部 分のS04・Zめ: の酸性質 をNa添加 、ピリジ ン前吸 着、水の 前吸着に よって 制御 し た触 媒へ の水素吸 着を測 定した。 ルイス 酸点量の 減少や 酸点の弱 化により 水素吸 着 量 が減 少す ることを 見いだ した。ル イス酸 点は、担 体上を 拡散して いる水素 原子か ら 電 子を 受容 する役割 を果た し、電子 を失っ た水素原 子はプ ロトンと なり、ル イス酸 点 近傍の酸素上で安定化することを明らかにした。
第3章では、R/WOヨーZ雨2触媒およびWOヨ‐ZrO:触媒と水素の相互作用を赤外分光法 に より 検討 し、分子 状水素 からプロ トン酸 点が発現 するこ とを実証 した。す なわち 、 プ ロー ブ分 子として 用いた ピリジン の吸着 状態を赤 外分光 法によっ て観測す ること に よ って 、触 媒を水素 存在下 で加熱す ると、 ルイス酸 点が減 少すると ともにプ ロトン 酸 点が増 加するこ とを明 らかにし た。分 子状水素 からプ ロトンの 生成は、剛WOヨ‐Zr2触 媒およ びW03−Zr02触媒のいずれでも起こるが、n/W03‐Zめ2触媒の方が低温で起こる。
分子状水素の解離は、n/W03―Zrく二)2触媒では室温でもI)t上で容易に起こるが、W03―Zめ2 触媒で はl00℃ 以上に なると酸 点上で 起こるこ とを、H2−D2交換反 応を用いて明らかに した。
第4章では、 剛W03‐Zr02触媒 およぴWOヨ ―Zr2触媒が水 素と相互 作用するときの´表 面 構造 の 変 化を 赤 外 分光 法 に より 検 討 した 。 水 素 存在 下 でn/W03‐Zめ2触媒お よび WOヨ −Zめ: 触 媒 を加 熱 す ると 、W:O伸縮振動 に起因す る赤外 吸収ピー クおよ びOH伸 縮 振動 に起 因するピ ークに 変化を生 じる。 これらの 赤外吸 収スベク トルを解 析し: 分 子 状水 素か らプロト ン酸点 が生成す るモデ ルを提案 した。 すなわち 、担体上 を拡散 し て い る 水 素 は 、W0と 結 合 し た ル イ ス 酸点 で あ るZPに 電 子を 与 え プロ ト ン とな り 、 W:Oお よ ぴO:W−O−W〓Oの 酸 素 原子 と 結 合し 、OHを形 成 し 、こ のOHが プ ロ トン 酸 点として作用することを明らかにした。
第5章では、t′W03−Zrく二)2触媒およびW03―Zr2触媒への水素吸着を速度論的に解析 するこ とによっ て、触 媒と水素 の相互 作用を検討した。n/W03−Zめ2触媒では、解離吸 着した 水素原子 がWOヨ−Zめ2上ヘ スピルオーバーする段階が律速段階であり、その活性 化エネ ルギーは35.5kJ/molで あった 。また、水素のオーバーオールの吸着熱は、吸着 量O.22―030x1ヂat(}m/g―catの範囲で、8.5―113kJ/molであった。一方、W03−Zめ2触 媒 では 、ス ピルオー バーし た水素原 子が表 面上を拡 散する 段階が律 遠段階で あり、 そ の活性 化エネル ギーは25.9kJ/molで あった。すなわち、分子状水素から表面プロトン 酸点が生成する過程を定量的に表現することが出来た。
第6章では、総括として本研究の成果をまとめた。
こ れ を要す るに、 著者は、 分子状水 素から 触媒活性 点であ る表面プ ロトン 酸点の生 成 につ いて 新知見を 得たも のであり 、触媒 化学なら ぴに触 媒工学の 発展に寄 与する と こ ろ大 なる ものがあ る。よ って著者 は、北 海道大学 博士( 工学)の 学位を授 与され る 資格あるものと認める。
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