博 士 ( 農 学 ) 淡 路 和 則
学位論文題名
農業経営者の育成に関する研究
学位論文内容の要旨
本 論 文1よ5章 か ら な る 総 頁 数137ぺー ジ の 和 文 論 文 で あ る 。 図 表28、 和 文 及 び 英 文 ・ 独 文 の102の 引用 文 献 ・ 参 考 文 献 を 含 み 、 他に 参 考論 文6編 が 添えられている。・
農業 経営 者の経営者能カを高めることは我国の農糞において極めて重要な課 題 とさ れて いるが、従来の農糞経営研究においてはこの課題に関する研究蓄積 が 非常 に乏 しい。本論文は、こうした状況を踏まえ、農業経営学の見地から経 営 者能 カの 成長過程を実証的に分析し、すぐれた経営者能カを具備した農業経 営 者を 育成 するためには如何なる養成過程が用意されなければならないかとい う課題の解明を目的としている。
序章 では 、我国の農業が商品生産化し営農主体が企業的な性格を帯びてくる に した がっ て経 営者能 カが 第4の経 営要 素として求められてくるようになった 背 景を 整理 し、家族経営がほとんどである我国の農業経営における経営者育成 の 特徴 を踏 まえて、課題接近への視角を示している。それはひとっに、農業経 営 者に は多 様な役割を果たすために広範な技術習得が求められるが、それを効 塞的になし得るための科学的な手l頃に墓づぃた育成プログラムの追求である。
そ して もう ひとっは、そのプログラムを実行する社会的な育成のシステムであ り 、農 業経 営の担い手の成長過程に沿った農業の職業教育の全体的な枠組みに ついての検討である。この科学的ナょプログラムとそれを実行する職業教育の全 依 的な 枠組 みがりンクされてこそ、農業経営者の育成を達成し得ることを提起 している。
第1章では、まず従来の農業経営学における経営者能力研究の方法を検討し、
そ れら の持 っていた方法的困難性を克服するために経営者機能に着目した経営 者 能カ の形 成論的アプローチを提示している。その方法を用いて個別営農主体 の 形成 過程 を北海道十勝の畑作経営の事例から帰納的に分析し、「農作業→生 産 資材 購入 →生産物販売→財務→保全」という経営の担い手の成長階梯を明ら か にし た。 さらに、経営管理の視点から経営者能カが、「生産過程管理→経常 的資金管理→長期的財務管理→財産管理」という順に成長して行くことを示し、
担い手の記帳行為を個人史的にトレースすることによってそれを検証している。
そ して 、解 明された経営者能カの成長経路が、農業経営者の育成のためのプロ グラムの基本となることを提起している。
第2章では、我国の農業の担い手育成に関する諸施策の展開について整理し、
我 国に おけ る農業の担い手育成の基本論理を明らかにしている。まず明治以降
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の農業の 担い手育成 の関連施策 の流れを概観し、農業がまだ多分に自給的性格 を有して いた戦前の 施策と、農 業者が一個の商品生産者とをった戦後の施策、
特に高度経済成長の後期に導入゛された農業士制度、の在り方を分析し、産業と しての農 業を担う者 を育成する 仕組みが形成されてきたのかどうかを検証して いる。そ こでは、我 国の農業の 担い手育成が、中核者への傾斜集中的教育とな っていて 、農業の担 い手の成長 に即した職業教育という全依の枠組みが欠如し ていることを示している。
第3章 では、農業 の担い手の 社会的な育 成制度につ いて考察す るために、農 業士制度 が手本とし 、最も職業 教育が成功した国といわれているドイツの農業 マイスタ 一制度を分 析している 。まず、第二次大戦後に農業にマイスター制度 が導入さ れるに至る までの前史 を概観し、農糞の担い手育成の制度が形成され てくる過程について整理している。次に農業マ.イスター制度のもとで、農業の 担い手が、見習の徒弟段階、職業人として公認されるゲヒルフェン段階を鍵て、
職業教育を分担する,マイスターになるまでの教育研修過程において、如何に農 業経営に 必要な能カ が陶冶され ているかを 分析し、農 業マイスタ 一制度が第1 竃で示された経営者能カの成長過、程に適合した教育プログラムを持ち、職業教 育の体系 を成してい ることを明 らかにしている。さらに、農業マイスタ―制度 によって 設定されて いる資格が 、賃金や融資の条件等に関係し、農業者として の能 カ を 社会 的 に評 価 するシ ステムとし て機能して いることを 示している 。 終章では、.以上の考察を踏まえて、我国における農業の担い手の社会的な育 成システ ムの構築に むけての展 望をしている。我国の農業において近年農作業 の受委託 が増加し、 それに関る 組織が各地で展開している事実を踏まえて、技 術信託、 グゼルシャ フト的結合 の増大に対応するために、職業人としての能カ をクオリIファイする資格制度と、それに連動した職業教育の全体的な体系立った 整備の必要性を提起している。っまり、これまでの我国の農業の担い手育成は、
中核者の 傾斜集中的 育成と町村 レベルでのその波及効果を期待するものであっ たが、今 後は産業と しての農業 を担う者すぺてに対して相応する能カを具備さ せる職業 教育が必要 になること が述べられている。そしてそこでは、農業経営 における 経営者能カ の成長を基 軸とした研修と資格制度の要点が示され、生産 管理から 財務管理に 至るシステ マティックな記帳トレーニングという方法の有 効性が示されている。
以上のよ うに本研究 は、これま で専ら農業経営者の人的資質に焦点が据えら れたため なかなか進 展がみられ なかった経営者能力研究に対して、経営者機能 から能力 形成を捉え るという新 たな方法を提起し、それによって農業経営者の 育成に有 効な経営者 能カの成長 についての理諭構築を図ったものである。さら にそれを 踏まえて、 従来は教育 機関あるいは地域といった枠のなかで議論され てきた農 業者の教育 に対して、 農業の担い手の成長を基軸とした体系的な職業 教育の社 会的システ ムについて の提起を行なったものである。本研究は、経営 者能カの 成長経路を 実証的に解 明し、それに基づいて農業経営者の育成に関し て具体的 な方法を提 示している 点で、学術的に新たな知見をもたらしているば かりでな く、実際界 の教育普及 面にも貢献するするところが大きいといえる。
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学位論文審査の要旨 主 査 教 授 七 戸 長 生 副 査 教 授 黒 柳 俊 雄 副査 教授 太田原高昭
学 位 論 文 題 名
農業経営者の育成に 関する研究
本 論 文 は5章 か ら な る 総 頁 数137ぺ ー ジ の 和 文 諭 文 で あ る 。 図 表28、 和 文 及 び 英 文 ・ 独 文 の 102の 引 用 文 献 ・ 参 考 文 献 を 含 み 、 他 に 参 考 論 文6編 が 添 え ら れ て い る 。
本 論 文 は 、 我 国 の 農 業 に お い て 極 め て 重 要 な 課 題 と な っ て い る 経 営 者 能 カ の 養 成 の 問 題 に つ い て 、 農 業 経 営 学 の 見 地 か ら 経 営 者 能 カ の 成 長 過 程 を 実 証 的 に 分 析 し 、 経 営 者 能 カ を 陶 冶 す る た め に 必 要 と さ れ る 養 成 過 程 を 具 体 的 に 解 明 す る こ と を 目 的 と し て い る 。
序 章 で は 、 近 年 と み に 経 . 営 者 能 カ を 高 め る こ と が 強 く 求 め ら れ る よ う に な っ た 背 景 を 整 理 し 、 農 業 経 営 に お け る 経 営 者 育 成 の 特 徴 を 踏 ま え て 、 課 題 接 近 へ の 視 角 を 示 し て い る 。 そ れ は 、 ま ず 経 営 者 と し て 求 め ら れ る 広 範 な 技 術 習 得 を 総 合 的 か つ 効 率 的 に な し 得 る た め の 科 学 的 な 手 順 に 基 づ い た 育 成 プ ロ グ ラ ム の 追 求 で あ り 、 も う ひ と っ は 、 そ の プ ロ グ ラ ム を 実 行 す る た め の 職 業 教 育 の 全 体 的 な 枠 組 み に つ い て の 検 討 で あ る 。 こ の ニ つ の 視 角 の 積 み 重 ね に よ っ て 考 察 を 進 め る と い う 方 法 諭 が 提 示 さ れ て い る 。
第1章 で は 、 ま ず 従 来 の 農 業 経 営 学 に お け る 経 営 者 能 力 研 究 の 方 法 を 再 検 討 し て 、 経 営 者 機 能 に 着 目 し た 経 営 者 能 カ の 形 成 諭 的 ア プ ロ ー チ を 示 し 、 そ の 方 法 を 用 い て 個 別 営 農 主 体 の 形 成 過 程 を 北 海 道 十 勝 の 畑 作 経 営 の 事 例 か ら 帰 納 的 に 分 析 し て 、 「 農 作 業 → 生 産 資 材 購 入 → 生 産 物 販 売 → 財 務 → 保 全 」 と い う 経 営 の 担 い 手 の 成 長 階 梯 を 明 ら か に し た 。 さ ら に 、 経 営 管 理 の 視 点 か ら 経 営 者 能 カ が 、 「 生 産 過 程 管 理 → 経 常 的 資 金 管 理 → 長 期 的 財 務 管 理 → 財 産 管 理 」 と い う 順 に 成 長 し て 行 く こ と を 示 し て い る 。
第2章 で は 、 我 国 の 農 業 の 担 い 手 育 成 に 関 す る 諸 施 策 の 展 開 な ら び に 農 業 の 担 い 手 育 成 の 基 本 論 理 を 明 ら か に す る た め に 、 明 治 以 降 の 農 業 の 担 い 手 育 成 に 関 連 し た 施 策 の 流 れ を 概 観 し 、 農 業 が ま だ 多 分 に 自 給 的 性 格 を 有 し て い た 戦 前 の 施 策 と 、 農 業 者 が 一 個 の 商 品 生 産 者 と を っ た 戦 後 の 施 策 の 在 り 方 を 分 析 し て
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いる。その結果、我国の農業の担い手育成が、依然として中核者への傾斜集中 的教育となっていて、産業としての農業を担う担い手の成長に即した職業教育 と い う 全 体 の 枠 組 み が 欠 如 し て ′ い る こ と を , 示 し て い る 。 第3章で は、 農業 の担い手育成の社会的な制度について考察するために、我 国の農業士制度が手本としたドイツの農業マイスター制度を分析して、第二次 大戦後に農業にマイスター制度が導入されるに至るまでの前史を概観し、農業 の担い手育成の制度が形成されてくる過程について整理している。次に農業マ イスター制度のもとで、農業の担い手が、見習の徒弟、グヒルフェン(一本立 ちしうる職業人)の段階を経て、マイスターになるまでの教育研修過程におい て、如何に農業経営に必要を能カが陶冶されているかを分析し、農業マイスタ ー制度が経営者能カの成長過程に適合した教育プログラムを包含し、職業教育 の体系を成していることを明らかにしている。
終章では、我国の農業の近年の動向を踏ま えて、職業人としての能カをクオ リファイする資格制度とそれに達動した職業教育の全体的な体系立った整備の 必要性があることを提起している。そしてそこでは、農業経営における経営者 能カの成長を基軸とした研修と資格制度の要点が示され、生産管理から財務管 理 に 至 る 段 階 的 な 記 帳 トレ ― 二 ン グ と い う方 法の有 効性 が示 されて いる 。 以上のように本研究は、経営者機能の側面に注目して経営者能カの形成を捉 えるという新たな分析方法を提示し、それによっで農業経営者の育成に有効な 経営者能カの成長についての理論構築を図ったものであり、それを踏まえて、
農業の担い手の成長を基軸とした体系的な職業教育の社会的システムについて の具体的な提起をおこをっている。とくに経営者能カの具体的な成長経路に基 づぃて農業経営者の育成方法を提示している点で学術釣に新たな知見をもたら しているばかりでなく実際界の教育普及面にも貢献するするところが大きい。
よって、審査員一同は、別に行なった学力確認試験の結果と合わせて、本論文 の 提出 者淡 路和則 は博 士( 農学) の学 位を 受け るのに十分な資格があるもの と認定した。
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