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火山性噴出物堆積地における植生再生初期動態と

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 農 学 ) 小 長 谷 啓 介

学 位 論 文 題 名

火山性噴出物堆積地における植生再生初期動態と      菌根共生に関する研究

学位論文内容の要旨

  強度 の火 山 性撹 乱を 受け た 立地 は、土壌栄養分の 欠如や乾燥ストレスなどによ り、植物の定着が困難であ る。この ような環境では、菌根共生 がその定着に大きな影響を与 えていると考えられるが、 火山噴火終息直後 の 新生 裸地 環 境に おけ る植 生 発達 と菌根共生との関 係は明らかになっていない。 また、斯様な荒廃地の緑化 に は菌 根菌 の 利用 が有 効と 考 えら れるが、実際の植 生定着に影響する菌根菌類相 も明らかにされていない。

本 研究 では 、 火山 性撹 乱地 に おけ る植 生再 生初 期 動態 と、 菌根 形成 の 実態 、菌 種構 成の把握、現地で優占 的 に確 認さ れ た樹 種及 び菌 根 菌種 を用 いた 接種 試 験を 通じ て、 火山 性 撹乱 地に おけ る植物の定着に菌根共 生が与え る影響を明らかにすること を目的とした。

  調査地 は2000年に噴火した有珠山 とした。主に火山灰と礫を主 体とした噴出物が厚く堆積 したことにより、

火 口周 辺部 の 前生 植生 は完 全 に破 壊さ れた 。今 回 の噴 火に より 多数 の 火口 が山 麓に 形成されたが、本研究 は火山活 動が完全に休息したN−a火 口周辺の裸地部において行っ た。

  2章 では 、調査地におけ る植生推移を追跡調査し、 植生回復に大きく関わる植物 種を明らかにした。年経過 と共に植 物種数、被覆率は増加し、 植生は緩やかに回復に向かっていた。主にスギナやオオイタドリ、アキタブ キ、オオ ヨモギなどの多年生植物が 、噴火直後から広範囲に裸地 に侵入しており、着実にそ の被覆を増加させ ていた。 一方、木本植物の全個体数 は、lOOO rr12当たり100本と 依然少なぃ状況にある上、 近年、侵入個体数 が減少し ている傾向にあったが、優 占していたドロ丿キ、オノエヤナギ、エゾノバッコヤナギは、生残率が80% 以上と高 く、また良好な樹高成長を示し、着実に高位の樹高階に進出していた。クラスタ一解析、DCA法により、

植生推移のパターンは;1)スギナが優占し続ける、2)オオイタドりが優占し続ける、3)オオヨモギ、アキタブキ などの草 本植物、あるいはオノエヤ ナギ、ドロノキなどの木本植 物によって被覆が緩やかに 増加する、4)優占 種が存在 せず、植被も低いままの状 態で推移する、に大別された 。以上より、有珠山火山性 撹乱地では、場所 によって推移パターンは異なるが、スギナ、オオイタドりなど多年生植物による被覆の増大や、ドロノキ、オノエ ヤ ナ ギ な ど の ヤ ナ ギ 科 樹 種 の 成 長 に よ っ て 、 植 生 回 復 が 展 開 さ れ て い く も の と 推 測 さ れ た 。   3章1節で は 、主 な植 物種 に おけ る菌 根の 形成 状 況を 調査 した 。噴 火 直後 の遷 移初 期にある立地において も 、侵 入し て きた 植物 は菌 根 を形 成しており、草本 植物ではアーバスキュラ一菌 根(AM)が、木本植物ではAM ま たは 、外 生 菌根(ECM)の 形成 が確 認さ れ た。 菌根 形成 個 体の頻度は、草本植物 では種によって具なり、ス     ‑ 938ー

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ギナ、 オオイタドりで最も低く、そ の他の植物種では比較的高 い値を示していた。木本植物では全ての個体で 菌根形 成が確認された。菌根の形成 率は、植物種間で明確な差 は確認されなかったが、スギナとオオイタドり は低い 値を示していた。以上から、植生回復に最も貢献していたスギナ、オオイタドりは、菌根形成への依存度 が低く 、その定着に菌根が与える影 響は小さいと考えられるが 、その他の植物種にとっては、重要な役割を担 うもの と推測された。優占樹種ドロ ノキ、オ丿エヤナギ、エゾノバッコヤナギでは、侵入初期からAMとECMの形 成 が確 認 され た。AMは 頻度 、 形成 率と もに 低い値を示していたが、ECM形成は全個体で確認され 、高い形成 率 を示 し てい た。 優占 樹種 の 定着 にお いて は、AMよりもECM形成が 重要な役割を担っていること が推測され た。

  3章2節 では 、優 占樹 種に お けるECM菌相 を明らかにすることを目 的として、植生が消失した裸 地部及び、

前 生植 生 が生 残し た林 縁部 に おい て、ECM性菌 の子 実体 発 生調 査を 行っ た。 裸 地部 では2005年 から子実体 発生が始まり、キツネタケ属、アセタケ属、ワカフサタケ属、コッブタケ属、イボタケ属、ラシヤタケ属など、8種が 確認さ れた。ラシャタケ属1種以外 の菌種は、被撹乱地等で早期 に子実体発生が認められる 初期種であった。

子 実体 は 全て 、ヤ ナギ類やカンバ類の稚 樹個体付近で確認された。 裸地部と林縁部では菌類相が 大きく異な ってい たことから、林縁部で定着していた菌種のうち、上記の限られた種のみが、裸地に侵入してきた稚樹と菌 根を形成しているものと推測された。

  3章3節では、形態観察と分子生物 学的手法を用いて、ドロノ キ、オノエヤナギ、エゾノバッコヤナギ―年生 個 体の 根 部に おけ るECM菌 の種 構成 を 調査 した 。3樹種 から それ ぞ れ、9、10、6種、計13種が確 認された。

半数以 上は子実体として確認されな かった菌種であった。各個 体は平均1〜2種と菌根を形成 しており、1個体 内 での 菌 種構 成は 単純であった。各菌種 による菌根形成個体の頻度 は低い値を示していたが、複 数樹種で確 認され た菌種は全13種中8種であっ たことから、樹種間で比較す ると、菌相は概ね一致して いた。高い形成割 合を示 す菌種は樹種毎で具なっていたが、ウラムラサキ、ワカフサタケ、イボタケ、ラシャタケ属菌が比較的高 い値を 示していた。ウラムラサキ、 ワカフサタケ、イボタケは 他の火山性撹乱地や二次遷移初期の立地でしば しば確 認されるが、ラシャタケ属菌 は一般に森林で確認される 菌種であり、本調査地において特徴的な菌類で あった。

  4章では、ドロノキを用いた接種試験を行なった。菌種はラシャタケ属菌、イボタケ、ワカフサタケ、ウラムラサ キ の4種で 、土 壌は 現地の火山灰土壌を 用いた。樹高はラシャタケ属 菌区を除く接種区で、接種 後3ケ月目に 非接種 区よりも高い値を示していた 。各器官部乾燥重量、根長 は、全ての接種区で非接種区よりも高い値を示 した。 以上より、いずれの菌種も、現地の火山灰土壌上で生育するドロノキ稚樹の成長を促進させることが明ら かとなった。しかし、ラシャタケ属菌のように、地下部を充実させる傾向を示すものや、イボタケのように、地上 部を充 実させる傾向を示すもの、ウ ラムラサキのように全体的 に成長を促進させるものなど、菌種により宿主 の 成長 に 与え る影 響は異なっていた。火 山性撹乱地では、土壌の不 安定さや乾燥が植物の定着を 阻害する要 因となることから、特に地下部を充実させるラシャタケ属菌やウラムラサキは、ドロノキの定着に有利に働くもの と推測された。

‑ 939

(3)

  

本研究から、噴火直後の植生再生初期の立地においても、侵入してきた植物は高頻度で菌根を形成してお り 、 特 に 木 本 植 物 の 定 着 に お い て は 、

ECM

共 生 が 重 要 な 役 割 を 担 う こ と が 明 ら か と な っ た 。

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(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

火山性噴出物堆積地における植生再生初期動態と      菌根共生に関する研究

  本強 文は6章からなり、図36、 表23、弓|用文献252を含む142ページの和文鯰文である 。他に参考鑰文5 犠が添えられている。

  強度の 火山性撹乱を受けた立地では 、菌根共生が植物の定着に 大きな影響を与えていると考えられるが、

火山噴火 終息直後の新生裸地環境にお ける植生発達と菌根共生と の関係は明らかでない。また、斯様な荒廃 地の緑化 には菌根菌の利用が有効と考 えられるが、実際の植生定 着に影響する菌根菌類相も明らかでない。

本 研究 では、火山性撹乱地にお ける植生再生初期動態と、菌 根形成の実態、菌種構成の 把握、現地で優占 的 に確 認された樹種及び菌根菌 種を用いた接種試験を通じて 、火山性撹乱地における植 物の定着に菌根共 生が与える影響を明らかにした。

  有珠山の火口周辺の裸地部において、植生推移過程を調査した。スギナやオオイタドリ、アキタブキ、オオヨ モギなど の多年生植物が、噴火直後から広範囲に裸地に侵入しており、被覆を増加させていた。一方、木本植 物|ま 100012当たり100本と少ない状況にあるが、優占していたドロノキ、オノエヤナギ、エゾノバッコヤナギは、

生残率が80%以上であり、着実に個体 サイズを増加させていた。 以上より、有珠山噴出物堆積地では、多年 生 草本 植物 に よる 被覆 の増 大や 、 ヤナ ギ科 樹種 の 成長によ って、植生が回復されてい くと推測された。

  主な植 物種における菌根の形成状況 を調査した。全植物種にお いて菌根の形成が確認され、草本植物では ア−′く スキュラ一菌根(AM)のみ、木 本植物ではAMまたは、外生菌根(ECM)を形成していた。スギナ、オオイ タドりに おける菌根の形成頻度は低か ったが、その他の植物種で は概ね70%以上と高い値を示していた。以 上から、植生回復に最も貢献していたスギナ、オオイタドリ|ま、定着に菌根が与える影讐は小さいと考えられる が、その他の植物種にとっては、重要な役割を担うものと推測された。優占樹種ヤナギ科3種では、AMは頻度、

形成率と もに低い値であったが、ECMは全個体で高い形成率を示し ていた。優占樹種の定着においては、AM よりもECMが童要な役割を担っていることが推測された。

    ー941−

崇 良

裕 夫

   

   

孝  

  康

矢 小

玉 小

授 授

授 授

   

   

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(5)

  優占樹種におけるECM菌相を明らかにすることを 目的として、植生が消失した裸地部及び、前生植生が生 残した林縁部において 、ECM菌の子実体発生銅査を 行った。裸地部では2005年 から子実体発生が始まり、8 種が確認された。ラシ ャタケ属1種以外の菌種は、 被撹乱地等で早期に子実体発生が認められる初期種であ った。裸地部と林縁部では菌類相が大きく異なっていたことから、林縁部で定着していた菌種のうち、上記の限 ら れ た 種 の み が 、 裸 地 に 侵 入 し て き た 稚 樹 と 菌 根 を 形 成 し て い る も の と 推 測 さ れ た 。   ヤ ナギ 科3種一年生個体におけ るECM菌の種構成を調査した 。3樹種から計13種が確認さ れた。半数以上 は子実体として確認さ れなかった菌種であった。各個体は平均1〜2種と菌根を形成しており、1個体内での菌 種構成は単純であった 。各菌種による形成頻度は 低い値を示していたが、全13種中8種が複数樹種で確認さ れ、樹種間における菌相は概ね一致していた。ウラムラサキ、ワカフサタケ、イボタケ、ラシャタケ属薗が比較 的高い形成割合を示していた。ウラムラサキ、ワカフサタケ、イボタケは他の火山性撹乱地や二次遷移初期の 立地でしぱしぱ報告されているが、ラシャタケ属菌は―般に森林で確認される菌種であり、本鯛査地において 特徴的な菌類であった。

  次にド口ノキを用い た接種試験を行なった。菌種は前出の4種で、土壌は火山灰土壌を用いた。樹高はラシ ヤタケ属菌区を除く接 種区で、接種後3ケ月目に非接種区よりも高い値を示していた。各器官部乾燥重量、根 長は、全ての接種区で非接種区よりも高い値を示した。以上より、いずれの菌種も、火山灰土壌上においてド 口ノキの成長を促進させることが明らかとなった。しかし、ラシャタケ属菌のように、地下部を充実させる傾向を 示すものや、イポタケのように、地上部を充実させる傾向を示すもの、ウラムラサキのように全体的に成長を促 進させるものなど、菌種により宿主の成長に与える影響は異なっていた。火山性撹乱地では、土壌の不安定さ や乾燥が植物の定着を阻害する要因となることから、特に地下部を充実させるラシャタケ属菌やウラムラサキ は、ドロノキの定着に有利に働くものと推測された。  .

  以上のように本論文 では、噴火直後の新生裸地環境における菌根形成の実態と菌根菌フロラ及び、植生動 態との関係について明 らかにした。更に、現地で優占的に確認された樹種及び、菌根菌種を用いた接種試験 を通じて、植物の生育に対する菌根菌の機能を明らかにした。これら―連の研究成果は、関連学会においても 高い評価を受けている。よって審査員一同は、小長谷氏が博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格を有す るものと認めた。

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参照

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