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家族性もやもや病家系における表現促進現象と

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 難 波 理 奈

学 位 論 文 題 名

家族性もやもや病家系における表現促進現象と 17q25 のtriplet repeat の伸長に関する研究

―家族性もやもや病の原因遺伝子の検索一

学位論文内容の要旨

  もやもや病(特発性ウィリス動脈輪閉塞症)は,両側の内頸動脈終末部が進行性に狭窄・

閉塞をきたす疾患である.約10%の症例に家族歴が認められ,日本や韓国での罹患率が高く,

欧米では少ないという地域差が認められ,民族的な発症特特異性がある,これらの事実より,

もやもや病は遺伝病のひとっであると考えられ,その遺伝形式は多因子遺伝あるいは浸透率 の低い常染色体優性遺伝が想定されている,日本国内のいくっかのグループがポジショナル クローニングの手法を用い て,遺伝子座位の同定を試みており,これまでに第3,6,17 染色体に責任遺伝子の存在を示唆する報告がなされている.しかし,その原因遺伝子は未だ 同定されてはおらず,詳細な病態を解明するには至っていない.

  今回,これまでの文献報告例および自験例を対象とし,家族性もやもや病の臨床的な特徴 を統計学的に解析したところ,表現促進現象を示唆する結論を得た.そのため,自験例のう ち,連鎖解析により17q25に強い相関をもっと明らかになっている家族発症例に対して,

17q25に お け る 三 塩 基 繰 り 返 し 配 列 の 伸 長 の 有 無 を 検 討 す る こ と と し た .  、 文献上,親子例16家系38例 ,同胞例51家系128例(うち 一卵性双生児例8組16例を含む)

を 含む,合わせて76家系172例男性74例女性94例)が報告されている.文献報告例の う ち,親子発症例の検討では,男性14例女性24例で男女比は1:1.7となった.父親例が5例,

母 親例が11例であり,子世代については男性8例,女性12例である.親世代16例の発 症 年齢は39.5土12.8歳,子の発症年齢は12.7土8.0歳であり,子世代の発症年齢の方が有憲に 若かったくpく0.0001).これにより,表現促進現象の存在が示唆された.性別による発症年齢 は , 男 性21.5士18.9歳 , 女 性24.8土15.1歳 で 明 ら か な 差 を 認 め な か っ た .   当施設および関連施設に おいては,1969年から2002年まで,155例のもやもや病を経験 し た。 これ ら155例 のう ち ,家族歴をもつ家族発症例は10家系24例であり,残りの131 例 が孤 発例 であ る. 家族 発症 例24例は男性4例女性20例 であり,孤発例131例は男性50 例女性81例であった.また,家族発症例の発症年齢は11.8士11.7歳で,孤発例の発症年齢 は30.0土20.9歳で,カプラン―マイヤー法にてログランク検定を行ったところ,家族発症例 の方が有意に若く発症していた(pく0.0001).親子発症の7家系の親子例はすべて母―子例で あり,父ー子例はなかった .この7家系には,8例の母親と10例の子供が含まれていた.8 例の母親は,22歳から36歳 の問で発症しており(mean士SD; 30.7土7.5歳),一方10例の 子供は5歳から11歳に発症していた(7.2士2.7 yr).発症年齢は明らかに子供のほうが若い (unpaired t‑test,Pく0.0001).8例の母親は,3例が一過性脳虚血発作で発症し,3例が脳 出血にて発症し,2例が無症候で発見されている.一方子供例では,男性3例女性6例とな っており,全例一過性脳虚血発作にて発症している.

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  二世代発症例の解析では,親世代の発症年齢より子世代の発症年齢の方が,有意に若かっ た.家族に患者がいることで生じるバイアスの存在は否定しきれないが,自験例の7家系の うち,子が発端者であったのは5家系,親が発端者であったのは2家系であり,バイアスの みでこの結果が生じるとは考えにくい.

  文献例および自験例の解析いずれからも,家族内発症例の中で世代を経るにっれて発症年 齢が若くなることが判明し,表現促進現象の存在が示唆された,表現促進現象のみられる疾 患は,その発症機序に三塩基繰り返し配列の伸長が関与することが知られている,そのため,

家族性もやもや病の原因遺伝子にも三塩基繰り返し配列の伸長が関与する可能性があると考 えた.そこで,これまでの連鎖解析によって17q25の領域に原因遺伝子が存在することが示 されている11家系について,同領域における三塩基繰り返し配列の伸長について解析を行 った.

  表現促進現象は,ある優性形質が世代を経るにしたがって,発症が若年化し,重症化する 現象である,表現促進現象が認められるとされる疾患は,Online Mendelian Inheritance in Man (OMIN))に て検索すると74疾患あるが,現在のところ,その分子生物学的発症機序が 解明されているのは,Huntington病やMachado‑Joseph病など遺伝性の神経変性疾患のみ である,その発症機序には,三塩基繰り返し配列の伸長が関与している,三塩基繰り返し配 列の伸長の程度が,その疾患の重症度や発症年齢の若年化に反映し,世代が下るほど三塩基 繰り返し配列が伸長すると考えられている.

  今回,親子発症例の発症年齢について統計学的解析により,表現促進現象が存在すること が明らかとなったため,三塩基繰り返し配列の伸長を検討することとした,もやもや病は多 因子遺伝疾患と考えられるため,以前の研究で原因遺伝子が17q25に連鎖していることが証 明されている家系において,同領域で存在する三塩基の繰り返し配列について網羅的に解析 を行った.ゲノムプロジェクトの発展に伴 い,インターネット上でDNAの塩基配列につい ての情報が入手できるようになった.17q25の領域に存在する三塩基配列を抽出し,家族性 もやもや病の家系のDNAにおいて,それらの三塩基配列が伸長しているか否かをダイレク トシークエンスにて明らかにした.しかし,今回の検討では,明らかに疾患と連鎖する塩基 配列の伸長を認め無かった,その原因としては,1. 17q25の領域で,今のところ未知の塩 基配列の部分に存在する三塩基繰り返し配列が病因に関与しているため,2.本症が多因子 遺伝疾患であり,浸透率があまり高くないため,3.三塩基繰り返し配列の伸長の他に,表 現促進現象を示す機序があるため,などが考えられた.

  今回の検討では,原因遺伝子を明らかにすることができなかった.しかし,ポジショナル クローニングにより絞り込まれた遺伝子座位から,位置の情報だけで実際の責任遺伝子を同 定したり,さらに遺伝子座位を絞り込むにあたって,三塩基繰り返し配列の有無は指標とな ると考えられる,

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学位論文審査の要旨 主査    教授    岩 崎喜信 副査    教授    守 内哲也 副査   教授   佐々木秀直

学 位 論 文 題 名

家族性もやもや病家系における表現促進現象と 17q25 のtriplet repeat の伸長に関する研究

一家族性もやもや病の原因遺伝子の検索一

  も や も や 病 ( 特 発 性 ウ ィ リ ス 動 脈 輪 閉 塞 症 ) は , 両 側 の 内 頸 動 脈 終 末 部 が 進行 性 に 狭 窄 ・ 閉 塞 を き た す 疾 患 で あ り , 約10% に 家 族 性 発 症 を 認 め る . 家 族 性 もや も や 病 は 遺 伝 病 の ひ と つ で あ る と 考 え ら れ , そ の 遺 伝 形 式 は 多 因 子 遺 伝 あ る いは 浸 透 率 の 低 い 常 染 色 体 優 性 遺 伝 が 想 定 さ れ て い る . 日 本 国 内 の い く っ か の グ ルー プ が ポ ジ シ ョ ナ ル ク ロ ーニ ング の手 法を 用い て, 遺伝 子座 位の 同定 を 試み てお り,

こ れ ま で に 第3,6,17染 色 体 に 責 任 遺 伝 子 の 存 在 を 示 唆 す る 報 告 が な さ れ て い る . し か し , そ の 原 因 遺 伝 子 は 未 だ 同 定 さ れ て は お ら ず , 詳 細 な 病 態 を 解 明す る に は 至 っ て い な ぃ . 今 回 , こ れ ま で の 文 献 報 告 例 お よ ぴ 自 験 例 を 対 象 と し ,家 族 性 も や も や 病 の 臨 床 的 な 特 徴 を 統 計 学 的 に 解 析 し た と こ ろ , 表 現 促 進 現 象 を示 唆 す る 結 論 を 得 た . そ の た め , 自 験 例 の う ち , 連 鎖 解 析 に よ り17q25に 強 い 相 関 を も っ と 明 ら か に な っ て い る 家 族 発 症 例 に 対 し て ,17q25に お け る 三 塩 基 繰 り 返 し 配 列 の 伸 長 の 有 無 を 検 討 し た . 文 献 上 , 親 子 例16家 系38例 , 同 胞 例51家 系 128例 ( う ち 一 卵 性 双 生 児 例8組16例 を 含 む ) を 含 む , 合 わ せ て76家 系172例 男 性74例 女 性94例 ) が 報 告 さ れ て い る , 文 献 報 告 例 の う ち , 親 世 代16例 の 発 症 年 齢 は39.5土12.8歳 , 子 の 発 症 年 齢 は12.7土8.O歳 で あ り , 子 世 代 の 発 症 年 齢 の 方 が 有 意 に 若 か っ た(p<0. 0001). こ れ に よ り ,表 現促 進現 象の 存 在が 示唆 され た . 当 施 設 お よ び 関 連 施 設 に お い て は ,1969年 か ら2002年 ま で ,155例 の も や も や 病 を 経 験 し た . こ れ ら155例 の う ち , 家 族 歴 を も つ 家 族 発 症 例 は10家 系24 例 で あ り , 残 り の131例 が 孤 発 例 で あ る . 家 族 発 症 例 の 発 症 年 齢 は11.8土11.7 歳 で , 孤 発 例 の 発 症 年 齢 は30.0土20.9歳 で , カ プ ラ ン ー マ イ ヤ ー 法 に て ロ グ ラ ン ク 検 定 を 行 っ た と こ ろ , 家 族 発 症 例 の 方 が 有 意 に 若 く 発 症 し て い た (p<0. 0001), 親 子 発 症 の7家 系 の 親 子 例 は す べ て 母 ― 子 例 で あ り , 父 一 子 例 はな か っ た . こ の7家 系 に は ,8例 の 母 親 と10例 の 子 供 が 含 ま れ て い た .8例 の 母 親

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は , 22 歳 か ら 36 歳 の 間 で 発 症 し てお り (mean 土 SD ; 30.7 土 7 .5 歳), 一方 10 例 の 子 供 は 5 歳 か ら 11 歳 に 発 症 し て い た (7.2 土 2 . 7yr) . 発 症 年 齢 は 明 ら か に 子 供 の ほ う が 若 い (unpairedt ―test , P<0. 0001) . 文献 例お よび自 験例 の 解析いずれからも,家族内発症例の中で世代を経るにっれて発症年齢が若くなる ことが判明し,表現促進現象の存在が示唆された.表現促進現象のみられる疾患 は,その発症機序に三塩基繰り返し配列の伸長が関与することが知られている.

そのため,家族性もやもや病の原因遺伝子にも三塩基繰り返し配列の伸長が関与 す る可 能性が ある と考えた.そこで,これまでの連鎖解析によって17q25 の領域 に原因遺伝子が存在することが示されている家系にっいて,同領域における三塩 基 繰り 返し配 列の 伸長について解析を行った.インターネット上で17q25 の領域 の DNA の 塩基 配列 を入手し,同領域に存在する三塩基配列を抽出し,家族性もや も や病 の家系 のDNA において,それらの三塩基配列が伸長しているか否かをダイ レクトシークエンスにて明らかにした.しかし,今回の検討では,明らかに疾患 と連鎖する塩基配列の伸長を認め無かった,しかし,ポジショナルクローニング により絞り込まれた遺伝子座位から,位置の情報だけで実際の責任遺伝子を同定 したり,さら.に遺伝子座位を絞り込むにあたって,三塩基繰り返し配列の有無は 指標となると考えられた.公開発表において守内哲也教授より,家族性もやもや 病の家系において母親由来の傾向が強いことについてなどの質問があった.次い で佐々木秀直教授より,遺伝形式が劣性か不完全優性遺伝のどちらかなどの質問 があり,分離比の検討など今後の課題にっいての示唆があった.最後に,岩崎喜 信教授より,もやもや病の発症が男性より女性に多いことの遺伝的な理由にっい ての質問があった.いずれの質問に対しても,申請者らは自らの研究に基づく経 験 や 過 去 の 論 文 の 内 容 を 引用 し , 豊 富 な 知 識 に 基 づ ぃ て 明 解 に 解 答 し た .    この 論文は 家族 性も やも や病 にお いて 表現 促進現象が認められることを明ら かにし,原因遺伝子検索の際に三塩基繰り返し配列について検討する重要性を明 らかにした点が高く評価され,今後のもやもや病の原因遺伝子の検索に応用でき るものと期待される.

   審査員一同はこれらの成果を高く評価し,大学院課程における研鑚や単位取得

なども併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと

判定した.

参照

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