はじめに/29 1.域内銀行と域外銀行の力関係/29 2.ロシア極東の地方銀行の実態/34 3.域内銀行と域外銀行の役割分担/35
はじめに
当会では、提携関係にあるロシア科学アカ デミー極東支部経済研究所に依頼をして、ロ シア極東管区における銀行事情についてレポ ートを寄せてもらったので、これを邦訳して 紹介する。 本稿では、極東管区の地方銀行は資金力で はモスクワ等の他地域の銀行に圧倒されてい るものの、地元の特性を熟知しているがゆえ に特有のニッチを見出し、地域経済に重要な 貢献をなしていることが分析されている。1.域内銀行と域外銀行の力関係
極東連邦管区に限らず、ロシアのあらゆる 地域の銀行システムは、大きく2つのセグメ ントに分けることが可能である。 第1に、他の地域に登記されている銀行の 支店がある(以下ではこれを「域外銀行」と 呼ぶことにする)。 第2に、当該地域内に登記されている地方 銀行がある(「域外銀行」との対比で言えば、 「域内銀行」と呼ぶことができる)。 それぞれのセグメントで活動している銀行 は、経営および営業活動の特質、当該地域で のあり様を異にしている。以下では、極東管 区における銀行の活動の特殊性を念頭に置き ながら、両セグメントを個別に検討してみる ことにしよう。 まず、ロシア極東で活動している銀行店舗 の件数という観点から見てみると、域外銀行 の支店の数が、域内銀行の店舗数を若干上回 っていることが分かる。2006年1月1日現在 で、ロシア極東で営業している銀行店舗のう ち、61.4%が域外銀行の支店であった。ただ、 この指標はロシア平均よりも若干高いものの、 それほど大きな乖離があるわけではない(表 1)。 だが、銀行の資金力という観点から見ると、 まったく状況が異なり、域外銀行が圧倒的優 位となる。全国区のロシア大手銀行が極東管 区に進出しており、2006年の時点で、35の域 外銀行が133の支店を極東管区に設けている。ロシア極東における地方銀行の役割
ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所 *Институт экономических исследований Дальневосточного отделения РАН. “Крупнейшие банки Дальнего Востока России”表1 ロシア極東に所在する銀行店舗の種類別内訳 2001年 2006年 2001年 2006年 2001年 2006年 ロシア全体 25.7 27.6 21.5 18.2 52.9 54.2 極東連邦管区 14.9 16.6 25.6 22.0 59.4 61.4 沿海地方 14.7 17.6 38.2 33.3 47.1 49.0 ハバロフスク地方 13.3 19.4 24.4 16.1 62.2 64.5 アムール州 12.8 20.8 20.5 16.7 66.7 62.5 カムチャッカ州 27.6 29.6 37.9 25.9 34.5 44.4 マガダン州 12.5 13.6 25.0 27.3 62.5 59.1 サハリン州 18.8 21.4 28.1 32.1 53.1 46.4 サハ共和国 13.6 9.5 13.6 14.3 72.9 76.2 ユダヤ自治州 0.0 0.0 0.0 0.0 100.0 100.0 チュコト自治管区 0.0 0.0 0.0 0.0 100.0 100.0 (構成比、%) (出所)ロシア中央銀行のデータにもとづいて作成。以下の表も同様。 極東に登記されて いる本店 域内銀行の支店 域外銀行の支店
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http://www.tcpioneer.co.jp E-mail:[email protected] 〒169-0051 東京都新宿区西早稲田 3-29-8-1201表2 極東管区に支店をもつ域外銀行 (2006年1月1日現在、極東管区内の支店数の順に掲載) うち、 極東 ズベルバンク モスクワ市 867 60 7,031 12,279 60,000 2,537,180 ロスバンク モスクワ市 68 7 355 69 6,804 200,549 外国貿易銀行 St.ペテルブルグ市 58 6 115 35 52,111 635,460 ロスセリホズバンク モスクワ市 70 5 618 17 14,963 63,164 インペクスバンク モスクワ市 45 5 117 51 3,178 54,542 MAKバンク モスクワ市 11 5 1 13 260 3,183 モスクワ銀行 モスクワ市 46 4 167 37 12,310 220,996 スヴャジバンク モスクワ市 35 3 10 22 2,235 31,907 トラスト モスクワ市 55 3 35 26 1,473 37,764 アルファバンク モスクワ市 33 3 70 45 1,001 232,983 VTB24 モスクワ市 43 2 91 24 10,341 43,390 プロムスヴャジバンク モスクワ市 38 2 93 37 3,805 106,445 トランスクレジットバンク モスクワ市 27 2 50 9 1,658 50,241 みちのく銀行(モスクワ) モスクワ市 2 2 0 0 1,000 2,452 アヴァンガルド モスクワ市 12 2 46 52 560 23,981 ヴォズロジジェーニエ モスクワ市 60 2 60 30 200 48,806 サハダイヤモンド銀行 モスクワ市 4 2 0 2 22 1,252 ABN AMRO モスクワ市 2 1 0 0 2,076 39,158 ソビンバンク モスクワ市 21 1 32 27 1,200 31,472 MDMバンク モスクワ市 34 1 70 23 1,100 125,993 アグロプロムクレジット モスクワ州 12 1 30 9 1,000 14,985 地域間投資銀行 モスクワ市 4 1 2 5 1,000 8,521 全ロシア地域開発銀行 モスクワ市 7 1 8 0 765 17,343 シブアカデムバンク ノヴォシビルスク州 10 1 102 27 745 28,425 アドミラルテイスキー モスクワ市 1 1 6 2 714 3,659 BFGクレジット モスクワ市 2 1 2 3 300 3,227 インテルカピタルバンク モスクワ市 1 1 1 0 209 1,377 プリスコカピタルバンク モスクワ市 1 1 1 0 150 664 NRバンク モスクワ市 1 1 2 1 150 1,889 TEMBRバンク モスクワ市 2 1 12 6 121 3,292 バルト銀行 モスクワ市 26 1 51 4 106 23,304 ルィブホズバンク モスクワ市 2 1 2 1 85 1,436 KEDR クラスノヤルスク地方 14 1 32 73 54 8,616 プロムセルヴィスバンク イルクーツク州 6 1 5 1 45 2,794 バルト開発銀行 モスクワ市 2 1 1 1 42 2,102 支払 窓口 数 資産 (100万 ルーブル) 定款資本 (100万 ルーブル) 銀行名 本店所在地 支店 数 出張所 数
表3 極東管区における域内銀行と域外銀行の主要指標の比較 定款資本 資産 純貸出 残高 個人預金 残高 2005年の 利潤 域外銀行の総計 181,782 4,612,551 3,290,342 1,857,216 93,723 1行当たりの指標 5,194 131,787 94,010 53,063 2,678 域内銀行の総計 3,166 60,366 39,165 18,823 1,235 1行当たりの指標 75 1,437 933 448 29 (2006年1月1日現在、100万ルーブル) (注)極東管区での営業活動に限定した数字ではなく、銀行の営業活動 全体の数字なので、ご注意願いたい。以下の表も同様。 表4 域外銀行の利潤ランキング 表5 域外銀行の個人預金残高ランキング 銀行名 2005年の利 潤(100万 ルーブル) 2006年1月 1日現在資 産(100万 ルーブル) 利潤/ 純資産 (%) 銀行名 2006年1月 1日現在個 人預金残高 (100万ルー ブル) 預金/ 負債 (%) 個人預金 残高の市 場シェア (%) ズベルバンク 62,930 2,537,180 3.25 ズベルバンク 1,500,112 65.85 54.80 外国貿易銀行 12,919 635,460 2.47 外国貿易銀行 81,265 17.96 3.39 MDMバンク 8,396 125,993 9.36 モスクワ銀行 59,412 33.22 2.43 モスクワ銀行 4,245 220,996 2.41 ロスバンク 47,480 30.24 1.98 ロスバンク 1,973 200,549 1.43 アルファバンク 36,783 17.45 1.32 アルファバンク 1,663 232,983 1.13 インペクスバンク 22,628 45.91 0.82 プロムスヴャジバンク 1,056 106,445 1.28 ヴォズロジジェーニエ 19,198 52.72 0.89 ヴォズロジジェーニエ 891 48,806 2.22 バルト銀行 13,347 66.47 0.51 ABN AMRO 874 39,158 2.91 プロムスヴャジバンク 9,956 11.34 0.41 MDM銀行 9,466 9.65 0.37 シブアカデムバンク 9,430 43.15 0.40 表6 域外銀行の貸出残高ランキング (2006年1月1日現在) 銀行名 貸出残高 (100万ルー ブル) 純貸出残高 (100万ルー ブル) 資産(100万 ルーブル) 貸出/ 資産 (%) 貸出の 市場 シェア (%) ズベルバンク 1,875,707 1,859,360 2,537,180 74.9 33.49 外国貿易銀行 311,491 389,233 635,460 48.5 5.56 アルファバンク 169,520 186,508 232,983 73.6 3.03 モスクワ銀行 161,477 169,947 220,996 73.5 2.88 ロスバンク 97,486 133,950 200,549 49.2 1.74 MDMバンク 75,991 96,239 125,993 59.2 1.36 プロムスヴャジバンク 58,005 72,501 106,445 55.0 1.04 ロスセリホズバンク 44,419 55,247 63,164 69.0 1.42 トランスクレジットバンク 34,741 35,281 50,241 69.1 0.62 インペクスバンク 32,838 37,572 54,542 60.4 0.59 ヴォズロジジェーニエ 32,456 34,529 48,806 65.2 0.58 ソビンバンク 27,490 25,428 31,472 87.7 0.49
その顔ぶれと主なデータは、表2に見るとお りである。注目すべきは、これらの銀行は、 インテルカピタルバンクとNRバンクを除き、 すべて預金保険システムに加入していること である。大半が、モスクワに本店を置いた銀 行となっている。 表3は、極東管区で営業している銀行の主 要指標を、域外銀行と域内銀行に分けて分析 したものである。域外銀行の定款資本総額は、 域内銀行のそれの57倍に上っている。同様に、 資産額で76倍、貸出残高で84倍の開きがある。 個人預金残高の格差は100倍近くに上り、利潤 も76倍という大差がついている。 極東管区に支店を開いている大手銀行を、 利潤、個人預金、貸出残高が多い順に見たの が表4~表6である(極東管区での営業活動 に限定した数字ではなく、銀行の営業活動全 体の数字なので、ご注意願いたい)。 表7 極東の地方銀行の資産ランキング (2006年1月1日現在、100万ルーブル) 銀行名 地域 資産 定款資本 支店数 出張所数 支払窓口数 純貸付残高 個人預金残高 2005年の利潤 1.ダリコムバンク ハバロフスク地方 10,516 546 8 33 18 7,507 4,665 16.4 2.プリモーリエ 沿海地方 6,552 250 2 9 11 4,721 1,142 182.9 3.レギオバンク ハバロフスク地方 4,744 60 3 5 4 3,586 1,689 77.8 4.極東銀行 沿海地方 4,628 97 7 6 0 3,091 1,032 80.3 5.アルマズエルギエンバンク サハ共和国 4,244 114 6 1 0 1,652 780 46.8 6.プリムソツバンク 沿海地方 3,295 127 6 17 9 2,245 956 87.2 7.サハリンヴェスト サハリン州 2,784 165 2 16 18 1,850 1,683 17.7 8.アジア太平洋銀行 アムール州 2,239 160 9 35 3 1,647 430 50.7 9.カムチャトプロフィトバンク カムチャッカ州 1,996 36 2 0 1 1,640 1,166 29.1 10.ヴォストーチヌィ アムール州 1,967 280 7 174 1 1,375 608 63.4 表8 極東の地方銀行の定款資本ランキング (2006年1月1日現在、100万ルーブル) 銀行名 地域 定款資本 支店数 出張所数 支払窓口数 資産 純貸出残高 個人預金残高 2005年の利潤 1.ダリコムバンク ハバロフスク地方 546 8 33 18 10,516 7,507 4,665 16 2.ヴォストーチヌィ アムール州 280 7 174 1 1,967 1,375 608 63 3.プリモーリエ 沿海地方 250 2 9 11 6,552 4,721 1,142 183 4.TAATTA サハ共和国 180 2 1 0 787 413 152 5 5.サハリンヴェスト サハリン州 165 2 16 18 2,784 1,850 1,683 18 6.アジア太平洋銀行 アムール州 160 9 35 3 2,239 1,647 430 51 7.コルィマバンク マガダン州 160 8 6 0 1,258 945 524 17 8.プリムソツバンク 沿海地方 127 6 17 9 3,295 2,245 956 87 9.アルマズエルギエンバンク サハ共和国 114 6 5 4 4,244 1,652 780 47 10.ソリドバンク カムチャッカ州 100 1 0 1 860 370 129 17
表9 極東の地方銀行の利潤ランキング (100万ルーブル) 銀行名 地域 2005年の 利潤 2006年1 月1日現 在の資産 利潤/ 資産 (%) 1.極東相互信用会社 ハバロフスク地方 279.4 985.1 28.4 2.プリモーリエ 沿海地方 182.9 6,552.5 2.8 3.プリムソツバンク 沿海地方 87.2 3,295.2 2.6 4.極東銀行 沿海地方 80.3 4,628.0 1.7 5.レギオバンク ハバロフスク地方 77.8 4,743.7 1.6 6.ヴォストーチヌィ アムール州 63.4 1,966.9 3.2 7.アジア太平洋銀行 アムール州 50.7 2,239.2 2.3 8.カムチャトコムアグロプロムバンク カムチャッカ州 50.4 1,405.2 3.6 9.アルマズエルギエンバンク サハ共和国 46.8 4,244.0 1.1 10.エトロフ銀行 サハリン州 37.9 1,483.7 2.6
2.ロシア極東の地方銀行の実態
一方、もう一つのセグメントである極東管 区の域内銀行は、資金力でそれほど強力では ないものの、金融市場において独自のニッチ を見出している。2006年現在、極東管区には 42の金融機関の本店が登記されており、うち 40が銀行である。それらの銀行は、80の支店 (филиал)を有し、うち68が極東管区に、12 が域外に所在している(モスクワが5、残り はブリヤート共和国、チタ州、イルクーツク 州など)。これらの銀行はさらに、362の出張 所(дополнительный офис)、86の支払窓口 (операционная касса)を開設している。 その際に、とくに強調しておくべきことは、 ロシアにおいて地方銀行とは、ただ単にいず れかの連邦構成体に登記されてそこで営業し ているというのにとどまらない点だ。地方銀 行とは、経済のリアルセクターに歩み寄り、 確固とした経済的ニッチを見つけ出し、当該 地域において重要な金融取引を担っている銀 行なのである。地域全体の屋台骨を支えてい るのだ。それらの多くはすでに一定の歴史を 刻み、多くの経験を蓄積し、いかなる条件の 下でも生き延びられる。これは、彼らの担っ ている機能が、その地域にとって必要なもの だからである。地元の特性を熟知し、地域の 顧客に信頼され、総じて地元行政府の支援を 取り付けている。 これまで、極東管区において、地方銀行は 常に、モスクワの銀行の支店とは若干異なっ たビジネスモデルで経営を行ってきた。たと えば、ヨーロッパ・ロシア部の銀行の多くは リファイナンスを手がけていたが、極東の地 方銀行には普及しなかった。外国からの融資 や連邦予算で資金基盤を充実させる手段が少 なかったので、投機的な取引に手を染める可 能性は最初から限られていた。極東の銀行は、 物事が決定される中心地から大きく離れた場 所にあるので、市場の浮き沈みの影響を被る 度合いも比較的小さいのである。 ロシアの地方銀行の多くは、企業と長期的 な関係を築く。したがって、融資を受けるの は恵まれたエリート企業とは限らない。地方 銀行にとって、企業の存続・発展は死活的な 問題であり、中小企業や小規模な生産の利益を最大限汲み取ろうとする。それなしでは、 バランスのとれた地域の経済発展など、望む べくもないからである。 極東管区の地方銀行は、総じて中小規模の ものが多い。2006年1月1日現在、資産額に よるロシア大銀行ランキングに入っている極 東の銀行は、5行しかない。表7の上位5行 がそれに当たる。だが、5行のうち、定款資 本額で大手と呼びうるのは、プリモーリエと ダリコムバンクだけである。この両行は、自 己資本額によるロシア200大銀行ランキング にも入っており、プリモーリエは10.4億ルーブ ルで160位、ダリコムバンクは8.2億ルーブルで 198位である。 上に挙げた5つの銀行が、極東管区におけ る金融セクターのあり様を多分に決定付けて いる。極東の地方銀行の定款資本総額に占め る5行のシェアは55%に及ぶ。資産、貸出残 高、個人預金といった項目でも、そのシェア は43%から49%の範囲内にある。2005年の利 潤総額に占めるシェアは29%であった。 ロシア極東の銀行業において集中の度合い が高いことは、表7からも見て取れる。これ らの上位10行で、極東地方銀行の支店の65%、 出張所の86%、支払窓口の79%を占めている。 しかし、これは市場における絶対的優位を 意味するわけではなく、他の地方銀行に対す る相対的な優位と考えるべきである。そのこ とは、定款資本によるベスト10を示した表8 からもうかがえる。これによれば、極東の域 内銀行のうち、定款資本が1.5億ルーブルを超 えるものは7行にすぎない。こういったレベ ルでは、遠くない将来に資金力不足から有効 な融資活動ができなくなる恐れがあり、多く の地方銀行にとって、増資か、それとも自主 的な経営の放棄かという選択を迫られること になろう。 表 10 極東管区における預金獲得シェア (%) 2003 2004 2005 2006 個人預金 地元銀行 12.6 14.9 17.2 18.0 ズベルバンク 63.6 60.8 54.6 49.7 域外の銀行の支店 23.7 24.3 28.3 32.4 法人預金 地元銀行 32.7 32.6 32.3 32.9 ズベルバンク 22.5 17.6 20.2 18.1 域外の銀行の支店 44.8 49.8 47.6 49.0
3.域内銀行と域外銀行の役割分担
しかし、現状を分析してみれば、極東管区 の地方銀行のセクター内部に、資本増強のた めの資金源を求めることは不可能である。表 9に見るように、最もうまく行っている銀行 ですら、総じて利益率は高くない。 この事実から、次のような結論が異論なく 導き出される。すなわち、極東の銀行システ ムを発展させる選択肢を検討するうえでは、 域外の専門化した大手銀行と、地域の支柱と なる地方銀行との、双方の優位性を活用する ことが肝心であるということだ。 すでに検討したように、域外銀行の主たる 優位性は、大きな額の資金にアクセスできる こと、大規模なオペレーションができること、 取引費用を引き下げられることである。 極東の地方銀行は、別の優位性をもってい る。地域における意思決定の複雑なシステム に組み込まれ、利益の調整、情報の入手・発 信の豊富な経験を有し、多くの問題の解決に 機動力を発揮することである。 地方銀行の主たるビジネスは融資である。 彼らにとっては、それ以外の本格的な収入源 は、事実上存在しない。リアルセクターへの 融資こそが引き続き地方銀行の活動分野となっており、融資の50~70%が鉱工業、建設、 運輸、通信、農業に向けられている。当然の ことながら、地方銀行は地元行政府に対して もサービスを行っている。 多くの投資プロジェクトは、時に、しかる べき期間の資金が欠如しているなかで実施さ れている。これは主に、長年にわたり特定の 企業と付き合い、一緒に幾多の危機を乗り越 え、次に危機が来ても企業が繰り上げ返済を してくれるはずだと確信しているような地方 銀行に特徴的である。 域内銀行と域外銀行がこのような形で住み 分けるならば、単に妥協が可能なだけでなく、 いずれか一方が市場から退出しなくても済む 効果的な共同プログラムの作成も可能であろ う。 我々の見るところ、過去数年、極東管区で 進行してきたのは、まさにそのようなプロセ スであった。表10では、極東管区における個 人預金残高を、域内銀行、ズベルバンク、域 外銀行支店の3つに分類してその比率の推移 を示している。これを見れば分かるとおり、 域内銀行は資金調達の面で域外銀行に大きく 水をあけられているものの、域内銀行のシェ アはこの間、約1.4倍に増大している。極東の 地方銀行は、住民の預金行動に影響を及ぼす ことのできる何らかのすべを見出したのであ る(あるいはそれは地元の条件を熟知してい るといったことに関係しているのかもしれな い)。 地方銀行のポジションが上昇しているのは、 法人預金についても同じである。表10の下段 に見るように、この面で極東の域内銀行は、 域外銀行を凌いでさえいる。この事実も、極 東の市場において住み分けがうまく行ってお り、金融機関が自らの能力に応じて機能を発 揮し合っていることを示す好例と見ることが できよう。 これらのプロセスは、今後も継続すると予 想される。ロシア極東が近い将来、国際分業 により積極的に参加するようになるのに伴い、 極東の経済には変化が生じ、金融部門もそれ と無関係ではいられない。それはまず何より も、極東管区に進出する銀行の増大をもたら すだろう。また、ロシアの経済発展がセクタ ー別、地域別に多様であることから、銀行シ ステムが実際の経済環境に適用し、ロシア極 東において銀行が最大限効果的に機能できる ような新たなブロックを形成することが課題 となろう。