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香港のヘッジファンドの動向

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2011 年 5 月 26 日 全12頁

香港のヘッジファンドの動向

資本市場調査部

金融調査課 森祐司

環境・CSR 調査課 伊藤正晴

著名ファンドが進出する一方で、閉鎖ファンドも多く、新陳代謝が激しい傾向

[要約]

„ 香港のヘッジファンド業界は、2000 年代以降の拡大が著しい。直近では香港証券先物取引委員会 (SFC)に登録したヘッジファンド運用会社数は 538(2010 年 9 月末時)で、04 年から 5 年連続で 増加している。運用資産額も 2008 年の危機後には 632 億米ドルにまで達した。 „ 香港のヘッジファンドは株式ロング・ショートやマルチ・ストラテジーが多く、運用資産額でも 大きな比率を占める。投資先はアジア太平洋向けが多く、運用資産額の 66.1%を占める。しかし、 最も特徴的なのは、中華圏への投資比率が大きいことである。資金源としては、欧米の富裕層や 金融機関からの資金が大半を占める。 „ 香港のヘッジファンドは、アジア太平洋地域の経済成長による発展・拡大に牽引され、運用拠点 としてはシンガポールと競争しつつ発展してきた。しかし、金融危機後においては、規模の小さ なヘッジファンドの閉鎖がある一方、有名なファンドや大規模なファンドには資金が流入するな ど、ファンド間の格差も指摘されている。今後の香港のヘッジファンド業界の拡大はファンドの 新陳代謝を伴うダイナミックな展開が予想される。

1.はじめに

森・伊藤[2011b]では、シンガポールにおけるヘッジファンドの動向について、 報告した。そこでは、シンガポールは、特にアジアや新興国へ投資するヘッジフ ァンドの運用拠点として、規制緩和や運用会社の誘致策などで、香港と競合しつ つ、その地位を確保してきていること、また運用資産額も拡大傾向にあることを 指摘した。また、森[2011a]では、近年の香港のヘッジファンド業界の動向につい て、SFC(香港証券先物取引委員会)が 2009 年 9 月に公表した『Report of the Survey on Hedge Fund Activities of SFC-licensed Managers/Advisors 』 ( 以 下 、 SFC[2009])をもとに報告した。本レポートでは、SFCが 2011 年 3 月に公表したSFC の 2011 年版の報告書(以下、SFC[2011])のほかに、Eurekahedge のデータベー スに登録され入手可能な個別ファンドから集計したデータも交えながら、香港の ヘッジファンド業界の動向について報告する* 香港のヘッジファン ド業界の動向につい て報告する 1*2 *1 Eurekahedge のデータは、各運用機関及び外部の情報を元に作成しております。Eurekahedge 及びその関係者は情報の正確性、完全性、 市場性、仮定、計算などについて保証を行っておりません。情報の閲覧・利用者は、データの使用に際して、情報における全てのリスクを 認識し、負う必要があります。Eurekahedge ではデータ及び情報に基づくいかなる理由の損害に関しても責任を負いかねます。データは、 特定のファンド、有価証券、または金融商品、会社への投資に関する勧誘或いは販売勧誘を構成するものではなく、また、独立、金融機関、 株式会社大和総研 丸の内オフィス 〒100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目9番1号 グラントウキョウノースタワー このレポートは投資勧誘を意図して提供するものではありません。このレポートの掲載情報は信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性、完全性を保証する ものではありません。また、記載された意見や予測等は作成時点のものであり今後予告なく変更されることがあります。㈱大和総研の親会社である㈱大和総研ホールディングスと大和 証券キャピタル・マーケッツ㈱及び大和証券㈱は、㈱大和証券グループ本社を親会社とする大和証券グループの会社です。内容に関する一切の権利は㈱大和総研にあります。無断での 複製・転載・転送等はご遠慮ください。

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2.香港のヘッジファンド運用会社

SFC の 2011 年版調査報告は、香港でライセンスを付与したヘッジファンドを運 用する 240 の運用会社を対象としている(2010 年 9 月末日を調査時点とする、他 の年は 3 月末時である)。ちなみに 2009 年の運用会社数は 209 社で、1 年半で 31 社ほど増加したことになる。これら 240 社が運用するヘッジファンドの本数は 2010 年で 538 本あり、運用総額は 632 億ドル(米ドルベース、以下同)である(図表 1)。 運用資産額は 2008 年まで順調に拡大して 901 億ドルまで到達したが、経済金融危 機で約 39%も減少した。2010 年にはやや回復し 632 億ドルとなっている。ファン ド本数は危機後でも増加したが、2010 年はほぼ横ばいで 538 本となっている。 Eurekahedge のデータベースに登録されているファンド(以下「DB 登録ベース」 と呼ぶ)について、香港を拠点とするファンドについて見ていこう。必ずしも全 てのファンドが登録されているわけではないので、当然その本数、運用資産額は 少なくなる。その点を踏まえた上で、香港とアジアにおけるその他の運用拠点を 比較するために、図表 2 でファンド本数や運用資産額の相対的な規模について確 認しよう(森・伊藤[2011b]も参照)。香港を本拠地とするファンド数は、2005 年 から順調に増加し、2008 年からは 140 本程度で横ばいとなっている。 図表 1 香港のヘッジファンドの運用総額と本数の推移 91 175 335 636 901 553 632 112 199 296 538 542 389 488 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 0 100 200 300 400 500 600 運用総額 HF数 (億ドル) (本) (年) (注)各年の日付は 3 月 31 日時点の数値. (出所)SFC[2009、2011]より大和総研資本市場調査部作成. 専門家としての助言として解釈されるべきではありません。 *2 ヘッジファンドの運用資産額や本数は、データベースや研究者によって集計の方法やデータのカバレッジが異なり、まちまちであるこ とが多い。ここでの集計は、シングル戦略を対象とし、ファンド・オブ・ファンズは対象としなかった。また、通貨が異なるだけで同一と 見られるファンドは二重に集計しないようにしている。 2010年の香港のヘッ ジファンド運用会社 数は240社、運用資産 額は632億ドル Eurekahedge のデータ ベースに登録されて いるファンドでも、 2008年から横ばい

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図表 2 アジアの主要 4 カ国の運用拠点別ヘッジファンド本数と運用資産額の推移 0 20 40 60 80 100 120 140 160 2005 2006 2007 2008 2009 2010 日本 豪州 シンガポール 香港 (本数) 《 ファンド数》 (年) 0 50 100 150 200 250 300 2005 2006 2007 2008 2009 2010 日本 豪州 シンガポール 香港 (億ドル) 《 運用資産額》 (年)

(出所)Eurekahedge「Global Hedge Fund Database」の個別ファンドデータより大和総研資本市場調査部 作成. アジアにおけるヘッジファンド 4 大拠点の中では、香港はファンド数・運用資 産額ともに最大である。ただし、シンガポールを拠点とするファンド数は順調に 増加し、香港との差を徐々に詰めてきている。豪州は 2005 年頃ではファンド数で は香港とほとんど同規模であった。しかし、2008 年の経済金融危機以後では、豪 州のヘッジファンドはシンガポールと入れ替わるように本数が減少してきている。 図表 2 の運用資産額(DB 登録ベース)で見ると、2007 年までは日本を除く 3 カ国 はいずれも増加していた。しかし、2008 年の経済金融危機による影響でこれら 3 カ国は全て資産を減少させた。香港のヘッジファンドは 2008 年は対前年比 44.8% も減少している。その後はやや増加して推移し、2010 年末時点で香港での DB 登録 ベースの運用資産額は 160.0 億ドルとなった。 香港はヘッジファン ドの運用拠点として は、アジアではトップ である

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3.運用規模別の構成

香港を拠点とするヘッジファンドの運用資産の規模別構成を図表 3 で見てみよ う。1 億ドル以下のファンドが 57.4%を占めている。2009 年に比べて 1 億~5 億 ドルの区分のウェイトが大きくなっているのは、金融危機後に運用総額が縮小し て 1 億ドル以下となったファンドが再び盛り返して、1 億ドル以上の区分になった りしたことが主な要因だと見られる。 香港のヘッジファン ドの57.4%は1億ドル 以下である 先に 2010 年の香港のヘッジファンド運用会社は 240 社だったと述べたが、それ ら 240 社の運用総額ランキングで見た構成は図表 3 右図のようになる。上位 20 位 までの運用会社で 352 億ドルを運用し全体の 55.7%を占め、資産規模上位の会社 に資金が集中する傾向が窺える。また 100 位までで 93.2%を占め、それ以下では 運用会社の運用規模は非常に小さくなり、上位と下位で格差が非常に大きいこと が示唆される。 運用会社上位20社で 運用資産額の55.7% を占める この点について、ファンドベースでの規模別構成についても、図表 4 で見てみ よう(「DB 登録ベース」)。2010 年 12 月時点で、香港を拠点とするヘッジファ ンドは合計 145 本あった。そのうち運用資産額上位 20 位までのファンドで全体の 57.2%を占めている(図表 4 上図)。上位 50 位までのファンドで 84.0%を占めて いる。このことから、運用会社だけでなく、ファンドベースでも上位に集中する 傾向があることが確認できる。また、伊藤・森[2011b]でもシンガポールのヘッジ ファンドも同様の傾向があることを指摘している。尚、その集中度も同様の数値 (シンガポールでは上位 20 位までのファンドで 66.2%、上位 50 位までで 87.7%) となっているのは興味深い。 ファンドベースでも 上位のファンドに集 中する傾向があり、上 位20位までのファン ドで全体の66.2%を 占める 次に、規模別に本数の構成を見ると(図表 4 左下図)、10 億ドル以上のファン ドは 145 本中わずか 2 本で全体の 1.4%を占めるに過ぎない(ちなみに、シンガポ ールでも 10 億ドル以上のファンドは 2 本であった)。しかし、これら 2 本のファ ンドの運用資産額は全体の 15.9%を占めている(右下図)。一方、1億ドル以下 の小規模ファンドは 120 本中 99 本ある(左下図)。しかし、運用資産額ベースで 図表 3 香港のヘッジファンドの運用総額別構成(左)と運用会社順位別の運用総額構成(右) 53.6% 31.3% 7.1% 8.0% 60.7% 25.7% 7.3% 29.5% 7.2% 6.3% 5.9% 57.4% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 1億ドル以下 1億~5億ドル 5億~10億ドル 10億ドル以上 2006年3月 2009年3月 2010年3月 21~50位; 142; 22.5% 上位1~20 位; 352; 55.7% 51~100 位; 95; 15.0% 100位以 下; 43; 6.8% (出所)SFC[2009、2011]より大和総研資本市場調査部作成.

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図表 4 香港のヘッジファンドの規模別構成比率

(注)単位は【順位別】および【規模別運用資産額】は百万ドル;%.【規模別本数】は本;%. 2010 年 12 月末時. (出所)Eurekahedge「Global Hedge Fund Database」の個別ファンドデータより大和総研資本市場調査部作成.

は1億ドル以下のファンドは合計で 18.4%を占めるに過ぎない(右下図)。1フ ァンドあたりの平均運用資産額は 1.1 億ドル(シンガポールは 0.91 億ドルであっ た)である。このように、香港のヘッジファンド業界は、シンガポールと同様に 上位の少数のファンドの資産規模が大きく、小規模のファンドが多数あるという 構造になっている。このような運用会社やファンド間の規模格差が大きいのは、 ヘッジファンド業界の世界的な特徴にもなっているが(森・伊藤[2011b]参照)、 香港を拠点とするファンドでもその例にもれないことが理解されよう*3 尚、「金融危機以来、しっかりとした組織を持つヘッジファンドが機関投資家 の資金を集めている」(The Wall Street Journal[2011])とも指摘されており、 このような上位のファンドに資金が集中する傾向は、さらに拍車がかかっている ものと見られる。 *3 ヘッジファンドのデータベースでは、一般的に規模が大きなファンドや著名なファンドは、データベースにあまり登録しないために、バ イアスがあることも指摘されている。このため、実際の運用業界の規模別構成とは異なることも考えられる。しかし、大規模ファンドの未 登録が多いというバイアスを考えると、ここで指摘した「大規模ファンドに集中する傾向」が、実際にはもっと強いのではないかというこ とになるだけで、ここで指摘した傾向とは逆の結果にはならないのではないかと考えられる。 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 1 11 21 31 41 51 61 71 81 91 101 111 121 131 141 【順位別の累積構成比率】 20位 57.2% 50位 84.0% 100位 96.9% (順位) 10億ドル以上, 2, 1.4% 5~10億ドル, 2, 1.4% 1~5億ドル, 42, 29.0% 1億ドル以下, 99, 68.3% 【 規模別本数の構成比率】 1億ドル以 下; 2995; 18.4% 10億ドル以 上; 2594; 15.9% 5~10億ド ル; 1373; 8.4% 1~5億ドル; 9356; 57.3% 【 規模別運用資産額の構成比率】

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4.拠点別に見た運用戦略構成

拠点別のヘッジファンド運用戦略の構成を、「DB 登録ベース」で見てみよう(図 表 5)。アジア 4 カ国においては、日本と豪州は株式ロング・ショートが 70%程 度を占める一方、シンガポールは「株式系(Bottom-Up・Dual Approach・Top-Down・ Value の合計)」の比率が高い。香港では株式ロング・ショートは 55.0%、マル チ・ストラテジーは 13.4%、「株式系」は 12.0%となっている。 アジアのヘッジファ ンドは「株式系」の戦 略が多い 図表 5 運用拠点別に見たヘッジファンドの運用戦略別構成(運用資産額ベース) 0% 20% 40% 60% 80% 100% 米国 英国 日本 豪州 香港 シンガポール 株式ロング・ ショート CTA/マネージド・ フューチャーズ マルチストラテ ジー イベント・ドリブン 株式系 レラティブ・バ リュー マクロ アービトラージ フィックスド・イン カム ディストレスト・ デット その他 (注)2010 年 12 月末時.「株式系」は Bottom-Up・Dual Approach・Top-Down・Value の合計.

(出所)Eurekahedge「Global Hedge Fund Database」の個別ファンドデータより大和総研資本市場調査部 作成. 図表 6 香港のヘッジファンド運用戦略別の構成 レラティブ・バリュー; 128; 0.8% マクロ; 585; 3.7% 株式ロング・ショート; 8803; 55.0% フィックスド・インカ ム; 671; 4.2% アービトラージ; 762; 4.8% ディストレスト・デッ ト; 597; 3.7% その他 0.8% 株式系; 1918; 12.0% マルチストラテジー; 2150; 13.4% イベント・ドリブン; 80; 0.5% CTA/マネージド・ フューチャーズ; 176; 1.1% (注)単位は(百万ドル;%).2010 年 12 月末時.「株式系」は Bottom-Up・Dual Approach・Top-Down・Value の合計.

(出所)Eurekahedge「Global Hedge Fund Database」の個別ファンドデータより大和総研資本市場調査部 作成.

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香港でも株式関連の戦略が高い構成比となっているのは、戦略としての取組や すさや、これら諸国における金融資本市場の中で、株式市場が最も投資機会が多 く、ヘッジファンドがリターンを獲得しやすいことが理由であろう(伊藤・森 [2011b]を参照)。 香港を拠点とするヘ ッジファンドは株式 ロング・ショート、マ ルチ・ストラテジーが 多い 次に、SFC の調査結果による香港のヘッジファンドの投資戦略でみた構成比率に ついて図表 7 で見ていこう。本数別・純資産額(NAV)別の構成比率は、やはり株 式ロング・ショート、マルチ・ストラテジー、FOHF が大きな比率を占めている。 特にマルチ・ストラテジーは、純資産額でみると最大の構成比率(34.2%)とな っている。マルチ・ストラテジーが最もよく利用する投資戦略は、株式ロング・ ショート、イベントドリブン、CB アービトラージだという(SFC[2011])。 図表 7 香港のヘッジファンドの戦略別構成比率 クレジット・ ディストレス ト; 2.9% マネージド・ フューチャー ス; 0.1% クレジット・ ロング・ ショート; 1.8% リスク・アー ビトラージ; 0.3% エマージン グ・マーケッ ト; 0.4% FOHF; 14.7% その他; 2.4% マルチ・スト ラテジー; 34.2% 株式ロング・ ショート; 30.6% グローバルマ クロ; 8.3% フィックス ト・インカム; 0.2% コンバーチブ ル; 0.5% 株式マーケッ トニュートラ ル; 1.0% イベントドリ ブン; 2.6% < 純 資 産 額 で み た 構 成   2 0 1 0 年 > FOHF; 15.4% イベントドリ ブン; 1.8% ボラティリ ティ; 0.7% 株式マーケッ トニュートラ ル; 0.9% クレジット フォーカス; 3.9% コンバーチブ ル; 2.0% フィックス ト・インカム; 6.7% ディストレス ト; 4.1% グローバル マクロ; 1.2% 株式ロング・ ショート; 25.0% マルチ・スト ラテジー; 34.0% その他; 4.3% < 純 資 産 額 で み た 構 成   2 0 0 9 年 > FOHF; 12.5% その他; 6.3% イベントドリ ブン; 4.1% ボラティリ ティ; 2.2% 株式マーケッ トニュートラ ル; 2.7% クレジット フォーカス; 3% コンバーチブ ル; 1.9% フィックス ト・ インカム; 2% ディストレス ト; 1.4% グローバル マクロ; 1.4% 株式ロング・ ショート; 44.3% マルチ・スト ラテジー; 18.3% < 参 考 : 本 数 の 構 成 : 2 0 0 9 年 > (注)2009 年 3 月末時点 (出所)SFC[2009]、[2011]より大和総研資本市場調査部作成.

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2009 年の構成比(純資産額)と比較すると、株式ロング・ショートの比率が増 加していることが目立つ。マルチ・ストラテジーや FOHF など、複数の投資戦略を 組み合わせたファンドの構成比は 50%程度で 2009 年とほぼ同じであったが、香港 のヘッジファンド戦略の中では大きな比率を占めていることが分かる。その要因 としては、ヘッジファンドの本数が 2006 年の 296 本から 2010 年の 538 本へと大 きく増加し、新たに参入する運用会社や新設のファンドなど多様化が進んだこと から、戦略や商品の種類も豊富になり、マルチ・ストラテジーや FOHF のような多 種類の戦略・商品に投資するヘッジファンドが投資しやすくなったことが挙げら れよう。また、投資家もヘッジファンドでこの地域のエクスポージャーを多く割 り当てるとは考えにくく(後述するように香港のヘッジファンドは投資先として アジア太平洋地域の投資比率が非常に大きい)、また香港を拠点とするヘッジフ ァンドを多数組み入れて管理することにはコストも多くかかるために、戦略分散 をすぐに図れる FOHF やマルチ・ストラテジーのファンドが選好されたのではない かと推察される。 香港では欧米よりも マルチ・ストラテジー やFOHFの比率が 高い

5.拠点別に見た投資先構成

図表 8 で各運用拠点でのヘッジファンドの投資先別の構成を確認する。投資先 は各ファンドが Eurekahedge データベースに申告した国・地域をそのまま集計し ている(「DB 登録ベース」)。これを見ると、米国のファンドは北米で、英国の ファンドは欧州への投資が多いが、両方とも最大なのは「グローバル」である。 これらとは対称的に、アジアを拠点とするファンドはアジアへの投資比率が高い ことが分かる。特に、香港はシンガポールと同様にアジアへの投資比率が最大と なっている。正に、アジアにおけるヘッジファンドの運用の中心地と言えよう。 シンガポールにおいては、インドや日本などへもある程度の投資比率があるのに 対し、香港では中華圏への投資比率(37.9%)が非常に大きい一方、日本やイン 米英両国のヘッジフ ァンドはグローバル が最大の投資先 図表 8 運用拠点別に見た投資先別の構成(運用資産額ベース) 0% 20% 40% 60% 80% 100% 米国 英国 日本 豪州 香港 シンガポール グローバル 豪州・NZ アジア 日本 中華圏 インド 北米 ラテンアメリカ 欧州 新興市場 中東・アフリカ 東欧・ロシア (注)2010 年 12 月末時.

(出所)Eurekahedge「Global Hedge Fund Database」の個別ファンドデータより大和総研資本市場調査部 作成.

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図表 9 世界のヘッジファンドの投資先別の構成(左)と香港のヘッジファンドの投資先別構成(右) インド; 15; 0.1% 中華圏; 6022; 37.6% 日本; 283; 1.8% 新興市場; 259; 1.6% グローバル; 1670; 10.4% アジア; 7746; 48.4% アジア地域全般 14066; 87.9% アジア; 33890; 6.8% 豪州・NZ; 2639; 0.5% ラテンアメリ カ; 20601; 4.1% 北米; 79635;16.0% 中華圏; 10751; 2.2% 日本; 9953; 2.0% インド; 2059; 0.4% 東欧・ロシア; 10268; 2.1% 新興市場; 26972; 5.4% 中東・アフリ カ; 3975; 0.8% 欧州; 74916; 15.0% グローバル; 223132; 44.7% アジア地域全般 59292;11.9% (注)単位は(百万ドル;%).2010 年 12 月末時.「アジア地域全般」はインド・中華圏・日本・豪州 NZ・アジアの合計. (出所)Eurekahedge「Global Hedge Fund Database」の個別ファンドデータより大和総研資本市場調査部作成.

ド、豪州などそれ以外のアジア地域への投資比率は非常に小さく、中華圏により 特化したファンドが多いことが特徴となっている。 「DB 登録ベース」で香港を拠点とするファンドの投資先別構成について図表 9 で詳細に見てみよう。香港を拠点とするファンド(右図)の投資先は、アジアへ の投資が 48.4%で、アジア地域全般(豪州・NZ、日本、インド、中華圏、アジア の合計)では 87.9%と、同時期のシンガポールの 75.9%を上回り、香港に拠点を 置くヘッジファンドがアジア地域への投資にいかに特化しているかがよく分かる。 尚、同時期の世界のヘッジファンドのアジア地域全般への投資は合計 11.9%であ る(左図)。 香港を拠点とするフ ァンドは、アジアや中 華圏への投資が多い このように、香港のヘッジファンドがアジア太平洋地域に特化する傾向には、 当然ながら投資家サイドのニーズも影響していることも考えられる。シンガポー ルと同様に、香港を拠点とするヘッジファンドに投資家が期待するのは、それら ファンドのアジア地域での運用能力の高さであろう。このため、アジア地域に投 資するファンドに投資家からの引き合いが多くなることは当然考えられよう。以 上のことを背景に、アジア地域での投資比率が高くなっていると見られる。

6.投資家の地域別及び属性別構成比率

世界と香港のヘッジファンドに投資する投資家の地域別構成比率(資金源別構 成)を見てみよう。まず、世界のヘッジファンドの投資家の地域別構成(図表 10 左図)は、北米が 55.0%、欧州が 21.0%と、欧米が資金源の 8 割弱を占めている ことが分かる。一方、香港でも、北米が 36.1%、欧州が 24.3%と両者合わせて 60.4% を占め、欧米が最大の資金源となっている(図表 10 右図)。しかし、世界の投資 家と比べて北米の投資家の比率が低く、その他の地域の比率が高いことから、 ヘッジファンドの資 金源は欧米が8割弱 で、香港では中東やア ジアからの資金が比 較的多い.

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図表 10 投資家の地域別構成比率(左:世界、右:香港) 香港 7.9% 北米 36.1% 欧州 24.3% その他 31.7% 【香 港】 その他, 20.0% 英国, 14.0% 豪州, 3.0% ドイツ, 2.0% スイス, 5.0% カナダ, 3.0% 米国, 52.0% 北米、55.0% 欧州、21.0% 【世 界】 (注)【世界】は 2009 年末時、【香港】は 2010 年末時. (出所)【世界】は IFSL[2010]、【香港】は SFC[2011]より大和総研資本市場調査部作成. 図表 11 投資家の属性別構成比率(左:世界、右:香港) FOHF 24.5% 年金基金 10.2% 財団・基金 等 8.0% 銀行・生保 等金融機関 18.3% 富裕層の個 人投資家・ ファミリー オフィス 19.0% その他 16.3% 国家・国際 機関 3.7% 【香 港】 企業年金 14.0% 公的年金基 金 17.0% FOHF 24.0% 財団・基金 等 14.0% ファミリー オフィス 13.0% アセット・ マネー ジャー 6.0% その他, 12.0% 【世 界】 (注)【世界】は 2009 年末時、【香港】は 2010 年末時. (出所)【世界】は IFSL[2010]、【香港】は SFC[2011]より大和総研資本市場調査部作成. 中東やアジア太平洋地域などの投資家からの資金が、香港の場合は多いものと見 られる。ちなみに、香港を資金源とするのは 7.9%であった。 森[2010]は、ヘッジファンドを含む香港の資産運用業全般としてみた場合には、 35.8%が香港の投資家の資金であったことを報告している。このため、香港のヘ ッジファンドは資産運用業よりも、海外資金の引き付け度合い、別言すれば海外 資金への依存度が高いことが窺える。 香港のヘッジファン ドも欧米への資金依 存度は高いが、それ以 外の地域からの投資 が比較的多い 次に、世界と香港のヘッジファンドに投資する投資家の属性別構成比率を見て みよう。香港のヘッジファンドの投資家の属性としては(図表 11 右図)、FOHF が

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最も大きく(24.5%)、富裕層(19.0%)、金融機関(18.3%)、年金基金(10.2%) と続いている。世界のヘッジファンドの顧客構成では(図表 11 左図)、年金基金 の構成比が大きくなっている。世界のヘッジファンドの投資家としては、かつて は個人富裕層やファミリー・オフィスが主要な資金源で、2000 年代以降に年金基 金が台頭するという流れがあった。香港ではまだ富裕層の比率が高く、年金基金 の比率がまだ低いため、今後は年金基金の比率が高まり、世界の平均的な構成比 のように、近づいていくのかもしれない。 富裕層や銀行からの 投資が多いが今後は 年金基金からの投資 拡大も期待される.

7.香港のヘッジファンド業界の現状と今後

今回取り上げた香港証券先物取引委員会の報告(SFC[2011])によれば、2010 年 9 月末時点の香港で営業許可を受けたヘッジファンド会社(SFC-licensed hedge fund managers)240 社が運用するヘッジファンド数は 538 本であり、SFC が調査を開始した 2004 年からおよそ 5 倍にまで増加したという。しかし、2008 年の金融危機後においては、アジアでは一連のファンドが閉鎖されるなど、「大 規模なファンドや有名なファンドは裕福なアジアの投資家から資金調達できて い る が 、 規 模 の 小 さ な フ ァ ン ド は 打 撃 を 受 け た 」 ( The Wall Street Journal[2011])ことが伝えられている。このため、2009 年は香港のヘッジファ ンドの運用資産額は減少した。2010 年からは再び盛り返したが、規模の大きなフ ァンドを中心に資金流入があるようである。 金融危機後には香港 のヘッジファンドは 規模が小さなファン ドは打撃を受けた 2011 年はアジア株式市場が相対的に低迷していることから、ヘッジファンドの 運用パフォーマンスも芳しくはない。HFRI Emerging Markets: Asia ex-Japan Index は、年初来 0.53%のリターンにとどまっており、HFRI Fund Weighted Composite Index の 3.37%を大きく下回っている。しかし、日本経済新聞電子版 [2011]は、香港で注目度の高い新ファンドの設立が続いていることを指摘し、ニ ューヨークやロンドンよりも、香港やシンガポールといった「新興市場および周 辺都市、特にアジアの各都市がヘッジファンド拡大の最前線であることは明ら か」だと示唆している。 2011年のアジアのヘ ッジファンドのパフ ォーマンスはあまり 芳しくない 特に、2010 年 1 月にソロスファンドが香港に事務所を開設し、サブプライム住 宅ローン証券の下落に賭けて一躍有名となった米国ヘッジファンドのポールソ ンが 2011 年 2 月に香港に進出したことは、香港のヘッジファンド業界の今後の さらなる発展を期待させるものとなっている。その一方で、昨年香港を含むアジ アで閉鎖されたファンドは規模の小さなファンドを中心に 100 に上るとも言われ ており、その動向は交錯したものとなっている(The Wall Street Journal[2011])。 香港のヘッジファン ドは閉鎖・開設が多 く、ファンドの顔ぶれ の変化も激しい 以上のことから、香港のヘッジファンド業界は、今後もアジア太平洋地域や中 華圏の発展とともに拡大していくことが予想されるが、その拡大は必ずしも直線 的なものではなく、新規参入と撤退・閉鎖の激しい新陳代謝を伴いながらの拡大 だということが予想される。 以上

参考資料

IFSL Research [2010], "Hedge Funds 2010," http://www.thecityuk.com/, April, 2010. Securities and Futures Commission [2011], [2009], [2006],“Report of the Survey on

(12)

Hedge Fund Activities of SFC-licensed Managers/Advisors,” Securities and Futures Commission.

The Wall Street Journal[2011],”ヘッジファンドのポールソンが香港進出“、ウォー ル・ストリート・ジャーナル日本版、2011 年 3 月 4 日. 伊藤正晴・森祐司[2011a]、「金融危機後のヘッジファンドの動向」、大和総研、 2011 年 2 月 16 日. 伊藤正晴・森祐司[2011b]、「アジアに投資するヘッジファンド:動向と保有株 の特徴」、大和総研、2011 年 3 月 7 日. 日本経済新聞電子版[2011]、「香港やシンガポール、ヘッジファンドの新たな拠 点に」日本経済新聞、2011 年 3 月 28 日.

森祐司[2010]、「アジアの資産運用業界と年金基金」『DIR Market Bulletin』2010 年夏季号、7 月 1 日、Vol.25、大和総研. 森祐司[2011a]、「香港のヘッジファンド業界の動向」『大和総研調査季報』、 春季号、Vol.2、大和総研. 森祐司[2011b]、「エマージング市場投資のヘッジファンド」、大和総研、2011 年 4 月 20 日. 森祐司・伊藤正晴[2011a]、「エマージング市場とヘッジファンドの相関分析」 大和総研、2011 年 2 月 2 日. 森祐司・伊藤正晴[2011b]、「シンガポールのヘッジファンドの動向」大和総研、 2011 年 5 月 10 日.

図表 2  アジアの主要 4 カ国の運用拠点別ヘッジファンド本数と運用資産額の推移  020406080100120140160 2005 2006 2007 2008 2009 2010日本豪州シンガポール香港(本数)《 ファンド数》 (年) 050100150200250300 2005 2006 2007 2008 2009 2010日本豪州シンガポール香港(億ドル)《 運用資産額》 (年)
図表 4  香港のヘッジファンドの規模別構成比率
図表 9  世界のヘッジファンドの投資先別の構成(左)と香港のヘッジファンドの投資先別構成(右)  インド; 15; 0.1% 中華圏; 6022; 37.6% 日本; 283; 1.8%新興市場;259; 1.6%グローバル;1670; 10.4% アジア; 7746; 48.4% アジア地域全般 14066; 87.9%アジア;33890; 6.8%豪州・NZ;2639; 0.5%ラテンアメリカ; 20601;4.1%北米; 79635;16.0%中華圏;10751; 2.2%日本; 9953;2.0%
図表 10  投資家の地域別構成比率(左:世界、右:香港)  香港 7.9% 北米 36.1% 欧州 24.3%その他31.7% 【香 港】その他,20.0%英国, 14.0%豪州, 3.0%ドイツ, 2.0%スイス, 5.0% カナダ, 3.0% 米国, 52.0% 北米、55.0%欧州、21.0%【世 界】 (注)【世界】は 2009 年末時、【香港】は 2010 年末時

参照

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