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第5回授業づくり研究会報告

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Academic year: 2021

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1.はじめに 第 5 回中学校数学授業づくり研究会を以下の日 時と場所で実施した. 日時:令和 2 年 2 月 8 日(土) 会場:世田谷区立用賀中学校 参加者は全部で187名あった.その内訳は,会 員86名,学生会員22名,一般63名,一般学生16名 である. 今回の授業づくり研究会のテーマは「データの 活用領域における数学的活動の充実を目指して」 と設定し,1 年生 2 つ,2 年生 2 つの公開授業を実 施した.1 年生は,データの活用の 1 時間目,2 年 生は確率の 1 時間目という位置づけで,次の 4 名 を授業者として授業を行った. 公開授業 1 年(データの活用) 授業 1 :武藤純輝(世田谷区立用賀中学校) 授業 2 :柘植 守(松江市立本庄中学校) 公開授業 2 年(確率) 授業 1 :岩田拓実(八王子市立由井中学校) 授業 2 :近藤俊男(筑波大学附属中学校) 当日の授業に至るまでに,4 つの授業について 指導案の検討を行った.柘植教諭の授業について は,指導案をメールで送ってもらい,定例の幹事 会で検討し,その結果をフィードバックし改善に つなげた.また,授業者の地元である島根県の地 域の学習会でも指導案について検討を加えていた だいた.その他 3 名の授業については,定例の実 践研究推進部中学校部会幹事会の中で 3 回ほど検 討し,当日実践することができた. 以下では,各授業の報告を中心として,第 5 回 授業づくり研究会の報告を行う. (鈴木 誠) 2.公開授業 1 年 ⑴ 授業 1 ① 授業計画の概要 ア.課題について 今回の学習指導要領の改訂で新しく「データの 活用」の領域が新設された.「データの活用」領域 の意義として,中学校学習指導要領(平成29年告 示)解説数学編には,以下のように示されている. 「急速に発展しつつある情報化社会においては, 確定的な答えを導くことが困難な事柄についても 目的に応じて資料を収集して処理し,その傾向を 読み取って判断することが求められる.この領域 では,そのために必要な基本的な方法を理解し, これを用いてデータの傾向を捉え考察し表現でき るようにすることが中学校数学科における指導の 大切なねらいの一つであり,統計的に問題解決す る力を養うことにつながる.」(p.54) 中学生はなんでも平均をとって比べればいい, と考えがちであるが,平均値が代表値として本当 にふさわしいのかどうかは,データの分布を見て 判断しなければいけなないということを気付かせ たいと考えた.代表値などを利用して資料の傾向 を読み取り,自分の考えを主張することが,現状 の課題となっている. イ.数学的活動を充実させる手立て 今回の授業では,生徒が学習課題を身近なもの として捉えながら取り組むことができるように, 片足立ちの記録を自らで収集したデータを扱っ た.手立てとしては,以下のことを考えた. 1 年生のクラスとは別に 2 年生のクラスでも 同じようにデータを収集していたことを伝え, 生徒に 2 つのクラスのデータを使ってどんなこ とを調べたいか聞く.

第5回授業づくり研究会報告

実践研究推進部中学校部会

*

実践研究推進部中学校部会 *実践研究推進部中学校部会 実践研究推進部 部長:太田伸也,同副部長・中学校部会長:鈴木 誠 実践研究推進部 部長:太田伸也,同副部長・中学校部会長:鈴木 誠 幹 事:五十嵐淳,石井 勉,岩田拓実,小岩 大,近藤俊男,菅 達徳,高村真彦,高山琢磨,藤原大樹,牧下英世 幹 事:五十嵐淳,石井 勉,岩田拓実,小岩 大,近藤俊男,菅 達徳,高村真彦,高山琢磨,藤原大樹,牧下英世

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平均値だけで集団を比較することは難しいた め,資料をどのように整理すればよいかを考えさ せ,データの分布の様子を調べさせる.(出てこ ない場合は,平均値のデメリットなどを説明する) 小学校の時に学習したグラフを復習しながら, ヒストグラムを全員で確認しながら作成する. 最初は個人でそれぞれのヒストグラムを比べ て,分布を調べ,どちらのほうが片足立ちがよ り長く立っていられるクラスかを予想する. 次に班で,個人で考えた意見を話し合い,グ ループとしての予想を考察し,全体で共有する. 本時のまとめ ② 授業の実際 今回は片足立ちのデータを収集して授業を行っ たが,本当の意味で生徒たちの興味・関心を惹く ならば,なぜ片足立ちのデータを取る必要がある のかを示す必要があった. また,2 つの集団を比較する手段として,予想 していた「平均値」というワードは出てきたが, その値だけで集団の良し悪しを判断してしまい, 分布の傾向に目を向けるという発想はなかなか出 てこなかった.その際に平均値は,はずれ値に影 響されやすいことを簡単な例を用いて説明するこ とにより,平均値だけで集団の良し悪しを判断す るのは難しいという考えを持つ生徒が増えた. 時間配分としては, ∼ までで,25分, ∼ で23分ぐらいかかってしまい,最後のまとめの部 分は丁寧に指導することができなかった.また, の全体で発表する場面では,根拠を用いて,「○ ○だから,□□である」のように説明するように, 強調して指導する必要があると感じた.生徒から は「結局どちらのほうが片足立ちが長くできてい るの?」という感想が多く出ていたが,今回の授 業では根拠を用いて適切に説明できていればどち らの集団でも良いこととした. (武藤純輝) ⑵ 授業2 ① 授業計画の概要 ア.課題について 本授業では,ある中学校で,各クラスから 1 名 の代表選手が出場して飛距離を競い合う「ハンド ボール投げ大会」の場面を設定した.あるクラス では,大会に出場する選手 1 名を決めようとして おり,3 名の候補者がいる.生徒は,この 3 名そ れぞれがこれまでに 5 回行ったハンドボール投げ の記録に出会う. 本時は,単元の導入にあたる第 1 時であり,「代 表値」などの概念の理解は,第 2 時以降で扱う. 本時では,平均やちらばりなどの小学校までの既 習事項や,最頻値に近い考えなど生徒が素朴にも つ考えを活かしながら,多様な視点でデータを捉え たて判断したり,生徒どうしや教師とコミュニケー ションしたりすることに主眼をおいた.1 名につ き,5 回の記録では,統計的な分析を行うには,デー タの値の個数が小さいと感じられるかもしれない. データの扱いに慣れていない状況で,大きいデータ の値の個数に出会わせた場合,逆に,データの特徴 を見失ってしまう可能性がある.このため,あえて データの値の個数が小さい場面を設定した. <問題> ほんじょう中学校では,毎年,ハンドボー ル投げ大会を行っています. 大会では,各クラスの代表が出て,飛距離 を競い合います.優勝者は学校代表として, 市の大会へ参加します. 1 年 3 組では,はるきさん,そうたさん,け んごさんの 3 人の中から,ハンドボール投げ 大会に出場する選手 1 人選ぼうとしています. 1 年 3 組のみんなはクラス代表が優勝し,学 年の学校代表になって欲しいと願っています. 〇 以下の表は,これまで 5 回行った,この 3 人のハンドボール投げの結果です. あなたなら,どの選手を選びますか. ただし,全部で 8 クラスあるので,大会で 投げるのは 1 回のみです. ちなみに昨年度の優勝者の記録は27mで,2 位は25mでした. 28m 28m そうた 16m 32m 27m 16m 24m はるき 5回目 4回目 3回目 2回目 1回目 25m 25m 22m 27m 26m けんご 18m 24m 27m 図1 問題

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イ.数学的活動を充実させる手立て ある生徒が,例えば選手Aを選んだ場合,選手 BやCを選んだ人の立場になって,選んだ根拠を 考えて表現する.これにより,自分が着目してい なかった点に注目することができる. 他者の考えた根拠を推し量る活動 <ねらい> 生徒が他者の考えた根拠を,他者が推し量るこ とによって,多角的に(異なる立場から)事象を 捉えることができ,自分の考えた根拠を批判的に 考察することにつながる. <指導の流れ> 問題を把握し,自分の考えを持つ. 他の人の多様な考えを知る. 自分が考えた人とは異なる人を選手として選ん だ人がなぜそう考えたのか,根拠を推し量って書 く(自分が考えた選手を選んだ根拠は書かない). 各班それぞれのメンバーで,(iii)の活動の結 果を共有し,ホワイトボードにまとめる. ホワイトボードを黒板に貼って,学級全体で 共有する. 再度自分の考えを見直し,その根拠を書く. 一連の活動を通して,自分の考えが「変わら ない」,「変わった」,「分からなくなった」のど れかを尋ね,考えの変容を自覚する. 本時を振り返る. 他者の考え方の「よさ」を自然に考えることで, 自分がその選手を選んだ根拠が最初に考えたとき に比べ,より確信のあるものになったり,よりよい 判断をするために見直したりすると考えられる.こ のように批判的に考察したことを通して,自分の意 見により自信をもつことができるようになる. ② 授業の実際 授業では,問題提示後の個人思考への取り組み, 生徒たちのグループによる熱心な協議と全体での 共有場面への参加,そして全体を通しての振り返 りなど,生徒たちの活動は素晴らしいものであっ た.これは,平素からの会場校の用賀中学校の先 生方のご指導の賜物と実感している. 生徒の感想からは, 「はじめ考えたときは,自分の率直な考えで,あ まり深くは考えなかったけれど,他の人の考えを聴 くことによって,自分の考えが深まり,今日は,最後 に(自分の)考えが変わったので面白かった.」 「一つの数に注目し見ることも大切なんだと思 いました.そして,平均を出すだけではなく,全 てを見て考えることも大切だと友達の意見を聞く ことによって,分かりました.」 などがあり,特に,生徒の感想は,「考えること の楽しさ」を書いているものが多かった. 今後も,生徒が批判的に思考し,判断・表現す る力を高めるような授業づくりに取り組もうと考 えている. (柘植 守) ⑶ 研究協議 授業 1,2 ともに,挑戦的な提案性と生徒や授業 への真 な姿勢が高評価であった.統計的問題解 決力の育成に向けた重要と思われる意見,論点に ついて列挙する. ・生徒が考えてみたいと感じられる問題で,解決 の結果,行動や判断が変わるものが望ましい. 漠然たる大きな問いがまずあって,問題が明確 化,焦点化されていくとよい.授業 1 では前提 となる大きな問いがあるとよりよい. ・取り上げるデータについては,ねらいに沿ってい れば,実際のデータでも架空のデータでもよいが, そのためのねらいと手立て(発問,展開,板書な ど)が大切である.データ収集への批判的思考 の育成には授業 1 のような授業が必要である. ・統計の授業では,傾向の説明で統計的な表現を 用いず日常的な表現にとどまっていることがあ る.算数科に比べて中 1 でどう質の違いを求め ていくのかがとても大切である. ・算数科での,「∼結論について多面的に捉え考察 する」(小 5 ),「∼妥当性について批判的に考察 する」(小 6 )と,中学校の「批判的に考察し判断 する」,の前提の数学的な表現は何かを授業レベ ルで考えるべきである.4 つの集団で値が 5 つず つ(授業 2)は,小 5 程度でも対応できる. ・個人や班,全体での結論が複数が出てきたときに は,何に基づいてその結論になっているのかに着 目して整理するとよい.最適解をどうつくって いくか,教師が練り込んでおく必要がある. ・授業 1 で120cm以上の値を 1 つの階級にまとめ

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ていたが,単元では階級の設け方をよりよい問 題解決のために考えさせていきたい. ・他者の考えを数学的に推察する場面の意図的な 設定は大切だが,問題解決の流れの中で生徒に とって必然性があればなおよい. ・ポスターやレポートで終わらず,その結果どう 社会が変わったか,個人の判断が変わったかを 検証する取組に期待したい. ・統計データの値の個数を増やす必要があるが, 現実的な文脈と合わないことがある.このよう に授業で扱う教材は難しい.現場での知恵を本 研究会などで今後も共有したい. (藤原大樹) 3.公開授業2年 ⑴ 授業 1 ① 授業計画の概要 ア.課題について 統計的確率と数学的確率を関連付けやすい次の ような導入問題を扱った(図 2). 導入問題 2 枚のコインを投げ,両方とも表が出たらA 君の勝ち,表と裏が 1 枚ずつ出たらB君の勝 ち,両方とも裏が出たらC君の勝ちというゲー ムをします.誰が一番勝ちやすいだろうか. 直観で予想させた後,多数回の試行を行い,表 と裏が 1 枚ずつの場合が起こりやすいことを確認 した.どのくらい起こりやすいかに目を向けさ せ,割合の考えを引き出させ,回数を増やしてい くとその値が収束していき,その値を確率という ことを確認した.その後,なぜ表と裏が 1 枚ずつ 出る確率の方が高いのかを考えることを通して, 統計的確率と数学的確率を関連付けた. イ.数学的活動を充実させる手立て 上記の導入を直観で予想させると,どの場合が 起こるのも同じくらいではないかと考える生徒が 多い.しかし,実際に何回か行ってみると表と裏 が 1 枚ずつ出ることが多いのではないかと思えて くる.そこから,「どのくらい多いのだろう.」「な ぜ多くなるのだろう.」との疑問を抱かせ,興味・ 関心を高めるようにした. ② 授業の実際 「 2 枚の硬貨を投げ両方とも表,1 枚が表で 1 枚が裏,両方とも裏のどの場合が一番でやすいか」 を生徒に直観で予想させることから授業を開始し た.この段階では,どの場合が起こるのも同じく らいではないかと予想する生徒が多かった.実際 に 2 人で 1 組として,2 枚の硬貨を 1 回投げさせ たところ,それぞれが起こった組の数はほぼ等し くなった.次に10回に回数を増やして行っても, 違いは明確にならず,5 分間で可能な限り,硬貨 を投げる実験を行った. 5 分間投げ続けた結果を各組に聞いていくと, すべての組で 1 枚が表で 1 枚が裏の場合が多くな り,この場合が多くなることが実感できた.「ど のくらい勝ちやすいのか.」に目を向けさせて,合 計が違う場合,どのように比べればよいかを問い かけたところ,「起こった回数を合計で割る」とい う回答が得られた.その値を割合ということも生 徒から引き出すことができた. 次に,各組でそれぞれの割合を求めた後,全体 でそれぞれが求めた割合を確認していったが,投 げた回数はまだ不十分で各班の割合にばらつきが ある.時間の関係もあり,回数を続けていくと, A君が勝つ割合は0.25,B君が勝つ割合は0.5,C 君が勝つ割合は0.25に近づくことを教師から伝え てしまった.ここで,多数回の試行を行うと事柄 の起こる割合が,一定の値に近づくことが生徒に 実感させられなかったことが課題である. 続いて,なぜ表と裏が 1 枚ずつ出る確率の方が 高いのかを考えることを近くで話し合わせ,結果 を全体で共有することにより,統計的確率と数学 的確率を関連付けた.最後に,本時の振り返りを 行い,授業を終えた. 確率の導入として,「実際に多数回の試行を行 うなどの経験を通して,ある事柄の起こる割合が, 一定の値に近づくことを実感を伴って理解できる ようにする」だけでなく,単元全体を見通すため に「実際に多数回の試行によって得られた確率(統 計的確率)と場合の数をもとにして求めた確率(数 学的確率)を関連付ける」ことにも触れておきた 図2 導入問題

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いと考え,本授業を計画したが,やはり分量が多 すぎたことから反省すべき点が多く生じた.特 に,次の 2 点が課題としてあげられる. 1 点目は,2 枚の硬貨を投げ両方とも表,1 枚が 表で 1 枚が裏,両方とも裏のどの場合が一番でや すいかを確かめるには,何回くらい投げればよい のか,10回投げたときの結果をどうみるのかを生 徒に考えさせ,生徒自身に問題解決の方法を計画 させる必要があった.教師主導で行ってしまった 結果,振り返りの場面では,問題解決の方法に触 れている生徒が少なかった. 2 点目は,2 枚の硬貨を区別して,場合の数を 用いて,確率を求めることについては理解できて いたが,多数回の試行を行うと事柄の起こる割合 が,一定の値に近づくことが実感させられなかっ たことである.多数回の試行を行い,表やグラフ を用いて,ある値に収束することのみに 1 単位時 間を費やす必要があると感じた. (岩田拓実) ⑵ 授業2 ① 授業計画の概要 単元「確率」の導入として,不確定な事象の起こ りやすさを,相対度数を根拠に予測する場面を設 定した.これは,量的データを扱う第 1 学年の学 習と質的データを扱う第 2 学年の学習にギャップ があり生徒にとって唐突なのではないか,また,新 学習指導要領で統計的確率を第 1 学年で扱うこと になるためその接続をより大切にする必要がある のではないかという 2 つの問題意識からである. ア.既習の相対度数と関連付けた確率の導入 相対度数を,起こりやすさ を予測するための根拠として 用いて判断する場面から確率 の導入につなげる展開を考え た.平成24年度全国学力・学 習状況調査のスキージャンプ の問題を基にして,本授業で はパラスポーツのボッチャを 題材に,目標となる球と投げ た球の距離の 4 人の記録(図 3)と課題(図 4)を提示した. データは,それぞれの 回数が異なり,また,平 均値だけの判断に偏らな いようなものにした.平 均値が最も小さいのはD であるが,最小値はA, 中央値で比較するとCで ある.そして,例えば30cm以下の累積相対度数は 大きい順にC,A,D,Bである.生徒が判断する 際にこれらを根拠に用い,その中で判断の根拠に相 対度数や累積相対度数を用いることができることに 焦点化して確率の導入につなげていきたい. イ.根拠を明らかにし筋道立てて説明する 4 人の記録から代表を 1 人選んだ理由につい て,筋道立てて説明する場面を設定する.本時で は,自力解決の後,グループでの議論を設定する. グループで議論する際には自分の考えの根拠を伝 えるよう促す.また,グループの議論を全体で共 有し,その根拠を発表することで,数学的な表現 で根拠を明らかに説明する場面を設定していきた い.その中で「30cm以内の累積度数が大きい生 徒を選出した」という発言に注目し,回数が違う 場合に度数を比較するだけでは不十分なので相対 度数(割合)に注目する必要があるなど相対度数を 用いる意味の理解につなげることも含めたい. ② 授業の実際 導入場面では,ボッチャを知る生徒もいて,用 意したデータであったが課題解決にスムーズに向 かうことができた.一方で,累積相対度数に注目 できるようにするために代表者を選ぶ基準となる 記録を明確にする必要があった.授業では「どん な子に代表者になってもらいたいか.」と問うた が,「手先が器用」「まっすぐ投げられる」などの 答えとなり基準を意識させる問いとして不十分で あった.さらに「それはどうしたら分かるか,比 較しやすいか」などと問うことで「30cm以内にな る回数が多い」といった具体的な数値を意識した 上で課題解決に入れるとよかった. 各グループの結論とその主な根拠は以下のよう なものであった.カッコ内数字はグループの数. A 最高記録 ⑴ B 少ない回数だが最後の記録が良い ⑴ 図3 4人の記録 課題 4 人から 1 人を選ん で代表戦を行うとき, 誰を代表として選出し ますか.データを基に 考えなさい. 図4 課題

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C 後半記録の伸び,中央値,30cm以下の回数 ⑶ D 平均値 ⑷,12回目までの50cm以下の数 ⑴ 全体的に根拠を明確にして導いた結論を発表で きていた.より多くの生徒が自分たちの考えを発 表できる場面を設定することと他のグループの考 えを知ることを意図してそれぞれのグループの考 えを順々に発表する形式とした.あるグループの 考えを基に発表の中で出てきた数値や単語の意 味,根拠の妥当性などについて全体で議論しなが ら進めるような展開も考えられる.その中で,最 終的に相対度数に目を向けることができればよい. ある生徒の発表に「(記録が)1 桁になる確率」 とあった.起こりやすさを表すために日常的に用 いる「確率」という表現を何気なく使っていた. 一方で「総回数が異なる中で回数をそのまま比較 してよいか」という問いに対して,「相対度数」「確 率」を用いると答えた生徒もいた.次時からの学 習の中でそれらを結びつけながら確率の意味につ いて考察し,数学的な「確率」の概念形成につな がればよい.その意味で単元の導入で本時のよう な内容を扱う意味があったと考える. (近藤俊男) ⑶ 研究協議 <授業 1 について> 授業 1 は,統計的確率と数学的確率を 1 時間の 授業の中でつなげることをねらいとして行った. このねらいを中心として協議を行い,主に次のよ うな意見があった. ・確率の導入場面としては盛り沢山で,多数回の 思考についてもう少ししっかりと扱うことが必 要であったのではないか. ・生徒に多数回調べることの必要性が感じられる ような展開が必要ではなかったか.収束してい くことを視覚化することで理解を深めるため に,表やグラフに表すことをするとよかったの ではないか. ・誰が勝ちやすいかということを予想するような 場面をつくると,多数回調べようということに つながったのではないだろうか. ・統計的確率と数学的確率を結びつけるには,同 様に確からしいということの意識を持たせるこ とが大切だと思うが,それをどのように考えさ せるかを検討しておくことが必要だと思う. ・PPDACそのものを教えるということではない が,少しずつこの大事なところを意識させるこ とは大切だと思う.今日の授業であれば,実験 で出てきた数値は何を表しているのかというこ とを意識させていくということ. <授業 2 について> 授業 2 は,相対度数をもとにして起こりやすさ を根拠として予想することをねらいとして授業を 行った.この授業についての意見の主なものとし ては次のようなものがあった. ・選手として誰を選ぶかということでねらいに迫 れるだろうか.比べる基準(30cm以下が何回 あったかなど)があったらねらいに近づけたの ではないだろうか. ・時系列で見る意識が強かったのではないか.練 習をしてだんだんと上手くなっていき,最後は 安定しているのがいいとなって,相対度数には つながりにくい.ボッチャは,練習の効果など によって相対度数が変化し,大数の法則が使え るか分からない.データの分析の授業の教材と しては面白い. ・平均の見方から脱するには,何の起こりやすさ を問題にするかということが大切. ・授業の中で「確率」と言っている子がいた.こ のような発言を取り上げることで,「確率」とは 何かを明確にしていくような展開もあったので はないか. 両方の授業に係わるような意見として,次のよ うなものがあった. 公開授業の様子

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・分布が偏ったデータを見たとき,どう考えたか 真剣に向き合うような生徒の姿があって欲し い.自分たちのデータと向き合ったとき,他の 班のデータも知りたい,1 回 1 回のデータを取 ることに慎重になって欲しい,出てくる結果に 対して慎重になって欲しい,そういったことは 統計を考えるときに大切なことだと思う. ・目的があってデータを集める,集めたくなると いうような展開が大切. (鈴木 誠) 4.講演会 「データの活用領域における数学的活動の充実」 −全国学力・学習状況調査を振り返って− 国立教育政策研究所教育課程研究センター 佐藤 寿仁 先生 会のテーマを受け,学習指導要領が目指してい るもの,全国学力・学習状況調査結果に基づく指 導の改善点,さらには具体的な授業実践例の紹介 の 3 つの内容を中心に講話された. 主体的・対話的で深い学びの実現に向け,単元 や題材などの時間のまとまりを見通しながら,生 徒の数学的な見方・考え方が鍛えられていくこと が大切であること,数学的活動を示す問題発見・ 解決の過程は50分間の授業の型と捉えるのではな く,児童生徒の算数・数学の学びが濃密なものと なるための学びのプロセスとして考えて欲しいこ と,「データの活用」領域においての指導の意義を 確認するとともに算数・数学の 9 年間で学びを捉 えていく必要があること,などが示された. 全国学力・学習状況調査の結果からは,「資料の 分布の様子から,資料の傾向を的確に捉えて判断 すること」に課題が見られ,その改善点として, 主として次の 2 つのことが指摘された. ・資料の傾向を読み取り,それを説明する際には, ヒストグラムの形状や複数の階級の度数の大小 関係などの数学的な表現に着目し,それらを基 に説明できるようにすることが大切である.ま た,正答だけでなく誤答の記述にも着目し,生 徒がどのような思考をしているかを教員が把握 し,授業の中で指導していくことも必要である. さらには,生徒に説明させる際にはどのような ところに着目をしているかを問い直すなどし て,説明について洗練させていくことも大切で ある. ・代表値の必要性と意味の理解についても課題が あるが,目的に応じて資料の特徴を表す代表値 について検討し,どの代表値を用いるべきかを 判断することにも課題が見られる.代表値の意 味を確認するだけでなく,データの傾向やその 特徴を伝えるための根拠としてふさわしい代表 値を用いることができるようにすることが大切 である. 最後に,具体的な授業実践例が2つ紹介され, 生徒の思考に寄り沿った授業づくりの大切さにつ いて強調された. (山崎浩二) 5.おわりに 第 5 回中学校数学授業づくり研究会も,全国か ら187名と多くの参加者を迎えて開催することが できた.実践研究の場として,本学会にとって重 要な役割を担う取り組みになっている. 本報告書は,今回の授業づくり研究会を振り返 り,継続的な取り組みに活かしていく資料として も役立てていきたい.データの活用領域における 数学的活動をテーマとし,第一学年「データの活 用」,第二学年「確率」それぞれの第 1 時間目の授 業を提案するという焦点の当て方について,また, 学習指導案を提案された授業者の皆様,検討に加 わった中学校部会の皆様にとって実践と協議を経 て何を考えたか,どう深められたか等々が,今後 の実践研究につながると考える. 講習会

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ご講演をお引き受けいたたいた国立教育政策研 究所の佐藤寿仁先生,ご参加いただいた皆様,そ して本研究会を推進している中学校部会の皆様に 感謝申し上るとともに,実践の場をご提供いただ き,お忙しい中,準備や片付けまでご協力いただ いた世田谷区立用賀中学校の草開宣晶校長先生は じめ教職員の皆様,ようがコミュニティークラブ の皆様にあらためて御礼申し上げたい. (太田伸也)

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