色彩エキスパートによる青色の癒し評価とその特徴
菊谷敬子1
・川端康弘2
(1
北海道大学大学院文学研究科・2
北海道大学大学院文学研究院)
目的
色彩感情は,様々な観点から研究されている。色
の見かけ上の温かさは波長に対応し,長波長の赤系
統の色は温かく,短波長の青系統の色は冷たいと評
価される(木村, 1950)。SD 法による印象評価では,
暖色には賑やかな状態が連想され,温かい感情が喚
起さるが,寒色は静かな落ちついた感情を与えるよ
うだ(大山他, 1963)。本研究では,「癒し感」に焦点
を当て,単色による癒しの特徴を明らかにすること
を目的とし,寒色である青色に関する癒しの特徴の
検討を行った。ただし,一部の研究結果は色彩学会
で発表している。
方法
実験参加者 実験参加者は,社会人10名(M = 34.8,
SD = 9.3)であった。彼らは,Web デザインや広告
制作等の配色やデザイン等を仕事とし,色彩を扱っ
た経験のある人物であった。
色刺激 PCCS ハーモニックカードの55色の単色
(青・赤・緑・黄色・紫の5 色×Vivid(v),Bright
(b),Deep(dp),Light(lt),Soft(sf),Dull(d),
Dark(dk),Pale(p),Light grayish(ltg),Grayish
(g),Dark grayish(dkg)の11トーン)を使用
した。
癒しの評価 癒しの評価のために,「日藝版癒し評価
スケール」(松本他, 2005)を用いた。
手続き 参加者は,色刺激カードが入った3つのバ
インダーの中から任意のバインダーを1つずつ選び,
単色の刺激に対して,癒し評価スケールの各質問項
目に回答を行った。色刺激についてはランダムに配
置され,観察時間の制限は設けなかった。
結果と考察
各青色の癒しの総合得点の平均値,標準偏差,癒
された度合いの基準を図1に示し,約6割以上の青
が癒されていると評価された。青は選好される傾向
があるので(大山他, 2009),どの青でも好感度が高
く,受け入れやすいと考えられる。癒された基準を
クリアした7つの青に対して階層クラスター分析
(群平均法)を適用した結果を図2に示した。クラ
スター分析を基にType1~3に分類し,癒し評価ス
ケールの下位尺度得点からさらに癒しの特徴を図示
した(図3 参照)。lt・p・ltg の青では,気が晴れゆ
とりを感じる「潤」の癒しに加え,「空」のボーっと
している状態を楽しむ癒しといった特徴が挙げられ
る。b・sf・dk の青では,「潤」の癒しに加え,「浄」
の心が静かに清らかな気分になる癒しと特徴づけら
れる。本実験の参加者は,色彩やデザインに関して
専門性が高く,色に対する感性が高いと考えられる
ので,色そのもの特徴を検出する能力が高いと想定
される。したがって,本結果には,青色に対する癒
しの特徴そのものが検出された可能性が高いと考え
られる。今後の課題としては,幅広く色彩関係の専
門家を集め,それ以外の人との比較検討を行い,色
に対する癒しの特徴を明らかにすることである。
図1.青色の癒しの総合評価
図2.癒された7つの青に関するクラスター分析
図3.癒しの下位尺度による Type2と3の特徴
(注)特徴を見やすくするため便宜上,最大値を 5 にしている
が,本来の最大値は 10 であるので,注意を要する。
北海道心理学研究2021年 第43巻 p.52
- 52 -