集団ゲーム .
「
オーケス トラの指揮者」における知的発達
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(2005年3月31日受理 ) Keywords:集 団ゲーム, ピアジ ェ,幼児教育,遊 び,知的発達
長
贋
真理子
NagahiroMariko要
約
本研究 は,4,5才児 の子 どもた ちが集 団ゲー ム 「オーケス トラの指揮者」 を どのように遊 び,そ して,その中で ど のような知 的側面 の発達 を とげ てい ったか を明 らか に した ものであ る。 本研究 の結果,「オーケス トラの指揮 者」 にお け る知的発達 の内容 には空 間的思考,時 間的思考,社会的思考 の3
つ の知 的側面 の発達が関与 してい ることが 明 らか に なった。 空間的思考 は,指揮者では身体 の どの部位 か らどの部位 に動 きを変え るか,鬼が どの方 向に向いてい る時 に動 きを変 えるか とい うことがわか るようになること, また,鬼では子 ども達が見 てい る方 向に指揮者が い るとい うことがわか る ようになることに関係 してい る。 時間的思考 は,指揮者 の場合 には, いっ動 きを変えた らよいか,鬼 の場 合では指揮者 は一番早 く動 きを変 え る人であ ることがわ か ること,子ではす ばや く動 きを変え る人であ ることの理解 に関係 してい る。 社会的思考 は,指揮者や子が鬼は 自分 と対立す る意 図を持 ってい ることや,指揮者 と子 は協 力的 な関係 で あ ることが わか ることに関係 してい る。 本文 に示 された事例 か らも明 らか なよ うに,「オーケス トラの指揮者」 には,空 間的,時 間的,社会的思考 の発達 を 促す多様 な内容が含 まれ てい ることが 明 らか にな ったが,本研究 の成果 は また,幼児 の教育 は 「遊 びを通 して」行 う幼 児教育の本質 に鑑みて,保育者が遊びの中で子 どもが どのような知的関係づげを しているのかを知 る手助け となり,個 々 の子 どもの発達課題 に即 した指導 を行 うための手がか りにす ることがで きると考 え られ る。研究のね らい
『幼稚園教育要領』(2002)は,幼児 の 「遊 びは心身 の 調和 の とれ た発達 の基礎 を培 う重要 な学習で あ る」
と明 記 しているが,一般 には遊 びの情意的,社会的発達 の効 用は ともか くと して,知的発達 の側面 につ いてはその多 くが概論的 に しか述べ られ てい ない (Millar,S.,1968; Piers,M .,1972)。 一方,遊 びを通 して子 どもた ちが ど のような知 的発達 を遂げてい るかにつ いての研究 は, カ ミイ らの "ソー リー" につ いての研究 (Kamii,C.2003)や積 み 木 につ いての研究 (Kamii,C.,Miyakawa,Y.,
Kato,Y.2004)がある。 また,筆者もデプ リーズとファー ニー (工kVries&Fernie,19fX);
工
kVries,R.,&Kohlt肥rg,L.1987/1990)の研究 を基 に,4歳- 7歳 の 日本 の子 ど もた ちの 『三 日並べ』 の発達段階 とその知的発達 の内容 を2003年 に明 らか に した。 (長贋真理 子,宮 川洋子, 加 藤春彦2003年8月)
って集団ゲ-9
2
長 贋 真理子 ム "オーケス トラの指揮者''を取 り上げ,子 どもたちが どのよグな知的発達を遂げているかを明 らかにす る。そ れ によ って改めて幼児教育 における遊びの重要性を立証 しようとす るものである。方
法
1.対轟児 被験児は福山市内と岡山市内の私立保育園4歳児, 5 歳児 各7
名2
.準備物 (右図) イスを直径2.5メー トルの円周上○
に8
つ並べ る。0
3.
ゲームの紹介○
○
実験者は被験児 と一緒 にイスに座 り,以下のように遊 び方 (①-⑤ )を説明 した後,遊びを進めた。 なお,遊 びの様子は全て ビデオに録画 し,後の結果 と考察の際の 資料 と して用いることに した。1)
『オーケス トラの指揮者』 を して遊びま しょう。 鬼を一人決め ます。鬼は部屋の外で呼ばれ るまで待 ちます。鬼が 出て行 った ら指揮者 を決めます。指揮 者はいろん な動 きを します。子 どもたちは指揮者の まねを しなければなりません。 2)では,先生が指揮者をす るか らみんなはそのまねが できますか ? (頭をたた く,両耳を引 っ張 る,鼻を つ まむ,肩 をたた く,手をたた く,膝をたた くと動 きを変えてい く) 3)鬼は呼ばれた ら円の真ん中に立 って,誰が指揮者か 当てます。指揮者を当てた ら鬼の勝 ち,当て られ な か った ら指揮者 と子の勝 ちです。 4)このゲームには 2つお約束があ ります。 1つは,千 は必ず指揮者のまねを しなければなりません。 もう 1つは,鬼は円の真ん中に入 って指揮者を当てます。5
) じゃあ,始め ま しょう。 鬼を したい人はいますか ? (鬼が部屋 を出た後で)指揮者を したい人はいますか?結 果 と 考 察
1.鬼の役割か ら (1) 指揮者が動 きを変えていないのに指名する事例 千 鬼(
T
児) 鬼のT
児は呼ばれて部屋 に入 って来 るなり,R
児の前 に一直線に行 き,R
児を指名す る。それ も,指揮者が動 きを変えないうちにである。 指揮者が動 きを変えないうちに指名 した ことか ら,T
児は,単に自分の好みだけで選んだ ことがわかる。つ ま り,"指揮者は動 きを変える人,子は動 きを合わせ る人" という役割を考えていないので,あてず っぽうに指揮者 の名前を言 っているのである。 (2) 指揮者が動 きを変えてか ら指名するが,一部の子だけを見て決めている事例T
児 鬼 (M児) 1.指揮者が膝をたたいたので膝をたた く0 4.鬼 (M児).が 目の前に来た時指揮者が頭をたたいた 2.部屋に入 り,円の真ん中に立つ3.
5.
.T
反時計回 りに一周回る (児とその反対 にいるE
児を交互 に見 る (図1)
00 図2
)○6.鬼 (M児)が 自分を見ている時 に指揮者が手 をたた いたので,手 をたた く。 8.「ブ ッブ-。 (はずれ)」
7.T
児 を指 さ して「T
ち ゃん !」
と言 う。 ◎讐
者○ ○
● T
児 図 1○
○
● T
児 図2
鬼のM
児は, 円の真ん中に立 って反時計回 りに子 ども たちを見てい く (図1)。 ほぼ一周回 ってT児を見た時 , 指揮者が動 きを変えたのでT
児 も動 きを変えた。それか らは,T
児 とその反対 にいるE
児を指揮者を背後 に して 交互 に見 る (図2)
。
M
児がT
児 を見 てい る時,指揮 者 が動 きを変えたのでT
児はM
児の 目の前で動 きを変えた。 そ こで,M
児 はT
児を指名す る。M
児が円の真ん中に立 って動 きが変わ るまで全員を見 (3) 全体 の子の中で一番早 く動 きを変 えた子 を指名する事例 て回 っていたのは, "指揮者 は動 きを変 え る人,子 は動 きを合わせ る人" という役割 を理解 しているか らである。 そ して,``指揮者 は一番始め に動 きを変 え る" とい う時 間的 なことも考 えているので,T
児 とE
児を見比べ,た また ま 目の前で動 きを変えたT
児が指揮者だ と考えた。 しか し,M
児は,全体 の中の2
人だけを比べ ているだけ で,みん なの中の誰が一番早いか ということまでは考え ていない。 指揮者(
Y
児) 鬼(
0
児) ・1.膝 をたた く03.頭 をたた くo 2.輪の中に入 ってみんなの動きが変わ るのをキ ヨロキ ヨ ロ見 なが ら,時計回 りに一周回 る (図3)○ 4.キ ヨロキ ヨロ見なが ら反対 に回 り出す (図4)o・
5.
鬼が横 を向いた時肩をたた く○6.「Y
ち ゃん○」 相野/
′
ー
○へ
ヽ
。
○
×
〇
〇
〇 〇
図3
00
岬‖
)
指J′t、ゝ
○○〇
〇 〇
図4
鬼の0児は, キ ョロキ ョロ見回 しなが ら時計回 りに一 周見て回 った ところで,指揮者が動 きを変え る (図3)。 0児はそのままY児 (指揮者) まで見て回 り,Y児の と ころで反対 に回 り出す (図4
)。指揮者 に対 して横 を向 いた時,指揮者が動 きを変える。0児はY児を指名す る。 0児は, 円の真ん中に立 って,みん なの動 きをキ ョロ キ ョロと方向を変え なが ら見て回 っている。 これは,A
とBでは どち らが早 いか,ではC
とでは どうか と,子全 体 を比べ なが ら,動 きを変える順番 を系列化 し,一番早 く動 きを変えた子は誰かを捜 している。つ まりここでは , 事例2の子が "2人だけを見て どち らが早 く動 きを変え たか" を考 えているのとは違 い,"みん な (全体 )の中9
4
長 贋 真理子 で, どの子が一番早 く動きを変えたが を考えている。2.
指揮者の役割か ら (1) 鬼が見ている時に動 きを変える事例 指揮者 (S児) 鬼 1.膝をたた く○ 2.4.輪の中に入る○.鬼が部屋にはいる03.
鬼が輪の中心に入 っていないのに,足をばたばたさ せる○6.
鬼が 自分の方を見ているのに動きを変えるo 5. S児を見る○ 指揮者のS児は,``膝 をたた く"動作で鬼を呼ぶ。鬼 が部屋に入 り, まだ円の中心に入 っていないうちに ``足 をばたばたさせ る"動作に変える。鬼が中心に入 りみん なを見て回 ってS児を見ている時に "肩をたた ("動作 に変える。S
児は,"膝をたた ("動作か ら "足をばたばたさせ る''動作,そ して,"肩 をたた ぐ'動作に変えている。 (2)鬼が見ていない時に動 きを変える事例 1)急に大 きな音がする動 きをする事例 つ まり,"指揮者は動 きを変え る" ということはわか っ ている。 しか し,鬼が円の中心 に入 らないうちに動きを 変えると部屋に入 ってくる鬼か ら見えて しまうことは考 えていない。 また,鬼の 目の前で動きを変えたことか ら も,鬼に見 られ ることを気にかけていないことがわかる。 つまり, S児は,鬼と自分が敵対的な役割関係であるこ とを考えていないと言える。3.
鬼が後ろを向いている隙に手をたた く○ 4.鬼が後 ろを向いている隙に頭をたた く○5.
鬼が後ろを向いている隙に足でばたばた床をふみつけるo 10.A児の方を急に振 り向き,「Aちゃん」 と指さす○ら回る0
7.
鬼が後ろを向いている隙に手をたた く○8.
鬼が後ろを向いている隙に頭をたた く一〇 指揮者のA
児は,``膝をたた ("動作で鬼 を呼ぶ。鬼 が後ろを向いている時に "手をたた く"動作に変える。 また,鬼が後ろを向いている時に "頭をたた く"動作に 変える。 また,鬼が後ろを向いている時に "足でばたば た床をふみつける"動作に変える。す ると,後ろを向い ていた鬼がA
児の方を振 り返 る。今度は鬼が横を向いて いた時に "手をたた ぐ'動作に変える。 また,鬼が後ろ を向いている時に "頭をたた ("動作に変える.鬼が横 を向いていた時に ``手をたた ("動作に変える。すると, 後ろを向いていた鬼がA
児の方を振 り返 り,A
児を指名 する。A
児は,鬼が後ろを向いている時に動きを変えている。 鬼が後ろを向いている時とは,鬼か ら視覚的に自分の動 きの変化を見 られ ないようにす ることである。つまり,A
児は,鬼と自分が敵対的な役割関係であることを理解 していると言え る。 しか し,A
児の動作は,"膝をたた (" "手をたた (" "足でばたばた床をふみつける" と いう音のす る動 きばか りである。 特に,``頭 をたた ぐ' 動作の後に "足でばたばた床をふみつける''動作をす る と,小さい音か ら急に大きな音に変わ った時に鬼が振 り返 る。つまり,音によって鬼が指揮者のいる方向に気づ くという空間的 なことは考えていない。 2)鬼が見ていない時に動 きを変え,さらに,動 きを変える時できるだけ動かす部位 を近づけた り,急に大 きな音 を出 さないように気をつける事例 指揮者 (M児) 鬼 指揮者のM児は,``膝をたた ぐ'動作で鬼を呼ぶ。鬼 が後ろを向いている時に "頭をたた ("動作に変える。 鬼が後ろを向いている時に "肩をたた ぐ'動作に変える。 また,鬼が後 ろに向いている時に ``耳を引 っ張 る"動作 に変える。 また,鬼が後ろを向いている時に "ももをた た く''動作に変える。