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世界で初めて窒化ホウ素ナノチューブの強度測定に成功

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Academic year: 2021

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同時発表: 筑波研究学園都市記者会(資料配布) 文部科学記者会(資料配布) 科学記者会(資料配布) 1

世界で初めて窒化ホウ素ナノチューブの強度測定に成功

平成22年9月14日 独立行政法人 物質・材料研究機構 概要 1. 独立行政法人物質・材料研究機構(理事長:潮田 資勝)の国際ナノアーキテクトニクス 研究拠点(拠点長:青野 正和)のゴルバーグ主任研究者らの研究グループは、高性能な 電子顕微鏡を用いて、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)1)のナノ引張試験の測定に世界で 初めて成功した。BNNT の引張強度2)が鉄鋼の強度の約 15 倍以上の約 30 GPa(ギガパスカ ル)3)、ヤング率4)が 900GPa とダイヤモンド(1,000GPa)に匹敵する大きな値を示すことを 見出した。 2. BNNT はホウ素(B)と窒素(N)から成るカーボンナノチューブと同じような円筒状の網 目構造をしているが、カーボンナノチューブに比べて、耐熱性、耐酸化性や耐薬品性など 化学的により安定な材料として注目されている。また、BNNT はカーボンナノチューブと同 じように優れた機械的な性質を持つと理論的に予想されているが、その測定が困難であっ たためにこれまでに BNNT の強度測定はなされてこなかった。 3. 今回、特別設計のナノ引張試験装置 5)を高性能な電子顕微鏡(300 kV のTEMで分解能 0.17 nm)に組み込み、BNNT の強度測定に世界で初めて成功した。測定した BNNT は直径が わずか 10-50 ナノメートル、長さが数百ナノメートルの多層ナノチューブ。BNNT をロウの 接着剤によって、ナノチューブの両端を、一方の側にある力検出カンチレバーともう一方 の側にあるピエゾモーター駆動の金属棒に固定することによって、BNNT の一本の強度測定 に測成功した。 4. 14 個の BNNT の単一の応力-ひずみ曲線の測定から、BNNT の引張強度やヤング率が求めら れた。BNNT の引張強度はチューブの形態(チューブ径や長さ)などの違いにより変化する が、最大で約 33 GPa という大きな値を示した。一方、ヤング率は 900 GPa と極めて大き な値を持つことが明らかとなった。この値はダイヤモンドのヤング率(1,000 GPa)に匹 敵するものである。 5.優れた機械的特性を有する BNNT は絶縁性の高強度なフィラー素材として、高分子複合材 料、セラミック複合材料または金属複合材料などの様々な機械的強化材、ナノメカニカル システムの主要部品などへの応用が期待される。

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2 研究の背景 窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)は、カーボンナノチューブ(CNT)の炭素原子(C)の代わ りに、ホウ素原子(B)と窒素原子(N)が円筒状に並んだ構造をしている。BNNT はカーボンナノ チューブに比べると、耐熱性、耐酸化性や耐薬品性などの点で優れた特性を有し、未来のナ ノ材料として注目されている。特に、カーボンナノチューブが半導体や金属的な性質を示す のに対して、BNNT は常に絶縁性を示す高強度材料としての大きな魅力がある。しかしながら、 BNNT の機械的な性質について理論的に予測されただけで今日まで実験で検証されたことは なかった。 材料のヤング率や引張強度などの機械的な性質は引張試験機により、試験試料の両端を適 切なクランプで試験機内にしっかり固定し、試料を破断するまでゆっくり軸方向に引き伸ば すことにより調べることができる。ナノチューブのような試料寸法がナノメートルサイズの 微小な材料になると試料の固定が難しく、その測定が極めて困難になる。近年、ナノ材料の 強度測定は原子間力顕微鏡(AFM)を用いたナノ引張試験機が用いられている。 しかし、ナノチューブのようなナノ材料は様々な微小な欠陥を含んでおり、その欠陥の有 無により機械的な性質が異なる。このために、電子顕微鏡などでナノ材料の微細構造を観察 しながら、その視野に対応した機械的な性質のその場測定が必要である。 本研究では、原子間力顕微鏡(AFM)を電子顕微鏡(TEM)の中に組み込み、BNNT の微細構 造を観察しながら、その機械的な特性のその場観察に成功した。 成果の内容 14 個の単一の多層 BNNT を対象にリアルタイムで高性能な電子顕微鏡観察の下で引張試験 を行った。ナノチューブのような極小物体を対象とした引張試験のために透過型電子顕微鏡 (TEM)と一体化した特別設計のナノ引張試験装置を用いた。ナノチューブをナノ試験装置 に固定するためにロウの液滴を電子ビームで集束させるという独自な方法を考案した。この ようなセットアップの下で、リアルタイムでナノチューブの構造的変化を可視化しながら、 試験対象のナノチューブの強度を測定することに成功した。単一の BNNT 試料の応力-ひず み曲線から、その引張強度が 33Gpa、ヤング率が 900GPa であることを明らかにした。BNNT の強度は高強度鋼の 2 GPa より約 1 桁以上大きな値を示す。また、ヤング率はダイヤモンド (1,000GPa)の値に匹敵する大きな値を持つ。さらに、BNNT は破断しにくく、最大で 4500 ナ ノニュートン(nN)6)という極めて大きな外部荷重にも耐えることができることが分かった。 この値はカーボンナノチューブの最大外部荷重の 5 倍と、極めて大きな値を示す。 波及効果と今後の展開 ナノ材料は優れた機械的特性を持つが、単一のナノ材料を直接その場測定するのは容易で はない。今回、特別設計のナノ試験装置を用いて単一のナノ材料(例えば、ナノワイヤ、ナ ノチューブ、ナノベルトなど)の引張試験に成功した。 絶縁性の BNNT は優れた機械的特性を持つことから、高強度フィラー材料として、ポリマ ーやセラミックス材料等の複合材料の新素材として利用できる。例えば、ナノメカニカルシ ステム内の強靱な機械部品や各種複合材料の機械的強化材など、BNNT は次世代のナノ材料と して新しい用途に向けた幅広い展望を開くと期待される。

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3 問い合わせ先: 〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1 独立行政法人物質・材料研究機構 企画部 広報室 TEL:029-859-2026 研究内容に関すること: 独立行政法人物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 板東義雄(ばんどうよしお) TEL: 029-860-4426 FAX: 029-860-4709 E-mail: Bando.Yoshio@nims.go.jp 図 1:(左)透過型電子顕微鏡内(TEM)でのナノ引張試験下において、AFM カンチレバー(左側接 点)とタングステンナノワイヤー(右側接点)の間に固定された単一の多層窒化ホウ素 ナノチューブ(BNNT)。 (右)BNNT の応力-ひずみ曲線。この図から、BNNT の引張強度が 33 GPa、ヤング率が 900 GPa が求められた。

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4 【用語解説】 1)窒化ホウ素ナノチューブ BNNT はBとNから成り、カーボンナノチューブと同じような円筒状の網目構造をしている。 カーボンナノチューブに比べて、耐酸化性や耐薬品性などの化学的な性質に優れている。ま た、BNNT はカーボンナノチューブが導電体なのに対して、電気を通さない絶縁性の性質を持 っている。優れた絶縁性、高熱伝導性、高強度特性を有するナノ材料として注目されている。 2)引張強度 ひずみが大きくなると材料は破断するが、破断する前に材料に表れる最大の引張応力、あるい は材料が耐えうる最大の引張応力を引張強さと呼ぶ。一般には引張強さのことを機械的強度と言 う。 3)ギガパスカル 圧力の単位で、1ギガパスカル(GPa)は1万気圧に当たる。 4)ヤング率 棒を軸方向に伸ばすか縮めるかするとき、棒に垂直な断面に作用する応力と、単位長さ当たり の伸びまたは縮みとの比をいう。材料の中でダイヤモンドが一番大きなヤング率を示す。 5)ナノ引張試験装置 電子顕微鏡(TEM)の中に、原子間力顕微鏡(AFM)を組み込み、ナノスケール材料の引 張り強度等の測定を行う装置をナノ引張試験装置と言う。TEMでナノチューブなどの微細 構造を観察しながら、その強度等をその場測定できる。 6)ナノニュートン(nN) ニュートンは力の単位で、1kg の質量を持つ物体に 1m/s2の加速度を生じさせる力を言 う。ナノニュートンは 10-9ニュートンの大きさ。

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