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離島をめぐる本と新聞のこと

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Academic year: 2021

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(1)香散見草:近畿大学中央図書館報 No.43, 2012. 離島をめぐる本と新聞のこと. 中央図書館事務部 レファレンス課 係長. 谷. 口. 甲. 二. チャンスがあれば日本の端っこの島々を. 「日本の最東端はどこかという質問にすぐ. 隅々まで巡ってみたいと思う。そのような自. に正確な答えを出せる人は少ないだろう。(中. 分でもなかなか得体の知れない欲求に気づく. 略)東京からならば南東に 1900 キロの彼方、. と き が あ る。 辺 境 や 境 界、 離 島 と い う キ ー. 南鳥島。旧称をマーカス島と言って今でも気. ワードをどこかで目にしてしまうとびくりと. 象関係の人たちにはとおりがいい。知らない. 反応してしまう。それにしても今年の夏はな. 人に説明するには、新聞の天気図で一番下に. んと我が国領土の端っこの島々が世間の耳目. ある記号の場所というのがいいだろう。周囲. を集めたことであったか。. 7. 6 キロほどの小さな島で、一番近い小笠原. 海上保安庁の調査によると、日本には北海. からでも 1000 キロ以上離れている。東京都小. 道、本州、四国、九州、沖縄本島はもちろん. 笠原支庁に属するが、行政的な意味での住民. それらに北方領土など合わせた、大小 6,852. は居ない。では、無人島かというと、まった. もの島があるという。何をもって島と定義す. く人が住んでいないわけではない。気象庁と. るかはさまざま議論があるようであるが、現. 自衛隊、それにアメリカの沿岸警備隊の人々. 行 で 一 つ の 島 と し て 数 え る に は、 ① 周 囲 が. が全部で 50 人ほど駐屯している。言うまでも. 100 m 以上のもの、②何らかの形で本土とつ. なく全員が男性。この島をみたいと思った。」. ながっている島については、それが橋・防波. そうだ、この本を手にとった読者もまた同. 堤のように細長い構造物でつながっている場. じく見たい思う。中部太平洋の絶海に浮かぶ. 合は島であるとして、それより広くつながっ. 孤島に民間人がおいそれとは立ち入ることな. て本土と一体化しているようなものは除外さ. ど で き な い。 し か し こ の 特 別 な 島 に 作 家 は. れる。③埋立地も除外されるとある。これら. ちゃっかりと上陸しては珍しい見聞を自在な. の島の大半はおよそ人の住んでいない無人島. 筆 致 で あ り や か に 綴 っ て い く。12 の 掌 編 で. であって、その中で有人の島は 435 ほどであ. 語られるこの旅の本の中では作家はマーカス. る。そしてその島ごとに異なる多様な生活様. 以外にも対馬へと長駆して足を踏み入れ、さ. 式や文化や産業が息づいている。. らに長崎の五島列島や沖縄県の八重山を訪れ、 さらに国境までも越境しサハリンにまで赴い. ぜひ行きたいと思いつつ、実際には片手で. て、その土地土地での体験や目の当たりにし. 数えるばかりの手近なところしか訪ねること. たことがらを興味深く分析的な筆致で記録し. ができてはいないけれど、その代わりに島を. ていく。どうにかして自分もまた、これらの. 題材にした本を読んでは遠く海の向こうまで. 島々に足跡を残すことができないだろうかと. 出かけたつもりになる。池澤夏樹著の『南鳥. しばし空想を巡らせてしまう。. 島特別航路』は、そんな無聊をかこっては焦 がれるような旅愁に焼かれる心を、ひととき. 2011 年の 11 月にとても地味だが味わい深. は満たしてくれる胸のすくような紀行文の秀. いタブロイド紙が新しく創刊された。扱って. 作であったりする。. いる内容は離島での生活のさまざまについて。 − 24 −.

(2) 離島をめぐる本と新聞のこと(谷口). その名も離島経済新聞社発行の「季刊リトケ. 私は早く次号を読みたい。. イ」(ritokei)。こぢんまりした所帯の編集部. 週末にデジタル一眼カメラを手にして神戸. で DTP ソフトを駆使しては、安上がりにして. 港や大阪南港やら果ては舞鶴東港まで、大き. 素朴な味わいの凝ったデザインの紙面作りに. な船舶や艦艇を撮影しに行くのが習い性に. 成功し、今のところ第 3 号までなんとか継続. なってしまった。ある離島での出来事として、. してやってきているようだ。大きな会社が広. 港の沖合に大きな灰色の海上自衛隊の艦艇が. 告主になって紙面に賑やかな宣伝をうつ様子. 停泊しているのを間近に見て心躍る思いがし. もない。るるぶやじゃらんなどの旅行誌の華. て以来のことだ。永く広島に住んでいたがそ. やかさや賑わいはさらになく年 4 回の季刊で. れが海上自衛隊呉基地所属の輸送艦であった. ある。果たしてこのような新聞を購読して読. ことに後になって気がついた。船は本土と離. もうなんて潜在的な読者はそんなにいるもの. 島を結ぶ靱帯でありかけがえのない交通路だ。. だろうか、そのうち予告なく休刊になりはし. この岸からかの岸へこの身を渡してくれる器. まいかと勝手に心配してしまうぐらいの小紙. が船である。また思いがけない豊穣さを水平. なのである。. 線の向こうからもたらしてくれるのも船であ. 国境の島に住まう人々の生活の様子を写真. る。輸送艦「しもきた」は昨年の 3.11 の地震. とイラストを織り交ぜてわかりやすい言葉で. と津波が襲った被災地においては捜索救助活. 伝える。島人に伝わる祭祀の意味や生活の知. 動とともに、被災者に対し暖かいお風呂を提. 恵や島に残る事物の由来などを島の人の言葉. 供してみせることで尊い任務を果たして見せた。. で紹介する。かと思うと別の切り口で、離島. 大きな災害を間の当たりして、日本人の価. が抱える現実的な困難さを時限立法の「離島. 値観が大きく揺らいでいる。本当に豊かに生. 振興法」を解説してみせる小特集にして小気. きるとはどういうことなんだろうなぁという. 味よく読ませてくれる。さらに島をテーマに. 問いかけの先に、離島での島人の生活が半分. 扱 っ た 書 籍 の レ ビ ュ ー 記 事 や、 数 々 の 島 の. うらやましくも映る。なるほど編集者という. 音楽の CD を紹介するコラムなど、おしゃれ. 人達は時代の気分というものを鋭敏に察知し. な工夫もあって決して飽きさせることがない。. て、この新聞を創刊したんだなとコトリと腑. 土曜の午後などに、なにげなくこの紙面を手. に落ちて理解できた。. にしてぼんやりと記事を追うだけでなんとな く幸福な気分になる。あれ? ……さて、この新聞が読者層に想定してい るのは、ひょっとして他でもない自分のよう な人間ではないかという考えが頭をよぎる。 かように超マイナーな新聞を手にして、こう して知ったかぶりに紹介してみせる事実こそ それを裏付けている。チャンスがあれば日本 の端っこの島々を巡ってみたいと、そんな不 埒な空想を巡らす人間は、この新しい試みの. ・日本の島:島宇宙が育む日本文化、再発見. 新聞を継続させるぐらいには日本に少なくな. (別冊太陽),平凡社,2003.152 p.. いのかも知れない。さまざまな流通経路をく. 《本館所蔵 291 .09 //N71 》. ぐって届けられるべきものが正しい届け先に. ・池澤夏樹.南鳥島特別航路.新潮文庫,1991.. 届くべくして届いているのだから、この先し. p.163.《本館所蔵 新潮文庫い 41 − 2 》. ばらくはこの新聞も安泰なのであろう。事実、. ・リトケイ:離島経済新聞(http://ritokei.com/). − 25 −.

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