離島をめぐる本と新聞のこと
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(2) 離島をめぐる本と新聞のこと(谷口). その名も離島経済新聞社発行の「季刊リトケ. 私は早く次号を読みたい。. イ」(ritokei)。こぢんまりした所帯の編集部. 週末にデジタル一眼カメラを手にして神戸. で DTP ソフトを駆使しては、安上がりにして. 港や大阪南港やら果ては舞鶴東港まで、大き. 素朴な味わいの凝ったデザインの紙面作りに. な船舶や艦艇を撮影しに行くのが習い性に. 成功し、今のところ第 3 号までなんとか継続. なってしまった。ある離島での出来事として、. してやってきているようだ。大きな会社が広. 港の沖合に大きな灰色の海上自衛隊の艦艇が. 告主になって紙面に賑やかな宣伝をうつ様子. 停泊しているのを間近に見て心躍る思いがし. もない。るるぶやじゃらんなどの旅行誌の華. て以来のことだ。永く広島に住んでいたがそ. やかさや賑わいはさらになく年 4 回の季刊で. れが海上自衛隊呉基地所属の輸送艦であった. ある。果たしてこのような新聞を購読して読. ことに後になって気がついた。船は本土と離. もうなんて潜在的な読者はそんなにいるもの. 島を結ぶ靱帯でありかけがえのない交通路だ。. だろうか、そのうち予告なく休刊になりはし. この岸からかの岸へこの身を渡してくれる器. まいかと勝手に心配してしまうぐらいの小紙. が船である。また思いがけない豊穣さを水平. なのである。. 線の向こうからもたらしてくれるのも船であ. 国境の島に住まう人々の生活の様子を写真. る。輸送艦「しもきた」は昨年の 3.11 の地震. とイラストを織り交ぜてわかりやすい言葉で. と津波が襲った被災地においては捜索救助活. 伝える。島人に伝わる祭祀の意味や生活の知. 動とともに、被災者に対し暖かいお風呂を提. 恵や島に残る事物の由来などを島の人の言葉. 供してみせることで尊い任務を果たして見せた。. で紹介する。かと思うと別の切り口で、離島. 大きな災害を間の当たりして、日本人の価. が抱える現実的な困難さを時限立法の「離島. 値観が大きく揺らいでいる。本当に豊かに生. 振興法」を解説してみせる小特集にして小気. きるとはどういうことなんだろうなぁという. 味よく読ませてくれる。さらに島をテーマに. 問いかけの先に、離島での島人の生活が半分. 扱 っ た 書 籍 の レ ビ ュ ー 記 事 や、 数 々 の 島 の. うらやましくも映る。なるほど編集者という. 音楽の CD を紹介するコラムなど、おしゃれ. 人達は時代の気分というものを鋭敏に察知し. な工夫もあって決して飽きさせることがない。. て、この新聞を創刊したんだなとコトリと腑. 土曜の午後などに、なにげなくこの紙面を手. に落ちて理解できた。. にしてぼんやりと記事を追うだけでなんとな く幸福な気分になる。あれ? ……さて、この新聞が読者層に想定してい るのは、ひょっとして他でもない自分のよう な人間ではないかという考えが頭をよぎる。 かように超マイナーな新聞を手にして、こう して知ったかぶりに紹介してみせる事実こそ それを裏付けている。チャンスがあれば日本 の端っこの島々を巡ってみたいと、そんな不 埒な空想を巡らす人間は、この新しい試みの. ・日本の島:島宇宙が育む日本文化、再発見. 新聞を継続させるぐらいには日本に少なくな. (別冊太陽),平凡社,2003.152 p.. いのかも知れない。さまざまな流通経路をく. 《本館所蔵 291 .09 //N71 》. ぐって届けられるべきものが正しい届け先に. ・池澤夏樹.南鳥島特別航路.新潮文庫,1991.. 届くべくして届いているのだから、この先し. p.163.《本館所蔵 新潮文庫い 41 − 2 》. ばらくはこの新聞も安泰なのであろう。事実、. ・リトケイ:離島経済新聞(http://ritokei.com/). − 25 −.
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