氏
学位論文審査結果の報告書
生年月日 名本籍(国籍)
学位の種類学位記番号
判立授与の条件
(博士の学位)(西1φ・平成 50年10月30日
加茂修士(農学
第 240 号
学位規程第5条該当
博オ峨毎道
論文題目 大豆サポニンの摂取量吸収性機能性に弓全心乞言兪 j文:受:王里日
判立論文審査終了日
審査委員
平成30年1
平成31年 2月 2月 (主査) する研究 4日 4日 (副主査) (副主査) 森山達哉 飯田彰 米谷俊笥1
ξ豆サハニンの_取、吸収性、ル性に関する研究 第1章:大豆食品中の大豆サポニン含有量および日本人の推定摂取量に関する調査 第1章では、大豆サポニンの含量と摂取量を調査した。大豆サポニンは様々な健康機能を促進す ると報告されているものの、大豆製品中のソヤサポニンおよびソヤサポゲノーノレ含量および1日あ たりの摂取量は、完全に解明されていない。我々は、グループAおよびBのソヤサポニンおよびソヤ サポゲノールの含量を評価するために、タンデム質量分析計と組み合わせた高速液体クロマトグラ フィー(HPLC-MS/MS)による分析方法を開発した。ソヤサポニン含量は、前処理を行い、ソヤサポ ニンをソヤサポゲノールに変換したうえで測定した。醤油中の含量が低い(2-7 血Ovg)ことを除 いて、大豆食品中のソヤサポニン含量は200-1800 血Ovgであった。総ソヤサポニンに対するソヤ サポゲノールの比率は、長期熟成を要する味噌で30-50%であった。検出されたソヤサポゲノール の大部分は、ソヤサポゲノーノレAではなくソヤサポゲノーノレBであった。グループBソヤサポニンと 比較して、グループAソヤサポニンは糖を除去するために多くの工程が必要であるためと推測され た。日本人によるソヤサポニンおよびソヤサポゲノールの1日あたりの摂取量を算出し、それぞれ 50.3および0.59μm01であった。総ソヤサポニンに対するソヤサポゲノーノレ含量およびソヤサポゲ ノール比率は、長期間熟成された味噌を除いて、ほとんどの大豆製品においてかなり低かった。' ヤサポニンとソヤサポゲノールの主な供給源は、それぞれ豆腐と味噌であった。 第2章:大豆サポニンの吸収性比較に関する研究 第2章では、大豆サポニンの吸収性を評価した。ソヤサポニンとソヤサポゲノールのバイオアベ イラビリティ(生物学的利用能)と吸収性は依然として不明であるため、本研究の目的は、血柴中 のソヤサポニンおよびソヤサポゲーノレの濃度および吸収特徴を評価することであった。 SP玲guo-Dawleyラットを3群(n=6)に分け、各群にソヤサポニン粉末もしくはソヤサポゲノール粉末を単 回で経口投与した。頸静脈から採血し、血柴中のソヤサポゲノール濃度を測定した。また、caco-2細胞単層吸収試験を行い、ソヤサポゲノールAおよひ酒 a0μ即VD を即ica1側に加え、即ica1お
よびbasolatera1側のソヤサポゲノール濃度を測定し、透過係数を計算した。経口投与試験ではソ ヤサポゲノールBの吸収はグループBソヤサポニンの吸収よりも良好であった。ソヤサポゲノールB を投与したラットの血柴中のソヤサポゲノールB濃度はピークに達するのに要する時間は1-3時間で あったが、グループBソヤサポニンを投与したラットでは8時間であった。血粲中のソヤサポゲノー ノレAとソヤサポゲノーノレBとの比は、投与された試験サンプノレの比よりも低かった。 caco-2ヒト大 腸癌単層糸朋包モデルにおけるソヤサポゲノールBの即ical-basolatera1側の吸収は(見掛けの透過 係数[papp]、 5.5×10-6 Cm/sec)ソヤサポゲノーノレA (papp、 1.6× 10-6 Cm/sec)よりも高かっ た。これらの結果は、ソヤサポゲノールの生物学的利用能が、対応するソヤサポニンの生物学的利 用能よりも良好であり、グループBソヤサポニンの生物学的利用能が、グループAソヤサポニンの生 物学的利用能よりも優れていることを示唆している。 釜△、 内 J^ の ヒ之 44
-3:豆サハニンの能性に関る研 物を用いた 第3章では、動物モデルを用いて大豆サポニンの機能を解析した。大豆に含まれるグループBソヤ サポニンは様々な健康促進効果を有するが、抗肥満効果を有するかどうかは不明である。この研究 の目的は、高脂肪食餌を与えたマウスにおけるグループちソヤサポニンおよびソヤサポゲノールBの 抗肥満効果を評価することである。 6週齢のC57/BL6マウスを3群に分け 1ω、 35日間高脂肪 食を経口投与した。3群のうち2群はグループBソヤサポニンまたはソヤサポゲノールBを投与され た。3群間で摂餌量に有意差はなかったが、ソヤサポゲノールB群では対照群に比ベて剖検時の脂肪 組織の重量比が30%以上低く、X線コンピュータ断層撮影では2群間の筋肉重量に有意差は認められ なかった。また、ソヤサポゲノールB群では、全身重量に対する筋肉の割合が対照群よりも高かっ た。これらの結果は、ソヤサポゲノールBがグループBソヤサポニンよりも強力な抗肥満効果を有 し、筋肉重量を損失せずに、全身重量に対する筋肉の割合を増加させることを示唆している。我々 の知る限り、これは動物モデルを用いたinviv0 におけるソヤサポゲノールBの抗肥満効果を示す 最初の報告である。 第4章大豆サポニンの機能性に関する研究(培養細胞を用いた解析) 第4章では、細胞を用いて大豆サポニンの機能を解析した。ソヤサポゲノールは配糖体よりも強 力な機能を発揮することが示唆されている。この研究では、マウス3T3-L1脂肪細胞を用いて、培養 した脂肪細胞機能に対するソヤサポゲノールAおよひ沿の効果を調ベた。脂肪細胞ヘの分化のため に、3T3-L絲田胞をインスリン、デキサメタゾンおよび3ーイソブチノレートメチノレキサンチンで処理 し、次いで、ソヤサポゲノールAまたはB (6.25または12.5μM)の存在下で培養した。培地は2日ご とに回収し、交換した。 10日間培養した後、細胞を回収し、細胞のトリグリセライド含有量を測 定した。ソヤサポゲノールB処理細胞のトリグリセライド含量はビークル処理細胞のそれよりも有 意に低かった。ソヤサポゲノール処理ホ畍包培地中のグリセロールおよび遊離脂肪酸濃度は、ビーク ノレ処理細胞培地中よりも高かった。しかし、ソヤサポゲノーノレA、ソヤサポゲノールBおよびビーク ル処理細胞の間に脂肪トリグリセライドリパーゼ(ATGDのレベルに差はなかった。ソヤサポゲノー ル処理細胞培地の分泌アディポネクチンおよびレジスチン量はビークル処理細胞のものと比較して 異なった。特に、ソヤサポゲノールB処理細胞培地における分泌レジスチン量は、ビークル処理細 胞のものと比較して明らかに低下した。これらの結果は、ソヤサポゲノールBがレジスチン分泌の 減少を伴うトリグリセライド分解を促進することによって細胞中のトリグリセライド量を低下さ せ、脂肪細胞に対する抗肥満および抗糖尿効果を発揮することを示唆している。
豆の能性'分は脂質代.すをはじめ、様々な健恥をイ足することが報告されている。 機能性成分として、大豆タンパク質、βーコングリシニン、イソフラボン、大豆ペプチド、レクチ ン、トリプシンインヒビター、レシチン、トコフェローノレ、大豆サポニンなど多くの機能性成分が 知られてぃる。中でも、大豆サポニンにはコレステローノレ低下、血糖値の低下、抗腎疾患の進行抑 制および抗炎症、レニン活性阻害、肝保護といった報告がなされている。 大豆サポニンはオレアナン型のトリテルペノイド配糖体の構造をもち、主にはソヤサポゲノール A (アグリコン)を基本骨格にもつグループAソヤサポニン価Ξ糖体)とソヤサポゲノールB(アグ リコン)を基本骨格にもつグループBソヤサポニン(配糖体)とに分類される。 近年、ソヤサポニンの中でもグループBソヤサポニン特異的に効能を示す報告例もあり、ソヤサ ポニンのグループによる効能の強さの違いが示唆されている。その一方、大豆サポニンを構成する 化合物の多さ、および構造の複雑さが大豆サポニンの簡便な定量を妨げていた点および、高感度な 分析方法が確立されていない点も大豆サポニンの研究を困難にしていた。そとで、著者は大豆食品 および血奬中に含まれる大豆サポニン分析方法を確立し、大豆サポニンの摂取量、吸収性、機能性 の研究に取り組んだ。 第1章において、著者は大豆食品に含まれる大豆サポニンの配糖体およびアグリコン量を測定す るとともに、1日あたりの摂取量を調査した。これまでにも大豆食品中のグループBソヤサポニン含 量が報告されていたが、グループBとともに主要な化合物であるグループAの含量が測定されていな い点および、発酵大豆食品中で生成することが予想されるソヤサポゲノール(アグリコン)の含量 も報告がなされていなかった。そこで、著者はタンデム質量分析計を組み合わせた高速液体クロマ トグラフィー(1{PLC-MS/MS)による分析方法を開発し、各グループの含量を測定することに成功し た。大豆食品中のソヤサポニンは醤油中の含量が低いことを除いて、200-1800 血ovg含まれてい た。また、総ソヤサポニンに対するソヤサポゲノールの比率は長期熟成を要する味噌において30-50%であり、検出されたソヤサポゲノールの大部分は、ソヤサポゲノールAではなくソヤサポゲ ノーノレBであった。グノレープBソヤサポニンと比較して、グノレープAソヤサポニンは糖を除去するた めに多くの工程が必要であるためと推測していた。一部の発酵食品および大豆加工食品において、 配糖体のみならず、アグリコンも含まれていることを示し、大豆サポニンの配糖体とアグリコンの 両者を大豆食品から摂取していることを明らかにした。国民健康・栄養調査の結果に基づき、1日 あたりの大豆サポニンの推定摂取量を算出するとともに、大豆サポニンの供給源を調査した。日本 人によるソヤサポニンおよびソヤサポゲノールの1日あたりの摂取量を算出したところ、それぞれ 50.3および0.59μm01であった。総ソヤサポニンに対するソヤサポゲノーノレ比率は、長期間熟成さ れた味噌を除いて、ほとんどの大豆製品においてかなり低く、ソヤサポニンとソヤサポゲノールの 主な供給源は、それぞれ豆腐と味噌であることを見出した。 第2章において、著者は大豆サポニンの配糖体とアグリコンおよび、グループによるバイオアベ イラビリティ(生物学的利用盲Ξ)の違いについて検証している。大豆サポニンの生物学的利用能は 明らかにされていないため、著者は3群に分けたSprague-Dawloyラットにソヤサポニン粉末もしく はソヤサポゲノール粉末を単回で経口投与し、血中動態を調査した。ソヤサポゲノールBの吸収は グループBソヤサポニンの吸収よりも良好であり、アグリコンの生物学的利用能が高いことを明ら かにした。また、ソヤサポゲノールBを投与したラットにおいて、血柴中のソヤサポゲノールB濃度 がピークに達するのに要する時間は1-3時間であったが、グループBソヤサポニンを投与したラッ では8時間要しており、糖付加部分を除去し、アグリコンとして吸収されるために多くの時間を要 していることを推察していた。さらに、グループAおよぴ、グループBにおいて生物学的利用能を比 較したときに、グループBのほうが高いことを見出し、アグリコンの構造自体が吸収に影響を与え ている可能性を示唆していた。そこで、 caco-2ヒト結腸ガンネ醐包を用いた血ν北t0吸収モデルにお いて、等用量のソヤサポゲノールAおよびBを添加し、透過係数を算出した。ソヤサポゲノールAよ りもソヤサポゲノールBの透過性が高いことを明らかにし、ラットにおける知見を支持する結果を 得た。 文 査 イ ノ、 の E二ι 46
-は動モデノレを用いた豆サホニンの Rヒ孕析をイテつている。グノレ Bソ 3 において、 ヤサポニンは様々な健康促進効果を有するが、抗肥満効果を有しているかどうかは不明であったた 35日間 め、マウスによる抗肥満試験を実施した。 6週齢のC57/BL6マウスを3群に分け 高脂肪食を経口投与し、第2章において生物学的利用能が高いことが示されているグループBソヤサ ポニン(配糖体)およびソヤサポゲノールB(アグリコン)を添力Uした高脂肪食餌摂取群を設定し た。3群間で摂餌量に有意差はなかったが、ソヤサポゲノールB群では対照群に比ベて剖検時の脂肪 組織の重量比が30%以上低く、X線コンピュータ断層撮影では2群間の筋肉重量に有意差は認められ なかった。また、ソヤサポゲノールB群では、全身重量に対する筋肉の割合が対照群よりも高いこ とを明らかにした。グループB大豆サポニンの中でも、特にソヤサポゲノールBは強力な抗肥満効果 を有しっつ、筋肉量を損失せずに、全身重量に対する筋肉の割合を増加させることを示唆してお リ、動物モデルを用いた血地'卯におけるソヤサポゲノールBの抗肥満効果を示すことに初めて成 功した。 第4章において、著者は細胞を用いた大豆サポニンの機能解析を行っている。第3章において動物 モデルを用いて観察された抗肥満作用に関し、培養細胞を用いて解析した。この研究では、マウス 3T3-L1脂肪細胞を用いて、ソヤサポゲノールAおよびおの効果を調ベた。分化後の脂肪細胞の培地を 大豆サポニンのアグリコンであるソヤサポゲノールAもしくはソヤサポゲノールBを含む培地に置き 換えて培養した。培地中のグリセロール量、遊雛脂肪酸量はビークル添加群と比較して、ソヤサポ ゲノールA添加群およひ沿添加群において増加し、特にソヤサポゲノールBの添加によって増加が強 まっていることを見出した。このとき、脂質代謝に関係している脂肪酸合成酵素、ペルオキシソー ム増殖活性化因子γといった酵素、転写因子の発現量に関して、有意差は認められなかった。 方、分泌アディポネクチンおよびレジスチン量はビークル処理培地と比較して、ソヤサポゲノール B処理培地中では低下していることを明らかにした。この結果はソヤサポゲノールBがレジスチン分 泌の減少を伴った、脂肪分解を促進することにより、細胞内のトリグリセライド量を低下させ、抗 肥満効果を発揮することを示唆していた。 本研究において、著者は大豆食品および血柴中に含まれる大豆サポニン分析方法を確立するとと もに、大豆食品中の大豆サポニン含量、1日あたりの摂取量を明らかにした。また、大豆サポニン の配糖体、アグリコンおよびグループによる吸収性の違いを初めて見出した。これらの知見を基に 動物モデル及び培養細胞を用いて、大豆サポニンの中でも特にソヤサポゲノールBが強い抗肥満効 果を有し、そのメカニズムを示すことに初めて成功した。 よって、本論文は博士(農学)の学位論文として価値あるものと認める。なお、審査にあたって は、論文に関する専攻内審査および公聴会など所定の手続きを経たうえ、平成31年2月4日、農学研 究科教授会において、論文の価値ならびに博士の学位を授与される学力が十分であると認められ た。