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第19回淑徳大学社会福祉研究所企画 : 老前整理で暮らしを軽く、心も軽く

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Academic year: 2021

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[講演録]

第19回淑徳大学社会福祉研究所企画

老前整理で暮らしを軽く、心も軽く

講師:坂 岡 洋 子

※  本日はお忙しい中、ご参加いただきました。お天気が心配でしたが、なんとか雨も降らずに ほっとしました。さて今日は老前整理についてお話しさせていただきます。  はじめに簡単に自己紹介をさせていただきます。  私は元々インテリアコーディネーターをしておりました。働き始めたころはインテリアコー ディネーターといっても知らない人の方が多く、現場の大工さんには「インテリア工事姉ちゃ ん」と呼ばれながら、ヘルメットをかぶって現場に通ってました。  こうして住宅の設計やコーディネート、その後、大手家電メーカーのホットカーペットの企 画やデザインをしました。そのうちに、高齢社会を迎える世の中の流れで福祉住環境、つまり バリアフリーの講座で講師をすることになりました。  福祉住環境というのは高齢社会へ向けてのバリアフリーを学ぶ講座と言えばわかりやすいで しょうか。ここに参加されるのは、介護や医療はわかっているけれど、住宅の構造や建築の知 識がないという福祉関係のケアマネージャーやヘルパーです。他には、資格を取って仕事に就 きたいという人。ここまではいずれにしろ、仕事がらみの参加です。驚いたのは、介護保険で 住宅改修をしたけれど、背が低いうえに腰の曲がったおばあちゃんには手すりの位置が高すぎ て使えない。なぜそうなったか納得がいかないので、自分で学びに来たという介護をしている家 族の人たちでした。大体一講座にこの動機を持った方が二、三人おられたと思います。この話 を聞いて、どのような問題があるのか、現場を経験しなければこれからのさまざまな住宅問題を 解決できないと思いました。しかし突然、ごめんくださいと訪問しても相手にしてもらえません。  そこで、ケアマネジャーの資格を取り、在宅介護の現場で働きました。 ※ 株式会社くらしかる代表取締役   老前整理コンサルタント  この原稿は、平成27年7月4日に千葉市文化センター・アートホールで開催された第19回淑徳大学社 会福祉研究所企画「老前整理で暮らしを軽く、心も軽く」にて行われた講演の内容を講演者がまとめた ものである。

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◆ものが多すぎる!  ケアマネとして働き始めて気が付いたことは、家の中にものが多すぎるということでした。 はじめにお話ししたようにバリアフリーの問題を現場で確認するつもりが、それ以前のものが 邪魔になって手すりが使えない。廊下に段ボールの箱が積み上げられて車いすが通れない。バ リアフリー以前に、ものがバリアーになっているということがわかりました。しかしこの問題 は介護保険では解決できません。それではどうすればよいかと悩みました。もちろん介護を受 けている高齢者は体調が悪いので介護を受けているのですから無理なのはお分かりでしょう。 では介護をしている家族はというと、これがもう大変です。多くが老老介護で、疲れ切ってい ます。介護をしている方が先に倒れるのではないかという状態で、とても「片付ける」エネル ギーはありません。 ◆そこで、老前整理  このように介護の現場での「片付け」が難しいことを実感し、ではどうすればよいかと考え ました。現実問題として、介護をする段階になってからでは遅く、もっと早くにしたほうがよ い。つまり「老いる前」にです。このような介護の現場を見て、私は老前整理が必要だと思い ました。  なぜなら膨大なものを片付けるには「気力・体力・判断力」の3つの力がなければ実行でき ません。具体的にお話ししますと「気力」はエネルギーです。ものの要・不要を決める、つ まり決断するには気力、つまりエネルギーが必要です。次の「体力」はお分かりだと思いま すが、体調が悪ければものを動かしたり、片付けはできません。3つ目の「判断力」は認知症 云々ではなく、これから先の暮らしの計画を立てられるか。客観的に考えられるかということ です。この3つの力がないと老前整理はできないのです。 ◆老前整理とは  改めて定義しますと、「人生の節目を迎えたときにものの整理と共に頭の整理をすること」 です。ものの整理にどうして頭の整理が必要なのかと疑問に思われる人もあるでしょう。こ れが大いに必要です。つまりこれからの生き方をどうするかがはっきりしないと、そのものが 必要かどうかが、わからないからです。このように、今までとこれから、どういう暮らしをす るのか。すると住まいの問題も出てくるでしょう。子どもも独立して夫婦二人には広すぎるか ら、駅に近いコンパクトなマンションに移ろうとか。いやいやこの家が気に入っているから、 リフォームやメンテナンスをして住み続けようなど次の暮らしも見えてくるのではないでしょ うか。もちろんこれにはお金の問題も絡んできます。  これで頭の整理が必要なことがお分かりいただけたでしょうか。

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◆老前整理、生前整理、遺品整理と、どう違うの?  よくあるご質問が、生前整理や遺品整理と、どう違うの? です。今まで一般的に、生前整 理とは土地や家屋敷などを子どもや孫にどのような形で残すかなどトラブルがなく、子どもた ちに負担がかからないようにするための配慮でもあります。この生前整理には、残念ながら納 戸や押し入れのものまで含まれないことがほとんどです。  遺品整理とは、ご本人が亡くなった後、残された家族の問題です。弔いの後に故人の遺品を 整理することですが、これは肉体的にも精神的にも残された家族にとっては大変につらいもの です。  このように早めにものの整理をすることは生前整理でも遺品整理でもない。ふさわしい言葉 がないので、私が「老前整理」という言葉をつくりました。 ◆老前整理のメリット  まずどんなメリットがあるか具体的にご紹介しましょう。 1.そうじが楽になる 2.ものを探す時間が減る 3.「片付けないといけない」というプレッシャーからの解放 4.コミュニケーションが増える 5.消費行動が変わる 6.安全と災害への備え 1.掃除がしやすくなる  たとえば床にあふれていたものがなくなれば、掃除機をかけるのもスイスイですし、簡単だ から時間もかからない。この時間と掃除の手間はバカになりません。また掃除がしやすくな るばかりではなく、床にものがないということはものにつまずいて転ぶ、つまり転倒の危険も 減ります。「なんだそんなことか」と思われるでしょうか。転んで手をついて手首を骨折する、 大腿骨を骨折するなど、床にものがあると大変に危険です。 2.探しものが減って、使いたいものがすぐ使えるようになる  毎回「ものを探すことはありませんか」と聞くと。すかさず「ある、ある」という声がたく さん返ってきます。皆さんはどうですか? これはものが多すぎて管理ができない状態になっ ているということです。これを解決するには、ものを減らして整理する、わかりやすく並べて しまうしかありません。ものを減らして、どこに何を入れるかを決めれば、探しものも減るで しょう。この逆は、使いたいときに使いたいものがどこにあるのかがわからない、出かけると きに必要なものが見つからない。これってすごいストレスだと思いませんか。下手をすると、

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新しいものを買わなければならないかもしれない。これこそ「もったいない」ですね。 3.「片付けなくてはいけない」というプレッシャーが解消される  この片付けないといけないというプレッシャーについて皆さんにお聞きします。  「片付けないといけないと思っておられる人は手を挙げてください」  多いですね。興味のある人が来ているのだから、手を挙げるのは当たり前。だからわざわざ 交通費と時間を使って参加しているのだろうと思われるかもしれません。しかし、会場に来ら れなくても、多くの女性は「片付けなくては」というプレッシャーを常日頃から感じていま す。  「片付けなくては」と思い出してから何年くらいたっていますかと聞くと、5年、10年はざ らです。あら私と同じだとホッとされた方も多いかもしれません。また5年や10年もというの は、今何とかしなければいけないという緊急課題ではないからです。命に係わるとかそういう ことでもありません。そこで「いつか」や「そのうち」で日がたってしまうのです。しかし頭 の隅にはいつも「何とかしなければ」や「片づけないといけない」が居座っているのです。こ のプレッシャー、つまり肩の荷がなくなれば、どれほど心が軽くなるでしょう。 4.コミュニケーション  老前整理の4番目のメリットはコミュニケーションです。なぜと思われるでしょうね。   長年連れ添ったご夫婦ほど会話が少ない傾向にあります。なぜならば「あれ」や「それ」で 話が通じてしまうからです。思い当たりませんか。言い換えれば話す話題がないということ。 そして老前整理の予想外に大きなメリットがある事に気が付きました。それまでは会話のほと んどなかった夫婦が「もの」を介すことで会話が成立し、お互いの考えを知ることができるの です。  例えば、物置の3年使っていない石油ストーブをどうするか。もう使わないからこの機会に 処分しましょう。いやいや、地震や災害で電気が止まった時に必要になるかもしれないから、 これだけは置いておこう。どうですか二人の会話。これからの暮らしに必要なもの、不要なも のを話し合いながら決めるということは、これから夫婦二人がどのように暮らし、人生を歩み たいのかを決めることでもあります。 5.消費行動が変わる  これも予想外の反応でしたが、老前整理を実行した人で「新しいものを買うとき、本当にこ れは今必要かと考えるようになった」という人がかなりおられます。これはものを処分するの に心が痛んだ、つらい思いをされたからでしょう。ものが増えるということはそれぞれの消費 行動ともつながっています。

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6.安全と災害への備え  床のものが減れば、転倒する危険が少しでも減るかもしれない。また災害への備えにもつな がります。後でお話ししますが天袋など高い所のものを取るのも、難しくなります。 ◆今の状態は?  今の暮らしで不満、不便、不自由なことはなんでしょう。問題点を考え、挙げてみましょ う。問題が明確にならなければ解決策も見つかりません。 ◆片付かないのは?  片付かない原因を挙げてみました。当てはまるものはいくつありますか。 1.どこかで現状のままで構わないと思っている 2.片付け方がわからない 3.片付けの本を読んでも、行動がともなわない 4.体調不良である 5.まだ使えるから捨てるのはもったいない 6.捨てると後悔しそうなので、とりあえずとっておく 7.忙しくて時間がないから、決断を先延ばしにしている 8.めんどうくさい 9.自分には無理だと思っている 10.その他   ◆いらないものがなくなったら?  では次に、いらないものがなくなったらどれだけスッキリするか、頭の中でイメージしてみ てください。 ◆頭の整理  さて、はじめに老前整理には頭の整理が必要だと申しました。そこでお聞きします。  「今、一番大切なものはなんですか」  「健康」や「家族」、お金、友達などの答えが返ってきます。なぜこのような質問をするかと いえば、かけがいのないもの、失っては困るものは何かということから考えていただきたいか らです。そうすると、押し入れの段ボールの中のガラクタが、重要なのか、そうでないのかに 気づいていただけるようです。本当に大切なものを守るためには、余計なものを手放していか なければならないのです。またここで家族や友人が出てきますが、こうした人間関係もこれか ら考えていただきたいことです。つまり誰とどのように暮らすか、付き合っていくかですね。

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困ったときに手を貸してくれる人は誰か、逆に助けてあげたいと思う人は誰なのか。こうした ことを考えると、これからのお付き合いも変わる可能性があります。  このようにセミナーでは「何を捨てるか」でなく、「何を捨てないか」かけがえのないもの は何かという問いかけから始めているのです。 ◆ラクダに乗って砂漠を旅する  ラクダに乗って砂漠を旅するとしたら何を持って行きますか?  「水」……「食糧」……「防寒具」  皆さんどうでしょう。砂漠をラクダで旅するのにブランドのバッグを3つも4つも、すごい ドレスを何着も、という答えはなかったですね。つまりこれはいざという時に何を持っていく かということにつながります。厳しい環境で生きていくにはまず何が必要かです。これは災害 等で避難するときには何を持って行くか、と同じです。何かあった時には混乱して、考えられ ませんので、何もない時にこそ、いざという時に何を持って行くかを考えておいてください。 ◆誰と行きたいですか  「ラクダに乗って砂漠を旅するとしたら誰と行きたいですか」これが次の質問です。つまり 気候や環境が厳しく、これといって観るものもないところに、いっしょに行こうと思う人は誰 でしょうという問いなのです。どうでしょうか。信頼関係があり、会話が出来る相手でないと 何もない砂漠ではつらいですね。  これはこれからの人間関係を考えることになります。 ◆七夕の短冊にどんな願いを書きますか  次の質問です。普段は「もしも3つの願いがかなうなら何を望みますか」と聞くのですが、 今日は七夕も近いですし、短冊に何を書きますかという質問です。  どうですか。こうして自分の願いを考えてみると、普段気が付かないことがあるかもしれま せん。 ◆次であてはまるものはいくつありますか  さて次の質問です。いくつあてはまるものがあるか指を折って数えてみてください。 ・おまけに弱い ・安いとつい買ってしまう ・何でも多めに買っておく ・紙袋は全てとっておく ・必要かどうかより「欲しい」ので買う

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・もらえるものは何でももらう  6つ全部に当てはまるという人のお宅には……物が多いですね。 ものはひとりで歩いて家の中に入ってくるわけではありません。買ったり、贈答品としていた だいたりの行動の結果として増えていきます。このことも一度考えてみてください。 ◆計画を立てる  では実行するためにそろそろ具体的な問題を考えていきましょう。まず計画を立てます。片 づけたいもの、場所、どちらでもよいので3つ挙げてレジュメに記入してください。ここで 肝心なのは、「いつまでに」という期限を決めることです。この期限がなければ「いつか」や 「そのうち」で日が経ってしまいます。また問題が具体的にならなければ解決はできませんね。 無理をせず、ゆるい期限で構いません。大まかな予定を書いてください。 ◆整理にかかる前に 基準を決める  何を片付けるかとその予定が決まれば次の段階です。基準を決めます。なぜ基準を決めるか と言えば、これがないと仕分けができないからです。  よくあるパターンです。朝から今日は片づけるぞと張り切って押入れの中のものを全部出し ます。そして1つ1つの箱を見ていきます。大きな箱は商店街の福引の景品で当たった毛布。 これは○○さんにもらった祝い返し、これは○○ちゃんの結婚式の引き出物。こちらは……。  こうして気が付けば日も暮れて「晩御飯の支度をしなければ!」と慌てて出した物を元に戻 します。  こんな経験はありませんか。これでは整理にはなっていませんね。出したものを元に戻した だけ。何があるか見ただけです。どうしてこうなるかといえば、仕分けのルールが決まってい ないからです。そこでルールを次のように決めてください。 ・役に立っているものは捨てない。当たり前のことですが今、着ている洋服、使っている日 用品は大切にしましょう。 ・思い入れのあるものは捨てない。役には立たないけれど、思い入れのあるもの、例えれば アルバムのようなものは捨てられませんね。 ・役にも立たず、思い入れもないものは処分。 ・( )年以上着ていない洋服は処分 ・( )年以上使っていない日用品は処分  この( )の中にはご自分で年数を入れてください。何年でも結構です。洋服に関してはも のすごく個人差があります。3年たった洋服は処分するという人と、嫁に来てから何十年も処 分していないという人もいます。ですからここは自分で決めてください。日用品も同様です。  こうして年数を決め、それよりも古く、役に立たず、思い入れのないものは処分と決めま

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す。また一つひとつのものが何年前のものかを確かめていくと、ついこの前と思っていたのに 20年前だった30年前だったということもあります。それだけの長い間顧みられずに眠っていた ものを、これから使うかどうかです。また今まで眠らせていたけれど使える物は使おうと引っ 張り出すのも意味のあることでしょう。 ◆老前整理の鉄則  老前整理は鉄則が5つあります。 1.一度に片付けようとしない。 2.最初から完璧を目指さない。 3.家族のものには手を出さない。 4.片付け前に収納用具を購入しない。 5.「使える」と「使う」は違う。  なぜこの5つを挙げるかについて説明していきましょう。 1.一度に片付けようとしない。  一度に片付けようとしないことが大事なのは、簡単に言えば一度に片付けると疲れるからで す。張り切って片付けて、翌日寝込んでしまっては元も子もありません。また腰を痛めたりす ると取り返しがつきません。また一度に何もかもしようとすると、肉体だけでなく精神的にも 負担が大きいのです。始めに申しあげたように、ものの整理は頭の整理、心の整理でもあり時 間がかかります。だから一度に片付けようとしないのです。 2.最初から完璧を目指さない。  最初から完璧であることを目指さないのは、はじめから完璧を目指すと前に進めなくなるか らです。老前整理を完璧にやろうとせず、ほどほどにすることがお勧めです。とにかく無理を しない。少しずつ続けることが目標です。 3.家族のものには手を出さない。  家族のものには手を出さない。これはトラブルのもとになることはあっても、よいことは一 つもないからです。ひどいときには離婚にまで至ることがあります。  家の中のものに対する男女の認識の違いもあります。多くの女性は家事をしますので、自分 の家の中の押入れや納戸などに、どれくらいたくさんのものがあるかを知っています。しかし 長年仕事に追われ、家の中のことにかかわることのなかった男性はこのことを知りません。ま ずこの知識において男女差があります。これは問題意識の差ともいえるでしょう。このギャッ プがすれ違いやトラブルのもとになるのです。

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 またものに対する価値観は夫婦、親子、兄弟でもみんな違うのです。まずは家族のものより も自分のものを片付けましょう。それが先決です。 4.片付け前に収納用具を購入しない。  「さあ、片付けよう」と思い立った人は、張り切って通信販売やホームセンターのチラシで 収納用具を注文されることがよくありますね。でも、片付ける前から収納用具を購入してはい けません。もちろん、それ自体が悪いというわけではありません。片付ける前、ものを減らす 前にものを入れる器を買ってしまうと、本来捨てるべきものを収納して「さあ片付いたぞ」と 安心してしまうからです。目に見えないところに片付けただけであって、これでは整理には なっていません。  収納用具の購入を繰り返しても、ものはどんどん増えるばかりです。ものが増えるとどこに 何があるのか管理もできず、使いたいときに使えません。必要なものが見つからないから、新 しいものをまた買うという悪循環に陥ってしまいます。広いお宅ほどものを置くスペースがあ るので、また新しい収納用具を買って、納戸にしまい込むということが多いようです。  もちろん収納用具を買うなということではなく、ものを減らしたうえで「○○を入れたいか らこのスペースに置ける大きさの収納用具を買おう」など、目的に合った収納用具を購入して いただきたいのです。その場の間に合わせではなく、目的と置く場所やモノの寸法を測り、適 切な収納用具を選んでいただきたいものです。 5.「使える」と「使う」は違う。  「使える」と「使う」はどう違うのでしょうか。家の中のほとんどのものは「まだ使える」 という理由で保管されています。本当に使うのか、着るのかで判断してください ◆賞味期限  食べ物なら腐ったりカビが生えたら処分します。つまり賞味期限、消費期限がはっきりして いるので判断ができます。ところが洋服や日用品はまだ着られる、「まだ使える」でタンスや 押入れの奥に眠っているのです。 ◆高かった、まだあまり着ていない  洋服を手放せない理由の一つに「もったいない」や「高かった」という気持ちがあります。 でも洋服がたくさんあればおしゃれになれるとは限らない。もったいない、まだ着られると 洋服を眠らせておいても、実際のところそのほとんどはもう着ない、着られないものです。高 かった洋服を、まだ二回しか着ていないからとタンスに眠らせておいても、それこそタンスの 肥やしにしかなりません。まずはその洋服を着て鏡の前に立ってみましょう。サイズが合わな

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ければいさぎよくおさらばしましょう。痩せて着られる日が来るかも……なんてことはありま せん。またデザインが古くて……この肩パッドがねえ……着られないなら手放しましょう。  そして、もしサイズがぴったりでまだ着られるのならば、タンスにしまいこまずに元を取る くらい着ましょう。スーパーへの買い物にだって着て行ってもいいわけです。元を取るぐらい まで着て、納得できたら手放しましょう。つまり洋服も「着られる」でなく「着る」かどうか で判断します。元を取ったと思ったらいさぎよく手放すのがポイントです。そうでないと着な い洋服で衣裳ケースやタンスがいっぱいになります。高かったけれど着られない洋服よりも、 今の自分に合うものを身に着けた方が輝けると思いませんか。素敵に見えると思いませんか。 これからはぜひ量より質で洋服を選んでください。 ◆実行する ・保存(使う) ・リサイクル ・保留(期限を決める) ・ごみ  保存は今使っているもの、着ているものは大切にする。使わないものでリサイクルできるも のはリサイクルする。そしてリサイクルするなら早い方が良い。いただきものを何年も押入れ で寝かせておいてからリサイクルに出すより、いただいた時に、相手のお気持ちだけはしっか り受け止め、使ってくれる人のところへ行った方がものが活きると思いませんか。  保留は、今決断できないものは3か月とか期限を決めて箱にでも入れて保管します。3か月 たったら処分するかどうか決断します。ごみは処分ですね。 ◆5 W 1 H で自分とものの関係を明確にする  そこで次の5W1Hを使って自分に問いかけて、見直してみましょう。 What これは、何? 洋服? 時計? 実際に使っている? Why なぜ、取っているの? 便利? すてきに見える? どうしてこれが必要? When いつ、必要なの? 着るの? 使うの? いつかはいつ? Where どこで、使うの? 家で? パーティーで? Who 誰が、私が? 家族が? How much いくらしたの、高かった? 安かった? 今、価値はあるの?  一つひとつのものについて、具体的な視点に落とし込んでいくと、5W1Hはものと自分の 関係を考え直すきっかけになります。

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◆収納は NEAT で  ものを減らすことは大切ですが、年を重ねるとどこにしまうかも重大なことです。そこで収 納では次のようなことを考えてください。 ・最短で(Nearest) ・簡単に(Easy) ・知らせる(Announce) ・問題なし(Trouble-free)  「最短で」というのは保管場所の距離の問題です。物は使うところの近くに置くのが基本です。 「簡単に」というのは、出しやすく戻しやすいこと。「知らせる」は何がどこにあるか家族に知 らせておくこと。非常持ち出し用のリュックや救急箱、保険証や権利証など重要な書類のこと です。「問題なし」は後でお話しするように、高い所など踏み台に乗って物を出し入れするの は危険が伴うので注意してくださいということです。 ◆一度に片付けようとしない  1日5つものを減らすとどうなるか、写真でご紹介しましょう。はじめはあまり減った感が ありませんが、続けるとこれぐらいになります。どうです? 1日1つ減らしても1か月で 30、1年で365個減ります。 ◆ VHS のビデオ  お宅にこのようなVHSのビデオや昔の8ミリフィルムなどは残っていませんか。VHSのビ デオも写真のようにカビが生えたり、テープが伸びて見られなくなる可能性があります。つま り貴重な記録は早めにDVDにしたり、きちんと残しておかないと見られなくなるのです。 ◆アルバム整理  思い出の品の代表はアルバムです。そしてどうすればよいかというご相談が多いのもアル バムです。「場所を取って困る」とか「たくさんあるが、どうすればよいかわからない」など 悩んでいる方は多いようです。皆さんにアルバムをお持ちかどうかを尋ねると、十数冊くらい 持っているのが当たり前のようです。そのアルバムを最近ご覧になりましたかと訊けば、答え はたいていNO。多くの人はもう何年も見たことがないというのが現実です。しかし捨てたり できないのもアルバムです。  何とかしなくてはと思いつつも、面倒でそのままになっている。またどこから手をつけてよ いかわからない。でも失っては困るもののいちばんはアルバムです。今残っている写真は貴重 ともいえます。写真は家族の歴史であり、二度と作ることのできないものです。そんな大切な ものなのに、何年も放置されているのが現状です。そして、今整理しておかないとわからなく

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なってしまいます。実際にアルバムの整理を行っていただくのがいちばんです。 まず、何冊のアルバムを作るかを決めます。理想としては二、三冊が望ましいでしょう。  理由は、これくらいなら手元に置いていつでも見ることができるからです。加えて地震など の災害時にも簡単に持ち出せる量です。子どもたちに残しても負担にならないでしょう。まず 最初にアルバムのタイトルを決めます。「家族旅行」や「子どもの成長」「登山」など、まとめ る写真のタイトルを決めます。  次に写真選びですが、いくつか注意点を挙げておきましょう。 ・ピンボケはいらない ・二枚三枚と同じような写真はいらない ・今では誰かわからない人が写っている写真はいらない ・集合写真は残したい大切な写真だけを選ぶ ・自分がどこに写っているかわからないものはいらない  ピンボケ写真は当然のことすぐにおわかりですね。かつては誰もがカメラを持っている時代 ではなく、写真を撮るのが旅行や運動会など特別な出来事だった時代でした。現像代も安くは なかったので、ピンボケ写真ももったいないと貼っていることが多いのです。二枚三枚と同じ 写真が多いのは、デジタルカメラと違いどのように写っているかわからないので、今という貴 重な一瞬を記憶にとどめる一助として、念のためにと何枚も撮っていたのです。このような写 真が多いことがアルバムのページ数が多くなっている原因の一つともいえるでしょう。 ◆押し買いに注意  「押し買い」というのをご存知ですか。昔は「押し売り」でしたが、今は押し買いが流行っ ています。これは「お宅にもう着ないきものやアクセサリーがあれば引き取りますよ」と電話 をかけてきます。それではひきとってもらおうかと家に入れると、あれもこれもとわずかな値 段で半ば脅しをかけるようにして引き取っていきます。きものや金を中心とした貴金属が狙わ れていますので注意してください。 ◆譲る場合  自分がいらないからと、人に押し付けて相手が困る場合があります。ものを譲る場合は、相 手が喜ぶかどうかです。またものの価値も考えてください。バブルのころに100万円で買った 壺を息子に譲って喜ぶでしょうか。趣味が合わない、置く場所がない、売っても数万円にしか ならないから、却って迷惑だと思うかもしれません。 ◆続けるために  多くの人にとりものの整理は楽しくありません。孤独な作業ですし誰もほめてくれません。

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そこで自分で自分にごほうびを考えてください。計画のところで3つ挙げてもらいましたが、 1つ片付いたらお友達とランチ、2つでコンサート、3つ片付けば温泉1泊旅行。これくらい 頑張ったというごほうびです。もちろん無理をする必要はありませんが、こうして自分へのご 褒美を考えると楽しくなりませんか。そしてそれくらい大変なことを実行したとご自分をほめ ていただきたいと思います。  もうひとつ続けるためには実行できた日にはカレンダーに○をつける。頑張った日にはハナ マルでもよいですね。こうして目につくところに貼っておくと、家族にも伝わります。  今週は忙しくてできなかったけれど来週はやろうなど、計画を立てられます。そうしない と、気が付けば三か月過ぎていたなど、もう面倒だということになりかねません。 ◆輝くやかん  写真の汚いやかんも1日でこうなったわけではありません。少しずつこうなったし、また人 間は慣れると平気になるということです。一度にこの汚いやかんをきれいにしようと思うとそ れだけでくたびれますね。そこで蓋だけとか、次はここだけとか、ほんの少しずつ磨いていく とどうでしょう。きれいに光るようになりました。つまり全部一度にやろうとするとなかなか 手が付けられないけれど、目の前の少しのことだけ考えて、続けていけば、いつかはすべてが きれいになるということです。 ◆ドンドンサークル  何もかも一度に片付けようと思うと、それだけでくじけそうになります。老前整理は無理を せず、マイペースが大切です。鉄則のところでもお話ししたように、1日に引き出し1つで も、15分でも、3つ処分するでもよいのです。目の前の少しだけすることを目標に進めてくだ さい。こうして続ければ、ここがすっきりした、では次もがんばってみようという良い循環が 生まれ、決断も早くなり作業も楽になります。こうして進めていくことが問題解決につながり ます。まずは目の前の段ボールの箱1つからはじめてください。 ◆老前整理とは  老前整理は自分を大切にすることです。誰のためでもない自分のためにはじめていただきた いと思います。 ◆最後に  「決意とは将来の生き方を今、選択すること」  皆様の老前整理のきっかけづくりになれば幸いです。ご清聴ありがとうございました。

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