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市場性のない債券の評価と会計上の利息概念

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Academic year: 2021

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(1)弘. 説. -. ⅡⅠⅠ. 市場性のない 債券の評価と 会計上の利息概俳 大. Ⅰ. 日. はじめに. 近時, 派生金融商品. 口. (Derivatjv。,) の会計. 処理が, ひとびとの注目をあ っめている・ 国 では金融商品関連の. 方. 隆. ているからであ る,以下では,債券評価の検討 をつうじて,企業会計における利息、の概念の意 義を再検討してみたい.. わが. 2. 会計基準が未整備なこと. 時価情報と時価評価. って,それは挑戦的な研究領域であ り, 将 来の会計基準設定に 向けての規範的な 提言も数 多い.多くの議論では,投資家にたいして 有用 な 情報を提供することや ,金融商品のリスクを 重視した投資管理を 促進することが ,企業会計. 企業会計審議会は ,平成2 年 5 月 29 日,「先 物 ・オプション 等の会計基準に 関する意見書 等. 0 目標仮説であ るかのように 扱われている. し. 開示対象は「上場有価証券,およびこれに準ず. かし. る 有価証券」であ り, にれに準ずる 有価証券」. もあ. それらはいわば 企業会計の覚側の 問題で. り,利益計算体系の根幹にかかわる 問題とし. あ. て,. また,企業会計の内的構造や本質に 根ざし. た 問題として,金融商 R" の会計処理が 検討され る. と. はあ まりない. ほ ついて」. (以下,意見書という ). を公表し ,. 「市場性あ る有価証券に 係る時価情報の 開示」 をもとめた・. 起草者による 趣旨説明において ,. には, おおむね店頭登録されている. 有価証券が. 該当するとされた 1). そこでは,一定の 取引規 模 ,厚みをもった市場が存在するという 意味で の. 「有価証券の. 流通性ないし 流動性. ㎝ quidity)」が重視されたわけであ. っており,今回の特集のテーマでもあ る. そこ. る・意見書 にも記されているとおり ,「含み損益」の 情報 を 重視するがゆえに ,「市場価格の 存在」が 開 示 対象範囲の決定にとって 重要な意味をもって. で 本稿では,あ りふれた金融商品であ る債券を. い たといえる. ほん らい,有意義な展望をひらくためには ,. やや遠回りであ っても,冷静で慎重な回顧の 作 業は欠かせない. それは,歴史学が雄弁に物語. 取り上げ, 「市場性がなく , ト. かっ ,. ところが, 当該意見書を. デフォル. ・リスクのあ る債券」の評価問題を 検討する. 債券の評価を 検討対象とする 理由のひとっは ,. そこに,期待キャッシュフローを現在価値に割 り引くという ,金融商品の評価方法の原型がも つ とも素朴にあ らわれるからであ る. も うひと. つの理由は,企業会計において ,ストックであ る 債券の現在価値評価と プ ロ一であ る利息、 (interestincome) の概念とが密接に 結びっ ぃ. ぅ. けて発令された. 「企業内容等の 開示に関する 省令」. (平成 2. 年は. 25 日,大蔵省令第 41 号 ) においては,開示対 象 となる有価証券の 範囲にかんして ,おおきな 転回がみられた・ 省令第 2 号様式 ( ァ -2) では (第 3 号様式 ( ッ -2) が準用 ), 「時価又は時価 相当額を合理的に 算定できるもの」を 開示対象 としたからであ る. この ょう な転回が実務 界に 月. 投げかけた難題は ,. どのようにして 市場性のな.

(2) 市場性のない 債券の評価と 会計上- の利息概念。 大口万 い 債券の「時価相当額」を 算定するかであ った. その難題にかんして ,当の大蔵省は省令と同日 付けで,通達「市場性あ る有価証券及び 先物・ オプション取引等の 時価情報の開示について」 (平成 2 年 12 月 25 日, 蔵 証 第 2318 号 ) を発し 市場性のな い 債券の「時価相当額」は ,. 「証券取引所における 最終の価格,証券業協 会 が発表する売買値段,指標気配,標準気配 等及びその他一般に 公表されている 価格, 売 買値段又は気配等に 基づき,当該債券の発行 体の信用度,残存償還期間, クーポンレート 等を勘案して 合理的に算定した 価格」 n下線 は 引用者 ) によるものとした. 一方,実務界の側では,財団法人企業財務制 度 研究会 (COFRI) に「債券時価情報検討委 貝金」が設置され ,市場性のない 債券の「時価 相当額」の算定方法が 検討され,公表された 2, その委員会報告では , 「時価相当額」の 算定が 可能な債券の 範囲が 詳ホm に限定されたうえで ,. 標準気配を基礎に 利回りと残存償還期間の 違い のみを調整するという 方法が提案された. そ う した検討過程や 結果を. ぅ. けて,大蔵省は前掲 通. 達を改正し今日では ,発行体個々の信用度を 問わずに,店頭基準気配を基礎にして, 当該 債. 障). (95) 95. 価 」を検討しそれが ,情報開示の問題を検討 する基礎作業となることを 期待したい. さて,本稿の議論の対象は ,デフォルト・リ スクがあ り,かつ,市場性のない 債券であ る.. それは,証券Ⅰ されていながら ,その流通市場 が 整備されていない「債権 」であ る.証券化さ れているため ,流通の可能性は否定されていな いものの,流通市場がないことから,その換金 にあ たっては,個々の債券保有者が 独自に買い 手を探して,その需要者と相対で 譲渡価格の交 渉をしなければならない. 実際にはその 探索や ヒ. 交渉にはコストがかかるために ,. 当該債券の. 「正味の経済価値」を 測定するのは 容易ではな いばかりか, たとえそのコストを 無視できたと しても, 問題の債券の 市場価格が実在しない 以. 上, それを時価で 評価できないことはい もな い .. う. まで. ここでは,時価評価以外の評価方法を. 考えてみなければならないわけであ. る.. このような市場性のない 債券については ,前 述の通達にもみられるように ,特定の評価モデ ルや理論価格をもとに「時価相当額」で 評価す るという見解もあ る.そうした評価方法につい ては,会計理論上,検討してみなければならな い 点があ る. あ らためていうまでもなく ,現存 する市場やその 市場価格 ( の変動 ) などを与件 として,特定の評価モデルをつうじて 債券の価 格形成メカニズムを 記述する作業,あ るいは,. 券の利回りと 残存償還期間にもとづいて 計算し た 割引現在価値 (額面の割引価値, をもって 「時価十目当 額 」とすることと 規定されている 3, 以上のような ,意見書から通達へと開示対象 が 転回した理由と ,通達が定める「市場性のな. 価モデルや理論価格にもとづいて. ぃ 債券の『時価相当額』」の 妥当,性については ,. とは, まったく問題の 次元が異なっている.. 理論白りに検討してみなければならない 課題が多. ア. ぃ . 「時価相当額」の 算定方法にか・かわる 技術. に 説明力があ り理論的分析に 有効であ ると認知. 白. りな問題はもちろん ,. なぜ時価情報を 開示する. のかという,開示の 目的がなによりも 問われな ければならないであ ろう. とはいえ, 開示目白 9 や 開示規制の根拠をめぐる 問題は, いまだ理論 的な成果の蓄積は 乏しく, ここであ きらかにい えることはほとんどない 4'. むしろ,以下では, 利益の測定における「市場性のな (,、 債券の評. 経済主体の投資行動を 理論価格をつうじて 記述. する作業と,市場性のない債券を会計上その 評 評価すること フ. イナンス理論において ,それらの理論モデル. されているからといっても ,. それだけでは ,. 業会計上の資産評価においてそれらを. 企. 採用すべ. きとする十分な 根拠にはならない.. そもそも,市場性のある債券を時価で 評価す るのは,売買取引が集中される市場が 存在し 「一物一価」の 市場価格が実在するために ,債 券がそのときどきの 市場価格どおりの 価値をも.

(3) 96@ (96). 横浜経営研究. 号 (1995). 債券の時価評価は. ,あくまでも,整備された市. 場 における市場価格の 存在を根拠としているの であ って,その価格形成のあ りかたが理論的か 古かる根拠としているのではないことに 留意し ておきたい.. F. 現実に創出されるわけではない.理論モデルや 理論価格は,すべてのひとびとによって 対象証 券がそのとおり 評価されることを 保証するため に探求されているわけではないのであ る.保有. であ るから, クーポン・レート. F2. が. いの. 実在する市場価格. Ⅰエ ・. 価で評価する 根拠. ,その計算から,債券を時. 1. 計算できるとしても. 十干. 場性のな い 債券の市場価格に 相当する推定値が. 十. F 1 ワ+ Ⅰ. 一 " 一. 2. 5). かりに市. 1. 0. ろう. 第. ム. つ とみなされているからであ. 第 XW 巻. q は,. (2) 1. およ. び 2 時,点においてキャッシュフローが 契約どお り支払われることを 前提にしたときの ,. 2. 期間. (IRR) 」になっている・. にわたる「内部利益率. ここで,かりに 1 時点において 契約どおりに. クーポンが支払われたとしょう. そのとき, クーポン収入 qF のすべてが純粋な 利子 X 益 り. いうわけではない.. を何とすると ,. 0. 一. と. 1 のスポット・レート. そのうち純粋な 利子収益とみ. ることができるのは ,. たかだか,. nL{0;2)=nF. そうであ れば,市場性のない債券について ,. 少なくとも理論的な 考察にさいしては ,会計学 の外側で債券の 評価モデルや 理論 価ヰ計一スト. 0 部分であ る 羊一 こで指摘すべき 重要な問題点. ックの評価. qF のすべてが「 受取 利息、」とみなされてきた. がどのように 論じられているの. かとは一歩距離をおいたうえで りかた. プ. ロ一の評価. ,利益計算のや を検討してみなけ. は,従来の通念では, 実現したクーポン 収入 点であ. る・. ほんちい, デフォルト・リスクの あ. る 債券のクーポンには. ,. リスク・プレミアムと. ればならない. かちん,金融, ファイナンス 理. してのリターンも 含まれており ,. 論の分析道具としての 援用は否定されないが ,. のすべてを「利息」と 呼ぶのはミス・リーディ ングであ ろう.. さしあ たり,従来の会計上の債券評価方法を 再 検討し企業会計の 内的な論理の 延長線上で ,. 代替的な評価方法を 検討してみるのも 将来の議 論にとっては 有益であ ろう. 3. 第二の問題点は , のうち, い くらを第. 最初に,利付債を対象にして,伝統的な 原価 評価・実現基準の 問題点を検討しよう. ここで は,額面E 残存期間 2 期間, クーポン・レー q (利払いは 1 および 2 時点 ) の市場性のな ト. ,. 1 時,点. におけるクーポンの 収入 qF の会計処理であ い ま,債券の発行価額 L(0;2) が , L の ; 2) 二 F. る・. (1). ヮ. F. か」と「なにが 利益 か 」は, ほん ちい 次元を異 にする問題だからであ る. ここで, この債券の保有者の 主観的な価値 評. ,債券価値の変動を考えてみよう・. 利息と元本との 区分の あ りかたを再検討するた めに,あえてそれを区分せずに ,債券の保有か ら生じる各時点のキャッシュフローをあ. となっていたとしよう.額面発行のケースであ る. このとき,. 期の利益に計上すべきか. の全額が第 1 期の利益であ るとみる見解があ る かもしれない. しかしその ょ うな理解には 理 論 的な誤謬が含まれている. 「いっ利益になる. 価を導入して. とする・. F. ヮ. であ る・たとえば , qF だけの現金を 受け取っ. い 債券を考える. この債券は 0 時点で発行され ,. まず考えてみなければならないのは. 1. 時点のクーポン 収入. たという事実にもとづ い て, クーポン収入. 市場性のな い 債券の評価. 発行価額をⅢ 0;2). 1. そのクーポン. る・. 0. その. 0. とす. 時点で額面発行の 債券を取得した 場合, 時点では,つぎのような式が成立してい. ると推定される..

(4) 市場性のない 債券の評価と 会計上の利息概俳. ". 侍 される投資収益率であ り,単純化のため,. となる・本稿の 仮定のもとでは ,. この所得 n,. n,=. 一. ねF 一. とあ られされる.. (7). 0 一 1. の所得は「期待されて. いたリターン」と「期待されていなかった. Eo(Xrl)ニヮF and. コ. K. ッ. くヮ. Ⅰ. 4. Ⅰ. F. となっている. こ例 4 拭は, きわめて重要な 問題点を指摘し ている.額面発行のこのケースでは,デフォル. ト・リスクのあ る債券に期待されでいる 投資 益率 K は, クーポン・レート. ヮ. り. Ⅰ. E0( Ⅹ 1)t千 [{E0(Xl). 二 @qF 一 E0( Ⅹ 1)t 千 KL(0;2). ,リスクがあ るから,. め. L(l;1). 十ム (1 ; l)} 一 L(0;2)]. ば 容易にわかる よう に, この債券にはデフォル. EoU Ⅹ2)く (1 +. 二ワ F 十. は,. 。. であ ると仮定している.前掲呵 2 拭と 比較すれ. ト. (97) 97. (6. 2 のぞれとは均等. 一. 隆). L(0;2). 3. 2 ()' Ⅹ Ⅰ トの. 十. Ⅹ 1 () K. 十. E1. 一 一 ". 一 " 一. F. 2. 0. ム. この (3成の K は, 2 期間の債券の 保有から 期 一 1 の期待投資収益率と 1. nl. (大日方. キャ. シュフロー」とから 構成されている.. 上記の (6)および 7@ からわかるよ う に, 1 時 点のクーポン 収入げのすべてを ,かっ,それ だけを利益に 計上すると,債券の主観価値の変 動公 であ る. AL 二ん (1 ; 1) 一 L(0;2). X. 幸. よりも小さい. KL(0;2). 一. E0(X け. L8. Ⅰ. のであ る. その問題がもっとも 顕著にあ らわれ. だけ,所得「 11 よりも過小. るのは, 2 時点のキャッシュフロ - Ⅹ2 が契約. は 過大 ) に利益を計上することになる ,. どおりでなかったときであ る・つまり,. のケースの主観価値の 変分. ( それが負、 のときに. ム んは,. ここで. (8成のとお. り,「期待されていたリターン」と「期待され. Ⅹ2 く (1 十が F. ていたキャッシュフロー」との 差であ る.. qx 」と「利息の 受け取り」とに 振り分けたらよ. 以上からあ きらかな 26 に,債券の主観価値 の変分力しが 正のとき,つまり,その価値が 0. いのか, それが問題となる・. 一. のとき,そのⅩ ? をどのようにしで「元本の 回. その. 時点での振り 分けをめぐる 問題とおな. 2. じょうに,. 1 時点においても ,. クーポン収入. ヮダ をどのようにして「利益」とⅠ資本. (投資. 1 のあ い だに増加しているとき ,. クーポン収. 入だけを第 1 期の利益に算入すると ,その債券 価値の増分は 第 1 期の利益に算入されないまま 将来の年度に 繰り延べられる.逆に,そのム L. 元本 ) の修正」とに 分けるかが問題になるはず. が負のときは ,それだけ債券の主観価値は減少. であ る.議論を簡単にするため,. 時点では,. しクーポン収入は ,所得とその債券価値の減. 0 時点で形成された 期待が改訂されていないと. 少二回収とから 構成されている. その場合に クーポン収入の 全額をそのままその 時点で利益. 1. に想定しても 以下の議論の 本 質はそこなわれない ). この場合, 1 時点の債 券の主観価値 L(l;1) は , しょう. ( この ょう. Ⅹ 2 () K 十. El. Ⅹ 2 () K 十. E1. 一 " 一 " ". 1. L. 1. (5). に 計上すること ,すなむ ち, その. イ. ンフローを. 資本と利益とに 分けることなく ,. インフローを. まるごと第 1 期の利益に算入することは ,ほん ちい は維持すべき 資本の修正二資本の 回収分で. Ⅰ ア. 0. る じ. 且. ら カ. 資. ま ル又 券. 債. の こ. るま, せ Ⅱ わ n. ら得 あ所 との. あ. る投資原価の 回収額をその 年度の利益に 算入. することを意味しているわけであ. る.. ただ,そうした債券の主観価値を 第三者が経.

(5) 98 (98). 横浜経営研究. 第 ⅩⅥ 巻. 第 1 号 (1995). クーポン x 入をその. 難く結びついた 現行の企業会計では ,財のひと. な資本価値の 変分と第 1 期の所得とに 分け るのは困難であ ることは,あ らためて いう まで. っのフローは 分割されないまま ,一括して資本. もないであ ろう. かりに. 券を保有しているとすれば ,いずれにしても,. うのであ る・それゆえに ,元本と利息とを企業 会計の論理によって 分けるのは困難な 作業とい. クーポンと満期償還 額 との合計から 債券の取得. " よ". 験 的に観察できなければ ,. 円. ょう. 0 一 2. のあ い だその 債. か利益かのいずれか 一方だけに分類されてしま. 原価を控除したネット・キャッシュフローが , 会計上は 0 一 2 の 2 期間の利益になる.. 重要なのは,その利益の年度間配分を 企業会計 の内的な論理によっては 一義的に決められない という点であ る. どのような配分方法もただち には否定されないといって よい 6). このケースにおいて ,伝統的な会計処理では, 1. 4. ここで. 時点のクーポン 収入のすべてが 第 1 期の利益. とされるが, それは理論的に 当然のことではな く, あ くまでも ャ貫行的なやりかたでしかない. このような固定クーポンを 受け取るケースでは ,. 利息の概念. 本稿の議論の 対象は市場性のない 債券であ が,. ここで,市場性のある利付債の評価を 確認、. 市場性のあ る債券なら,デフォル ト・リスクの 有無にかかわらず ,利付債を市場 価格で評価することもできる・ Ma,k(ing)to M",k 。t(MTM) の考えかたでは ,利息収入のよ う なインカム・ゲインと 債券価値の変動に よ る キャピタル・ゲインとを 分けて捕捉することは しておこう・. 必要条件とはされない 8). 1 期間の市場価格の 変動差額が, その証券投資の 成果とみられる.. つねに受取配当金のすべてを 利益に計上する ケースとおなじように ,名目資本維持に結びつ. 株式の資本価値の 換金手段にかんして. けられた実現基準が ,. 株式売却とが 無差別であ るのとおなじように ,. い っ利益になるかばかり. る. ,配当と. でなく, なにが利益 か ( なにが利息 か ) も同時 に決めてしまっている 7).債券への投資勘定は 名目資本のまま 据え置かれ, クーポン収入のす べてがその時点の 実現利益 (実現した受取利 息 ) とみられるわけであ る・ なお,本稿で取り 上げたのは期末に 利払いがなされるケースであ. 債券の資本価値の 換金手段として ,クーポンの 受け取りと,債券の売却あ るいは償還とはまっ たく無差別であ る.換金手段の違いが元本と 利 息 との区分を決めるのではなく ,純粋な利子収 益は,せいぜい計算上でしか 分けられないので. るが,たとえ経過利息の見越し 計上を考慮にい. それにたいして ,企業会計では伝統的に ,利 息の受け払いに よ る損益と,元本の処分にかか わる売却損益や 償還損益などとを 区別して会計. れても,以上の議論の本質は 変わらない.. しかしその. ょう. な実現のルールを. っう じた. 「元本と利息との 区別」も, このケースの. 点では機能しないことがあ. る.. 2. 時. 2. 時点の実際の. あ る 9).. 処理すべきであ ると観念されてきた. その区分. 処理が損益計算書上の 区分損記の根拠をあ たえ. キャッシュフローが 契約上の元利にみたないと. るのと同時に ,循環論的に,その表示上の 区分. き,実現のルールでは,その不足額 が元本の貸 し倒れなのか ,利息の貸し倒れなのかは 決めら れない.債券の市場性の有無やデフォルト・リ. ルールが,利息、 と元本とを区分することを 正当 化してきた よう にも思える・ しかし ここで確 かめた よ うに,利息、 と元本とをどのようにして 分けたらよいのか ,それは企業会計の 内的な論. スクの有無にはかかわりなく. ,一般に,元本の. 回収 と 利息、の受け取りとがひとつのキャッシュ フ ロ 一にまとめられてしまっているときには. 理 によっては一義的には 決められない ,それが ,. 実現基準をもってしても「なにが 利息、か 」は決 まらない・名目資本維持と 実現基準とが 分かち. 決められないことは ,. なぜそれらを 分けなけれ. ばならないのかという 疑問を提起するばかりで なく,そもそも,利息とはなんであ り,元本と.

(6) 市場性のない 債券の評価と 会計上の利息概俳 (大日方 はなんであ るのかという 概念規定についての 疑 問を浮かび上がらせるはずであ. ろう. ここでの. 検討は,企業会計の伝統的,支配的な通念にた りして, きわめて重要な 問題を提起している.. 隆). (99 99 Ⅰ. るであ ろう・ むろん, 回収不能見 込 額の会計処 理については ,別途検討が 必要であ る. ただ,原価基準では 0. 一. 1 のあ いだになんら. 債券投資の成果が 生じていないように 会計処理. これまでの通念は ,利息とみられる固定 ク一. されることにたいして ,異論が生じるかもしれ. ポンや 額面償還などの 常識的なキャッシュフ ロー・パター ンに 依存して,利息、 ど 元本とを 分. ない.債券の保有は資金の 貸し付けとおなじで あ り,時間が経過さえすれば,それに応じて無 条件に利子 x 益が生じていると 考える見解もあ. けようとしてきたのかもしれない.. その根拠を. 刀. 探ることはここでの 課題ではないので ,その点. ろう・その ょう にみるならば ,. には立ち入らないが ,いずれにせよ,債券の契. キャッシュフローが 生じて い なくとも,いわゆ. 約上のキャッシュフロー・パター. る「経過利息」を 計上する方法が 想定されるか. ,は会計処理. にとっての与件であ り,企業会計の 利益計算. 1 時点でたとえ. もしれない.. ルールがそのパターンを 決めるわけではない.. とはいえ, どれだけの「経過利息」を 計上し. かりに利息と 元本とを分けることが 目的なら,. たら よい のか,それは難問であ る. デフォルト. い かなるパターンにたいしても. の 可能性があ るかぎり,額面で償還されること. ,. そのパターン ン. からは独立に 利息、と元本とを区分するルールが. を前提とした「内部利益率」を 採用するのは ,. あ らかじめ決められて い なければならないはず. 理論的ではない・. であ る.. が確実に履行されることとは 本質的に異なって. そこで, こんどはキャッシュフ n] 一のパター. ンを単純化して ,あらためてゼロ・クーポン 債 を対象に検討しよう. デフォルト・リスクがあ り,かつ,市場性のないゼロ・ク- ポン債を題. 材とし額面. だ. 残存期間. ポン の債券を考えよう.. 0. 2. 期間のゼロ・. 時点におけるこの 債. 券の取得価格は C(0., 2) であ る・ するのは,. 1. ク一. ここで検討. 時点において ,会計上この債券を. どのように評価し. 0 一 1. の債券投資の 成果を. 契約が存在することと ,それ. いる. また,市場の標準的な利子率を 採用する こともただちには 肯定できない.市場性がなく. かつ, デフォルト・リスクのあ る債券への投資. 成果を測定するときにもなお ,市場性のあ る 無 リスク債券への 投資をゼロ・スタンダード とし てもよいのかは ,. ひとつの検討課題であ る,一. 般に,資金を投資したからといって ,純粋な利 子収益ですら ,. その獲得が約束されているわけ. ではない・それが 確約されているのは ,せいぜ. どのようにして 測定すれば よい のかという規範. い デフォルト・リスクのない 債券にかぎられる. 的な問題であ る.. のは,あらためていうまでもないであ ろう.. たとえば,その債券を取得原価で 評価すれば, 1 時点では利益は 計上されない.その場合には, 2 時点における 実際償還 額 M と取得価格 C(O ; 2) との差額が, まとめて 2 時点 i( 第 2 期) の実現利益とされる. 「償還される」という 期 待が,償還という事実によって 現実の次元に 移 されるとみるわけであ る.債券にデフォルト・ リスクがあ るとき,実際の償還をさってはじめ て利益を計上するのも ,それほどおかしな方法 ではない. その意味で,取得原価による 評価 (原価基準 ) にもそれなりの 合理性が認められ. あ るいは, はの. 時点における 期待償還 額 El. 1. と取得価格 引 0;2). との差額の一部を ,. 0 一 1 の期間に配分するという 見解もあ ろう,. これも,償却原価法のひとつである・ にかんしても ,. 「時の経過」が ,. この方法. その配分額が. 実現したことの 根拠になりうるのか ,その点が 問題になる.償却原価法のゴール (予定される 満期時点の簿価. ). を,債券の額面にするのと期. 待償還 額 にするのとで ,. ここで議論している 問. 題の本質はなんら 変わらない.期待償還額 と取 得価格との差額を 期間配分する 方法は,そのと.

(7) 100 (100). 第X W 巻. 横浜経営研究. 第 1 号 (1995). きどきの期待償還 額 が不確実に変動するために ,. 企業会計の内的論理によっては. 配分方法あ るいは償却基準がど. られないからであ る.. う. あ れ,つねに. この問題からは 逃れられないのであ る. いう までもなく,市場性のない 債券について ,. 一義的には決め. それにもかかわらず ,計算上の虚構に よ る利 息の計算が,実態的な意味をもつこともあ る・. その評価方法と 実現基準との 整合性が問われる. たとえば,インカム・ゲインが優先的な配当. ことは,学界の共通認識であ ろ. 源 となる保険業の 場合や, インタレスト・カバ. ぅ. . 伝統的な実. 現の意味からすれば ,市場性のないゼロ・クー ポン債の場合には ,その売却や償還以外の事象 にもとづいて 投資成果の実現を 認めることは 難 しいように思われる 10).市場性のない 債券に かんして,原価評価,実現基準,あ るいは回収 不能見 込 額を取得原価から 控除する評価方法な どにとってかわるような 評価方法の理論的に 十 分な説明は, これまで提示されていない・ 要するに, ここで問題のケースにおいて ,. 0. 一 1 の期間の投資成果を 測定するための 債券の. レッジ・. ワ. シ オ に依拠した財務制限条項がもう. けられる場合などであ る 12). いってみれば , 虚構が現実化し. ひとり歩きするケースであ. 漕釣帰結も重要であ るが,それよりもまして,. 当の企業会計がよってたつ 概念の意義や 虚構の 本質を検討することのほうが よ り重要に思えて くる.利息の概念は, これからあ きらかにされ ねばならない. ,「会計学の 未知の対象」なので. あ る. ぅ主. ここで債券の「あ るべき評価 方. 法 」を確定しようというわけではない.本稿の 主たる課題は ,企業会計における「利息の 概 念」を再検討し これまであ まり顧みられなか った概念の意義をあ らためて確認することにあ った .上でみた よう. に,周知の単純な金融商用口. であ る債券ひとつをとってみても ,いまだ解決 されていない 会計問題も存在しているのであ り, むしろ,伝統的な会計ルールや 支配的な通俳を 再検討するうえでは. ,そうした会計問題こそが. 探究されねばならないであ. 5. ろう. おわりに. 企業会計において ,利息、 (interestincome) の概念はどのように 定義づけられるのか ,. この. 問題は,本稿で検討したとおり ,非常に高度な 難問であ る・少なくとも 現時点では,その定義. は,企業会計の外側で日常的,慣行的に決めら れているというほかはない. "). 長期的には会. 計上,債券の取得原価と元利収入額との 差額が 利益とされることは 間違いないものの , そのう ち, どの部分が利息で , ( キャピタル・ゲイン. どの部分が保有損益. や ロス ) であ るのかは,. る. そうした状況を 想起するとき ,会計ルールの経. 評価方法については ,決め手のあ る議論はでき ない.むろん,. 財. 1) この点については ,新井清光・ 白鳥広之助編著, 「先物・オプション 取引等会計基準詳解」,中央 経済社, 1990 年をみよ・. 2) 企業財務制度研究会,「非上場債券の 時価情報の 開示について」, 「非上場債券の 時価算出方法に ついて (1, 2)」, 「旬刊経理情報」, 第 634 号 (199t 年 10 月 10 日 ), 第 640 号 (1991 年 12 月 10 日 ), 第 641 号 (1991 年 12 月 20 日 ) を参照.. 3) 大蔵 省は,平成 3 年. 9 月 27. 価証券及び先物・オプシ. 日に「「市場性あ. る有. ,ン取引等の時価情報. の開示について」の 一部改正について」. (蔵 証 第. 1587 号 ) でこの点を示した・その 後, この通達 は 「企業内容等の 開示に関する 取扱通達」 (平成 4 年 7 月 20 日, 蔵 証 第 1002 号 ) の「 B 個別通達 / Ⅱ市場性あ る有価証券及び 先物・オプション 取 引等の時価情報の 開示に関する 取扱通達」に 受 け継がれ,平成 6 年度の通達 (平成 6 年 6 月 1 日, 蔵 証 第 1587 号 ) にいたっている. 4) 「意見書から 通達への転回」は ,「上場債 のみに. 時価情報の開示を 強制すると,債券投資の資金 が非上場 債ヘ シフトする」という 経済的帰結を 考慮したとも 推論できよう ,. しかしそれは 風. 説の域をで す ,そのような資金シフトを 予測さ せるに足りる 合理的な証拠はみあ たらむ い .. 5) かちん,市場が複数存在しても ,市場間に競争 原理が働き,裁定取引が許されるならば 問題は な い.. この点については ,. 日向野輪地,「証券取. 引所の経済分析について」,貝塚啓明・ 植田和男 編 ,・ [変革期の金融システム ], 東京大学出版会,.

(8) 市場性のない 債券の評価と 会計上の利息、概念. 6) 米国では,この問題が,減損した貸出金の会計 処理において 顕在化した・ 基準 書 第 118号では, 減損後のⅡ x 益 計上にかんして ,利息法 (inte,e,t method) のほか, 原価回収 法 (cost,recove,y method) や現金基準 (cash basis) も認められ ている. この点は, FASB,. Ⅰ 78: オ , a Loa れ一fneo 笏 e ReCoPnnition an み Disclo 鰍托s, 僻 は卸飢み卸㎝ t o/ FASB S 放ヤ 御伽 t No. プ 4, 1994, par. 6 をみよ・ なお, SFAHS No. 5r A ㏄ounti 刀 g foorCoontingencies, 1975, par. 23 および SFAHS No.. A. め Crredito. ㏄nu れ れng. パメ or. SFA S No. 」. Ⅰ 笏戸ロ. 汁me 舵. フ. ど. Ⅰ. ,5:. Acco. ぴ れれれ とるノ. TrooubzedDebtResfr. lAそ め orss Ⅰ. ぴ ,z"ri"g,,. a れイ. c どイわ ors Ⅰ㌃. 日方. 隆). (101) 101. 90 l 1 Ⅰ Ⅰ1 2. 1998 年, 8 章をみ 2.. @. メo Ⅰ. 1977, pars.. 31, 32,. 3f も参照のこと. 7) この問題については , 大日方 隆 , てき業会計の資 本と利益 ], 森山書店, 1994 年を参照されたい. 8) クーポン自身がひとつの 債券とみなされ ,利付 債の市場価格は ,複数の債券の価値が結合 (合 『. えかたにおいては ,. , MTM. の考. その結合された 債券の キャ. お. ,シュフロー・パターンは問題とならない. た とえば, このケースの 利付債 L(0 ; 2) は, 「満 期 1 期間,額面ヮ F のゼロ・ ク一 ボン 債 」,「満 期 2 期間,額面ヮ F のゼロ・ ク一 ボン 債 」,「 満 期 2 期間, 額面 F のゼロ・クーポン 債 」の合成 とみなされ,利付債の 0 時点の市場価格は ,そ. 己、助. 成 ) されたものとみなされるから.

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参照

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