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教師に求められる『実技力』に関する考察IV

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(1)教師に求められる『実技力』に関する考察Ⅳ 小竹光夫 (平成6年12月9日受理) 1.はじめに 日本人の文字言語習得は、左利きを矯正する等の目的 で「片仮名」が用いられる場合を除いては、通常、 「平 仮名」から開始される。 「書く」という行為を除外すれ ば、発音のままに表記でき、形態的にも簡略である「平 仮名」は、極めて有効な文字であると位置付けることが できる。さらに、 「漢字仮名交じり文」と称される日本 語の約7-8割が「平仮名」で表記されることを考える ならば、以降の言語生活の中核となる文字であるとも位 置付けられよう。 しかし、ここで「『書く』という行為を除外すれば」 と注を加えるように、運・用筆の面では「平仮名」の難 度はかなり高く、指導者側の工夫や計画的な学習指導が ない場合、判読困難な字形や運筆の渋滞が高学年にまで 影響を与え、文字による言語生活そのものをも阻害する ことになりかねない。それは、本学の初等教員養成課程 に学ぶ学生においても、数多く見受けられる実態でもあ る。下に掲げるのは、本学1年生の書字例である。字形 の乱れ、用・運筆上の欠落は、当然のこととして指摘さ れる状況である。. ちやすcS ふ7^ A?¥. 平 仮 名 は漢 字 を簡 略 化 して 作 られ、 片 仮 名 は漢 字 の一 部 、 ま た は全 部 を取 って 作 られ た○. と説明されている。さらに具体的な説明に入ると、. 妥妥豪 族 め レ ズレ ズ VI. Ll. し、. という図表が登場し、 「我々が日常的に使用する漢字の 楢書を連続・省略する中で字体が簡略化(草書化とも言 う)され、現在のような平仮名の形になった」との説明 が加えられる。例示されるのは、 「いろは歌」では「い・ ろ」、 50音図では「あ・い」が多い。この字例に限定 する限り、 「楢書から変化した」との説明は肯定される。 しかし、仮名が成立するまでの書体変遷史を想起するな らば、この説明の矛盾は、 「む」一字を例にとっても容 易に明らかになる。つまり、槽書から変化したものが草 書、あるいは行書であるのではなく、いずれもが隷書あ るいは蒙書を派生の起点としているのである。 書体の変遷. → 楢書 → 片仮名 I 甲骨文 → 金文 → 蒙書 → 隷書. このような実態の中、文字言語習得の導入期で「平仮 名」をどのように位置付け、どう系統的に学習指導を進 めるかを分析・考察することは、 「豊かな言語生活の構 築」という観点からも、欠くことのできない事項である と思われる。以下、本論において学習の意義・方法を考 え、その『実技力』の育成について論述する。 2. 「平仮名」の成立過程からの課題 日本語の漢字仮名交じり文で使用される仮名には、平 仮名と片仮名の二種類が存在する。その仮名の成立につ いて、一般的な小・中学校の学習指導では、. A1 草書 → 平仮名 文字言語の基本的部分を中国の漢字に依存し、原初的 な文字を有しない我が国の場合、中国での書体変遷と同 様に考えることはできまい。しかし、明らかに形態上で 槽書の簡略化とは考えられないもの、換言すれば隷・蒙 書から派生した草書体を流用したと考えられる平仮名が 存在することを考えれば、 「我々が日常的に使用する漢 字の槽書を連続・省略する中で字体が簡略化(草書化と も言う)され、現在のような平仮名の形になった」との 説明には矛盾が生じる。つまり、文字学習の冒頭に登場 する平仮名の用・運筆法には、行書だけでなく草書的な. *兵庫教育大学学校教育学部附属実技教育研究指導センター(語学教育分野). -23-. 行書 i.

(2) ものも含まれており、極めて難度の高いものから導入が 図られているということになろう。平仮名の学習指導上 の課題は、この成立過程を確実に把担することから始まっ ていると考えても良い。筆画の簡略さばかりを前面に出 して教師側の対応が安易になると、学習阻害を生じさせ てしまうことも数多い。 行・草書の用・運筆法の影響の多くは、平仮名の収筆 部に見られる。特に「はらい」 ・ 「はね」などは、次の 文字・筆画への連続を意識し、具体的な形象として貝現 されたものであろう。微妙な筆圧の変化を求められるこ れらの用・運筆には、常に困難がつきまとっている.さ らに、平仮名の中心的な運動となっている回転を含む円 運動も、行・草書の用・運筆法の影響を受けたものと考 えられよう。 3. 「平仮名」指導にあたっての留意点 曲・直の線(点画・筆画)を組み合わせるという点で は、漢字と平仮名は似通った性質をもっている。各線が 交わる、接する、離れるという3方法で構成されるのも 同じである。しかし、かつて分類された漢字の基本的点. 画、例えば「永字八 法」などと比較する と、平仮名の筆画は、 「、」から「L」ま でかなりの粗密があ る。筆画上の粗密は、. 出だすことはできるものの、基本的には幼稚園での 文字指導は実施されていない。しかし、就学前の文 字教育は、近年、加速度的に進み、小学校入学段階 で「約7割の児童が平仮名を読める」との調査報告 もなされる。 「読み」が「書き」に先行するのは当 然としても、多くの児童が見よう見まねで文字を書 き始めているであろうことは想像に難くない。親を 始めとした家庭、あるいは周辺の環境から、文字を 読むこと・書くことは求められ続け、就学前の文字 教育の是非を論じる以前に、読まざるを得ない、書 かざるを得ない状況が、児童たちの上に大きく覆い 被さっている。 このような学校教育とは別の次元で進行する言語 習得の実態を、教師自身が確実に把握することから、 小学校での文字・書写教育は開始される。読めるか ら良い、書けるから良いという唆味な指導は、児童 の将来の言語生活の充実という観点からも、決して プラスの効果を発するものではあるまい。どのよう にして読めるようになったのか、読みと書きに相関 はあるのか、どのような書き方で書いているのかな ど、一歩踏み込んだ考察と実態把握が求められてな らない。 ②用具・用材の選定 小学校入学段階の児童の指先の巧緻性は、極めて 未開発の状態である。書写用具として用いられる鉛 筆を例にとっても、そのままの活用では困難が生じ る。 「どの程度の硬度の鉛筆を使用させるか」から 始め、軸径の太さ、用具の長さ・重さに至るまで、 多方面からの分析と活用上の工夫が求められる。 鉛筆以上に問題となるのは用紙である.一般的に 学習には、. そのまま筆写上の負 担の差となって学習 に影響を与える。さ らに前述の通り、漢 字の場合には左右・ 上下への直線的な運 動が基本となってい るのに対し、平仮名. . 白紙 の用 紙 .縦 あ る い は横 の 罫 が 施 さ れ た用 紙. では円や弧を描く曲線的な運動が中心となり、微細な手 指の動きが求められることになる。 このように、線による字形構成という基本原理や発生 の経緯から、漢字に近接するものとして考えられがちな 平仮名ではあるが、実際には学習指導上の数多くの問題 を含んでいることは明らかであろう。限られた字数や簡 略な形態というプラス要因を加味したとしても、学習指 導上の周到な配慮は欠くことはできまい。言語習得期の 児童に対する平仮名の指導については、国語の立場から 音声言語と絡ませた学習なども提案されているが、ここ では「文字として書く」との書写の立場で指導上の留意 点を考えてみたい。 ①児童の文字習得や書写実態の把握 「表現」という活動の中に、僅かな関連事項を見. -24一. . マ ス 目等 の 枠 が 施 さ れ た用 紙. が用いられる。各用紙は学習目的に応じて導入され るが、多くの場合、 「白紙」 ・ 「罫紙」は学習があ る程度進行してからの使用となり、平仮名の学習指 導の中心は「マス目用紙」によることになる。 問題となるのは、その「マス日用紙」のマス昌の 大きさを何cmに設定するかである。この設定に際 して、指先の巧緻性との関連はかなり大きな問題と なる。教科書教材として提示される3 cmのマ ス目は、あくまでも基準としてのものであり、 35cmへと拡大した教材の工夫が求められるところ であろう。さらに、円運動を中心とする平仮名の指 導ということを考えれば、方形のマス目に固執する.

(3) ことなく、円形のマス目の導入など柔軟な対応が望 まれるところである。. ③学習する文字の段階性・系統性 いわゆる「ノメクタ本」と称される教科書の登場 は、長い書写教育の歴史の中でも、特筆すべき画期 的な「事件」であったと言えよう。そこに至るまで の書写は、どのような語句を書くかという点が重視 され、文字学習の段階性・系統性以上に語句として の価値が問われ続けていた。印象的な価値ある語句 との考え方は、時として修養的な語句や教訓めいた 文を手本として位置付け、精神性の高揚という方向 に傾斜していったように感じられる。その中で、文 字の中から学習要素をつかみ出し、段階的・系統的 に配列した「ノメクタ本」は、新しい学習の方向性 を示唆するものであったに違いない。実際、これ以 降の学習指導は大きく変容し、現在に至っている。 しかし、この方向性も、小学校段階では言語習得 優先の考え方の中に埋没し、いわゆる「あいうえお 順」といった50昔順に書写指導が展開され、一定 期間を置いた後の補助・確認の形でしか実施されて いない場合も多い。小学校1年の1学期で大部分の 平仮名の習得が終わるということを考えれば、 ①の 児童の実態把握を行いながらも、 「書き」の部分の 学習指導も、綿密な計画性をもって早急に行われる 必要があることは言うまでもあるまい。この段階性 ・系統性については、以下、項を改めて述べること とする。. あ. 1. つ. え. お. か. き. く. け. ら .. さ. し. す. せ. そ. た. t%. つ. て. と. な. に. め. ね. の. は. ひ. ふ. へ. は. ま. み. む. め. も. や. I*. よ. ら. り. る. れ. ろ. わ. ゐ. ゑ. を. んE. 難易度の測定には、このような学習者の主体的確 認から始める場合と、書写されたものを他者(指導 者)が客観的に判定する場合の二通りが考えられる よう。意識と結果(字形)には、当然のこととして 多少の差が生じる。しかしここでは、本学が初等教 員養成課程であることを考え、学習者(学生)がす なわち指導者(将来、教師となる可能性を有する者) となるとの立場から、前者の方法を取り入れること にした。この学習に続く10月4日の授業で実際に 平仮名を書写させ、 「難度の意識調査」と比較を行 ったが、問題となるほどの大きな格差は見受けられ なかった。 このような調査の場合、 「書きにくい文字を指摘 すると、次回にはその文字を練習しなければならな い」との予想がなされたりすると、結果が意図的に 変形されることがある。必要最小限の説明は行うと しても、テスト的な色彩やドリルの付随を予測させ るような発言は好ましくない。ここでも、. 4.授業科目「初等国語」での実践と考察 学部授業科目である「初等国語」は、第1学年を対象 とし、 2学期間にわたって開講される教養基礎科目であ る。履修案内には、 「初等教育における国語科教育全般 に関する基礎的問題を講述する」と授業科目の概要が掲 げられる。本年度は、第1学期を漢文学担当教官が「漢 語語嚢概論および語嚢史」を中心に指導し、第2学期を 書写・書道担当教官である筆者が、 「書写・文字教育」 という立場で指導に当たることとなった。本項は、その 実践の記録と考察である。 ①平仮名の難易度に関する基礎調査 調査年月日1994年9月27日(火) 第1時限「初等国語」 調査の方法平仮名による50音図を資料として提 示し、難度が高いと考えられる文字 を指摘させた。指摘する字数の上限 は10文字とした。 (調査用紙を後に掲げる。) 調査対象者「初等国語」受講学生206名. 小学校以来、平仮名を書き続けてきたと恩う が、その中で書きにくいと思った文字はどれだ ろうか。書きにくいと感じた文字10個に○印を つけて下さい。. という程度の説明に押さえている。 ②調査結果 二宮啓二(学部1年生)は、この調査に対して、 ところで、平仮名の書きにくいのを10個って いうのは、どういう意味が-。. との疑問を投げ返している。 これを受けて10月4日の授業資料は、 疑問をもっということは良いことだね。書き にくい字を一覧にしてみました。表1は数字が 並んでいますが、これがみんながつけた○の数 です。一人一人に「書きにくい字は?」と尋ね. -25-.

(4) ているだけでは見えない、何か別の世界が見え. 3 5. も. 1 8. てくるでしょう?昔はかなりの部分を手作業. 3 6. や. 5 0. でやってたと思いますが、アンケートなどの集. 3 7. ゆ. 6 8. 計があったでしょう?一人ずつの考えや意見. 3 8. よ. 4 1. 集約し、全体像を形成する。それも数量によっ て-0. 3 9. ら. 2 0. 4 0. り. 1 6. 4 1. る. 4 8. 4 2. れ. 5 4. 4 3. ろ. 2 8. 4 4. わ. 2 8. 4 5. ゐ. 1 0 7. 4 6. ゑ. 1 3 7. 4 7. を. 9 3. 4 8. ん. 2 4. とりあえず、こういうことから、. と始まる。 [=⊃内に入るのは、 「難易度に関する 全体の意識」 ・ 「傾向性」などである。下に掲げる 表1は、難易度の集計一覧である。 字 順 1. 平仮名 あ. 難 度 の意 識 数 6 1. この表をグラフにすると、以下のような形で表示. 2. い. 1 0. される。数量的には違いはないが、視覚的にとらえ. 3. ラ. 9. やすく、概略も把握しやすい。数値としては、別に. 4. え. 3 0. パーセント表示する方法もあるが、ここでは「数字. 5. お. 3 7. だけを見ていると分かりにくいので、グラフ表示に. 6. か. 1 3. する」と注を加え、考察-の一方法としてグラフ形. 7. き. 4 5. 式のものを提示している。. 7. け. l l. 1 0. 1 8. l l. 、 さ. 1 2. し. 1 8. 1 3. す. 2 5. 1 4. せ. 4 0. 1 5. そ. 4 9. 1 6. た. 2 0. 1 7. ち. 1 6. 1 8. つ. 7. 1 9. て. 1 0. 2 0. と. 2 4. 2 1. な. 7 3. 2 2. に. 1 3. 2 3. め. 8 2. 2 4. ね. 5 8. 2 5. の. 1 7. 2 6. は. 2 5. 2 7. ひ. 5 2. 2 8. ふ. 1 0 8. 2 9. へ. 5. 3 0. ほ. 3 6. 3 1. ま. 4 5. 3 2. み. 4 8. 3 3. む. 1 0 4. 3 4. め. 4 6. 3 7. 〇 一 O C X n U n U 一 O C T A 3 O Q . 一 o a れ U O O. く. 9. 一つ3り・'-IOnコwoe-tow?一つhroCJ^-i. 8. 5 0書棚の配列. 甜 L胤 謝 加 RnR醐 日 日 . 去 .ち .義 .菖I*S+卓 .ち .i.な .ふ .6lふ -ぺ .圭 .6lも .ふ .ら .る lるふ l妄 いえかくこし せたつと にわは ふはみめやよりれ わゑん. ③結果の分析と考察 上掲の表・グラフにより、学習指導の冒頭で登場 する50音順にした平仮名には、このような難易度の 差があることは明らかになった。つまり、書写学習 を第1宇目の「あ」から開始するということは、.

(5) という図式での展開が予測され、指導者側の格別の 工夫や配慮がない限り、挫折感のみが繰り返される. ための指導実践力」をも包含するものである。. のである。まして、第1宇目の「あ」の難度の高さ を考えれば、学習がそこで停止するか挫折するかは. という本研究Iで述べた『実技力』の定義を掲げ、 再度確認するものでもある。 平仮名学習の段階性・系統性を考える上で、欠く ことができないのが以下のグラフである。. 目に見えており、およそ効率的な学習方法とは考え られまい。 中学校に進むと、文学的な価値という側面から、 「いろは歌」を題材とした平仮名の学習も設定され. O O O O O O C 3 * 一 = M = > 一. OC3CX川川oOm仙約期阿川鞘仙粥t oo. SBBL SJM萱矧. O. でグラフにすると、下掲のような形となる。. 酸鼻度車の配列 . 4 ' 3 ウ も 1 1 旨 n X H - c - ォ 3 i / v w c o c f l l. る。 「難易度の集計一覧」を「いろは歌」の文字順. 、男 鵜㌔L=揖 拙 a at聖書盛儀想. A. 血 hJB晶Pn 施 … h血 日 ‥ ∩. グラフは、調査への回答から求められた難易度の. い は は と り る わ よ れ つ な む ゐ 義.ヰ I* 三.そ.き.ふ .A .i lる.+ . ろ にへ ち ね を か た そ ね ら うの くま ふ え あ きめ し ひせ ん. 順に配列したものである。このグラフには、難易度 の段階性が示され、学習の系統性をも垣間見ること. 「あ」を第1宇目とする50音順の導入よりは自 然で、特に「い」から「り」までには大きな難易度 の振幅はない。しかし、それ以降には何らの段階性 も系統性も感じられず、無意図的で羅列的である。 つまり、発音や文学性という立場からの文字順は、 書き方という書写学習の立場からは、何らの有効性 を示すものでもないということは明らかになる。に も関わらず、学校教育の現場での書写学習が、 5 0 音順や「いろは歌」によって実践されるのは余りに 便宜的で、学習の視点を喪失した教師側の教材研究 不足と言わざるを得まい。. ができよう。高難度の「ゐ」 ・ 「ゑ」の2文字が、 歴史的仮名遣いにおいて登場する文字であることを 考えれば、 「書く」という行為で難しいと考えられ るのは「ふ」が1位で、次いで「む」 「を」 「ぬ」 「な」となる。これら5文字が難しいとされる理由 は、以下の通りである。 文 字. ふ. 理. 由. 全 て の筆 画 が接 続 す る こ とが な い の で、 配 置上 の 目標 が 見 出 だ しに くい0. 標準とされる字体で、正しく平仮名を書けるとい うことも『実技力』の一つであることは否定できな. む. 第 2 筆 の 「右 回 り」 か ら 「左 回 り」 ヘ と反 転 す る用 . 運 筆 が 難 しいO さ ら. い。しかし、それさえあれば学習指導が成立すると 考えるのは誤りで、ここで指摘する段階的・系統的 な学習指導への視点と工夫も、筆者自身が論じ続け ている『実技力』であることを確認しておかなけれ ばなるまい。その意味で、. に、 活 字 と手 書 き文 字 の 字 形 に差 が 大 きい た め 、 標 準 と さ れ る字 形 の 実 現 形 が予 測 しに くい0. を. 第 2 筆 の 「く」 の角 度 が 把 捜 しに く い。 さ らに第 3 筆 が 左 回 り回 転 な の で. 本稿において言うところの『実技力』とは、 短絡的な「個人として、毛筆を駆使できる力量」 などを指すものではない。広範な知識・理論に 裏付けされた確実な表現技術は、必須の条件と して、当然、根底には存在している。しかし、 『教師に求められる-』という規定は、書写・ 書道教育の様々な実践場面において、学習者を 対象に有効な学習効果を発揮することができる 力量、つまり「学習者に表現技術を獲得させる. 運 筆 に 困 難 が 生 じる。. ぬ. 全 体 の形 の 取 り方 と結 び に困 難 が 生 じ る0. な. 「ふ」 同 様 で配 置 上 の 目標 が 見 出 だ しに く く、 結 び に も困 難 が 生 じる0. -27-.

(6) ・*. 二月ELLXK.SIez:. ロmW5S202B. ▲か=て▲⊥・p'. -.一蝣一--*. B ひ と つ づ き の ひ ら が な を か こ う 。. ノぐ・/・五し. lF. ・-. 」_」. 「易一難」へと学習が展開すること、難度の高い ものをどのような系統で習得するかということ、学 習の阻害要因を排除し、興味と関心の中でどう目標 に到達するかということなどが、段階性・系統性を 考えた学習指導につながる内容である。 これらを確認した上で、現行の小学校第1学年の 書写教科書(上掲資料)の冒頭教材が、 「つくし」 の3字である理由は容易に理解されるであろう。グ ラフの上で「つ」は第3番目、「く」は第2番目、 「し」は第13番目に易しいとされる文字である。 難度の低い順に15位までの平仮名を使用し、教材語 句となる可能性の高い2字句は、. 句であること。 であり、 ①∼③を包含する「つくし」が、定番のよ うに冒頭に位置付けられる妥当性が見えてくる。教 科書に教材が掲載されるから学習させるという立場 では、この背後にある教材の価値は見えてこない。 先に『実技力』として位置付けた「学習者に表現技 術を撞得させるための指導実践力」の必要性が、こ こで確認される。 「初等国語」での学習は以上のような形で進行し、 難 度 の 高 い 「ふ 」 を 抵 抗 な く教 え る た め に は 、 ど の よ うな段 階 性 . 系 統 性 を もたせ ます か○ 配 置 す る こ と が 考 え られ る 平 仮 名 を 例 示 し な さ い○. ・つり・もち・へい・くつ・くに ・くり・くち・くし・くも・つち. という指導計画へと進展する。回答は、次のような 形で提示される。. ・つの・うり・うち・うし・いく ・いけ・いし・てつ・けし・かく ・かつ・かう・かい・かに・にく ・にし・りく・りか・のり・しか ・Lも・こい・こし・もり・もの. を書かせるには?練習問題の書き入れ. の35である。 3字句となると限定され、 ・くもり・にかい・いかり・つくり. ラ い カ\L受ほ よ ㌃. ・いっか・かてい・かこい・こもり ・けいこ・りかい の10を数えるにすぎない。学習の冒頭教材として必 要な条件は、. を書かせるには?練習問題の書き入れ. ①発達段階に適応した親しみやすい語句であ. ること。 ②学習のスタートを感じさせる新鮮さをもつ. つ. 語句であること。 ③以降の学習を踏まえた基本的要素を含む語. -28-. 、 、、 り つ. ち. 、 ら ら.

(7) = つ. を書かせるには?練習問題の書き入れ. ら. し、. , つ. ら. b 、. , /) \. 以上のような経過を辿り、 2週間にわたる平仮名 の学習指導に関する考察は終了した。実態の把握に 始まり、その中から課題をつかみ出し、段階的・系 統的な学習を行うことの必要性は、とりあえずは理. 受講学生203名が挙げた字例を集計すると、対象文 字「ふ」への道筋は、かなり明確になってくる。. 解されたものと思われる。平仮名自体の詳細な分析 ・分類は、第2学年以降の「書写・書道」の講義・ 演習の中で実施される。 5. 「平仮名」の学習指導に付加すべき内容 文字習得期において、 「片仮名」 ・ 「平仮名」のいず れを先習させるかという論議は、以前から盛んに行われ ている。ある国語教育者は、その論議に言及して、 書写関係者の一部には、 「片仮名」を先習す るべきとの意見もある。そして、 「平仮名」が、 なぜ先習なのかと問題にされるが、それは「漢 字」と「平仮名」が国語の中心的な文字である からである。. も「う」が適切であろう。これは、 「ふ」の字 形を「う」と「い」の合成字とする考え方であ る。 「つ」については、第2筆の部分練習と考 えて良い。. と語っている.極めて明快な論法であるが、その一方で は、 「文字は読まれるもの」との立場での主張に過ぎな いとも思える。逆の立場からすれば、この「活用」に片 寄った指導が「書き方」を阻害し、 「文字を書く力」す なわち「書写力」の退行を生じさせているのではないで あろうか。 OA化が進行し、ワープロが万能の機器であ るかのように扱われる今日においても、人間は自分の頭 の中に明確に文字を書き続け、その像と提示される図形 を照合しながら、文字としての認知を続けているのであ る。その意味で、文字は人間が書くものなのである。い ずれの時代であれ、 「書く」という行為が喪失するもの ではなく、効率良い書き方の指導なくして、効率良い文 字活用も存在するものではあるまい。 「平仮名」の学習指導も、この「書き方」と「活用」 の密接な相関の中で成立するものであり、発音のままに 表記できるという有効性のみを主張するべきものではあ るまい。周知の通り、右手による縦書きという文字文化 の中で成立した漢字・仮名は、基本的に右回り回転の運 動性を基調としている。それはアルファベット系の文字 が、同じ右手による苦学でありながら、横書きという習 慣から左回り回転の運動性を基調するのと大きく異なる. 以上を総合し、補足しながら学習の系統図を 措くならば、. 点でもある。従来から、 「平仮名」の中でもアルファベッ ト系の文字のような左回り回転の文字、つまり、. (「ふ」は対象文字なので除外した。) 第1位「う」163 第2位「ら」142 第3位「ろ」140 第4位「っ」133 第5位「い」105 学習は次のようにまとめられる。 「ふ」の第1・2筆の関係から、「う・ら・ ろ」の3文字が想起され、活用できる文字群と して設定された。しかし、 「ろ」は斜めの線が 明らかな実線であり、 「ふ」とは要素が異なる ので、練習文字から除外して良い。似通った文 字を想起し、発展を考えるならば、 「ら」より. -29-.

(8) を見るとき、小学校段階での仮名指導欠落の影響の大き さを感じない訳にはいかない。. 「と」「を」 「 て」「そ」「む」「ひ」. などは、書きにくい文字の代表として位置付けられてき た。現在のような横書きが多用される社会的背景を考え るならば、ここに掲げるような文字は、逆に書きやすく なっている筈であるが、その兆候は微塵も感じられない。 そればかりか、かえって右回り回転の文字の横配列とい う無謀さにより、平仮名の多くの文字の字形が損傷され ているのが現状であろう。古くは「丸文字」、あるいは 「マンガ字」と呼ばれた変形した文字群、最近では「長 形へタウマ文字」と称される文字群が、この象徴的な事 例であろう。変形した文字群への大人社会からの批判は 多いが、その現象を生じさせている自らへの反省は置き 去りにされたままである。これら一連の現象は、児童・ 生徒など若者の責任というよりも、紛れもなく大人社会 の文字言語への無関心と、無理解が招いた結果であるこ とに気付かねばなるまい。 書き方を学ぶ以前に、書かねばならぬ状況に追い込ま れる。これこそが、 「活用」が優先された屈折した状態 であろう。当然、書写教育の側にも大きな問題がある。 例えば、 ・平仮名のみならず漢字などの学習指導において も、 「はね」 ・ 「とめ」といった微細な部分に指 導が集中し、効率良く書く以前に、 「文字とは面 倒なものだ」という拒否感を与えてしまっていな いか。 ・字形を整えて伝達性を高めるための筆順を、単 なるテスト対象の記憶物に追い込んでいないか。 ・象形性や表意性といった漢字の不思議ばかりを 説いて、仮名の学習指導を軽視していないか。 ・限定された数量であることに甘えて、仮名の学 習指導を網羅的・羅列的に行っていないか。 等々、数え上げればきりのない実情が横たわっている。 本学2年生を対象として、毎年、漢字・仮名の筆順調査 を実施する。 (数値は1 9 9 3年度生のものである。). 登-正しい筆順で書くもの. 19.0% 23.8% 52.4% 54.0%. 書-正しい筆順で書くもの. 55.6:. 医・-正しい筆順で書くもの 感-正しい筆順で書くもの 長一正しい筆順で書くもの. という漢字の実態よりは定着度は高いものの、 ヲ・-正しい筆順で書くもの ネ-正しい筆順で書くもの せ-正しい筆順で書くもの. 36.5% 88.9% 93.7%. -30-. 6.おわりに 多様化・個性化の時代であると言われる。しかし、こ と伝達記号としての文字に関しては、その多様化・個性 化ばかりを持ち込むことはできない。書芸術の表現とは 違い、求められるのは伝達記号としての基本的な規則性 であろう。しかし、規則性を教えれば教えるほど、学習 は消極的で無気力なものになる。 「書写の学習は楽しく ない」と児童・生徒が訴える原因も、この規則性に縛ら れた無味乾燥な学習形態にあるのかも知れない。 規則性を求めながらも、主体的で活気ある学習を構築 するには、 「学習者に表現技術を獲得させるための指導 実践力」習得への努力を続ける以外あるまい。 「書写」 と言えば「文字を書くこと」、 「書写の指導」と言えば 「手本が書ける力」、 「書写の評価」と言えば「加朱添削」 と繰り返される短絡的な理解を断ち切ったとき、新しい 書写指導の道が開けてくるのではないか。その視点を堅 持しながら、今後とも初等教員となる学生を対象とした 指導実践と研究を、継続的に展開していきたいと考えて いる。.

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