一部代位者の権利行使について
27
0
0
全文
(2) 一部代位者の権利行使について. 範囲内において,債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権 利を行使することができる J( 5 0 1条本文)。これが「弁済による代位」の制度 であり,. I 代位弁済者が債務者に対して取得する求償権を確保するために,法. の規定により弁済によって消滅すべきはずの債権者の債務者に対する債権(以 下「原債権」という。)及びその担保権を代位弁済者に移転させ,代位弁済者 がその求償権の範囲内で原債権及びその担保権を行使することを認める制 度J I 11であると解されている 1 2 1。弁済による代位は,原債権が,代位弁済者に 法律上当然に移転することであり 1 3 1,この原債権を担保する各種の担保も原債 権に随伴して代位弁済者に移転するが,移転する担保権の被担保債権は原債権 であり,求償権ではないとされているほ)。このような弁済による代位の効果は, 債権の全額が弁済された場合に生じるが,債権の一部が弁済された場合にも生 じる O 債権の一部について代位弁済があったにとどまるときには,. I 代位者は,. その弁済をした価額に応じて,債権者とともにその権利を行使する J( 5 0 2条 l 項)とされている O そして,. I 債権者とともにその権利を行使する Jことの意義については,周. 知のとおり,学説では見解が分かれている O 一部代位によって,原債権が一部 弁済者に一部移転することに伴って,原債権の担保権も一部弁済者に移転する ところ,原債権者や一部代位者がどのように担保権を行使し,満足を受けるこ とがでーきるかが問題とされてきている O この問題は,権利の行使の面と権利の. 1 1 1 最判昭和 5 9・5・ 2 9民集 3 8 巻 7号8 8 5頁 。 1 2 1 弁済による代位の沿革や学説等に関しては,貞家鬼巳「弁済による代位」金法 5 0 0号 3 5頁以下 0968 年),寺田正春「弁済者代位制度論序説 1 1 1 1 2 1 1 3 1 保証人と連帯債務者の代伏を中心として 」 大阪市立大学法学雑誌 2 0巻 l号 2 4頁以下, 2号 1 8 9頁以下 0973 年 ) , 3号 2 9 9頁以下 0974年),船 越隆両JI弁済者の代位」星野英一編集代表『民法講座第 4 巻債権総論~ (街斐閣, 1 9 8 5年) 3 3 7頁以. 。、. ドに詳し L. 1 3 1. 我妻祭『新訂債権総論~ (岩波書府,. 1 9 6 4年) 2 5 4頁,潮見佳男『債権総論〔第 3版 1 n~ ( 信[ J l. 社 , 2 0 0 5年) 2 7 9頁等。. 1 4 1 前掲(注 ( 1 1 ) 最判昭和 5 9・5・ 2 9参照。 48.
(3) 法 科 大 学 院 論 集 第 5号. 満足の面に分けて検討されるようになっている 1 5 1 。つまり,問題は,第 lに , 一部代位者は代位した権利を単独で行使することができるか,第 2に,権利の 満足面における債権者と一部代位者の優劣である O より具体的には,原債権の 担保のために抵当権が設定されている場合には,原債権者や一部代位者は,抵 当権を単独で実行することができるのか,そして,その抵当権が実行された場 合には競売代金はどのように配当されるのかが問題となるのである。ここでは, 残債権を有する原債権者と債務者に対して求償権を有する一部代位者の利害調 整をいかに考えるかにより,判例・学説が分かれていると考えられる。 一部代位に関しては,一部代位者は債権者を害することがでーきない,すなわ ち,債権者が一部代位者に優先する(抵当権の実行による配当においては債権 者が優先して債権の回収ができる)と考える立場(債権者優先主義)と債権者 と一部代位者が平等の地位にある(抵当権実行の場合に債権者と一部代位者が 按分して配当を受ける)との立場(平等主義)の二つの立法主義があるとされ る。わが民法は,平等主義を採用したとされ,さらに進んで,判例(大決昭和. 6・4・7民集 1 0巻 5 3 5頁。以下, I 昭和 6年決定JとL 寸。)は,一部代位者 は,抵当権を原債権者と共同せずに単独で実行できるとした。学説はこの大審 院判例を批判し,一部代位者は担保権の実行は原債権者と共同でしなければな らず,債権の満足に関しては,一部代位者は原債権者に劣後することを主張し, かかる考え方が通説的見解となった。そして,権利の満足面での問題に関して は,最高裁は,物上保証人所有不動産につき共同抵当権が実行された結果,一 部弁済・一部代位が生じ,その後債務者所有不動産上の抵当権が実行された事 案において,一部代位者である物上保証人が債権者に劣後することを明らかに している(最判昭和 6 0・5・2 3民集3 9巻 4号9 4 0頁1 6 1 。以下, I 昭和 6 0年判決」. 1 5 1 この二つの場面に分けて検討するのが,妥当とされている(林良平(安永正昭補訂) =石田喜久 夫=高木多喜男『債権総論(第 3版 H C 青林書院, 1 9 9 6年) 2 9 4頁)。 ( 6 )r 本件判解」として,門口正人・最高裁判所判例解説民事第昭和 6 0年度 2 0 3頁以下がある。また,. 4 9.
(4) 宇部代位者の権利行使について. とL寸。)。昭和 6 0年判決は, i 債権者が物上保証人の設定にかかる抵当権の実 行によって債権の一部の満足を得た場合,物上保証人は,民法五O二条一項の 規定により,債権者と共に債権者の有する抵当権を行使することができるが, この抵当権が実行されたときには,その代金の配当については債権者に優先さ れると解するのが相当である。けだし,弁済による代位は代位弁済者が債務者 に対して取得する求償権を確保するための制度であり,そのために債権者が不 利益を被ることを予定するものではなく,この担保権が実行された場合におけ る競落代金の配当について債権者の利益を害するいわれはないからである」と 判示する O こうして,債権の満足の段階においては,判例は原債権者優先主義 を採用することが明らかとなったといえるへ しかしながら,昭和 6 0年判決は,権利の満足面についての問題を扱ったもの であり,一部代位者が抵当権実行を単独で申し立てることができるか,つまり, 大審院昭和 6年決定が今日でも維持されるかは明らかになっているとは L、えな いであろう。また,今日でも,なお,学説においても,権利の満足面における 平等主義を是とするものもみられるのであり,詳しくは後にみるが,いまだ帰 ーするところを知らないと言って大過ないだろう。 さらに,近時,最判平成 1 7・1・ 2 7民集 5 9巻 l号 2 0 0頁(創は, i1個の抵当 権が数個の債権を担保し,そのうちの 1個の債権のみについての保証人が当該. 本件の判例研究は数多いが,さしあたり,安永正昭「共同抵当における物上保証人提供物件の後順. 1 4 1号 6頁以下 0986年入村山利喜弥「債権の一部につき代位弁済 位抵当権者の法的地位」金法 1 がされた場合の競落代金の配当についての債権者と代位弁済者との優劣 J手形研究 4 0 1号 2 2頁以ド. 0987年)をあげておく。 ( 7 ) 判例の評価については,例えば,潮見住男『プラクティス民法. 債権総論[第 3版 H( 信1 I 1社 ,. 2 0 0 7年) 3 6 6頁を参照。なお,最判開和 6 2・4・2 3金法 1 1 6 9号 2 9頁も原債権者優先主義を採用する 2年判決の意義については,潮見佳男「複数債権のうちの ことを明らかにするとされている。昭和 6 ・部債権の全額弁済と破産債権査定. 一部債権の全額弁済と破産子続きにおける『手続開始時現存. NBL8 9 1号 1 2頁以下 ( 2 0 0 8 年)を参照。 ( 8 ) I 本件判解」として,中村也、l 志・曹時 5 9巻 1 0号2 5 7頁を参照。また, I 本件判批」として,潮見 1・6 4 5号 5 4頁,安永正昭・平成 1 7年度重要判例解説(別冊ジュリスト 1 3 1 3号) 8 0 佳男・銀行法務 2 額主義 ~J. 5 0.
(5) 法 科 大 学 院 論 集 第 5号. 債権に係る残債務全額につき代位弁済した場合」につき,. ド記のような判示を. している(以下. I 平成 1 7年判決」と L寸。 ) 0I 抵当権は債権者と保証人の準共 省となり,当該抵当不動産の換価による売却代金が被担保債権のすべてを消滅 させるに足りないときには,債権者と保証人は,両者間に上記売却代金からの 弁済の受領についての特段の合意がない限り,上記売却代金につき,債権者が 有する残債権額と保証人が代位によって取得した債権額に応じて案分して弁済 を受ける」。 このような場合は. 5 0 2条の定める一部代位の問題ではないとするのが判例 の立場であることに注意する必要があろう O とは L、え,平成 1 7年判決では,抵 当権は債権者と保証人の準共有となることが案分の根拠とされているが. 5 0 2 条が適用される一部代位の場合には昭和 6 0年判決は準共有とは言っていな L。 、 一部弁済による一部代位の場合においても,抵当権は平成 1 7年判決の事案と同 様に準共有の状態になると考えられるところ,なぜ異なる処理をするのか疑問 が生じるところである O そこで,本稿では,昭和 6 0年判決を前提とし,権利の満足面における債権者 優先主義を採る場合において,一部代位者の単独での権利行使の可否につき, 若干の検討を加えてみたいと思うゆ)。以下では,まず,一部代位に関する初期 の判例及びその後の学説・裁判例の展開を整理し,そのうえで,一部代位者の 単独での競売申立ての可否について,検討を加えるものとする。. 頁,森田修・法学協会雑誌 123巻 6 号 1167 頁,牛:!f~ 長幸・ NBL. 8 0 5号1 0頁,古積健三郎・銀行法務. 2 1・6 6 3号7 1頁,同・私法判例リマークス 3 3号3 8頁等がある。また,原審の評釈として,潮見佳男 11倒の抵当権で担保された夜数債権の一部についての全部代位弁済」金法 1 7 2 5 号 8頁がある。 ( 9 ) 本稿は,もっぱら,権利の行使の段階での問題を検討の対象とするが,権利の満足両に焦点をあ. てて考察するものとして,森永淑子「一部代位における債権者優先主義について 福岡大学法学論叢4 8 巻 3= 4号 3 6 1頁以. f (2004年)がある。 51. 日本法を中心に. 」.
(6) 一部代位者の権利行使について. 2 一部弁済による一部代位 ( 1) 一部代位が問題となる場合. 債権の一部弁済は,例えは,割賦債権の場合に生じる O また,貸付債権の一 部を保証した保証人が保証債務を履行した場合にも生ずる(一部保証)。また, 任意の弁済でなくても,担保権の実行により債権者が弁済を受けた場合にも弁 済による代位が生じるとされているから制,債務者が債務を履行しない場合に, 第三者の提供した担保を実行して債権の一部の弁済を受けた場合にも生じうる ことになる問。. 0 2条 一部代位の場合における権利行使の内容に関する立法例及びわが民法5 の起草の経緯については,いずれも,すでに紹介及び検討がなされているがω, 以下では,本稿の検討目的に必要な範囲で簡単にみておくことにする。. ( 2 ) 一部代位に関する立法例及び民法5 0 2条の規定内容 一部代位に関しては,一部代位者は債権者を害することができない,すなわ ち,債権者が一部代位者に優先する(債権者優先主義)との立法例が多いとさ れる (130 フランス民法 1 2 5 2条は,債権者が一部の弁済をうけたにとどまるとき. 1 1 0 1 大判昭和 1 1・1 2・9民集 1 5巻 2 1 7 2頁,最判昭和 4 4・7 ・3民集 2 3巻 8号 1 2 9 7頁等。この点につい 主( 3 1 2 5 0貞,潮見・古i 掲注 ( 3 1 2 8 7頁等も参照。 ては,我妻・前掲 i 日 1 一部代位の生じる場合に関しては,味村治「一部弁済による代位」加藤一郎=林良平二河本一郎 編『銀行取引法講座〈中)~ (金融財政事情研究会,. 1 9 7 7年) 2 2 7頁を参照。. 1目 立法例及び 5 0 2条の起草過程については,貞家克巳「弁済による代位」金法 5 0 0号3 5頁以下(19 6 8 年),磯村哲編『註釈民法1 1 2 1債権( 3 U (有斐閣, 1 9 7 0 年) 3 5 2頁以下〈石出喜久夫),船越隆司「弁済 者の代位J 星野英 e編集代表「民法講座第 4 巻債権総論~ (有斐閣,. <史料〉債権総則 潮見佳男 1. 1 9 8 5年) 3 5 5頁以下,高橋員二. ω」民商法雑誌95巻 5号767頁以下(1987年)等があり,本稿の以下の. 記述はこれらの文献を参考にさせていただいている。. 1 1 3 1 高橋=潮見・前掲注1 1 2 1 7 7 1頁 。. 5 2.
(7) 法 科 大 学 院 論 集 第 5号. には,その代位によって債権者を害することを得ない旨を規定する凶)。これは,. Nemo c o n t r as e subrogasse c e n s e n t u r (何人も自己の意に反して代位を為 せるものと看倣さるることなし町という法諺に基づくものとされ,残存債務 につき,原債権者が一部代位者に優先して弁済を受ける権利を留保するとみな されるという O また,. ドイツ民法は,代位を定める個別規定において,一部代. 位者が代位を主張することが債権者の不利益になる場合にはこれを認めない旨. 7 4条 を定める(ドイツ民法 7. l項等)制。これに対して,わが民法は,債権者と. 一部代位者が平等の地位にある(抵当権実行の場合に債権者と一部代位者が按 分して配当を受ける)との立場(平等主義)を採用した。│日民法1 1 引が当時の イタリア民法にならって,一部代位者が債権者と共に権利を行使するという主 義を採弘法典調査会では,債権者優先主義を採るべきであるという修正案が 提出されたが,結局は,平等主義を採る原案が維持されたものである制。 したがって, 5 0 2条 l項は,起草当時には,一部代位により担保権が実行さ れた場合には,原債権者と一部代位者とが按分配当を受けることを定めている と理解されていたといえよう。. 1 1 4 ) フランス民法 1 2 5 2条については,神戸大学外国法研究会編『仏蘭西民法〔皿〕財産取得法 1 2 U (有斐閣. 1 9 5 6年) 2 0 0頁以ドを参照。また,仏語文献として. T E R R E . SlMLERe tL E Q U E T T E .D r o i t b l i g a t i o n s,D a l l o z,9 'e d .,2 0 0 5,n "1 3 8 4,BENABENT,D r o i tc i v i l,Les o b l i g a t i o n s, c i v i l,Les o. Montchrestien,1 0 'e d .,2 0 0 5,ぜ 7 4 8,MALACRlE ,AYNES e t STOFFEL-MuoJCK,D r o i tc i v i l,Les o b l i g a t i o n s,D e f r e n o i s,2 'e d .,2 0 0 5,n "1 3 0 5 等を参照。 5 ) 訳については,杉山直治郎『仏蘭西法諺~ 4 U ' i を参照。 日. 1 2 ) 4 0頁 。 附 貞 家 ・ 前 掲 注1 7 ) I 日民法財産編4 8 6条 。 日 1 日 貞家・前掲注( 1 2 ) 41 .4 2頁,船越・前掲注目印3 5 5頁,高橋=潮見・前掲注日2 ! 7 7 1頁以下,法務大臣官 房司法法制調賓部監修「法典調査会民法議事速記録三~ (尚事法務研究会,. 1 9 8 4年) 3 1 2頁以下。な. お,平等主義のほうが第三者の弁済を奨励することが理由としてあげられている。. 53.
(8) 一部代位者の権利行使について. 3 半J I 例及び学説の展開 ( 1 ) 判例及び学説の動向. 立法当初の初期の文献では,平等主義の説明がなされているが,満足面での 原債権者と一部代位者との関係を論じるものばかりで,権利行使について,意 識されるようになったのは,昭和 6年決定以降であるといってよかろう O 昭和. 6年決定が,一部代位者による単独での抵当権実行を認めたことに対して,学 説の批判が強く,一部代位者は,単独では抵当権の実行ができず,配当におい ては,原債権者が優先するという見解が通説的地位を占めるに至る。その影響 か,下級審裁判例には,一部代位者は,原債権者と共同しなければ抵当権の実. 0年判決が権利の満 行ができない旨を述べるものも現れている。その後,昭和 6 足面において原債権者優先主義を採用することを明らかにしたが,権利行使の 場面で,一部代位者の単独行使も否定されるのかについての最高裁判例はなく, 学説においては,平等主義を主張するものもみられ,様々な見解が存するとい う状況にある。以下において,判例及び各見解の根拠等をみることとする O. ( 2 ) 初期の学説 競売申立ての問題については,触れられていないが,権利の満足面での平等 主義を優れたものとして説明するものが多くみられる制。その理由とするとこ ろは,債権者は一部の弁済を拒むことができ,全く拒まない場合にも特約によ り債権者が権利を行使した後にのみ代位権を行うことを約することも可能であ ることである倒。また,一部弁済により担保の一部分は不要に帰したのであり,. 日 ) 9 川名兼四郎「債権縮、論 j (金刺芳流堂, 1 9 0 5年) 3 4 8頁 , i i坂音問郎『日本民法債権編第 4巻」 (有斐閣, 1 9 1 4年) 1 2 9 6頁等。 自 由 梅謙次郎『民法要義巻之三 j (オンデマンド版) ( 2 0 0 1年) 3 1 8頁 。. 5 4.
(9) 法 科 大 学 院 論 集 第 5号. 一部代位者に権利を行使させても原債権者が損害を受けることはないこと,そ して,債権者は一部弁済によりその担保の幾分かは不要に帰しているので,代 位弁済者をして共に権利行使させても損害を受けることはなく,債権者を優先 させるとかえって不当に債権者を保護することになるし,債務者が債務の一部 を弁済すると,その額だけ債務者が財産総額を減ずることになるが代位弁済者 が一部を弁済したときには,債務者の財産を減ずることにはならないので,債 権者が代位弁済者と共に権利を行使しても損害を受けることはないとされる a l 1 。 このほか,. ドイツ法やフランス法の債権者優先主義は,債権者が担保の一部を. 失う結果になることが酷になるとするからであるが,債権者と代位者が平等に 権利を行使し,債権譲渡と同様にすることは債権者に酷ではなく,かえって公 平であるという問。 昭和 6年決定前後には,わが民法が平等主義を採用したために債権者が損失 を被ることがありうることを指摘するものがみられる倒。また, 5 0 2条の構造 を説明し,昭和 6年決定を紹介するものがある ω。 なお,基本的には平等主義に立っと思われるが,代位者が保証人または連帯 債務者の場合には,債権者が優先するという見解もみられる ω。この見解は, 保証債務または連帯債務が残存するのに債権者と同順位に権利を行使するのは, 債権者の債権の満足を妨げ,保証債務又は連帯債務の本旨に反すると考えるも のである O. 日 白. 岡恰参太郎『註釈民法理由下巻債権編~. 自 由. 仁井田益太郎「代位弁済」法学協会雑誌 3 3巻 l号 9 4頁 0915 年),横凶秀雄『債権線論(第 1 9版 H. (復刻版, 1 9 9 1年) 3 1 4頁 。. c i 古水書1 占 , 1 9 2 4 年) 9 3 3頁以下。. ω 鳩山秀夫『日本債権法総論~. ( 19 2 5年) 421 頁,中島玉吉『債権総論~ (金利芳 i t堂 , 1 9 3 0年) 3 5 7. 頁以ト召義雄『債権総論~ (巌松堂書!占,. 1 9 3 6 年) 5 0 6頁。田島順=柚木馨=伊達秋雄二近藤英吉. 4 5頁は,立法論として賛同しがたいと述べる。 『註釈日本民法債権編総則(下巻 H 0936年) 2 凶. 田島順『債権総論~ (弘文堂書房,. 1 9 4 0 年) 2 7 3貞,勝本正晃『債権法総論(8版 H 0943年) 3 7 1. 頁,石田文次郎『債権縛論(第 1 3版 H (早稲田大学出版部, 1 9 6 3年) 2 5 7貞 。 12~. 岡村玄治『改訂債権総論(第 6版H (巌松堂書!占, 1 9 3 2年) 3 1 9頁 。. 5 5一.
(10) 一部代位者の権利行使について. 立法段階では,権利の満足面での平等主義を問題としていたと思われるとこ ろ,一部代位者による担保権の単独行使の可否が論じられることになったのは, 昭和 6年決定によりこの問題が意識されることになった結果であると考えられ る 。 そこで,次に,一部代位者の権利行使に関して判断した昭和 6年決定の詳細 について確認しておく. O. ( 3 ) 昭和 6年決定自由 昭和 6年決定は,債権の一部弁済をした保証人が主債務者の設定した抵当権 の実行を単独で申し立てることを認めており,債権の一部弁済による代位の場 合において,一部代位者が,自己に移転した債権者の債務者に対する権利を単 独で行使しうるのかという問題についてのリーディングケースとされているも のである。 事案の概要は次のようなものである O. 訴外 Aは , B銀行より 4万円を,利息は年 9分 3厘,元金は大正 1 5年 3月よ. 6年 2月末日までの聞に毎年 2月と 8月の各 1 5日に 2 , 4 9 9円 1 7銭ずつ分 り昭和 1 割払いとし,. 0 0円につき日歩 4銭の遅延利 もしその支払いを怠ったときには 1. 息を支払う約定にて借り受け,これらの債務を担保するために, A所有の本件 不動産に抵当権を設定した。そして,. x(抗告人)は,. となった。その後,昭和 5年 5月 7日に,. Aの上記債務の保証人. xは保証債務の履行として. B銀行. 5日及び同年 8月 1 5日に支払うべき元金合計 4, 9 9 8円3 4 に対し,昭和 5年 2月 1 銭及び約定遅延利息金 3 3 1円8 8銭を支払い,同年 6月 5日,上記抵当権登記に 代位の附記登記を行った。ところが,主債務者 Aがその償還に応じないので,. 副 目. 大決昭和06 ・4・7民集 1 0巻 5 3 5頁。本決定の評釈として,吾妻光俊・判例民事法昭和 6年度 5 6 事件,末川博・法学論叢 2 7巻 2号 3 2 4頁,伊藤進・本百選〈第 5版新法対応補正版> 9 0頁,寺田正 春 ・ 判 例 講 義 民 法 H 債権〈補訂版>111貞がある O. 56.
(11) 法 科 大 学 続 論 集 第 5号. X は抵当権実行のため徳島区裁判所に競売の申立てを行った。しかし,徳島区 裁判所は. Xは B銀行と 1個の抵当権を共有するものであるから. B銀行と共. 同でなければ競売の申立てをすることはできないとして,申立てを却下した. 0巻 5 3 6頁参照)。そこで (徳島区判言渡年月日不詳民集 1. Xは徳島地方裁判所. 3 6頁参照)は,抵当 に抗告したが,原審(徳島地判言渡年月日不詳前掲民集 5 権をもって担保されている割賦弁済の定めのある債務については,保証人が一 部弁済を行っても残存債務につき期限の未到来その他の事由により債権者が抵 当権を実行できない時期にはおいては,代位者として抵当権の実行をできない として,抗告を棄却した。このため,. Xがさらに大審院に対して抗告した。. l )Xは,法定代位 抗告理由は,要約すると,次のとおりである O すなわち, (. 0 1条により Xが一部弁済した時に債権者が有していた債権 権者であり,民法5 及びそれに付従する担保物権行使等の一切の権利の移転を受けており,債権者 が残債権につき自ら抵当権を実行しうる時期にあるか否かは Xの権利に消長を きたすべきものではなく,民法 5 0 2条 1項は請求権の限度を示したもので担保. 2 )わが民法が 5 0 1条本文の権利を認 権行使に制限を加えた規定ではないこと, ( めたのは代位弁済者を保護し,債権の弁済を奨励し取引の円滑にすることを目 的としているが原決定のように解すると代位者の保護が薄くなり,不測の損害. 3 )残債権者が債務者と結託して弁済延期を合意す を被らせることになること, ( るときには代位者は権利を有さないのと同様になることである O これに対して,本決定は次のように判示して,取消差戻しとした。 「債権ノ一部ニ付代位弁済アリタルトキハ代位者ハ其ノ弁済シタル価格ニ応 シテ債権者ト共ニ其ノ権利ヲ行使シ得ヘク其ノ権利ニシテ分割行使ヲ為シ得ル 以上之カ行使ニ付債権者ト共同スルノ要ナク各別ニ之力行使ヲ為シ得ルコト民. 0 2条第 l項ノ規定ニ徴シ明白ナリ蓋同法条ニハ単ニ『債権者ト共ニ其ノ 法第 5 権利ヲ行フ』卜アルニ過キサルモ其ノ権利ニシテ分割行使ヲ為シ得ル場合ニ於 テハ債権者卜共同スルコトナク各自其ノ割合ニ応シテ各別ニ之カ行使ヲ為シ得 5 7.
(12) 一部代位者の権利行使について. ル趣旨ナルコト同条第 2項ト対照上妻モ疑ヲ存ルル余地ナケレハナリ而シテ右. 0 2条第 l項ニハ債権ノ一部ニ付代位弁済ヲ為シタル者カ其ノ弁済シタル価 第5 格ニ応シ債権者ノ権利ヲ行使スルニ付何等ノ制限ヲ設ケサルヲ以テ残存債務ニ 付債権者カ其ノ権利ノ実行ヲ為シ得ル時期ニ達シタルト否トヲ問ハス一部代位 者ハ同条項ニ基キ債権者ノ権利ヲ行使シ得ルモノ卜解セサルヘカラス」。 このように,本決定は,一部代位者が移転した抵当権を債権者と共同せずに, その債権額に応じて単独で実行できるとした。しかも, 5 0 2条 l項にはなんら の制限もないから債権者が残存債権について権利を行使しえたか否かを問わず に一部代位者は債権者の権利を行使できるとしている。. ( 4 ) 学説の状況. 昭和 6年決定が一部代位者による単独での抵当権実行を認めたことは学説の 強 L、批判を受けることになる的。一部代位者は債権者と共同しなければ代位し た権利を行使できないし,配当については債権者が優先するとの主張である O その代表的なものは,弁済者代位の制度目的は求償権の確保であり,債権者の. 0 2条 l項の文理解釈として,一部 利益を害しではならないとの前提に立ち, 5 代位者は債権者と共同しなければその権利を行使しえないと解されること,一 部代位者に単独での担保権実行を認めると抵当権者が担保物の処分を強いられ ることになること,配当についての平等主義が担保物権の不可分性に反するこ となどをその論拠とする倒。また,昭和 6年決定のような事案で,一部代位者. 本件に関する吾妻光俊・判例民事法昭和 6年度 5 6事件が,債権者の t o _保権行使に付随してのみ担. 間. 保権が行使しうるとする。. 日 白. 我妻祭『新訂債権総論~ (岩波書庖,. 1 9 6 4年) 2 5 4頁. 2 5 5頁。また,同様の見解として,於保不. て雄『債権総論〔新版 H C 有斐閣. 1 9 7 2年) 3 8 8 .3 8 9貞,松坂佐一『民法提要債権総論(第 4版 H (有斐閣. 1 9 8 2年) 2 4 3頁 。. ただし,担保物権の不可分性で,債権者優先主義を正当化することができないとの批判がある O この点につき,潮見 " I I I i掲注1 3 1 2 9 6貞,味村・前掲沌( 1 1 ) 2 7 7員,石田・前娼注問3 5 5頁を参照。. 58.
(13) 法 科 大 学 院 論 集 第 5号. の単独での担保権実行を認めると,債権者が担保権実行をできないおそれが生 じると批判する倒。 なお,これらの学説は,明確に述べられてはいないけれども,一部代位者は 代位した権利を債権者と共に行使しなければならないが,債権者は一部代位者 の同意なしに単独で債権者の権利を行使しうると考えていると思われる倒。 今日でも上記のような立場が通説的見解であるといえよう旧1。もっとも,権 利行使の段階(抵当権の実行)と権利の満足の段階(配当)での考え方の組み 合わせが 6通りあることが指摘されているが ω,実際に,これらの組み合わせ により,様々な見解が主張されている。 債権者・一部代位者のいずれも単独で権利を行使できるが,代位者の権利行 使が債権者を害するときには代位者は単独では権利を行使しえず,配当におい ては債権者が優先するとするもの ω,債権者・一部代位者のいずれも単独で権 利を行使できるが,一方の権利行使が他方を害するときには共同で行使しなけ. 田 世. 石本雅男『債権法総論~ (法律文化社,. 1 9 5 1年) 1 8 2頁 , 1 8 3頁,柚木馨(高本多喜男補訂) ~判例. 債権法総論(補訂版 H (有斐閣, 1 9 7 1年) 4 5 7貞,絵坂佐占「民法提要債権総論(第 4版 H C有斐. 9 8 2年) 2 4 3頁 。 閣 , 1 自 国. 柚木=尚木・前掲注目別 4 5 7頁,於保・前娼注目印 3 8 9頁 。. 自 J ) 尾野英一「中小漁業信用保証の法律的性格」同『民法論集第 2 巻~ (有斐閣,. 1 9 7 0 年) 2 6 1頁,平. 9 9 4 年) 208頁,平野裕之『債権総論~ C 信山社, 2 0 0 5年) 井宜雄『債権総論(第 2版 H (弘文堂, 1 77 頁,中国俗泰『債権総論~ (宥波書庖,. 2 0 0 8年) 3 4 6貞等。また,. までよいのか」椿寿夫ほか編『民法改正を考える~ (日本評論社,. J t居功「一部代 1 1i.規定はこのま 2 0 0 8年) 2 6 2頁以下は, I 一部弁. 済では原債権者が優先する以上,担保権の行使局面でも代位者に容嫁の余地はなく,原債権者が優 先するというのが一貫する」とされる。. 3 ( 2 ) 山下孝之「保証人の代位請求J法時 4 5巻 9号 1 8 8頁 0973年)は,権利の行使については,債権 者のみが行使しうる説 (A説),債権者・代位者共同で行使しうる説 (B説),債権者または代位者. C説)が存し,権利の満足については,債権者が優先的に満足をうけると が単独で行使しうる説 ( の説(イ説)と,債権者・代依者が平等に満足をうけるとの説(ロ説)があり,これらの組み合わ せが 6通りあるとする O また,斎藤宏「債権の一部について代位弁済をなした者の権利行使につい て」判タ 1 4 7号4 9頁以下 0963年)は,法定代位と任意代位を l 又別する見解をあげて, A~G 説の. 7説をあげる。. 3 2 )1 8 7頁 。 関山下・前掲注 (. 5 9.
(14) 一部代位者の権利行使について. ればならず,配当においては債権者が優先するとするものがある例。同様に, 配当については,債権者優先と考えるが,一部代位者の担保権の単独実行を認 める見解もある旧日。. 0年判決があるが)平等主義に立つ見解も 権利の満足面においては, (昭和 6 見られ,そのようなものとして,一方の権利行使が他方を害するときには共同 で行使しなければならず,配当においては平等(按分配当)とすべきとするも の側,一部代位者は単独で申立てができず(債権者と共同で申し立てるか,債 権者が単独で申し立てた手続において権利を行使する),配当においては平等 と考えるもの聞などがある倒。 また,法定代位と任意代位の峻別を主張する見解もみられる自由。この見解は, 法定代位の場合には,制度の沿革・比較法からみて債権者の利益を害するべき ではないし,保証人なとは以前残存債務を負担する劣後的関係にあるとして, 共同行使=債権者優先配分説酬に従うとし,任意代位の場合には,債権者の 承諾を得て代位権が発生するから,代位者の権利が債権者に劣後する理由がな く,両者は対等に置かれるべきであるとして,単独行使=平等配分説に立つと. 倒 林 ( 安 永 ) =石田=高木・前掲注( 5 1 2 9 3頁。 日 。 寺田正春「一部代位における債権者優先主義」金融法研究資料編( 3 1 8 5頁以下 0987年)。担保権 実行については昭和 6年決定を維持し,一部代{i/.者への単独実行申立を認めることを原則としたう. 3条)にだけ単独実行申立を えで,配当劣後する一部代位者への配当見込がないとき(民事執行法6 認めないものとすれば足りるとする。 目 印. 3版 H C成文堂, 1 9 9 3年) 4 7 5頁 , 4 7 6頁。配当に関する債権者優先 5 0 2条 l項に反するとする。. 前田達明「口述債権総論(第 、う通説の見解は, とL. 3 ( 7 ) ~i Jl I 明「抵当権・恨抵当権の実行としての競売の申立の要件」加藤今郎=林良平編『担保法大系 ( 第 2巻 H C 金融財政事情研究会, 1 9 8 5年) 8 1頁。 目 。 安達三季生『債権総論議義(第 4版 H (信山社, 2 0 0 0年) 2 9 9頁 I , : J ;. 会部代{在者は債権者と共同. してのみ抵当権の実行申立ができるとし,配当における債権者優先主義は,明文の規定に反すると いう。また,淡路剛久『債権総論 j (有斐閣,. 2 0 0 2年) 5 5 1頁以干は,債権者が祇当権を実行した場. 合に,代位者はそれに参加できると解すべきであるとし,民法は平等主義に立って規定されたので, 債権者優先主義の立場は解釈論の枠を超えていると述べる。 側近江幸治『民法講義町〔第. 州. 3版 H C成文堂, 2 0 0 5年) 3 1 9頁 , 3 2 0頁。. 「共同行使」とされているが,代位者が単独で権利行使できないという意味であろう。. 6 0.
(15) 法 科 大 学 院 論 集 第 5号. するものである。このほか,債権者との関係で,弁済を分類し,検討する見解 がみられる制。 さらに,解釈論として立法趣旨に立ち返り,債権者または一部代位者は単独 で権利の実行が可能であり,配当では平等に扱われるとして昭和 6年決定に好 意的な見解が注目されている問。. ( 5 ) 下級審裁判例. 権利の行使段階での問題に関しては,昭和 6年決定以来,最上級審判決はな いが,下級審裁判例が散見される倒。. 2・1 2・ 2 1下民集 1 8巻 11=12号 1 1 6 6頁,判タ 2 1 9号 1 5 7 まず,①東京高判昭和4 頁は,民法 5 0 2条に, í~債権者ト共ニ其権利ヲ行フ』とあるのは J ,. i 債権者が. 権利を行使する場合に債権者の権利の行使に伴って求償権を行使しうるだけで あると解すべきではなく,債権者と共同しなければ権利を行使しえない趣旨に 解するのが相当である」と述べる。 次に,②名古屋高決昭和5 1・5・ 2 4金法8 0 4号3 6頁,金判 5 0 3号3 5頁,判タ 3 4 1. 号1 7 7頁,判時 8 2 5号 6 0頁幽も一部代位者の単独での権利行使に関する説示を している。②判決の事案は次のようなものである o Aが Yから融資を受けるに. 位) 1 大西武士「一部代位により移転した担保権の実行による競売J権寿夫編『【新版】代位弁済ーそ. 9 9 5年) 1 4 9頁では,①任意型弁済,②義務履行型弁済,③権 の実務と理論ーJ(経済法令研究会, 1 利保全型弁済,④一部弁済に分類し,債権者の優先弁済を最優先し,債権者が一部弁済を承認した 場合には,単独行使・平等配当になるとする。 仰. 伊藤進・民法判例百選 I I< 第 5版新法対応補正版> 9 1頁,同『債権消滅論 J(信山社, 1 9 9 6年). 1 8 3頁以 F。ただし,石外克喜「一部代位弁済の効力一般」椿寿夫編「【新版】代快弁済 と理論. その実務. J(経済法令研究会, 1995年) 142頁以下が指摘されるように,立法作業の過程においても. 問題点は網羅されており,理論の対立が克服されないままに多数決で決着をつけたと言ってよい状 況にあったといえる。 附一部代位に関する下級審裁判例の分析を含むものとして,秦光開「一部代位をめぐる判例・学説 の現状と今後の展望」金法 1 1 4 3号1 9頁以下 0987 年)がある。 凶. 「本件判批」として,吉井直昭・金法8 13号2 3貞がある。. 6 1.
(16) 一部代位者の権利行使について. 際し. Bが B所有の不動産に根抵当権側(元本極度額 3 0 0万円)を設定し,. c. 信用保証協会及び D信用保証協会が連帯保証人となった。 Cは元本確定前に債 務の一部を代位弁済し,. Dは元本確定後, 3 0 8万円余を代位弁済し,それぞれ,. 根抵当権一部移転の登記を経由した。それでも, Yは , Aに対し,なお,残債. 1万円余を有し,抵当権実行の申立てをしたところ,上記根抵当権を設定さ 権8 れた不動産を Bから譲り受けた Xが異議申立てを行った。. xの異議申立ての理. xはYの. 由は,元本確定後にした Dの代位弁済額が元本極度額を超えており. 残債権の弁済のために競売を実行される理由はないというものであった。第 l 審が異議申立てを棄却したので,. Xが抗告したのが,②決定である. 下記のように判示して,抗告を棄却した。すなわち,. O. ②決定は. I 民法 5 0 2条によれば債権. の一部について代位弁済があったときは,代位者はその弁済した価額に応じて 債権者とともにその権利を行う旨を規定している O そして,右の規定によれば, 本件において C信用保証協会及び D信用保証協会は Yと本件根抵当権を準共有 していることになるわけである O しかしながら,本件のように債権の一部弁済 による代位においては,一部代位者は単独で代位した権利を行使し得るのでは なく,債権者(本件においては y) がその権利を行使する場合にのみ債権者と 共にその権利を行うことができるものであり,弁済についても債権者に劣後す るものと解するのが相当である。けだし,右のように解しないと抵当債権者が 自己の意に反して抵当権を実行され,将来にわたる担保のもつ作用を失うなど の不利益を受けるとともに,按分比例で配分することは抵当権の不可分性(民. 9 6条 , 法2. 3 7 3条)に反することになるからである。また債権者を害してまで求. 償権者を保護する必要もないというべきである」。 ②決定は,債権者と一部代位者が根抵当権を「準共有」しているとする O そ して,通説的見解と同様に,抵当権者が不利益を受けること,及び,抵当権の. ( 4 日 旧根抵当の事案である。. 6 2.
(17) 法 科 大 学 院 論 集 第 5号. 不可分性を理由として,一部代位者の単独での権利行使を否定し,配当におい ても,一部代位者が劣後するとしている O もっとも,②決定の事案は,債権者が 残債権につき競売申立てをしたものであり,昭和 6年決定の事案とは異なるは日。. 4・5• ③東京高決昭和 5. 1金法 9 0 5号4 2頁聞は,元本の確定した根抵当権が. 準共有されている場合に,準共有者の一人は単独で実行申立ができるとするも のである O ③決定の事案は,次のようなものである o Xは Y所有の不動産に極 , 0 0 0万円とする根抵当権を設定して,銀行取引契約を締結し 度額を 2. Yの債. 務を A信用保証協会が保証した。弁済期が到来しても弁済しなかったので, A は,根抵当権の元本確定後, 1 , 9 7 0万円余を Xに対して代位弁済した。その結 果,上記根抵当権は A に一部移転し, Aのために上記根抵当権の一部移転登記 がされた。その後, Xが上記根抵当権の実行申立てをしたところ,競売開始決 定がなされたのに対して, Yが異議申立をし,異議申立が却下されると,即時 抗告した。. xの抗告理由は,. Yが被担保債権3 0万円弱を超える部分について,. 競売開始を許さない旨の決定を得たいというものである O これに対して,③決 定は,抗告を棄却したが,次のように判示する。「本件根抵当権は,その元本 が確定した後,. A信用保証協会に一部移転されたことは前述のとおりであり,. これによれば,爾後本件根抵当権は,債権者 XとA信用保証協会との準共有者 になったものと認められるのであるが,根抵当権の準共有者は,単独でも当該 根抵当権の実行申立をすることができるものと解するのが相当であるから,債 権者 Xのなした本件根抵当権実行の申立は,右申立の当時右債権者が本件根抵 当権の準共有者の一人にすぎなかったとしても,そのことのゆえに違法と目さ. ' J。 れるべきものではな L. ( 掛. この点では,本決定理由中部代位者の権利行使について述べる部分は傍論的説示であるとも いえよう。. ( 初. 「本件判批」として,渡辺博巳「元本確定後の共有根抵当権者の担保権実行方法」椿寿夫編集代. 3 3頁がある。 表『担保法の判例 1~ 2 63.
(18) 4. 部代位者の権利行使について. このように③決定は,根抵当権の準共有者が単独で抵当権の実行申立をする ことができると述べるので,一部代位者も単独で根抵当権実行申立ができると 考えているのではな L、かと思われる。なお,⑧決定も債権者が根抵当権の実行 を申し立てた事案である O また,④東京高決昭和 5 5・ 1 0・ 2 0金法 9 5 0号5 6頁,金判 6 1 2号 2 5頁,判タ 4 2 9. 号1 0 6頁峨も通説的見解と同旨を述べる O ⑧決定の事案は下記の通りである O. Aは , Bに対して,元本 8 . 0 0 0万円を貸し付け,この債権の担保のために, B 所有の甲土地及び乙建物に抵当権の設定を受け,その旨の登記を経由した。さ らに,この債権の担保として,. Bが代表取締役をしている C会社の所有する丙. , Bが債 土地及び丁建物にも抵当権の設定を受け,設定登記を経由した。 Aは 務を弁済しなかったので,丙土地及び丁建物についての抵当権を実行し,競売 , 4 4 6万円余の弁済を受けた。 Xは , 代金から 1 し,丙土地及び丁建物につき,. cに対して,. 5 0 0万円の債権を有. Aに後れる抵当権の設定を受けていたが,上記. 競売代金からは全く配当を受けることができなかった。そこで,. Bに対する求償債権以外には資産が全くなく. Xは. cには. Bは C会社の代表であるため,. Cが Bに対して求償権の行使及び Aから Cに移転した抵当権の実行をすること が望めない状況にあると主張して, Xは Cに代位して, び乙建物上の抵当権の実行の申立てを行った。第 1審が 実行の要件が具備されていないとして却下したため,. cに移転した甲土地及 Xの申立ては抵当権. Xが抗告したのが,④決. 定である O ④決定は,次のように述べて,抗告を棄却した。すなわち,. iXは. C会社の代位権者として同会社に移転した抵当権の実行の申立をすることがで、 きるが如くである O しかし,. c会社が Aに対しでしたことになった弁済は,. A. が Bに対して有する元本 8 0 0 0万円の債権の一部について代位弁済がされたもの であり,このように債権の一部につき代位弁済がされたときは,代位者である. 側. 「本件判批」として,懐本泰博・金法 9 6 5号 1 5頁,石外克喜・判タ 4 7 2号 7 7頁がある。. 6 4.
(19) 法 科 大 学 院 論 集 第 5号. C会社は Aの Bに対して有する甲乙物件の担保権行使に附随し共同してのみ担 保権行使をすることを認めるべきであり, Aの担保権行使と別個に独立して担 保権行使をすることは許されないと解すべきである O なんとなれば,一部弁済 の場合には,. もともと債権者 Aが残存債権に対して有する権利を害することを. えないものと解すべきであるからである(当裁判所は,大審院昭和 6年 4月 7 日決定,民集 1 0巻 9号5 3 5頁の見解は以上に述べた理由により採用しな L 、。)民 法5 0 2条 l項にいう『債権者ト共ニ』は右の意味であると解すべきである O そ うすれば,. xが C会社の代位権者として同会社に移転した抵当権に基づいてし. た競売の申立は理由がな Lリ 。 ④決定は,②決定と異なり,抵当権の準共有や抵当権の不可分性については 触れていないが,一部代位者が原債権者の権利を害することができないことを 理由に,一部代位者の単独での担保権行使を否定している O なお,⑤東京高判昭和 6 0・3・ 2 8金法 1 0 9 7号8 4頁,金判 7 1 8号3 3頁,判時 1 1 5. 3 号1 7 3頁仰は, I 一部代位弁済による根抵当権の一部移転は,根抵当権の共有 状態を作出し,原根抵当権者と一部代位弁済者の両者が根抵当権全部を共有す るに至るのであるから(民法 5 0 2条 l項),一部代位弁済者の債権が消滅した場 においては,民法 2 6 4条 , 2 5 5条の類推適用により,一部代位弁済者の有 合 JI した根抵当権の共有権は原根抵当権者に帰属し,原根抵当権者は,根抵当権の 極度額の範囲内で被担保債権につき優先して売却代金の交付を受けることがで きる」と判示している師団。 ⑤判決は,一部代位により根抵当権の共有状態が作出されると解しており,. 側. 「本件判批」として,織田博子・法律時報 5 8巻 5号 1 3 9頁がある。. 側. ④判決は,根抵当権の被担保債権の一部について代位弁済が行われ,根抵当権の一部が一部代位 者に移転したのちに,一部代w.者の債権が消滅したという事案である。④判決の 1 -告審(最宇I J昭和. 6 2・4・2 3金 法 1 1 6 9号2 9頁)は,配当異議を認めない結論において,④判決と異なるところがない. 0年判決を引用し,配当においては原債権者が優先することをあげて が,判決理由が異なり,昭和 6 いる。. 6 5.
(20) ー部代位者の権利行使について. 裁判例においては,一部代位により(根)抵当権の共有状態が生じることを前 提としているように思われる(④決定も参照)。 このように下級審裁判例では,一部代位者は単独では担保権実行はできず, 配当においては原債権者に劣後するという通説的見解と同様の結論が出され, 債権者が一部代位者よりも優先的地位にあると考えているものが現れている O そして,一部代位者の単独の権利行使を否定する昭和 5 0年代の決定(②決定及. 0年判決が配当面での原債権 び④決定)の下級審裁判例の後に,先にみた昭和 6 者の優先を明らかにした。そこで,このような判例及び裁判例の動向からは, 昭和 6年決定が今日なお維持されるかどうかは明らかではない 1 5 1 1 。. ( 6 ) 通説的見解に対する疑問. 一部代位をめぐる問題は,上述した学説の対立状況からも窺うことができる ように,一部代位制度をとのように考えるかという基本的な問題に始まり,そ して,債権者と一部代位者のいずれを保護すべきであるのかという利益衡量に 帰着すると思われるが,近時は,債権者の利益を重視する判例・通説の傾向に 対する疑問等も聞かれるようになっている問。 まず,通説的見解は,一部代位者が単独で競売申立てをすることを否定する が,債権者は,単独で申立てができるのか,債権者にイニシアティブはあるが, 申立ては共同しなければならないのかが必ずしも明らかではない問。 一部代位により,抵当権が一部代位者に一部移転し,債権者との間で準共有 の状態が生じると考えると,債権者も単独では申立てができず,債権者と一部. 1 5 1 1 松岡久和「弁済による代位 Jr民法の争点~ (有斐閣, 2 0 0 7年) 1 8 4頁以下,潮見・前掲注 ( 3 ) 2 9 8頁 等 。 安永正昭「共同抵当における物上保証人提供物件の後順位抵当権者の法的地位」金法 1 1 4 1号1 3頁 0986年),潮見・前掲注( 3 ) 2 9 9頁 。 側 於保・前掲注目印 3 8 8頁,柚木二高木・前掲注目別 4 5 7頁は,債権者は単独で申し立てることでき,ー 問. 部代位者は,これに付随して権利行使できると解しているようである。. 6 6.
(21) 法 科 大 学 院 論 集 第 5号. 代位者は共同して抵当権の実行をする必要があることになるはずである. ( 2 5 1. 条参照)。この点を,通説的見解はどのように説明されるのが明確ではない。 行使については原則として債権者が優先すべきであろうが,一部代 そこで, i 位者の保護(競売申立権という形での)を考慮、しなくはならない場合はないか どうか,さらに実態に即した検討が必要」であると説かれている倒。 また,一部代位者の利益を考慮しなければならない場合があるのではないか ということも指摘されている O この点につき, i 信用保証協会による保証の場 合のように機関保証がされている場合には,機関保証の公益的役割に鑑みると, 保証人(代位弁済者)の求償権確保に向けての期待と利益も尊重すべきであ」. 0 2条 り,民法 5. l項の処理準則に合理性が認められるのではないかとの見解仰. が注目される O そこで,以下では,原債権者の利益及び一部代位者の利益を考慮、しつつ, 部代位者による権利行使について,若干の検討を加えることを試みる O. 4 一部代位者の競売申立権に関する検討 ( 1) 債権者と一部代位者との法律関係 一部代位の効果に関しては,これまで見てきたような判例・学説の状況にあ るところ,権利行使の段階の問題については,担保権の実行,さらに言えば, 不動産上の抵当権について問題が生じていることが多いといえると考えられる ので,本稿では,とりあえず,一部代位者による抵当権の実行の申立てに限定 して,若干の検討を加えてみることにする O 判例・学説の展開から分かるよう に,一部代位者による単独の競売申立ての可否の検討には,一部代位の機能の. 倒 安 永 ・ 前 掲 注 関1 3頁 。 倒 潮 見 ・ 前 掲 注( 3 ) 2 9 9頁 。. 6 7.
(22) 一部代位者の権利行使について. 実態を把握することや債権者と一部代位者との法律関係等を考察することが必 要と思われる O そこで,まずは,債権者と一部代位者との聞の法律関係の解明 を試みることにする O. 昭和. 6年決定によると,民法 5 0 2条 1項の「債権者とともにその権利を行使. する」というのは,一部代位者の弁済額に応じて債権者とともにその権利を行 使しうることを意味しており,分割行使をなしうる場合には,債権者と共同す ることなしに,各自,その割合に応じて,個別に権利の行使ができることにな るO そうすると,性質上分割行使できない権利については,共同して行使しな ければならないが,金銭債権のように分割行使が可能であると思われる権利が 一部代位により移転したときには,原債権者又は一部代位者はそれぞれ単独で 権利を行使することができることになろう。ここで,一部代位により抵当権が 移転した場合の法律関係はどのように考えられることになるのだろうか。この 点については,一般的には,抵当権の被担保債権の一部弁済によって原債権と 抵当権は,一部の代位弁済額に応じた分につき,一部代位者に移転し,一部代 位者と原債権者とが一部弁済額と残債権額の割合により共有(準共有)するこ とになると解されていると言って良いだろう倒。一部代位が生じた抵当権が原 債権者と一部代位者とに準共有されているわけではないと考える見解も存する が尺債権者と一部代位者との法律関係を,抵当権の準共有関係と解すると, 旧 日. 下級審裁判例として,例えば,本文中にあげた②. ④判決を参照。また,学説においては,田島・. 前掲注目4)2 7 3頁,我妻祭「新訂担保物権法 j (岩波書庖, 1 9 6 8 年) 2 4 5頁,前回・前掲注目印4 7 6頁等を 参照。このほか,執行実務研究会「一部代位者の競売申立権」手形研究3 9 5号 3 2頁以ド 0987年 ) , 奈良次郎「一部代位弁済の効力」藤林益三=石井真司『判例・先例金融取引法〈改訂版 )j (金融財. 9 8 8年) 3 6 0頁以下も参照。 政事情研究会, 1 間斎藤和夫「弁済者一部代位の法構造. 原債権者と一部代位者の競合関係,その利益較量的分析ー」. 0巻 2号 1 5 9頁以ド 0987年)は,一部代位弁済により「原債権・原抵当権」が「残額債 法学研究 6 立債権・一部代位抵当権」とに分化し,両者が不即不離に接合した準 権・残額抵当権」と「・部代f 準共有Jとは区別する。寺田・前掲注目日9 6, 9 7頁は,一部代 共有的併存の法状態にあるとして, I {立が生じた担保権の法的状態につき,学説は「準共布的」に理解し,判例は「移転的 Jに解してい. 1 7 2号 5頁 0987 年)は,担保 るとする。また,鈴木正和「債権の一部代位弁済と根抵当権」金法 1 権の共有と観念する必要性がないとする。. - 68 一.
(23) 法 科 大 学 院 論 集 第 5号. 債権者であれ,一部代位者であれ,その権利の単独行使を理論的に根拠付ける ことは困難になると考えざるを得ないであろう O 一部代位ではなく,たとえば,抵当権の被担保債権の一部が譲渡された場合 にも,一部譲渡人と一部譲受人との聞に抵当権の準共有関係が生じると解され るが倒,この場合にも,共有者の一人が単独で競売の申立てをできるかが問題 となりうる。抵当権の実行は,抵当権や被担保債権を消滅させることになるの で,抵当権の処分にあたり,共有者全員の同意が必要であると考えられるため である(民法 2 5 1条参照)倒。一般に,抵当権の準共有者の一人が単独で競売申 立てが出来るとする見解もあるが側,抵当権の実行を権利の処分とみて,他の 準共有者全員の同意を得た上で各共有者が単独で,あるいは各共有者が共同で 競売の申立てをすることができると解するのが相当とする見解もある肺1。 そして,一部弁済による一部代位によって抵当権の準共有が生じた場合に, 上記の抵当権の被担保債権の一部譲渡と同様に考えることができるかは一個の 問題たりうる O 昭和 6年決定は,抵当権の準共有関係についての判示を含むわ けではないが,抵当権は原債権者と一部代位者が準共有していると考え,抵当 権の実行は処分行為であるから,共有者全員の同意が必要であるという前提に 立つときには,一部代位者がなぜ単独で競売申立てが可能であるかの説明が必 要であることになろう O また, 1 1問題の所在Jでも述べたように,平成 1 7年 判決では,抵当権は債権者と保証人の準共有となることが案分の根拠とされて. 目 印 我妻・前掲注側4 1 6頁 。 倒. 2 5 1条の「変更」には法律上の処分を含むと解されている(舟橋詰ー『物権法J(有斐閣, 1 9 6 0年) 3 7 8頁等)。. 側. 執行実務研究会・前掲注旧日 33頁,佐藤歳~. 売代金の配当 J棒寿夫編『【新版】代位弁済. I 抑i 保権の一部代 f i/.による準共有者相互間における競 その実務と理論. J(経済法令研究会, 1 9 9 5年) 1 5 0. 頁 。 信 1 石川・前掲注目引 7 7頁,深沢利一二関部厚『民事執行の実務(上) [新版 J[不動産執行lJ(新日本. 0 0 5年) 7 9 1頁。我妻・前掲注旧日 2 4 5頁は,共有の規定を準用して,共同してのみ行使す 法規出版, 2 ることができると解する。. 6 9.
(24) ー部代位者の権利行使について. いるが, 5 0 2条が適用される一部代位の場合には昭和 6 0年判決は準共有とは判 示していな L、。しかし,やはり,抵当権は同じように準共有の状態になると考 えられるところ,なぜ異なる処理をするのか疑問が生じることからも,原債権 者と一部代位者との法律関係を準共有と考えた上での検討が不可欠となろう。 この点につき,一部弁済による代位の場合にも準共有となるが,準共有者聞に おいて担保・保証の合意の中に未払額がある限り担保目的物の価額・保証額を 限度として担保・保証するとの意思が当然に内包されているとする見解があ る問。この見解によれば,債権者への優先配当は説明できると思われるが,準 共有の場合になぜ単独の競売申立てが可能なのかという前述した問題は残るの ではないだろうか刷。 一般的に言えば,準共有が認められる場合には,準共有者の一人が他の準共 有者の同意なしに準共有の対象となっている権利を消滅させることは許されな いと思われる O 例えば,地上権や賃借権の準共有の場合,準共有者の一人が他 の準共有者の同意なしに地上権や賃借権を消滅させることは許されないだろう O というのも,地上権や賃借権は利用を目的とする権利であるから,準共有者の 一人が他の準共有者の同意なしにこれらの権利を消滅させると他の準共有者の 利用権が害されることになるからである O しかしながら,抵当権の準共有の場合,準共有の対象となっている抵当権は 元来,抵当権者が配当を得て消滅することが予定されている権利である。した がって,配当の場面で,他の準共有者に不利益が生じない場合には,準共有者 の一人が他の準共有者の同意なしに抵当権を実行することを認めても良いので はないか。. 問. 主主永正昭 11個の抵当権が拘保する数{関の債権のうちの l個の債権の保証人による代位弁済」平. 7年度重要判例解説〔ジュリスト 1 3 1 3号J8 1貞 。 成1 仰. なお,平成 1 7年判決の争点は権利の満足の段階であり,単独の競売申立ての口I 否を含む一部代位 の問題とは異なる。. 7 0.
(25) 法 科 大 学 院 論 集 第 5号. 抵当権の実行を管理行為あるいは保存行為とみて,準共有者の一人による単 独申立てを認めることは難しいかもしれないが,上述のごとく,抵当権は,抵 当権者がその実行により優先弁済を得て消滅することが予定された権利である と考えると,抵当権の準共有の場合に,準共有者の一人が単独で競売を申し立 てることを認めることができるのではないだろうか。 また,債権者のみ競売申立てができるとすると,債権者と債務者が結託して 債権者の同意が得られない場合には,一部代位者の利益が害されることも考え られること倒から,債権者・一部代位者のいずれもが単独で抵当権の実行を 申し立てることができると解するべきであろう O 抵当権の準共有者の一人が単 独で実行を申し立てたとしても,そのことだけで,ただちに,他の共有者に不 利益を与えるとは限らないと考えられる。このように解すると,一部代位者に よる単独での競売申立てを否定する必要はないだろう制。すでに言われている ように,配当の場面で平等主義をとると,一部弁済と抵当権実行時期の先後に より債権の弁済額に差異を生じるが,債権者優先主義ではそのような不都合が 生じな L、。これが昭和 6 0年判決が配当段階における債権者優先主義を採用した 一つの根拠となっていると考えられる刷。しかし,抵当権実行の場面で平等主 義をとっても,このような問題は生じな L、。したがって,抵当権実行の場面で は,一部代位者の単独の申立てを認め,配当の場面では債権者優先の立場をと ることは矛盾するものではないと考えられる。. ( 2 ) 債権者と一部代位者との利害関係 一部代位者が単独で抵当権を実行することを認めるとしても,そのことによ 制. 村田利喜弥「債権の一部につき代位弁済がされた場合の競落代金の配去についての債権者と代位. 0 1号3 0頁 。 弁済者との優劣」手形研究4 仰. なお,従前より,昭和 6年決定に幕づき,実務では. 9 2頁参照)。 うである(深沢=園部・前掲注側 7 側 門r l・前掲注1 6 1 2 1 7頁 。. 7 1. a. 部代位者の単独申立てが認められているよ.
(26) 今部代位者の権利行使について. り,債権者の利益を害するようなことがあれば,求償権の確保という弁済者代 位の制度目的を逸脱することになろう O したがって,債権者・一部代位者のい ずれも単独で権利を行使できるが,一方の権利行使が他方を害するときには共 同で行使しなければならないと解するべきであろう O そこで,一部代位者の単独の競売申立権行使により害される「債権者の利益」 について検討しておくことが有益であろう。特に,配当に関しては債権者が優 先するとの判例の立場を前提として考える場合には,一部代位者による抵当権 の単独実行が債権者にいかなる損害を与えるのかを検討する必要があると思わ れる O. 昭和 6年決定の事案は,長期の割賦債権で,原債権者の残債権が弁済期未到 来であったため,抵当権の存続につき,原債権者が利益を有していると考えら れるものであった。この点につき,批判がなされていたのは,すでに見たとお りである O もっとも,今日では,債権者は弁済期未到来の債権でも配当を受け られる(民事執行法8 8条)。また,一般的に,債権者には抵当権の実行時期を 選択する利益が認められるから,この点を考慮すべき場合がありえよう O 例え ば,原債権者が担保不動産収益執行や物上代位権行使により,債権回収を図る 場合に,一部代位者の抵当権実行がなされることは,原債権者の意思に反する といえるかもしれない問。しかしながら,配当段階で原債権者が優先するなら ば,実行時期選択の利益が之しくなっているようにも思われる O 後順位抵当権 者の申立てによっても債権者の意思に反する抵当権実行がなされうることも考 えると夙実行時期選択の利益は,不確実なものであると考えることもできよ. 6 ( 7 ) J'司保不動産収益執行制度は,抵当不動産が収益物件である場合に,抵当権者が長期にわたり債権 の優先同収を [ ; ( Jるという J i法で利用されるのではなし近い将来に申立てが予定される t 日一保不動産 競売を効率的に行うために利用されることに実際的意義があるという指摘がなされている(生熊長 幸『わかりやすい民事執行法・民事保全法 j (成文堂,. 2 0 0 6 年) 1 9 1頁)。このように運用される場. 合には,原債権者の不利益が特に考慮する必要性の高いものともいえないように思われる。 師 団. 岩城謙~I弁済による代位の諸問題 13 1J. NBL3 2 5号 3 0頁以下 0985年)を参照。. 7 2.
(27) 法 科 大 学 院 論 集 第 5号 λ側 ノ. O. 一部代位者による単独での抵当権実行を否定した下級審裁判例があるが,ま. 1・5• 2 4 )及び③決定(前掲東京高決昭和 ず,②決定(前掲名古屋高決昭和 5 5 4・5・1)は,原債権者が抵当権の実行を申立てており(これに対して,抵 当不動産の第三取得者あるいは債務者兼根抵当権設定者が異議申立てをしてい る),原債権者の利益が害されるという状況にはなかったと考えられる。④決 定(前掲東京高決昭和 5 5・1 0・2 0 ) の事実では,債権者代位権行使として,一 部代位者(物上保証人)が債務者所有不動産上の抵当権に基づき競売申立てを しているが,債権者が優先して配当を受けられるとすると, (一部代位者の単 独申立て自体が債権者の実行時期選択の利益を害すると考えることは別として) 具体的に,債権者の利益が害されるような事情が存在していたのか否かは明ら かではないと言ってよいだろう。 このようにみると,一部代位者による単独の競売申立ての可否は,債権者の 利益を害するか否かを個別の事案において実質的に判断することにならざるを 得な L、。そこで,原債権者と一部代位者との利害関係をどのように考えるかが 問題となるが,この問題を判断するに際しては,一部代位の実際上の機能のさ らなる分析等が必要であると思われるが,一部代位の基本構造の解明とあわせ 。 、 て,今後の課題とした L. 側. もっとも,一部代位者と後順佼抵当権者とは利害状況が異なるとも言えるので,後順位抵当権者 による競売申立てをー部代位者のそれと同視しうるかは会つの問題であろうが,抵当権者の実行時 期選択の利益が多分に抽象的なものであるということはいえるのではないだろうか。. 7 3.
(28)
関連したドキュメント
点から見たときに、 債務者に、 複数債権者の有する債権額を考慮することなく弁済することを可能にしているものとしては、
① 新株予約権行使時にお いて、当社または当社 子会社の取締役または 従業員その他これに準 ずる地位にあることを
ㅡ故障の内容によりまして、弊社の都合により「一部代替部品を使わ
親権者等の同意に関して COPPA 及び COPPA 規 則が定めるこうした仕組みに対しては、現実的に機
市民的その他のあらゆる分野において、他の 者との平等を基礎として全ての人権及び基本
◆
学校の PC などにソフトのインストールを禁じていることがある そのため絵本を内蔵した iPad
いてもらう権利﹂に関するものである︒また︑多数意見は本件の争点を歪曲した︒というのは︑第一に︑多数意見は