佐藤泰一郎・小椋 正澄・南 信弘
(農学部生産環境工学科農林環境工学講座)
Structure and water properties investigation of
volcanic ashes
soil of Kochi
Taiichirow Sato, Masazumi Ogura and Nobuhiro MiNAMI
C加伽of Agriculture and ForestぴEnvironmental Enがwgパng, Departmentげ E心行onmewtalTechtiologv',Faculty of Agricu唐心
Abstract: Productivity in the volcanic soil called‘Akaonji', which is found throughout Kubokawa-cyo is low. It is known however that this 10w productivity can b:enow be increased by appropriate management. Filed and !aboratory studies examined the soil and measured the state of the‘Akaonji' water retention properties. The result of these studies showed that water retention and permeability of‘Akaonji' was very good properties.
はじめに
高知県窪川町に分布する赤音地と呼ばれる火山灰土壌は、生産性が低いとされている。しかしな
がら、適切な管理の下では従来、生産性の低い土壌が生産性を改善できることが知られている。
そこで、窪川町の農業生産について調査をおこなった。また、現地の土壌断面調査を行い、分布
状態を調査し、同時に採土を行い供試体とした。さらに、赤音地の土壌水分特性を把握するために、
物性、三相分布、水分特性、不飽和透水係数を求めた。
そして、本研究では土壌構造の発達状態から現状を把握し、土壌水分のエネルギー状態および土
壌水分移動の観点から作物の生産環境を考えた。
現地調査
i。農産物の作付けおよび粗生産額調査
窪川町の主要な農作物の作付けは、平成5年度高知県統計により、水稲・施設野菜・露地野菜・
果樹・花弄・特用作物がそれぞれ1176・29・97・
5 ・11 ・ 134haである。施設野菜はピーマン
(I7.5ha)、露地野菜はショウガ(90.5ha)が主なものである。各々の粗生産額は、水稲・ピーマン・
ショウガでそれぞれ1824 ・ 488 ・853百万円であった。これは高知県全体の粗生産額の構成比よりき
わめて高い値を示し、特にショウガに関しては大幅に上回るものであった。
第1表 土壌断面調査票
番
号
調査
地点
高知県高岡郡窪川町黒石665番地
高知県立実践農業大学校
地 目草地造成地
耕作
者
天
候
晴
れ
調査前
の天候
晴れ
傾 斜
(人為傾斜)
なし侵触
なし地
形
砂榛台地
地
質
未固結堆積物 母材および
堆積様式
レキ層を主とする堆積
断面スケッチ厚さ
層界
層
位
レキ腐
植
泥炭
黒泥
構
造
孔
隙
斑紋
結核
ち
密
度
粘
着
性
可
塑
性
湿
り
根の
状態
備 考
附近見取
客 土
−0 − 15盛
土
レキ まじり な し な し単
粒
少
な
い
10.0 10.0 5.0 7.0 18.5な
し
乾
客 土
-20 − 35床
締
層
砂質土 大レキ 含む な し な し認
め
ず
大
孔
隙
を
有
す
35.0 22.5 25.0 19.0 18.5な
し
乾
-40 一 一60作
土
な し あ り な し屑
粒
状
細
な し 22.0 21.0 22.0 21.0 21.5あ
り
あ り温
認 め る赤
音
地
− -80 一 一100 105赤
音
地
な し な し な し屑
粒
状
多
孔
細
な し 26.0 25.0 25.0 23.0 23.5 18.5あ
り
あ り湿
ク ラ ツ ク に 沿 っ て 認 め る粘土層
下
層
土
認 め る認
め
る
な し壁
状
狭
小
鉄
あ
り
22.0 18.5 19.0 25.0強 あ
り
強
温
木
化
根
(2)場は、砂蝶台地城に位置しレキ層を主とする未固結堆積物が主とされる1・2)。草地造成前は、束又
川・外屋敷川により運ばれた土壌が堆積して層をつくり、その上に火山灰が降灰し堆積をして赤音
地層を形成し、さらに東又川・外屋敷川からの堆積土による層が形成されたと考えられる。今回の
造成によりさらに客土が行われ人為的な成層化が進み複雑化した様を示す。
表面より深さ130cmまでの土壌断面調査3)により、表1に示すように、これらの層は5つに分け
られ、1)客土盛り土層2)客土床締め層3)作土層4)赤音地層5)下層に分類した。1)客土盛
り土層2)客土床締め層は、レキ混じりの砂質土壌を盛ったもので構造はない。しかしながら客土
床締めにより、緻密度が山中式硬度計により極めて高い値が測定された。3)作土層および4)下層
士は、母材が同じものであると考えられ、腐植を含む。作土層は、屑粒状の構造を持ち細かな孔隙
を有する土層である。下層は壁状の構造で間隙が極端に少ない堅密な土壌であり、常時湿潤状態に
ある。4)赤音地層は、土墳図により多湿黒ボク±4)で多孔質ではあるが、強固な構造を持たない
ために間隙に保持する水分が構造を支えていると考えられる。 十
室内実験
1。赤音地の物性および飽和透水性
土壌断面調査時に客土前の土層について未撹乱試料の採土による、調査断面の物性値および飽和
透水係数を表2に示す。この表から、赤音地の真比重が、作土および下層土に比べ低い。乾燥密度
は、赤音地が作土、心土に比べ非常に低い。これらのことから、赤音地の三相分布は、土壌断面調
査時点では固相・液相・気相が16%・78%・6%であった。特に、固相については、作土層41%下
層±57%を考慮すると非常に小さな値であった。このことは、赤音地は、上が占める割合が少なく、
水を多く保ち、根の伸長する間隙を多く持っていることをあらわしている。
飽和透水係数は、変水位法則こより測定を行った。赤音地の飽和透水係数は、作土が10-‰/sの
難透水性を示しているのに対して2オーダー透水性がよい。また、下層土よりも1オーダー高い値
を示している。
第2表 調査断面の物性値および飽和透水係数
土の真比重
(9/
・)
乾燥密度
(9/
・)
三相分布
飽和透水係数
(Cm/S)
固相 (vo1.%) 液相 (vo1.%) 気相 (vol. %)作 土
赤音地
下層土
2.68 2.63 2.72 1.02 0.40 1.65 40.8 15.8 55.8 52.2 78.1 44.2 7.0 6.1 0 4.4× ̄7 2.9× ̄5 2.7× ̄62。赤音地の水分特性
客土前の土層の水分特性を図1に示す。水分特性は、未撹乱土を加圧板法の脱水過程により−
0.001∼-1.5MPaの範囲で求めたものである。この図から、作土および下層土は、土壌水分ポテ
ンシャルが−0.1MPa(pF3.0)までの体積含水率の変化が非常に少ない。一方、赤音地は、−
0.001MPa(pFT1.0)より−L5MPaまで体積合水率が変化する。 、
そこで、各層における圃場容水量・毛管連絡切断含水量・永久シオレ点を表3に示す。
︵sl︶4 − 1 * ■- 1 0 ‘ 1 ふ l ト 4  ̄ 1 0 - 2 φ ¥ I - 1 0 ‘ 3 騨 + 1 -lo-" 2 0 io-≪ ヽ; `S 10'7 顧 喚 叫 10 ̄8 附 i io-≫ 瀾j K・ ,0-10 1 0 " ' 40 ,● 60体積含水率(vol.X) 第1図.水分特性 8 0 -10 -100 -1000 土壌水分水’テンシヤル(・mHzO) 第2図 不飽和透水係数と土壌水分ポテンシャルの 関係 第3表 調査断面の保水量
圃場容水量
-0.003MPa
毛管連絡切断含水量 -O.lMPa 永久シオレ点 -1.5MPa作 土
赤音地
下層土
57.8 79.3 42.4 49.8 65.6 39.7 33.8 36.8 26.7 (単位:vo1.%) この表から、間隙保水を示すとされる圃場揚水量と毛管連絡切断含水量の差は、赤音地が作土お よび下層土に比べ非常に高い。作土および下層士は、間隙保水量が少ない。また、土壌表面に吸若 する水分の保持状態(吸着保水)についても赤音地が高い。作土および下層土は、赤音地に比べ吸 着保水に対する割合が、間隙保水に対する割合より高い。ここで、圃場容水量から永久シオレ点ま でを有効水分として考えると、作土が・赤音地・下層土でそれぞれ24.0 ・ 42.5 ・ 15.7vol. %と赤音 地の有効水分が突出して高い。 3.赤音地の透水性 赤音地の飽和透水係数は、10 ̄5Cm/Sのオーダーであることを測定したが、通常の土壌中の水分は 不飽和である。そのために、土壌中の水分は、不飽和状態で移動する。そこで、非定常法の脱水過 程でone-step法6)により、不飽和透水係数を求めた。そして、土壌水分ポテンシャルとの関係であ らわしたのが図2である。非定常法の脱水過程でone-step法では、その方法により測定開始直後 の測定が不安定になるが、飽和透水係数を考慮すると圃場容水量までは10-7cm/sのオーダーであり、 毛管連絡切断含水量付近では、10-9Cm/Sのオーダーになる。なお、毛管連絡切断含水量付近では、 土壌水分が、液状から気体へ変化する量が増えるために見かけ上透水係数が高くなる。 (4)レ ∧ ト ま と め 十 ▽ ヽ: ………I 窪川町の農業生産は、水稲が主懲あ‥り、これに露地野菜し(ショウガ)しが続く。 近年 は、万畜産のた めの草地も増加傾向にある。聞き取り調査からしこれまで赤音地は農業生産を向上を妨げるこ七が あっても、有益なものという認識はない。 ‥ ‥‥‥‥ ‥ ‥ レ 十 / しかしながら、土壌断面調査から、腐植のない多孔質な土壌であり、ち密度の高い土壌である。 また三相分布より固相率の非常に低い土壌であり、間隙が非常に多い土壌である。また、飽和透水 係数は、ト畑地として使用するには幾分難があるが、\水田としての使用にノは問題がない呪\ニ方ミ強 固な構造を持かないために開隙に保持する水分が構造を支えていると考えられるノそのため乾燥収 縮が大きく乾燥密度も小ぷいと考えられる。 十 = 赤音地の水分特性は、有効水分が40vo1.%を超えるほど多く、間隙保水およ‥び吸着保水ともに高 いと考史られるレこのことは、畑地として利用する場合にかんがい水の節約に大いに役立つことを 示している。 ニ ノ 不飽和透水係数は、非常に湿っている飽和から土壌水分ポテンシャルが高い状態では透水性は良 いとはいえない。しかしながら、乾燥をした不飽和の状態での透水性は、非常に湿づだ場合に比べ て約1/1000程度に低下するのみである。この値は、同じ火山灰土壌の関東ローふ土壌(に比べ非常 に高いことを示している。このことから、赤音地は畑地としで使用する際土壌の水分移動の点から 良好といえノるノ 十 二 十 ∇ ニ ニ このように、赤音地は、農地として土壌の三相に起因する水分特性および透水性については非常 に適している。しかし、ち密度に代表される、力学的特性についでは問題がある。これは、細孔隙 に富んでいるが堅いために根の伸長を阻害するごとを示唆しているからである。また、火山灰土壌 については、一般的に化学性に問題があるために農地として適さないとされる。これは、し土壌の pHやりん酸吸収係数であらわされる。=本調査では、これらについで測定を行うていないが、施肥 法に=より化学性の問題が解決されるならば、赤音地の農地として忙利用について可能性があると考 えられる。 ‥ ニ て謝辞〉土壌断面調査に際しでは、高知県立実践農業大学校め協力を得た、記して深謝するノまた、 本調査は、高知大学平成5年度教育研究特別経費により行うたものであるよ 十十 要犬 約 ト
高知県窪川町に分布する赤音地と呼ばれる火山灰土壌は√生産性が低いとされている。しかしな
がら、適切な管理の下では従来生産性の低い土壌が生産性を改善できることが知られている。十
本研究は、土壌断面調査と室内試験を行い、赤音地の土壌構造の発達状態および水分環境を測定
したノその結果、赤音地は、土壌構造の発達により、保水性および透水性に代表される物理性に優
れることを指摘した。 = ‥
キーワード:火山灰土壌丿赤音地 水分特性 透水係数 土壌構造
十 十 文 し献
3)ペドロジスト懇談会編,土壌調査ハンドブック, p.23-77√博友社,東京(1984).ト \
4)土じょう図.土地分類図39(高知県),経済企画庁開発局, (1974).
5)中野政詩吟か,土壌物理環境測定法, p.89-114,束京大学出版会東京(1995)ト
6卜Doring, EJ。Soil Water Diffusivityby the One-Step Method, Soil Science 99, p332-326(1965). 7)山根一郎,耕地の土壌学, p.87-101,農文協,〉東京(1981). し 8)佐藤巻一郎・岡本聡志, One-Step法による不飽和透水係数の測定について,平成5年度農業土木学会大会 講演要旨集, p44 46(1993). ‥ ・・..・ ・・・・・・ .・ (6) 平成8 (1996)年9月30日受理 平成8 (1996)年1朗25日発行