雑誌名
教育学論究
号
2
ページ
1-7
発行年
2010-12-25
兵庫県の外国人児童生徒にかかる現状と課題
Current Situation and Issues concerning Foreign Students in Hyogo Prefecture
五百住
満
*Abstract
At the end of December2005 approximately 103,000 foreign nationals representing around 130 countries were residing in Hyogo Prefecture. And recently nationals from countries such as China, Brazil, the Philippines, and Vietnam have been increasing.
Consequently, the number of foreign students studying at Japanese schools has also increased, and problems such as bullying, securing a career or higher education after graduating, preserving native language and culture, and establishing an identity have increased accordingly.
The lack of opportunities for students to remain in contact with their native language and culture is one factor that makes it difficult for them to accept themselves positively, and this has led to a variety of problems such as failure to adapt to Japanese lifestyle, truancy, and problem behavior. Above all, students who do not have sufficient understanding of Japanese have difficulty in communicating and understanding the contents of lessons due to differences in language, culture, and customs.
This paper will reveal how to overcome such problems and present measures toward their solution. キーワード:外国人児童生徒 多文化共生 アイデンティティの確立
はじめに
今、世界は政治、文化、経済をはじめさまざまな 分野で人、モノ、情報等の流れが、国の枠を越えて 地球規模で展開され、グローバル化が進行してい る。 こうした、グローバル化が進展する時代にあって は、あらゆる国の人々と共生を目指す国際的な視野 をもった豊かな人間の育成が求められている。 現在、兵庫県においては、約140カ国10万人を超 える外国人県民が在住し(図1)1)、その内5万人 余りが在日韓国・朝鮮人であるが、近年、就労や留 学目的等で在住する中南米やアジア諸国の人々が増 加してきている。このような中、兵庫県では外国人 県民が住みやすく、活動しやすい地域づくりを目指 して1994年(平成6年)に「地域国際化推進基本指 針」2)を策定し、その方針を具現化するために様々 な施策を展開し、互いの人権を尊重し、支えながら、 世界の人々とともに生きる国際性豊かな社会の実現 に向けて取組んできている。 兵庫県教育委員会においても2000年(平成12年) に「外国人児童生徒にかかわる教育指針」3)を策定 し、多文化共生の視点に立ち、外国人児童生徒の自 己実現を図ることの支援やすべての児童生徒に「共 生の心」を育む教育の推進に取組んでいる。 しかしながら、まだまだ現状においては、外国人 児童生徒の中には、自己実現や共生が阻まれたり、 日本語理解が不十分なことや、文化、生活習慣の違 いなどから学校や地域の中で暮らしにくい状況がみ られる。また、「日本人」の目に見えない「心の壁」 が障害となって、学校で孤立感を抱いたり、疎外さ れたりするような状況も起こっている。 本稿では、このような兵庫県における外国人児童 生徒にかかる現状と課題に視点をあて、すべての児 童生徒が互いに尊重し合い、「共生の心」を育むた めにどのような教育を展開すべきか、その方策を明 らかにしていきたい。 * Mitsuru IOZUMI 教育学部准教授 1)兵庫県内の外国人登録者数の状況について 2009年(兵庫県) 2)地域国際化推進基本指針 1994年(兵庫県) 3)外国人児童生徒にかかわる教育指針 2000年(兵庫県教育委員会) 197.54298.168 99.5399.83999.654 99.753 101.931102.529 102.721101.865 102.954 101.691 101.294101.773101.297 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 95 96 97 98 99 0 01 02 03 04 05 06 07 08 09 年 千人
1
増加する外国人登録者とその背景
日本では1975年(昭和50年)代に入って、社会・ 経済のグローバル化の進行と経済発展、特に1980年 後半から円高・ドル安の定着や日本社会での少子化 が進行する中、中小企業など慢性的な労働不足など から、日本での就職・留学を希望する外国人が年々 増加し、さらには1990年(平成2年)の「出入国管 理及び難民認定法」(入管法)改正4)により、日系 外国人が活動に制限のない在留資格を得やすくなっ たことを契機に、ブラジル、ペルーなどを中心とす る日系外国人労働者が急増。2005年末では約201万 人で、日本の総人口の1.57%を占め、国籍数は186 カ国にのぼっている5)。 このような中、兵庫県においても図1にあるよう に、外国人登録者数は年々増加し、1974年(昭和49 年)には、約8万2千人であったものが、2009年(平 成21年)では、10万人を超えるまでになり、兵庫県 の総人口の1.80%を占めるまでになっている。な お、国籍別では韓国・朝鮮が52,351人で最も多く、 次に中国が25,760人となっており、2カ国で全体の 77.1%を占めている。このように外国人県民が増加 する中で、外国人労働者と伴に来日する外国人児童 生徒も増加傾向にある。 ところで、日本における在日韓国・朝鮮人の状況 についてであるが、1910年の日韓併合以後、在日韓 国・朝鮮人は増加し、1920年には約3万人、1930年 には約30万人、1945年には200万人以上にもなって いるといわれている。1945年以降、日本の敗戦で在 日韓国・朝鮮人の多くは祖国へ帰国の途に着くが、 その後の南北分断や祖国での生活基盤を失うことな どから、日本での定住を余儀なくされ、その結果約 60万の人々が日本に留まることとなる6)。現在の特 別永住者はこれらの人々やその2世、3世、4世の 人たちである。2
学校における外国人児童生徒の現状
と課題
現在兵庫県内の学校には、中国、韓国・朝鮮、ベ トナムなど20カ国以上の国籍を有する6,000人を超 える外国人児童生徒が在籍しているが、兵庫県の特 色としては在日韓国・朝鮮人児童生徒が多く在籍 し、その大半を占めている。 しかしながら近年では、ブラジル、ペルーなど中 南米やフィリピンなどアジア諸国から新たに渡日し てきた(ニューカマー)外国人児童生徒も増加して きており、これら外国人児童生徒の多くは、母国と 異なる言語や生活習慣等の違いに戸惑いながら多く の課題を抱えて生活をしているのが現状である。 特に、外国人児童生徒をめぐっては、いじめ、進 路保障、母語・母文化の保持、アイデンティティの 確立など様々な課題がある。とりわけ、日本語理解 が不十分な外国人児童生徒(図2、図3)にあって は、母語や母文化にふれる機会が少なく、言葉や文 化の違いから、コミュニケーションや学習内容の理 解が図りにくく、生活不適応、不登校、不就学、問 題行動等様々な課題も生じてきている。 4)「出入国管理及び難民認定法」(入管法)改正1990年(平成2年) 5)法務省入国管理局統計2005年 6)朝鮮と日本の歴史 久保井 規夫著 明石書店 図 1 兵庫県の外国人県民の人数推移(兵庫県調べ) 2009年(平成21年)12月末 教 育 学 論 究 第 2 号 2010 2その他 53 韓国・朝鮮 54 ポルトガル 78 中国 159 ベトナム 184 タガログ 56 スペイン 50 中学校 160 高等学校 22 小学校 426 特別支援学校 1 中等教育学校 25 表 1 兵庫県人権教育調査研究委員会の調査(2006年) 本名使用の有無 本名使用 135人中 割合(%) 使っている 80 59.3 日本式の読み方をしている 19 14.1 名前の順序を変えている 3 2.2 日本式の名前を使っている 29 21.5 その他 4 3.0 外国人児童生徒の現状については、兵庫県教育委員 会の報告書「子ども多文化共生をめざして(報告)」 (五百住、綿巻でまとめ執筆)7)の中で、以下のよう にまとめている。 (1)在日韓国・朝鮮人児童生徒について ア 日本で生まれ育った3世、4世 ・1世、2世とは、世代間における民族的アイ デンティティの変化や意識の違いが存在して きている。 ・今日においても、在日韓国・朝鮮人児童生徒 が学校生活や日常生活の中で本名(民族名) を名乗るのが難しいという状況もある。(表 1) ・日本の生活の様々な場面で差別や偏見に出会 い、自己実現や共生が阻まれるという状況も ある。 イ 新たに渡日してきた韓国・朝鮮人児童生徒 ・在日の児童生徒と同様な状況(差別や偏見) も生まれ、通名(日本名)を名乗るケースも みられる。(表1) (2)新たに渡日してきた(ニューカマー)外国人 児童生徒について ア 言語の障壁 ・言語の障壁があることで、互いの考えや思 い、願いなどが伝えきれず、学校生活におい て様々な摩擦や問題を生じている。 イ 保護者とのコミュニケーション ・母語しか話せない保護者と十分にコミュニ ケーションが図れなかったり、日本語が分か らない保護者を否定的に受け止めるなど親子 関係をゆがめる原因にもなっているケースも ある。 ウ 就学や進路にかかわる問題 ・不就学や日本の学校に適応できずに不登校に 陥っている場合もある。 ・学習言語の習得が困難であることによって、 学力向上が十分に果たせないため進学を諦め ざるを得ないという状況もある。 7)子ども多文化共生をめざして(報告)2003年3月(兵庫県教育委員会) 図 2 県内の日本語指導が必要な外国人児童生徒言語別 人数(合計634人) 2007年(平成19年)9月(兵庫県教委調べ) ベトナム語 184 中国語 159 ポルトガル語 78 タガログ語 56 スペイン語 50 韓国・朝鮮語 54 その他 53 図 3 県内の日本語指導が必要な外国人児童生徒 校種 別在籍数(合計634人) 2007年(平成19年)9月(兵庫県教委調べ) 小学校 426 中学校 160 高等学校 22 中等教育学校 25 特別支援学校 1 兵庫県の外国人児童生徒にかかる現状と課題 3
このように、外国人児童生徒の多くは、様々な課 題(表2)を抱えていることが分かる。まず、在日 韓国・朝鮮人児童生徒についてみると、今、学校で 学ぶ多くの在日韓国・朝鮮人児童生徒は、日本で生 まれ、育ち、学んでいる3世、4世であり、日本で の生活の中で、民族や母国に対して1世や2世とは 違った意識をもちつつあると言える。家庭において も韓国・朝鮮語での会話ではなく、日本語での会話 が中心となり、母語の保持や民族のアイデンティ ティに関する意識においても1世や2世とはかなり 違う状況が生まれてきているが、差別や偏見を恐 れ、自分の名前を本名(民族名)で名乗らず通名(日 本名)で名乗るケースは多くある。また、拉致問題 にかかわって嫌がらせ等を受けた在日韓国・朝鮮人 児童生徒が数多くいたことは忘れてはならないこと である。 新たに渡日してきた多くの韓国・朝鮮人児童生徒 は、在日韓国・朝鮮人児童生徒とは異なり、通名 (日本名)を持っていないので、本名(民族名)で 過ごしているが、日本での学校生活の場で差別や偏 見に出会った場合に、本名(民族名)を名乗らなく なるケースもみられる。また、日本語理解が不十分 なことから言語の障壁も大きな問題としてある。 !参考" 在日韓国・朝鮮人の通名(日本名)使用について は、日本が朝鮮半島を植民地支配していた時に強制 的に「創氏改名」を実施したこと、さらには、第2 次世界大戦後の日本社会において在日韓国・朝鮮人 に対する差別的な社会風潮が背景にあると思われ る。 ところで、新たに渡日してきた(ニューカマー) 外国人児童生徒にとっては、言語の障壁というのは 非常に大きな問題である。言語の障壁があること で、自分の思いを十分に伝えることができず、生活 習慣など文化の違いを理解してもらえなかったりす ることから、いじめにあったり、疎外感を感じてい る児童生徒は数多くいる。 特に、学校における教科学習においては、多くの 外国人児童生徒が戸惑いを感じている。漢字圏以外 の国から渡日してきた外国人児童生徒にとっては、 漢字が分かりづらいなど、日本語の学習が最初の壁 となっている。また、母国の習慣や学習経験の違い などにより、日本の学校の指導方法に対して戸惑い も見られる。 このことから、教室にいることに苦痛を感じた り、だんだんと学校に行くことが嫌になり、不登校 となるケースも生まれてきている。 また、新しく渡日してきた(ニューカマー)外国 人児童生徒とその保護者との関係(親子関係)も複 雑化している状況もある。 これまでの外国人永住者は、同じ母国の人々で構 成する団体等があることからコミュニティを形成し やすく、その中で母語や文化を保持することが可能 であった。しかし、1990年の「出入国管理及び難民 認定法」の改正を機に、新たに渡日してきた外国人 の場合、在留期間が短かったり、就労にかかわる状 況により居住地を移動したりする場合が多いなど、 コミュニティを形成しにくい状況にあり、相互支援 や母語の保持等が難しくなっている。このような状 況の下で、新たに渡日してきた外国人児童生徒は、 学校や友人等から、またテレビやマスメディアを通 して日本語を習得していくにつれて母語を忘れてし まう傾向にある。一方、保護者は仕事中心の生活で 日本語を学ぶ機会がほとんどなく、母語しか話せな い状況であり、親子間のコミュニケーションが十分 に図れない状況も生まれてきている。そのため、日 本語がわからない保護者を避けたり、否定的にみる など親子関係をゆがめているケースも多くある。 外国人児童生徒の就学にかかわる問題では、不就 表 2 兵庫県人権教育調査研究委員会の調査(2006年) 外国人児童生徒が困っている内容(複数回答あり) 困っている内容 482人中 割合(%) 日本語が分からない 344 71.4 学校生活になじみにくい 269 55.8 外国人の子どもへのいじめや差別がある 185 38.4 学校の先生が母国のことを理解していない 98 20.3 宿題があっても家で出来ない 78 16.2 勉強する意欲が持てない 32 6.6 教 育 学 論 究 第 2 号 2010 4
学の問題がある。文部科学省が2005年(平成17年) 度から2006年(平成18年)度にかけて滋賀県、愛知 県の豊田市、岡崎市はじめ全国1県11市で調査した 結果は、就学者数が全外国人児童生徒の81.4%、不 就学者は1.1%(兵庫県では0.7%)、転居・出国等 で連絡の取れない人が17.5%だった8)。 不就学については、保護者に就学させる意志や意 欲がなかったり、就学案内などの情報が正確に伝 わっていなかったりする場合がある。 また、就学したものの日本の学校に適応できずに 不登校に陥っているケースもある。 進路の問題も深刻である。進学にかかわる情報が 保護者に十分に伝わっていなかったり、学習言語の 習得が困難であることによって、学力向上が十分に 果たせず、進学を諦めざるを得ないというケースも 多くある。
3
多文化共生に向けた今後の在り方に
ついて
( 1 )共生のための資質や技能の育成を 外国人児童生徒と日本人児童生徒との共生を考え たとき、まず、日本人児童生徒に対してどのように 共生の心を育成していくかが課題となる。 日本人児童生徒に対しては、人権尊重を基盤に し、異なる文化や価値観などの認識を深めさせると ともに、互いの違いを認め尊重し合い、そしてパー トナーとして協力し合いながら生きていこうとする 異文化間コミュニケーション能力や態度を育成して いく必要がある。 最近の子どもたちは、外国の文化を自然に受け入 れ、異文化と自文化を分け隔てる心のバリアを乗り 越える感性と受容力を持っている。しかし、社会状 況が変化する中で、大人社会の影響に左右され、異 質なものを排除し、同質にとらわれがちな傾向も併 せ持っている。 それ故に、子どもたちを中心に据えた多文化共生 教育を、就学前から系統的、計画的に、あらゆる教 育活動の場で展開していくことが必要である9)。 ( 2 )外国人児童生徒の心の居場所とアイデンティ ティの確立をめざして 自尊感情の形成は、日本人、外国人にかかわらず、 すべての児童生徒にとって大切なものであり、アイ デンティティの確立にもかかわる重要な要素であ る。 外国人児童生徒にとっては、日本での生活は、母 語や母国の文化にふれる機会も少ない中で、異質な ものを排除しがちな日本社会の状況や外国人に対す る偏見などのために、民族的自覚を持ちにくくなっ たり、自分自身を肯定的に捉えられなかったりする ため、自尊感情を形成しにくい状況もある。 例えば、在日韓国・朝鮮人の児童生徒が通名(日 本名)で生活せざるを得ない状況に追い込まれた り、新たに渡日してきた外国人児童生徒が日本名に 変えようとしたりする実態もある。 すべての外国人児童生徒が、豊かに生き生きと過 ごせる環境を作っていくためには、学校において は、すべての児童生徒に、差別や偏見を生み出して きた歴史的経緯や社会的背景等についての認識を深 めさせるとともに、人権問題や多文化共生のための 学習機会の充実や交流活動を展開する必要がある。 ( 3 )新たに渡日してきた(ニューカマー)外国人 児童生徒への支援を 日本は、「児童の権利に関する条約」10)の批准国で ある。それ故、外国人児童生徒の権利の保障に向け 8)外国人の子どもの不就学実態調査 2005年度から2006年度(文部科学省) 9)異文化間教育 佐藤 郡衛著 明石書店 10)「子どもの権利条約」1989年に国連で採択、日本は1994年に批准。第28条で教育についての児童の権利を認めている 表 3 外国人の子どもの不就学実態調査から 文部科学省2006年度 !不就学の理由"(複数回答 回答数135) 学校に行くためのお金がない 15.6% 学校でいじめられる 7.4% 日本語がわからない 12.6% 友だちができない 5.2% すぐ母国に帰る 10.4% 学校に行かなくてもよい 3.7% 生活や習慣が違う 8.9% 兄弟姉妹の世話をする 3.0% 勉強がわからない 8.1% その他 17.0% 仕事やアルバイトをする 8.1% 兵庫県の外国人児童生徒にかかる現状と課題 5て、様々な支援を行う必要がある。 とりわけ、言語や習慣が異なる生活での心のケア やコミュニケーションの円滑化を図るための支援は 最も重要な課題である。 ア 言語の壁をどう乗り越えるか…生活言語習得等 の支援を 日本語理解が十分でない外国人児童生徒の学校や 地域における生活への適応支援は、渡日初期から求 められる緊急な課題である。そのため、兵庫県では、 就学支援のためのガイドブック(11言語対応)を作 成配布したり、不安を抱えている外国人児童生徒の 心のケアや教員と児童生徒のコミュニケーションの 円滑化等を支援するとともに、日常生活に不可欠な 生活言語を習得させるために、日本語と母語が話せ る「子ども多文化共生サポーター」を、児童生徒の 日本語理解の程度に応じて、外国人児童生徒が在籍 する学校に派遣している。以下は、「子ども多文化 共生サポーター」の派遣状況である。 !子ども多文化共生サポーター派遣事業" 【支援内容】 日本語指導の必要な外国人児童生徒に対し、教員 等と当該児童生徒とのコミュニケーションの円滑化 を促すとともに、生活適応や心の安定を図るなど、 学校生活への早期適応を促進するため、子ども多文 化共生サポーターを派遣する。 また、学習の補助も行っている。 ①対象 在留期間3年未満の日本語指導が必要な外国人児 童生徒 ②派遣回数 当該児童生徒の在留期間に応じて週1∼3回(1 日4時間以内) ③職務内容 ・外国人児童生徒の生活適応への支援 ・外国人児童生徒の学習支援 ・外国人児童生徒の心の安定への支援 ・子ども多文化共生教育推進の支援 子ども多文化共生サポーター派遣事業において は、教職員や外国人児童生徒・保護者とのコミュニ ケーションの円滑化が図れたとか、学習言語習得へ の意欲を向上させることができたとか、外国人児童 生徒の心の安定に寄与することができた等々成果を あげてきている。しかしながら、これだけのサポー ターを派遣していてもまだまだきめ細かく十分に対 応ができないのが現状である。すべての外国人児童 生徒を支援していくには、母語が話せるサポーター を外国人児童生徒の状況に応じて多く派遣したり、 日本語指導ができる教員を養成し配置するなど状況 に 応 じ た 対 応 措 置 が 必 要 で あ る。ま た、JSL (Japanese as Second Language)日本語教育プログ ラムなど日本語教育指導システムを確立し、学校と 関係機関等が連携して対応していく必要がある11)。 11)日本語指導が必要な外国人児童生徒の指導資料 1995年(文部科学省) 表 4 子ども多文化共生サポーターの派遣状況 言語名 派遣校数 サポーター数 言語名 派遣校数 サポーター数 中国語 74 36 ロシア語 2 1 フィリピノ語 49 15 ルーマニア語 2 1 ポルトガル語 27 13 タイ語 1 1 ベトナム語 26 13 アラビア語 1 1 韓国・朝鮮語 16 9 ヒンディ語 1 1 インドネシア語 15 5 ウイグル語 1 1 スペイン語 13 7 ネパール語 1 1 フランス語 3 1 モンゴル語 1 1 ドイツ語 2 2 ダリ語 1 1 ウルドウ語 2 2 フィンランド語 1 1 ハンガリー語 2 1 セルビア語 1 1 ベンガル語 2 1 23言語 244校 116人 小学校:153校 中学校:81校 県立学校:10校 合計244校に派遣 兵庫県教育委員会(2010年 4 月現在) 教 育 学 論 究 第 2 号 2010 6
イ 母語学習の支援 日本語理解が不十分な外国人児童生徒にとって は、日本語で思考し学習するより、母語を媒介とし て学習する方がより高い学習効果が得られる。児童 生徒の認知的能力を順調に発達させるためにも母語 の果たす役割は大きい12)。 また、家庭において、日本語の会話が成立しにく い保護者との意思疎通を図るためにも母語を保持で きるようすることは重要である。 さらに、母語は児童生徒の自尊感情の形成にかか わり、アイデンティティを確立するうえで欠かせな いものである。子どもの母語が確立し始めるのは、 10才∼11才頃と言われている。その時期までに日本 に来た子どもは、母語が十分に確立されていないた め、会話はできるが、頭の中でその絵が十分にイ メージできないケースがあるようである。そのた め、本人の中で生活体験が不十分なまま言語認識に ズレを生じ、心にストレスがたまるという状態が長 く続くこともある。 ウ 進路を保障するための学習支援 学習言語の習得に課題のある外国人児童生徒は、 教科学習に必要な語彙力や読解力などが不十分で教 科の学習内容を理解することが困難な状況にある。 そのため、進学のための学力を十分に身につけてい くことが難しい。 外国人児童生徒の教科学習を支援するためには、 母語を通して学習言語を習得させ、教科学習をサ ポートしていく必要がある。教員と母語が話せるサ ポーターとの連携は大変大事なことである。 さらに、外国人児童生徒の進路の保障を考えた 時、入試制度の改善も必要なことであると言える。 エ 不就学児童生徒への支援 外国人児童生徒の不就学問題の改善については、 放置できない課題である。 不就学の改善に向けて、保護者に就学案内等を正 しく伝えるために、教育委員会と関係機関、さらに は保護者が働いている事業所等と連携を図りながら 様々な機会を通して働きかけていく必要がある。