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浦戸湾における陸水量について

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浦戸湾における陸水量について

      今    井    嘉    彦

        (高知大学教育学部化学教室)

On the fresh water in sea wates in Urado Bay

       By       Yoshihiko IMAI (Chemical Laboratoi・y, Faculり0/ Ed・ticattOJi, Koclii U・niversiり)       1 緒    言  浦戸湾は鏡川,国分川,下田川などの各河川の流入により塩分濃度がいちじるしく低下し,特に 雨期の表層水では1C1‰以下になることも稀でない.このように本湾は塩分濃度が全般的に低いば かりでなく,表層水と低層水との塩分濃度の較差が大きいので,いわゆるいちじるしい成層がみら れる.この現象はこれまでの研究I).2)でもしぱしば述べられてきたが,最近の臨海工業用地造成の ための埋立工事に伴ない,湾内水の流動状況も変化しており,この工事の完成後には海況も相当現 在とは異なったものになることが予想される.そこでこの際,海水の塩分濃度,特にその陸水量を 決定しておくことは今後の海況の変化を知る上にもm要であり,特に内湾水の塩分濃度の変化は周 辺の地下水の水質,臨海工業における海水の利用等に影響するところが大きいと思われるので,こ れまでに調査した塩素量の分布およびヶイ酸の分布などにもとづいて陸水量の見積りを検討したの でその結果を報告する,         2 陸 水 量 の 算 定  本湾において海水の塩分濃度が低い原因の主なものは勿論河 川水であるが,雨水のほか,地上水利用の激増に伴なう廃水量 の増加も無視できない.したがって,湾内水に流入する河川水 量を測定するだけでは海水の稀釈状況を明らかにすることがで きない.そこで直接海水中の陸水量を算定する必要がある. TuHy3)は塩分の鉛直分布において,深さの対数をとり塩分濃 との関係図を作製して次式により陸水量を算定している.      S*L- 姐z         J   c=-?jフー すなわち,s*は海水が稀釈されないとどの塩分濃度を示し, 便宜上底層水の塩分濃度をとることもできる.£は稀釈された 海水が占める深さの限界を示す.したがって,分母は表面から £までの塩分について海水が稀釈されないと仮定したときの総 第1図. 浦戸湾の観測点 量を示すものである.分子はこの塩分の総量と低下した塩分量の差で陸水量と見倣される.したが って(C)は陸水の混合率を示すこととなる.  本湾の鉛直分布を上述の方法で作図すると, Tullyが解析したいわゆるモデルとなり得るような 分布(第2図参照)以外のものがかなりみられた.これは本湾の海水混合が複雑であることを示し

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46 0.1 水深→−I 1 0 j互坦大学学術研究報告 第11巻  自然科学 I 第7号       ており,水平方向および鉛直 j゛分嗜≒。 第2図.対数プロットした塩素faの鉛直分布 方向の渦動拡散による混合を 検討しなければならないとこ ろであろう.ここでは陸水量 の大略を知るためTuUyの式 により塩素mの半日周変化を 求めてそれぞれ陸水量(C) の算定を行ない,その値の範 囲を求め,特異的な海況の場 合の値についても検討するこ とにした.なお内湾のケイ酸 の分布は陸水の混合状況を如 実に示すものとして,多数の 研究4)がある.本湾における ケイ酸の分布についても明ら かにしたので,これらの結果 についてもあわせて論ずることにした.ただ,本湾では底上の影響でケイ酸の含有量が多くなる場 合もあり,これは底層永の勁きによって底土か海水に影響している.このことについてはすでにリ ン酸塩の分布6)から明らかにしている.       5 陸水と海水の混合状況の日変化  海水に含有する陸水部分の総量の日変化はさほど大きいとは思われない.地点415において観測 I。味こ一’ 7 10-30  12-ぶ) 14ぶ) 16ぷ) 18-30ぶ-J∂ 第3図.対数プロットした塩素址の鉛直分布(日変化) した結果もこのことを示して いる.すなわち,同一地点で 観測した陸水mは当然潮汐の 影響により刻々変化するよう に見える.そこで陸水量の日 変化を明らかにする必要かお る.第3図は地点415で観測 した塩素量の鉛直分布を示し たものである. 10-30,∼14 −30では第2図に示したモ デルに相当する分布の型がみ られ, 16-30および18-30で は,かなり混合の程度か進ん でいわゆる変水層(Halocline Depth)の深さが増大してい る.この観測値にもとずき陸 第1表 第点415における随一水址の日変化 観 測 時 間 5*£一  臨 より 10−30 2.7 12-30 0. 16 14-30 0.11 16-30 0. 19 18−30 0. 14 20―30 0.11

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      jl戸湾における陸水量について   (今井)       47 水量を算定して第1表の結果を得た.  この表においで,cの増加は陸水量の減少を意味する.よって,cの値の日変化においてその 値が増加する時刻は陸水と海水との混合が進んだものと見倣し得る.第1表でもその傾向かうかが われるが,全体的にみれば大きな変動がなく,陸水量はほぽ似かよった値を示している.       4 湾の断面における塩分の鉛直分布と陸水量  つぎに地点115から715までの横断面について1961年に観測した塩素量の鉛直分布を第4図に示 す.この図から明らかなように表層水は低かんで,水深2m附近にHaloclineの境界がみられる.  この断面についても各地 点のCの値を求めると第 2表のように0.04∼0.63で かなり大きな範囲を示して いる.  断面においてこのように 陸水量に差がみられること は潮汐による海水の流動状 況にもとずく差であると考 えられる.8月24日の測定 は415附近で,7月12日の 測定は115寄りの地点でそ れぞれCの値が高くなっ ている.このことは,この 附近の海水は陸水量が少な く,外海から流入した高か んな海水が流動しているこ  0 水'│ 深2 ͡3 巴4  5  6  0  1 水2 深3 ͡4 恐5  6 採水点        第4図. 第2表  横 断 而 地 ざjz -点 8月24日 7月12日 115 -0. 13 0.63 215 -0. 15 0.26 浦戸湾の横断面における塩素量の分布 の 陸 水 量  315   415   515   615 0. 13  0.29  0.16  0.09 0. 18  0.24  0.22  0.17 715  − 0.04 とを示している.  また縦断面については1959年の資料によると,雨のため表層水がきわめて低かんとなった4月19 日の観測についてみると第3表のような値を示している.この値はむしろ第2表の場合よりは陸水 量が少なくなっており,表面水の低かんなことから見ると矛盾するように見える.しかし,このよ うに表節水が低かんであっていちじるしい不連続層が形成されるときは,鉛直方向の混合か充分で 第3表 湾の縦断観測点の陸水量  1     513   515   519   417 509 と八つ手と  s*ムード 「z o一二元一 0.75 0.77 0.75 0.79 0.76

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 48      高知大学学術研究報告 第11巻  自然科学 I 第7号 ないので陸水と海水の混合が比較的表層に限られる.したがってとのように表層と低層との差が大 きいときはむしろ(C)の値は小さいと考えられる. 5 陸水量とヶイ酸の分,布との関係  1961年7月12日および8月24日に採取した試料の分析結果は11.8∼92.6μg. at. ILであった.ヶ イ酸は低かんな表層水に多く含まれ,塩素量と反比例的に増減する.前田5)は駿河湾,浜名湖にお いて〔SiO2〕十A〔CI〕=Bが成立ち,Bを恒数として・B=807÷15. 9Aで示されるとし,これによっ てある河川の影響を大略算定することが可能であると報告している. O −゛2   水深 心 巴3 4   5 水深︵m︶ 0 1 2   3   4   5   0      5      0 2   1   1  公為臼︶IS-SIEDHIC 地点 3 j 5 拓.ぶ  ・12・1 16・6 5 1 S 615 1 5  /タぶ/享y≪-fS*£.W SILICATE一別 jjg. at./乙 地点  □5  215  315  415  515  615  715 第5図Silicate・si の 分 布   2 4 6 8 10 12 14 16 18        Chlorinity % 第6図Silicate-Siと塩素nとの関係  本湾でも第5図のよ うな分布がみられ,第 6図に示すように塩素 量とケイ酸とは相互に 密接な関係かあること を示している.ただ, 本湾では底土にきわ めて接した海水中の ケイ酸含有量が多く, Silicate-Si―C目周係図 において,はなはだし く離脱したプロットが それに相当する.した がってここで直ちにこ れらの関係式を見出す ことは困難であるよう に思われる.このことに関しては今後なお検討を要す るが、こ、こでは分布を明らかにした程度にとどめる.         6 結     語  以上浦戸湾の陸水量を概略的に見積った.従来内湾 の生産力や海水の微量成分の挙動を知る上にもまた, 海水利用工業における原料海水の採取などの場合にお いても,個々の海水試料の塩分濃度から海水の稀釈状 況を判断することが多かった.陸水量を数量的に見積 ることによりこれらはより明確になることか期待でき る.  なお埋立後の海況の変化に伴なう陸水量の変勁につ いては今後の研究にゆづる.  本研究を行なうに当り,御指導と御鞭達を賜わった 京都大学石橋雅義名誉教授,同藤永太一郎教授,本学 の山木広志教授に深謝します.

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浦戸湾における陸水量について   (今井) 第4表の1  横断観測の分析結果 (1961年8月24日観測) 49 地 点 水 深 (n!) 115 215 315 415 515 615 715 9 , S 012 0123 0123 01235 012 01 0        ’  4 水  温 (゜C)     31.0     30.4     29. 1 8 2 9 5   一   一 一 ﹄ Φ 0 0 8 8 3 3 2 2 / O O O O ^ ︱ I O o ノ e x U o o r o O J o ^ i c s i 30.5 29.8 28. 1 27.8 27,8 673 098322 ‘81 0932 30.7 塩 素 量(%) 一  12.49  13.81. ,  16.06 2 3 1 1 16. 16. O ^ C D O O O ^ 7 6 5 9 0 9 0 0 t -2 7 5 5   ゆ 一 一   摯 1 4 / n v 7 1 1 1 r l 10. 11. 17. 17. 17. 0 3 3 6 3 0 6 8 7 1 0 4 v r v u -) -< 3 " r < i 1 4 7 1 1 1 40 −− 3611 11.50 Silicate-Si μg. at. /L 一  35.9  29.2  18.8 c ノ 3 u -i O O ^ 0 6 9 8 6 3 2 1 1 / n ) v O 0 0 0 2 0 8 1 ︿ M / 4 1 1 54.2 32.8  9.8 16.6 12.1 47.9 32.0 17.4 31. 1 18.2 44. 1 第4表の2  横断観測の分析結果 (1961年7月12日観測) 地 点 水  ・深(m) 塩 素 量(%) Silicate-Siμg・、at./L 115 215 315 415 515 615 715 012 0123 0124 0124 0123 012r01り乙 水  温 (゜C)     27. 7     26.8     26.4 4 0 0 0 0 7 7 6 5 c v i o j r < i O J 27.6 26.8 26.0 25.5 1885 76LO LTl 2222 o ノ v O O O O O   ■ 一   一 一 / a v O L T i L O 2 2 2 2 27.2 26.7 26.0 O Q O   ︱ 一 7 £ 0 2 2 O m 3 ^ C ^ o n c < i o d W v £ )     I I 0855 <-O OJ OnOO oofoc︱ r-  111 り J O 0 4 c v j r ︱ c v ] c r ≪ O O I J -J C ︱ C ︱     ︱ ︱ ︱ C T ^ C s i v D   1 1 18. 3 6 3 2 1 0 0 O ^ ■ ︱ I 0 4 \ . O C S I 1 0 0 0 L O C T ' " < * " ^ O C -    1 1 1 459466 0d CO vo  11 8。02 14.47  − 65.9 42.8 37.8 80.5 36.3 22.8 28. 1 4 c v j u -) p -0 り 乙 0 0 7 7 1 2 3 2 2 1 8 1 9 1   ■ Φ S I 4 r o -s s * o -i 7 4 c s i r o 82.7 33.5 36.7 89.5 51.0 41.7

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'50 高知大学学術研究報告 第1.1巻  自然科学 I 第7号. 第4表の3 観測点415における試料の分析結果 (日変化)

水深 (m)

賠ト1%

観測│水深時刻(m)

対出入

(m)水深

C1%  Si-mg// 10−30 16−30 22-30 4.30 0 0.5 1 1.5 1.7 0 0.5 1 1.5 1.7 0 0.5 1 1.5 2 2.5 0 0.5 1 1.5 29.9 29.3 29.2 28.8 28.8 30.8 30.6 30.5 29.9 29.6 29.5 29.6 29.5 29. 1 28.6 28.6 28.5 28.3 28.3 29.1 14.77 14.90 14.93 16.36 17.50 14.60 14.86 14.81 16. 15 1・6.45 14.61 14.62 14.90 15.76 17.41 17. 12 14.98 14.99 15.35 16.53 6.13 5.55 3.60 ,2.68 4.78 5.25 5.00 3.60 4.20 2.88 2.20 4. 10 2.93 3. 90 2.98 3.00 2.68 1.50 1.50 3.60 12-30 18−70 0−30 6−30 0 ・0.5 1 1.5 1.7 0 0.5 1 1.5 1.7 0 0.5 1 1.5 2 0 0.5 1 1.5 29.・9 29.召 29.7 29.6 29.・5 30.7 30.7 30.5 30.3 30.3 29.・9 29.1 29.3 28.9 28.7 28.3 28.0 28.2 28.2 4.46 5.68 6. 19 7.41 7.27 4.51 4.51 4.71 5.30 5.60 4.84 4.94 4.95 6.28 7.58 4.95 4.95 4.95 5.00 2.88 ・4.98 ・4.88 :5.73 4.63 ・5.60 '5.68 ・5.25 5.00 4.20 4.35 5.00 3.00 3.23 ・8.80-2.75 4. 13 4.00 4.68 14-3(〕 20−30 2−30 8.30  0  0.5 づ  1.5  1.7  0  0.5  1  1.5  2  0  0.5  1  1.5  2  0  0.5  1  1.5  1.7 30.4 30.2 30.0 29. 9 29.3 30.4 30.3 30.4 30. 1 29.7 28 泄 28.8 28.8 28.8 28.6 28.3 28.4 28.4 28.5 ゝ 4.86 5.28 5.31 5.73 6.97 4.50 4.46 4.88 6.87 7.09 4.80 4.86 5.33 6, 14 6.67 4.58 4.60 4.78 4.83 5.05 4.50 4.30 4.50 4.38 5.50 7.25 4.88 5.23 7. i}0  − 4.20 5.83 2.85 0.83 1.50  − 1.58 1.73 5.95 7. 13 文 献 1)山本 広志バ本邦内湾の海洋化学的研究(1), m戸湾における不辿続眉についで日本洵洋学会誌14,  25 (1958) 2 ) “本邦内湾の海洋化学的研究(3)。塩類組成の変動と海況とめ関係”日本海洋学会誌,14  155 (1958)

3) J. P. Tully,“On structure, Entrainment, and transport in Estuarine Embayments”, J. Mar

 Res. , 17, 523 (1958)

.4)例えば深井麟之助, Bull, C. S. J., 29, 308∼412 (1954)な・ど,.

5)前田 弘,“河口に於けるSiO2およびC1の濃度関係”水産講研, 3, 167, (1953)

6)今井 嘉彦,“元素の挙動に伺する海洋化学的研究”V,日本海洋学会誌VI,  31

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