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学業場面における達成目標志向性と家庭・学校・地域での社会的責任目標との関係について : 中国と日本の中学生を対象として

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†学校教育専攻 学校教育専修 指導教員:近藤文良 原 著 論 文

学業場面における達成目標志向性と家庭・学校・地域で

の社会的責任目標との関係について

――中国と日本の中学生を対象として――

On the Relationship between the Achievement Goal Orientations

and Social Responsibility in Domestic,

School and Community Scene.

―A Comparative Study between Chinese and

Japanese Junior High School Students―

Li GUAN

Abstract

This study investigated the effects of perceptions of achievement goal orientations (self-regulated learning goal, learning goal, challenge goal, performance goal) on social responsibility goal orientations in domestic, schools and community relations. Participants were 473 Japanese students and 472 Chinese students in a junior high school. The results included the following : 1) self-regulated learning goal and learning goal produced positive effects on social responsibility goal orientations ; 2) challenge goal produced positive effects on standard observance consciousness and prosocial behavior ; 3) performance goal produced negative effects on social responsibility goal orientations.

Key words : self-regulated learning, goal orientation, social responsibility, junior high school, Chinese.

Ⅰ.問題の所在 中国では周知のように,1979 年から人口を 抑制するため,都会をはじめ「一人っ子」政策 がほぼ 30 年にわたり実施されてきた。現在, 「一人っ子問題」は現代社会の話題として多く の専門家がその問題点を指摘している。特に, 「一人っ子」として育った児童・生徒は社会的 責任感や社会的適応性,独立性などが低く,ま た心配性,緊張性,判断力の面で両極分化され ていることが明らかにされている(許克毅,宋 宝萍,孔德生,張石梅ら 1996,1998 など)。 日本においても少子化が顕著な傾向となる中 で,児童・生徒が学習を遂行するとき,自ら学 習を深め,発展的に学びを進める面で様々な問 題点が指摘されている。特に自発的学習意欲の 欠如や他者からの評価懸念,あるいは問題状況 を克服しながら学習を進める態度などの心理学

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であるが,社会的生活場面でもある。その場面 において,友人,教師との人間関係は相互作用 を行いながら生活している。生徒たちが自分の 学習に対して,どのような達成目標志向性を持 つかによって,家庭・学校・地域での社会的責 任目標に影響を及ぼしていることが考えられる。 本研究はウェンツェル (Wentzel, 1998) ら の社会的目標理論と中谷(1996,1998,2006)の 社会的責任目標と学業達成の研究結果に従い, 中国と日本の中学生に対象として達成目標志向 性と社会的責任目標との関係について検討し, 子どもの学習態度は社会的責任感との関連につ いて考察することを目的とする。 本研究の第 1 の課題はこれら 2 つの目標意識 間の関係を明らかにすることである。両者の間 にどのような関係が想定されるであろうか。 学習目標志向性が高い児童・生徒は自らの学 びが積極的に進めるために教師,友人との関係 性を高めながら学習の価値を多面的に受け入れ ようとする。このような学習目標を持っている 児童・生徒は共同的な学び合い,教え合いの環 境を大切にし,困難な課題があっても,他者へ の援助要請を求めると考えられる。従って,学 級の中で相互の援助的行動を尊重する向社会的 行動が生起しやすく,また自ら成長するための 学びの空間を大切しようするために,集団の規 範遵守目標も高いと考えられる。 一方,遂行接近目標が高い児童・生徒の関心 は自らの有能性誇示や学業成績優位性に焦点化 されるので,共同的な学び合いや教え合いの気 持ちが育たないであろう。従って周囲の人への 向社会的行動が低いと考えられる。しかし,集 団の中での評価懸念が高いので,良い子に見せ るための規範遵守意識は高いと推測される。 更に,遂行回避目標が高い児童・生徒は,自 上記の仮定の妥当性について,日中両国を通 じて検討する。 第 2 の研究課題は家庭における社会的責任目 標の問題である。中谷(1996,1998)の研究では 学級における生徒・教師関係のみに焦点があて られたものである。子どもたちの学習目標志向 性に影響を与える要因は学校の集団生活という 環境だけではなく,家庭環境にも重要な要因で あると考えられる。すなわち,子どもたちの学 習目標志向性や遂行目標志向性などの学業への 内発的な学習意欲を持つことが,援助要請を求 める意識や家庭内の関わりとどのような関係を もつであろうか。 例えば,家庭内の規範遵守の意識が弱い児 童・生徒は学校への規範遵守意識が低いと予想 される。また家庭における協力的・援助的な関 係を習慣づけられた子どもは学級おいても同様 の向社会的行動が見られるであろう。従って, 本研究では,学級と家庭や地域・社会における 社会的責任目標間の相互の関係,および個人の 達成目標志向性との関係を明らかにすることが 第 2 の研究課題である。 第 3 の研究課題は,日本と中国の比較研究で ある。中国では 30 年近く一人っ子政策が継続 し,過度の競争的環境の中で学習目標志向性の 面では「遂行目標志向性」が家庭や学校を支配 していると言える。社会(親,先生,上司)から 不断に過度のプレッシャーがかけられて,自己 決定の能力を衰退させていると考えられる。こ のような教育環境の中で,「遂行目標志向性」 が強い中国の子どもにおいては逆に「学習目標 志向性」が低く,自発的学習能力が低いと推察 される。しかし,最近の達成目標理論に基づい た中国における学習動機の研究はほぼ皆無と言 える。

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更に,近年,中国では若者の社会志向性発達 の欠如や団結の力を衰えることが懸念されてい るが,依然として家族や近親者への関係性が強 く,他者への貢献や責任感は強く学習動機を形 成しているものと見られる。この点に関しても, 中国の児童生徒が国家や家族,親類縁者に示す 関係性意識がどのような実態となっているのか 現在のところ先行研究は見当たらない。日中間 比較を通じて個人の達成目標志向性が,家族や 地域社会への社会的責任目標にどのような影響 をもたらしているのかを明らかにしたい。 Ⅱ.目 的 日本と中国の都市化された地域における中学 生 (13 歳から 14 歳) を対象として「達成目標 志向性」と「学級,家庭及び地域・社会への社 会的責任目標」に関する質問紙調査を行い,達 成目標志向性の発達と学級,家庭及び地域・社 会への社会的責任目標との間にどのような関連 があるか明らかすることを目的とする。 Ⅲ.方 法 調査対象:日本と中国の都市部と農村部一部 が混在している地域の中学校の生徒 (1,2 年) に対象として日本は滋賀県草津市 473 名,中国 北京市 472 名を対象とした。 調査時期:2009 年 2 月上旬から 4 月上旬ま でに行った。 質問紙内容:「達成目標志向性」に関する質 問紙の項目は小嶋 (2007) の個人目標志向性尺 度を参考し,一部について日中両国の教育現状 を考慮しながら,全部で 26 項目を構成した。 「学級,家庭及び地域・社会への社会的責任目 標」に 関 す る 質 問 紙 の 項 目 は 岡 本・上 地 (1999) の Family Closeness Scale,中谷 (1996) 社会的責任目標尺度を参考にし,日中両国の国 勢を考慮しながら新たな質問項目を加え,家 庭・学校・地域社会それぞれへの社会的責任目標 への項目は合計 33 項目を作成した。 Ⅳ.結 果 と 考 察 1.各尺度の因子構造 (1) 学習目標尺度の因子構造 学習目標志向性尺度については,初めに因子 構造を確認するために,全 26 項目に対して因 子分析を行った。その後,共通性の低かった 6 項目を削除し,プロマックス回転を施した結果, Table 1 に示すような因子構造となった。初期 解を最尤法で求めたところ固有値が 1 以上の因 子は 4 因子が得られた。 各因子の名称を以下の通りとした。第 1 因子 は「自己調整目標因子」,第 2 因子は「学習目 標因子」,第 3 因子は「挑戦目標」,第 4 因子は 「遂行目標」と命名した。寄与率は,第 1 因子 自己調整目標は 27%,第 2 因子学習目標は 8 %, 第 3 因子挑戦目標は 5 %,第 4 因子遂行目標は 5 % であった。累積寄与率は 47.48% であった。 なお分析には SPSS (ver. 16) を使用した (以 下同様)。 (2) 向社会的責任目標と規範遵守意識尺度の 因子構造 本研究では,学習目標志向性による,家庭・ 学校・社会/地域への向社会的責任目標と規範 遵守にどのような関連となるかを検討すること を目的として,家庭・学校・地域社会それぞれの 場面における社会的責任目標に関する項目に対 して因子分析を施行したところ Table 2,3,4 に見られるように,3 場面ともに 2 因子構造が 認められ,それぞれ「規範遵守」因子と「向社 会的責任目標」因子と命名した。 まず,Table 2 に示すように寄与率は,第 1 因子は家庭において規範遵守が 36%,第 2 因 子向社会的責任目標が 13% であった。累積寄 与率は 49.38% であった。 次に,Table 3 に示すように寄与率は,第 1 因子は学校において規範遵守 43%,第 2 因子 向社会的責任目標が 11% であった。累積寄与 率は 55.10% であった。 最後に, Table 4 に示すように寄与率は,第 1 因子は社会・地域において向社会的責任目標 は 52%,第 2 因子規範遵守が 10% であった。 累積寄与率は 62.95% であった。

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11 人の成績が気になる 3 私は,テストで他の人より悪い点数を取ってしまうことが心配だ 21 あの子に負けたくないという気持ちが強い 14 先生に変な質問をして,頭が悪いと思われるのが嫌だ 13 他の人より学習がより進んでいることが嬉しい 5.72 47.48 5.83 41.76 8.53 35.92 27.39 27.39 寄与率 (%) 累積寄与率 (%) 因子抽出法:最尤法回転法:Kaiser の正規化を伴うプロマックス法による。因子負荷量は小数点第 3 位以下を四捨五入した。 −0.18 0.00 0.02 0.73 0.61 0.42 −0.11 0.17 0.11 0.01 −0.06 0.04 15 上手く行きそうでないことでも挑戦することが好きだ 16 私は少し難しいでも新しいことを勉強する方が好きだ 19 自分が興味を持ったことを深く勉強していくことが好きだ 遂行目標 0.29 0.33 0.39 0.16 0.35 0.60 0.51 0.48 0.41 0.41 0.01 −0.09 0.17 −0.16 0.27 −0.21 0.11 −0.04 0.10 0.03 −0.03 0.09 0.12 −0.20 0.00 0.23 0.22 −0.12 −0.20 0.22 0.24 0.37 0.29 −0.01 0.09 12 テストの成績より勉強の内容が分かることの方が大切だ 9 私は成績よりも学ぶ楽しさを大切にしている 挑戦目標 0.40 0.46 0.28 2 家の手伝いはできるだけするようにしている 3 家の中では,部屋の掃除など自分でできることは自分でする 1 親が困っているときは,自分が何か出来にかを考える 13.07 49.38 36.31 36.31 寄与率 (%) 累積寄与率 (%) 規範遵守 向社会的責任目標 共通性 因子抽出法:最尤法回転法:Kaiser の正規化を伴うプロマックス法による。因子負荷量は小数点第 3 位以下を四捨五入した。 質問項目 Table 2 家庭への向社会的責任目標と規範遵守尺度の因子分析の結果 (プロマックス回転後) 向社会的責任目標 0.57 0.43 0.35 0.74 0.72 0.54 0.02 −0.11 0.09 規範遵守 0.40 0.30 0.44 0.23 0.26 0.24 −0.03 0.01 0.18 −0.10 0.03 0.05 0.65 0.54 0.54 0.53 0.49 0.45 5 親の期待するような学習を頑張っている 8 夜更かしをせず,決まった時間に寝るようにしている 4 私にとって大事なことはほとんど親に相談している 6 家庭ではテレビ番組を見るときにルールがある 7 家に帰る時間はあまり遅くならないよう守っている 9 親からもらった小遣いはよく考えて大事に使う 1 教科書や文房具を忘れた人には,自分のものを貸してあげようと思う 2 勉強が分からない人には,教えてあげようと思う 3 友達から何かを頼まれたら,それをやってあげようと思う 11.39 55.10 43.71 43.71 寄与率 (%) 累積寄与率 (%) 規範遵守 向社会的責任目標 共通性 因子抽出法:最尤法回転法:Kaiser の正規化を伴うプロマックス法による。因子負荷量は小数点第 3 位以下を四捨五入した。 質問項目 Table 3 学校への向社会的責任目標と規範遵守尺度の因子分析の結果 (プロマックス回転後) 向社会的責任目標 0.48 0.49 0.45 0.75 0.65 0.62 −0.10 0.07 0.07 規範遵守 0.55 0.53 0.39 0.35 0.37 0.26 −0.07 0.02 −0.05 0.20 0.25 0.22 0.79 0.72 0.66 0.43 0.40 0.34 6 良い学級雰囲気を作るため,いろいろなアイデアを考えようとする 5 クラスの仕事はよくしていると思う 11 周りの人が学校の決まりを守らなかったとき,ちゃんと注意する 8 面倒だと思うときでも,当番の仕事がある時には,それをちゃんとやるようにする 4 よくできる勉強方法について,他の人と交流しようと思う 10 学校の決まりは,ほとんど守っている

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2.学習目標志向性 4 因子と社会的責任目標 (家庭・学校・地域) 各 2 因子との関連 (1) 学習目標志向性因子と社会的責任目標因 子との相関 日中両国をまとめて自己調整,学習,挑戦, 遂行目標と家庭・学校・地域において規範遵守 と向社会的責任目標の因子得点間の相関係数 (ピアソンの積率相関係数 r) をもとめた。 まず,「規範遵守」に関して家庭・学校・地 域三つの場面において,「自己調整,学習,挑 戦」目標の間に強い相関が見られた (それぞれ (家 庭) r=.630,r=.626,r=.528,(学 校) r= .518,r=.512,r=.451,(地 域) r=.495,r=.562, r=.418)。それに対して,「遂行」目標との間 にやや低い相関が見られた (それぞれ (家庭) r=.402,(学校) r=.340,(地域) r=.336)。 「向社会的責任目標」の家庭・学校・地域三 つの場面において,「自己調整,学習,挑戦」 目標の間に高い相関を見られた (それぞれ (家 庭) r=.535,r=.529,r=.453,(学校) r=.594, r=.611,r=.541,(地域) r=.554,r=.606,r =.499)。それに対して,「遂行」目標との間に 低い相関が見られた (それぞれ(家庭) r=.298, (学校)r=.378,(地域) r=.373) (Table 5)。 一方,中国と日本それぞれの国別で同様の相 関係数を求めた。その結果,国にかかわらず, 家庭の「規範遵守」と「自己調整,学習」目標 と の 間 に 強 い 相 関 が 見 れ た (そ れ ぞ れ 中 国 r=.525,r=.460,日 本 r=.529,r=.539)。学 校での「規範遵守」その関係を見ると,「自己 調整,学習,挑戦」目標との相関は中国より日 本 の 方 が 高 い 相 関 が 見 ら れ た (そ れ ぞ れ r=.464,r = .443,r = .439)。「遂行」目標は両 国ともに低い相関であった。地域での「規範遵 守」は両国の間にほとんど同様傾向を示した。 「自己調整,学習」目標とある程度高い相関が 見られた (それぞれ中国 r=.416,r=.447,日 本 r=.388,r=.493)。「挑戦,遂行」目標との 間は低い相関であった。 「向社会的責任目標」から見ると,中国の場 合は「自己調整,学習」目標と強い相関が見ら れた (それぞれ (家庭) r=.534,r=.510,(学 4 社会の中で皆が使う設備 (トイレなど) を利用する時,できるだけ大事にしようと思う 6 電車に乗る時,割り込まずきちんと列を作ろうと思う 7 交通ルールをちゃんと守ろうとしている 8 公共の場所にいる時,大声を出すなど周りに迷惑かけないようにしている 10.67 62.95 52.27 52.27 寄与率 (%) 累積寄与率 (%) 向社会的 責任目標 規範遵守 共通性 因子抽出法:最尤法回転法:Kaiser の正規化を伴うプロマックス法による。因子負荷量は小数点第 3 位以下を四捨五入した。 質問項目 Table 4 社会・地域への向社会的責任目標と規範遵守尺度の因子分析の結果 (プロマックス回転後) 規範遵守 0.53 0.57 0.55 0.46 0.39 0.85 0.65 0.60 0.39 −0.13 0.12 0.09 向社会的責任目標 0.57 0.46 0.51 0.44 −0.14 0.04 0.21 0.25 0.85 0.65 0.54 0.46 2 地域のボランティア活動に対して,参加する機会があれば参加する 1 将来は社会によく役立つ仕事務めたいと思う 5 近所の人から何か頼まれたら,手伝ってあげようと思う 3 乗り物に乗る時,お年寄りの人に席を譲ろうと思う .626** .512** .562** .630** .518** .495** 規範遵守 家庭 学校 地域 .298** .378** .373** .453** .541** .499** .529** .611** .606** .535** .594** .554** 向社会的責任目標 家庭 学校 地域 自己調整目標 学習目標 挑戦目標 遂行目標 **.相関係数は 1 % 水準で有意 (両側) です。 日中両国 Table 5 因子得点間の相関係数 (すべてのサンプルによる) .402** .340** .336** .528** .451** .418**

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社会的責任目標とはそれほど強い相関を見られ なかった。「遂行」目標との間には低い相関が 見られた(Table 6)。 (2) 重回帰分析による学習目標志向性が社会 的責任目標に及ぼす効果の検討 Fig. 1 から Fig. 6 は家庭・学校・社会地域の 3 場面において規範遵守意識と向社会的責任目標 を目的変数として,自己調整,学習,挑戦,遂 行目標の各因子得点を説明変数として重回帰分 析を国別に行い,各達成目標志向性要因の偏回 帰係数を示したものである。 この結果,国の違いに関係なく,学業場面に る生徒も家庭への社会的責任目標志向性に高い 貢献しているが,日本は中国に上回って高く寄 与していることが示された。この結果は学習に 対してよく出来る子どもの普遍的な姿を表して いると思われる。つまり,学校にいる自分と家 庭にいる自分の姿(態度)と一致していることが 想像できる。しかし,「挑戦目標」志向性を持 つ生徒は国に関わらず,家庭への社会的責任目 標に寄与していないことが分かった。しかも, 中国の場合は負の関係を示している。「遂行目 標」を持っている生徒は家庭への規範遵守意識 にわずかな影響を与えたが,向社会的責任目標 R2 乗 中国 =.292 日本 =.323 Fig. 1 重回帰分析による家庭の規範遵守意識に及ぼ す自己調整,学習,挑戦,遂行目標の効果 R2 乗 (中国 =.317 日本 =.185) Fig. 2 重回帰分析による家庭の向社会的責任目標に 及ぼす自己調整,学習,挑戦,遂行目標の効果 .413** .348** .346** .510** .421** .456** .534** .461** .422** 向社会的責任目標 家庭 学校 地域 中国 日本 **.相関係数は 1 % 水準で有意 (両側) です。 N Table 6 因子得点間の相関係数 (国別サンプルによる) 自己調整 目 標 達成目標 社会的 責任目標 .367** .292** .253** .456** .439** .333** .539** .443** .493** .529** .464** .388** .259** .243** .278** .383** .297** .319** .460** .388** .447** .525** .397** .416** 規範遵守 家庭 学校 地域 .194** .340** .284** .336** .518** .425** .397** .522** .489** .402** .485** .433** .271** .221** .283** 遂行目標 挑戦目標 学習目標 自己調整 目 標 遂行目標 挑戦目標 学習目標

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においては中国ではあまり強く関係せず,反対 に日本の方では負の寄与があった。このことは, つまり,「挑戦目標」や「遂行目標」を持って いる生徒は家庭における社会的責任目標志向性 に及ぼす効果が希薄であることを示すものであ る。 次に,達成目標と学校への社会的責任目標志 向性との関連を見よう(Fig. 3,Fig. 4)。 「自己調整目標」が高い中国の生徒は学校へ の社会的責任目標志向性にかなり高く貢献して いることが分かった。これに対して,日本の生 徒は学校への向社会的責任目標の方に貢献して いないことが示された。このような対照的な結 果がえられたことをどのように解釈すればよい であろう「自己調整目標」を持っている中国の 生徒は日本の生徒より学校からの評価を絶えず 懸念していると考えられる。中国の教育体制は 学業だけよくできる生徒はよい生徒ではなく, 行動・態度など全面的な評価が重要であること が中国の特徴である。だから,よい生徒は当然 他の面もよく出来るイメージが強い。いわゆる 「いい子」イメージを持ちながら学校で生活す ることが重要視されるのである。中国において は「自己調整目標」志向性ほど高い貢献をして いないが,学校への社会的責任目標志向性にも 強く貢献していることが分かった。つまり,子 どもはその社会的側面への評価に対して,かな り影響を受けていると考えられる。一方,日本 の生徒も同様に高い貢献をしていることを示し た。ということは,「学習目標」を持っている 生徒は学業においては自分の能力を伸ばすこと が出来るし,同時にその能力は他の面に伸ばす ことも出来ると考えられる。 最後に,達成目標と地域への社会的責任目標 志向性との関連を見よう (Fig. 5,Fig. 6)。 「自己調整目標」の高い中国の生徒は地域へ の社会的責任目標志向性に貢献していることが 示されたが,日本の生徒はほとんど貢献してい ないことが分かった。この結果は,社会・地域 に対して貢献する気持ちや関心を寄せる意識な どが希薄であることと関係があるのではないだ ろうか。 これに対して「学習目標」が高い生徒は,国 に関わらず,地域における「社会的責任目標」 に強く関連していることが示された。 他方,「挑戦目標」に関しては,中国の生徒 は負の貢献をしていることが分かった。この結 果は学習において,周囲の意向とは関係なく, R2 乗 (中国 =.229 日本 =.321) Fig. 4 重回帰分析による学校の向社会的責任目標に 及ぼす自己調整,学習,挑戦,遂行目標の効果 R2 乗 (中国 =.183 日本 =.242) Fig. 3 重回帰分析による学校の規範遵守意識に及ぼ す自己調整,学習,挑戦,遂行目標の効果 R2 乗 (中国 =.223 日本 =.244) Fig. 5 重回帰分析による地域の規範遵守意識に及ぼ す自己調整,学習,挑戦,遂行目標の効果 R2 乗 (中国 =.228 日本 =.288) Fig. 6 重回帰分析による地域の向社会的責任目標に 及ぼす自己調整,学習,挑戦,遂行目標の効果

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の方が関連していることが分かった。遂行目標 を持っている中国の生徒は当初の仮説通りで あった。すなわち家庭や学校場面だけではなく, 社会への社会責任目標志向性に及ぼす効果があ ることが明らかにされた。一方,日本では負の 関係を示していることから,若者は社会・地域 に対して貢献する気持ちや関心を寄せる意識な どが希薄であることと理解できるのではないだ ろうか。 Ⅴ.ま と め 本研究の結果から,日中両国の中学生の学業 場面における達成目標志向性と社会的責任目標 志向性との強い関係が明らかになった。とりわ け自己調整目標や学習目標志向性の高い生徒が 最も社会的責任目標志向性や規範遵守意識の形 成に関連が強いことが分かった。 一方,「遂行目標」を持っている生徒は家庭 への規範遵守意識にわずかな影響を与えたが, 向社会的責任目標においては中国ではあまり強 く関係せず,反対に日本の方では負の関係が あった。このことは,両国において「遂行目標 志向性」は家庭や地域における向社会的行動や 規範遵守意識の形成とは希薄な関係しか持たな いことを示したものであった。これらの結果は 当初の仮説を強く支持したものとなった。 最後に,現在の日本と中国は社会システムや 教育体制の面では,その歴史的な発展の事情の 差異を反映して共通点もあり,また類似点もあ 比較研究はあるものの,アジア諸国の間にこの ような比較研究がきわめて少ないのが現状であ る。本研究のような,アジア諸国間の比較研究 が今後ますます重大な意味があると思われる。 引 用 文 献

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